早稲田 E W E
電気工学会会報
51
2010.Mar.
http://www.ewe.or.jp/
Sending voltage control equipment AVRDigital measuring equipment Computer to control equipments
Single Phase loads
Three phase distribution lines with swiches Distributed generators/ Three phase loads
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2010年度通常総会開催通知
早稲田電気工学会 会長成田 誠之助
拝啓、時下益々ご清栄の段お慶び申し上げます。 さて、標記通常総会を下記の通り開催致しますので、万障お繰り合 わせの上、会員お誘い合わせてご出席いただき、EWEの運営・活動 などについてご意見を賜りたくお願い申し上げます。 敬具 記 1.日 時 2010年5月14日(金) 午後6時∼8時 2.場 所 早大西早稲田キャンパス55号館1階 大会議室 3.議 題 盧 2009年度事業経過報告および決算 盪 2010年度事業計画および予算 蘯 その他 4.懇親会 早大西早稲田キャンパス55号館1階 第1会議室 5.懇親会費 3,000円 ※但し、学生無料 出欠のご連絡は、5月1日貊までにくださるようお願いいた します。 以上 〒169−8555 東 京 都 新 宿 区 大 久 保 3 −4 −1 早稲田大学西早稲田キャンパス内早 稲 田 電 気 工 学 会 事 務 局
電話/FAX:03−3232−9768(直通)
E-mail:[email protected]
U R L : h t t p : / / w w w . e w e . o r . j p/
○巻頭言……… 1 EWE会長 成田誠之助 ○北九州キャンパスの様子……… 4 情報生産システム研究科教授 石野 福弥 ○講演「最先端低消費電力コンピュータ(マルチコア・メニーコア) のハードウェアとソフトウェアの研究開発」 ……… 9 情報理工学科教授 笠原 博徳 「スマートグリッドの光と影∼低炭素社会実現の切り札となりえるか∼」 ……… 27 環境・エネルギー研究科教授 横山 隆一 ○ベンチャー企業紹介「アクセラテクノロジ」 ……… 34 代表取締役 進藤 達也 ○退任に際して……… 36 白井 克彦教授 ○修士課程修了にあたって……… 38 電気・情報生命専攻 大橋 政貴(内田研究室) 情報理工学専攻 相馬 翔(中島研究室) ナノ理工学専攻 深野 愼介(庄子研究室) ○地方本部だより……… 41 中国地方本部 関西地方本部 ○クラス会だより……… 44 電工29年会報告 1947年(S22)卒 電気通信学科 クラス会 電気通信学科1948年(S23)卒 クラス会 電気通信学科1951年(S26)卒 クラス会 昭和48年(1973年)電気通信学科卒 “アラ還”同窓会 電気通信学科1972年卒業生 クラス会 昭和50年卒EWEのホームカミングデー 電気工学科1974年(S49)卒 同窓会 ○寄稿「平山博先生、米寿の会」 ……… 52 ○EWE活性化委員会活動報告 ……… 53 ○EWE三月会2009年度活動報告 ……… 55 ○学生部会報告「研究室対抗ソフトボール大会」 ……… 56 ○2009年度修士論文一覧 ……… 57 ○2009年度学部卒業生一覧 ……… 70 ○2009年度博士号取得者 ……… 77 ○受章・褒章……… 78 ○2009年度就職状況 ……… 81 電気・情報生命工学科教授 渡邊 亮 情報理工学科教授 小松 尚久 教授 山名 早人 准教授 木村 啓二 ○2009年度就職先一覧 ……… 85 ○2009年度評議員選定状況 ……… 88 ○終身会費納入者一覧……… 94 ○寄進者、賛助会員、逝去者一覧 ……… 94 ○会報50号訂正とお詫び ……… 96 ○表紙デザインについて「スマートグリッド装置」 ……… 96 ○編集後記……… 97
世界に開かれたEWEへ
早稲田電気工学会会長成田誠之助
EWEは今年設立98年を迎え、学術研究の発 信基地として、あるいは会員相互の情報交換や 懇親のフォーカルポイントとして長い歴史と実 績を有している。その会員総数も急激に増加し、 22,800名を超えている。当然のことながら会員の 年齢差も70歳を超え、時代の変遷とともに個々人 の専門分野や興味の対象も電気工学、通信工学、 あるいは情報工学という言葉では括りきれない広 がりを持ってきている。 最近のEWEは同窓会組織としての色彩が濃く、会員相互でいかに有用な情報 を交換し、あるいは親交を深めていくかという観点から本会の運用がなされるよ うになってきている。 大多数の会員は本学の卒業生であることから早稲田大学校友会の会員であり、 卒業研究を行った研究室単位でのOB、OG会のメンバーであり、さらにサークル 活動や県人会のOB、OG会員である人も多い。つまり、年齢差、専門性の差異も 含めて考えると分極、多重構造になっており、たとえば年会費を総計すると相当 な金額を支払っている会員も多い。。 このような多様性を持つEWEのような組織が活発に運営されるためには、そ の前提をして、会員諸賢の興味の対象、あるいは会に対する期待のベクトルが 揃っていなければならないが、現実問題としてこれは期待すること自体無理なこ とであり、EWEの歴史を維持し、その駆動力を支えているのは限られた会員の 母校愛であるというのが現実の姿である。勿論、この母校に対する求心力を強固巻 頭 言
にすることがEWEの活性化につながるのは議論することもない真実であり、こ こに改めてこれまでの多くの会員や役員の皆様への感謝を申し述べたい。 一方、いまEWEが置かれている環境や社会情勢の変化、それに会員の構成の 質的変化についても目を向けなければならない時期にきているという事実にも対 応が必要であると思われる。会員の構成比率をみると従来よりはるかに多くの留 学生が、大学院を中心に学んでいる。各学科の構成員も従来本学の卒業生が教員 のすべてを占めるといる純血主義から、多数の他大学の有数な頭脳を受け入れる という当然あるべき方向に変わってきている。教員の研究活動も横断的、国際的 になり、さらに、卒業生の活動の拠点も世界中に広がって国際人として活躍して いる。 当然のことながら、どのような経歴を持つ会員でも早稲田大学関係者として、 本学に対して、ひいてはEWEに対しての理解と支援の気持ちを常に持ち続けて ほしいと期待し、事実、その期待にこたえる活躍をされているのは有難いことで ある。 しかしながらこれは出身校に対する熱烈な母校愛とは異なった次元での本学に 対する協力的姿勢と理解するのが時代の趨勢にマッチした考え方であろう。今や 母校愛を駆動力として求心力を強める努力と同時にEWEから外に向けての発信 力、遠心力を強める努力も欠かせない局面に入っている。では、どのような手順 で、何を具体的にしていくべきであろうか。 まず第一に、いまや相当数に登る留学生に対するサービスの充実、強化が挙 げられる。世界の一流と呼ばれる大学は最低でも留学生の比率が3割を超えるが、 早稲田大学でも留学生8000人計画が進められており、また、留学生に対する基礎 科目の教育を英語を教育言語とする教育体制がスタートする。一昨年の最終講義 の中で「留学生はお買い得」と申し上げたが、多くの留学生は帰国後、特に発展 途上国、新興国で枢要な地位を占める人が激増し、その結果としてかつての学び の舎である早稲田大学に対する思い入れ、あるいは母校愛は多くの日本人卒業生 を凌ぐものがある。これらの留学生の指導に当たられた教員の協力を得て、彼ら
