Title
し尿処理における処理機能と優占細菌相の生化学的性質と
の関連性に関する研究( 内容の要旨 )
Author(s)
Lee Boon Sing
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第092号
Issue Date
1997-03-14
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2433
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(国籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与 の要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞
Lee Boon Sing (マレーシア) 博士(農学) 農博甲第92号 平成9年3月14日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 信州大学 し尿処理における処理機能と優占細菌相の生化 学的性質との関連性に関する研究 主査 信 州 大 学 教 授 入 江 鍍 副査 岐 阜 大 学 教 授 高見澤 一 副査 静 岡 大 学 教 授 坂 田 完 副査 信 州 大 学 教 授 寄 藤 高 副査 信 州 大 学 助教授 鹿 田 三 裕 三 光 満 論 文 の 内 容 の 要 旨 下水処理やし尿処理は改善されつつあるが、悪臭や余剰汚泥量の低減化、季飾変動抑制 等が求められている。この間題は基本的に、効率的且つ無臭処理に関与する細菌相が不明 であることに由来するものである。伊那中央衛生センターでは1989年から効率的且つ無 臭でし尿が処理できるようになり、季節変動も解消した。当研究室では1991年から、こ の施設のし尿処理に関与する細菌相の解明と菌体濃度の維持並びに処理機構の解明に取り 組んできた。その結果、処理が!塾頭叫SSp.や/カルシ寸ア型細菌によって行われていることが 明らかとなっている。この論文は第1章では、この処理施設で1994年には処理が更に改 善されていることに注目し、再度優占細菌を単離・同定し、澱粉、蛋白質、油脂分解性・ 資化性並びに悪臭成分(アンモニア、硫化水素、トリエチ/けミン)の利用性・分解性・資化性を検討し、 1991年の状態と比較するとともに、効率的・無臭し尿処理が可能である細菌相の性質を 解析している。そして細菌相の生化学的性質とし尿処理の改善度との関連性を明らかにし ようとしている。第2章では主に伊那市近郊のし尿処理施設の処理状態を調査し、汚泥発 生量から処理の優劣を比較し、優占細菌相を単離・同定すると共に澱粉・蛋白質・油脂・ 悪臭成分の分解・資化性を比較し、処理施設の汚泥発生量と細菌相の生化学的性質との関 係を解析している。その結果、伊那中央衛生センター処理槽の活性汚泥細菌数は1Ⅹ1げ個 /ml∼lxlO9個/mlで、優占細菌相はBacillus Sp.が亜∼77%、ノ加レシヾァ型細菌が5∼18%、 卯皿陽性梓菌12∼27%、g柑m陰性樟菌2∼16乳球菌2%その他酵母を検出した。迦 迦旦Sp.とノカルシ∼ァ型細菌の合計は最高95%を占めていた。軸iuussp.とノ如ゾア型細菌の種は、 Bacillus Sp・は臥cereus、B・mCgaterium、B.thuringiensis、B.pumi1us、B3ubdlis及び墜盛垣
-51-匹垣から成り ノかレイシヾァ型細菌はOerskoviaturbataから成っていること、 は1991年に比し大幅に減少し、1994年にはB.cereus B.subtilisと0.tud)ataが増加していることを明らかに B.thuringiensi阜 とB.∝ble酢1iiが出現していること、 した。更に、墜嬰叩il鱒は B.1icbenib misとB.subtilisの形質を有することを明らかにした。総細菌数に対する澱粉・蛋白質 油脂分解性菌株は24%、31%、66%%であり、 主としてBacillus sp.とノカルシナァ型細菌が関係 し、悪臭成分の分解・資化性・利用性についても検討し、効率的無臭し尿処理における細 菌の基質分解性の割合を定量的に作成するに至っている。次に処理方式の異なる4カ所の し尿処理施設の処理状態を汚泥発生率(投入量に対する脱水ケーキ発生量)から比較し、伊那 中央衛生センター(3.3%)、D施設(5.7%)、C施設(7.8%)、B施設(39%)、A施設 (90%)の順序で評価している。次いで、各施設から優占細菌を単離し、総細菌数がSBR 方式を除いて約1Ⅹ1げ個/mlであり、D施設ではklOll個/mlであった。 