Title
乳牛における創傷性第二胃炎の予防に関する研究( 内容の要
旨 )
Author(s)
高橋, 一二
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第009号
Issue Date
1994-03-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2063
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏
名(本籍)
学
位
の種
類
学
位
記
番
号
学位授
与年
月
日学位授与
の要件
研究科
及び専
攻
研究指導を受けた大学
学
位
論
文
題
目
審
査
委
員
高
橋
一(北海道)
博士(獣医学)
獣医博甲第
9号
平成6年3月14日
学位規則第4条第1項該当
連合獣医学研究科
獣医学専攻
帯広畜産大学
乳牛における創傷性第二胃炎の予防に関する研
究
主査
帯広畜産大学
副査
岩
手
大 学
副査
東京農工大学
副査
岐
阜
大 学
副査
岐
阜
大 学
副査
帯広畜産大学
授
授
授
授
授
授
教
教
教
教
教
教
夫
宏
治
孝
義
夫
恒
義
啓
義
明
瀬
田生
木
脇
田広
金
桐
鈴
武
山
論
文 の内
容
の要
旨
乳牛が金属異物を誤喋した結果発生する創傷性第二胃炎は古くから知られており、多く の研究報告がなされてきている。本疾患の予防対策としては1954年にC00perがアルニコ 棒状磁石の第二胃内投与を最初に提唱し、その後多数の牛臨床例に対する応用成績が報告 され、日本においては農林水産省が家畜共済の特定損害防止事業で、第二胃内投与用磁石 (マグネット)の投与を長年実施してきた。このような創傷性第二胃炎に対する予防対策 の結果として、本疾患は一時期沈静化したが、近年再び増加の傾向にある。その-要困と して、投与されたマグネットの減磁が示唆されている。そこで本研究では、従来行われて きた乳牛創傷性第二胃炎の予防対策について、X線透視検査所見を中心に検討を行った。 酪農家で飼養されている乳牛の第二胃内金属異物の存在状態を知る目的で、Z18頑の乳牛 について実施した×頼通視検査所見において、第二胃内にマグネットが存在していた牛は 全体の53.了%であり、第二胃内金属異物の存在率は67.9%であった。マグネット非存在牛 の約7%の牛はすでに金属異物が第二胃粘膜に刺入あるいは第二胃壁に穿孔していた。す なわち、現在、酪農家で飼養される乳牛には、第二胃内金属異物が高率に存在し、創傷性 第二胃炎の予防対策が充分に行われているとは言い難く、さらに徹底した第二胃内へのマーー87--グネット投与が必要であることが示唆された。また、マグネット存在牛の約6剖では鋭性 金属異物がマグネットから突出し、マグネットが第二胃内に存在するにもかかわらず約10 %の牛では金属異物の第二胃内遊離、胃粘膜刺入あるいは胃壁穿孔が認められ、約15%の 牛の第四胃内に金属異物が確認された。これらの成績は、いすれも投与されたアルニコマ グネットの減磁を示唆する所見であり、より効果的なマグネットの開発が必要と考えられ た。 希土類磁石は、アルニコ磁石に比較して国有保税力ならびに最大磁気エネルギー積が大 きいことから、金属異物をより長時間確実に保持することが可能であると考え、希土知磁 石を素材とした希土類マグネットを開発した。希土短マグネットは、防錆非磁性体ケース 内に収められた構造とし、中央の極の磁束密度を両端の極よりも高く設定した。アルニコ マグネットと希土類マグネットの経時的な磁力測定成続においては、アルニコマグネット では減磁するが、希土類マグネットの磁力は非常に安定していることが明らかとなった。 また、希土類マグネットを投与した乳牛のX浪速規模査所見においては、第二胃内の金属 異物は全て吸着され、金属異物のマグネットからの突出は認められす、また第四胃内に金 属異物は認められなかった。さらに、治療を目的として創傷性第二胃炎例に応用し、臨床 症状ならびに×線透視検査所見において良好な成績が得られたことから、希土類マグネッ ト投与を行う病期と金属異物による病勢の程度によっては相当の治療効果が期待されるこ とが明らかとなった。したがって、希土類マグネットは現時点において乳牛創傷性第二胃 炎の予防に最良であると判断された。 しかしながら、乳牛の創傷性第二胃炎に対する根本的な予防対策とは、誤囁した金属異 物をマグネットによって第二胃内に留め置くことではなく、乳牛が飼養されている環境か ら金属異物を一掃することであると考え、金属異物着磁回収装置を開発した。