の活躍状況や、あるいは学術交流の提案を会員に広く知っていただき、来日の折 に講演会などを開催するのは彼らにとって大変名誉と感じられるばかりでなく、 現役の留学生、あるいは日本人会員にとっても大いなる刺激になるに違いない。 同じようなことであるが、海外に在住して活躍する国際的な会員からもぜひ EWEに対するインプットを頂きたい。海外の主要都市には稲門会があるがそれ らの組織を通じてぜひ会報への寄稿やホットなニュースをご提供頂き、若い会員 の刺激剤とさせていただきたい。また、「ふるさとは遠きにありて想うもの」と 母校を想う海外会員も多いのではないか。そのような会員に対してWebメール の配信を充実することも必要であると考える。以上の事柄はインターネットの一 般化したこの時代であるからこそ、やろうと決心すればできることである。 多くの方はご存知と思うが“Spysee”というサイトがある。たとえば本会の 会員である白井克彦現総長の名前をインプットすると彼を取り巻く人脈が放射状 に画面に表示され、その中の人物を選択するとさらにその人物の世界に拡がる人 脈がわかる。現状のEWEの活動の中ではこのような人脈づくりは総会後の懇親 会や会報の記事などにかぎられているが、早稲田電気工学会版のSpyseeがいつ かできればと期待している。 強烈な求心力がBig Bangとなって宇宙を創生したが、それにはとてつもない 時間を要する。世界に開かれたEWEを是非ご議論いただきたいと念ずる次第で ある。 以上
北九州キャンパスの様子
情報生産システム研究科教授石野 福弥
(1965年電気工学修士卒) キャンパスの立地条件 北九州キャンパスは学部を持たない独立大学院として、北九州市が計画した‘ひ びきの学術研究都市’に2003年4月から開校しています。専門分野が情報アーキ テクチャー竄、生産分野竕、システムLSI分野竚からなるため、通称IPSと 呼びます。この‘ひびきの学術研究都市’はロケーション的には鹿児島本線特急 で小倉から15分、博多から30分の折尾駅が最寄り駅で、駅から海側へ2∼3キロ の位置にあります。九州北部は石炭と鉄で戦後の日本の産業を支えてきた地域で すが、北九州市がポスト重工業として情報産業を育成するために山林を開拓した 広大な造成地にこの学術研究都市はあります。現在では早稲田のほか九州工業大 学、北九州市立大学、福岡大学などの大学が集結し周辺の街づくりもほぼ終わり、 スーパーや新興住宅、マンションが4車線道路を挟んで整然と並んでいます。7 年前のこの辺りの荒地を知っている人には想像できない景観です。キャンパスか らは車で10分走れば、吉永小百合の映画ロケにも使われた玄界灘に沈む見事な夕 日を眺めることができます。海岸線は海水浴とか釣り、ボートを楽しめますが、 真夏でも人が少ないので東京から来ると南海の島に来た感じです。海沿いに鮮魚 料理屋が数件ありますが、その一つは梅宮辰夫が釣りの後の調理に厨房を借用 写真 北九州キャンパスの全景するらしいです。遠方からIPSを訪問する方には、海に面した露天風呂が付い ている簡保の宿がお勧めです。晩飯は宿食よりも漁港近くの料理屋で一杯、今日 の魚をつまみながら土地の話を聞くと旅情が盛り上がります。 この辺りの気候は九州だから暖かいと思い勝ちですが、北九州は少し違ってい ます。少し目を離して日本地図を見れば分かりますが、北九州は島根、山口の延 長上に位置していて東京よりも雪も多く、キャンパス周辺はさらに海風も受ける ので気温以上に寒く感じます。 休みの日にドライブに出ると、日帰り範囲に阿蘇、耶馬溪、九重などの自然、 宇佐八幡、宗像神社、羅漢寺、大宰府など日本最古クラスの神社仏閣があり、弥 生時代の大集落、元寇防塁、巌流島などの史跡も近くです。関東地域と比べて道 路が空いていて、例えば福岡までは国道3号線で走ると車が7∼80キロで流れて いますから高速道路と時間は大して変わりません。ただ、それ以上にスピード出 して違反で捕まることが多いので要注意です。九州は東北と並ぶ温泉地帯でどこ にでも温泉がありますが、キャンパスから車で5分のところにある銭湯も天然温 泉です。また、魚、野菜、果物など安くて新鮮な食材には事欠かないので、こち らに移住して料理好きになる人もいます。酒と言えば東京では日本酒を指します が、こちらでは焼酎です。酒屋には焼酎ばかりが陳列していて日本酒は片隅に少 しばかりというのが普通です。ただ、夜の交通の便が悪くタクシーを利用しない と飲み屋に行けないのが難点です。 更に広く地図を見ると、福岡は東京、上海、ソウルからほぼ等距離にあって、 福岡空港からどの都市にもほぼ1時間半で行けて、チケットは東京に行くより海 外のほうが安く手に入る場合が多いです。釜山へは福岡港からの高速船が安く便 利で3時間半で着きますから、1泊すればプルコギ鍋、カルビ焼きを堪能しキム チを買って帰ることもできます。 福岡の別の特産品として芸能人を挙げておく必要があります。タモリ、武田鉄 也、郷ひろみだけではありません。女性陣では黒木瞳、松田聖子、小柳ルミ子、 森口博子、梓みちよ、中尾ミエ、山本リンダも福岡。大御所の高倉健が折尾の進 学校東筑高校の出身で生家も近く、音楽では井上陽水、チューリップ、甲斐バンド、 チェッカーズも福岡県の人です。若いところでは、天地人の妻夫木聡、浜崎あゆ み、氷川きよし、等がいます。スポーツでは、柔道の谷亮子、サッカーの平山相大、 ソフトボールの上野投手、相撲の魁皇などのスターが福岡出身なのでテレビにか じり付いてしまいます。福岡の人柄として、気が荒い、率直、キップが良い、好 き嫌いがはっきりしている、と言った特徴を感じますが、この気質が裸一貫で飛
び出す決断力の源泉のような気がします。 教育と研究 このような立地条件にある北九州キャンパスでの教育、研究の特徴として次を 挙げることができます。 盧 独立大学院であるため出身大学、学部が多種多様である。 盪 そのため基礎学力も千差万別である。 蘯 半数以上が外国からの留学生であり、英語と日本語のバイリンガル教育である。 盻 教員の大半が企業出身者である。 眈 英語中心なので学生の多くは国内よりも海外に論文投稿する。 表1に2009年12月時点での学生の構成をまとめましたが、留学生が多いことが 目立ちます。国の数では14国ですが、近隣の中国、韓国、台湾出身者が大半です。 日本人について出身地と出願時の身分の分布は表2のようになっています。社会 人出身と40歳以上が多いのは、会社で働きながら博士学位を目指す学生がかなり いることが影響しています。また、九州出身者は30%程度で九州大学では九州出 身者が70%を占めることと比べると、広く全国から入学しており早稲田のナショ ナルブランドが生きていることが分かります。 IPSは独立大学院で且つ留学生が多いことから学生の質の分散が大きいと言 えます。特に中国からの留学生は中国の北京大学、清華大学、上海交通大学のよ うなトップクラス大学から推薦を受けてくる優秀な学生もいますが、学生の経歴 が多様であるため基礎学力の分散も大きく、言葉の上でも日本語ができない学生 と英語が苦手な学生が混在しているため、教育における教員の負担は大きくなり ます。2009年度のカリキュラムから、講義で使う言語を表3にまとめました。2ヶ 国語を併用するとはどんな講義になるのか、教員や講義内容によってパターンが 表 1 在学生の構成 (2009 年末 528 名) 表 2 日本人の出身分布 (108 名) 修士課程 361 博士課程 167 男 378 女 150 日本 108 外国 420 20 代 429 30 代 62 40 代 13 50 以上 24 出身地域 人数 関東 45 九州 29 中国 16 関西 11 東海 4 その他 3 出願時の身分 人数 社会人 41 大学生 33 高専専攻科 21 大学院生 10 その他 3 課 程 性 別 国 籍 年 齢 層
