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「限定正社員制度」は安定的雇用拡大の決め手となりうるか

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Academic year: 2021

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(1)限定正社員とは 最近、「限定正社員」という言葉を目にする 機会が多くなった。限定正社員とは、従来の正 社員と非正規労働者の間の、中間的な雇用形態 として位置づけられるものであり、「多様な正 社員」「ジョブ型正社員」などと呼ばれること もある。 そもそも「正社員」と「非正規労働者」の定 義は法律上でも明確化されているわけではな い。一般にはこれらの違いは原則として「雇用 契約上の雇用期間の定めの有無」のみである。 実際、正社員は、「①担当する職務(職種)が 変わる可能性、②所定労働時間を超えて働く(残 業を行う)可能性、③勤務地が変わる(転勤す る)可能性」を持つ雇用形態であると広く認識 されている。 正社員と非正規労働者の中間的雇用形態であ る限定正社員とは、「雇用契約上の雇用期間に 定めがなく、『①職種、②労働時間、③勤務地』

1. 注目を集める限定正社員

などのいずれかあるいは複数に限定がある正社 員」と定義することができる。 (2)なぜ、限定正社員が注目されるのか わが国において少子高齢化の進展に伴い労働 力人口の減少が見込まれるなか、持続的な経済 成長や社会保障制度の維持、調和と活力ある社 会の形成のためには雇用面からの下支えが必要 であることは論をまたない。いいかえれば「あ らゆる人材が『自身にとってのディーセント ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)』を 実現させながら労働市場に参加できるような社 会・仕組みの構築」が急務であり、個別企業に おいてもこれに資する制度・仕組みを整備する ことで、定着率向上や企業経営の安定化を図る ことが不可欠となっているのである。 一方で、2012年労働力調査によると、雇用 者(役員を除く)に占めるパートやアルバイト など非正規労働者の割合は35.2%であり、比 較可能な2002年以降では最高の水準を記録し た。非正規労働者の中には、ライフスタイルに 最近注目されている「限定正社員制度」は、労働者・企業の双方にとって有益な、これからの 日本にふさわしい働き方を実現させる可能性がある。すなわち、労働者にとっては「正社員とし ての安定的雇用である上に、育児や介護をはじめとする個人的な事情への配慮が相応になされる」 制度であり、企業にとっては「スキルが蓄積された人材を、安定的かつ正社員比9割弱程度の給 与水準で活用できる」制度であるといえる。本稿では、正社員希望をもつ非正社員の働き方ニー ズと企業における制度運用実態の観点から「限定正社員制度」を概観した(1)

「限定正社員制度」は安定的雇用拡大の決め手となりうるか

-正社員希望をもつ非正社員の働き方ニーズと企業における制度運用実態の観点から-

社会政策コンサルティング部 コンサルタント 

小曽根 由実

社会動向レポート

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合わせて非正規雇用という働き方を自ら選択す る者もいるが、就職氷河期世代や、育児や介護 をはじめとする様々な事情を持つ者などを中心 として「本当は正社員になりたいが、なれない」 とする者、すなわち「不本意非正規労働者」も 少なくない。2013年労働力調査では、その数 が342万人にのぼり、全非正規労働者の2割弱 を占めていることが確認されている。 上記のような背景から「①担当する職務(職種) が変わらない、②フルタイム勤務ではないなど労 働時間が限られている、③転居を伴わない事業 所に異動するか、事業所間異動がまったくない」 のいずれかあるいは複数に当てはまる、柔軟性 を持ち、かつ雇用期間に定めがない安定的な働 き方としての限定正社員が注目されている。 翻って、平成25年4月1日より改正労働契 約法が施行され、有期労働契約が繰り返し更新 されて通算5年を超える労働者がいる場合、そ の労働者からの申し込みがあれば、企業はその 労働者を期間の定めのない雇用(=無期労働契 約)に転換しなければならないという「無期転 換ルール」が導入された。無期転換ルールは、 雇用の安定をもたらす働き方を可能にする一 方、無期転換後の労働条件は、特段の定めがな い限り従前の有期労働契約における労働条件と 同一とすることを妨げない。ゆえに、企業は有 期労働契約者の無期転換後も、引き続き有期労 働契約時の「①担当する職務(職種)が変わら ない、②フルタイム勤務ではないなど労働時間 が限られている、③転居を伴わない事業所に異 動するか、事業所間異動がまったくない」といっ た働き方で雇用する可能性が見込まれている。 また、政府が2013年6月に発表した「日本 再興戦略」では、「個人が、それぞれのライフ スタイルや希望に応じて、社会での活躍の場を 見出せるよう、柔軟で多様な働き方が可能とな る制度見直し等を進める」と謳われており、「『多 元的で安心できる働き方』の導入促進」策の一 つとして「職務等に着目した『多様な正社員』 モデルの普及・促進を図るため、成功事例の収 集、周知・啓発」を行う旨が記述されているこ とも、限定正社員が注目される理由のひとつで ある。 そもそも非正規労働者(以下、「非正社員」と 表記)は、働き方に関していかなるニーズを持っ ているのだろうか。また、企業はそうしたニー ズを満たしうる仕組みを整備できているのか、

