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間代性痙攣の発生機序

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7 〔原 著〕 (東京女医大西 第25巻 第8号頁299−314昭和30年8月)

聞磁性痙攣の発生機序

財団法入 林研究所 (主任林謙所長)

鬼 キ 頭 トウ 京 キヨウ

(受付 昭和30年2月18目)

動物の皮質運動領に電極をおいて,単一電撃を 与えれば相当部位に収縮を起す。その反応は一つ の筋のみに現われるのでなく,いくつかの筋が働 くのが普通なので,〈対単運動〉と呼ばれる。こ の場合,十分弱い反応の起る謡言の強さを選ん で,刺戟頻度を増すと相当筋群に持続的な収縮, 即ちく強縮》を起す。強縮は刺戟をやめれば消失 する。この刺戟頻度で強度を増すと,強縮を起し ていた筋群に次第にリズムのある運動,即ちく間 代性運動〉が現われ,これが柑当筋群のみでなく 全身の筋群に波及.してゆき,即戦をやめてもなお 運動だけはあとまで続いて残っているようにな る。これがく二代性痙攣〉である。 この対単運動と間代性運動が独立したものであ にユフち り ることは,伝導径路の追跡からもわ潜るが,皮質 運動領に作用してそれぞれの運動を選択的に起す (3,9,Io) 化学物質が救い出されていることからもいえる。 即ち,現象としてはこの両者が異なるものである ことは確かであるが,これらの運動を起す神経機 構がどのように異なるかはわかっていない。そこ で,私は両者の神経機構,特に《聞代性痙攣》の 発現に至るまでの上位中枢活動を明らかにするこ とを目的として次の実験を行ったのである。 第1の実験は間代性痙攣を起してV・る時の上位 中枢の各部位(皮質,尾状核,レンズ核,視躰) の電気活動を記録して,その活動と痙攣の発現に 何らかの因果関係が成立するか否かを研討した。 ついで第2の実験では,運動を現わす筋の状態を 直接規定している脊髄前角細胞の活動状態を皮質 刺戟によって起る対単運動の場合と同じく闇代運 動の揚合を比較して,両者の特質を研討し疫ので ある。 子 コ

実験方法

動物:実験動物としてはウサギ,ネコ,イヌを三つ た。 手術:開頭にはノボカイン局所麻酔を,侵襲部位が大 きくなる場合には溶性メチルヘキサビタールの静注 深麻酔を行い,動物の自発運動が現われるようにな つてから笑験を行った。末学神経,筋の乾燥を防ぐ ために,35。∼40。Cに暖めた流勤パラフィンを露出 面のすべてにわたってくり返し塗布した。 刺戟:間代性痙攣を起すためには化学刺戟と電気刺戟 を使った。上位中枢活動の研究には,その発現が徐 々で痙攣が現われるより前に脳波あるいは皮質波に 特有た所見を現わすので痙攣時の所見をつかみやす いという点から,化学刺戟(イソニコチン酸ヒドラ チツド10%リンゲル溶液の30∼100mg/kgの静注 ぐヱの および局所的注入)を使った。脊髄活動の研究には 双極電極(銀線で極目距離2mm以下)を用い, 日本光電の出力絶縁方式の矩形波を種々の持続,強 度および頻度で与えた。 電極:皮質および皮質下核からの電気的活動を導出す る場合の電極としては,深さに応じソコード針,絹 針,歯科用丸ブローチなどの尖端を除いて絶縁した ものに柔らかな導線をつけて使った。無関電極とし ては一辺1あるいは2cmの銀板を皮膚を剥離し た鼻骨上に固定した。この場合頭頸部の筋を出来る だけ広ぐ剥離し頭蓋上の縫線を目標として,経験的 に得た数値にしたがって頭骨に穴をあけ,硬膜上よ り電極針を挿入した。針は呼吸による脳の動揺によ っては脳実質と共に自由に動くが,針と脳実質との 間には動きのないようにした。即ち,電極には㌧なん らの麦持装置もつけていない。このように挿入ある いは接触を行えば動物の激しい動きにかかわらず, 電極と被検体とは十分密着していることが電気的に 分る。なお,局所的な化学刺戟を行いながらその部 一299一