違ってきますが、同じことを繰り返し話す(倍の時間がかかる)基本的なパター ンから、受講生の言語能力に合わせて、主には1つの言語で話して分かり難いポ イントだけは2つの言語で話したり、ティーチングアシスタントが言葉の苦手な 学生の傍についたり、いろいろ工夫が必要です。用意するスライドは英語表記の み、または2ヶ国語表記、テスト問題は2ヶ国語表記です。テキストを使う場合 も英語テキストが基本となります。 北九州キャンパスの研究室は、情報アーキテ クチャー分野(9研究室)、生産分野(10研究 室)、システムLSI分野(10研究室)から構 成されます。修士課程は入学後のコースがA、 B、C、S、F、Gの6通りあって、コースに よって研究室に入る時期、研究期間が変わりま す。最も多いのがAコースで入学後半年で所定 の単位を取れば希望教授との面談により研究室が決まります。その後の1年半は 講義受講よりも研究が中心課題となります。Bコースは講義と研究が半々で、C コースは講義が1年半、最後の半年で卒論を書くことになります。SコースはA コースを選んだあと授業のほぼ全科目が90点以上で、且つ研究成果が学術論文誌 に採録され卒業論文を早期に仕上げた場合にのみ適用され、1年か1年半で卒業 します。6年間でSコースで卒業した学生は数名程度です。勿論、Sコースの資 格があってもじっくり研究するために2年掛けて卒業する学生もいます。Fコー スは留学生に適用されるもので、本国の修士課程の1年を終えた段階で成績優秀 という推薦を受けて入学しIPSの修士を1年で取るシステムです。IPSで修 士を取った後、本国に帰りあと1年研究を続ければ2つの大学から修士を取れま す。Fコースで留学する学生は毎年10名前後いますが、実際は全員が1年でIP Sを終えるとは限らず、論文が不出来なために1年半とか2年掛かっている学生 がかなりいます。Gコースは指定大学からの留学生に限って、大学3年時点の成 績が抜群であれば飛び級でこちらの大学院修士課程に入学できるシステムです。 大学3年からの飛び級入学は日本の大学の3年生に対しても適用されています。 卒業生の進路 留学生は大半が卒業後日本で働く希望を持って入って来ます。日本企業に入社 後は海外ビジネスに就く場合もありますが、普通の日本人と変わらない開発業務 に就くことが多いようです。日本で就職することに成功するかどうかは、学生の 大学院での成績とは関係なく、まず日本語でのコミュニケーションに支障がない 表 3 講義での使用言語 英語で日本語も併用 49 日本語で英語も併用 31 日本語のみ 12 英語のみ 4
かどうかが第一条件で、次に日本人学生と同様に面接評価で決まっているようで す。従って、留学生は入学後の1年間で日本語とか日本の習慣に馴れることが望 ましい訳ですが、日本人学生の比率が2割程度になると日本人学生と友人になる 機会も少なく、安易なキャンパス生活を送る傾向があります。つまり、プライベー ト時間は母国語で話せる友人と過ごすようになり日本語とか日本の習慣に接する ことが少なくなります。トイレでベンチ型があっても座り込むタイプが塞がって いる場合が多いのが意外です。逆に考えると、異文化を簡単に吸収する日本人が 変わった民族なのかも知れません。日本人学生は否が応でもいろんな国の学生と 接するので、それぞれの体験から各国の学生の癖を覚え上手な付き合い方を吸収 しているようです。中には、中国人に興味を持ち早稲田の交換留学制度を利用し て1年間留学した日本人学生もいます。 博士の学位取得者数を年度別に表5にまとめましたが、博士課程在学者数から 単純に換算すると3年で学位を取得するのは3、4人に1人という計算になりま すが、実際には4年、5年かけて、中には2年で取っている学生とか、将来を研 究一筋として決めて6年掛けて立派な論文を仕上げる学生、途中ギブアップして 就職する学生もいて、軸がそれぞれ異なるため所要年数は平均値で語る問題では ないようです。 産業界とのタイアップ研究 IPSは企業出身の教員が約7割を占め実学志向であるため、政府資金以外に 企業との共同研究、企業からの委託研究を受ける案件が多くなっています。LS I技術、インターネット関連技術、無線通信技術、遺伝アルゴリズム、画像処理 技術、生産管理、ロボット技術などがあります。また、最近産業界が九州を自動 車工業アイランドとする計画を始めたため、それに呼応して2009年度から自動車 工学コースを新設し関連講義と研究テーマを整備しています。自動車関連プロジェ クトに関わるのは主にポスドクと博士課程学生となります。 表 4 修士卒業生進路 (2008 年度) 表 5 博士学位取得者数 日本人 就職 31 内部進学 3 留学生 日本で就職 82 内部進学 23 帰国 23 2004 年度 10 2005 年度 10 2006 年度 16 2007 年度 19 2008 年度 17 2009 年 6 (12 月まで)
最先端低消費電力コンピュータ(マルチコア・メニーコア)
のハードウェアとソフトウェアの研究開発
∼経済産業省先端イノベーション拠点として本学に
グリーンコンピューティングシステム研究開発センターの建設が決定∼
早稲田大学理工学術院 基幹理工学部情報理工学科 教授 IT研究機構 アドバンストマルチコア研究所所長 IEEE Computer Society 理事笠原 博徳
概 要 本稿では、半導体の集積度向上と共に問題となってい るチップ消費電力の増大に対処するために、世界で注目 されているマルチコア及びメニーコアプロセッサのハー ドウェア、ソフトウェアについて紹介する。マルチコア は、消費電力を抑えつつ処理性能を向上させる新しいプ ロセッサ(コンピュータの頭脳部)の作り方であり、1 チップ上に複数のプロセッサコアを集積する。メニーコアは本質的にはマルチコ アであるが、チップ上に32とか64コアを越えるような多くのプロセッサコアを集 積するものをメニーコアと呼んでいる。本稿では、それらのチップを効果的に動 作させ、さらに電力を下げるコンパイラというソフトウェアの最先端研究につい ても述べる。また、最先端研究に関連して、経済産業省の支援の下、地下鉄東西 線 早稲田駅の横(喜久井町キャンパス早稲田通り入口横)に建設されることが 決まったメニーコアのハードウェア、ソフトウェア、応用のイノベーティブ研究 拠点(グリーンコンピューティングシステム研究開発センター)についても簡単 に紹介する。講 演
1.マルチコア・メニーコアとソフトウェア(コンパイラ)の必要性 複数のプロセッサコアを一つのチップ上に集積したマルチコアプロセッサは、 図1に示すように半導体集積度向上に伴う処理性能の向上、低消費電力化、ハー ドウェア・ソフトウェア開発期間の短縮、価格性能比の向上等のために、組み込 みプロセッサからスパコンまでの幅広いIT機器で使用されており、最近ではよ り多くのプロセッサコアを集積したメニーコアプロセッサが活発に研究開発され ている。 このような流れの背景としては、従来のスーパースカラ、VLIWでは、命令レ ベル並列性(ILP)の限界、クロック周波数の向上に伴う消費電力の増大、冷却 等の問題から今後の性能向上は困難と判断されること、また半導体の微細化加工 技術に伴うリーク電流の増加により、リーク電力も抑える、さらなる消費電力の 削減手法が求められること等が挙げられる。 図1 マルチコアが携帯からスパコンまで利用 また、ソフトウェア並列化技術の面からも、チップ内でループレベル、タスク レベルの、命令レベル並列性よりも大きな並列性を用いることができ、また並列 性の利用により動作周波数を低く抑え消費電力の低減を可能とするマルチコアが 注目を集めている。 今後、マルチコアおよびメニーコアは、携帯電話、ゲーム、デジタルTV、 DVD、カーナビ、情報家電からPC、サーバ、スーパーコンピュータ等を始め、
