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2010

JANUARY

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特 集 

わが社の海外展開

二輪車用アルミダイカスト部品を主力に エクセレント に挑戦

進出15年、インドネシアの生産拠点を強化 株式会社 協和アルテック(静岡県田方郡函南町)

ヨルダン初の IPP による複合火力発電所、国王ご臨席の下で完工式

国際経済危機の後に見えるマーケティングアプローチ

「新興国ボリュームゾーン」市場に向けたものづくり

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世界的な景気後退の状況下においても、

日本の製造業が国際事業展開に成長の活路を求める動きが続いています。

これまで多くの日本企業が、その高い技術力を背景に、

主として先進国市場や途上国富裕層向けに高機能・高付加価値製品を展開してきました。

いま、中国、インドなどの人口の多い新興国は比較的高い経済成長を続けており、

国内に大きな潜在的市場が育ってきています。

こうした、新興国を中心に拡大する中間所得層、

つまり、もっとも購買力の高い消費帯(ボリュームゾーン)にターゲットをおいた

マーケティング戦略が注目を集めてきており、

実際にすでに成功している日本企業も数多くあります。

今号では、JBIC が 2009 年 11 月に公表した『わが国製造業企業の

海外事業展開に関する調査報告−2009 年度 海外直接投資アンケート結果(第 21 回)』

を踏まえて、

日本企業による新興国のボリュームゾーン市場へのアプローチについて紹介します。

JANUARY 2010

国際経済危機の後に見える

マーケティングアプローチ

「新興国ボリュームゾーン」

市場に向けたものづくり

1.新興国市場に商機あり

成長著しい新興国市場       

 2008年以降、世界経済は全体として低迷を続けています が、中国、インドなどをはじめとする人口の多い新興国は 旺盛な国内需要を背景に着実に成長を続けています。すで に2007年の国別GDP総額では、上位20位以内に、中国(4 位)、ブラジル(10位)、ロシア(11位)、インド(12位)、メキシ コ(13位)、トルコ(16位)、インドネシア(20位)が入っていま す。この成長著しい新興国の国内市場をいかに取り込むか ということが、海外で事業を展開する企業にとってますま す重要となってくるでしょう。  JBICが実施する『わが国製造業企業の海外事業展開に関 する調査報告−2009年度 海外直接投資アンケート結果(第 21回)』(海外投資アンケート)(注)によると、日本企業の海

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海外生産比率と海外売上高比率

出所:JBIC海外投資アンケート ※各比率は、売上高による加重平均にて算出 海外売上高比率 海外生産比率 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 0% 精密機械 業 種 全業種 食料品 繊維 化学 鉄鋼 一般機械 電機・電子 自動車 精密機械 全業種 食料品 繊維 化学 鉄鋼 一般機械 電機・電子 自動車 精密機械 海外生産比率 29.3% 11.7% 22.3% 20.1% 7.3% 19.1% 36.3% 41.4% 29.0% 34.5% 17.1% 38.3% 22.8% 8.8% 23.0% 41.0% 51.9% 32.4% 海外売上高比率 35.7% 7.8% 25.9% 32.6% 11.5% 34.5% 41.7% 47.2% 48.2% 43.6% 18.5% 33.9% 32.5% 33.3% 47.4% 48.4% 61.0% 57.1% 電機・電子 一般機械 全業種 鉄鋼 食料品 繊維 化学 ● 2008年度実績 ▲ 2002年度実績 自動車 2002 2008 外生産比率は34.5%と、2002年度調査結果と比べて、5.2ポ イント上昇、海外売上高比率も43.6%(同7.9ポイント上昇) となっており、海外での売上が一段と重要な位置を占め てきています。  これまで海外で事業を展開する日本企業は、先進国市 場や、途上国では比較的所得の高い富裕層を対象とし て、日本と同等の高機能・高付加価値の製品の供給を主 眼とする戦略をとってきました。こうした富裕層向けの 商品は利益率が高く、日本製品のブランドの信認を高め ることに貢献してきましたが、その反面、市場規模はあ まり大きくなく、さらに円高下では価格競争面でも決し て優位にはならない状況を迎えています。  新興国では、経済成長に伴い富裕層に続く中間所得層 が急激に拡大しており、もっとも購買力の高い消費帯(ボ リュームゾーン)として大きな市場を形成しつつありま す。中国、インド、ロシア、ブラジルのBRICsで見て も、一世帯の可処分所得が5,000ドルから35,000ドルの中 間所得層の人口が、2002年の2.5億人から2007年には6.3億 人に増加しており、今後もこうした傾向は続くものと見 られています。 (注)本調査は、海外現地法人を3社以上有する日本の製造業 企業を対象に、海外事業展開の現況や課題、今後の展 望を把握する目的で1989年から実施しており、今回で 21回目となります。

