23
第
2
章 ベクトルの微分
2.1
ベクトルの積
ベクトル n次元ベクトルとは狭い意味では,n個の実数の組で,座標軸を回転させたときに 座標の各成分と同じように変換されるものを言う.座標r = (x, y, z)はベクトルであ り,速度,加速度なども当然ベクトル.力,電場,磁場,重力場,などもベクトルで ある.量子力学では複素数を成分とするベクトルが主役を演じるが今は考えない. 単位ベクトルxˆ,yˆ,zˆを使ってベクトルを表示すると1. a = axx + aˆ yy + aˆ zzˆ (2.1.1) = 3 ∑ i=1 aixˆi. (2.1.2) 座標軸の方向を向いた三つの単位ベクトルは基底と呼ばれる.i,j,kやex,ey,ez などとも表示される. 以下,特に断らない限り3次元空間を考えることにする.二つのベクトルa,bの 成分をai,bi (i = 1, 2, 3あるいはx,y,z)とすると,この二つの積として次のよう なものが考えられる. スカラー積(内積) 二つのベクトルからスカラーを作る積: ˆ xi· ˆxj = δij, (2.1.3) a·b = n ∑ i=1 aibi= aibi = axbx+ ayby+ azbz. (2.1.4) 添え字に同じ文字を使ったときは和をとるものと約束する(Einsteinの記法)2.内積は aのbなす角をθとするとab cos θである. 1 まとめて書くときにはx = ˆˆ x1,y = ˆˆ x2,z = ˆˆ x3,などの表記も使うことにする. 2 ベクトルの成分を表す添え字と偏微分を表す添え字を混同しないように注意! この章以降ではベク トルの成分の意味でしか使わない.δijはクロネッカーのデルタで,行列の形でその成分を書けば δij ≡ 1 0 0 0 1 0 0 0 1 . (2.1.5) ベクトル積(外積) 二つのベクトルからベクトルを作る積:単位ベクトルについて ˆ x× ˆx = ˆy׈y = ˆz׈z = 0, (2.1.6) ˆ x׈y = −ˆy× ˆx = ˆz, (2.1.7) ˆ y׈z = −ˆz׈y = ˆz, (2.1.8) ˆ z× ˆx = −ˆx׈z = ˆy, (2.1.9) と定義すると,一般には ベクトル積の成分表現 a×b = (axx + aˆ yy + aˆ zz)ˆ ×(bxx + bˆ yy + bˆ zz)ˆ = (aybz− azby)ˆx + (azbx− axbz)ˆy + (axby− aybx)ˆz = ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯ ˆ x yˆ zˆ ax ay az bx by bz ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯ . (2.1.10) このベクトルc = a×bは,a,bと垂直な方向を向き,大きさはaとbなす角をθと するとab sin θである.その向きはa,b,cがxˆ,yˆ,zˆと同じく右手系になるように とる. ベクトル積のi番目の成分はci = ϵijkajbkと書くことができる.ϵijkは完全反対称 単位テンソルと呼ばれ,名前は恐ろしいが計算には重宝である.その成分は
ϵxyz = ϵyzx = ϵzxy= 1
ϵxzy = ϵzyx = ϵyxz=−1
others = 0
(2.1.11)
次の関係が非常に役に立つ(確かめよ):
ϵijkϵlmk= ϵijkϵklm= ϵijkϵmkl= δilδjm− δimδjl. (2.1.12)
これさえあればベクトル積をふくむややこしい公式が直ちに導けるので,記憶する価 値がある.
ベクトル積の公式 a×b = −b×a, (2.1.13) a×(b + c) = a×b + a×c, (2.1.14) ca×b = a×cb = c(a×b), (2.1.15) a·(b×c) = b·(c×a) = c·(a×b), (2.1.16) a×(b×c) = b(a·c) − c(a·b). (2.1.17) スカラー3重積a·(b×c)の大きさはa,b,cの作る平行6面体の体積である.最後 の公式の証明はめんどうだが(一度はやってみよう),ϵijkを使って書いてみると簡単 に同じ結果が得られる: a×(b×c) = ϵijkajϵklmblcm= (δilδjm− δimδjl)ajblcm= ajbicj− ajbjci = b(a·c) − c(a·b). (2.1.18) [問題]上の公式を確かめよ. テンソル積 二つのベクトルから直積を作ったもの.成分を行列の形に書けば a⊗b = aibj ≡ axbx axby axbz aybx ayby aybz azbx azby azbz (2.1.19) テンソル(tensor)とは座標軸の回転によって,ベクトルの積の成分と同じように変換 される(上のような)量を指す.