身の回り至る所に入る、マルチコアeverywhereの時代になることが予想される。 この大市場を伴うマルチコアの時代では、アプリケーションソフト生産性、ハー ドウェア・ソフトウェア開発の短期、高付加価値化、低消費電力化がプロセッサ の市場競争力を決定すると考えられる。すなわち、質の良いアプリケーションソ フトウェアを短期間で開発できるソフトウェア環境 (コンパイラ、チューニング ツール、デバッガ等)を備えた低消費電力マルチコアが市場を獲得していくと考 えられる。 図2 8コアマルチコアRP2の総合科学技術会議でのデモ これを踏まえ本研究室では、2004年度より3年度間でNEDO「リアルタイム情 報家電用マルチコア」プロジェクト、を日立、ルネサス、富士通、東芝、パナソ ニック、NECと産官学連携で、情報家電用標準的マルチコアアーキテクチャの 策定、それに準拠した4コア及び8コアのマルチコアチップの開発、そのチップ を高速かつ低消費電力で動作させるコンパイラ、コンパイラが生成した並列化プ ログラムが各社のチップ上で動作するようにするAPI(アプリケーション・プロ グラム・インターフェィス)の研究開発を行った。特に2007年度に日立・ルネサ スと共に開発したSHプロセッサ8コアを集積したマルチコアRP2は、図2に示 すように環境に優しいIT技術(グリーンIT技術)の代表として総合科学技術会 議で紹介され、当時の福田総理がプログラム実行中にプロセッサに直接触られ、 熱くないことを確かめて下さる等、大変好評であった。
以下では、本学が世界をリードする技術開発に成功したソフトウェア生産性、 実効性能の向上、消費電力の低減を可能とするマルチコア用コンパイラ技術[1、 2]を中心にマルチコア技術について紹介する。 2.マルチコア用コンパイラ技術 従来、マルチプロセッサスーパーコンピュータ用のアプリケーションソフト ウェア開発では、使用するプロセッサ数に応じた並列プログラミング及び性能 チューニングに数ヶ月ときには1年というような長い時間を要してきた。これ は、市場競争力の面から短期間でのソフトウェア開発を要求される組み込み用マ ルチコアでは非常に大きな問題となる。 この問題の解決のため、逐次プログラムから自動的に並列性を抽出し、指定さ れたプロセッサ数用の実行効率の良い並列プログラムを生成することができるマ ルチコア用の自動並列化コンパイラの開発が望まれている。自動並列化コンパイ ラが利用可能になれば、並列プログラミングの経験の無い開発者にもマルチコア の利用が可能となり、並列アプリケーションソフトウェア生産性が飛躍的に向上 すると期待される。 しかし、自動並列化コンパイラは、従来スーパーコンピュータ、サーバ向けに 30年以上の長期間に亘り研究が続けられている難しい技術である。 従来のマルチプロセッササーバでは、プログラム中のループの並列化(ループ 中の各繰り返し(イタレーション)を異なるプロセッサに割り当てる並列化)を 中心に研究開発が行われきた。この、ループ並列化では、並列性解析のための データの定義後使用するフロー依存、データを再定義する出力依存、データの使 用後定義する逆依存、及びメモリアクセス最適化のためのデータの再利用を解析 する入力依存等のデータ依存[1、2]を解析し、データ依存解析により、そのま までは十分な並列性を得られないループに関してはループリストラクチャリング (元プログラムと同じ計算結果をもたらす並列化可能はプログラムへのコンパイ ラによる自動変換)[1、2]を行うことによりプログラムの並列化を行う。 このようなループ自動並列化技術は、長期の開発により成熟期に入っており、 多くの技術がサーバ、PCメーカから販売されているコンパイラに実装されてい る。しかし、アムダールの法則で知られているように、並列化できない逐次ルー
プがあると十分な並列処理性能が得られないという問題点もあり、一般のプログ ラムに対して市販のコンパイラでは、プロセッサ台数に応じた速度向上を得るの は非常に難しいというのが現状である。 このような問題点を軽減する並列化方式として、2000年よりの内閣府ミレニア ムプロジェクトIT21経産省・NEDO「アドバンスト並列化コンパイラ」プロジェ クトにて実用レベルの性能に高められた早稲田大学OSCARコンパイラで採用さ れている粗粒度タスク並列化[1]を中心としたマルチグレイン並列化手法があ る。 マルチグレイン並列化は、従来のループ並列化に加え、より処理単位が大きく 相対的にオーバーヘッド(速度低下の原因となる並列化の際生じてしまう余分な 処理)を低く押させることができる粗粒度タスク並列化と、文単位の並列化を行 う近細粒度並列化という異なる粒度の並列化を効果的に利用することにより、従 来のループ並列化に比べ大きな性能向上を可能としている(図10、11参照。詳細 は性能評価の部分で記述。) 図3 粗粒度タスク間の並列性抽出手法 この粗粒度タスク並列化は、上述のようにオーバーヘッドを低く抑えることが できるが、タスク間の並列性の解析が難しいためOSCARコンパイラ以外のコン パイラではその実現に成功していない。OSCARコンパイラでは、図3に示すよ うな最早実行条件解析という方式の開発に成功し、世界で唯一粗粒度タスク自動
並列化を導入している。この粗粒度タスク並列化では、図3左に示す粗粒度タス ク(グラフの各ノードがループ、サブルーティンあるいは関数、基本ブロックな どの粗粒度タスクを示している)間の制御フロー(点線エッジ)とデータ依存(実 線エッジ)を示すマクロフローグラフにおいて、条件分岐(正確には制御依存 [1])とデータ依存を同時に解析することにより、同図右の並列性を抽出したマ クロタスクラフ(各タスクの最早実行可能条件を表しているグラフ)を生成する。 図4 粗粒度タスク間並列性を表すマクロタスクグラフの例 このマクロタスクグラフの実際の例を図4に示す。このグラフは、コンピュー タ性能計測用プログラム標準であるSPEC CFP95ベンチマーク中のSU2CORとい うプログラムグラム中の最大のループの9重目のネストレベルで見つけられた並 列性を示している。図中の各ノードは粗粒度タスクを表しており、並列処理可能 ループ(Doallループ)、サブルーティン等を表しており、従来のループ並列化で は1つのDoallループを全プロセッサで処理していたのに対し、粗粒度タスク処 理ではDoallループ・サブルーティン等の間の並列性も抽出しており、従来に比 べ非常に大きな並列性を利用でき、メニーコア等より多くのプロセッサを使用す るために有利であることが分ける。 またこのマルチグレイン並列化では、ネストされたループあるいは関数の各ネ ストレベルの階層的な並列性の利用ができる所も大きな特徴となっている。 またマルチコアにおける性能向上のため並列性抽出と同様に重要なのは、メモ