2. 本稿における問題意識

(資料)各種資料により筆者作成 雇用区分 非正社員 正社員 なし あり いずれかあるいは複数に限定あり いわゆる 正社員 限定 正社員 雇用期間の 定め 労 働 条 件 職種 労働時間 勤務地 限定なし ※勤務地が変わる(転勤する)  可能性あり 限定なし ※所定労働時間を越えて働く  (残業を行う)可能性あり 限定なし ※担当する職務(職種が)  変わる可能性あり 実質的にいずれにも限定あり 図表1 本稿における直接雇用の区分とその概要

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あるいは今後整備する意向はあるのだろうか。 本稿では、「平成23年度『多様な形態による 正社員』に関するアンケート調査(2)」(みずほ 情報総研(厚生労働省委託事業))の企業調査・ 従業員調査の再分析を通じ、非正社員の働き方 に対するニーズを満たす仕組みとして限定正社 員の可能性を見据えながら、上記の点を明らか にする。同時に、限定正社員の処遇水準につい て、職種・労働時間・勤務地などに限定がない 正社員(以下、「いわゆる正社員」と表記)と 比較して考察する(図表1)。 本稿では、非正社員を「雇用期間に定めがあ り、企業に直接雇用されている者」と定義する。 その上で、働き方の観点から「a.仕事内容」「b.週 当たり所定内労働時間」の2つの要素、就業意 識の観点から「c.正社員希望」「d.今の働き方 に対する満足度」の2つの要素、計4つの要素 に着目してタイプ分けし、「今の働き方(3)を選 んだ理由」「今の働き方のメリット」「今の働き 方のデメリット」を把握することで、非正社員 の働き方に対するニーズを概観する。 具体的なタイプは以下の通りであり、各タ イプごとに上位 3 位の項目について図表2に 示した。 a.仕事内容(4):2タイプ(基幹的非正社員、 非基幹的非正社員) b.週当たり所定内労働時間:3タイプ(35 時間未満、35 ~ 40時間未満、40時間以上) c.正社員希望(5):2タイプ(正社員希望あり、 正社員希望なし) d.今の働き方に対する満足度(6):2タイプ(満 足、不満足)

3. 非正社員の働き方に対するニーズ

(1)今の働き方を選んだ理由 9つすべてのタイプにおいて、上位3項目の なかに「雇用が安定しているから」が挙がって いる。その他、「労働日数・労働時間が短いから」 「遠方への転勤の心配がないから」を理由とし て挙げているタイプが多い。一方で、上位3項 目に「他になかったから」が含まれているタイ プも6つ(基幹的非正社員・非基幹的正社員・ 35~ 40時間未満・40時間以上・正社員希望 あり・今の働き方に不満足)みられており、と くに「今の働き方に不満足」では半数以上がこ れを理由に挙げている。 また、「正社員希望あり」の上位3項目は、「他 になかったから」「雇用が安定しているから」「遠 方への転勤の心配がないから」である。 なお、ここで「雇用が安定しているから」が 上位となる背景には、本稿における調査対象に 派遣社員が含まれないこと、また、現在の勤務 先における勤続年数が3年を超える者が回答者 の6割に上り、平均勤続年数では5年を超える こと、等が考えられる(後述の「今の働き方の メリット」でも同様)。 (2)今の働き方のメリット 9つすべてのタイプにおいて、上位3項目の なかに「雇用が安定していること」が挙がって いる。残り2項目は、35時間未満を除く8タ イプで「労働日数・労働時間が短いこと」「遠 方への転勤がないこと」「仕事範囲が限定して いること」のうちから2つとなっている。 また、「正社員希望あり」の上位3項目は、「雇 用が安定していること」「遠方への転勤の心配 がないこと」「労働時間・日数が短いこと」である。 (3)今の働き方のデメリット 9つすべてのタイプにおいて、上位3項目が 「給与が低いこと」「昇進・昇格の見通しがもて

