修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院 電気通信学研究科 博士前期課程 量子・物質工学専攻 氏 名 松野 めぐみ 学籍番号 0333039 論 文 題 目 分枝状アルカンと芳香環との分子間相互作用 <序論> 分子間あ るいは分子 内の弱い相 互作用は、タンパク質 の立体配座 や酵素反応 などの 分子認識に おいて重要 な役割を果 たすと言わ れている。当研究室の 稲倉は、直鎖アル カンと芳香 環との間に 特異的な引 力的相互作 用があるこ とを示唆し(1) 、初田は、iso-アルカン(末端に枝分かれメチル基が1個付いた構造)は直鎖アルカンよりも芳香環 との間によ り強い引力 的相互作用 があると報 告した(2)。これらの研 究は、アル カンは 芳香環の面方向が近づきやすくなるほどNMRシグナルが高磁場シフトするという芳香 環の磁気異 方性の効果 を利用して 明らかにさ れた。今回、枝分かれメチル基の 位置が 異なる種々 の分枝アル カンと芳香 環との分子 間相互作用 について、メチル基の 位置で 相互作用がどのように変わるかを検討した。 <実験と結果> 主鎖の炭素数5,7,9のメチル基が1個付いた分枝アルカンの、鎖の末端にメチル 基があるも のと中央側 にメチル基 があるもの についてtoluene-d8中で1H-NMR、13C-NMR 測定を行っ た。溶質の 濃度は2∼3mol%程度とし、測定温度 は40 ℃∼−50 ℃の範囲で 変化させ、 装置はVarian Unity Plus 500FT-NMR Spectrometerを使用した。また直 鎖 側の末端α’を内部基準として化学シフト Δδ(observed)[ppm]=δ(observed)-δ(α’) を示し、さらに40 ℃を基準にして溶 媒シフト変化ΔΔδ(observed)[ppm]=Δδ(observed)-Δδ(40 ℃)をグラフに示し た。 グラフは13C-NMRにおいて、炭素数9のアル カンの中心の化学シフトについて比較した ものである。ΔΔδが負 になるほど 高磁場シ フトしてい る。稲倉は直 鎖アルカン の鎖の中 心は鎖が長 くなるにつ れて「折り たたまれ」 て芳香環が 近づきにく くなると報 告した。中 心側にメチル基が付いた4-methylnonaneや 5-methylnonaneは鎖の中心付近も高磁場シ フトを示し、芳香環が近 づきやすく なってい ることが推 測される。メ チル基が付 くことで 鎖の「折り たたみ」は 伸ばされ、中心に芳香 環が近づきやすくなる傾向にあることが考 えられる。 図 1 3C− NMR 主 鎖 の C数 :9 の 中 心 の 溶 媒 シ フ ト の 温 度 依 存 性 ( in toluene ) -0.60 -0.50 -0.40 -0.30 -0.20 -0.10 0.00 0.10 -60 -40 -20 0 20 40 60 Temperature(℃) ΔΔδ( ppm ) non 2mn 4mn 5mn(1 ) K. Nikki, H. Inakura, Wu-Le, N. Suzuki and
T. Endo, J.Chem.Soc., Perkin Trans. 2 , 2001, 2370
(2 )初 田 美 砂 紀 , N M R に よ る 分 子 間 相 互 作 用 の 研 究, 修 士 論 文 , 2002