本稿は、体力・運動能力に関する双生児・きょ うだい研究であり、次の2つの研究がある。ひ とつはきょうだいデータを分析した研究1、も うひとつは双生児及びきょうだいデータを分析 した研究2である。 研究1 問題と目的 きょうだい(sibling)を対象とする研究は、 様々な特性や能力において、きょうだいがどの くらい似ているかを調べようとするものや、 きょうだいの差異をもたらす要因を検討しよう とするものがある。前者はきょうだいの類似性 を求める。後者は出生順、きょうだい構成、きょ うだい数、きょうだい関係などの、いわゆるきょ うだい要因の影響について検討する。 きょうだいの類似性の指標は、人間の特性や 能力の個人差に対する遺伝の影響を検討する際 に用いられる。この検討方法には、表現型から 推定するトップダウンアプローチと、表現型に 関連する遺伝子型から推定するボトムアップア プローチの2つがある (Bouchard,et.al., 1977)。 ここで言う、表現型(phenotype)とは観察可 能な特徴であり、身長やテスト得点などの観測 変数のことをいう。トップダウンアプローチは、 血縁固体間の表現型の類似性を比較することで 遺伝的影響を検討する手法である。例えば、双 生児、親子、きょうだい、いとこ、養子きょう だいといった血縁タイプごとの遺伝的関連度の 順に、それらの類似性の強さが対応していれば、 その特性や能力には遺伝的影響があるとみな す。 体力及び運動能力に関する研究においても、 血縁タイプごとの類似性を比較することが期待 されるが、これに関する研究はとても少ない。 その代表的な理由は次のとおりである。まず、 双生児の類似性は、そもそも双生児の出生率が 低いため、限定的な報告しかない。この出生率 の低さは、諸外国に比して日本はさらに低いと いう事情もある。親子は、二卵性双生児と同様 に平均して遺伝的に 50%等しい関係にあるも のの、体力及び運動能力における親子の類似性 では親子間の年齢差が支障となる。養子のケー スもこの領域では重要なデータであるが、体力 及び運動能力に関する研究はほとんどみられな い。きょうだいは、二卵性双生児や親子と同様 に平均して遺伝的に 50%等しい関係にあり、 年齢差も小さいため、体力及び運動能力の類似 性は貴重なデータであるし、他の血縁タイプの データよりは比較的容易に収集できるという利 点を持つ。 きょうだいの類似性は、平均して 50%等し い遺伝要因の影響と同一家庭で一緒に育つこと で共有される環境要因の影響の和とみなす。双 生児の類似性を利用すれば、表現型に対する遺 伝要因と環境要因の個人差への寄与の程度を推 定できるが、きょうだいの類似性だけではそれ はできない。だが、きょうだいの類似性(相関 係数で示す)を2倍した値を遺伝率(個人差へ の遺伝要因の寄与率)の上限値として扱うこと
体力・運動能力に関する双生児・きょうだい研究
A twin and sibling study of physical fitness and motor ability
奥 田 援 史
Enji OKUDA
特性、出生順の基準(例えば、第2子以降の対 象者全てを第2子とするケースが散見される) がそれぞれの研究により異なる点にあると考え られる。ここでは、上述の先行研究の知見を参 考にしてきょうだい数を限定し、分析を進める こととする。 そこで、本研究では、きょうだいを対象とし て、体力・運動能力におけるきょうだい類似性 について検討することを第1の目的とする。ま た、体力・運動能力への出生順の効果について 検討することを第2の目的とする。 方法 1.調査対象者 小学5年〜中学3年までの児童・生徒のきょ うだい 496 組、計 992 名を対象とした。調査対 象者は、同一家庭の2人以上のきょうだいを持 つ者で、きょうだいは小学校5年生と6年生の ペアか、または中学1〜3年生のうちのペアで ある。その内訳は表 1 に示す。 2.調査内容 各学校が実施している新体力テストの結果を 用いた。分析したテスト項目は、握力、上体起 こし、長座体前屈、反復横とび、持久走あるい はシャトルラン、50M 走、立ち幅とび、ボー ル投げの計 9 項目である。持久走項目では、小 学生でシャトルラン、中学生で持久走とした。 また、ボール投げ項目については、小学生はソ フトボール投げ、中学生はハンドボール投げが 実施される。 3.調査手続き 関連機関に調査目的及び内容を明示し、調査 実施の承諾を得たのち、各小・中学校に調査用 紙を郵送、返送する方法にて、新体力テストの 結果を収集した。一部は直接訪問・依頼したケー スもある。調査用紙への回答は、担任教諭また は体育主任教諭に依頼した。 4.データ処理 握力については右と左の握力値の記載を求め たが、左右の平均値で回答されるケースが多く あったため、全て左右の平均値で処理した。