船の規則と基礎的用語
船の規則の起源
現在では船舶の設計・建造・管理・運用に関して国際条約で規 定されているが、船は国際機関ができる前から存在している ので、当初は別の形態から出発している。 コロンブスの頃(所謂大航海時代)の航海ほどではないが、昔 の海運業は「無事に帰れた時の利益は大きいが、帰って来ない 確率もかなりある」という世界であった。 簡単に言えば、バクチ的な色彩が濃かったのである。 それでは事業にならないので、 ⇒ 船の運航に保険を掛けられないか ⇒ 安全性に応じて保険金額を決めなきゃ不合理 ⇒ 安全性を明確に評価するためには規則が必要 となり、船舶保険の組織(船級協会と呼ぶ)が出来て、諸規則が 作られた。船級協会 (Classification Societies) 1
世界最大の保険会社「ロイド保険」が 船舶の保険をかける場合に必要な資料を作成 ⇓ ロイド船級協会の前身が組織された 船級協会の役割 船舶と設備の技術上の基準を定める 設計がこの基準に従っているかを確認する 就航前に建造状態を検査する 就航後も定期的に検査をし,基準に従って管理・運 営されていることを保証する ⇓ 国際条約→国内規則とは別の流れの規則(基準)を制定 (船級規則=国の規則となる国もある) 船級協会の証明書に基づいて保険金額が決定船級協会(Classification Societies) 2
船級協会は世界中に130程度ある。主な船級協会を挙げると、下記。 ロイド船級協会(Lloyd’s Register of Shipping: LR, イギリス) アメリカ船級協会(American Bureau of Shipping: ABS, アメリカ) ノルウェー船級協会(Det Norske Veritas: DNV, ノルウェー) 日本海事協会(Nippon Kaiji Kyokai: NK, 日本)ビューロベリタス(Bureau Veritas: BV, フランス) ドイツロイド船級協会(Germanischer Lloyd: GL, ドイツ) ・・・・・ DNVとGLは合併 → DNV/GL 強い海運国は自国の海運業を守るために有力な船級協会を持ち, 各船級協会は夫々の考え方とデータに基づいて独自規則を制定 ⇓
国際船級協会連合IACS (International Association of Classification Societies:有力船級協会の連合)で規則を検証し,統一の動き
⇓
タンカーとバルクキャリアについては,2007年に統一した 構造規則(Common Structural Rules: CSR)を制定
船の規則とIMO
船舶→国際市場において建造・取引・管理・運用 ⇓
構造,安全管理,海洋環境保護の取り決め→国際的な場で議論
関係国の利益がぶつかり合い、政治的技術的調整で規則が決まる。
国際海事機関 IMO (International Maritime Organization) ・本部:イギリス,ロンドン ・国連の専門機関 ・総会,理事会, 海上安全委員会 (MSC), 海洋環境保護委員会 (MEPC), 他 + 小委員会 + 作業委員会 ・MSC :船の安全に関する条約 の審議 ・MEPC:海洋環境保護に関する条約 の審議 IMO本部
国際条約 (1)
海上における人命の安全のための国際条約International Convention for the Safety of Life at Sea; SOLAS
乗組員および旅客生命の安全に関する諸設備,船体構造の 要件を国際的に統一 1912年のタイタニック号の事故を契機に国際的な取り決め を求める機運が高まり,1914年に最初の条約が制定 その後も何度かの改正が行われ,現在は1974年の条約を基 にする 第I章 一般規定 第II-I章 構造(区画及び復原性並びに機関及び電気設備) 第II-2章 構造(防火並びに火災探知及び消火) 第III章 救命設備 第IV章 無線通信 第V章 航行の安全 第VI章 貨物の運送 第VII章 危険物の運送 ・・・
国際条約 (2)
海洋汚染防止条約 International Convention for the Prevention of Pollution from Ships MARPOL (Marine Pollution)条約
