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人胎児羊膜の細胞学的研究

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(1)

〔原 著〕

〔特刎掲載〕

(東京女医大越第26巻第10号頁510−516昭和31年10月)

人胎児羊膜の細胞学的研究

東京女子医科大学解剖学教室(主任久保田教授) 阿 ア

出 ヒ 〆 世 ヨ

(受付 昭和31年9月18日)

緒 言 1921年Grosserにより人胎児羊膜の上皮細胞 の染色体についての研究が発表きれている。私も Grosserと同様の方法即ち切片にする事無く,膜 のままを鏡検した。然るに上皮細胞のそれとは全 く異った形態をもつ細胞に遭遇した。此の細胞は 各層の中で特に大きな細胞体をもち,原形質内に 多数の空胞を含有している。「アメーバ」の如き 不規則な型を保つといへども規則正しい聞接細胞 分裂を行っているのである。

Bautsmann u. Schr6der(1955)の Sog.

Hofbauer−ZellenのRuheform に属する Sch− aumzellen に非常によく似てはいるが私の観て いるものと同一のものであるかどうかは未だ決定 しがたい。 材料及び方法 入胎児羊膜の新鮮なるものを膜の一部分又は月齢の 若いものなれば膜全体を1図の如く時計皿の中にパラ フィンを溶解し入れ,膜を其のままパラフィン盤の上 に緻嚢なく拡げ,木揚子の尖鋭なるものを突き刺して 適度の緊張をはかる。Champy氏液, Levi氏液, Fle−

mming氏液,ホルマリン液等の固定液を微温となし 膜の上に注ぎ入れて固定する。固定液の温度低き場合 膜は収縮して厚くなり鏡検不能となる。周定時闘は組 織片の場合よりも著しく短縮して,2時間又は3時 聞,膜の大小,気候の温暖の差により時間にも叉差を つけた。染色は主としてHeide:nhain氏の鉄ヘマトキ シリンを便用し,ヘマトキシリン,エオシン,Best のカ7レミン,Feulgen−Bauer氏法面の染色を行った。 所 見 細胞の形:アメーバの如き型にして定型なく極 めて不規則な型をもつ細胞である(2∼6図)。 大きさ:大小の差甚しく上皮細胞の大きさの約 10倍以上のものもある。 核:静止状態の核は,鉄ヘマトキシリンに旧染 し,恰も濃縮を起しているかの様に圧平されて空

胞の間に介在している場合もある(2,3,5

図)。核の大ききは原形質の大ききに比して小さ い。 原形質内は大小多数の空胞様のものにて充満 し,空胞と空胞との間には鉄ヘマトキシリンに濃 染する半月状の顯粒が周囲の空胞様のものに圧平 されて存在している。此の空胞様のものは,Best のカルミンにも染まらず,Bauer.氏法を施して も反応を示さない。 尚各期に於ける原形質内の変化を詳細にみる に,静止状態の細胞原形質に於て空胞はすこぶる 小さく且つ多数にして(2,3,4,5,10,11, 12図),空胞様のものの間にある半月状のものも 多数存在する(2図)。 前期の初期に於ては6図の如く核は大にして且 つ明調となり,核内に大小の顯粒が多量出現し原 形質内の空胞様のものは徐々に減じて来る。前期 の後期と思われる細胞にては,染色糸は鮮明とな り,個々に切れて染色体としての型を整える様に

Hideyo ABE (Department of Anatomy, Tokyo Women’s Medica] Co31ege) : Cytological Studies on the human Am:nion.

