発達障害者支援センター
平成
17年4月
発達障害者支援法の成立
超党派による議員立法
平成18年4月 群馬県は
36番目の支援センター
現在全国には政令指定都市を含む
64カ所の発達障
害者支援センターが開設されている
組 織 :県の直営相談機関
心理・保健師・教員・ワーカー
9名
就学前の児童対象に
3名の心理・言語聴覚士
医学相談として月2回、
2名の精神科医
対象者:県内在住の自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群、学習障害(
LD)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)の
ある方(子どもから大人まで)、そのご家族、関係機関の方
業務内容
・相談支援:日常生活に関する様々な相談
・発達支援:心理検査・医師による相談・本人への関わり方等に関する相談
・就労支援:本人や家族、企業や事業所等からの相談。求職活動や職場定着の支援
・普及・啓発・研修
ペアレントサポートプログラム
社会適応支援事業・就業準備訓練事業
(委託)
各種研修企画(一般・専門研修)・講師派遣
コンサルテーション・個別支援会議等
相談実人数
125
246 297
372
153
184
234
214
8
4
6 3
0
100
200
300
400
500
600
700
H18.7~ H19 H20 H21
その他
電話
来所
支援延べ人員
467 882
1205 1278
121
250
403 663
16
17
34
68
0
500
1000
1500
2000
2500
H18.7~ H19 H20 H21
就労支援
発達支援
相談支援
図2 年齢層(実人員)
18%
10%
4%
27%
24%
23%
26%
28%
30%
27%
36%
41%
3% 2% 2%
乳幼児, 9%
小学生, 28%
中・高生, 25%
19歳以上, 37%
不明, 1%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
H18.7~ H19 H20 H21
男女比(実人員)
60.1% 62.9% 61.6% 69.1%
19.9% 23.5% 26.8%
27.2%
19.9% 13.6% 11.5%
3.7%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
H18.7~ H19 H20 H21
不明
女
男
相談主訴(H21/実人数)
自立支援
2%
教育
26%
健康医療
24%
家庭生活
21%
就労
10%
その他
1%
進路相談
3%
療育
2%
情報提供
11%
障害種別(H21/来所)
LD
0 %
PDDM Rあり
2 %
自閉症M Rあり
4 %
不明( 未診断)
4 9 %
アスペルガー症
候群
2 1 %
PDDM R不明
1 2 %
AD/ HD
2 %
その他
1 %
PDDM Rなし
3 %
自閉症M Rなし
5 % 自閉症M R不明
1%
推定障害者数
・知的障害
知能指数分布IQ70以下 .2.7%
85万6千人
療育手帳所持者54万千人
・発達障害
2002年アンケート調査
通常学級に在籍する児童のうち、学習上の躓き
、行動上の問題、情緒的問題があると担任に「見
えている児」 6.3%。
知的障害児者<発達障害児者
診断の付いた年齢
3歳児健診では約30%が見落とされてきた
就学時健診ではほとんど通過する
診断の付いた年齢は、来所時の年齢にほぼ匹敵
する
成人期が40%
小学校以下は30%
今なら、1歳6ヶ月でも診断は可能。
3歳児健診での見落としも少なく出来る。
早期発見・早期療育の両輪が整うことが必要
各年代ごとの主訴(抱えている問題)
・乳幼児期:
言葉の遅れ、落ち着きがない、言うことを聞かない、 乱暴
→被虐待
・学童期:
座っていられない、授業を聞いていない、友達とのトラブル、忘れ物が多い、緘默、不登校、学校
でのパニック
→二次障害の進行
・思春期:
不登校・非行・いじめ・学校への不信感
→触法・就労困難・離職
・青年期:
引きこもり、家庭内暴力、うつ状態(学校、仕事に行けない)、パニック障害
→触法・就労困難・離職・クレーマー・貧困
・成人期:
うつ(育児家事に支障、仕事に行けない)、反社会的行為、精神病症状
→虐待・貧困・自殺・離職・離婚
困難ケースの行き着くところ
・児童自立支援施設
・情緒障害児短期治療施設
・少年院・刑務所
・精神科入院
・母子生活支援センター
乳幼児期の状況
乳幼児検診で