魅力的な反面、競争の激しい市場 

 JBICの海外投資アンケートの結果では、日本企業は、生 産コストの低減といった目的から、より現地のマーケット 成長性を意識した海外展開に注力してきていることが読 み取れます。ボリュームゾーン市場の急拡大は、この流 れの動機のひとつとなっていると考えられます。ボリュー ムゾーン市場向けのリーズナブルな価格設定による商品 は、利益率はそれほど高くないものの、巨大なマーケッ トを背景に、大量に販売することができれば、大きな利益 を上げることができます。  もちろん、現地企業や他国の企業もこのボリュームゾー ン市場に注目しており、日本企業の参入には、激しい競 争が待ち受けています。このため、価格競争に耐え得る 価格設定や、現地マーケットの嗜好やニーズを的確にく み取った商品開発・販売を行う必要があります。こうし た中、いち早くボリュームゾーン市場に向けた商品開 発・販売戦略に取り組み、成功を収めている日本企業も 多々あります。

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国際経済危機の後に見えるマーケティングアプローチ 「新興国ボリュームゾーン」市場に向けたものづくり

2.ボリュームゾーン市場への

  アプローチ

ボリュームゾーン市場の特徴   

 ボリュームゾーン市場向け戦略でよく取られる手法は、現 地ニーズから見て過剰な機能を削減し、コストを抑制する ことです。ただし、単に機能を落とすだけでは、大きなシェ ア獲得は難しいと言われています。現地のニーズを的確に くみ取り、商品の良さを広く伝えることも必要です。ま た、一口にボリュームゾーンといっても、国ごとにその定義 は異なっています。例えば、BRICsでも、ロシアとインドで は、中間所得者層の平均年収は大きく離れています。単に 先進国向け、ボリュームゾーン市場向けといった単純なセ グメントとして捉えるのではなく、国ごとに、ターゲット 販売先となる市場規模や特性を見極め、現地に根ざした商 品戦略を持つことが大切だといえるでしょう。  JBICが行った海外投資アンケート結果からも、ボリューム ゾーン市場に対して幅広い業種の企業が関心を寄せている ことがうかがえます。  すでに、ボリュームゾーン市場向け戦略に取り組んでい る企業は、注力点として、現地における販売・サービス網 の構築、生産コストの削減、現地向けの製品の仕様・品質の 見直し、現地向けブランドの導入などをあげています。検討 中と回答した企業への、何が課題となるかという問いに は、他社との競合の激しさ、コスト削減や販路の開拓の難 しさ、品質・機能を下げることの難しさなどが指摘されま した。  この市場に取り組むには、先進国市場での成功体験にと らわれず、現地消費者に対するきめ細かい販 売・サービス網 づくり、日本国内や先進国向け製品に対して求められるよ うな、一方で消費者にとって「過剰」とも思われる機能の削 除によるコスト低減、現地ニーズを的確に捉えた商品開発 などがポイントと考えられます。

新興国 中間所得層向け事業を検討中の

企業にとっての課題

新興国 中間所得層向け事業を実施済みの

企業の注力点

商品の優位性・利用法等の 顧客説明 0 10 20 30 40 50 60 70 80 の 明 販売網拡大・サービス体制構築 初期投資コストが大きい 他社との競合が激しい コスト削減が難しい 販路の開拓が難しい 品質・機能を下げるのが難しい ブランドイメージを維持したい コスト削減 製品の仕様・品質の 見直し 広告宣伝の強化 第2ブランド・現地向け ブランド導入 社 社 67 43 25 16 11 66 0 5 10 15 20 25 30 35 40 い い い い い い 6 11 12 25 29 35 出所:JBIC海外投資アンケート 出所:JBIC海外投資アンケート

