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次は三段論法の例である.1 6 は妥当な推論であり,7, 8 は不妥当な推論である. [1] すべての犬は哺乳動物である. すべてのチワワは犬である. すべてのチワワは哺乳動物である. [3] いかなる喫煙者も声楽家ではない. ある喫煙者は女性である. ある女性は声楽家ではない. [5] ある学生は

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Academic year: 2021

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三段論法とヴェン図

1. 名辞と A, E, I, O 三段論法(syllogism) は推論の一種であり,そこに含まれる言明の形式は次の四つに分類される. A すべてのF は G である (全称肯定 universal affirmative) E いかなるF も G ではない (全称否定 universal negative) I あるF は G である (特称肯定 particular affirmative) O あるF は G ではない (特称否定 particular negative) * O 形式の言明は「ある F は《G ではないもの》である」すなわち「G ではない F が存在する」という意味であり, 「《あるF は G である》ということはない」の意味ではない. * A, E, I, Oはラテン語の動詞affirmo (肯定する)およびnego (否定する)に含まれる母音字に由来する. 名辞 ここでF, G, Hは名辞(term) を表す.名辞とは,複数の対象に当てはまる(あるいはその可能性が ある)言語表現のことである.名辞の意味論的役割(意味上の役割)は,すべての対象をそれが当てはまる ものと当てはまらないものに二分することである.名辞は文法的には様々なカテゴリー(名詞句,形容詞句, 動詞句)を含む.一般に,名辞は文の述語として現れることができる語句に対応する. 名辞の例 「人間」「イタリア人」「犬」「チワワ」「椅子」「白い」「丸い」「真面目だ」「考える」 「勉強する」「真面目なイタリア人」「白い犬」「イタリア製の椅子」「白くて丸い」「論理学を勉強する」 「論理学を熱心に勉強する」「論理学を勉強するイタリア人」「丸い四角形」等. * ある名辞が当てはまる対象の集まりは,その名辞の外延 (extension) と呼ばれる.例えば名辞「人間」の外延は人間 の集まりである. * 一般名詞と固有名詞 「人」「犬」「椅子」などの名辞は一般名詞(common noun) と呼ばれる.これらの名詞と異 なり,特定の一つの対象を名指す(指示する)意味論的役割を持つ名詞は「固有名詞(proper noun)」と呼ばれる.例: 「夏目漱石」「フランス」「地球」.固有名詞はここで言う名辞ではない. A, E, I, O の例 上の形式に当てはまる言明,およびそれらと同じ論理的意味を持つ言明は A, E, I, O のい ずれかに分類される. A すべてのチワワは犬である(あらゆるチワワは犬である;どんなチワワも犬である;チワワは犬である) E いかなるカラスも青くない(青いカラスは存在しない;カラスは青くない) I ある哲学者はタバコを吸う(タバコを吸う哲学者が存在する) O ある女性はイギリス人ではない(イギリス人ではない女性が存在する) 2. 三段論法 三段論法は三つの言明(二つの前提と一つの結論)から成り,そこに含まれる言明はA, E, I, O のいずれか の形式を持つ.結論に現れる二つの名辞のそれぞれは,一つの前提にのみ現れ,さらに結論に現れない一つ の名辞が二つの前提に共通に現れる.

(2)