リウォール問題への対処である。単一コアでもマルチコアでも、主メモリ(共有 メモリ)アクセスはプロセッサ動作速度に比べ遅いため、プロセッサ近接の高速 小容量メモリ(ローカルメモリ、キャッシュ、分散共有メモリ)[4]、[5]等を 有効に利用しなければならない。現在の市販のループ並列化コンパイラでは、各 ループの中でキャッシュメモリを有効に利用するためのループブロッキングとい う手法を用いて単一ループ内でのキャッシュ最適化を行っている。しかし、プロ グラム全体の処理時間の最小化という意味では、単一ループ内の局所的最適化で は不十分であり、プログラム全域でキャッシュメモリあるいはローカルメモリを 最適利用する大域的な最適化が必要となる。 このようなプログラム全域に渡るキャッシュメモリおよびローカルメモリを 最適化する方法としてはOSCARコンパイルで開発されたデータローカライゼー ション手法(図5)が知られている。 図5 階層メモリの最適化 データローカライゼーション手法では、マクロタスクグラフ上で示される同じ 配列にアクセスする複数のタスク(例えば図5左側のマクロタスクグラフで網掛 されているループタスク)およびそれらのタスク間でアクセスされる配列集合 を、プロセッサ近接の小容量高速メモリ(キャッシュあるいはローカルメモリ等) のサイズに合うように分割(図5では4分割)し、小容量高速メモリ上のデータ が再利用できるタスクを連続的に同一のプロセッサに割り当てることにより、大
域的なデータローカリティ最適化を可能としている。 また、このローカライゼーションによるプロセッサ近接メモリへのデータの 分割配置、再利用により、プロセッサ間、共有メモリとのデータ転送を最小化 し、残存するデータ転送は、プロセッサによるタスク処理とオーバーラップして、 データ転送コントローラ[4][5](DMAコントローラの高機能版)を用いて行 うことができ、低オーバーヘッドの並列処理が可能となる。図9は、ヘテロジニ アスマルチコア上での実行イメージ図ではあるが、データ転送コントローラを用 いたデータ転送のオーバーラップのイメージがわかる。 さらに消費電量の増大に関しては、マルチコアでは、コンパイラとアーキテク チャの協調により、従来のハードウェアあるいはOSによる電力制御に加え、ア プリケーションプログラム内で、各箇所の並列性に応じたきめ細かな、周波数・ 電圧の低減(DVFSおよびクロックゲーティング)によるダイナミック消費電力 の削減、電源遮断(パワーゲーティング)によるリーク電力の低減も可能とな る[3]。図14はコンパイルによる電力制御のコンセプトを説明しており、最小実 行時間モードでは、タスクグラフ間での同期待ちの部分で、周波数・電圧制御を 行なったり、十分な時間的余裕があれば電源遮断を行い、またマルチメディア処 理やリアルタイム制御のようにデッドラインがある処理においては同期待ちに加 え、デッドラインまでの待ち時間に対して電力制御を行うことを示している。実 際には図4のように複雑なタスクグラフをプロセッサに割り当てていく時に電力 制御を行うので非常に複雑なスケジューリングを行うことが必要となり、自動電 力制御が実現されているのは世界でOSCARコンパイラのみで、この実用性は経 産省・NEDO「リアルタイム情報家電用マルチコア」プロジェクトで開発された 8コアマルチコアRP2[8]上で図15(画像処理の並列化時にコンパイラによる 電力制御により74%の電力削減)のように実証されている。 次に、並列化、メモリ最適化。電力最小化をされた結果を図6に示すように並 列プログラムとして生成する。従来の並列化コンパイラは、すべてのプロセッ サ用に同じプログラムを生成するSPMD(Same Program Multiple Data)方式 を採用していたが、OSCARコンパイラでは階層並列化を含めた複雑な処理を低 オーバーヘッドで行うために、各プロセッサ毎に異なるプログラムを生成する MPMD(Multiple Programs Multiple Data)方式を開発している。また、図7
は、OSCARコンパイラでは、異なる命令セットを持つ異なるメーカのマルチ コアでも並列プログラムが動作するように機械語ではなく、CやFortranのよう な高級言語をOpenMPのような広く用いられているAPI(Application Program Interface)を用いて並列化しプログラムを生成する方式を説明している。 図6 階層的並列化プログラムの生成例 しかし、現在世界で使用されているOpenMPのようなAPIでは、電力制御、 DMAコントローラの制御、分散共有メモリ、ローカルメモリ、オンチップ共有 メモリのようなマルチコアで使用されている各種のメモリ[4][5]、あるいはリ アルタイム制御をサポートできるAPIは存在しない。このため、NEDOリアルタ イム情報家電用マルチコアプロジェクト(2005年7月∼2008年3月)では、組み 込み用マルチコアで必要となる上記機能を加えたOSCAR APIを策定し、 http:// www.kasahara.cs.waseda.ac.jp/ て公開している。このAPIの策定のため、上記 プロジェクトでは、情報家電用マルチコアの標準的メモリアーキテクチャを、情 報家電用マルチコアアキテクチャ・API委員会(参加メンバー:日立、ルネサ ステクノロジ、富士通研究所、東芝、パナソニック、NEC)で決定すると共に、 図7に示すようなマルチコア用OSCAR API(アプリケーション・プログラミン グ・インターフェース)を策定した。このAPIは共有メモリ型並列プログラミン グの標準 API であるOpenMP 互換のスレッド生成・同期・排他制御・変数属性 に加え、以下のコンパイラ指示文を加えたものとなっている[6][10]。
A)メモリ配置指示 (小容量メモリ上での高速実行を可能とする) ローカルメモリ・分散共有メモリ・オンチップ共有メモリへの変数の配置を 指定 B)データ転送指示 (プロセッサ間データ転送オーバーヘッド最小化) 高機能DMAコントローラを利用し、メモリ間のデータ転送やプロセッサ動 作とオーバラップした転送を指示 C)電力制御指示 (低消費電力化) 各プロセッサコアの動作周波数・電圧、電源遮断制御を指示 D)ヘテロジニアスマルチコア指示 (アクセラレータ混載LSI対応) ヘテロマルチコア(図8を含めた種々のヘテロマルチコアアーキテクチャ)に おける汎用プロセッサと専用プロセッサでの処理分担を指示:近日公開予定。 図7 各社のマルチコア上で並列プログラムを動作させるためのOSCAR API また、このOSCAR APIは現在メニーコア対応に向け拡張が進められている。 さ ら に 早 稲 田 大 学 で 開 発 中 のOSCARコ ン パ イ ラ で は 図 7 に 示 す よ う に Fortran、あるいはCプログラム(ParallelizableC:ポインタ利用等に制約有り) [9]を入力すると、自動的にマルチグレイン並列化、メモリ最適化、DMAによ るデータ転送オーバーラップ、消費電力制御を行うCあるいはFortranにコンパ イラ指示文(API)を加えた並列プログラムを生成する。このプログラムは、各 社所有の単一プロセッサ用コンパイラの前に、二十弱のコンパイラ指示文を理解
