献
辞
経済学部経済学主教授の荒木麺夫先生が,平成8年3月末日をもって停年を 迎えられ,退官されることになりました。 荒木麺夫先生は,昭和5年9月旧満州奉天にて出生。昭和24年3月に熊本県 立天草高等学校を卒業の後,長崎大学経済学部に進まれ,昭和28年9月に同校 を卒業されています。その後,数年間は家業に従事されましたが,昭和31年4 月に東北大学文学部に編入学されました。さらに昭和35年4月には東北大学大 学院経済学研究科に進学,田中菊次教授の下で政治経済学を専攻され,研鐙を 積まれました。そして,昭和40年3月に同大学院を了えられると共に,奥州大 学(現・富士大学)経済学部講師として赴任され,政治経済学者としてのスタ ートを切られました。その後,奥州大学経済学部教授,大阪経済大学経済学部 助教授,山形大学人文学部教授を経て,昭和62年4月に本学部経済学科基礎理 論講座教授として着任されました。以来,今日まで,9年間にわたって,本学 教官として教育と研究に従事されました。その間,平成5年7月から2年間は 滋賀大学附属図書館経済学部分館長として図書館行政のために貢献されておら れます。 荒木麺夫先生の研究業績は,専攻された政治経済学の研究とくにK.マルク スの『資本論』における価値論をテーマとした多数の著書・共著・書評および 20篇の論文群から成っております。その中でも,昭和49年4月に新評論から刊 行された著書「『経済学批判』と『資本論』」ならびに昭和57年9月に啓文社から 刊行された「『資本論』と価値論」は,いずれも荒木廼夫先生の研究業績を代表 するものであり,主著ということができます。ちなみに,荒木廼夫先生は,こ れらの二著に収められた研究論文によって,昭和63年に東北大学より経済学博 士の学位を授与されています。 マルクスの『資本論』を中心とする価値論め研究は,伝統的に,政治経済学 における最も主要な問題領域の1つを形成してまいりました。そして,本学部においても昭和30年代に白杉庄一郎先生が精力的に取り組まれており,その著 『価値の理論』が学界に大きな反響を呼んだことは周く知られております。そ の価値論研究の系論が荒木麺夫先生のご研究によって本学部に甦ったことは, 本学における政治経済学研究の伝統にとって何物にもかえがたい意義深いこと であったと思われます。 荒木廼夫先生は,政治経済学者であるとともに,また,文人でもあられます。 荒木先生が折にふれて披渥される和漢の詩歌に関するゆたかな知識と素養の 数々は聞くものに深い感銘を与えずには措きません。それと共に,社会科学を 専門とするものにとっても,その研究がたんに狭い個別領域にのみ止まるもの であってはならないこと,広くかつ深い文化的伝統との関わりの中で究められ なければならないことを教えてくれました。そして,それが,本学での在任期 間は必ずしも長くはなかったにもかかわらず,荒木勉夫先生の与えて下さった ご指導の豊かさにつながるものと確信いたしております。 このように荒木廼夫先生は,研究者として,教育者として本学に大きな足跡 を残されました。そのご功績を記念して,滋賀大学経済学会はここに退官記念 論文集を進呈したいと存じます。 ご退官後は,くれぐれもご健康に留意され,本学のために今後も変わらぬご 指導を賜りますようにお願い申し上げます。 平成8年2月