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(注1)「今の働き方を選んだ理由」の選択肢には、以下の 11 項目を設けた。給与がよい、昇進・昇格の見通しがもてる、 十分な教育訓練が受けられる、雇用が安定している、遠方(転居を伴う)への転勤の心配がない、担当する仕事 の範囲が限定されている、労働日数・労働時間が短い、自分の可能性を幅広く試せる機会が与えられる、責任あ る仕事を任せられる、仕事と育児や介護の両立ができる、他になかったから。 (注2)「今の働き方のメリット」では上記「理由」の選択肢のうち「他になかったから」を除く 10 項目、「今の働き方 のデメリット」では「メリット」の裏返し(たとえば、給与が低い、昇進・昇格の見通しがもてない)の 10 項 目を設けた。 (資料)みずほ情報総研「平成 23年度『多様な形態による正社員』に関するアンケート調査(厚生労働省委託事業)」(2012年)のデータを筆者再集計 【今の働き方のデメリット】 n 1712 1002 926 922 989 1369 1069 1258 857 1位 給与が低いこと 57.4% 昇進・昇格の見通しがもてないこと38.7% 雇用が安定していないこと29.2% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 39.4% 雇用が安定していないこと28.8% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 34.8% 雇用が安定していないこと26.8% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 40.7% 雇用が安定していないこと31.6% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 39.8% 雇用が安定していないこと29.2% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 47.2% 雇用が安定していないこと36.7% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 28.1% 雇用が安定していないこと18.6% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 29.7% 雇用が安定していないこと21.9% 昇進・昇格の見通しがもてないこと 50.9% 雇用が安定していないこと39.4% 給与が低いこと 56.8% 給与が低いこと 54.8% 給与が低いこと 57.9% 給与が低いこと 57.6% 給与が低いこと 62.5% 給与が低いこと 50.9% 給与が低いこと 41.8% 給与が低いこと 74.4% 2位 3位 a. 仕事内容 b. 週当たり所定内 労働時間 c. 正社員希望 d. 今の働き方に 対する満足度 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 希望あり 希望なし 満足 不満足 【今の働き方のメリット】 n 1712 1002 926 922 989 1369 1069 1258 857 1位 2位 3位 a. 仕事内容 b. 週当たり所定内 労働時間 c. 正社員希望 d. 今の働き方に 対する満足度 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 希望あり 希望なし 満足 不満足 【今の働き方を選んだ理由】 n 1712 1002 926 922 989 1369 1069 1258 857 1位 2位 3位 a. 仕事内容 b. 週当たり所定内 労働時間 c. 正社員希望 d. 今の働き方に 対する満足度 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 希望あり 希望なし 満足 不満足 雇用が安定しているから 31.4% 他になかったから29.3% 労働日数・労働時間が短いから20.4% 雇用が安定しているから 29.0% 他になかったから26.9% 仕事と育児や介護の両立ができるから 32.5% 雇用が安定しているから23.1% 他になかったから 30.4% 遠方への転勤の心配がないから23.1% 雇用が安定しているから 32.2% 遠方への転勤の心配がないから18.9% 雇用が安定しているから 31.2% 遠方への転勤の心配がないから19.3% 雇用が安定しているから 30.8% 仕事範囲が限定されているから24.4% 労働日数・労働時間が短いから 32.4% 仕事と育児や介護の両立ができるから23.7% 雇用が安定しているから 19.3% 遠方への転勤の心配がないから15.5% 労働日数・労働時間が短いから 33.0% 労働日数・労働時間が短いから 53.5% 雇用が安定しているから 34.3% 他になかったから 36.7% 他になかったから 34.6% 労働日数・労働時間が短いから 39.9% 雇用が安定しているから 38.6% 他になかったから 51.7% 雇用が安定していること 34.2% 遠方への転勤の心配がないこと26.3% 労働日数・労働時間が短いこと24.4% 雇用が安定していること 31.9% 遠方への転勤の心配がないこと26.5% 仕事と育児や介護の両立ができること 31.7% 雇用が安定していること26.0% 遠方への転勤の心配がないこと 30.7% 仕事範囲が限定されていること21.3% 遠方への転勤の心配がないこと 28.4% 仕事範囲が限定されていること20.7% 遠方への転勤の心配がないこと 28.2% 労働日数・労働時間が短いこと19.7% 雇用が安定していること 34.2% 仕事範囲が限定されていること28.1% 労働日数・労働時間が短いこと 33.5% 遠方への転勤の心配がないこと24.2% 労働日数・労働時間が短いこと 22.4% 雇用が安定していること21.8% 労働日数・労働時間が短いこと 36.2% 労働日数・労働時間が短いこと 55.9% 雇用が安定していること 34.6% 雇用が安定していること 37.0% 雇用が安定していること 33.6% 労働日数・労働時間が短いこと 42.2% 雇用が安定していること 40.6% 遠方への転勤の心配がないこと 29.1% 図表2 非正社員の「今の働き方を選んだ理由」「今の働き方のメリット」「今の働き方のデメリット」

