Title
ラット部分肝保存時の肝切離面の影響及び肝切離面被覆処
置の有用性に関する実験的研究 第1編 ラット部分肝保存時
の肝切離面の影響に関する実験的研究 第2編 ラット部分肝
保存時のフィブリン糊を用いた肝切離面被覆処置の有用性
に関する実験的研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
菅野, 昭宏
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第865号
Issue Date
1993-07-21
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15409
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 菅 野 昭 宏(大阪府) 博 士(医学) 乙第 865 号 平成 5 年 7
月
21日学位規則第4条第2項該当
ラット部分肝保存時の肝切離面の影響及び肝切離面被覆処置の有用性に関する実験的研究 第1編 ラット部分肝保存時の肝切離面の影響に関する実験的研究 第2編 ラット部分肝保存時のフィプリン棚を用いた肝切離面被覆処置の有用性に 関する実験的研究 審 査 委 員 (主査)教授 佐 治 重 豊 (副査)教授 広 瀬 一 教授 武藤
泰
敏 論 文内
容 の 要旨
Starzlらによって始められた肝移植は,重症肝不全患者に対する恒久的な治療法として確立したが,欧米での慢性的な donor肝不足と本邦における移植事情から部分肝移植が注目され,One donorから成人と小児への同時分割移植が試みられて いる。一方,保存液の開発は臓器の長時間保存を可能にしたが,その結果成人に移植された残りの部分肝が遠隔地へ葡送され, 小児に移植される可能性が推察される。しかしこの場合,部分肝は肝切離面が露出した状態であり輸送・保存中の影響が危惧 されるが,部分肝を全肝と同様方法で保存可能かに関しては詳細な検討報告はない。そこで,申請者はラット部分肝を作製し てUniversity of Wisconsin(UW)液で48時間単純浸漬保存を行い,摘出肝潜流装置を用いた機能面と病理組織学的所見 から全肝保存と比較検討し,研究Ⅰで部分肝保存時の問題点を明らかにした。また研究Ⅱでは,肝切離面あるいは矩膜欠姐部 をフィプリン糊で被覆保護処置した場合の影響を種々検討し,部分肝切離面被覆処置の有用性を実験的に検討し以下の諸結果 を得た。 研 究Ⅰ 8∼10適齢Wistar系雄性ラットを十字切開法にて開腹乳胆管および門脈内にチュウビングし下大静脈を肝上部で切離後肝 下部で切断して摘出した。一方,肝実質切離を伴う方法で約55%部分肝を作製し胆管と門脈に同様カニュレーションした。保 存はUW液を用い4℃で亜時間単純浸潰保存を行い,保存肝の機能はTN式摘出臓器潜流装置を用いて評価し,形態学的変化は 病理組織学的所見から推察した。なお,潜流液の組成はKrebsRinger液を基剤とし高流量酸素噴射法にて酸素化を図った。 結果:(1)肝逸脱酵素の単位肝湿重iあたりの経時的変動では,GOT,GPT,LDHとも全肝では120分間の潜流で約3∼5 倍に増加し,その程度は無保存群に比べ著明で保存による機能障害が示唆された。部分肝保存の場合も同様所見が観察された が,その程度は全肝保存時に比べより覇者であった。 (2)アンモニア土は,濯流前値に比べ全肝では保存・無保存で著差はみられなかったが,部分肝では潜流後に著明な低値を示 した。 (3)単位肝湿重土あたりのグルコース産生主は濯流後増加したが,無保存時の方が有意の高値を示した。全肝と部分肝との 比較では部分肝の方が高値を示した。 (4)ケトン休比は各群とも潜流120分後は60分後に比べ有意に増加し,保存による影響では全肝で若干低下し,部分肝では有 意に低下した。全肝と部分肝との比較では全肝が有意に高値を示した。 (5)胆汁分泌土は確流中はぼ直線的に増加したが,総胆汁土は全肝,部分肝とも保存により有意に低下し,その程度は部分肝 で著明であった。 (6)その他,検索項目の中ではK+値は保存群で有意の低値を,濯流tは部分肝保存後有意に低下し,門脈抵抗は有意に増加 したが,潜流圧,液温度,PHには著差なく,肝湿重暮も保存により約95%前後に減少したが,各群間で著差はみられなかっ た。 (7)病理組織学的所見で,全肝保存後の濯流後に中心静脈周囲肝細胞の空胞変性,壊死,類洞の関大などが軽度観察された。 部分肝保存時も同様所見が観察されたが肝切離面近傍では肝細胞の染色性低下,空胞変性,壊死および頬洞の関大,肝細胞索 65状構造の乱れ,細胞浸潤像などが観察された。 以上の結果,部分肝保存の場合には肝切離面に対するなんらかの被覆保護処置の必要性が示唆された。 研 究Ⅱ 部分肝切離面あるいは肝中葉の腹側兼膜を約40%剥離して作製した焚膜欠損面をフィプリン糊(ペリブストP)で被覆保護 し,4℃のUW液中に48時間あるいはEuro-Collins(EC)液中に24時間単純浸損保存後,同様摘出肝濯流装置を用い機能面 の評価を行い,形態学的変化を病理組織学的に確認した。 結果:(1)部分肝切離面をフィプリン糊で被覆処置後亜時間保存した場合,非被覆群に比べ胆汁分泌量が増加し,ケトン体比 が改善したが,逸脱酵素,アンモニア除去阻グルコース産生能には著差はみられなかった。病理組織学的所見では,肝切離 面近傍の肝細胞変性像は被覆処置により軽度の改善がみられた。 (2)燥膜欠損モデルを作製しUW液で亜時間保存した場合,被覆群では肝逸脱酵素,胆汁分泌量,ケトン体比は若干改善した が,アンモニア除去能やグルコース産生能は逆に低下した。また,病理組織学的には燥膜欠祖部近傍で肝細胞の変性,類洞の 開大,索状構造の乱れ,細胞浸潤像が観葉されたが,被覆処置により明らかな改善が観察された。 (3)焚膜欠損モデルをEC液で24時間保存した場合,UW液で48時間保存時に相当する機能障害が観察された。また,被覆処 置による影響では非被覆群に比べ胆汁分泌量が増加し,ケトン体比が若干改善したが,アンモニア除去能は逆に有意の低値を 示し,逸脱酵素やグルコース産生能では著差はみられなかった。 (4)フィプリン糊にステロイド剤や抗生物質を添加した場合は,兜膜欠損部近傍で細胞浸潤程度が若干軽度であったが,著差 はみられなかった。 以上の結果,部分肝保存・輸送時の種々の傷害に対し肝切離面をフィプリン糊により被覆保護する方法の有用性が示唆され た。 考察と結語 部分肝ではUW液などによる浸潰保存中にも肝切離面が機械的刺激,保存液の過浸透による傷害,感染などの種々の傷害を 受ける可能性が推察されるが,切離面を被覆保護処置することにより胆汁分泌王,ケトン体比,濯流流量および門脈抵抗など の機能面の観察で若干の改善がみられ,病理組織学的所見からも肝切離面近傍の浮腫,頬洞の関大,肝細胞空胞化などの変性 所見が軽減された。これら傷害の改善理由として,被覆処置により肝切離面や炸膜欠損部からの胆汁漏出防止効果と欠損部近 傍の肝細胞を機械的刺激や感染から防御できる点を推察している。一方,今回実験に用いたフィプリン接着剤ペリブラストP は,肝切離面の被覆保護処置や肝断面などの実質性出血に対して一般臨床で汎用され,実験的にもフィプリン糊貼付により良 好な創治癒が得られており,被覆保護剤として一応の基準を満たすものと推察される。従って,遠隔地への部分肝輸送を想定 した場合,肝切離面や叛膜欠損面に対する輸送中の機械的傷害や感染に対して物理的にこれを被覆保護処置する必要性を示唆 した点で意義が認められると推察される。