するAPI解釈系を付加するだけで、各社のマルチコア用バイナリに変換され、並 列実行可能となる。これにより、アプリケーション並列化に要する時間は、人手 による数週間から、コンパイラによる数分程度へと短縮可能となる。また、コン パイラの出力はC+APIのようにプログラマに理解しやすい形であるため、コン パイラ出力をさらにAPIを使いチューンアップすることも可能となる。 図8 OSCAR型ヘテロジニアスマルチコア・アーキテクチャ 例えば、OSCAR APIを用いると、プログラム開発者は、CあるいはFortran 言語中にOSCAR API指示文(プログラム内のコメント文として記述)を挿入す ると、マルチコア。メニーコアなどの各プロセッサコア、あるいはメモリの電力 制御などが簡単に行えるようになる。特にメニーコアでは、各瞬間瞬間で割当て 処理量の少ないプロセッサコアが発生する可能性が高いため、ソフトウェアによ る電力制御は大変重要になると考えられる。 3.並列化コンパイラの性能 次に、マルチコアサーバ上及び組み込みマルチコアプロセッサ上での、自動並 列化コンパイラを用いた並列処理の性能について紹介する。 図10インテルのクアッドコアXeonプロセッサ上でのインテルコンパイラと OSCARコンパイラを用いたSPECベンチマーク14本(横軸にプログラム名称を 示したFortranで記述された科学技術計算)の処理性能を表している。各プログ
ラムに関し、4コアを用いて並列処理を行った際の1コアに対する速度向上率を バーで示している。 左のバーは市販のインテルコンパイラを用いて並列化した時の速度向上を表 し、右のバーはOSCARコンパイラを用いて、OSCAR APIで並列化したFortran プログラムを生成し、それをインテルコンパイラでバイナリコードに翻訳し、実 行したときの性能を示している。 図10から分かるように、OSCARコンパイラを一度通すことにより、14本のプロ グラムの平均実行速度がインテルコンパイラのみの場合と比べ2.1倍速くなる ことが分かる。これから、OSCARコンパイラで使用されている粗粒度タスク並 列化及びキャッシュ最適化が市販PCサーバ上で非常に有効であることが分かる。 図11は、IBM最新ハイエンドサーバであるPower6マルチコアプロセッサベー スp595システム32コア上での並列処理性能を示している。図10と同じ14本のプ ログラムに対し、IBMコンパイラで並列化した時と、OSCARコンパイラにより 並列化したものをIBMコンパイラでバイナリに翻訳して実行したときの性能を比 較している。32コアを用いることにより1コアのみの利用に比べ32倍の速度向上 が理想であるが、実際にはそこまでの速度向上はえることは極めて困難である。 IBMサーバ上でもOSCARコンパイラはIBMコンパイラに対し平均3.3倍の速 度向上を可能としていることが分かる。 図9 ヘテロ拡張されたOSCAR APIを用いたOSCARコンパイラによる並列処理実行のイメージ
図10 インテルクアッドコアXeon上でのOSCARコンパイラの性能 図12は、OSCARコンパイラとOSCAR APIを用いて並列化したCで記述さ れたメディアアプリケーションプログラムの富士通4コア組み込みマルチコア FR1000上での並列処理性能を表している。従来FR1000用の自動並列化コンパイ ラは開発されていないため、OSCAR APIの利用により図7の手順により既存の 1コア用のコンパイラを用いて並列マシンコードを生成した。図に示すように、 MPEG2エンコード、MPEG2デコード、MP3エンコード、JPEG2000エンコード のような各プログラムに対しOSCARコンパイラは効率的は並列化プログラムを 作成し、4コア使用時に平均3.4倍の速度向上を達成している。 図11 IBM32コアSMPハイエンドサーバp6 595上でのOSCARコンパイラの性能
図12 富士通4コアマルチコアFR1000上でのOSCAR APIを用いたOSCARコンパイラの性能 図13 ルネサス・日立・早稲田4コアマルチコアRP1上でのOSCAR APIを用いたOSCARコンパイラの性能 また、異なる命令セットを持つ組み込み用マルチコアでも同様に自動並列化が 可能な様子が図13のグラフで示されている。図13は経産省・NEDO「リアルタイ ム情報家電用マルチコア」プロジェクトで試作されたSH4Aコアを4コア集積し たRP1チップ[7]上での並列処理性能を表している。図12と同じCで記述され た4本のメディアコードの並列化を行った結果、4コア上で平均3.3倍の速度 向上が得られている。この時のコンパイル時間、すなわち並列化に要する時間は 数分程度である。
図14 OSCARコンパイラにおける電力制御のイメージ 図15は、経産省・NEDO「リアルタイム情報家電用マルチコア」プロジェ クトで試作したSH4Aを8コア集積したRP2[8]上でのOSCAR APIを用いた OSCARコンパイラによる自動電力制御の様子を示している。図中左図は電力制 御を行わない通常の並列処理時のMPEG2デコードの消費電力を示しており、平 均5.7Wを消費している。これに対し、OSCARコンパイラで図14のような各コ アの周波数・電圧制御を行ったり電源遮断制御を行うことにより、図中右図のよ うに平均電力を1.5Wと74%程度削減することができる。 図15 世界で初めて実現されたコンパイラによる電力制御
4. メニーコア研究開発拠点として採択されたグリーンコンピューティングシス テム研究開発センター このようなコンパイラとハードウェアが協調してプログラム実行時の消費電力 を削減できるのは、世界において本学OSCARコンパイラだけであり、この独創 的かつ高性能なコンパイラと我が国の組込系技術で培った低消費電力プロセッサ 技術を統合し、付加価値の高い製品を開発することが望まれている。この目的の ため、OSCARコンパイラの最適化能力を活かすことができる次世代マルチコア、 すなわち1チップ上に64コア程度以上のプロセッサコアを集積した低消費電力高 性能メニーコアチップを開発する拠点として、本学にグリーンコンピューティン グシステム研究開発センターが設置されることが決まった。 この建物は7階建てで、3階4階が産官学連携フロア、5階以上が研究室、2 階はサーバー室、会議室等があり、屋上に設置される太陽電池からの電力を用い た低消費電力サーバの動作実験もこのフロアで行う。1階には、当該分野の人材 育成(講義)にも使える200人弱収容のプレゼンテーションルームがあり、各階 に設置されているミーティングルームなども利用し、学部、大学院の産官学連携 により人材育成もできるように配慮されている。 この最先端の研究開発拠点にて産官学の英知を結集し、日本独自の最先端技術、 知財、産業利益の大きな割合を占める情報家電・自動車等、また基礎研究の競争 力を支えるサーバ分野の高付加価値製品化技術を研究開発したいと考えている。 図16 東西線早稲田駅横に建設されるメニーコアプロセッサ研究開発拠点
5.まとめ 本項では、マルチコアとコンパイラの必要性、技術的課題、コンパイラ協調型 マルチコア上での性能評価例、並びにコンパイラを各社のマルチコア上で使用す るためのAPIを紹介した。 従来コンパイラは処理速度の向上のための並列化が主な目標であったが、これ からのマルチコア、メニーコアの時代では電力の削減も非常に重要な仕事とな る。 今後、このようなコンパイラ協調型の低消費電力・高性能国産マルチコア・メ ニーコアが多くの情報家電機器、自動車からスーパーコンピュータまで広く使用 させると考えられる。本学グリーンコンピューティングセンターでは、常に世界 をリードするマルチコア・メニーコアのハードウェア、ソフトウェア、応用技術 を研究開発し、次世代、次々世代の皆さんの安心・安全で、暮らし易い環境の維 持に貢献できればと願っている。 【参考文献】 [1]笠原、並列処理技術、コロナ社、1991 [2] 笠原、“最先端の自動並列化コンパイラ技術”、情報処理学会誌、Vol. 44、 No. 4、pp. 384-392、Apr. 2003 [3] 白子、吉田、押山、和田、中野、鹿野、木村、笠原、“マルチコアプロセッ サにおけるコンパイラ制御低消費電力化手法”、情報処理学会論文誌コン ピューティングシステム、Vol. 47(ACS15)、2006