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ないこと」「雇用が安定していないこと」となっ ている。 (4)限定正社員は、非正社員のニーズを反映し た働き方 上記からは、非正社員はそのタイプに関わら ず、まずは「雇用の安定」を強く求めているこ とを指摘できる。 「雇用の安定」以外で重視しているポイント について、仕事内容の観点からみると、「基幹 的非正社員」「非基幹的非正社員」ともに「労 働日数・時間が短く、遠方への転勤の心配がな いこと」を挙げることができる。また、週当た り所定内労働時間の観点からみると、「35時間 未満」では「労働日数・時間が短く、仕事と育 児や介護の両立が可能であること」、「35 ~ 40 時間未満非正社員」「40時間以上非正社員」で は「遠方への転勤の心配がないこと」であるこ とがわかる。後者2タイプでは「担当する仕事 範囲が限定されていること」をメリットと考え る者が2割以上いる点も注目されよう。 他の観点から特徴的な傾向をみると、「正社 員希望あり」の3割以上と「今の働き方に不満 足」の5割以上で「その他の働き方がなかった」 ために今の働き方を選択しているという消極 的選択を強いられている実態が認められる(7) ただ、両タイプとも今の働き方に「遠方への転 勤の心配がないこと」や「労働日数・時間が短 いこと」に相応のメリットを見出している。ま た、すべてのタイプの非正社員が共通して感じ るデメリットとしては「給与が低いこと」「昇進・ 昇格の見通しがないこと」「雇用が安定してい ないこと」が挙げられている。 これらを総合して考えると、「限定正社員と しての働き方、すなわち職種・労働時間・勤務 地のいずれかあるいは複数に限定があり、かつ 雇用の安定している働き方は、(現在の仕事内 容、週当たり所定内労働時間、正社員希望の有 無等に関わらず)非正社員のニーズを反映した 働き方の選択肢として、相応の有効性がある」 といえるだろう。 前述のように、非正社員のニーズを満たしう る雇用形態として限定正社員、すなわち、職種・ 労働時間・勤務地のいずれかあるいは複数に限 定がある正社員を挙げることができる。しかし ながら、一方、同時に行った企業側へのアン ケート調査によると、職種限定正社員区分を導 入している企業は44.2%、時間限定正社員区 分は7.3%、勤務地限定正社員区分は19.2%に 過ぎず、現状では企業が非正社員のニーズを満 たしうる限定正社員としての働き方を十分に提 供している状況にはないといえる。 なお、限定正社員にはいわゆる正社員と比較 して人事管理面での扱い、たとえば担当職務の 範囲や、労働時間、勤務地等に制約があるため、 企業は両者に処遇水準の差異を設けていること が少なくない。それでは、非正社員は限定正社員 として働く場合に、どの程度の処遇水準であれば これを許容できるのか。本稿では、非正社員が現 在、勤務している企業における限定正社員区分 の保有有無にも着目しながら分析を行った。 (1)データの分析方法 分析するに当たっては、まず「調査に回答し た非正社員全体」を対象にした。次に、「職種 限定正社員区分を保有している企業に勤務する 非正社員」「職種限定正社員区分を保有しない 企業に勤務する非正社員」に分類し、そこに差 異があるかどうかを確認した。非正社員自身が 勤務する企業に限定区分があるかどうかについ ては、企業調査と従業員調査のリンクが可能で

4. 限定正社員希望と許容できる処遇水準

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③教育訓練の機会(8) 限定正社員を希望する非正社員全体において 「限定なし正社員と比べ、制限される」を許容 できる比率は、勤務地限定正社員で27.7%であ る(図表4)。 ④雇用保障(9) 限定正社員を希望する非正社員全体において 「限定なし正社員と比べ、雇用保障の程度が弱い」 を許容できる比率をみると、職種限定正社員で は30.9%、勤務地限定正社員では27.1%である (図表4)。 (3)自身が許容できる処遇水準の下での限定 正社員希望 自身が許容できる処遇水準(10)の下での限定 正社員希望比率(当該限定区分での正社員にな ることを希望する比率)を示したものが図表5 である。非正社員全体での同比率は、職種・労 働時間・勤務地のいずれの限定区分においても いわゆる正社員希望比率(47.1%)(11)を上回り、 5割台前半である。また、自身の勤務先企業に おける当該限定区分の有無に関わらず、限定正 社員希望比率の差異はみられない。 これらは、限定正社員という雇用形態が非正 社員の働き方に対するニーズに対応しうるもの であり、また、限定区分が職種・労働時間・勤 務地のいずれであっても、同じ程度に非正社員 から支持されていることを表している。 (4)非正社員は給与よりも「正社員としての 雇用の安定」を希望 上記から、たとえ限定なし正社員と比べて低 い処遇水準であっても、限定正社員を希望する 非正社員が少なくないという傾向が強いことが 明らかになった。「3(4)限定正社員は、非正 社員のニーズを反映した働き方」にて示したよ あった回答者のみを抽出している。同様の分析 方法を、労働時間限定正社員や勤務地限定正社 員についても適用している。 (2)許容できる処遇水準 職種・労働時間・勤務地などのいずれにも限 定がないいわゆる正社員は、企業側の裁量で職 種転換や転居を伴う勤務地の変更を命じられる ことがあり、また、所定外労働が発生すること もある。一方で、限定正社員を労働者側からみ ると、職種・労働時間・勤務地のいずれかある いは複数を制限することを企業側に約束させた 働き方ともいえるため、労働者側もいわゆる正 社員と比較して処遇水準が下がることを容認し ているケースも少なくない。 図表 3・4 は、時間当たり給与、昇進・昇格、 教育訓練の機会、雇用保障の観点から、職種・ 労働時間・勤務地のいずれかの限定正社員と して働くことを希望する非正社員が「限定が ある正社員として働くと仮定した場合」に、 「(そ・の・限定がない)限定なし正社員」と比較 して、どの程度の処遇水準差を許容できるか を示している。 ①時間当たり給与水準 限定なし正社員の時間当たり給与水準を100 とした場合の許容水準を表したものが図表3の 【非正社員】欄である。これによると、限定正 社員希望者は、いずれの限定区分においても、 また、勤務先に当該限定区分があるかどうかに 関わらず、許容できる処遇水準は90弱程度で あることがわかる。 ②昇進・昇格 限定正社員を希望する非正社員全体におい て「限定なし正社員と比べ、上限が低い」を許 容できる比率は、職種限定正社員では59.7%、 労働時間限定正社員では59.5%、勤務地限定 正社員では53.3%である(図表4)。

