FOCUS
vol.1731
January
2013
水戸室内管弦楽団 第 86 回定期演奏会
待望の初共演が実現!
マエストロ大野和士、MCO の指揮台に現る
text :関根哲也 待望の初共演。この言葉がこれほどふ さわしい指揮者とオーケストラの組み合 わせは、そうそうあるものではないで しょう。世界的に活躍する指揮者、大野 和士が、水戸室内管弦楽団(MCO)の 指揮台に立つ日が、ようやくやってきま す。年が明けたら、もうすぐです! ご存知のように、MCO は故吉田秀和 館長の創立理念にもとづき、1990 年に 誕生した水戸芸術館の専属楽団です。そ の創立理念とは、日本が西洋音楽を受容 して 100 年余が経ち、その間日本が行っ てきた音楽教育と実践の成果を、世界に 散らばった優れた音楽家たちを集め、そ の力を集約させた形、つまり室内管弦楽 団を組織することで確かめ、将来の音楽 文化発展の方向を指し示す、というもの です。 日本が世界に送り出した音楽家の代表 的、象徴的存在である小澤征爾音楽顧問 の次の世代の指揮者として、近年、ヨー ロッパ、アメリカのオーケストラや歌劇 場から引っ張りだことなっている大野和 士(1960 年生まれ)は、その創立理念 から、MCO がもっとも招へいすべき指 揮者の一人であったと言えるでしょう。 しかし、方や世界の歌劇場をかけめぐ り、オーケストラ・ピットに長時間こもっ て活動する指揮者。方や世界に散らばっ たソリスト、室内楽奏者たちを水戸に集 め、年に数回の演奏会を行うオーケスト ラ。スケジュールの調整は困難を極めま した。しかし、2013 年 1 月、ようやく 満を持しての初共演が実現します。 世界のマエストロ、大野和士 1987 年トスカニーニ国際指揮者コ ンクール優勝。90 年から 96 年までク ロアチアの名門ザグレブ・フィルハー モニー管弦楽団の音楽監督、96 年から 2002 年までドイツ・カールスルーエ にあるバーデン州立歌劇場の音楽監督、 02 年から 08 年までベルギー・ブリュッ セルのモネ劇場(ベルギー王立歌劇場) の音楽監督を歴任。08 年にはフランス 国立リヨン歌劇場首席指揮者に就任し、 現在に至る――マエストロ大野のプロ フィールを眺めると、ヨーロッパの中核 都市の歴史あるオーケストラや歌劇場の シェフに就任し、一定期間腰を据えて活 動し、大きな成果を上げてから次の場所 に移る、という着実な歩みが見てとれま す。長期的なビジョンを立て、目標に向 かって仲間とともに地道に、懸命に努力 を重ねる大野の姿は、テレビ番組などで も紹介され、大きな感動を呼びました。 また、メトロポリタン歌劇場、バイエ ルン州立歌劇場、フィレンツェ 5 月音 楽祭、グラインドボーン音楽祭、ウィー ン交響楽団、バーミンガム市交響楽団、 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団 など、マエストロ大野は世界一流のオー ケストラや歌劇場、音楽祭からも客演指 揮者として招かれています。その「客演」 という、限られた時間の中で最大限の成 果が求められる仕事にあっても、大野の 堅実な音楽づくりは一貫して成功を収め ています。それは、大野が客演した先々 で喝采を浴び、ほとんどのオーケストラ、 歌劇場から再び招かれていることからも 明らかです。 演奏会本番にいたるプロセスを重ん じ、そのプロセスがあってこその本番を 信じるマエストロ大野の指揮に、時間外 の分奏など、よりよい音楽づくりのため には時間も労力も惜しまないという伝統 をもつ MCO がどのように反応するのか ――初共演に期待は高まるばかりです。 MCO の魅力全開のプログラム プログラムは 3 曲。マエストロ大野は、 MCO を初めて指揮するにあたり、MCO が持つ「3 つの特性」に焦点を絞り、そ の特性を各曲から存分に引き出そうとし ているのではないでしょうか。 まず、「弦の MCO」の魅力を。ドヴォ ルザーク〈弦楽セレナード ホ長調 作品 22〉です。チャイコフスキーの “ 弦セレ ” が、激しい感情表現と華麗さに魅力があ るとすれば、ドヴォルザークの “ 弦セレ ” 1-2.水戸室内管弦楽団 第 86 回定期演奏会 2. 水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン in つくば 3. ちょっとお昼にクラシック 池松宏(コントラバス) 4-5. CONCERT REVIEWS /コンサート前にちょっと言わせて! 6. INFORMATION水戸芸術館音楽紙[ヴィーヴォ]