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実験成績

〔A〕 間代性痙攣を起した時の上位中枢 の活動 動物は開頭を行わすに大脳皮質,尾状核,レン ズ核,棚木に針状電極を挿入し,静注および視林 の局所的な化学刺戟(・fソニコチン酸ヒドラチッ ド10%リンゲル液0.02m1注入)によって,電気 現象を指標として初発活動部位ならびに皮質と皮 質下核の活動の相互関係を研討した。 〔1〕 静脈注射で起した日代性痙攣 はじめに掲げた例はネコにINAH 100 mg/kg を静注で与え60分ころよりくり返し間代性痙攣を 起すようになった時に,皮質運動領(1:1図下 般),レンズ核(中段),視躰(上段)より記録し た電図である。痙攣中はV・すれの電図も細波を記 録しているが,棘波の様子は各部位で異なり,や がて徐波が混入して,間代性痙攣が終る前ころよ り皮質には徐波の合成からなる《spike and dome》が現われている。 1:2図は’イヌに1:NAHを100mg/kg・ ・静注で 一与えた場合で,1:1図の時と異なり,闇代性痙 攣がやむとそれに引続いて歩行様運動が現われて v・る。1;2図上段が皮質運動領,下段が視鉢の 電図である。歩行様運動の揚合に.は,皮質の正常 あるいは鋸歯状の徐波に復帰してbるが,視豚に 痙攣時とは異なった波形の変化が現われている。 この二つの型が間代性痙攣が終る前に現われる 典型的な変化である。これらの揚合を総括すると 間代性痙攣時の特徴として次のような事がらをあ げることが出来る。

i)各部位の電気的変化は痙攣中は数mVに

及ぶ。

ii)各部位の波形は所謂棘波の連続である

が,その周期および位相はそれぞれの部位で独立 している。 iii)波形の特殊性は大脳皮質に強く,しかも 痙攣の初期よりは末期に至るほど著明である。 iv)末期の波形としては皮質で《psike and dome》型の変化を示すものと,皮質には異常波 がむしろ少く皮質下に特有な前変化が現あれてv) るものとが二つの典型である。前者では間代性痙 攣以外の運動発現はなV・が,後者では歩行様運動 が認められ,る。 一 300 一