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格についても、各限定正社員希望者全体の5~ 6割が、限定なし正社員と比べて、上限が低く ても許容できるとしているが、この一方で教育 訓練の機会と雇用保障は、各限定正社員希望者 全体の7割弱が限定なし正社員と同様の水準を 望んでいる点には留意が必要である。

5.企業における限定正社員区分の

導入状況および処遇水準

(資料)みずほ情報総研「平成 23年度『多様な形態による正社員』に関するアンケート調査(厚生労働省委託事業)」(2012年)のデータを筆者再集計 (*同水準=100、1割低い=90、2割低い=80、   3割以上低い=70として加重平均にて給与水準を算出) 非正社員全体 うち、職種限定あり企業に勤務する非正社員 うち、職種限定なし企業に勤務する非正社員 うち、労働時間限定あり企業に勤務する非正社員 うち、労働時間限定なし企業に勤務する非正社員 うち、勤務地限定あり企業に勤務する非正社員 うち、勤務地限定なし企業に勤務する非正社員 非正社員全体 非正社員全体 【非正社員】 【企業】 n 給与水準 n 給与水準 当該限定区分あり企業 における実態の水準 当該限定区分なし企業における 導入した場合の想定水準 職種限定 正社員希望者 n 給与水準 労働時間限定 正社員希望者 勤務地限定 正社員希望者 1473 334 471 1424 47 712 1444 129 683 87.68 89.28 90.28 88.10 89.36 89.86 87.76 88.22 90.09 682 106 290 88.09 88.77 87.72 105 546 410 87.71 88.30 90.83 図表 3 限定正社員として働くと仮定した場合に許容できる時間あたり給与水準 (資料)みずほ情報総研「平成 23年度『多様な形態による正社員』に関するアンケート調査(厚生労働省委託事業)」(2012年)のデータを筆者再集計 職種限定 正社員希望者 職種限定 正社員希望者 労働時間限定 正社員希望者 勤務地限定 正社員希望者 勤務地限定 正社員希望者 勤務地限定 正社員希望者 非正社員全体 うち、職種限定あり企業に勤務する非正社員 うち、職種限定なし企業に勤務する非正社員 非正社員全体 うち、労働時間限定あり企業に勤務する非正社員 うち、労働時間限定なし企業に勤務する非正社員 非正社員全体 うち、勤務地限定あり企業に勤務する非正社員 うち、勤務地限定なし企業に勤務する非正社員 非正社員全体 うち、勤務地限定あり企業に勤務する非正社員 うち、勤務地限定なし企業に勤務する非正社員 非正社員全体 うち、職種限定あり企業に勤務する非正社員 うち、職種限定なし企業に勤務する非正社員 非正社員全体 うち、勤務地限定あり企業に勤務する非正社員 うち、勤務地限定なし企業に勤務する非正社員 【昇進・昇格】 n 【教育訓練の機会】 【雇用保障】 同様 上限が低い その他 不明 n 同様の水準 制限される その他 不明 n 同様の扱い 程度が弱い その他 不明 1546 343 489 1501 50 743 1541 134 712 33.9% 33.8% 41.3% 34.1% 34.0% 38.5% 38.7% 48.5% 46.1% 59.7% 61.8% 54.6% 59.5% 62.0% 56.7% 53.3% 46.3% 49.2% 5.8% 4.1% 2.5% 5.3% 2.0% 3.2% 6.9% 3.0% 3.1% 0.6% 0.3% 1.6% 1.1% 2.0% 1.6% 1.1% 2.2% 1.7% 1541 134 712 66.5% 77.6% 75.6% 27.7% 17.2% 20.5% 4.6% 3.7% 1.8% 1.2% 1.5% 2.1% 1546 343 489 1541 134 712 66.2% 76.1% 81.2% 68.3% 80.6% 79.1% 30.9% 22.2% 16.6% 27.1% 17.2% 17.3% 2.5% 1.5% 1.2% 3.2% 0.7% 1.4% 0.5% 0.3% 1.0% 1.4% 1.5% 2.2% 図表 4 限定正社員として働くと仮定した場合に許容できる昇進・昇格、教育訓練の機会、雇用保障の水準 うに、非正社員が考える今の働き方に対するデ メリット第1位には「給与が低いこと」が挙げ られているにも関わらず、各限定正社員希望者 の6割以上が、時間当たり給与水準が限定なし 正社員と比べて低いことを許容し、さらにはそ の水準を90弱程度と考えている点は、非正社 員が「給与より『正社員としての雇用の安定』」 を求めていることを表しているといえる。 なお、時間当たり給与水準と同様、昇進・昇