1.13 1.14
日
月・祝
西村悟 大野和士 水戸室内管弦楽団第 83 回定期演奏会より ©HERBIE Yamaguchi水戸室内管弦楽団
第 86 回定期演奏会1/13
(日) 18:30 開演(18:00 開場)1/14
(月・祝)14:00 開演(13:30 開場) 会場 水戸芸術館 コンサートホール ATM 全席指定 S 席 ¥8,000 A 席 ¥6,500 B 席 ¥5,000 出演 大野和士(指揮) 西村悟(テノール) 曲目 ドヴォルザーク:弦楽セレナード ホ長調 作品 22 ブリテン:ノクターン 作品 60 シューベルト:交響曲 第 6 番 ハ長調 D589 水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン in つくば
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(水)13:30 開始 (13:00 開場) 会場 ノバホール 入場無料(要整理券) 整理券配布場所 水戸芸術館 茨城県立県民文化センター ノバホール 講師 中村静香(ヴァイオリン/ヴィオラ) 四戸世紀(クラリネット) ラデク・バボラーク(ホルン) 猶井正幸(ホルン)/通訳あり は人懐こい温かさと湧き出る自然の生命 力が身上と言えるでしょう。ある MCO メンバーに聞くと、「この曲をそれっぽ く聴かせるのは、実は相当難しい」とい うことです。ちなみに、MCO は 1990 年の第 4 回定期演奏会、2000 年の第 43 回定期演奏会でこの曲を取り上げて おり(いずれも指揮者なし)、今回が 3 回目となります。ほぼ 10 年おきに演奏 してきたこの曲で、MCO 弦楽セクショ ンの響きの洗練とアンサンブルの進化が うかがい知れることでしょう。 2 曲目は、ブリテンの〈ノクターン 作品 60〉。作品についての解説は、篠 田学芸員のコラム(P.5)をご覧いただ くとして、ここでは演奏者のご紹介をさ せていただきます。テノール独唱には、 マエストロ大野が絶大な信頼を置く若 手の西村悟が抜擢されました。西村は、 2011 年の日本音楽コンクールで第 1 位 を獲得し、国内外で活躍の場を広げてい るテノールの新星です。また、この作品 には魅力的な器楽オブリガートがついて いて、各曲で描かれる夜の世界をより印 象深いものにしてくれます。演奏するの は、マーク・ゴールドバーグ(ファゴッ ト/第 2 曲)、吉野直子(ハープ/第 3 曲)、ラデク・バボラーク(ホルン/第 4 曲)、ローランド・アルトマン(ティ ンパニ/第 5 曲)、フィリップ・トーン ドゥル(イングリッシュ・ホルン/第 6 曲)、工藤重典とスコット・アンドリュー ス(フルートとクラリネット/第 7 曲) という錚々たる顔ぶれ。したがって、こ の曲では「ソリスト集団の MCO」とい う一面も存分にご堪能いただけるので す。 最後を締めくくるのは、シューベルト 〈交響曲 第 6 番〉。20 歳のシューベルト が作曲家としての独立を夢見て、公の場 で演奏されることを強く意識して書いた 交響曲です(第 5 番までは主に私的な 集まりの場で演奏されました)。第 3 楽 章の中間部や第 4 楽章には、ベートー ヴェンの〈第 7 交響曲〉の影響が認め られ、2 管編成のオーケストレーション の充実という点でも、それまでの交響曲 から一皮むけた感があります。「世界有 数の室内管弦楽団としての MCO」の実 力が遺憾なく発揮される交響曲と言えま しょう。ちなみに、MCO がこの曲を演 奏するのは今回が初めて。マエストロ大 野と MCO が、楽団創立以来 22 年のレ パートリーに、魅力的な 1 ページを加 えます。どうぞ、ご期待ください。 2014 年 7 月に、茨城県で「第 38 回 全国高等学校総合文化祭」が開催されま す。「文化部のインターハイ」と呼ばれ、 全国から 2 万人もの高校生が参加すると いうこの大きな祭典では、もちろんコン サートも開催され、部活動を通して芸術 文化活動に取り組む高校生たちが日頃の 練習の成果を発表します。晴れの舞台で 最高の実力を発揮すべく、県内の高校生 たちはすでに今から準備に取り掛かって いるそうです。 