中期的有望事業展開先国・地域(2009年度)

(今後3年程度、複数回答可)

(括弧内は2008年度の数字) (1) (2) (3) (5) (4) (6) (7) (8) (9) (12) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 353 278 149 110 103 95 65 52 31 26 (297) (271) (152) (125) (130) (91) (78) (41) (27) (20) 74 58 31 23 21 20 14 11 6 5 (63) (58) (32) (27) (28) (19) (17) (9) (6) (4) 中国 インド ベトナム タイ ロシア ブラジル 米国 インドネシア 韓国 マレーシア % 順 位 国・地域名 社 数 得票率 480 (471) 出所:JBIC海外投資アンケート

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3.日本企業の展開例

 ボリュームゾーン市場において、すでに成功を収めてい る日本企業の事例を戦略別に紹介します。

①ターゲットセグメント

      

 ボリュームゾーン市場へのアプローチでは、自社の競争優位 性を活かせるセグメントの設定が重要となります。成功してい る企業は、新しい切り口から市場の開拓・発掘に取り組んでお り、空白セグメントへの参入、高級セグメントと連動した展開 などを行っています。

②製品戦略

      

 ボリュームゾーン市場が求めるのは、単純な「安物買 い」ではなく、先進国にはない現地社会特有のニーズに応 えた製品です。時には、先進国市場以上の高機能がセール スポイントとなる場合もあり、日本人の価値判断にとらわ れない現地のニーズを反映した開発が新たな市場の獲得に つながっています。

賃刈農機市場への参入

中国では、すべての農家が農業機械を保有できるわけ ではありません。このため、農業機械を保有して各農家 から刈入れを請け負う賃刈屋というビジネスが発達し ています。賃刈に使われる農機は繰り返し何回も利用 されるため、コストパフォーマンスだけでなく、耐久性 が求められます。そこで、ヤンマー(株)は、刃こぼれし にくい刈刃を採用するなど頑丈なコンバインを開発 し、また賃刈屋へのメンテナンスサポート体制を充実 させ、中国市場で高いシェアを獲得しています。

エントリーカー

モータリゼーションが始まりつつあるインドネシアで は、ダイハツ工業(株)が 2000 年頃からエントリー カーとして独自に現地向けに設計したスモールカーを 投入し、大きな販売実績をあげています。最初に購入す る自動車メーカーを、その後ユーザーの所得が向上し てからも、上位モデルへの買い替えを含め愛好者でい つづけてもらうためにも、エントリーカー市場の重要 性に着目してマーケティングしてきた結果です。 事例1 事例 2

③価格戦略

      

 ボリュームゾーン市場向けには、現地の売れ筋価格帯を意 識した価格設定が重要になります。ハイエンドではないもの の、やや高い価格設定を行うことでブランドイメージを維持 する戦略や、一方で後発ブランドとして市場参入する場合に は、競合品より若干安い価格設定を行う戦略など、各社が価 格設定を戦略的に行っています。  また、政府の補助金などの優遇措置や現地の販売金融事 情などを考慮した商品戦略も効果をあげています。

④流通・販売チャネル戦略     

 販売・サービス網が未整備な新興国では、製品の流通・販売 経路の確保が重要となっています。実績を挙げている企業の中 には、販売代理店の経営支援を通じてロイヤルティを高めた り、直販営業を推進するなど、流通・販売戦略に力を入れてい るところもあります。

除菌機能付き洗濯機

パナソニック(株)は、中国に開発拠点を置いて現地の 消費ニーズを見極めた製品開発を行っています。例え ば、洗濯機では、中国の住宅では洗濯機を置く床がコン クリートであることが多いことから、振動防止ダン パーを簡素化する一方で、消費者のニーズが高い除菌 機能を付加するなどしています。また、冷蔵庫では食の 安全への関心が高いことから、野菜の残留農薬を分解 する機能を付加した製品を開発し、販売面で成功を収 めています。