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ここでは、企業が非正社員の働き方に対す るニーズを満たしうる仕組みとしての限定正 社員区分をどの程度整備しているのか、ある いは、今後整備する意向があるのかについて 明らかにする。 (1)限定正社員区分の導入状況 調査対象企業のうち、いずれかの限定正社員 区分を保有する企業は全体の約半数である。も ちろん、勤務地限定正社員区分を保有していな (資料)みずほ情報総研「平成 23年度『多様な形態による正社員』に関するアンケート調査(厚生労働省委託事業)」(2012年)のデータを筆者再集計 非正社員全体 n 2906 希望比率 n 希望比率 非正社員全体 うち、職種限定あり企業に勤務する非正社員 うち、職種限定なし企業に勤務する非正社員 仕事内容 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 所定内 労働時間 仕事内容 基幹的非正社員非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 所定内 労働時間 仕事内容 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 所定内 労働時間 仕事内容 基幹的非正社員非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 1712 1002 926 922 989 1712 1002 926 922 989 413 188 162 233 221 580 274 210 353 314 所定内 労働時間 【 い わ ゆ る 正 社 員 希 望 】 2906 636 904 47.1% 53.7% 38.3% 30.5% 51.7% 58.5% 56.0% 50.7% 38.4% 60.1% 61.2% 56.7% 51.6% 38.3% 60.9% 58.4% 54.5% 52.6% 35.7% 58.9% 61.1% 53.2% 53.9% 54.1% 非正社員全体 うち、労働時間限定あり企業に勤務する非正社員 うち、労働時間限定なし企業に勤務する非正社員 仕事内容 基幹的非正社員非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 所定内 労働時間 仕事内容 基幹的非正社員非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 所定内 労働時間 仕事内容 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 1712 1002 926 922 989 65 20 28 30 33 928 442 344 556 502 所定内 労働時間 2906 93 1447 53.6% 50.6% 43.6% 55.2% 56.5% 58.5% 50.0% 32.1% 66.7% 60.6% 52.6% 50.5% 42.2% 53.4% 55.6% 51.7% 53.8% 51.3% 非正社員全体 うち、勤務地限定あり企業に勤務する非正社員 うち、勤務地限定なし企業に勤務する非正社員 仕事内容 基幹的非正社員非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 所定内 労働時間 仕事内容 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 所定内 労働時間 仕事内容 基幹的非正社員 非基幹的非正社員 35時間未満 35~40時間未満 40時間以上 1712 1002 926 922 989 163 72 62 98 83 830 390 310 488 452 所定内 労働時間 【 勤 務 地 限 定 正 社 員 希 望 】 2906 250 1290 55.8% 49.8% 36.4% 60.3% 62.6% 58.3% 47.2% 38.7% 63.3% 54.2% 55.5% 54.6% 34.2% 59.6% 65.5% 53.0% 53.6% 55.2% 【 職 種 限 定 正 社 員 希 望 】 【 労 働 時 間 限 定 正 社 員 希 望 】 図表 5 自身が許容できる処遇水準の下での限定正社員希望比率 い企業のうち、全事業所が転居を伴わない範囲 内に立地している企業では当然に同区分を保有 する必要はない。しかしながら一般に、このよ うな企業であっても職種限定区分や労働時間限 定区分の導入の可能性が十分あるにも関わら ず、「労務管理が複雑になる」こと等を理由と してこれら区分を保有していないケースも少な くないといわれる。また、限定正社員区分を1 つも保有していない企業のうち、今後、同区分 を導入しようと考えている企業は1割超に過ぎ

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においても、実態・想定を問わず、「機会が少 ない」がおおよそ2割である。 ④雇用保障 図表では示していないが、いずれの限定区分 においても、「事務所閉鎖・事業縮小等の必要 が生じた場合に配置転換等は行わない」の比率 に実態・想定による差異はみられず、その比率 は職種限定正社員では約1割、時間限定正社員 では1割台前半、勤務地限定正社員では約2割 となっている。 (3)限定正社員に対する処遇水準は、実態・ 想定ともにほぼ同等 上記によると、限定なし正社員の時間当たり給 与水準を100とした場合、限定正社員に対する 時間当たり給与水準は、いずれの限定区分にお いても実態・想定を問わず、おおよそ90弱である。 また、限定なし正社員と比較した、限定正社員 に対する昇進・昇格、教育訓練の機会、雇用保 障に係る水準は、いずれの限定区分においても 実態と想定がほぼ同じ傾向をみせている。 これまでの分析結果を整理すると、以下の通 りになる。すなわち、 ・非正社員は総じて、他の就業条件に比べ「雇 用の安定」を強く求めている。また、非正社 員は正社員希望の有無に関わらず「遠方への 転勤の心配がないこと」「労働日数・時間が短 いこと」「担当する仕事範囲が限定されている こと」に今の働き方のメリットを見出している。 ・上記を踏まえると、非正社員のニーズを満た しうる雇用形態として、「正社員としての雇 用の安定が確保されており、職種・労働時間・ 勤務地のいずれかあるいは複数に限定がある