そんな高校生の皆さんを水戸室内管弦 楽団(MCO)のメンバーたちも応援し ています。10 月には、茨城県、茨城県 教育委員会、いばらき文化振興財団との 共催により、茨城県立県民文化センター で、管弦楽や吹奏楽を学ぶ高校生を対象 にした「水戸室内管弦楽団メンバーによ る公開レッスン in 水戸」を開催しまし た。MCOメンバー3人それぞれの温かく、 分かりやすい指導とハイレベルな模範演 奏はご好評をいただきました。 その公開レッスンの第 2 回「in つく ば」が、1 月 16 日にノバホールで開催 されます。講師は、ヴァイオリンとヴィ オラ両方の分野で幅広い活躍をする中村 静香さん、数々の名指揮者たちとの共演 経験を持つ日本を代表するクラリネット 奏者の四戸世紀さん、指揮者としても活 躍する世界的なホルン奏者のラデク・バ ボラークさん、そして MCO ではバボラー クさんの相棒役であり、小澤征爾音楽塾 などで多くの音楽家を育てているホルン 奏者の猶井正幸さん、という 4 人のメン バーです。その指導を受けるのは、茨城 県県南地域の土浦第一高等学校(弦楽合 奏)、常総学院高等学校(木管三重奏)、 取手松陽高等学校(ホルン四重奏)の 3 校の高校生たち。茨城の高校生のアンサ ンブルの質、さらにそれが MCO メンバー たちのレッスンでどのように変化してい くのか、ぜひご注目ください。FOCUS
水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン in つくば
2 年後の晴れ舞台目指し、ステップ・アップ!
text :篠田大基1.16
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前回の公開レッスンの様子F
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ちょっとお昼にクラシック 池松宏(コントラバス)& 松川儒(ピアノ) ~ヘビ年の初め、Heavy な低音に酔いしれる~1/6
(日)13:30 開演 (13:00 開場) 会場 水戸芸術館 コンサートホール ATM 全席指定 ¥1,500(1ドリンク付き) 曲目 モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K.304 川島素晴:パ gani 蟹 ピアソラ:キーチョ ほか コントラバスのソロの演奏は、あまり 馴染みがないことと思います。コントラ バスというと、まず思い浮かぶのはジャ ズ・ベースでしょうか。ドラムと一緒に リズムを刻み、また和音のベースを担う という、もっともコントラバスが得意と する分野です。タンゴでも同じ様な役目 です。ジャズやタンゴでは、一緒に演奏 するメンバーが少ないこともあり、たま にソロなんかがめぐってきて結構脚光を 浴びます。 が、オーケストラとなると・・・。ま ず、ステージ上で位置する場所が右端の 後ろの方です。メロディーもほとんど弾 かせてもらえません。どの音がコントラ バスの音か、分かる方のほうが少ないで しょう。思いやりのある方は、“ 縁の下の 力持ち ” とおっしゃってくださいますが、 地味な楽器なのです。 しかし!僕はオケの中でのそんなコン トラバスの存在が大好きです。決して表 には出て来ませんが、実は影の実力者で す。何と言っても “ ベース ” というぐらい ですから、音楽の和音の基音を担ってい るのは僕たちです。僕ら無しに西洋音楽 のハーモニーはあり得ません。また、例 えばよく出て来る “ ピチカート ” と言わ れる弦を指で弾く(はじく)奏法ですが、 これは点で音を出すので、音楽を区切っ たり、繫がらせたりする大事な役目です。 このピチカート 1 つのタイミング、音色 で音楽の流れが大きく変わるので、時間 の芸術である音楽にとって、コントラバ スが与える影響は計りしれません。メロ ディーを奏でている楽器の人々は「我ら が王様。コンバスなどの下々の者は付い て来い」な~んて思ってるのでしょうが、 彼らは実は我々の掌の上で踊らされてい ることに気がついてないのです・・・。 僕らも、そんなそぶりは全く見せない大 人ですしね。(シ~~。このことは内密 に!)というわけで、コントラバスの魅 力はやはりアンサンブルにつきる、と思 います。実は僕自身、ソロを弾くよりオ ケで弾く方が 100 倍楽しいです。 