各 学年×性ごとに平均値と標準偏差を算出し、そ れらの値を用いて各テスト項目の値をそれぞれ 標準得点に変換した。全ての分析は標準得点に も可能である(ファルコナー、1993)。また、きょ うだいの類似性は、個人差に対する遺伝と環境 への性の影響を検証するためには有効である。 きょうだいは性の構成により、男性きょうだい (bro-bro)、女性きょうだい(sis-sis)、男女のきょ うだい(bro-sis)の3つのタイプに分類され、 各タイプのきょうだいの類似性を比較する。例 えば、きょうだいの類似性が、bro > bro-sis > bro-sis-bro-sis の関係にあれば、男性は女性より も環境の影響を受けにくいと仮定できる。また、 bro-bro = sis-sis > bro-sis の関係があれば、性 に よ っ て 異 な る 環 境 の 影 響 を 仮 定 で き る (Malina and Mueller, 1981)。
きょうだいを対象とした研究のもうひとつの 焦点は、きょうだいの差異に着目するものであ る。きょうだいの差異は、共有しない 50%の 遺伝的要因と非共有環境要因の影響である。非 共有環境とは、家族メンバーを異ならせるよう に作用する環境要因であり、そのなかで最も広 範に研究されてきたのが出生順(birth order) の要因に関するものである。従来、出生順の影 響については人格変数を中心とする研究におい て盛んに行われてきた。Ernst and Angst(1983) は、1000 以上のパーソナリティ特性への出生 順の効果に関する研究を検討したところ、対象 者のきょうだい数や社会経済的地位が影響する のであって、それらを統制すると出生順の効果 がほとんどみられないと結論づけている。知能 に関する研究では、きょうだい数と出生順の影 響を検討した結果、出生順の影響もみられるが、 きょうだい数の影響がより大きいという報告が ある(古畑・古庄、1971)。 体力・運動能力領域におけるパフォーマンス への出生順の影響については、第1子の方が高 いとする研究 (Hall and Lee, 1981) 第2子の方 が高いとする研究(川上、他、1984;菅原、 1996;賀川、1999)、出生順の効果がないとす る 研 究(Martin,1970; 畠 山、1981; 松 浦、 1986)、そして不安場面や身体脅威場面では第 2 子 の 方 が 高 い と す る 研 究(Landers and Martens, 1971; Alberts and Landers, 1977; Martin and Hall, 1997)があり、出生順の効果 については一様の結果はみられていない。この 原因としては、対象者数、対象者の年齢、課題
2)きょうだい構成 男性きょうだい(bro-bro)、女性きょうだい (sis-sis)、男女のきょうだい(bro-sis)のきょ うだい構成ごとに相関係数を算出した結果を表 3 に示す。相関係数の範囲は 0.08~0.46 であり、 bro-bro の上体おこし、長座体前屈、反復横とび、 シャトルランの項目を除いた他の相関係数は全 て有意である。median は bro-bro 0.33、sis-sis 0.32、bro-sis 0.34 である。相関係数の差の検定 結果より、持久走項目だけにおいて有意な差が 認められ sis-sis の相関係数の値が大きい(χ2 =8.34, df=2, p< 0.05)。bro-bro では握力、立 幅とび、ボール投げ項目での相関が高い傾向、 一方 sis-sis では上体おこし、持久走、シャト ルラン、50M 走項目の相関が高い傾向がみら れる。 3)きょうだい数 2人きょうだいと3人きょうだい別に、各測 定項目における相関を算出した結果が表 4 であ る。上体おこし項目だけにおいて、3人きょう だいの相関は2人きょうだいのそれよりも有意 に大きい(CR=2.04, P< 0.05)。 2.出生順の影響について 2 人きょうだいのきょうだい 179 組、358 名 だけを対象とした各測定項目の標準得点に換算 された平均値と標準偏差の結果は表 5 である。 出生順(2)×性(2)の被験者間要因とする分 散分析の結果、出生順及び性の主効果は認めら れず、また出生順×性の交互作用の効果も認め られなかった。参考までに次の点だけは確認し ついて処理した。ボール投げについては、分析 基準によっては小学生と中学生の各標準得点を ひとまとめにして処理をした。 表1 調査対象者 小学生 中学生 全体 5年 6 年 1年 2年 3年 男 85 91 100 53 132 461 女 80 74 171 65 141 531 992 bro-bro 39 63 102 sis-sis 28 109 137 bro-sis 98 159 257 496 上段:人数、 下段:組数 結果 1.