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糖尿病透析患者の長期予後に対する危険因子に関する研究

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原  著

屠女医蕪,辮巻熟慮層骨〕

糖尿病透析患者の長期予後に対する危険因子に関する研究

東京女子医科大学 第三内科学教室(主任:大森安恵教授)

       ナカニシカツエ

       中 西  克 枝

(受付 平成6年2月18日) Risk Factors A丘ecting Iρng・teml Survival in Diabetic Patients          Undergoing Dialysis Therapy

      Katsue NAKANISHI

Department of Medicine IH(Director:Prof. Yasue OMORI)      Tokyo Women’s Medical College   The purpose of this study was to clarify significant risk factors for mortality in diabetic patients undergoing dialysis therapy.   The study consisted of 358 consecutive diabetic patients(113 females and 245 males)who started dialysis at the Diabetes Center of Tokyo Women’s Medical College between December 1978 and June 1993.They were classified into three groups according to survival time after the onset of.dialysis;52 patients who died within l year(group I),64 patients who survived for l year or more but died with童n 5 years(group II), and 57 patients who survived for 5 years or longer(group III).   The overall 5・and 10・year survival rates of the 358 patients were 50.7%and 33.6%, respectively. Mean age at the onset of dialysis was highest in group I. Fluid overload, malnutrition, atherosclerotic vascular diseases, infection, and malignant disease were most common in group I and least common in group III. Although the mean age and prevalence of complications at the onset of dialysis were increased year by year, survival rates increased significantly.   In conclusion, the effort to prevent systemic complications in the conservative stage of diabet量c renal failure, and to start dialysis before the patients suffers concomitant disorders may contribute to improving the prognosis in diabetic patients undergoing dialysis therapy.          緒  言  近年における糖尿病管理技術の進歩はめざまし いが,それでもなお糖尿病性腎症による腎機能障 害が進行し,透析療法の導入を余儀なくされる患 者は著しく増加している.日本透析医学会の報 告1)によると,1992年におけるわが国の新規透析 導入患者21,563名のうち,糖尿病性腎症は6,132名 (28.4%)を占めており,1983年の1,538名から約 4倍の増加が認められている.このような糖尿病 透析患者の急増は,医療財政への影響から社会的 にも大きな問題といえる.一方糖尿病性腎不全の 予後が,慢性糸球体腎炎や嚢胞腎などの原発性腎

疾患に比べ不良であることは周知の事実であ

る1).その理由として,透析導入時の平均年齢が高 いことや,腎以外の全身性疾患を高頻度に合併し ていることなどが推察されている.しかし導入時 のいかなる病態が予後を不良としているかに関し ては,比較的少数例・短期間の検討2)動が行われて いるのみであり,いまだ十分明らかにされていな い.  以上の点から本研究は,当施設で過去!5年間に 透析を導入した糖尿病性腎不全患者358名におけ る,導入後の予後に対する危険因子を解明するこ とによって,糖尿病透析患者の生命予後向上に貢

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49 献ずることを目的とした.         対象と方法  1.対象  対象は,1978年12月から1993年6月までの間に, 東京女子医科大学糖尿病センターで透析療法を導 入した糖尿病性腎不全患者358名である(図1). 原腎疾患が糖尿病性腎症ではなく,慢性糸球体腎 炎などが考えられた患者は除外した.性別は女性 113名(31.6%),男性245名(68.4%),糖尿旧型 はインスリン依存型糖尿病(insulin dependent diabetes mellitus,以下IDDM)23名(6.4%), インスリン非依存型糖尿病(non−insulin depen− dent diabetes mellitus,以下NIDDM)335名 (93.6%)であった.透析導入時の年齢は55.2± 12.3歳(平均値±標準偏差,21∼83歳)であり, 丁丁別ではIDDM 32.0±6.5歳(21∼45歳), NIDDM 56.8±11.0歳(25∼83歳)であった.糖 尿病の発症あるいは発見されてから透析導入まで の期間は,IDDMで11∼30年(17.9±5.3年)で

