Title
イヌの乳腺腫瘍関連遺伝子 Brca2 の機能解析に関する研究(
内容の要旨 )
Author(s)
落合, 和彦
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第166号
Issue Date
2005-03-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2220
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類\ 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 落 合 和 彦(福島県) 博士(獣医) 獣医博甲第166号 平成17年3月14日 学位規則第4条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 岩手大学 イヌの乳腺腫瘍関連遺伝子Brca2の機能解析に閲す る研究 主査 岩 手 大 学 副査・ 帯広畜産大学 副査 岩手大学 副査 東京農工大学 副査 岐阜大学 善志之久嗣 一宏 和義幸 爪木 口 根尾 橋鈴谷山 丸 授授授授授 教教教教教 論 文 の 内 容 のノ要 旨 ィヌは乳腺腫瘍に羅患しやすく,雌イヌが発症する腫瘍のうち約40%と見積もられ・
ヒトの発症率の約3倍であり,小動物疾病治療の大きな課題である。ヒトでは遺伝性
乳癌の原因遺伝子として,且糾コり,・β舟ユ"がクローニングされ,その機能に関する研 究が展開されている。BRCAl及びBRCA2タンパク質は・減数分裂期の相同組換えや DNAの2本鎖切断修復に関わるRAD5一夕ンバク質と結合し・損傷修復機能を調節す ることが知られている。β月山2の変異は且糾ユ=に比べ乳癌発症の特異性が高いため, ィヌにおける遺伝性乳腺腫瘍の発症機構解明の有力な分子であると考えられるQ 本研究では,Brca2とRad51の相互作用を中心にして・イヌ乳腺腫瘍発症機構の解明 を試みた。 第一章で軋イヌの飢α2とR仇吏りをクローニングし・その構造と発現を解析したQ ィヌのBT・Ca2及びRad51は,それぞれ約Ilkbおよび一・5kbのcDNA・3471個及び339 個のアミノ酸をコードしていた0これらのアミノ酸配列を既報のヒト及びマウスの配 列と比較するとRad51の種間相同性が非常に高い(平均約99%)のに対してBrca2の 相同性は低かった(平均約63%)。 第二章では,イヌBrca2とRad51の結合をツーハイブリッド法によって検討した。 Brca2は,BRCrepeatsとC末端の両方でRad51と結合した。C末端での結合はマウス でしか証明されておらず,本研究の成果が第2の例である。また・8個のBRCrepeatsには結合が強いrepeat(l,2,4)と弱いrepeat(3,5,6,7,8)が存在し,BRCrepeats
をl個ずつ削った変異体ではその長さにより結合の強さが異なった。 第三章では,Rad51とrepeatの結合性をイヌとヒトのBRCrepeat4で比較したところ、 イヌのものがより強く結合した。BRCrepeat4.の配列を一部イヌ型からヒト型に置換す るとRad51との結合が弱くなり,ヒト型からイヌ型にすると強くなった。中でもヒト BRCrepeat4の】532番目のVa)ineをイヌ型のIsoIeucineに置換すると結合が約5倍・強く なった。また,.X線照射によってDNA損傷を誘導したCOS-7細胞でのRad51のfbcus 形成は,ヒト型BRCrepeat4よりもイヌ型変異導入体により強く阻害された。加えて, イヌのBrca2C末端もRad51のfbcus形成を阻害した。 第四章では,BRCrepeatsの塩基配列を解析し,変異および多型を検索した。その結 果,BRCrepeat3に存在するK1455Rの多型を発見したが,この変異はタンパク質の翻 訳が途中で停止する欠失変異ではなかった。
.以上のように,イヌでもBrca2が良ad51を介してDNAの相同由換え修復に関与する
ことが示され,イヌBrca2とRad51の結合能の変化およびBRC repeatsのアミノ酸置 換または変異が,DNA相同組換え修復調節のゆらぎをもたらす要因であることが初め て明らかとなった。今後,この制御機構の解明はDNA損傷修復の乱れによるイヌ乳腺 腫瘍発症の真因特定に大きな展望を開くと考えられる。 審 査 結 果 の 要 旨本研究は,イヌに好発する乳腺腫瘍の発症要因に関わる乳腺腫瘍関連遺伝子であ
るβ汀α2の機能を明らかにすることを目的とし,イヌβ化〃2及び加がJ遺伝子のク ローニング,両遺伝子産物の結合様式の解析,並びにBRCrepeatsの多型を解析す ることを試みたもので,以下の新知見を得ている。1)これまで明らかでなかったイヌ加α2及びR仇吏り遺伝子をクローニングし,