各測定項目におけるきょうだい相関 各測定項目における学年×性ごとの平均値と 標準偏差の結果を資料1として巻末に付す。 きょうだいの類似性については、第1子や第2 子といった出生順は問題としないことから、こ こで算出された相関は級内相関である。 1)学校種 全体、小学校と中学校の学校種ごとに相関を 算出した結果を表 2 に示す。相関係数の範囲は、 0.12~0.42 で あ り、 全 て 有 意 な 値 で あ る。 median は全体 0.34、小学校 0.39、中学校 0.31 である。学校種別では、相関の差の検定結果よ り、立ち幅跳び項目だけにおいて小学校>中学 校が有意であった(CR=2.43, P<0.05)。各項目 別に傾向をみると、柔軟性の指標である長座体 前屈の値が低いことが特徴であるが、その他の 項目間の差異はみられない。 表 2 学校種ごとのきょうだい相関 握力 上体おこし 長座体前屈 反復横とび 持久走 シャトルラン 50M 走 立ち幅とび ボール投げ 全体 0.34 0.32 0.15 0.34 0.34 0.27 0.34 組数 491 493 496 494 492 492 495 小学 0.33 0.39 0.19 0.41 0.40 0.32 0.42 0.38 組数 162 165 165 165 165 165 165 165 中学 0.35 0.28 0.12 0.30 0.37 0.35 0.21 0.31 組数 329 328 331 329 265 327 327 330 表 3 きょうだい構成ごとのきょうだい相関 握力 上体おこし 長座体前屈 反復横とび 持久走 シャトルラン 50M 走 立ち幅とび ボール投げ bro-bro 0.44 0.16 0.08 0.16 0.27 0.18 0.32 0.40 0.46 組数 101 101 102 102 55 39 102 102 102 sis-sis 0.29 0.44 0.17 0.33 0.60 0.49 0.41 0.27 0.36 組数 134 135 137 135 85 28 134 134 136 bro-sis 0.34 0.31 0.16 0.39 0.31 0.46 0.31 0.21 0.28 組数 256 257 257 257 125 98 256 256 257
関は、加齢にともに低下する傾向があり、この 傾向は本研究の結果とほぼ一致する。また、思 春期スパートに伴う個人差が中学校における きょうだい相関を減じている可能性も指摘でき る。 きょうだい構成別のきょうだい相関では、持 久走項目だけにおいて有意な差が認められた が、median でみると bro-bro で 0.33、sis-sis で 0.32、bro-sis で 0.34 と全体的に差がない。ただ、 bro-bro きょうだいでは握力、立幅とび、ボー ル投げ項目での相関が高く、一方 sis-sis きょ うだいでは上体おこし、持久走、シャトルラン、 50M 走 項 目 の 相 関 が 高 い 傾 向 が み ら れ る。 Siniarska(1984)は bro-sis の相関が低い傾向 にあると報告しているが、本研究の結果はその ような傾向はない。 体力・運動能力の双生児類似性を検討した研 究をみると、握力、上体おこし、長座体前屈、 反復横跳び、50M 走、立ち幅跳びの6項目に おいて、一卵性双生児の類似性は 0.51 〜 0.78 ておきたいので、記述しておく。50M 走とボー ル投げの2項目では、出生順の主効果が有意な 傾向(P<0.10)にあり、第1子方がパフォーマ ンスは高い傾向にある。 考察 1.きょうだいの類似性について 体力・運動能力のきょうだい相関を全体でみ ると、長座体前屈の 0.15 を除けば 0.32~0.34 の 範囲にあり、median は 0.34 であった。Malina and Mueller (1981) の結果は 0.11 ~ 0.29 の範囲 で、median が 0.25 であることから、本研究の 結果の方が相関係数は高い傾向にある。彼等の 研究の対象者は 6~12 歳であるため、年齢の近 い本研究の小学生の相関係数の値と比較する と、本研究の結果の方がさらに高い傾向にある。 小学校と中学校別での相関の結果は、立ち幅 とび項目だけにおいて有意な差が認められたに すぎないが、総じて小学校の方が中学校よりも 相関は高い傾向がみられる。