僕が何かソロの音楽会に行くとしたら、 コントラバスよりヴァイオリンのコン サートを選びます。コントラバスは、ヴァ イオリンのように音は明瞭でないですし、 音量は小さいですし(図体の割に小心な んです)、何より音色の変化に乏しいです。 僕自身、誰かのコントラバス・ソロの演 奏会に行っても、寝てしまうことが多々 あります(これも内密に!)。また曲がね ~。僕と同じようにあまりコンバスのソ ロに魅力を感じないのでしょう、有名ど ころの偉大な作曲家はまずコンバス・ソ ロの曲を書いておりません。ですから僕 のこの偏屈ぶりも、実はノーマルなんじゃ ないでしょうか・・・。 しかし、「コントラバスのソロが好き」 と言ってくださる有り難いお客様もけっ こういらっしゃるのです(僕には良く分 かりませんが・・・)。まあ、美人ばかり がモテるわけでは無いですし、森進一や サッチモの声が大好きという方も多いで すから、「世の中上手くできてるな」と思 います。 今回はランチタイム・コンサートとい うことですし、初めてコントラバスのソ ロを聴くという方も少なくないと思いま すので、肩が凝らず、また飽きて寝てし まわないようなプログラムを考えました。 まず、モーツァルトの〈ヴァイオリン・ ソナタ K.304〉ですが、言わずとしれた 名曲中の名曲です(実は、つい最近まで 僕は知らなかったのですが・・・笑)。「コ ントラバスでモーツァルト??」という のは僕自身も感じていたことです。でも この曲を聴いてみて、「いけるかも・・・」 と思い、挑戦することとしました。 次は、お正月の定番曲。皆様よくご存 知でしょうから説明はカットさせて頂き ますが、聴きどころは、曲の途中、コン トラバスの特殊奏法で色んな海の音を模 写するところでしょうか。 川島素晴の〈パ gani 蟹〉は誤植ではあ りません。数多の作曲家が何故か偏愛し て変奏曲を書いたその原曲、パガニーニ の〈カプリース第 24 番〉を、現代日本の 作曲家・川島素晴がコントラバス用の変 奏曲に仕上げたものです。パガニーニは、 約 200 年前に超絶技巧の持ち主として知 られたイタリアのヴァイオリニストです。 あまりの凄さに “ 悪魔に魂を売って手に 入れた技巧 ” とも噂されていたそうです。 当然、彼が作った曲も皆超絶技巧で、そ の曲を元に作られた変奏曲も難曲ぞろい です。しかし!言わせて頂きます。川島 さんのこの曲が、間違いなく世界一難し いコントラバス曲です!まあ、どんな曲 かは見てのお楽しみです(聴いて、では ないところがミソです)。しかも、難しい だけでなく、大笑いできるところがこの 曲の魅力? 最後の〈キーチョ〉は、タンゴの革命 児とも言われたアルゼンチンの作曲家ピ アソラが、自らのタンゴ・バンドの初代 ベーシスト、キーチョ・ディアスのため に書いた曲。コンバスの魅力に溢れたカッ コいい曲です。 ソロに否定的なこともたくさん書いて しまいましたが、弾いていて楽しいこと もあります。オケと違って舞台の上に 1 人、または共演者と 2 人ですので、お客 様の反応がダイレクトに伝わってくるの です。ステージと客席との “ 気 ” のやり取 りも感じやすいです。特に水戸芸術館は 素晴らしい音響ですし、水戸室内管弦楽 団を聴きに来てくださるお客様は本当に 心から音楽を楽しんでいるのが伝わって 来るので、演奏者冥利につきます。他で これを感じることができるのは、ウィー ンでだけです。“ 地味 ” なコントラバスの 演奏でも、楽しんで頂けたら幸いです!ちょっとお昼にクラシック 池松宏(コントラバス)
池松宏さんから読者の皆様へ! 寄稿を全文掲載します
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日
text : 池松宏
2012.11.17/
茨城の名手・名歌手たち 第 22 回
2012.11.11
Duo ponte nota リサイタル
11 月の公演から
2012.11.3 ドビュッシーをとりまくピアノ音楽のシリーズ 第 2 回「ドビュッシーとショパン」演奏と解説:児玉桃