船舶の航行や事故による海洋汚染を防止することを目的として, 規制物質の投棄・排出の禁止,通報義務,その手続き等について 規定するための国際条約とその議定書 議定書: 議定書I 有害物質に係る事件の通報に関する規則 議定書II 紛争解決のための仲裁に関する規則 附属書: 附属書I 油による汚染の防止のための規則 附属書II ばら積みの有害液体物質による汚染の規制のための規則 附属書III 容器に収納した状態で海上において運送される有害物質 による汚染の防止のための規則 附属書IV 船舶からの汚水による汚染の防止のための規則 附属書V 船舶からの廃物による汚染の防止のための規則 附属書VI 船舶からの大気汚染防止のための規則
国際条約 (3)
その他の条約 船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関す る国際条約 (STCW) 満載喫水線に関する国際条約 (LL) 船舶のトン数の測度に関する国際条約 (TONNAGE) 海上における衝突の予防のための国際規則に関す る条約 (COLREG) ・・・・・日本の規則
国際条約で詳細な規定は困難→詳細な取扱いは各国政府に委任 船籍国(オーナーの国籍とは必ずしも一致しない)の規則を適用 ⇓ 国によりSOLASやMARPOLの解釈が異なり, 国内法の内容が異なる場合もある 主な日本の規則 (かっこ内は関連する条約) 船舶法 船舶安全法 (SOLAS) 船員法 (SOLAS, STCW, ILO) 船舶のトン数の精度に関する法律 (TONNAGE) 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律 (MARPOL) 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する 法律 (SOLAS) ……他国の規則
海運国 イギリス,アメリカ,ノルウェー などでは自国の規則をきちんと制定 リベリア(他にパナマ,バハマ,マルタ,キプロスなど) 西アフリカの小国ながら税制上の優遇処置により, 多くの外国の船会社が船の登録をしている (船の登録をしているだけで,他は何の関係もない) ⇓ このような船を便宜置籍船 (べんぎちせきせん)という リベリア規則 詳細が規定されておらず,船級協会の規則に則る 証書の発行も船級協会にまかされているIMO/GBS (Goal-based Standard)
(例) IMOで目標型船体構造基準
Goal-based Ship Construction Standard:GBSを策定
⇓ 船体構造が安全であるという目標(Goal) を達成するように 船体構造規則を適合させていく ⇓ 5つの階層で構成 Tier I Goals
Tier II RequirementsFunctional Tier III Verification ofCompliance Tier IV Regulations,
Classification Rules etc
Tier V Codes of Practice etcIndustry Standards,
IMO G B S ←ゴールを達成するための 機能要件 ←IVとVがIとIIを満足してい るかを検証する方法 ←船級協会や国が定める基準 ←ISOなど国際標準,業界標準
船の各部の名前 (1)
コンテナ船の 各部の名前 (船首付近)船の各部の名前 (2)
コンテナ船の 各部の名前 (船尾付近)船の部位を表す用語
右舷→Starboard: 昔のバイキング船では大きな舵を右舷後方につけており,舵をと る(steer)側→Steer Boardがなまったと言われている。 左舷→Port: 右舷に大きな舵があると,港に接岸するのは左舷側。よって,港 側という意味でPortとなった。→ただし,現在では必ず左舷接岸 ではない(船主の好み)排水量,海里,ノット
排水量(displacement)という言葉の意味は,文字自体からみれば 「(船が有ることによって)排除される水の量」である. アルキメデスの原理により排水量(相当の水の重量)は船に働く浮 力に等しく,船は重量と浮力が釣り合って浮いているから,排水量 は船の重量と等しい.そのため,排水量は「船の重さ」ないしは 「船 に働く浮力」を意味する言葉として使われる.「排水量1万トンの船」 は「総重量が1万トンの船」を意味し, 「喫水x mにおける排水量がyton」は「喫水x mの状態で船に働く浮力はy ton」を意味する.