通常、双生児や養 子の知能、パーソナリティ、体格などの級内相 表 4 きょうだい数ごとのきょうだい相関 握力 上体おこし 長座体前屈 反復横とび 持久走 シャトルラン 50M 走 立ち幅とび ボール投げ 2 人 きょうだい 0.30 0.19 0.12 0.23 0.41 0.38 0.30 0.23 0.33 組数 178 177 179 178 99 55 178 178 178 3 人 きょうだい 0.38 0.38 0.19 0.40 0.40 0.32 0.38 0.30 0.34 組数 218 220 221 220 115 74 219 219 221 表 5 出生順の効果 第1子 第2子 分散分析 男 女 計 男 女 計 出生順 性 交互作用 握力 M −0.02 0.03 0.00 −0.05 −0.25 −0.17 n.s. n.s. n.s. (N=178) SD 0.93 1.02 0.97 1.00 0.96 0.98 上体おこし M −0.06 −0.07 −0.06 −0.02 −0.16 −0.10 n.s. n.s. n.s. (N=177) SD 1.01 0.90 1.01 0.83 1.03 0.95 長座体前屈 M −0.05 −0.23 −0.13 −0.18 −0.03 −0.11 n.s. n.s. n.s. (N=179) SD 1.05 0.85 0.97 0.96 1.01 0.99 反復横とび M 0.00 −0.03 −0.01 0.05 −0.09 −0.03 n.s. n.s. n.s. (N=178) SD 0.86 0.95 0.90 1.00 0.91 0.95 持久走 M 0.10 −0.10 0.01 −0.22 0.02 −0.06 n.s. n.s. n.s. (N=154) SD 1.08 0.86 0.98 1.42 0.99 1.15 シャトルラン M −0.12 −0.01 −0.08 −0.02 0.38 0.17 n.s. n.s. n.s. (N=123) SD 1.01 1.00 1.00 0.99 1.17 1.09 50M 走 M −0.44 −0.51 −0.47 −0.34 −0.23 −0.28 n.s. n.s. n.s. (N=178) SD 1.03 0.80 0.93 1.03 1.16 1.10 立ち幅とび M 0.06 0.11 0.08 0.01 −0.14 −0.07 n.s. n.s. n.s. (N=178) SD 0.90 0.90 0.90 1.16 1.32 1.26 ボール投げ M 0.00 0.09 0.04 −0.07 −0.16 −0.12 n.s. n.s. n.s. (N=178) SD 0.89 0.90 0.89 0.94 0.89 0.91
加への志向的な側面において、出生順の効果を 検討することが期待される。 まとめ 本研究の目的は、体力・運動能力におけるきょ うだい類似性を求めることと、体力・運動能力 への出生順の効果を検討することである。小学 5年から中学3年までの 496 組のきょうだいを 対象として、新体力テストのデータを収集・分 析した。 その結果、体力・運動能力のきょうだい類似 性 は、 全 体 で み る と 0.15 〜 0.34 の 範 囲 で、 median は 0.34 あった。この類似性について、 学校種別、きょうだい構成別、きょうだい人数 別の観点から分析したところ、有意な差が認め られた点もあったが、総じて顕著な特徴は認め られなかった。次に、体力・運動能力への出生 順の効果を検討した結果、先行研究の知見を参 考に2人きょうだいペアに対象を限定したとこ ろ、全ての測定項目において出生順の効果は認 められなかった。行動遺伝学的領域では、出生 順は非共有環境要因のひとつであり、この影響 度が小さいとすれば、体力・運動能力に影響す る非共有環境要因は何かを探索していくことが 今後の課題となる。 研究2 問題と目的 体力・運動能力の高い者もいれば低い者もい るように個人差がみられる。体力の個人差に対 する環境要因の影響に注目が集まりがちである が、その前に、その個人差への遺伝要因の影響 を明らかにすることが期待される。なぜなら、 生来、体力・運動能力の高い者が頻繁に運動参 加することはよくあるからである。 一般に、人間の特性や能力の個人差への遺伝 の影響は、遺伝子型から推定するボトムアップ アプローチと身長や知能指数などの観察可能な 変数から推定するトップダウンアプローチを用 いて確認される。特に、トップダウンアプロー チで代表的な方法が双生児研究であるが、双生 児の出生率が低いため、双生児研究は非常に限 定的にしか実施されていない。双生児の出生率 の範囲、二卵性双生児の類似性は 0.29 〜 0.67 の範囲にある(okuda, et.al., 2005)。二卵性双 生児ペアは平均して 50%等しい関係にあり、 この関係はきょうだいペアと等しい。