あったのに対し,NIDDMでは1年未満∼44年

(162±7.3年)と分布範囲が広く,335個中66名 (19.7%)では10年未満であった.透析方法に関し ては,1985年までは血液透析を第一選択とし,高 度の心機能低下などにより血液透析が困難な場合 にのみ丁丁的腹膜透析(intermittent peritoneal dialysis,以下IPD)で導入し,安定した段階で血 液透析へ変更した.1986年に連続携行式腹膜透析 患者数(人) 60 50 40 30 20 10  78  79  80  81  82  83  84  85  86  87  88  89  90  91  92  93         透析導入年度 図1 透析導入年度別の糖尿病性腎不全患者数の推移  各年度において透析を導入した糖尿病性腎不全患者  を,導入時の透析方法別に示した.1993年は6月ま  での導入患者. (continuous ambulatory peritoneal dialysis,以 下CAPD)による導入を開始,それ以降は血液透 析が困難な場合に限らず,社会復帰などの目的で 患者が希望した場合はCAPDを選択した.  2.方法  個々の患者における透析導入後の転帰を定期的 に確認し,最終観察日を1993年7月31日とした. 当施設で転帰の確認ができなかった患者について は透析施設にアンケートを送付し,生死,死亡日, 死因を確認した.腎移植を行った患者は移植施行 日までを生存期間とし,その時点で観察中止とし た.  透析導入後の予後に対する危険因子を明らかに するために,導入後の生存期間によって,以下の 3群に分類した.すなわち導入後1年以内に死亡 した52名を1群,1年以上生存し5年以内に死亡 した64名をII群,5年以上生存した57名をIII群と した(表1).最終転帰が生存であったが導入から の期間が5年未満であった187名は,本研究におけ る最終観察日において生存期間が不明(右側打ち 切り例)であることから除外した.以上の3群に おける,導入時の患者背景,臨床検査成績,透析 導入理由,および予後の危険因子と考えられる全 身合併症の頻度,および死因を比較した.臨床検

査成績のうち,LDLコレステロールはFreid−

ewaldの式7)によって算出した.透析導入理由は, 個々の患者における透析に至った最も重要な臨床 所見とし,心不全・肺水腫,胸・腹水,心のう炎, 高度末梢浮腫,高カリウム血症,アシドーシスの いずれか,また以上のいずれもない場合をその他 とした.全身合併症は,予後に重大な影響を与え ると考えられる,虚血性心疾患,不整脈(心房細 動・粗動,高度房室ブロック,心室性不整脈),脳 血管障害,糖尿病性壊疽,肝硬変,悪性腫瘍,肺 炎,敗血症,以上8疾患の有無を調査した.  次に透析を導入した時期により,1978∼1982年, 1983∼1987年,1988∼1993年の3時期に分類し(表 2),上記と同様の比較を行い,また経年的な予後 改善効果の有無を検討した.  3.統計処理  連続量の表記は平均値±標準偏差とし,適宜分

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表1 透析導入後の生存期間によって分類した3群における導入時臨床所見の比較 生存期間 1群(1年未満) II群(1∼5年) m群(5年以上〉 患者数 52 64 57 性 別 女 性 19(36.5%) 23(35.9%) 22(38,6%) 男 性 33(63.5銘) 41(64.1%) 35(61,4%) 糖尿病型

IDDM

2(3.8%) 3(4.7%) 4(7.7%)

NIDDM

50(96.2%) 61(95.3%) 53(93.0%)

透析導入時年齢(歳) 63.8±U.3 55.8±13.oa) 49.9±10.8a,b)

糖尿病罹病期間(年) 18,4±7.9 15.5±6.9 14,8±5.ga) 糖尿病網膜症 単純 22(42.3%) 17(26.6%) 6(10.5%) 前増殖・増殖 30(57.7%) 47(73,4%) 51(89.5%) 尿 量    (mV日) 869±374 1,088±411 1.層 P48±434・) 導入時血圧 収縮期   (mmHg) 155.3±28.9 165.3±28.8 178.9±26.1a),b) 拡張期   (mmHg) 75.4±18.6 87.6±16.1a) 93.2±18.5a) 検査成績 総蛋白       (g/d1) 5.8±0.8 5.9±0.7 5.7±0,7 アルブミン    (g/dD 2.6±0、4 3.0±0.6a) 2。9±0.5 尿素窒素     (mg/d1) 90.7±4⑪.6 87.1±23.5 91.8±28.0 クレアチニン   (mg/dD 7.7±2.4 8.3±2.2a) 9.6±2.8a,切 尿酸      (mg/dl) 8.8±3.4 8.1±2.2 7.8±2.1 ナトリウム     (mEq〃) 135±6 137±5 ユ38±5a) カリウム     (mEq〃) 4.3±LO 4.4±0.7 4.1±0.7