2.2
ベクトルの微分
ベクトルの微分 ベクトルaが変数(パラメタ)tの関数だとしよう.微分の定義は da dt ≡ lim∆t→0 a(t + ∆t)− a(t) ∆t . (2.2.1) 成分で書けば da dt = ( dax dt , day dt , daz dt ) . (2.2.2) 高階の微分も同様に定義できる.例:位置ベクトルr,速度ベクトルr = dr/dt,加速度ベクトルa = dv/dt = d2r/dt2. 積の微分 tのスカラー関数c(t),ベクトル関数a(t),b(t)について,積の微分についての公式: d dt(ca) = dc dta + c da dt, (2.2.3) d dt(a·b) = da dt·b + a· db dt, (2.2.4) d dt(a×b) = da dt×b + a× db dt. (2.2.5) [問題]上の公式を確かめよ. 空間曲線 3次元空間での滑らかな曲線を考えよう.ある点の位置ベクトルを出発点から測っ た曲線の長さsの関数として考える;r(s).単位接線ベクトルは ˆt = dr ds. (2.2.6) ここで lim ∆s→0 |∆r| ∆s = 1 (2.2.7) であることを使った.速度ベクトルとの関係は v = dr dt = dr ds ds dt = ˆtv. (2.2.8) 単位主法線ベクトルは,θを曲率中心から測った角度として ˆ n = dˆt dθ = dˆt ds ds dθ = R dˆt ds = 1 κ dˆt ds. (2.2.9) R = ds/dθは曲率半径,κ = 1/Rは曲率である.ここで弧長と半径と角度の関係を 使った.nˆ はˆtが一定であれば定義できない.加速度ベクトルとの関係は a =dv dt = dv dtˆt + v dˆt dθ dθ ds ds dt = dv dtˆt + v ˆn 1 Rv. = dv dtˆt + v2 Rn.ˆ (2.2.10) 軌道に沿った接線方向の加速度と,法線方向の加速度が分離されている. 物理法則と微分 物理の運動法則は基本的に微分方程式の形で表される.その代表は,物体の位置変 化を表すニュートンの運動方程式で,位置ベクトルr = (x, y, z)の時間変化を決める. 経験によれば,rの2階微分が他の物体からの作用によって決定される.他の物体か
らの作用は力f = (fx, fy, fz)であり3,注目する物体の性質は質量mを通して現れる. つまり d2r dt2 = f m. (2.2.11) 時間微分は ˙ と書く習慣なので,この式はr = f /m¨ もし昔の人たちが考えたように力が˙rを決めているなら世の中は単調に過ぎること になるが,熱力学の対象となるような巨視的な変数については,多くの場合に慣性的 な運動の寄与は無視でき物理量の変化率が熱力学的な力に比例する. [問題]もし力が座標の1階微分を決めているとしたら色々な運動がどうなるか想像し てみよ.
2.3
ベクトルの微分演算子
スカラー場とベクトル場 場所場所に応じてその位置ベクトルrの関数として,スカラーやベクトルの値が定まるものを場(field)と呼ぶ.スカラー場(scalar field)の例として,場所ごとの温度や
圧力,電位,地表の緯度と経度の関数としての標高などがある.ベクトル場(vector field)の例として,場所ごとの電場や磁場,重力場,流体の流速などがある. 空間微分の演算子 スカラー場ϕ(r) = ϕ(x, y, z)を考えよう.1階微分としては∂ϕ/∂x,∂ϕ/∂y,∂ϕ/∂z の3種があるが,それぞれ微分演算子∂/∂x,∂/∂y,∂/∂zがϕ(x, y, z)に作用したも のと見ることができる.すると勾配∇ϕはベクトルの微分演算子 ∇ = ( ∂ ∂x, ∂ ∂y, ∂ ∂z ) = ˆx ∂ ∂x+ ˆy ∂ ∂y+ ˆz ∂ ∂z (2.3.1) がϕに作用した結果である. ベクトル場A(r) = (Ax(r), Ay(r), Az(r))への微分演算子∇の働き方としては∇·A と∇×Aの二通りがある.この二つを調べる前に勾配について復習しておく. 勾配 スカラー場ϕ(r)から微分演算子∇によってベクトル場を作る. grad ϕ(r) = ∇ϕ(r) = ( ∂ϕ(x, y, z) ∂x , ∂ϕ(x, y, z) ∂y , ∂ϕ(x, y, z) ∂z ) . (2.3.2) 3f x,fy,fzは関数fの偏微分ではなくて,ベクトルfの各成分である.