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9 v) このような活動電位の変化を起す震源部 位は別にあるとしても,すでに痙攣が現われてい る時期には皮質および皮質下兎々に薯明な活動が 広範囲にわたって起ってV、る。 しかしこれらは大きな電圧変動を捕えるために 増丈短の倍率は下げてあるし,■ンク書であるた めに速い変化は現われてV、なv・。1:3図はこの 点を明らかにするために1:1図と同じ動物で増 巾を上げ,Braun管で電気的変化を記録したも のである。 横列はそれぞれ皮質運動領(F),レンズ核 (P),尾状核(C),視林(T)とv・うように電位 の馬取部位を示し.段は上段は注射前,中段は注 射後30分,下段は痙攣期であるが肉眼的には痙攣 の認められない時期というように時間的経過を意 味している。この成績が示唆している事がらは:; i)痙攣発現の背影には全般的な神経細胞活動の 高まりが認められ,ii)上に掲げた上位中枢各部 生間には特に局所的な特異性,即ちある部位の活 動状態だけがたかまってV・て,そこから次第に興 奮が波及してゆくというような状態は認められな かった,ということである。 以上の成績は痙攣を起すために化学物質を静脈 注射で与えたために作用部位が広範囲にわたった とも考えられるので,次に局所刺戟によって起し た痙攣についてこの点を研宿した。 〔2〕 叢林の化学:刺戟で起した聞乾性痙攣i,2 :1図はウサギの左視診に1:NAHによる化学刺 戟を与えて起した全身痙攣(2回目)の鳴合の電 位変動である。注射前の対照(A)と比較してみ ると,問代性痙攣が現われるまでの時期の電図 (B)には徐波が目だつてViるが,それは第1回 目の痙攣によるものである。刺戟部位であ.る左視 林(最:下般)にペンの動きの限度を越えるような 電位変動が始まり,時間的にはそれが尾状核(下 から2般目), レンズ核(上から2段目),皮質 (最上段)というように波及して全身痙攣が発現 している。増巾を下げ痙攣の終末期を捕えたのが (C)で,ここでは明らかに各部位での波形の相 異も認められ,痙攣が止まった後(D)では尾状 核に陽性のゆるやかな棘状波というか1.5Hz程 度の細波というかそうした変化が長く細動士林 ではときどき棘波が現われている。その様子は増 巾をあたげ(E)に伺うことが出来る。 2:2図はネコについて行った同様な実験であ る。上より視沐(T),尾状核(C),レンズ核 (P),皮質運動領(F),で,.Aの視林の電図が大 きく揺れている所が導出電極(%注射針)を通じ てINAHを局所注入した時である。それ,よりし ばらくして持続の短い全身性の間代性痙攣iが起つ たのがBで,その起り初めに相当してほとんど同 時にすべての電図に大ぎな棘波に始まる変化が現 われている。痙攣が弱まると(C),各部位の特 徴が現われ,皮質は鋸歯状船型となり最後に大き な棘波が現われて痙攣が終っている(D)。同様 なことは1:1図にもみられる。 以上の変化は本質的には前項で述べたところと 同様である。即ち,刺戟部位が限局している揚合 でも全身の心急性痙攣が起ってV・る時には皮質, 皮質下核の区別なくそれぞれ独自の活動状態に入 り,痙攣iが終るころに初めて特徴が現われてくる のである。次に局所痙攣忙ついてのこれらの点を 非望してみる。 〔3〕視林の化学刺戟で起した焦点痙攣 3二1図はウナギで左側の視沐にINAH 10%溶 液C.2mlを注入して,顔面から頸部へかけての 局所的な継代性痙攣を起した馴合の,上より皮質 運動領(F),レンズ核(P),尾沐核(C),視 林(T)の脳電図である。(A)は注射前の状態 (B) は注射後18分で痙攣は:起っていない。皮質 波はburstは残ってv・るが低電圧となり, Pも また低電圧となっている。(C)は注射後14分焦 点痙攣が起ってくる時の状態で,視鉢波(最下 段)は次第に高電圧となりこれに尾状核波もなら い,痙攣の発現とほとんど同時に視豚に大きな電 位変動が認められ,視林の高電圧波が続いている 間は皮質では前にあったburstは消失し間代性痙 攣が続V・ており,痙攣がやんでしばらくあとにす べての電気的変化は次第にもとに帰ってぎてい る(D)。 3:2図は注射後19分第2回目の焦点痙攣が現 われたさいの注射対側の電図である。この場合は 注射前に比べて皮質波が低くなっていることは倉 皇であるが(B),痙攣発現に至るまでの経過ぱ 注射側(3:1図)とは多少趣を異にし視林の.変 化より尾状核での変化が先行して(C)痙攣発 現,burstの消:失となってV・る(D)。同様の現 象はくり返し3:3図にも現われ,ているっ 一 SSOI 一