(2)

なる。時期が進むにつれて徐々にではあるが原形 質内の空胞様のものの大ききは増大し,その数は 減少し空胞と空胞との間の半月状のものはこれも 叉徐々に減少する。中期に至れば染色体が赤道面 に並ぶ事は勿論であるが(8,.9,13,14図),空 胞様のものは増大して非常に大きくなり2∼3個 叉は数個に減少する(7,14図)。時には空胞様の ものが全部融合し,大空胞を有する細胞となる場 合もある(7図)。 然し細胞自体の大きさは静止期及び前期に比較 して小となる(,3,6,7,14,15図)。後期の 細胞に育ても多くの場合空胞様のものも大にして 数少く,空胞の間の半月状のものもみる事が出来 ない(8図)。 終期の後期になると空胞様のものも中期終期に 比較して小となり且つ数も多くなり,半月状のも のも少量認められる。 核は静止の時期よりも稽々大であり,濃縮をお こしていない。 此の空胞様のものは全期をとおしても膚Best のカルミンにも,Bauer氏法にも反応を示さな かった。空胞と空胞との間にある半月状のものは 鉄ヘマトキシリンに二二するところからミトコン ドリアではないかと思われる。 考 察 細胞原形質内にある空胞が細胞分裂の進行にと もなって,数を減じ,再び増加し,叉その大きさ を変えると云う事は,細胞分裂の際に,核の変化 と同様の変化が原形:質内にも著しい事を意味する ものであるが,空胞が如何なる生理郎現象に由来 して,静止期に小なるものが中期には大なる空胞 となるものかは今後に残された問題と思う。

中原氏(1955)はMTK肉腫細胞の生体観察

に於て空胞が比較的多量に存在する細胞を認め, 叉此の実験において変形した細胞にアメーバ状運 動がはげしいと記載している。 叉Lewis(1951)が, Fibroblastの組織培養 の研究で,分裂の際は,偽足を持てる細胞も,足 をひっこめて,球形を呈すると言っているが私の みている此の細胞も,中期には多数のものが球形 を呈し,球形を呈せぬものは稀である。静.止期, 前期の細胞は,殆んどすべてのものが突起様のも のを出し,甚だ不規則の形をしていて,体中に空 胞を持っているところがらみて正常ではなくて変 形している線維細胞ではないかと老えられる。 上記の中原氏(1955)の実験研究中のミトコン ドリアは変形した細胞に於て球形のものもあるが 長い糸状のものもあるとしている。此の細胞の揚 合大部分のものが糸状を呈している。 外・漏壷(1956)のシロネズミの腹水腫瘍の実験 によれば,分葉核をもつている細胞においてす ら,分裂の過程は何等他の正常単核細胞と変るこ となく経過し,分裂終了後静止期に入る前の核質 の変化から起ると記載している。がこの細胞では 極く稀に二核のものに遭遇したが,その他の場合 は不規則なる型を持っている細胞にもかかわらず 整然と分裂を行っている。従って,此の細胞は変 形はしているが活動は正常の細胞と・変りないもの と想われる。 要 約 人胎児羊膜を膜状のまま鏡検してみるに,上皮 細胞の並列している直下の部分にある変形せる線 維細胞を見た。それは形態は不規則なるにもかか わらず,甚だ規則的なる分裂を営んでいる事が判 り,ミトコンドリア等の形態からみて,現在活動 している事が考えられる。細胞分裂の際の原形質 内の変化をみる為には都合よき細胞にして,空胞 様のものが,核の変化に伴ってその数,大きさに 変化をみせているので,分裂は,核のみでは無く て原形質も共に非常なる変化をしている事が形態 的に確認出来た。又その変化は,常に核の変化と 深い関係を持ち続けている。 終りに臨み終姶一指淳,御校閲を賜わりました久保 田教授に深甚の謝意を表します。 尚本論文の要旨は東京女子医科大手々会第17何, 第18回総会及第9回日本解剖学会関東地方会に於て発 表した。 文 献

1) Clara,M. : Entwicklungsgeschichte des Me−

nschen. 67, 89, 93 (1949)

2) Bautsmann, H. : Analogc histofunktionelle Strukturen bei lnvertebraten und Vertebraten