∇ϕ(r)はϕ(r)が最も速く増加する方向を向き,ϕ(r)の全微分は dϕ(r) =∇ϕ(r)·dr. (2.3.3) あとで詳しく学ぶが,この関係を積分すれば ϕ(r2)− ϕ(r1) = ∫ r1→r2 ∇ϕ(r)·dr (2.3.4) となることに注意しよう.r1 → r2はr1からr2へむかう曲線を表す. 勾配のいくつかの例 地表の重力場:位置rにある質量mの物体のポテンシャルエネルギーは ϕ(r) = mgz. (2.3.5) f (r) = −∇ϕ(r) = (0, 0, −mg) = −mgˆz = −mg. (2.3.6) 重力場:質量M の物体からの距離rにある質量mの物体のポテンシャルエネル ギーは ϕ(r) = −GM m r . (2.3.7) f (r) = −∇ϕ(r) = ( −GMmx r3,−GMm y r3,−GMm z r3 ) =−GM m r2 r r. (2.3.8) クーロン力の場:電荷qからの距離rでのポテンシャルは ϕ(r) = 1 4πϵ0 q r. (2.3.9) E(r) = −∇ϕ(r) = 1 4πϵ0 q r2 r r. (2.3.10) 発散(divergence) 微分演算子∇によってベクトル場A(r)から作られるスカラー量(スカラー場)を A(r)の発散と呼ぶ. 発散のデカルト座標成分表現: divA(r) = ∇·A(r) = ( ˆ x ∂ ∂x+ ˆy ∂ ∂y + ˆz ∂ ∂z ) ·(Axx + Aˆ yy + Aˆ zz)ˆ = ∂Ax ∂x + ∂Ay ∂y + ∂Az ∂z . (2.3.11)
ここで微分演算子はの単位ベクトルxˆ,yˆ,zˆにも働くが,これらの項は定ベクトルな ので零になる. 発散の意味 発散の意味を考えるために密度(場) ρ(r),速度(場) v(r)の流体を考え,点(x, y, z), (x + ∆x, y + ∆y, z + ∆z)を対角線の頂点とする直方体の微小体積からの流出量を調 べよう.単位面積の平面を単位時間に通過する流体の質量は流れ(流束密度)ベクトル で表される: j(r)≡ ρ(r)v(r). (2.3.12) 求める流出量−∆M は高次の項を無視すると −∆M = − (M(x, y, z, t + ∆t) − M(x, y, z, t)) = [ ( −jx(x, y + 1 2∆y, z + 1 2∆z) + jx(x + ∆x, y + 1 2∆y, z + 1 2∆z) ) ∆y∆z + ( −jy(x + 1 2∆x, y, z + 1 2∆z) + jy(x + 1 2∆x, y + ∆y, z + 1 2∆z) ) ∆z∆x + ( −jz(x + 1 2∆x, y + 1 2∆y, z) + jz(x + 1 2∆x, y + 1 2∆y, z + ∆z) ) ∆x∆y ] ∆t ⇒ ( ∂jx(x, y, z) ∂x + ∂jy(x, y, z) ∂y + ∂jz(x, y, z) ∂z ) ∆x∆y∆z∆t. (2.3.13) 最後のところで+12∆x,+12∆y,+12∆zの効果は高次の補正となるので無視できる. M/(∆x∆y∆z) = ρだから ∂ρ(x, y, z) ∂t +∇·j(x, y, z) = 0. (2.3.14) これを連続の式と呼ぶ.つまり∇·j(r)は微小体積からの流体の流出量の単位体積あ たりの値を表す. 物理的に重要な例 地表の重力場 1 mf (r) = (0, 0,−g) = −g, (2.3.15) ∇·(−g) = 0. (2.3.16) 重力場 1 mf (r) = −G M r2 r r =−G M r2r,ˆ (2.3.17) ∇·f (r) m = −GM∇· r r3 = 0. for r̸= 0 (2.3.18) クーロン力の場 E(r) = q 4πϵ0 r r3, (2.3.19) ∇·E(r) = q 4πϵ0∇· r r3 = 0 for r ̸= 0. (2.3.20)
これがファラデーの「力線」の考え方が有効な理由である.電場(電気力線)は電荷の あるところでのみ湧き出したり,吸い込まれたりする.重力場もこの性質を持ってお り,基本的な力の場の特徴である. [問題]次のベクトル場v(r)の発散を,2次元と3次元で,計算せよ. v(r) = r, (2.3.21) v(r) = r r2. (2.3.22) 回転(rotation) 微分演算子∇によってベクトル場A(r)から外積と同じようにして作られるベクト ル量(ベクトル場)をA(r)の回転(rotation,curl)と呼ぶ.