風を感じるエアコン

日本のエアコンは肌の乾燥を防ぐために、センサーに よって風が人に直接当たらないように設計されている ものがあります。一方で、インドでは風が当たらないと 冷房効果が弱いと感じられてしまうという、現地ス タッフの意見や市場の声を反映し、日立アプライアン ス(株)は人がいる方向に送風するエアコンを開発しま した。人が動くと、センサーでその動きを追いかけて風 向調節をします。日本人向けのマーティングでは考え られなかった設計ですが、インドでは広く受け入れら れ、販売実績をあげています。 事例 3 事例 4

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国際経済危機の後に見えるマーケティングアプローチ 「新興国ボリュームゾーン」市場に向けたものづくり

⑤ブランド/プロモーション戦略

  

ボリュームゾーン向け事業では、富裕層向けのブランド イメージを損なうことなく、新たなブランドを確立すること も重要な戦略のひとつです。  (注)事例で取り上げさせていただいた企業名については、 敬称略とさせていただいております。 大阪での新興国中間層市場をテーマとしたセミナー

日本の販売システムを導入

(株)資生堂は、これまで長期にわたり日本で培ってき た対面販売方式による専門店展開を中国市場でも進め ています。ビューティーコンサルタントが全国の専門 店をまわって接客指導を行い、対面販売による消費者 とのコミュニケーションを通じて、商品の付加価値を 正確に伝え、販売面で成果をあげています。

代理店の戦力強化

乳幼児用品の製造販売を行うピジョン(株)は、中国で 代理店、販売店のレベルアップ・戦力強化に注力し、単 なる販促支援にとどまらず、教育、経営指導といったと ころまで踏み込んだサポートを行っています。例えば、 代理店、販売店を対象に経営セミナーを定期的に開催 し、商品知識やサービスの向上につなげており、さらに 販売成果に対して様々なインセンティブ制度を導入す るなどして、ロイヤルティを高める工夫も行っていま す。 事例 5 事例 6

4.JBICの取組み

国際最適生産と併せた

ボリュームゾーン販売戦略     

 これまで紹介してきた事例に見られるように、新興国の ボリュームゾーン向け事業は、現地の事情に合わせた細かい 戦略策定が必要であり、成功している企業では、本社が積極 的にコミットして中期的な視点で取り組んでいます。日本 は、これまで培ってきた技術面において一日の長がありま す。現地のニーズをうまくくみ取ることができれば、こうし た技術を活かし、ボリュームゾーン市場において大きなビジ ネスチャンスにつながる可能性があります。  EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)の広がりによ り、今後ASEAN諸国なども大きな域内市場を形成すると見 込まれます。こうした新しい時代に備えて現地生産拠点を 結んだ国際最適生産体制を整えるとともに、国内・域内市 場における最適な販売体制を構築することが海外における事 業展開の持続的成長の鍵を握っているといえるでしょう。  JBICは、これまでも日本企業の貿易取引だけでなく、こ うした国際分業体制の構築も含めた海外事業展開を幅広く 支援してきています。また、融資以外においても、新興国 の動向の最新情報を紹介するセミナーや資料提供を通じ て、側面からも日本企業の海外事業展開を支援していま  す。ボリュームゾーン市場の拡大に伴い、現地市場や社会 により根ざしたビジネス展開を行う日本企業が増加するこ とも見込まれています。JBICは、今後ともこうした日本企 業の海外展開をさまざまな面から支援していきます。

セグメント別ブランド展開

(株)資生堂は、中国市場において、一部の高級デパート など向けに対面販売による高級ブランドを展開する一 方、ドラッグストアや個人化粧品店では別のブランド 展開を行い、チャネルごとに投入ブランドを分けるこ とでブランドイメージを崩すことなく、幅広い消費者 層へのマーケティングを実施しています。将来、所得が 向上した顧客に対して、上位ブランドへの乗り換えも 期待されます。こうして中国市場においてトータルの セールスで高いシェアを確保しています。 事例 7