[4] 笠原博徳 他、“OSCA(Optimally Scheduled Advanced Multiprocessor)の アーキテクチャ ”、電子情報通信学会論文誌、Vol. J71-D、No. 8、Aug. 1988 [5] K. Kimura、et al.、“Multigrain Parallel Processing on Compiler
Cooperative Chip Multiprocessor”、Proc. of INTERACT-9、 Feb. 2005 [6] H. Kasahara、“Compiler and API for Low Power High Performance
Computing on Multicore and Manycore Processors”、UPCRC Seminar hosted by Prof. Josep Torrrellas、Univ. of Illinois at Urbana-Champaign、 Oct.29.2009、(PDF)http://www.kasahara.elec.waseda.ac.jp/achieve/pdf/ 091029UIUC_UPCRC.pdf
[7] Y. Yoshida、 T. Kamei、K. Hayase、S. Shibahara、O. Nishii、 T. Hattori、 A. Hasegawa、M. Takada、N. Irie、K. Uchiyama、T. Odaka、K. Takada、K. Kimura、H. Kasahara、“A 4320MIPS Four-Processor Core SMP/AMP with Individually Managed Clock Frequency for Low Power Consumption”、IEEE ISSCC2007、Feb. 2007
[8] M.Ito、T.Hattori、Y.Yoshida、K.Hayase、T.Hayashi、O. Nishii、Y. Yasu、 A.Hasegawa、M.Takada、M.Ito、H.Mizuno、K.Uchiyama、T.Odaka、 J.Shirako、M.Mase、K. Kimura、H.Kasahara、“An 8640 MIPS SoC with Independent Power-off Control of 8 CPU and 8 RAMS by an Automatic Parallelizing Compiler”、Proc. of IEEE International Solid State Circuits Conference(ISSCC2008)、Feb. 2008
[9] 間瀬、木村、笠原、“マルチコアにおけるParallelizable Cプログラムの 自動並列化”、情報処理学会研究会報告2009-ARC-174-15(SWoPP2009)、 Aug. 2009
[10] OSCAR API仕 様 ダ ウ ン ロ ー ド ペ ー ジ、http://www.kasahara.cs.waseda. ac.jp/
スマートグリッドの光と影
∼低炭素社会実現の切り札となりえるか∼
環境・エネルギー研究科 教授横山 隆一
主催:EWE早稲田電気工学会 協賛:電力技術懇談会 日時・場所:2009年12月22日 63号館202教室 講演会は175名の参加者を得て、種市EWE活性化委員会委員長の挨拶に引き続 き、横山教授の「スマートグリッドの光と影」の講演と質疑応答が行われました。 その後場所を替え懇談会を行い、話もつきませんでしたが21時に解散いたしまし た。 EWE関係者、電力技術懇談会の方々及び学生に感謝いたします。 蠢.種市EWE活性化委員会委員長/電力技術懇談会々長の挨拶(要約) かつてEWEの会長をしていた時 に、何とかEWEを活性化したいと いうことで、色々と仕掛けを考えて おりました。その後の下村会長が活 性化委員会、と言うOBのグループ を立ち上げまして、その委員長をし ております。 それからもう一つ産官学の電力関係の研究開発を活発化しようと言うことで早 稲田に電力技術懇談会を設け活動しております。それが協賛すると言う形で今日 の会合が持たれたわけです。 EWEの活性化という点からもこんなに大勢の方々がお集まりいただいたのは、 大変感激しているところであります。講 演
演題を選ぶにあたりまして、昨今電力関係で一番話題になっているものは何 か、色々考えたのですが、やはりスマートグリッドが適当ではなかろうか。 ただ、是の内容や定義はそれぞれの国や地域によって違っており、進め方や考 え方もそれぞれの国や地域のバックグラウンドがあって、全くそれらは正確では ないのでありますが、環境の問題や資源制約の問題を考えると、やはり、地場に ある様々な能力を結集して何かをなすと言うことが将来の大きな方向として出ま して、その時の有力なツールがスマートグリッドであろうと思うわけであります。 かつては電力関係というか電気事業は自由化という波がありましてそのときは 大体が発電会社の方々が競争関係を作ってコストを下げるということを主眼にし ておりましが、今回のこれはもっと大きないわば第二の自由化ではないが自由化 に等しいものです。 なお本日お話になります横山先生は、この分野に於きまして、第一人者といっ ても過言ではありません。非常に丹念に現在の欧米の状況、或いは日本の持って いる特殊性等々をエネルギー問題から始めとして、説いておられまして、今の状 態、段階でスマートグリッドについての一番纏まった立派なお話が伺えるものと 期待しておるところであります 是非将来にわたってこのスマートグリッドと言う新しい波、それに興味を持っ てご参加いただけますことを希望し、開会のご挨拶に代えたいと思います。 蠡.横山教授の講演 本講演は次のような内容で行われました。 ・低炭素社会実現のためのクリーンエネルギー技術 ・再生可能エネルギー有効活用のための次世代電力供給システム ・次世代電力供給システムとしてのスマートグリッド ・スマートグリッド基幹技術スマートメータとAMI ・スマートグリッドにおける標準化と需要応答 ・日本型スマートグリッドの開発方向と国際技術 1.豊富な資料で分かりやすい解説 横山教授は豊富な資料を駆使して、データに基づき分かりやすく解説された。
資料を例示すると、次の様であ る。世界のエネルギー起源のCO2排 出量、電源別(原子力、石炭火力、 …)発電コストの比較、電源ベスト ミックスによる対応、原子力発電へ の回帰に対する国際動向、低炭素化 実現への切り札、原子力発電の見通 し、太陽光発電、つづいて次世代電 力供給システムとしてのスマートグリッド、米国の事情、スマートグリッドの基 幹技術、電力系統をめぐる日本、米国、欧州の比較 等々。 2.スマートグリッドへの期待 新政権に移行し、ますます低炭素社会の実現が注目されるなか、クリーンエネ ルギー技術開発が緊急な課題となっている。省エネルギー、設備の効率化、原子 力発電、電力貯蔵技術と並んで、再生可能エネルギーが推進される背景のひとつ には、世界的な電気事業に関する規制緩和が挙げられる。すなわち、卸電力市場 への参入規制緩和や小規模発電の技術革新により分散型電源をコアとしたビジネ スモデルが構築されつつあること、また、競争的環境下での流通システムへの設 備投資の減少から懸念されている供給信頼度低下の自衛手段として、近い将来、 分散型電源や電力貯蔵装置を多くの需要家が所有することになると予想されるた めである。分散型電源は、建設期間が短く、需要地に近接して設置が可能であり 送電ネットワークへの負担が軽く、またクリーンで地球規模環境問題にも貢献す ることから、コージェネレーション、マイクロタービンや燃料電池などの新エネ ルギー利用技術、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー技術、SMES 注1 を含めた二次電池等の分散型電源の普及が期待されている。電気料金の低価 格化や多品質な電力供給など需要家の要望がさらに高まることが予想されてい る。このような場合、現在の配電システムでは、電力の制御や保護が非常に難し くなり、適切に対処することができない。従って、将来の電力システム、特に需 要家にもっとも近い配電システムには、さらなる高信頼性・高柔軟性が求められ ている。このようなことから、世界中で様々な新しい電力輸送・電力供給の形態