6. おわりに

ない。 なお、限定正社員区分の導入意向を持つ企業 は「優秀な人材の確保」「仕事と育児や介護の 両立支援」「従業員の定着」等をその導入目的 としているが、実際、アンケート調査に合わせ て実施したヒアリング(12)では、企業が勤務地 限定正社員区分を新たに設けたことにより、自 身の事情で転勤ができないため正社員になるこ とをあきらめていた非正社員が勤務地限定正社 員へ転換し、結果として、職務範囲の拡大によ り本人の能力向上が促されたのみならず、企業 にとっては優秀な人材の確保・定着が実現でき たという事例があることも確認されている。 (2)限定正社員に対する処遇水準 ここでは、「すでに限定正社員区分を導入し ている企業における、当該限定正社員に対する 処遇の実態の水準」と「限定正社員区分を導入 していない企業における、導入すると仮定し た場合の処遇の想定の水準」を、「限定なし正 社員の処遇水準」と比較しながら把握した(13)。 比較対象となる処遇は、時間当たり給与水準、 昇進・昇格、教育訓練の機会、雇用保障の4つ である。 ①時間当たり給与水準 限定なし正社員の時間当たり給与水準を100 とした場合の実態と想定の水準を表したものが 図表3の【企業】欄である。これによると、いず れの限定区分においても、また、実態・想定と もにその水準はおおよそ90弱となっている。 ②昇進・昇格 図表では示していないが、いずれの限定区分 においても、実態・想定を問わず、「上限あり」 が6割台である。 ③教育訓練の機会 図表では示していないが、いずれの限定区分

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(という観点から)限定正社員」が有効であ るといえる。 ・実際、非正社員が「自身が許容できる処遇水 準の下で限定正社員を希望する比率」は、「い わゆる正社員を希望する比率」よりも高く、 職種限定正社員・労働時間限定正社員・勤務 地限定正社員のすべてで5割を超える。 ・翻って、企業の限定正社員区分の保有状況を 確認すると、「職種・労働時間・勤務地のい ずれかの限定正社員区分を保有している」企 業は全体の約半数、「今後、新たに限定正社 員区分を導入しようと考える」企業も1割超 程度しか存在しない。 ・従業員の確保・定着が企業経営にとっての大 命題であるとするならば、非正社員の働き方 に対するニーズを満たしうる限定正社員区分 の導入は、効果的な対策の一つであるといえ る。にも関わらず、企業における限定正社員 区分導入意向が低いことは、「処遇水準の決 定」に代表されるような「労務管理の複雑さ」 等を理由に、同区分の導入に躊躇している面 があることがうかがえる。 ・一方、「限定正社員区分をすでに導入してい る企業における処遇水準」と、「限定正社員 希望者が許容する処遇水準」の間に、差異は ほとんどみられない。これは「限定正社員区 分を導入していない企業が同区分を導入した 場合に想定する処遇水準」においても同様で ある。 上記は、企業における限定正社員区分が、① 「正社員としての雇用の安定を最重要視しつつ、 いわゆる正社員ほどに制約された条件で働くこ とを希望しない」労働者にとっても、また、② 「職種・労働時間・勤務地などに人事管理上の 制限が課されるものの、優秀な人材を正社員対 比90%弱程度の給与水準で確保し、積極活用 したい」企業にとっても、有益であることを示 唆している。 なお、非正社員が職種限定正社員・労働時間 限定正社員・勤務地限定正社員を希望する比率 に差異はみられない。このことを踏まえると、 企業が限定正社員制度を導入する際には、自社 に勤務する非正社員の働き方の実態やニーズに 基づき、職種・労働時間・勤務地いずれの限定 区分に重点を置くかについて十分な検討を加 え、その上で、最適な制度設計を実施する必要 があるといえるだろう。 以下では、これまでの整理を踏まえて、今後 の限定正社員制度の導入推進に向けて留意すべ き3つの論点を示す。 (1)論点1:均等・均衡処遇と解雇ルールへ の配慮 これまでのマスメディアや専門家等による限 定正社員に係る議論のなかには、「限定正社員 は『総合職』『一般職』区分における『一般職』 に相当する雇用形態であり、安定的ではあるも のの、実質的にはいわゆる正社員との間に賃金 や昇進・昇格、教育訓練などの格差が生じ、正 社員の不合理な階層化が進みかねないのではな いか」「限定正社員は、たとえば『その仕事』 や『その事業所』がなくなった場合に、企業側 が労働者を解雇しやすいようにするための雇用 形態なのではないか」といった懸念が示される ケースも少なくない。 また、2013年4月1日からの改正労働契約法 施行に伴う無期転換ルールの下では、限定正社 員として働く可能性が高まる反面、無期転換 後に必ずしも本調査でみられた「正社員対比 90%弱の給与水準」が保障されるわけではな い点も懸念の要因となろう。 これらの懸念を払拭するためには、企業は限