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Opinion

グローバル戦略3.0が成長の鍵

 2008年のリーマンショック後、世界に瞬く間に広まった金 融危機に端を発する不況は、グローバリゼーション特有の負 の連鎖効果の怖さを露呈させた。それでも、日本企業は、内 需喚起を待つだけでなく、グローバル展開を進めないと成長 はない。  では、従来型の海外進出をすれば、日本は成長できるのだ ろうか。グローバリゼーションにも発想の進化が必要だ。  グローバリゼーションには3つの段階がある。欧米市場開 拓を主眼とした輸出主体の「点」の戦略を1.0とすれば、現 地で生産・開発・販売を行うグローカル(グローバル+ロー カル)戦略による現地化と市場間の最適ネットワークを求め た「線」展開を行うのが、2.0といえよう。この2つの段階 は、「個々の企業」の日本から海外へという「一方向」の流 れである。  しかし、これから目指すべきグローバル戦略3.0は、第一 に、日本と海外市場との貿易と投資、そして知と人の「双方 向」の流れを持つことが基本となる。なかんずく、日本に は、世界で進むリージョナル経済圏(面)の構築の中で、経 験と技術に富む成熟経済の強さを活かし、双方向の交流で地 域経済圏発展に寄与し、その発展の利益を投資収益として受 け取るグローバリゼーションが求められる。つまり、点と線 を「面」に展開させていくことだといえる。  第二に、個別企業のモノの生産・販売で進出するのでな く、複数企業や国家とのコラボレーションで、海外市場の経 済システムを創造することが大事になる。特に、地域経済圏 の社会インフラや環境問題解決には、日本はモノ、人材、運 営管理ノウハウ、ファイナンス、制度設計を含めたシステ ム・ソリューションを提供していくことが求められている。

グローバルビジネスの

新潮流

一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授

安田 隆二氏

1970年東京大学経済学部卒業。モルガン・ギャランティ・トラストに入社。1979年カリフォルニア大学バークレー 校で政治学博士号取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー、A.T.カーニーアジア総代表、ジェイ・ウィル・パートナー ズ会長などを歴任し、2002年より現職。著書に『日本の銀行:進化への競争戦略』(東洋経済新報社)など。

アジアの中間層の取り込みと

インフラ開拓にチャンス

 グローバリゼーション 3.0 の進展の中で、やはりアジアの 「面」展開が最も重要である。アジアはもはや低コストの生 産拠点ではない。急成長する中間層に支えられた巨大な消費 市場であり、国際競争力を持つ商品を開発生産できる国であ る。  アジアの「面」展開を進めるには、1)顧客の限界的ニー ズが減っていくにもかかわらず高度な技術開発にこだわっ て、アジアの中間層に適しない商品を作るような イノベー ションの罠 に陥らないこと、2)マーケッティングや販売面 で、アジア顧客のニーズがつかめるだけ深く現地化するこ と、3)アジア企業の対日投資を促進し、アジアの人材を歓 迎し、日本との連携を強めること、4)アジアの潜在経済力 を花開かせるために、電力・水道・交通・環境インフラ作り にシステム・ソリューションを提供すること、そして、5) 何よりも、長期的な視野を持ち、短期の業績のアップダウン に惑わされない度量をもつこと、等が肝心である。

ボーダーフルエコノミー下において

期待されるJBICの役割

 金融危機以前の自由な市場原理主義経済からの揺り戻しに より、世界市場は「ボーダレス」から「ボーダフル」へと流 れが変わり、グローバル競争における国家の影響が高まって きている。グローバリゼーション3.0の時代は国家と企業が 連携した国際競争でもある。そこに政府系金融機関である JBICの大きな使命がある。海外では過去の実績と知名度を 活かした金融外交力の発揮、国内では中立な立場で業界横断 的なシステム・ソリューションを組成する役割が期待され る。欧米では、積極的に行われてきた「経済外交」のよう

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国際協力銀行 の 広報誌

V

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January 〒 100-8144  東京都千代 田 区大手町 1 丁 目 4番1号 Tel. 03-5218-3100  国際協力 銀行  国際経営企画部 報道課 URL: http://www .jbic.go.jp JBIC TODAY ( ジ ェ ー ビ ッ ク ト ゥ デイ) 2010 年 1 月 号 2010 年 1 月 発行  PROJECT アンマンの東方約 15km のアルマナカ村近郊に建設された発電 所。電気出力 370MW。CO2の排出が少ない天然ガスを使用し、 コンバインドサイクル(高圧ガスタービンとその排熱回収による低 圧蒸気タービンの複合)により高効率発電を行う。BOO 方式*2で ヨルダン国営電力公社に対し25 年間にわたって売電され、アンマ ン市内に供給される。 アンマンイースト天然ガス焚き 複合火力発電プロジェクト 表紙 中国・故宮 太和殿