1歳半・3歳児健診での見落としがある
通常の乳幼児健診では、発達障害の視点が落ちている
健診従事者の眼も育っていない
幼稚園・保育園で
「気になる子ども」とは気付いているが、どう気になるのか、発達障害の視点では見ていない
新しい環境に慣れず、登園渋り
友達との関係が出来ず一人でいることが多い
勝手に行動する。周りを意識していない、落ち着けない
衝動的、先に行きたければ人を突き飛ばしてでも行ってしまう。
何度注意されても、聞き分けられない
*わがままな子、躾けられていない子と見られる。
*保育士や幼稚園教諭の養成課程で、発達障害は十分扱われていない
*課題として見えてくるもの
・早期発見・早期療育の必要・それに対応できる人材の育成
・「発達障害の健診」ではなく、「子育て支援」の視点で。母を支援する仕組み作り
学校での状況
◎特別支援教育への誤解
・皆と同じ事が出来るようにする事が目標
・特性がわかっていないために、叱責したり、追い詰めたり、通常の評価の枠にはめようとする
・発達障害は特別支援学級で,という誤解
・一人の生徒に特別な対応は通常学級では出来ない,という誤解
・進学先は特別支援学校へ,という誤解
*特別支援教育の目的は、ニーズのある全ての児童生徒が対象
*どう対応したらいいのか、わからない
◎家族の訴え
・いじめがあっても、「本人がそういう態度だから仕方ない」、と言われる。
・学年が変わる毎に同じお願いや説明を繰り返さなければならない
・目立たなければ,支援は必要ないと思われる。
・他にも支援しなければならない子がたくさんいる,と言われる
・先生も支援方法が分からず苦労している
・お願いが要求と受け取られ、クレーマーと思われているだろう
・小学校:落ち着きがない・指示に従えない・忘れ物が多い・言われているこ との意味が分かっていない。登校
渋り・緘默・パニック
・中学校:不登校と非行の問題、いじめによる二次障害の深刻化
・高 校:年齢相応の社会性が身についていない。 卒業を前に,就職は無理だから進学するよう
・大 学:朝起きられない,教室が分からない,カリキュラムが組めない,誰とも話さず学校とアパートを往復する
生活,部屋を片づ けられない。 卒業を控えて,何社面接しても採用にならない
青年期の状況
専門学校・大学は卒業したが
社会性やコミュニケーション,物事の理解の仕方に課題
生活習慣が身についていない。
就労以前の課題がたくさん
何社面接しても採用されない。使えない、と解雇されてしまう。
引きこもり、自信を失い精神科受診、鬱の診断
フリーター・ニート層にも少なくない
→ 親の学習の場がない・親が継続して相談できる場がない
いつまでも家族が抱え込むことになる。家族がいなくなったらホームレス・生活保護受給者に
課題として見えてくるもの
*就労までに訓練や指導の場が必要
キャリア教育の視点は十分ではない
コミュニケーションや社会性の指導を行う場がない
障害者手帳がなければ専門機関では就労訓練や支援が受けづらい
*継続的な支援が必要だが,支援を行う機関が少ない
*自立支援法の対象になっているケースは少ない
医療・福祉での状況
・発達障害の概念のなかった時代に統合失調・鬱・強迫性障害 等の診断名が付いたままの人も少なくない。
・診断や相談に応じられる医療機関の数が少ない
・診察時間が極めて短く、本人の状況を伝え切れない
・本人が困っていないと、受診しないので診断は付かない
フラッシュバック →家庭内暴力・家族の逃走・孤立 →支援の対象にならない
・入院が必要な場合,自閉症を受け入れられる医療機関は少ない
・福祉資源がない。精神の共同作業所などを利用している人もいるが,やはり異質で,対応に苦慮している。
・警察・司法との関わりも出てくるが、発達障害という視点で対応されることはない。
課題として見えてくるもの
*人材の育成と資源の開発
発達障害に詳しい医師の育成(小児科・児童精神科)
診断のためのツール
療育に詳しい医療スタッフの養成
発達障害に対応できる福祉施設職員の養成
精神保健の枠の中に知的障害を合併しない発達障害に対応できる作業所などの資源の開発
労働での状況
・何度注意しても同じ間違いをする
・指示どおりの事が出来ない
・急がせるとミスが増える。手が遅すぎて仕事にならない
・間違いを指摘されると、固まってしまう。
・言ったことしか出来ない
・周囲と協調できない。
・客を怒らせてしまう。
・身体障害や知的障害との違いを理解されない
・企業側に一般的な理解が進んでいない
・保護的な就労を受け入れる地盤が整っていない(企業も当事者も)
課題として見えてくるもの