国際海里 (metric nautical mile) = 1852メートル.ベッセル楕円体 の極と赤道の距離の90×60分の1.現在ではこれに統一された. 1海里/時の速度を1ノットと呼ぶ.1ノット=時速1.85kmであるから, 22ノット(コンテナ船の速度くらい)で時速約40kmである. 1m = 地球の北極から赤道までの子午線の長さの1,000万分の1 1海里 = 10,000,000m/90/60 = 1851.85m (0.15mだけ上と違う)
船の速力
船の速力→ノット(knot, kt, kn) 1kt→1時間に1海里(Nautical mile=1852m)進む速さ (陸上のMile=1609mとは異なる) 1kt=1.852km/h 航海速力 ⇓ 若干の荒天の中でも,エンジンの常用出力状態で 達成できる速力(若干の荒天の影響をシーマージンと 呼び、エンジン出力か速力に余裕を持たせる) 軍艦:高速 30kt(56km/h)くらい 客船:15~23kt (28~43km/h) コンテナ船:25kt (46km/h)以下 タンカー・バルクキャリア:20kt (37km/h)以下船のトン数(1)
船の大きさと重さを表す単位→ton(トン)容積を表すトン数
総トン数(Gross Ton, GT):船全体の容積(m3)から導か れるトン数。客船やフェリーで用いられる。 純トン数:旅客や貨物の輸送に利用する容積の大き さを表す。総トン数から航海に必要な部分の容積を 引いて計算。船のトン数(2)
重さを表すトン数
軽荷重量トン(Light Weight Ton: LWT):船自体の重さ 載荷重量トン(Dead Weight Ton: DWT):船に積み込める貨
物,燃料などの重さ 排水量トン:船+荷物の重さ(満載状態→満載排水量)
船の長さ
全長:船首の先から船尾の端までの水平距離 垂線間長:船首垂線と船尾垂線の間の水平距離 水線長:水面形状の前端から後端まで など 通常「船の長さ」と言えば,垂線間長を指す。船の幅,深さ
全幅:船の最も広い部 分の幅 型幅:全幅から外板の 板厚を引いたもの 深さ:垂線間長の中央 部における船底から上 甲板まで高さ 型深さ:深さから船底 外板,上甲板の厚さを 引いたもの 喫水:船底から水面ま での高さ 型喫水:喫水から船底 外板の厚さ引いたもの 一般に船の「幅」「深さ」と言えば,型幅,型深さを指す ⇓ 昔は,横断面形状「型」に合わせた骨材を組上げて船型を造り, その外側に外板を張ったので,「型」寸法が基本になっている肥瘠係数 (ひせきけいすう)
船の主要寸法→垂線間長L, 型幅B, 型深さD, 型喫水d ⇓ これらの比(L/B, B/dなど)から,船の外形の特徴を捉えるこ とができるが,あくまでも角柱形状の特徴である 排水容積との関係で,船首,船尾の瘠せこみを含めた船体 の肥え具合,瘠せ具合を表す係数が肥瘠係数 方形係数 (Block Coefficient) 中央横断面係数 (Midship Coefficient) 柱形係数 (Prismatic Coefficient) 水線面積係数 (Water-Plane Coefficient) 竪柱形係数 (Vertical Prismatic Coefficient)方形係数,中央横断面係数
方形係数: CB (Block Coefficient) ⇓ 船体の排水容積Vと,長さL・幅B・ 喫水dの等しい角柱の体積との比 CB= V / (L B d) 中央横断面係数: CM (Midship Coefficient) ⇓ 船の中央部における喫水線下横断 面積AMと,幅B・喫水dの等しい 角柱の断面積との比 CM= AM/ (B d) 高速船:0.50~0.60, 中速船:0.65~0.75, 低速船:0.78~0.85 高速船:0.85~0.97, 中速船:0.98~0.99, 低速船: 0.995柱形係数,水線面積係数
柱形係数:CP (Prismatic Coefficient) ⇓ 船の排水体積 V と,船の中央横断 面積 AMと長さ L の等しい柱の体 積との比 CP= V / (AML) 高速船:0.56~0.62,中速船:0.66~0.76,低速船:0.78~0.86 水線面積係数: CW (Water-Plane Coefficient) ⇓ 船の水線面積 AWと,長さ L と幅Bの等しい長方形の面積 との比 CW= AW/ (L B) 高速船:0.68~0.78,中速船:0.80~0.85,低速船:0.86~0.92竪柱形係数
竪柱形係数: CVP (Vertical Prismatic Coefficient)
⇓
船の排水体積 V と,水線面積 AWと喫水dの等しい柱の体積との比 CVP= V / (AW d) = CB/ CW