ヨルダン初のIPPによる複合火力発電所、

国王ご臨席の下で完工式

JBIC 欧阿中東ファイナンス部第3班 大浦徹也課長に聞く

 三井物産と米国法人 AES Corporation の子会社 AES Oasis 社からアンマンイースト天然ガス焚き複合火力発電 プロジェクトに対するプロジェクト・ファイナンスの融資 依頼があったのは、2005 年の秋でした。  「世界銀行が1995年から支援しているヨルダンの電力 部門改革の一環となるもので、ヨルダン初のIPPプロジェク トでした。ヨルダンは多くの対外債務を抱えていること もあり、慎重な与信判断が求められる一方で、イラク、サ ウジアラビア、イスラエルなどに接しており、地政学的に も政治的にも中東の安定化に重要な役割が期待される国 です。  ヨルダン政府の国内重要プロジェクトの一つに位置づ けられているこの IPPプロジェクトの融資決定にあたり、 JBIC はヨルダン政府と何度も交渉を重ね、ヨルダン政府 の支援姿勢を確認しつつ、懸案事項をひとつひとつクリ アし進めてきました。また、協調融資にあたっては、三 井住友銀行の融資に世界銀行の保証が付いたことや、米 国の政府系金融機関である海外民間投資公社(OPIC)が 加わっている日米協調プロジェクトであることも、融資を 決定する上では重要なポイントになりました」(大浦)。  2005年12月に三井物産と AES Oasis 社はプロジェクト に応札し、2006年春に事業化 に向けた優先交渉権を獲得。 JBICは両社との融資契約交渉 を進めました。  「JBICは、UAEや カ タ ー ル などの日本と関係の深い中東湾岸産油・ガス国 やトルコやチュニジアといった周辺国でのプロ ジェクト・ファイナンスは実績がありますが、 ヨルダン向けのプロジェクト・ファイナンス としては初めてでしたから、契約書類の 内容、事業見込み、セキュリティパッケージ などの諸要件を一層慎重に詰めていき ました。2007年 3月に、同社に対し1億 1,000万米ドルを限度とする融資契約 に調印しました」(大浦)。  調印後、世界金融危機の影響もあって、株主と銀行の 意見が分かれることもありました。「JBICとして各スポン サーに対して、当初の計画通りコミットメントを維持する よう強く働きかけるなど、プロジェクト完遂のために努 力を続けてきました」と大浦は振り返ります。  こうして、2009年夏にほぼ計画通りに運転が開始され、 10月の完工式を迎えました。  「国王のご臨席に象徴されるように、ヨルダン政府は IPP プロジェクトに大きな期待を寄せています。厳しい財政上 の制約の下、インフラを整備するための方策として、IPP 手法を評価しているのです。ヨルダンは、石油資源には恵ま れないものの商業や死海やペトラ遺跡を中心とした観光 産業、外国企業の投資によって、2000年代は 7 ∼ 8%の 成長を続けています。それに伴って電力需要も高まってお り、今回の成功によって自信を深めたことで、新たな計 画も進んでいます。  また、本プロジェクトには日本企業の発電設備も一部採 用されており、日本のプラントビジネス支援にもつながっ ています。JBICとしては、今回のプロジェクトをモデルと して、中東だけでなく、これまで実績がなかった国も含めて 日本企業が参画するプロジェクトを支援していきたいと考 えています」と大浦は今後の展開について語っています。 2009年10月26日、ヨルダン初の IPP*1による「アンマンイースト天然ガス焚き複合火力発電プロジェクト」 の完工式が、アブドッラー 2世国王のご臨席の下で行われました。三井物産(株)と米国の発電事業者が共同設 立した AES Jordan PSC 社が首都アンマン近郊に建設してきたもので、JBICにとって、初のヨルダン向 けのプロジェクト・ファイナンスによる融資となりました。

1 IPP(Independent Power Producer):

自前で設備を建設・運営・販売する独立系発電事業者 *2 BOO 方式(Build, Own and Operate):

民間企業が発電所を建設、所有、操業する方式

欧阿中東ファイナンス部課長  大浦 徹也

完工式でのアブドッラー 2 世国王

参照

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