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重なご助言を賜りましたことに深く感謝申し 上げます。 (1)本稿は、日本労務学会第43回全国大会自由論題報 告において発表した原稿を基に加筆修正したもの である。 (2) 同調査の実施概要は、下記の通り。 調査方法:郵送配布・回収、自記式回答 実施期間:2011年7月~8月 調査対象および回収状況: 企業調査=正社員数300人以上の企業(一部地域 を除く)11,170社。有効回答は1,987社。 個人調査=企業調査の対象企業に勤務する従業員 ならびに調査モニター。有効回答は10,675名。 本分析の対象: 企業調査=1,987社(うち、個人調査とリンク可 能な分析対象=1,327社) 個人調査=非正社員2,906名(うち、企業調査と リンク可能な分析対象=1,540名) (3) 本稿では「働き方」を、「回答者本人の労働条件の うち、転居を伴う遠方への転勤の有無、仕事の範 囲の限定の有無、労働日数・時間(フルタイム勤 務/短時間勤務)に関すること」と定義している。 (4) 回答者と担当する仕事が同じ正社員がいる場合を 「基幹的非正社員」、いない場合を「非基幹的非正 社員」としている。なお、本稿では業種や仕事内 容等を勘案しておらず、正社員と仕事が同じであ るかどうかは回答者の主観によることに留意が必 要である。 (5) 「現在の勤務先で希望している」「勤務先を問わず 希望している」を合わせて「正社員希望あり」と している。 (6) 「おおいに満足している」「やや満足している」を 合わせて「満足」、「あまり満足していない」「まっ たく満足していない」を合わせて「不満足」とし ている。 (7) 「正社員希望あり」の4割が、今の働き方に「あま り満足していない」「まったく満足していない」と 回答している。 (8)勤務地限定正社員に関してのみ設問を設定している。 (9)職種限定正社員・勤務地限定正社員に関してのみ 設問を設定しており、前者では「担当している業 務が廃止された場合」、後者では「勤務先事業所が 閉鎖となった場合」についてたずねている。 (10)「限定がある正社員として働くと仮定した場合」の、 「(そ・の・限定がない)限定なし正社員」と比較した ときの処遇水準のこと。 定正社員といわゆる正社員の処遇に均等・均衡 を図るような取組みを怠らないよう十分に留意 しなければならない。 併せて、労使間で限定正社員の解雇に係る ルール(たとえば「勤務地限定正社員が勤務す る事業所を業務縮小により閉鎖する際には、ま ずは企業側が「転勤」を提案するなどの解雇回 避努力を行うが、それを本人が受け入れない場 合には解雇する」といったルール)を合意して おくことも不可欠であろう。 (2)論点2:キャリアアップを図る仕組み等 としての活用 非正社員から限定正社員への、さらには限定 正社員からいわゆる正社員への登用制度を整備 し、段階的なキャリアアップが図れる制度として 限定正社員区分を整備することも望ましい。また、 たとえば育児や介護といった事情を持ついわゆ る正社員が、当該事情が発生している期間は一 時的にいわゆる正社員から限定正社員に転換で きるような仕組みも整備しておくと、限定正社員 制度の価値はさらに高まるものと考えられる。 (3)論点3:ベンチマーク事例の収集・普及 最後に、企業における限定正社員区分の導 入促進を図るためには、①限定正社員区分の 導入が、企業に人材の定着・確保というメリッ トをもたらすデータや事例、②すでに限定正 社員区分を導入している企業において、複雑 になりがちな労務管理をどのように運用して いるかといったベンチマークとなりうる事例、 等を国や関係諸機関が今後広く周知すること が重要である。 謝辞 本稿を執筆するに当たり、東京大学大学院 佐藤博樹教授、法政大学武石恵美子教授に貴

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(11)「現在の勤務先で希望している」「勤務先を問わず 希望している」を合わせた比率のこと。 ちなみに、同比率をタイプ別にみると基幹的非正 社員では53.7%、35 ~ 40時間未満非正社員では 51.7%、40時間以上では58.5%であり、正社員に 近い働き方の非正社員では正社員希望比率が半数 を超えている。また、今の働き方に不満足の7割超、 今の働き方に「他になかったから」を選択した者 の約7割が正社員希望を持つ。 (12) アンケート調査に回答した企業のうち、職種・労 働時間・勤務地のいずれかあるいは複数に限定が ある正社員区分を導入しており、かつ、非正社員 からこれら限定正社員への登用実績を持つ企業を 対象に、限定正社員区分の運用状況についてヒア リングを実施した。 (13) 各設問ともに無回答が2~3割あったため、ここ での回答比率は不明を除いた数を100%として算 出している。 参考文献 1. みずほ情報総研「『多様な形態による正社員』に関す るアンケート調査(厚生労働省委託事業)」(2013年) 2. 総務省「労働力調査」(2013年2月) http://www.stat.go.jp/data/roudou 3. 総務省「労働力調査」(2013年5月) http://www.stat.go.jp/data/roudou

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