回転のデカルト座標成分表現: rotA(r) = ∇×A(r) = ( ˆ x ∂ ∂x+ ˆy ∂ ∂y+ ˆz ∂ ∂z ) ×(Axx + Aˆ yy + Aˆ zz)ˆ = ( ∂Az ∂y − ∂Ay ∂z ) ˆ x + ( ∂Ax ∂z − ∂Az ∂x ) ˆ y + ( ∂Ay ∂x − ∂Ax ∂y ) ˆ z = ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯ ˆ x yˆ zˆ ∂ ∂x ∂ ∂y ∂ ∂z Ax Ay Az ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯ . (2.3.23) [問題]次のベクトル場の回転を計算せよ. A(r) = r, (2.3.24) A(r) = (−By, 0, 0) , (2.3.25) A(r) = (0, Bx, 0) , (2.3.26) A(r) = ( −1 2By, 1 2Bx, 0 ) , (2.3.27) v(r) = ( −y √ x2+ y2, x √ x2+ y2, 0 ) ≡ (−y ρ , x ρ, 0 ) , (2.3.28) v(r) = √ 1 x2+ y2 ( −y √ x2+ y2, x √ x2+ y2, 0 ) = (−y ρ2, x ρ2, 0 ) . (2.3.29) 回転の意味 小さな長方形のループ (x0, y0.z0) → (x0+ ∆x, y0.z0) → (x0+ ∆x, y0+ ∆y.z0) → (x0, y0+ ∆y.z0) → (x0, y0.z0)
同じことだが r0 → r0+ ∆x ˆx → r0+ ∆x ˆx + ∆y ˆy → r0+ ∆y ˆy → r0 (2.3.30) をまわる,A(r)と∆rの内積の和を考える.これは長方形の周りでの線積分 I = ∫ A(r)· dr (2.3.31) だが,長方形が小さいから次の4項の和になる.ここで関数の値としてはそれぞれの 辺の中点での値で代表させた. I = A(r0+ 1 2∆x ˆx)·∆x ˆx + A(r0+ ∆x ˆx + 1
2∆y ˆy)·∆y ˆy +A(r0+
1
2∆x ˆx + ∆y ˆy))·(−∆x ˆx) + A(r0+ 1
2∆y ˆy)·(−∆y ˆy) = ( ∂Ay ∂x − ∂Ax ∂y ) ∆x∆y = (∇×A)·ˆz∆x∆y. (2.3.32) 3行目への変形ではAをr0のまわりで1次の項までテイラー展開をした.得られた 結果は∇×Aのz成分に長方形の面積をかけたものである.流体力学では速度場の回 転∇×vを渦度(vorticity)と呼ぶ. 物理的に重要な例 剛体の回転:z軸の周りに回転している物体を考える.ϕ = ω˙ とすると,rの位置で の物体の速度v(r)は
v = (−r sin θ sin ϕ ˙ϕ, r sin θ cos ϕ ˙ϕ, 0) = (−ωy, ωx, 0)
= ωˆz×r = ω×r. (2.3.33) ただしω = ωˆz.この速度場の回転を計算すると ∇×v(r) = ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯ ˆ x yˆ zˆ ∂ ∂x ∂ ∂y ∂ ∂z −ωy ωx 0 ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯¯ ¯ = 2ωˆz = 2ω (2.3.34) となって,一定の回転ベクトルを与える. 渦糸:(2.3.29)のv(r)は超流動ヘリウムでz軸上に「渦糸」があるときの流体の流れ を表している.流れは確かにz軸の周りを回っているが,回転ベクトル(渦度)は零で ある! 実は,この流れでは渦度はz軸のところに集中している. 直線電流の作る磁場: z軸に沿って流れる電流Iの作る磁束密度は B(r) = µ0I 2π (−y ρ , x ρ, 0 ) (2.3.35)