クロール     (mEq〃) 100±8 104±6a> 105±6a)

重炭酸      (mEq〃) 17.7士5.9 17.3±4.7 16.3±4.6 カルシウム    (mg/dl) 7.9±0.9 7,9±0.9、 7.7±1.0 補正カルシウム  (mg/dl) 8.7±1.1 8.6±1.0 8.5±1.2 リン       (mg/d1) 5.9±2.5 5.8±1.8 6.6±1.8 ヘモグロビンAlc (%) 7.3±1.3 7.6±1.7 6.9±1.2 総コレステロール 〈mg/dl) 177.5±60.2 203.5±58.2 218.1±71.4a} HDLコレステロール(mg/dl) 32.9±12.9 36.6±LO1 39.7±工8.2 中性脂肪     (mg/dl) 157.4±82.0 188.6±106.8 195.3±117.9 LDLコレステロール(mg/dD 工08.4±48.3 123.5±49.3 138.9±61.7 ヘマトクリット  (%) 25,2士9.5 23,3±5.2 22.4±4.7 心胸比      (%) 59.2±7.5 55.3±7.4a) 52.9±7.ga). a);p〈0.05vs I君羊, b);p〈0.05 vs II君羊. 布範囲を併記した.一各群間の連続量ある一いは離散 量の比較は一元配置分散分析(多重比較はTukey の方法)あるいはFisherの直接確率計算法によっ て行った.累積生存率はKaplan−Meier法8)吾こ よって算出し,導入時期別の比較はlogrank test9) によって行った.また導入時の各病態の偏りを補 正した上での予後の比較を行う目的で,Coxの比 例ハザードモデル10)を用いた多変量解析を行っ た.比例ハザードモデルの結果からえられた回帰 係数および標準誤差から,1978∼1982年導入群に 対する1983∼1987年導入群および1988∼1993年導 入群の相対危険度を算出した.       結  果  1.全糖尿病性腎不全患者の予後  対象とした糖尿病性腎不全患者358名のうち, 1993年7月31日の時点で216名(60.3%)が生存し, 128名(35.8%)が死亡,10名(2.8%)が腎移植 を受けており,残る4名(1.1%)のみが消息不明 であった.358名の累積生存率は図2に示すよう に,3カ月92.4%,6カ月89.8%,1年84.6%,

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51 患者生存率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