次は三段論法の例である.1―6 は妥当な推論であり,7, 8 は不妥当な推論である. [1] すべての犬は哺乳動物である. すべてのチワワは犬である. ∴すべてのチワワは哺乳動物である. [2] いかなる音楽家も論理学者ではない. すべてのピアニストは音楽家である. ∴いかなるピアニストも論理学者ではない. [3] いかなる喫煙者も声楽家ではない. ある喫煙者は女性である. ∴ある女性は声楽家ではない. [4] すべてのピアニストは音楽家である. ある女性はピアニストである. ∴ある女性は音楽家である. [5] ある学生は論理学を勉強しない. すべての学生は人間である. ∴ある人間は論理学を勉強しない. [6] いかなる赤いものもカラスではない. ある鳥はカラスである. ∴ある鳥は赤くない. [7] すべてのスズメは鳥である. いかなるハトもスズメではない. ∴いかなるハトも鳥ではない. [8] ある音楽家はドイツ人である. すべてのピアニストは音楽家である. ∴あるピアニストはドイツ人である. 大名辞,中名辞,小名辞 三段論法には三つの名辞が現れる.このうち結論の述語として現れる名辞は大名 辞 (major term)と呼ばれ,結論の主語として現れる名辞は小名辞 (minor term) と呼ばれる.三つの名辞の うち一つは,二つの前提に共通に現れる(結論には現れない)が,これは中名辞 (middle term) と呼ばれる. 大前提,小前提 大名辞が現れる前提を大前提 (major premise) と呼ばれ,小名辞が現れる前提は小前提 (minor premise) と呼ばれる.大前提を第一の前提とし,小前提を第二の前提とするのが,三段論法の標準的な 提示の仕方である.(ただし論理的には,この順序は逆でも問題ない.) 例えば,上の三段論法[1]において,大名辞は「哺乳動物」,小名辞は「チワワ」,中名辞は「犬」であり, 大前提は第一の前提であり,小前提は第二の前提である.三段論法[4]において,大名辞は「音楽家」,小 名辞は「女性」中名辞は「ピアニスト」である.ここでも大前提と小前提は,それぞれ第一の前提と第二の 前提である. 三段論法の形式 三段論法の形式をF, G, H を用いて表現する場合には,大名辞を H,中名辞を G,小名辞 をF によってそれぞれ表すことにする.この規約によれば,上の三段論法[1]―[8]の形式は次のように表現 される: [1*] すべての G は H である. すべてのF は G である. ∴すべてのF は H である. [2*] いかなる G も H ではない. すべてのF は G である. ∴いかなるF も H ではない. [3*] いかなる G も H ではない. あるG は F である. ∴あるF は H ではない. [4*] すべての G は H である. あるF は G である. ∴あるF は H である. [5*] ある G は H ではない. すべてのG は F である. ∴あるF は H ではない. [6*] いかなる H も G ではない. あるF は G である. ∴あるF は H ではない. [7*] すべての G は H である. いかなるF も G ではない. ∴いかなるF も H ではない. [8*] ある G は H である. すべてのF は G である. ∴あるF は H である.

(3)

3. ヴェン図と A, E, I, O. A, E, I, Oの形式を持った言明は,ヴェン図(Venn diagram) によって表現可能である.ヴェン図の一つの 円は一つの名辞に対応し,その円の内部はその名辞が当てはまる対象の集まり(その名辞の外延)を表す. その円の外部はその名辞が当てはまらない対象の集まりを表す.  A すべての F は G である       E いかなる F も G ではない  I ある F は G である       O ある F は G ではない A, E, I, O の間の否定関係 A に対するヴェン図において打消し線が引かれている部分に,O に対するヴェ ン図では× が記されている.また,E に対するヴェン図において打消し線が引かれている部分に,I に対す るヴェン図では× が記されている.これらのことから,言明形式 A, E, I, O について次の関係が成り立つこ 「すべてのF は G である」ということは「《F であり,かつG でない》ものは存在しない」と いうことである.F の円内でありかつ G の円の外 である領域に打消し線を引くことによって,この ことが表されている. 「いかなるF も G ではない」ということは「《F であり,かつG である》ものは存在しない」と いうことである.F の円と G の円に共通の領域に 打消し線を引くことによって,このことが表され ている. 「あるF は G ではない」ということは「《F で あり,かつG ではない》ものが存在する」とい うことである.F の円の内部であるが G の円の外 部である領域に× を書き入れることによって, このことが表されている. 「あるF は G である」ということは「《F であ り,かつG である》ものが存在する」というこ とである.F の円と Gの円の共通の領域に× を 書き入れることによって,このことが表されてい る. 「あるF は G である」ということは「《F であ り,かつG である》ものが存在する」というこ とである.F の円と Gの円の共通の領域に× を 書き入れることによって,このことが表されてい る.

(4)