FormeR von extremstem systematischen

Abstand. Anatomischer Anzeiger 101 Heft M 9rv16 (1954)

3) Bautzmann, H. Schreder, R.: Vergleichende

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(3)

の ロ

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ausserhalb der Placenta. Archi.v fdr Gyn銭ko一

.正ogie.187; 65ピ)76 (1955)

5)B鋤tzmann, H. Schr6der,R:Vergleichende Studien Uber Bau und Funkltion des Amnions. Neue Befunde am mensch1童chen Amnion mit Einschluss.seiner freien Bindegewebe Qder. sog.耳offbauerze11en. Zeitschrift fUr Anatomie und ED.twicklungsgeschichte. 羽9, 7∼22

(1955)

6)Grosser、0.:Uber die Chromosomenzahl

beim Menschen. Anat. Anz,(Erg加zungsheft)

54, 1’81∼185 (1921)

7)Grosser,0.:. FrUhentwicklung, Eihautbildu− ng und Placentatioh des Menschen.. und. der

S農ugetiere.(1927)

8)Keibel一]Ma}蓋盈s.:Handbuch der Entwicklun− gsgeschichte des Menschen.1,(1910).

9) Lewis.・W. H.:Cell Division・with Special

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.10)申原皓:生体襯察においてみられ.たMTK肉腫

細包の変形運動(予報)遺伝勃齢・30・(2) 70 (口召30).

11) Okada, 1”.A. and.Nakahara, H.:Studies on the Cytoplasmic GranUles in the Tumor Cells of the MTK−Sarcoma. ll Morphology and behavior of the mitochondria in living

tumor cells under normal and treated conditi− ons. Cytologia. 21, 85rv96 (1956)

12)外村 晶:シuネズミの腹水腫瘍MTK IVに みられる分葉核形成細胞,遺伝学雑誌,51,125

∼129 (日召31)

13) Pollister, A,W. : Mitochondorial O’rientati− ons and Molecular Pat’terns. Physiol. Zool. 14, 268tv280 (1941)

(4)

1図

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(6)

上12図 下14図

上13図 下15図

(7)

附図説明 2∼9は,対物鏡千代田油浸装置アク・マート1.25 mm,接眼鏡15を用い鏡筒長160mmとし,アツベ氏 描写器をもつて描写す。 10∼15は,対物鏡ライツ油浸装置アクnマート1.25 mm,接眼鏡10を用いて写真撮影をした。 1図羊膜を時計皿内のパラフ■ン盤上に伸張す。 a 本揚子 b 三羊膜 c 時計皿 d 穴ラフイン 2図 静止期,核,極度に圧平されている。 空胞もミトコンドリアも多しQ K 核 Mミトコンドリア V 空胞 3図 静止なるも突起を出して長し。 F 突起 4図 空胞多きも終期を経て前期に移行せんとして いる細胞ならん。 =二核を有す。 5図前期,核も活動をはじめ,空胞も徐々に大き くなりつつある状態,細長のミトコンドリア あり。不整形なり。 6図 前期,ミトコンドリア減少す。空胞大きくな る。核濃縮をおこしつつも活動していて大。 7図 中期,空胞大となり細胞小となる。 8図 終期,染色体両極に分れる。 9図 終期のおわり,完全に二つの細胞の間に膜が 出来ている。

M両細胞の閲の膜

c i染色体 10図,11図 共に変形の度少きもの。 共に静止期。 12図 静止期,胞体は空胞にて充満す。 核は縮濃。 K 核 F 突起 V 空胞 13図 前期なるも中期に近づける状態。 空胞大となり,ミ]・コンドリア減少。 14図 中期,渠色体の個々は写真にては木明。 7図と同時期。 C 染色体 V 空胞 15図 後期,染色体両極にわかれる。 8図と同様。 C 各二っにわかれたる染色体 以上標本はすべてHeidenhain氏鉄ヘマトキシリン 染色。 一516一

参照

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