012345678910111213で415

       透析導入後観察期間(年) 図2 全糖尿病性腎不全患者358名の透析導入後の生  存率  生存率はKaplan−Meier法によって計算した.1  年,5年,10年生存率はそれぞれ84.6%,50.7%,  33.6%であった. 表3 透析導入後生存期間別の透析導入理由 1 群 II群 III群 合 計 心不全・肺水腫 24 14 8 46 (46.2%) (2L9%) (14.0%) (26.6%) 胸・腹水 3 4 3 10 (5.8%) (6,3%) (5.3%) (5.8%) 心のう炎 3 0 3 6 (5.8%) (0.0%) (5.3%) (3.5%) 高度宋梢浮腫 3 9 6 18 (5.8%) (14.1%) (10,5%) (10.4%) 高カリウム血症 0 1 0 1 (0.0%) (1.6%) (0.0%) (0.6%) 代謝性アシドーシス 4 4 1 9 (7.7%) (6.3%) (1.8%) (5.2%) その他 15 32 36 83 (28,8%) (50.0%) (63.2%) (48.0%〉 合 計 52 64 57 173 (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) 表2 糖尿病透析患者における生存期間別の死因 1 群 II群 III群 合 計 心疾患 13 23 4 40 (25.0%) (35,9%) (33.3%) (31.3%) 感染症 14 9 0 23 (26.9%) (14.1%) (0.0%) (18.0%) 突然死 5 8 3 16 (9.6%) (12.5%) (25.0%) (12.5%) 脳血管障害 5 6 3 14 (9。6%) (9.4%) (25.0%) (10.9%) 低栄養 1 7 0 8 (1.9%) (10.9%) (0.0%) (6.3%) 悪性腫瘍 4 4 0 8 (7.7%) (6.3%) (0.0%) (6.3%) その他 7 2 0 9 (13,5%) (3.1%) (.0.0%) (7.0%) 不 明 3 5 2 10 (5.8%) (7.8%〉 (16.7%) (7.8%) 合 計 52 64 12 128 (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) 2年76.9%,3年70.0%,5年50.7%,10∼13年 33.6%であった.死亡した128名の直接死因は,心 疾患,感染症,突然死が上位を占めた(表2).  2.導入後生存期間と導入時臨床所見および死 因との関連  生存期間によって分類した3群における透析開 始時の患者背景,臨床検査成績を表1に示す.年 齢は透析導入後1年以内に死亡した1群が63.8± 11.3歳と最も高く,1年以上生存し5年以内に死 亡したII群55.7±13.1歳,5年以上生存したIII群 49.7±10.9歳の順に,有意に低下した.性別,病 (%) 40 30 20 10 0 p=O,DO2 ■1群〔N=52) ■ll群〔N=64} □lll群〔N=57) P尾0、G書9 PくO.OO1 N,S, Pく0.DD1 N.S. p=0.017 P臣O.019 虚血性心疾患 不整脈  脳血管障害賠尿病性壊疽 肝硬変  悪性腫瘍   肺炎   敗血症 図3 透析導入後の生存期間によって分類した3群の  導入時における全身性疾患の合併頻度の比較  (Fisherの直接確率計算法) 型は3群間で差を認めなかった.糖尿病罹病期間 は長期生存群ほど短い傾向を認めた.臨床検査成 績では,血清アルブミン,ナトリウム,クロール は1群で最も元値であった.血清クレアチニンは 1,II, III群の順に高値となり, III群は他2群に 比較し有意に高値であった.血清脂質に関しては, いずれも1群で最も低値であった.血圧は,収縮 期,拡張期とも1群で最も低く,III群が最も高かっ. た.心胸比は1群で最も大きく,尿量は1群が最 も少なかった.  各群の透析導入理由を表3に示す.1群で,心 不全・肺水腫が46.2%と約半数を占め,それに胸・ 腹水,心のう炎,および末梢浮腫を加えた溢水症 状は63.5%であったのに対し,III群では心不全・

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表4 透析導入時期から分類した3群における導入時臨床所見の比較 導入期間 1978∼1982年 1983∼1987年 1988∼1993年 患者数 22 92 244 性 別 女 性 7(31.8%) 35(38.0%) 71(29.1%) 男 性 15(68.2%) 57(62.0%) 173(70.9%) 糖尿病型

IDDM

2(9.1%) 10(10.9%) 11(4.5%)