特性が一人一人異なるので、適職を見いだすことが困難。
就労の窓口(ハローワーク)に専門的な視点が必要。
企業サイドに立って、具体的な支援方法を提案する人材が必要
何が必要なのか
人材の育成
・正しい見立て:正しい診断と本人の独特の特性の把握、対応の方法など、実質的に役に立つ支援計画
の
作成が出来る人材の育成
・直接支援できる人材の育成:具体的な方法を示し、必要なツールを作成して、本人・家族に提供し、実施
し、評価出来る人材の育成
早期発見と早期療育
・早期に発見し、対応のすべを伝える
・母親支援の視点を落とさない
特別支援教育の質
・全教員への研修の実施
・研究会等の継続研修(事例検討の必要)
長期引きこもりへの支援
・発達障害からの視点で、引きこもりの原因を明らかにする。
・見通しを持った個別支援計画等を立て、本人や家族が出来ることから始める
就労困難者への支援
・高校・大学などでのキャリア教育の必要性
・企業への啓発
・専門窓口の専門性を高める
まとめ
発達障害支援を必要とする人がどの程度存在するのか、全体像はまだ良くわかっていない。母子保
健・保育・教育・医療・福祉・労働・司法とあらゆる領域と関係するが、これまでの行政の枠組みでは、
その網から漏れ出てしまう人の存在は限りないのではないか、と思うほどである。
障害認定を受けている人への支援では全く足りない。それとは気づかずに生活し、青年・成人期で困難
が現れて初めて周囲がそれに気付く事が多く、支援の遅れるケースが少なくない。
診断や気付きを待っていては、二次障害に移行してからの支援になる。二次障害への支援は時間も労力
もかかり、人的・経済的な損失も大きい。
その為に早期発見・早期支援が求められるが、幼児期・学齢期にわかっていても対応を見送るケースが
多く、このことが青年期の二次障害をより重く、複雑なものにしている。
このことは、このタイプの人たち全てが在籍する(全てを網羅する)教育機関、幼児教育・義務教育・高等
教育などに係る教育の責務が相当に重いことを示唆している。幼児教育~高等学校までの18年ほどを
過ごすこの期間に支援を受けられた人と、全く受けてこなかった人との間には、育ちに大きな差異が認め
られるからである。
発達障害についての知識は広がっても、正しい理解と対処が行われなければ、これまでと何ら変わりな
いどころか、選別・差別的な意識を広げることにしかならない。
このたびの災害に関して
・知的障害を合併している発達障害の児者は避難所での生活に困難を来している、 という情報が朝日新聞でも紹介されました。環
境の変化を受け入れられずに騒いでしまうこともありますので、家族は避難所に障害を持つ我が子を連れて行くことを遠慮して、車
の中や屋外で生活せざるを得ない、というものです。この寒さの中で孤立した避難生活をせざるを得ない選択は、余りにも過酷です。
・それぞれ特性がありますので、配慮が必要ですが、本人だけでなく、本人を連れては食料の買い出しにも行けない家族に対して、食
料調達や、家族不在時の見守りなどの支援も必要です。
・更に、疎開をする際にも上記と同様の配慮、支援。又、コミュニティーがこの人達を受け入れてゆく際の留意事項など、是非とも伝達
したい事があります。
*こうしたニーズをとりまとめ、コーディネートする部門が求められています。
課題として見えてくるもの
●障害者における東北地方太平洋沖地震に関する情報を管理するセンターを早急に設置してください
・障害福祉に直接使われる義援金窓口
・支援に駆けつけたい人のマネジメント窓口
・物資に関して団体を越えたやりとりをする窓口
・SOSを出したい団体、個人の連絡先
・今後の事業所の展開をスーパーバイズする担当(障害者を支援していればどこであっても介護報酬が支払われる、といった基本
情報が伝わっていない)
●支援者や支援事業所が活用できる法令・通知のとりまとめ
(以上は全国地域生活支援ネットワークの提言です。参照・全国地域生活支援ネットワーク副代表戸枝 陽基ブログ
http://hiromoto.seesaa.net/article/192931139.html)
具体的な情報については
・厚生労働省の発達障害情報センター;
http://www.rehab.go.jp/ddis/災害時の発達障害児・者支援について
・障害福祉関係の制度活用ガイド:http://www.karuizawa.ne.jp/~tanto/saigai/index.html
(全日本手をつなぐ育成会機関誌「手をつなぐ」編集委員・(社)日本発達障害福祉連盟「発達障害白書」編集委員
又村あおいさん監修)
等も参照ください。