創傷性第二 胃炎牛から摘出した金属異物を用いた回収試験では、全ての異物が政義され、充分な効果 が期待された。酪農家の採草地および牛舎周辺における応用成績では、いすれの場所から も創傷性第二胃炎の原田となり得る金属異物が多数回収された。また、新築牛舎における 応用成績では、酪農家による金属異物の清掃後にも拘わらす、エ事に際して落下した著し い数の鋭利な金属異物が回収された。これらの成績から、乳牛の飼養環境には創傷性第二 胃炎の原困となり得る金属異物が多数存在し、これら金属異物の回収には金属異物着磁回 収装置の応用が、非常に有効であることが明らかとなった。 以上の研究結果から、乳牛における創傷性第二胃炎の予防は、①希土類マグネットが最 良である。さらに、②金属異物着磁回収装置による金属異物の徹底的な回収により完全な 予防をめざすことが確かめられた。
審
査
結
果 の 要 旨 乳牛が金属異物を誤囁した結果発生する創傷性第二胃炎は古くから知られている。本疾 患の予防対策としてはアルニコ棒状磁石(マグネット)の第二胃内投与が最初に提唱され、 その後多数の牛臨床例に対する応用成績が報告された。この結果、本疾患は一時期沈静化 したが、近年再び増加の傾向にある。その一要因として、投与されたマグネットの減磁がー88-示唆されてた。 そこで、まず著者は、酪農家で飼養されている乳牛の第二胃内の金属異物およぴマグネ ットの存在状態を再検討する目的で218頭の乳牛についてX線透視検査を圭施した。第二 胃内にマグネットが存在していた牛は全体の53.7%であり、第二胃内金属異物の存在車は 67.9%であった。マグネット非存在牛の約7%に金属異物が第二胃粘膜に刺入あるいは第 二胃壁に穿孔しているのが認められ、また、マグネット存在牛の約10%においては金属異 物が第二胃粘膜刺入あるいは胃壁穿孔が認められ、約15%の牛の第四胃内に金属異物が確 認された。これらの成績は、いすれも投与されたアルニコマグネットの減磁を示唆する所 見であり、より効果的なマグネットの開発が必要と考えられた。 っぎに、アルニコ磁石に比較して国有保磁力ならびに最大磁気エネルギー積が大きく、 金属異物をより長時間確実に保持することが可能であると考えられる希土短磁石を素材と した希土類マグネットを開発した。希土類マグネットは、防錆非磁性休ケース内に収めた 横道とし、中央の極の磁束密度を両端の極よりも高く設定した。アルニコマグネットと希 土類マグネットの軽時的な磁力測定成績では、アルニコマグネットでは減磁するが、希土 類マグネットの磁力は安定していることが明らかとなった。また、希土類マグネットを投 与した乳牛の×線透視検査所見においては、第二胃内の金属異物は全て吸着され、金属異 物のマグネットからの突出は認められず、また第四胃内に金属異物は認められなかった0 さらに、治療を目的として創傷性第二胃炎例に応用した括果、臨床症状ならびにX線透視 検査所見において良好な成績が得られたことから、投与の時期と病変の程度によっては相 当の治療効果が期待されることが明らかとなった。したがって、希土類マグネットは現時 点において本疾患の予防に最良であると判断された。 しかしながら、本疾患に対する根本的な予防対策は、誤囁した金属異物をマグネットに ょって第二胃内に留め置くことではなく、乳牛が飼養されている環境から金属異物を一掃 することであると考え、金属異物着磁回収装置を開発した。酪農家の採草地および牛舎周 辺における応用成績では、いすれの場所からも本疾患の原因となり得る金属異物が多数回 収された。また、新築牛舎での応用成績では、金属異物の清掃後にも拘わらす、工事に際 して落下した著しい致の鋭利な金属異物が回収された。これらの成績から、乳牛の飼養環 境には本疾患の原因となり得る金属異物が多数存在し、これら金属異物の回収には金属異 物着磁回収装置の応用が、非常に有効であることが明らかとなった。 以上、本研究により、乳牛における創傷性第二胃炎の予防は、①希土類マグネットが最 良である。さらに、②金属異物着磁回収装置による金属異物の徹底的な回収により完全な 予防をめざすことができることが明らかとなった。 平成6年1月12日における発表会及び論文提出、ならびに既発表論文(学杭誌掲載7騙) を6人の学位論文書査員が慎重塞議した結果、連合獣医学講座の学位論文として十分にふ さわしいことを認めた。