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以上の変化を全身痙攣の場合と比較してみると 確かに細胞活動の増強も局所的で,痙攣中も高電 圧計の発現をみない揚所が存在している。しか し,実際の細胞の発火状態はこれではわからなV・ ので,オスシロスコープによって同一例で研討し たのが3:4図である。 3:4図Aは注射側(左)でBは対側である。 いすれも上段より皮質運動(F),レンズ核(P), 尾状核(C),視林(T)である。また,縦列は 左より注入前,注入後6分,注入後13分(第1回 焦点痙攣発現のユ分前)である。成績はぎわめて 明瞭で,まだ運動現象が現われていなV・が現われ る直前のものではV・すれの部位の電気活動も明ら かに増強していることである。以上の成績によっ て, i)焦点痙攣の場合にも痙攣発現の前段階とし ては,皮質にも皮質下諸核にも全般的に細胞の発 火が旺盛になっている。 ii)全般的に細胞発火が旺盛になっている状態 の時に皮質下核の活動が起ってくると局所に起る 痙攣が現われてくる。 ということが出来る。 〔4〕 間代性痙攣時の大脳各部位の電位変動 i〕間代性痙攣が発現する直前の大脳各部位 (皮質運動領,尾状核,レンズ核,視林)での活動状 態を針状電極(10∼20μ)で導出したスパ・fクの 大さを数で現わすと正常値の数倍に達してV・る。 ii)このような状態の癸生は作用物質を循環系 を介して与えても,…局所に作用昏せた場合でも 変りはなV・し,全身痙攣になる時でも焦点痙攣に 止まる場合でも同様である。 iii)’しかし,このような状態ではまだ運動は現 われなV・。間代性運動となるためには今一つの条 件が必要で,それによって焦点痙攣と’mり全身痙 攣ともなる。 iv)間代性痙攣が現われるとこれらの大脳各部 位の活動電位は十倍から数十倍となり,各部位と もに転註が現われる。しかも,この大ぎな棘波の 起源は一箇所でなく部位ごとに独立したものであ る。 v)痙攣が経過するにつれ各部位の独立性特に 皮質の独立性は明らかになる。皮質波に《spike・ and dome》あるいは熱波が現われる時は痙攣は そのままやみ,皮質波が正常に帰るか鋸歯状波に なり皮質下核特に説林に活動が残る揚合には歩行 様運動が現われるごとが多い。 このように前脳準位では痙攣の間代性とV・う性 質を決定するような事実に遭遇しなかったので, わたくしは次のような脊髄準位の研究によりこの 点を研討したのである。 rB〕 間代性痙攣を起した時の脊髄 運動細胞の活動

〔5〕実験条件

開頭したイヌの皮質運動領に電極をおき,持続 8msecの面形波単一電撃を与えながら二頭股筋 になるべく限局して反応の現われる領野を求め る。二頭股筋の筋枝の末梢端を切断し,坐骨神経 の枝をこの筋枝だけ残してたはすべて切断して, 周囲からの電気的変動の混入を防ぐために流動パ ラフ■ンでおおv・,目的とする神経の活動電位を 記録した。このような標本を使うと,神経の働作 電圧の出現と支配筋を肉眼で観察した収縮の出現 とは完全に:L一致する。 皮質刺戟め強度,矩形波の持続を決定するには 各例について5:1図のような関係を求めて,都 合のよさそうな条件を選んだ。即ち,対単運動と 直作電圧の出現を目標とし矩形波の持続と強度と の関係を求め,最適と考えられる刺戟を選んで使 用した。…・般について持続が5∼6msecより短 くなると強度閾は低くなるが,この閥の低下は毎 秒数回というような低頻度では持続が短V・ほど著 しくない。わたくしは頻度変化に対して強度閾を 敏感に変え,対比運動から聞代性運動への移行を 観察して,間代性痙攣時の前角細胞の態度を研討 するのが目的であったので8∼10msecの持続の ものを使った。 〔6〕 筋の働作電位を標示とした間代性痙攣の 発現

刺戟船形波の持続を8msecとし,毎秒1回の

頻度で二頭股筋に対応する皮質運動領野に単一電 撃を与えて筋収縮を判定した。閾値附近と極大値 附近の二種類の強度をあらかじめ定めておき,こ の条件で与える頻度を毎秒,1風 3回,6回と 変えて対単運動が間代性運動に移行する場合の筋 の庭作電位を示したものが6:1図である。 6;1図左側1列は頻度毎秒一回の揚合で,上 3は闘値,下3は極大値の働作電圧を示す。中央 2列は刺戟頻度毎秒3回の場合で右側は閾値,左 “ 802 一

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11 側は極大値である。閾値列6は反応の大きさはく り返しによって変化していないが,極大値列では 反応の大きさがくり返しによって(図の下から上 へ)不安走になっている。右側2列は刺戟頻度毎 秒6回で左側が閾値列,右側が極大値列である。 閾値列ではくり返しによって(図下から上へ)反 応が大きくなっているが,潜時は変っていなV・。 極大値列では初め5回は同一潜時で反応が現われ ているが,それ以後は反応の大きさも不定で現わ れる時期も刺戟と無関係になっている。 この対単運動から間代性運動への移行を連続的