ただしρ =√x2+ y2.この回転を計算するとρ̸= 0なら∇×B = 0であることに注 意しよう. ラプラス演算子(Laplacian) (1.2.10)に現れた2階の偏微分の和をとる演算子を∇2,または∆と書いてラプラ ス演算子(ラプラシアン,Laplacian)とよぶ.スカラー関数ϕにラプラシアンを作用 させたものは,ϕの勾配の発散を取ったものである. ∇2ϕ = ∇· ∇ϕ = ( ˆ x ∂ ∂x+ ˆy ∂ ∂y+ ˆz ∂ ∂z ) · ( ˆ x ∂ ∂x+ ˆy ∂ ∂y+ ˆz ∂ ∂z ) ϕ = ∂ 2ϕ ∂x2 + ∂2ϕ ∂y2 + ∂2ϕ ∂z2. (2.3.36) ベクトル関数に作用するときは4,各成分に ∇2 = ∂2 ∂x2 + ∂2 ∂y2 + ∂2 ∂z2 (2.3.37) が作用したとみなす.つまり ∇2A = ( ∂2 ∂x2 + ∂2 ∂y2 + ∂2 ∂z2 ) A = ( ∂2Ax ∂x2 + ∂2Ax ∂y2 + ∂2Ax ∂z2 , ∂2Ay ∂x2 + ∂2Ay ∂y2 + ∂2Ay ∂z2 , ∂2Az ∂x2 + ∂2Az ∂y2 + ∂2Az ∂z2 ) (2.3.38) [問題]次の関数のラプラシアンを計算せよ. f (r) = r = √ x2+ y2, (2.3.39) f (r) = ln r = ln √ x2+ y2. (2.3.40) 微分の公式 勾配の発散がラプラシアンなら勾配の回転は何だろうか? 回転の発散は? 回転の 回転は? 以下公式を並べておく. 4この場合は勾配をとることはできない.
微分公式集
∇(ϕψ) = (∇ϕ)ψ + ϕ∇(ψ), (2.3.41)
∇·(ϕA) = (∇ϕ)·A + ϕ(∇·A), (2.3.42)
∇×(ϕA) = (∇ϕ)×A + ϕ(∇×A), (2.3.43)
∇·(A×B) = B·(∇×A) + A·(∇×B), (2.3.44)
∇×(A×B) = (B·∇)A − B(∇·A) − (A·∇)B + A(∇·B), (2.3.45)
∇(A·B) = (B·∇)A + (A·∇)B + B×(∇×A) + A×(∇×B),(2.3.46)
∇×(∇ϕ) = 0, (2.3.47) ∇·(∇×A) = 0, (2.3.48) ∇×(∇×A) = ∇(∇·A) − ∇2A. (2.3.49) [問題]上の公式を導け.
2.4
極座標と円筒座標
ベクトルは座標系の選び方にはよらないが,その成分表示は座標系によって異なる. 微分演算子をいろいろな座標系で表してみよう. 2次元極座標 直交座標と極座標の関係は5 x = r cos ϕ, y = r sin ϕ. (2.4.1) あるいは逆に r = √ x2+ y2, ϕ = Arctany x. (2.4.2) 極座標系の基底ベクトルとして,単位動径ベクトルrˆとそれと直交してϕの増加す る向きを向いた単位ベクトルϕˆ をとる.基底ベクトルの間の関係は ˆ r = cos ϕ ˆx + sin ϕ ˆy, (2.4.3) ˆϕ = − sin ϕ ˆx + cos ϕ ˆy. (2.4.4)
ベクトル場a(r)の極座標表示は6
a(r) = ar(r) ˆr + aϕ(r) ˆϕ (2.4.5)
5
方位角ϕとスカラー場ϕ(r)を混同しないように注意.