NIDDM

20(90.9%) 82(89.1%) 233(95.5%) 透析導入時年齢(歳) 50.2±12.4 51.2±12,4 57.1±11.8a,bl 糖尿病罹病期間(年) 15.2±5.6 15.0±5.6 16.8±7.8 糖尿病網膜症 単純 2(9.1%) 16(17.4%) 67(27.5%) 前増殖・増殖 20(90、0%) 76(82、6%) 177(72.5%) 尿 量    (ml/日) 1,055±326 1,049±439 1,015±413 導入時血圧 収縮期   (mmHg) 180.2±18.5 172.3±24.9 159.1±26.3a},切 拡張期   (mmHg) 92,9±14.2 89.9±18.9 80.6±13.8a,b 検査成績 総蛋白       (g/dD 5.8±0.8 5.6±0.7 5.9±0.8b) アルブミン    (g/d1) 3.2±0.5 2.9±0.5 2.9±:0.5 尿素窒素     (mg/d1) 82。3±26.3 96.6±31.1 80.4±24.5b) クレアチニン   (mg/dD 9.2±2.4 8.9±2.8a} 8.4±2.4a,b) 尿酸      (mg/dl) 8.0±2.5 8.4±2.6 7.8±2.1 ナトリウム     (mEq/の 137±4 137±5 138±5 カリウム     (mEq〃〉 3.9±0.6 4.2±0.7 4.5±0.8a,bl クロール      (mEq/の 王00±3 ユ04±7 106±7 重炭酸      (mEq/の 17,8±4.0 16.4±4.8 18.5±5.Ob》 カルシウム     (mg/dD 8.1±0.5 7.7±1.1 7.8±0.8 補正カルシウム  (mg/dl) 8.9±0.5 8.6±1.3 8.5±0.9 リン        (mg/d1) 5.1±0.8 6.5±1.9 5.8±1.7b〕 ヘモグロビンAlc (%) 7.3±1,6 7.4±1.3 総コレステロール (mg/dl) 214.3±63.3 214.3±73.9 190.3±53.4b) HDLコレステロール(mg/dl) 33.0±16.4 36.3±12.4 36.4±11.7 中性脂肪     (mg/dl) 209.0±156.3 206.4±116.5 257.8±82.7b) LDLコレステロール(mg/dl) 127.9±72.8 131.8±61.8 121.0±44.7 ヘマトクリット  (%) 22.1±2.7 23.3±7.0 24.0±5.5 心胸比      (%) 56.4±7.4 55.0±7.8 52.9±7.2 a);p〈0.05vs 1978∼1982年導入群, b);p<0.05 vs 1983∼1987年導入群. 肺水腫14.0%,全溢水症状が35.1%に留まった.  透析導入時における合併症の頻度を図3に示 す.肝硬変を除く7疾患の頻度は,いずれも1, II, III群の順に低くなった.肝硬変,悪性腫瘍,. 敗血症は,III群では皆無であった.3群間で合併 頻度に有意差を認めたのは,虚血性心疾患,不整 脈,肝硬変,悪性腫瘍,肺炎,および敗血症であっ た.  各群の死因を表2に示す.感染症,悪性腫瘍の 頻度は1群が最も多く,III群では皆無であったの に対し,突然死は1,II, III群の順に増加した.  3.透析導入時期と予後との関連  表4に,透析導入時期によって分類した3群の 患者背景を示す.年齢は1988∼1993年導入群が 57.1±11.8歳であり,1978∼1982年導入群の 50.2±12。4歳,および1983∼1987年導入群51.4± 12.5歳に比べ有意に高かった.3群問に性差はな かったが,1988∼1993年導入群でIDDMの比率が 最も低かった.血清クレアチニン,血清脂質,収 縮期・拡張期血圧,心胸比は,いずれも1988∼1993

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53 (%〉 40 ■ 1978−1982{N=22)   圏 1983・1987(N冨94)   □ 1988,1993(N昌244) 相対危険度 30 20 10 0 N.S. NS. N.S.      N.S.   P=O・049 N.S.     N、S. N、S. 虚血性心疾患 不整脈  脳血管障害糖尿病性壊疽 肝硬変  悪性腫瘍   肺炎   敗血症 図4 透析導入時期によって分類した3群の導入時に  おける全身性疾患の合併頻度の比較(Fisherの直接  確率計算法) 2.0 1.0 0.5 0.3 O.2 患者生存率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0.1 1978−1982年  1983−1987年 透析導入時期 1988−1993年 図6 Coxの比例ハザードモデルによる,透析導入時  期によって分類した3群の予後の比較  Coxの比例ハザードモデルによって,導入時年齢,  性別,全身性合併症の頻度を補正した上での相対危  険度およびその95%信頼区間を求めた. 1988∼1993年くN」244) 1683∼1987年(N冨92) 1978∼!982年(N冨22>}

0123456789101112131415

      透析導入後観察期間(年) 図5 透析導入時期によって分類した3群の累積生存  率の比較  各群の生存率はKaplan−Meier法によって計算し  た.5年生存率は,1978∼1983年導入群が31.8%で  あり,1983∼1987年導入群の50.9%,1988年以降導  超群の50.6%に比べ,低い傾向を認めた(logrank  test;p=0.054). 年導入群で最も低値であった.  全身合併症の頻度は,図4に示すように,虚血 性心疾患,肝硬変,悪性腫瘍が経年的な増加傾向 を示した.導入時透析方法は,1983∼1987年導入

群以降,CAPDによる導入が増加傾向を示した

(図1).  3群の累積生存率を図5に示す.5年生存率は, 1978∼1982年導入群31.8%,1983∼1987年導入群 50.9%,1988∼1993年導入群50.6%であり,1983 年以降の導入患者で予後改善傾向を示した(p= σ.054;10grank test).比例ハザードモデルに よって,導入時年齢,性別,合併症の頻度を補正 した上で3群の予後を比較すると,図6に示すよ うに,1978∼1982年導入患者に対する相対危険度