が検討・実証され始めてきている。 以上、電気事業を取り巻く最近の話題、低炭素社会実現のためのクリーンエネ ルギー技術開発への取り組み、再生可能エネルギーの特徴及び次世代エネルギー ネットワークと期待されているスマートグリッドの利害得失について述べられ た。 3.スマートグリッドの光の部分 以上「2.スマートグリッドへの期待」で述べられているように、スマート グリッドには色々期待が込められており、これらの期待は欧米諸国の抱えている 様々の問題を解決することから端を発している。この期待が実現すれば、非常に 良いこと尽くめで素晴らしい社会になるであろう。 4.スマートグリッドの影の部分 欧米で提案されているスマートグリッドをそのまま日本に適用出来るであろう か。 日本は、そんなに積極的に取り入れる事にならないのではないか。 信頼度は世界一、広域運用・配電系の自動化も進んでいる。 ところがアメリカは、頻発する大停電、この30年間で10数回大停電が有り、過 去10年間で8回発生している。そう言う事でなんとか送電系統を直さなければい けないと言う事情で、しかも近代化が遅れている。設備も老朽化している。 欧州は、スーパーグリッドと言って、アフリカまで連携してループを作ろうと している。スマートグリッド的な考えで再生可能エネルギーが入りすぎて、しか も偏在している。老朽化した設備の問題もある。 5.日本のスマートグリッド アメリカやヨーロッパと比べて日本はスマートグリッドに対する見方は違って くるだろう。 配電の自動化、これは欧米に比べかなり進んでおり、省エネビル等は大分前か らやっています。今更スマートグリッドだからと言ってやることもない。 デマンドレスポンスと言うのはなかなか入れにくいのですが、将来やる必要が
あり、手をつけていないから検証する必要がある。 分散電源、これは今、日本は一寸困っています。この解決のために、何かそう いう制御系を上手く動かせる事が出来るなら、それは可能性がある。 分散電源をどんどん入れて電力系統の補助サービス(アンシュアリーサービ ス)に使おうとしても、不安定電源を電力会社さんはアンシュアリーサービスと して使う事はありません。 日本でスマートグリッドとして残されるものは、困っている再生可能エネル ギーの大量導入とお客様に少しでも節約していただくことに尽きると思います。 日本の場合一番の課題はこれです。 ・ スマートグリッド的な十分な情報を手に入れて、資産管理をし、良い運用 をすることが必要。 ・ シミュレーターの開発。10年ほど前は分散電源系統連係と言うシミュレー ションでしたが、今回は単独系統でうまく運用出来るかのシミュレーター の開発。 ・ 次世代エネルギー、これで各市町村にエコパークを作って子供達が遊びに 行き環境教育をする。 この三つです。この延長上にスマートグリッドが来ればと思います。 日本は良いマイクログリッドを作ってきたのですから、無電化地域とか、環境 途上国に展開していき、その後に、それで商売をしていただきたいと思います。 こう言うものを東南アジアにショーケースとして持って行って、その後展開し て拡張するようなビジネスモデルが出来ればと思います。参入する会社は、今迄 の電力を中心とした供給側産業の電力メーカーさんだけでありません。需要側産 業のハードウエアから、消費者周りの色々なメーカーさんが入っています。メー ターメーカー、家電メーカーもあります。ソフト会社、EMSマネジメントの会 社、IT産業等、産業中心が、供給側産業を中心に動いていたものが、需要側産 業を中心に動きだす事によって、新しいビジネスが生まれたり、産業構造が大き く変わる。そして不況と言われたIT産業が復活してくればと思います。 電力会社は別に、スマートグリッドを作ろうとして商売をしている訳ではな く、スマートグリッドは手段にすぎません。 本当の目的は、電力会社が電力を漓安定供給 滷少しでも安いものを提供 澆環
境改善、この三つを達成する為に行うわけです。 この上にスマートグリッドが入ってきますと、まず双方向通信と言う事で情報 提供が出来る。末端までモニタリングが出来、系統の広域監視・設備の状態監視・ 再生可能エネルギー出力の予測が出来る。色々良い事が有りますが、いくらお 客さんに双方向通信をやってみても、需要家反応、デマンドサイドマネジメント (DSM)、リアルタイム料金、等日本では出来ません。何故かと言うと、50KW以 下は事業化されていません。だからリアルタイム料金と言うのは適用出来ないの です。漓メーターを取り換えなくてはならない 滷お客さんが自由に電力会社を 選べるようになればリアルタイム料金やDSMは出来ますが、これはまだ大分先 の話です。 これをやるには第三の規制緩和が必要です。 問題は、漓省エネビル、日本のビルは非常に努力して省エネしているのでこれ 以上は無理であろう。滷日本では、学生の家までブロードバンドが来ているので、 デジタル社会への移行とアメリカが言っているのは日本ではもうとっくにやって いる。澆品質も世界一である、これ以上金掛けて良くする必要はない。潺自動復 旧なども当たり前である。 残るのは、高効率機器を導入したり、熱の利用をする事である。更にピーク カットをしてもらう。電気自動車が入ってくる。それを支えるためにはピーク カットには貯蔵。もう一寸進みますと、十分に電力の全体の把握。それに設備が 判るのであれば、こう言った物で信頼性を考えながら、補修を行ったり、最終的 にはアセットマネジメントと言う事でRCM注2、RBM注3、EAM注4とかにこう云っ た情報が使えるのではないかと思います。 また、こう言うものが入ってくるのであれば、もう一度配電系を見直す必要が あるのです。日本はいまだに100V配電、これを200Vではなく、400Vにしてはど うか、400Vにすると半分が200V、その半分が100V。それから2万ボルト、それ から直流配電、日本が考えるならばこう言う事ではないか。要するに、アメリカ・ ヨーロッパ型のスマートグリッドがそのまま適用出来るものではなくて、日本の 利益になる様なスマートグリッドを考えると言う事です。
質疑応答 Q1:スマートグリッドに使われる通信制御の新技術について A1: スマートグリッドは既成技術の集合で、新規に発生するとすれば、家庭 周りのエネルギー運用のソフトウエアを開発が考えられる Q2:スマートグリッドに対する早稲田大学の取り組み方について A2: 琉球大学と「再生可能エネルギーの有効活用のためのクラスター拡張型 電力供給ネットワーク」の共同研究と現在研究室ではシミュレーション が終わり、実証段階に入っている 以上 注記: 注1)SMES:スーパーコンダクティング マグネチック エナジー ストラージ 注2)リスク コントロール マトリクス 注3)リスク ベース メンテナンス 注4)エンタープライズ アセット マネジメント 講演録作成:活性化委員会 講演会担当