に記録したのが6:2図である。6=2図の各行

は連続したものであって,刺戟頻度毎秒6回で闘 値より強度を次第に強めてゆくと,初めは刺戟に 応じて規則正しく…鮮の働作電位が観察されるが (1行目‘),次第に(2行目5回ごろより)その 関係が乱れ反応も小さくなり,矢印の所(2行目 最後)で刺戟をやめても不規則ではあるが働作電 位が小さい群を作って瑞劔’して*” t)大きさが次第 に,滅少して消失している(3∼5行目)。刺戟 に対して規則正しく反応している時期が対単運動 の時期で,それが乱れてきた時に認められる運動 が閥代性痙攣iである。 〔7〕神経の働作電位を標示とした間代性痙 攣の発現 7二1.図は前に迷べたような条件で動勢を切断 した二頭股筋筋粒で観察1、.た働管弦龍である、、記 録は下より上へ,左より右へ続く朝ので刺戟頻度 は毎秒6回である。第1列にみるように刺戟に応 じた働作電位は次第に大ぎくなり,これに続いて 副次的な小さな働作電位が認められるがまだ潜時 は一定である。第2列にi至ると潜時は次第に短縮 し副次的な滋強電位は大きさを増し主働作電位が 消失するような場合も現われてくる。第3列下か ら7番目までで刺戦を与えることをやめたのであ るが,そのあとでば所所に全く不規則に働作電位 の発現が認められる。 (刺戟をやめてからの働作 電位の数は全体の30%しがこの記録には現われて V・ない計算になる)。 以上の実験経過を連続的に示したのが7:2図 である。図は上左より始まる連続記録で,刺戟頻 度は毎秒6回である。第エ行には規則正しい転作 電位が認められるが,、2行目に至ると大きさがふ ぞろいになりその終りごろに主反応が分裂しfc小 さな働作電位群になってきてV・る。刺戟は行目の 初め麺のあたりでやめているがそれよりあとに も,初めは頻繁で大きさも割に大きな働作電位が 認められ,次第に小さくなり間隔もまばらに二なっ て消:失している。 以上述べた筋および筋神経で観察した皮質刺戟 による対単運動から間代性運動への移行の成績は よく一致しており,次のような結論に到達する。 i)対面運動の前角細胞の発火は,皮質よりく る衝撃に応じてその麦配細胞群に時を同じくし て,且つ欠損なく起る。 ii)皮質刺戟を変化して問代詠運動の起ってく る鳥合には,その関係が破れ支配細胞群の発火は 大小ふそろV・になり,上位中枢に力咬ている刺戟 ・に対応する発火が多くなる揚合が多く認められ, 独自のリズムの衝撃放射といってもさしっかえな v㌔ 考 察i 化学刺戟によって左右等時1望に現われる聞代官 (1,2,5,6,・3,11) 痙攣の伝導径路を追跡した成績によれば皮質運動 領,視林,小脳のいすれの部位の刺戟によって起 した痙攣も外見は同じで,いすれも両側レンズ核 の.切除によって現われなくなってV・る。そして, らの レンズ核より下行する経路ぱ対側黒質に達し,黒 c4.) 質の化学刺織によっても問代性痙攣が現われ,脊 ぐの髄に対しては両側性に下行している。 この上位3カ所より起した間代性痙攣のうち, 小脳から起したものだけは刺戟部位を切除しても くの 痒攣は中断されないが,運動面,視林よりのもの c6,7/ ぼただちに痙攣が停止する〔,・したがって,後二者 は痙攣の発現Ghitiation)と痙攣の持続(cont・ lnUa.tion)の両方の機序に関係を持ってv・るとv・ うことが出来る。 之の実験を行った目的は,このような性質を持 つた間代性癖攣の特徴である《間代性》という性 質が,一体どこでどうして与えられるかとVOうご とに対する乎掛りを得ようという点であった。そ こで,わたくしはこの点に関して従来の成績を考 慮:しながら考えてみたV・のである。 刺戟部位を切除すると間代性痙攣が消失すると いう実験事実は素朴に考えると《間代性》も前脳 断面の刺戟部位の状態で決定されてV・るような印 象をうける。しがし,そうでないことは実験〔A〕 で示した事実によってわかる。即ち,前脳断位の 一 908 一

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活動は痙攣が始まる前から次第に増強してきて, スパイク放出の頻度もスパイク電圧も正常の数倍 から数十倍に達し,それがある限度に達すると突 如として間代性痙攣が発するのであるが,痙攣発 現時のスパイクのリズムは間代性のリズムよりは るかに高頻度であるように思える。 そこで,実際に間代性痙攣発現中に筋に送達さ れてV・る神経衝撃の状態を〔B〕の実験で研討し てみる。この結果は明らかで,前角細胞の癸火と 上位中枢を比べれば,後者の頻度は比較にならぬ くらい高い。それならば高頻度の前脳断位からの 神経衝撃によって,前角細胞が固有の頻度で発火 しているのであろうかとも考えられるが,そうで ないことを示唆している実験事実がある。 それは,対応運動から心病性痙攣への移行に際 して現わす前角細胞の態度であるQ即ち,前角細 胞は初めに皮質に与えられた刺戟に応じて同期し た発火を行っているσしかし,刺戟とは次第に無 関係になる。それならば刺戟が与えられている大 脳皮質で無効になったのかというとそうではな い。それは刺戟と脊髄前角の発火とが無関係にな ってしまった時期でも,その刺戟をやめれば痙攣 の様子は刺戟停止を境として急激に変り強度が弱 くなる。このことは働作電位からも認められるか ら,刺戟が皮質に対して無効になったとは考えら れな㌔㌔したがって勿論,前角細胞の発火がその ままリズムとして筋収縮即ち間代性痙攣の状態 を決定してV・るのではあるが,それは前脳前信の 活動状態のそのままの反映ではない。そうだとす ると,前脳と脊髄の中田にごの両者を結ぶ部位が あり,それが《間代性》を決:乏しているものであ るとの考えが出てくるのである。その具体的な部 位は現在のところ,前脳がなくとも化学刺戟によ リコの つて聞応性痙攣を起す黒質系を考えればよい。. 以上の考えから,間代性痙攣に対し前脳諸部位 はその古語と持続を規定し,中脳をへてその《間 代性》が決まり,これが脊髄前角の性質による修 飾をうけて発現すると考えられる。そして,皮質 と脊髄との対応関係の遮断という事実から,中脳 核の状態は上位よりの過剰興奮の到達により全要 素の一心活動一己休止という状態をくり返すこと によってく闇代性〉がi発現するものと考えるので ある。 結 論 /fソニコチン酸ヒドラチツド100mg/kgの静 注,視沐の局所刺戟および皮質の矩形電撃(持続 8 msec)により全身性あるいは局所に起る間代性 痙攣を起し,前脳各部位(皮質運動領,尾状核, レンズ核,視林)と末稽運動神経の働作電位をウ ナギ,ネコ,イヌにつV、てペンおよび陰極線によ つて記録し次の成績を得た。 1)間代性痙攣が発現する直前の大脳各部位の スパイク電位の大きさと数は正常の数倍から十数 倍に達する。 2) このような状態の発生は作用物質を静注で 与えても局所性に作用させても変りはないし,全 身痙攣になる時でも焦点痙攣に止まる時でも同様 である。 3)間代性痙攣中の脳波は皮質,皮質下共に正 常の数十倍に達する棘波であるが,その棘波の起 源は一ヵ所ではなV・。 4)痙攣が経過するにつれ皮質および皮質下諸

核の独立性は明らかになり,一般に皮質波に

《spike and dome》あるいは徐波が現われる時 はそのままやみ,皮質波は正常あるいは鋸歯状で あるが皮質下に活動が残る揚合には闇代性痙攣か ら歩行様運動へ移行する。 5) 間代性痙攣iが現われ,ると.それまであった 皮質運動領と脊髄前角細胞の対応関係は失われ不 規則ふぞろいな発火を行うようになるが,そのリ ズムはなお脊髄より上位で規定されている。 6)以上の実験事実と今までの化学三三による 帯代性痙攣の伝導径路の知識より,間代性痙攣の 発現は大脳各部位に発生した過剰興奮がレンズ核 で集約されて黒質に到達することにより,黒質が 伝達機能を喪失して悉無律的な活動を行うことに よるものとの考えに至った。 最後にいろいろと御指導下さいました林所長ならび に神戸医大須田教授に心からなる感謝を棒げます。 (本研究要旨は昭和28年10月および昭和29年4月の脳 神経外科学会で発表した。) 文 献

1) Nayashi Takashi : A physiological study of epileptic seizure following cortical

stimulation in animals and its application

to human clinics. JJ. Physiol. 5, 46−64

(1952)

(7)

1.3

2) Hayashi Takashi, Suda lsamu:Exper mental focal epileptic seizure and its

march of movements. Keio J. oE Medicine.