Bacillus sp.の割合 は30%∼59‰、D施設では21%、ノカルシ○ァ型細菌はD施設からのみ単離されている。単離 細菌の分解性から、汚泥発生率の高い施設では油脂分解性が低いことを明らかにした。又、 単離されたBacillus B油s、 sp.の多くは強い蛋白質可溶化能を示し、これらの種が B.subtilisの交雑した菌株である可能性を示唆した。 審 査 結 果 の 要 旨 B.1icheniformis、 活性汚泥法は1914年に開発され、80年以上にわたって水処理生物処理工程に 適用されている。しかし、効率的且つ無臭処理I■まほとんど行われていない。これ は、水処理施設でこの様な処理がほとんど行われず、生物処理工程における活性 汚泥細菌は分解性が比較的低いと考えられてきたためと考えられる。しかし、伊 那中央衛生センターでは1989年からし尿を効率的且つ無臭で処理出来るように なり、 1991年活性汚泥細菌を単離し、BaciIlus sp.を主体とする細菌群が処理の主 役を担っており、従来の研究結果と異なることが明らかにされた。この研究はこ のような背景の基に行われており、第1章では、更に処理が改善された伊都中央 衛生センターのし尿消化槽活性汚泥細菌を1994年単離し、単離細菌の生化学的 性質を明らかにし、処理の改善と1991年の細菌相の細菌相の変化との関係を解 析し、第2章では各地し尿処理施設を汚泥発生率(投入量に対する汚泥脱水ケーキ 発生量)を指標として処理状況を評価し、各施設処理槽から単離した細菌の澱粉 ・蛋白質・油脂分解性を比較し、効率的処理が可能な細菌相とその生化学的性質 を明らかにしている。 現在、活性汚泥の分解性の簡易評価法は確立されていない。当研究室では、生 物性廃棄物の分解性は澱粉・蛋白質■油脂分解性から定量的に評価する事■を試み ているが、申請者は1994年伊那中央衛生センターし尿消化槽から細菌を単離し、 細菌数を計測するとともに単離細菌のし尿分解性をこの手法とし尿寒天培地上で の生育性で評価し、Baci11us属細菌とノカルシヾァ型細菌が効率的処理に重要である事 を明らかにしている。更に、これらの単離細菌の種の同定を行っている。ここで
-52-採られた細菌のし尿分解性に関する評価方法はこれまで1例あるに過ぎなかった が、この研究で再確認された点が評価される。更に、効率的し尿処理に関与する
細菌相が辿ssp.とノカ/がア型細粛が重要である点を朗らかにした例は1991年当
研究室で行われた研究を補完するとともに再確認する事となり高く評価される。 更に辿ssp.とノカルシヾァ型細菌の種の同定を、生育温度、嫌気性生育性、各種生 化学反応性、GC含量から行い、更に各種炭素源資化性から細菌の種を同定する キットを用いて確認している。そして効率的し尿処理における処理機能を細菌相の種 の段階で定量的に評価しているが実験事実、評価法ともこれまで知られていない 事項を数多く含み高く評価される。 次にこの論文は4カ所のし尿処理施設の処理槽から優占細菌を単離し、総細菌 数を明らかにして、Baci11us Sp.、ノカルシヾァ型細菌、gram陽性梓菌、gram陰性梓菌の 割合を明らかにしている。次に単離細菌の生化学的性質や澱粉・蛋白質・油脂分 解性を調査し、汚泥発生率の高い処理施設では油脂分解性を示す菌株数の割合が 低く、汚泥発生率が低くと油脂分解性菌株数が高いことを見出している。更に、 油脂分解性が高く、汚泥発生率が低い場合でもBacillus Sp.が油脂分解性に関係し ていない場合汚泥発生率に3倍以上の変動が見られ、Bacillus Sp.の処理への重要 性を明らかにしている。これらの知見は初めて明らかにされた事項で、高く評価 される。更に、辿ssp.の種の同定を行い、効率的し尿処理に重要であるクックドミート分解性を示すBaci11us B.1icheniformis、 B画、 B.subtilisの形質を有する
と推察している。これらの成果は新規な事項であり高く評価される。又、バルキン クヾを起こし、固液分離を阻害するフィラメント性の細菌がBicillus ンの添加で切断する事、Bacillus Sp.であり、マク■ネシウムイオ Sp.を倭占化する事によって下水処理が改善される 可能性があること等が示されている。これらの研究成果は日本水処理生物学会誌 32巻第2号幻頁∼104頁(1996、李文生他)、防菌防微24巻11号709貢∼717 頁(1996、李文生他)、防菌防徹25巻4号印刷中(1997、李文生他)に掲載/掲 載予定である。本論文は新規性に富む内容を含み、今後の水処理の改善に大きく 寄与する可能性大と考えられ、博士の学位に合格と認めた。