パリ在住の国際的ピアニスト、児玉桃さ んをお招きして、ドビュッシー生誕 150 年 という記念の年に開始した本シリーズ。第 2 回は 19 世紀ピアノ音楽の大家ショパンを取 り上げた。プログラムは、ショパン〈24 の 前奏曲〉とドビュッシー〈前奏曲集 第 1 巻〉。 児玉さんは、時折実演を交えながら、バッハ の前奏曲とショパンの前奏曲のスタイルの違 いや、ドビュッシーがショパンから受けた音 楽的影響などについてわかりやすく解説し た。演奏も素晴らしく、下記アンケートをは じめ多くの賛辞が寄せられた。アンコールは、 ドビュッシー〈子どもの領分〉から第 3 曲 〈人形へのセレナード〉、ショパン〈ノクター ン 作品 27 の 2〉。後者は故・吉田秀和館長 に捧げられた。《関根》アンケートから■ド ビュッシーとショパンの関係性の説明と、な かなか知ることのできないお話をきかせても らい、大変興味深く、勉強になりました。演 奏もすばらしく、大変良い公演と思いました。 (日立市:Y.O. さん)■お話の内容が後に続 く演奏によいイマジネーションを与えるもの になっていたと思います。(つくば市:K.M. さ ん)■メルクルさん指揮でのコンチェルトに 非常に感動したので、今日は何が何でも聴き たいと思い、楽しみに聴かせていただきまし た。今年芸術館では 3 回目ですが、どの演奏 会でも常に新しい発見があり、興味をそそり ます。トークもすばらしかった。(ひたちな か市:K.K. さん)■素晴らしい豊かな音色、 絶賛です。すべての曲にブラボー。最後のア ンコール曲は、亡き吉田秀和先生を思い出し、 これまでの音楽とのつながりや人との出会い に感謝し、涙しました。(無記名の方) 2002 年に水戸芸術館で初リサイタルを開 いたヴァイオリンの加藤直子さんと、水戸第 三高等学校で教鞭をとるピアノの片田道子さ んによるユニット Duo ponte nota(デュオ・ ポンテ・ノータ)。幼なじみのお二人は、昨 年度、現代美術ギャラリーのギャラリー・コ ンサートにもご出演くださいました。今回は コンサートホール ATM でのデュオ・リサイ タル。H. エックレスの〈ソナタ ト短調〉に 始まり、シューベルト、シューマン、グリーグ、 茨城の優れた若手音楽家を紹介している 「茨城の名手・名歌手たち」。第 22 回の今年は、 管楽器、打楽器、声楽部門でオーディション を通過した 10 名の精鋭が登場。「若い人の 演奏には、これから育とうとする “ 芽 ” をみ るという意味で、大家の演奏では味わえない 面白さがある」とお話しくださった司会の三 善清達さん(オーディション審査委員長)の 言葉通り、将来性のある才能を感じさせる演 奏が繰り広げられた。まずはマリンバ・助川 敬一さんのエネルギッシュな演奏からスター ト。続く前半は、クラリネットの箱﨑由衣さ ん、ホルンの小田部友香さん、トランペット の笹澤春香さん、クラリネットの森島菊乃さ んのソロ。それぞれ表現力豊かなレベルの高 いパフォーマンスで会場を沸かせた。後半は、 長美奈子さん、橋本真姫子さん、宍戸茉莉衣 さん、森田妃加允さん、中島愛恵さんらソプ ラノ歌手のソロ。イタリア・オペラの名アリ アなどが歌われ、ドラマティックな場面を表 情豊かに歌う出演者たちの華やかなステージ に、大きな拍手が贈られた。《高巣》アンケー トから■器楽のソロは聴く機会がないので、 聴けてよかったです。伴奏のピアノもすばら しく、あの方たちのソロも聴きたいと思いま した。声楽は、すばらしい歌声と声量に圧倒 されました。茨城の音楽界をひっぱっていく 方々の音楽が聴けて楽しかったです。(鉾田 市の方)■出演者の皆様の美しいステージ姿、 豊かな声と音、これからが楽しみと思いなが ストラヴィンスキーへと時代を下ってゆくプ ログラムで、ヴァイオリンとピアノとの親密 なアンサンブルを聴かせてくれました。ホー ルの中で美しく溶け合う 2 つの楽器の音色 は、お互いをよく知るお二人ならではの響き でした。アンコールはヴァイオリンの名手ハ イフェッツの編曲による 2 作品。シューベル ト〈アヴェ・マリア〉とガーシュウィン〈サマー タイム〉。《篠田》アンケートから■様々な時 代の作曲家の曲が聴けてよかったです。演奏 も暖かく、優しいものだったので、とても癒 されました。(ひたちなか市の方)■ 10 年前 の直子さんの水戸芸術館でのコンサートが昨 日のことのように思い出されます。10 年が たち、演奏に深みと風格が増し、これからが ますます楽しみです。片田さんとの息の合っ た演奏は観客に安心感と心地良さを与え、と ても素敵でした。(ひたちなか市:S.S. さん) 2 3 4 5 6 1CONCERT
REVIEWS
2012.11.24/