それぞれ約11kb、1.5kbのcDNA及び3471個,339個のアミノ酸から構成されるこ と,ヒト,マウスのアミノ酸配列とBrca2は約63%,Rad51は約99%の相同性であ ることを明らかにした。2)Brca2とRad51の結合を検討し,Brca2は,BRCrepeats とC末端わ両方でRad51と結合すること,8個のBRCrepeats(BRCl-8)の結合能 には差があり,特にBRC4が強いこと・を発見した。3)repeatsとRad51の結合能を アミノ酸置換した変異導入体を用いて検証し,ヒト型の配列に比較してイヌ型の変 異導入体がRad51と強く結合すること,中でもヒト型BRC4の1532番目のⅦlineをイヌ型のIsoleucineに置換した変異体の結合力が約5倍となることを明らかにし
た。また,Rad51focus形成抑制の検討から,イヌ型変異導入BRC4と内在性Rad51 との結合作用が強いこと,加えて,イヌ・Brca2C末端も内在性Rad51と強く結合す ることを確認した。4)BRCrepeatsの解析からBRCrepeat3にイヌ特異的なK1455Rの多型を発見し,この多型配列はRad51とより強く結合することを明らかにした。
本研究で得られた成果は,イヌではBrca2とRad51の結合能の変化及びBRC
repeatsのアミノ酸置換あるいは変異が,DNA相同組換え修復調節に変化をもたら す要因であることを初めて立証するものであり,Brca2が変異するとDNA損傷の修 復に破綻を招き,遺伝子を不安定化することからイヌの乳腺腫瘍を進行させる可能 性を示唆した。今後,この制御機構の解明はDNA損傷修復の乱れによるイヌ乳腺 腫癌発症の真因特定や発症抑制,治療薬の開発などに貢献すると考えられる。-184-以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の 学位論文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1)題 目:Cloningandsequencingfu11lerlgthofcanineBrca2andRad51cDNA 著 者 名: 学術雑誌名: 巻・号・頁・ 2)題 目: 著 者 名: _学術雑誌名: 巻・号・頁・ Ochiai,K.,Morimatsu,M.,7bmizawa,N.andSyuto,B. JournalofVbterinaryMedicalScience 発行年:63(10):1103-1108,2001 Brca2C-terminusinteractswithRad51andcontributestonuclearfocus formationindouble-StrandbreakrepalrOfDNA Ochiai,K.,Morimatsu,M.,Ybshikawa,Y,Syuto,B.and Hashizume,K. BiomedicalResearch 発行年:25(6):269-275,2004
既琴表学術論文
1)題 目:PropertiesofthetumorsuppressorgeneBrca2inthecat 著 者 名:00numa,T.,Morimatsu,M.,Ochiai,K.andSyuto,B. 仏学術雑誌名:JournalofVeterinaryMedic?1Science 巻・号・頁・発行年:65(10):1123-1126,20032)`題 目:Association ofthe nucleoc叩Sid protein ofthe Seouland Hantaan
hantaviruSeSWithsmallubiquitin-1ikemodiner-1-relatedmolecules ・著 者 名:Lee,BH.,Ybshimatsu,K.,Maeda,A.,Ochiai,K.,Morimatsu,M., Araki,K.,Ogino,M.,Morikawa,S.andArikawa,J. 学術雑誌名:VirusResearCh 巻・号・頁・発行年:98(l):83-91,2003 3)題 目:CDNAmicroarrayanalysis・Ofbovineembryogeneexpressionpro五1es duringthepre-implantationperiod 著 者 名:Ushizawa,K.,Herath,C.B.,Kaneyama,K.,Shiqjima,S.,Hirasawa,A., Tbkahashi,T.,Imai,K.,Ochiai,K.,Tbkunaga,T.,恥unoda,Yl, Tbqiimoto,G,andHashizume,K. 学術雑誌名:ReproductiveBiologyandEndocrinology 巻・号・頁・発行年:2:77,2004