図4.1: デカルト座標と極座標のベクトルの関係.
である.これと直交座標表示
a(r) = ax(r) ˆx + ay(r) ˆy (2.4.6)
の対応は
ar = ˆr·a = ˆr·(axx + aˆ yy) = aˆ xcos ϕ + aysin ϕ, (2.4.7)
aϕ = ˆϕ·a = ˆϕ·(axx + aˆ yy) =ˆ −axsin ϕ + aycos ϕ. (2.4.8)
2次元極座標での微分演算子 勾配は ∇f = ∂f ∂rr +ˆ 1 r ∂f ∂ϕ ˆ ϕ (2.4.9) = ( ˆ r ∂ ∂r + ˆϕ 1 r ∂ ∂ϕ ) f. (2.4.10) この式は勾配ベクトルを(2.4.7)と(2.4.8)を使って直交座標から極座標に書き換えれ ば以下のように機械的な計算によって得られるが,勾配ベクトルの意味を考えれば直 接書き下せる. ∇f = ˆx∂f ∂x + ˆy ∂f ∂y = (ˆr cos ϕ− ˆϕ sin ϕ) ( ∂r ∂x ∂f ∂r + ∂ϕ ∂x ∂f ∂ϕ ) + (ˆr sin ϕ + ˆϕ cos ϕ) ( ∂r ∂y ∂f ∂r + ∂ϕ ∂y ∂f ∂ϕ ) = (ˆr cos ϕ− ˆϕ sin ϕ) ( x r ∂f ∂r − sin ϕ r ∂f ∂ϕ ) + (ˆr sin ϕ + ˆϕ cos ϕ) ( y r ∂f ∂r + cos ϕ r ∂f ∂ϕ ) = ˆrx cos ϕ + y sin ϕ r ∂f ∂r + ˆϕ sin2ϕ + cos2ϕ r ∂f ∂ϕ (2.4.11)
発散は ∇·A = ( ˆ r ∂ ∂r+ ˆϕ 1 r ∂ ∂ϕ ) ·(Arˆr + Aϕϕˆ ) = ∂Ar ∂r + Ar r + 1 r ∂Aϕ ∂ϕ = 1 r [ ∂ ∂r(rAr) + ∂Aϕ ∂ϕ ] . (2.4.12) ここで次の関係を使った: ∂ˆr ∂r = 0, ∂ ˆϕ ∂r = 0, ∂ˆr ∂ϕ = ˆϕ, ∂ ˆϕ ∂ϕ =−ˆr. (2.4.13) ラプラシアンは ∇2f =∇·∇f = ( ˆ r ∂ ∂r + ˆϕ 1 r ∂ ∂ϕ ) · ( ∂f ∂rr +ˆ 1 r ∂f ∂ϕ ˆ ϕ ) = ∂ 2f ∂r2 + 1 r ∂f ∂r + 1 r2 ∂2f ∂ϕ2 = 1 r ∂ ∂r ( r∂f ∂r ) + 1 r2 ∂2f ∂ϕ2. (2.4.14) 3次元円筒座標,極座標 直交座標と円筒座標の関係は x = ρ cos ϕ, y = ρ sin ϕ, z = z. (2.4.15) 円筒座標系の基底ベクトルとして,単位動径ベクトルρˆ,それと直交してϕの増加す る向きを向いた単位ベクトルϕˆ,z方向の単位ベクトルzˆをとる.基底ベクトルの間 の関係は ˆ r = cos ϕ ˆx + sin ϕ ˆy, (2.4.16) ˆ
ϕ = − sin ϕ ˆx + cos ϕ ˆy, . (2.4.17)
ˆ
z = ˆz (2.4.18)
直交座標と極座標の関係は
x = r sin θ cos ϕ, y = r sin θ sin ϕ, z = r cos θ. (2.4.19)