(95%信頼区間)は,1983∼1987年導入患者

0.594(0.340∼1.037,p=0.067),1988∼1993年 導入患者0.361(0.203∼0.640,p=0.001>であっ た.          考  察  本研究は,糖尿病性腎不全における透析導入後 の予後と,導入時の病態との関連を検討したもの である.当施設においても透析導入に至った糖尿 病患者は年々増加し,1978年12月の第1例目から 1993年6月までの約15年問に,合計358名に達し た.一施設の経験としては,現在までのわが国の 報告の中で最多数と考えられる.全例のうち, IDDMの比率は6.4%であり,欧米11)12),特にヨー ロッパの報告に比べ極めて少なかったが,これは

わが国の糖尿病人口のなかでIDDMの占める割

合が小さいことによると思われる.透析導入時の

平均年齢は,IDDMとNIDDMの間に約25歳の差

を認めたが,透析に至るまでの平均罹病期間はほ ぼ同様であった.ただしIDDMでは全例罹病期問 が11年以上であったのに対し,NIDDMの約20% が10年未満で透析導入となっていた.今回透析導 入以前の経過に関しては詳細に検討していない が,このような罹病期間の短いNIDDMのなかに は,糖尿病性腎症による末期腎不全を呈した時期

(7)

に初めて糖尿病を診断された場合もあり,一般レ ベルにおける糖尿病およびその合併症に対する理 解がいまだ不十分であることが痛感させられた. 予後に関し,日本透析医学会の統計1)では,わが国 全体の糖尿病性腎不全患者の5年生存率は41.7% と報告されており,当施設の成績はこれを9%上 回ったが,同じく全国統計での慢性糸球体腎炎の 69.7%や,嚢胞腎の73.6%に比較すると明らかに 劣っており,糖尿病透析患者の予後が極めて不良 であることを再認識した.  糖尿病透析患者の予後を不良とする病態の解明 を目的とした検討では,予後が極めて不良であっ た1群(1年以内死亡群)の透析導入時年齢は, 1年以上生存し5年以内に死亡したII群,5年以 上生存したIII群に比べ有意に高く,高齢が予後を 不良とする重要な因子であることを確認した.ま た1群では,他2群に比べ心胸比が大きく,尿量 が少なかった結果,透析導入理由として心不全・ 肺水腫などの溢水症状によるものが多数を占め た.導入時の溢水が予後に対する危険因子である ことは,すでに馬場園13)が報告しているが,今回の retrospectiveな検討でも同様の結果であった.  臨床検査成績で,1群の血清アルブミン値や総 コレステロールが低値であったことは,この群に おける低栄養状態を反映しているものと推察され る.1群では高齢の患者が多かったことに加え, 悪性腫瘍をはじめ全身の重篤な合併症が最も多 かったことが,栄養障害をきたした原因と考えら れた.従来より,透析患者では高頻度に栄養障害 を合併することが知られており14)∼16),予後を不良 とする重要な因子と考えられている.また血清ア ルブミン値や総コレステロールが,透析患者の予 後に対する独立した危険因子であることが最近の 報告17)∼20)で示されているが,糖尿病性腎不全にお いても同様と考えられた.透析患者における栄養 障害が,免疫機能を低下させ感染症をきたしやす いことがMatternら16)によって報告されている が,本研究でも1群で肺炎,敗血症の合併が多く, 死因として感染症が最も多かった.透析導入時に おける栄養障害の対策は,今後の重要な課題の一 つといえよう.  導入時の全身性疾患の合併に関しては,虚血性 心疾患,脳血管障害,糖尿病性壊疽などの動脈硬 化性血管障害に加え,不整脈,悪性腫瘍,肺炎, 敗血症が1群で最も多かったことから,これらが 糖尿病透析患者の短期予後を不良とする要因であ ることが明らかとなった.1群の総コレステロー