2, 125一一・140, (1953) 3) 石塚保=運動現象を標示とする大脳灰白質微 小刺戟法.条件反射,4,83一・99,(i942) 4)黒木昌夫:中脳における間代性痙攣と交代性 痙攣.条件反封,9一一10,1−16,(1943) 5)申邑勇:皮質顯矯痙攣に関する錐体外路系に ついて.条件反射,5,11−31,(1942) 6)尾崎恪治:視丘止血痴痙:攣について,条件反 身f, 5,79−88, (1942) 7)斎藤脩=,須田勇:犬の大脳皮質運動領刺戟 によって起る掻滴痙攣に対する刺戟部位別除 の実験.条件反射,3,22−29,(1942) 8)須田勇:皮質性顯禰痙攣の皮質下運鎖 条件 J文身}, 4,100一一115, (1942) 9)須田勇,岡本彰砧,松丸忍,名和靖:中枢神 経の化学的発動物質としてのグルタミン酸ソ ーダについて,条件反尉,11一一12,43−48, (1944) 10)須田勇,足立千鶴子,牛山順司,申浜弓,鬼 頭京子:INAH静注による痙攣の発現幾序 に関する予備実験.北里実験医学雑誌,26, 1, 49−51, (1954) 11) 渡辺武之助:小脳一三痙攣とその経路,条件 反射.9−10,49一一72,(1943) ,s,//

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(D) (E)

Fig. 2 : 1 1NAHによる視駄局所刺戟時の口繕図(ウサギ)

A:注射前

B:間代性痙攣発現直前

C:間代性痙攣終末期

D及E:痙攣終了後の尾状核の陽性棘波

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(10)

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(B) (C)

Fig. 2 : 2 1NAHによる視駄局所刺戟時の脳電図(ネコ) A[:注射前 B:間代性痙攣発現時 C:間代性痙攣滅弱時 H ,nC08 一

(11)

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(D)

Fig. 3;1

1NAHの視㈱戟による焦点痙攣時の脳電図(ウサギ)

A:注射前

B:注射後13分

C=注射後14分焦点痙講論現時

D:痙蟻休止期

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(12)

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(A) (B) (C)

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(D) Fig. 3:2

3:1図のつづき

A:注射前 B:注射後19分 C:焦点痙攣発現時 D:同上(burst消失)

(13)

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Fig. 3:3 1NAHの視野刺.戟による焦点痙攣発現時の脳電図 富

(14)

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5 msec. ■ 圃 口 騒 闇 (B) Fig. 3 : 4 1NAHの視淋刺戟による焦点痙攣発現時の活動電位 A:注射側 B:注射対側 左より注入前,注入後6分,、注入後13分 岩 鵠 薗 揖 1./sec,. 2.5/sec. 5/see.

1 2545 6・7 89 XO

DURAT:ON (muee・> Fig. 5: 1. 一 ,9 12 一

(15)

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皮質運動領7に単一電撃を与えた場合の二頭股筋より記録した活動電位 刺戟頻度:左より毎秒1回,3回,5回

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“jLiiL.・一a“kV−LW一..一一“w.“一M.diptpt

ptbe.,M”一,i”idh,b”,,e一一ptA一.pt.一〇,hes−ii).eN−h,. Fig. 6’ F 2 6:1図の連続記録(毎秒5回) 対単運動より問代性運動への移行(矢印) 一318一

(16)

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.一紬 皮質運動領に単一電撃を与えた場台の二頭股三枝より詑録した活動電位 刺戟頻度:毎秒6回(爾説明は;本:文)

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Fig. 7: 2一, 7 ;1図(わ連続言己録 (裟任穆》6巨コ) 矢印より問代性痙攣発現 ・ 一一一 tt’1・4 nd

参照

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