円筒座標系の基底ベクトルとして,単位動径ベクトルρˆ,それと直交してϕの増加す る向きを向いた単位ベクトルϕˆ,z方向の単位ベクトルzˆをとる.基底ベクトルの間 の関係は
ˆ
r = sin θ cos ϕ ˆx + sin θ sin ϕ ˆy + cos θ ˆz, (2.4.20) ˆ
θ = cos θ cos ϕ ˆx + cos θ sin ϕ ˆy− sin θ ˆz, (2.4.21) ˆ
[問題]上の関係を導け. z軸の周りに角速度ωで回転している剛体内部の速度場はv(r) = ωˆz× rである. 速度場をデカルト座標,円筒座標,極座標で成分表示すれば (vx, vy, vz) = (−ωy, ωx, 0) (2.4.23) (vρ, vϕ, vz) = (0, ωρ, 0) (2.4.24) (vr, vθ, vϕ) = (0, 0, ωr sin θ) (2.4.25) 角速度ベクトルωは (ωx, ωy, ωz) = (0, 0, ω) (2.4.26) (ωρ, ωϕ, ωz) = (0, 0, ω) (2.4.27) (ωr, ωθ, ωϕ) = (ω cos θ,−ω sin θ, 0) (2.4.28) 3次元極座標での微分演算子 勾配は ∇f = ∂f ∂rr +ˆ 1 r ∂f ∂θθ +ˆ 1 r sin θ ∂f ∂ϕϕˆ (2.4.29) = ( ˆ r ∂ ∂r + ˆθ 1 r ∂ ∂θ + ˆϕ 1 r sin θ ∂ ∂ϕ ) f. (2.4.30) 発散は ∇·A = ( ˆ r ∂ ∂r + ˆθ 1 r ∂ ∂θ + ˆϕ 1 r sin θ ∂ ∂ϕ ) ·(Arˆr + Aθθ + Aˆ ϕϕˆ ) = ∂Ar ∂r + Ar r + 1 r ∂Aθ ∂θ + Ar r sin θsin θ + Aθ r sin θcos θ + 1 r sin θ ∂Aϕ ∂ϕ = ∂Ar ∂r + 2 Ar r + 1 r ∂Aθ ∂θ + cot θ r Aθ+ 1 r sin θ ∂Aϕ ∂ϕ = 1 r2sin θ [ ∂ ∂r ( r2sin θAr ) + ∂ ∂θ (r sin θAθ) + ∂ ∂ϕ(rAϕ) ] . (2.4.31) ここで次の関係を使った: ∂ˆr ∂r = 0 ∂ ˆθ ∂r = 0 ∂ ˆϕ ∂r = 0 (2.4.32) ∂ˆr ∂θ = ˆθ ∂ ˆθ ∂θ =−ˆr ∂ ˆϕ ∂θ = 0 (2.4.33) ∂ˆr ∂ϕ = ˆϕ sin θ ∂ ˆθ ∂ϕ = ˆϕ cos θ ∂ ˆϕ ∂ϕ =−ˆr sin θ − ˆθ cos θ (2.4.34) 回転は ∇×A = ( ˆ r ∂ ∂r + ˆθ 1 r ∂ ∂θ + ˆϕ 1 r sin θ ∂ ∂ϕ ) ×(Arˆr + Aθθ + Aˆ ϕϕˆ )
= ∂Aθ ∂r ˆ ϕ−∂Aϕ ∂r ˆ θ−1 r ∂Ar ∂θ ˆ ϕ +1 r ∂Aϕ ∂θ ˆr + Aθ r ˆ ϕ + 1 r sin θ ∂Ar ∂ϕ ˆ θ − 1 r sin θ ∂Aθ ∂ϕ ˆr− Aϕ r sin θ ( ˆ θ sin θ + ˆr cos θ ) = ( 1 r ∂Aϕ ∂θ + cos θAϕ r sin θ − 1 r sin θ ∂Aθ ∂ϕ ) ˆ r + ( 1 r sin θ ∂Ar ∂ϕ − ∂Aϕ ∂r − Aϕ r ) ˆ θ + ( ∂Aθ ∂r − 1 r ∂Ar ∂θ + Aθ r ) ˆ ϕ = [ 1 r sin θ ∂ ∂θ(sin θAϕ)− 1 r sin θ ∂Aθ ∂ϕ ] ˆ r + [ 1 r sin θ ∂Ar ∂ϕ − 1 r ∂ ∂r(rAϕ) ] ˆ θ + [ 1 r ∂ ∂r(rAθ)− 1 r ∂Ar ∂θ ] ˆ ϕ. (2.4.35) ラプラシアンは ∇2f =∇·∇f = ( ˆ r ∂ ∂r + ˆθ 1 r ∂ ∂θ + ˆϕ 1 r sin θ ∂ ∂ϕ ) · ( ∂f ∂rr +ˆ 1 r ∂f ∂θ ˆ θ + 1 r sin θ ∂f ∂ϕ ˆ ϕ ) = ∂ 2f ∂r2 + 1 r ∂f ∂r + 1 r2 ∂2f ∂θ2 + 1 r sin θ ∂f ∂r sin θ + 1 r2sin2θ ∂f ∂θ cos θ + 1 r2sin2θ ∂2f ∂ϕ2 = ∂ 2f ∂r2 + 2 r ∂f ∂r + 1 r2 ∂2f ∂θ2 + cos θ r2sin2θ ∂f ∂θ + 1 r2sin2θ ∂2f ∂ϕ2 = 1 r2sin θ [ ∂ ∂r ( r2sin θ∂f ∂r ) + ∂ ∂θ ( sin θ∂f ∂θ ) + ∂ ∂ϕ ( 1 sin θ ∂f ∂ϕ )] . (2.4.36) 円筒(円柱)座標での微分演算子 勾配は ∇f = ∂f ∂ρρ +ˆ 1 ρ ∂f ∂ϕϕ +ˆ ∂f ∂zzˆ (2.4.37) = ( ˆ ρ ∂ ∂ρ + ˆϕ 1 ρ ∂ ∂ϕ+ ˆz ∂ ∂z ) f. (2.4.38) 発散は ∇·A = ( ˆ ρ ∂ ∂ρ+ ˆϕ 1 ρ ∂ ∂ϕ + ˆz ∂ ∂z ) ·(Aρρ + Aˆ ϕϕ + Aˆ zzˆ ) = 1 ρ ∂ ∂ρ(ρAρ) + 1 ρ ∂Aϕ ∂ϕ + ∂Az ∂z = 1 ρ [ ∂ ∂ρ(ρAρ) + ∂Aϕ ∂ϕ + ∂ ∂z (ρAz) ] . (2.4.39) ここで次の関係を使った: ∂ ˆρ ∂ρ = 0 ∂ ˆϕ ∂ρ = 0 ∂ ˆz ∂ρ = 0 (2.4.40)
∂ ˆρ ∂ϕ = ˆϕ ∂ ˆϕ ∂ϕ =−ˆρ ∂ ˆz ∂ϕ = 0 (2.4.41) ∂ ˆρ ∂z = 0 ∂ ˆϕ ∂z = 0 ∂ ˆz ∂z = 0 (2.4.42) 回転は ∇×A = ( ˆ ρ ∂ ∂ρ + ˆϕ 1 ρ ∂ ∂ϕ+ ˆz ∂ ∂z ) ×(Aρρ + Aˆ ϕϕ + Aˆ zˆz ) = ( 1 ρ ∂Az ∂ϕ − ∂Aϕ ∂z ) ˆ ρ + ( ∂Aρ ∂z − ∂Az ∂ρ ) ˆ ϕ + ( 1 ρ ∂ ∂ρ(ρAϕ)− 1 ρ ∂Aρ ∂ϕ ) ˆ z (2.4.43) ラプラシアンは ∇2f =∇·∇f = ( ˆ ρ ∂ ∂ρ + ˆϕ 1 ρ ∂ ∂ϕ+ ˆz ∂ ∂z ) · ( ∂f ∂ρρ +ˆ 1 ρ ∂f ∂ϕ ˆ ϕ + ∂f ∂zzˆ ) = ∂ 2f ∂ρ2 + 1 ρ ∂f ∂ρ + 1 ρ2 ∂2f ∂ϕ2 + ∂2f ∂z2 = 1 ρ ∂ ∂ρ ( ρ∂f ∂ρ ) + 1 ρ2 ∂2f ∂ϕ2 + ∂2f ∂z2 (2.4.44) [問題]以上の公式のミスプリを探せ.