ルおよびLDLコレステロールが他の2群に比べ

野芝であったにもかかわらず,動脈硬化性血管障 害の合併が多かったことは,糖尿病性腎不全の脂 質代謝異常に対し,腎不全保存療法期の対策がよ り重要であることを示唆するものといえる.すな わち腎不全のより早期の段階から,脂質代謝異常 の是正に加え,厳格な血糖および血圧の制御,禁 煙などにより動脈硬化の進展を予防することが, 糖尿病性腎不全の予後向上のために重要と考えら れた.  透析導入後の予後を年代別に比較すると, 1978∼1982年導入群に比べ1983年以降の導入群 で,明らかに生存率が向上していることを認めた. 5年生存率は,1983∼1988年導入群と1988年以降 導入群で差を認めなかったが,これは導入時年齢 や全身合併症の頻度が,年々増加したことに起因 するものと考えられる.多変量解析でこれらの偏 りを補正した結果,経年的な予後改善傾向が明ら かであった.最近における血液透析の進歩として, nafamostat mesilate,低分子ヘパリンなどの新し い抗凝固剤や高性能透析膜の開発,重炭酸透析や 逆浸透圧装置による水干理法の普及,さらには腎 性貧血に対する遺伝子組み替えヒトエリスロポエ チン21)の臨床応用などがあげられる.これらに よって,糖尿病性腎不全患者においてもより安全 な透析治療が可能となったことが,予後改善に少 なからず影響したものと推察された.それに加え 当施設では,高度の溢水をきたす以前のより早い 段階で,積極的に透析を導入したことも,予後向 上に寄与した重要な因子と考えられる.このこと は,1988年以降導入群で,血清クレアチニンおよ び心胸比が最も二値であったことからも裏付けら れる.従来より糖尿病性腎不全では,検査成績の みならず臨床症状などを総合的に検討した上で透

析導入時期を決定することが重要視されてお

(8)

55 り6)13)22),1990年の厚生省糖尿病調査研究班と同腎 不全医療研究班の合同委員会においても,この点 を考慮した新しい透析導入基準が示されるに至っ ている23).  なお透析方法に関しては,1986年に当施設で

CAPD療法を開始し,それ以降CAPDを選択す

る患者の比率が増加した.高度の心機能低下など のため血行動態が不安定な患者に対しては,腹膜 透析が血液透析に比べ有利であると考えられてい る24).従来行われていたIPDは,腹膜炎の合併が 多く長期継続は困難であり,安定した段階で血液 透析に変更したが,CAPDではすでに報告したよ うに腹膜炎は少なく25),また社会復帰の点でも有 利であることから,糖尿病性腎不全の治療方法と して有用と考えられている26>27).本研究では,透析 方法別の予後の比較は行っていないが,上に述べ たように高度の心疾患を合併することの多い糖尿

病性腎不全患者に対し,CAPDの選択が可能と

なったことも,最近における予後改善因子の一つ であると推察される.  以上,透析に至った糖尿病性腎不全358名の予後 を検討した結果,高齢,栄養障害,導入時の溢水, 虚血性心疾患などの動脈硬化性血管障害,悪性腫 瘍,肝硬変などの合併が,予後を不良とする重要 な因子であることが明らかとなった.全例の長期 予後は決して満足されるものではないが,それで も近年改善傾向を示した.今後さらに長期予後を 向上させるためには,①腎不全保存療法期から全 身合併症の対策を行うこと,②臨床症状を加味し た上で適切な時期に透析を導入すること,③個々 の患者の病態に応じ適切な透析方法を選択するこ と,などが重要と考えられた.  稿を終えるにあたり,本研究のご指導,ご校閲を 賜った大森安恵主任教授に,深く感謝致します.また 終始ご指導,ご鞭附いただいた馬場園哲也博士,高橋 千恵子講師,および教室の口先生方に厚く御礼申し上 げます.       文  献  1)日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透   析療法の現状(1992年12月31日現在).透析会誌   27:1−20, 1994 2)高橋幸雄:糖尿病性腎症の透析療法導入時の合併   症について.透析会誌14:91−89,1981 3)飛田美徳,斉藤 博,佐藤 威:糖尿病性腎症の   透析導入時の合併症.透析会誌 18:59−62,1985 4)原茂子,三浦雅弘,葛原敬八郎ほか:糖尿病性   腎症導入時およびその問題点一章・脂質代謝から   みたHF(hemo創tration)の有用性について一.   透析会誌 181323−329,1985 5)中尾俊乏:糖尿病性腎不全による慢性透析患者の   病像.透析会誌 19:1061−1068,1986 6)Matson M, Kjellstrand CM:Long−term   follow−up of 369 diabetic patients undergoing   dialysis. Arch Intern Med 148:600−604,1988 7)Friedewald WT, Levy RI, Fredrickson DS:   Estimation of the concentration of Iow−density   lipoprotein cholesterol in plasma, without use   of the preparative ultracentrifuge. Clin Chern   18:499−502, 1972 8)Kaplan EL Meier P:Nonparametric estima−   tion for incomplete observations. J Am Stat   Assoc 53:457−481,1958 9)Peto R, Pike MC. Armitage NE et al:   Design and analysis of randomized clinical   trials requireing Prolonged observation of each   patient. II. Analysis and examples. Br J Cancer   35:1−39, 1977 10)Cox DR:Regression models and life tables. J   RStat Soc Series B 34:187−220,1972 11)Brunner FP, Brynger H, Challab S et a1:   Renal replacement thetrapy in patients with   diabetic nephropathy,1980−1985. Nephrol Dial   Transplant 3:585−595,1988 12)Cowie CC, Port FK, Wolfe RA, et aL Dispar−   ities in incidence of diabetic end−stage renaI   disease according to race and type of diabetes.   NEngl J Med321:1074−1079,1989 13)馬場園哲也二透析導入後の予後からみた糖尿病性   腎不全患者の至適導入時期の検討.透析会誌   23:1245−1251, 1990 14)Bansal VK, Popli S, Pickering J et al:Pro,   tein caloric malnutrition and cutaneous energy   in hemodlalysis ma{ntained patients. Am Jαin   Nutr 22:1608−1611,1980 15)Nelson EE, Hong CD, Pesce AL et al:Anth−   ropometric norms for the dialysis popuユatlon.   Am J Kidney Dis 16:32−37,1990 16)Mattern WD, Hak I.J, Lamanna RW et al:   Malnutritlon, aユtered immune function and the   risk of infection in maintenance hemodialysis   patients. Am J Kidney Dis 18:206−218,1992 17)正owrie EG, Lew NL:Death risk in  hemodialysis patients二The predicitive value of