4. ヴェン図による三段論法の表現 三つの重なった円を描き,与えられた三段論法に現れる三つの名辞の外延をそれらによって表現する.この とき,その三段論法で問題となっているすべての対象は,名辞F, G, H のそれぞれが当てはまるか否かによっ て,八つの種類に区分される.その区分は次の図によって表される. この図において例えば領域1 は,F, G, H のすべてが当てはまるすべての対象(およびそれらのみ)の集ま りを表す(この領域を「F&G&H 領域」と名づける).また領域 2 は F と G が当てはまるが H が当てはま らないすべての対象(およびそれらのみ)の集まりを表す(この領域を「F&G&−H 領域」と名づける). また,領域1 と領域 2 を合わせた領域(1+2)は F と G の両方が当てはまるすべての対象(およびそれらの み)の集まりを表す(この領域を「F&G 領域」と名づける).F&G 領域は H が当てはまる対象とそれが当 てはまらない対象の両方を含む. 妥当性の判定 三段論法の妥当性をヴェン図によって判定することができる.与えられた三段論法の二つの 前提をヴェン図で表現したとき,そのことによってその結論が既に表現されているなら,その三段論法は妥 当であり,そうでなければ妥当ではない. 注意 三段論法をヴェン図で表現する際には,A 形式または E 形式を持つ前提を先に記入し,その後に O 形式またはI 形式を持つ前提を記入するのがよい. 例 以下は上に挙げた三段論法に対するヴェン図である. [1*]に対するヴェン図 すべてのG は H である. すべてのF は G である. ∴すべてのF は H である. [妥当] 第1 の前提は G&−H 領域の打消し線によって表現 される.第2 の前提は F&−G 領域の打消し線によっ て表現される.このときF&−H 領域に自動的に打 消し線が引かれることになるが,このことによっ て結論がすでに表現されている.したがって二つ の前提が真であることによって,結論が真である ことが保証される. 1: F&G&H 2: F&G&−H 3: −F&G&H 4: F&−G&H 5: −F&G&−H 6: −F&−G&H 7: F&−G&−H 8: −F&−G&−H 1+2: F&G 1+3: G&H 1+4: F&H 4+7: F&−G 2+5: G&−H 3+6: −F&H etc.

(5)

[2*]に対するヴェン図 [3*]に対するヴェン図 [4*]に対するヴェン図 すべてのG は H である. あるF は G である. ∴あるF は H である.  [妥当] 第1 の前提は G&−H 領域の打消し線によって表現 される.次に第2 の前提を表現するために F&G 領 域に× を書き込むが,F&G&−H 領域にはすでに 打消し線が引いてあるから,F&G&H領域に× を 書き込む.この× によって F&G 領域に何らかの 対象が存在すること,すなわち結論が真であるこ とがすでに表現されている. いかなるG も H ではない. すべてのF は G である. ∴いかなるF も H ではない. [妥当] 第1 の前提は G&H 領域の打消し線によって表現 される.第2 の前提は F&−G 領域の打消し線によっ て表現される.これらの領域に打消し線が引かれ ることによって,F&H 領域に自動的に打消し線が 引かれ,結論が表現されることになる. いかなるG も H ではない. あるG は F である. ∴あるF は H ではない.  [妥当] 第1 の前提は G&H の領域の打消し線によって表 現される.第2 の前提は F&G の領域に× を書き 込むことによって表現されるが,F&G&H 領域は すでに打消し線が引かれているので,F&G&−H 領域に× を書き込む.この× によって G&−H 領 域に何らかの対象が存在すること,すなわち結論 の内容がすでに表現されている.

(6)

[7*]に対するヴェン図 [8*]に対するヴェン図 [8*]が妥当でないことは次の図によっても明らかになる. すべてのG は H である. いかなるF も G ではない. ∴いかなるF も H ではない. [不妥当] まず第1 の前提が G&−H 領域の打消し線によって 表現される.次に第2 の前提は F&G 領域の打消し 線によって表現される(F&G&−H 領域はすでに は打消し線が引かれているので,新たにF&G&H 領域のみを打ち消せばよい).このときF&H 領 域の全体は打ち消されていないので,結論は表現 されてはいない.したがってふたつの前提が真で あっても結論が真であることは保証されない. あるG は H である. すべてのF は G である. ∴あるF は H である. [不妥当] 第2 の前提は F&−G 領域を打ち消すことによって 表現される.第1 の前提は G&H 領域に何らかの 対象が存在することを保証するが,それが F&G&H 領域と−F&G&H 領域のどちらに存在す るかは不明である.したがって第1 の前提は,こ れら二つの領域の境界と交わる線分によって表現 される.このときF&H 領域に何らかの対象が存 在することは保証されない.(線分によって表さ れる対象はF&G&−H に存在するかもしれないか らである.) このヴェン図においては,[8*]の二つの前提とそ の結論の否定「いかなるF も H ではない」が表現 されている(F&H 領域が打ち消されている).し たがって,このヴェン図は《[8*]の二つの前提が 真であり,かつ結論が偽である》ことが可能であ ることを示している.

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