(9)

   colnmonly measured variables and an evalua・    tion of death rate differences between facilities.    Am J Kidney Dis 15:458−482,1990 18)Iseki K, Kawazoe N, Fukiyama K:Serum    albumin is.a strong predictor of death in    chronic dialysis patients..Kidney Int 44:    115−119, .1993 19)Owen WF, Lew Nh, Liu Y et al:The urea    reduct圭on ratio and serum albumin concentra・    tion as predictor§of mortality in patients un一.    dergoing hemodialysis. N Engl J Med 329:    1001−1006,. 1993 20)D,Elia JA, Weinrauch LA, Gleason RE et a1:    Preliminary screening of the relationship of    serum lipids. tQ. survival of chronic dialysis    patients. Ren Fail 15:203一.209,1993 21)平沢由平,平嶋邦猛,荒川正昭ほか.=腎性貧血患    者に対するrecombinant human erythropoietin    (EPOCH)の臨床的研究一二重盲検法による3用    量比較試験一.腎と透析 27:157−177,1989 22).Nyゆer窪G, Larsson O, Norden G:Problems    related to th6 start of end−stage rεnal failure    treatment in diabetic patients with advanced    nephropathy.1勿The.Kidney and Hypertension    in Diabetes Mellitus(Mogensen CE ed),. pp291    −296,Martinus Nijho鉦Publishing, Boston    (1988) 23)繁田幸男,中本 安,土田弘基ほか:糖尿病性腎    不全に対する長期透析適応基準について.厚生省    平成元年度糖尿病調査研究報告書:407−411,1990 24)Wizemann V,. Kramer W:Choice of ESRD    treatment strategy accordirlg to cardiac status.    Kidney Int 33(Suppl 24):19レ195,1988 25)馬場園哲也,平田.幸正:CAPD−2.糖尿病の透析    一患者指導と治療の実際.改訂版(大野丞二,前    田貞亮,柴田昌雄編),pp239−248,日本メディ.カ    ルセンター,東京(1991) 26.)Amair P歩Khanna R,正eibel B et al;Continu.    ous arnbulatory peritoneal dialysis in diabetics    with end−stage renal disease. N Engl J Med    30:625−630, 1982 27)Rottembourg J, Issad B, Allo皿ache M et al:    Clinical aspects of continuous arhbulatory and    continuous cyclic peritoneal dialysis in dfabetic    patients. Perit pial Int 9:289−294,1989

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