だが、体 力・運動能力の類似性においては、きょうだい の値の方が低い傾向が認められ、年齢差が影響 していると考えられる。 全体的考察としては、体力・運動能力に関す る行動遺伝学的研究では、課題特性、対象双生 児の年齢と性が多様であるため、各表現型の個 人差に対する遺伝的効果は確認されているが、 限定的で不均一な寄与率である。但し柔軟性の 指標だけはかなり家族類似性が高いことを示す ようである。しかし、本研究の結果では、柔軟 性の指標である長座体前屈のきょうだい相関が 最も低いことから、家族類似性も低いと判断さ れる。 本研究の結果では、体力・運動能力のきょう だい類似性が 0.3 程度である。きょうだいの類 似性は遺伝的影響と共有環境の影響の和であ り、きょうだいの類似性の2倍が遺伝率の上限 とみなすことができることを考慮すると、体力・ 運動能力の多くの項目では遺伝よりも環境の影 響が大きいと推察される。 2.出生順の効果について 出生順の影響を検討するためには、なぜ出生 順が影響を及ぼすのかを説明する要因を同時 に、そして長期的に調査することが期待される。 出生順の影響については、模倣仮説と資源限定 仮説の2つの仮説が立てることができる。模倣 仮説とは、第2子は第1子の遊びなどを早期か ら模倣する結果、運動能力に良い影響をもたら すというものである。一方、資源限定仮説とは、 親の養育行動を一定の容量とすれば、子どもの 数が増えれば増えるほど、子どもひとり当たり の親の養育容量が小さくなるため、第1子の方 が比較的良好な運動発達を期待できるのではな いかというのである。 しかし、本研究では、出生順の効果は全ての 測定項目において認められなかった。この結果 は、小学生5年生から中学生3年生までの2人 きょうだいで、その年齢差1、2歳を対象にし た限定的なものかもしれない。今後は、年齢差 が大きいケースや不安場面や危険なスポーツ参
表現型(P:双生児データ)は相加的遺伝(A), 非相加的遺伝(D),共有環境(C),非共有環 境(E)の潜在変数の影響をうけるモデルを仮 定する(Neale and Cardon, 1992)。相加的遺 伝とは表現型にひとつひとつの遺伝子が等しく 影響を及ぼす様式の遺伝,これに対し,非相加 的遺伝とは遺伝子の組み合わせによって意味や 効果が異なり,単純な足し算では説明できない 様式の遺伝のことを指す.共有環境とは家族メ ンバーを類似させるように作用する要因,非共 有環境とは家族メンバーを異ならせるように作 用する要因であり個人ごとで異なる家庭外の経 験や家庭内の独自の経験を指す. 1つの行動が多くの遺伝子の影響を受けてい るというポリジーンモデルに基づき,相加的遺 伝の相関は一卵性双生児で 1.0,二卵性双生児 ときょうだいで 0.5,非相加的遺伝の相関は一 卵性双生児で 1.0,二卵性双生児ときょうだい で 0.25 と仮定される.双生児間では等環境仮 説により共有環境が等しいと仮定されるが、双 生児ときょうだいの共有環境が等しいのかどう かはわからない。そこで、両者の共有環境が等 しいとしたモデルと等しくないとしたモデルを 設定し分析した。ここで,各潜在変数は互いに 無相関で分散が1と仮定する. 分析モデルについては,同一家庭で一緒に 育った双生児の類似性情報からだけではA,D, C、Eの全未知数を求められないし、非相加的 遺伝は相加的遺伝では説明できない遺伝効果と されているので、Aを仮定しないでDを含むこ とはできない.また、Eは誤差を含むので,こ れを除外したモデルは考えられない.よって、 ACEモデルを基本モデルとし、ADEモデル, AEモデル,CEモデルを修正モデルとする。 ACEモデルに男女差を認めるモデルを,S -ACEモデルとする.分析では,各潜在変数か らの母数を最尤法により推定する.各モデルは, モデル適合度指標を考慮し,最終的にはAIC を基準として最適なモデルを選択する(山本・ 小野,1999;豊田,2000).これらの分析には AMOS 4.0 for windows を用いた.
結果と考察 分析結果は表 6 である。双生児ときょうだい は世界的にみると日本のそれはとても低く、一 卵性双生児の出産確率は 0.4%程度、二卵性双 生児のそれは 0.6 〜 0.8%程度であり、多くの 双生児データを確保することは困難を極める。 このため、双生児データのサンプル数の少な さが分析結果の推定値に影響する可能性はあ る。Maes, et. al. (1997) は、大規模なサンプル の研究結果と比較すると、少数サンプルの研究 における推定値の結果には大きな変動がみられ ると指摘している。そこで、双生児に対し、比 較的収集が容易なきょうだいデータを加えて分 析する方法が対応策のひとつとして考えられ る。Posthuma and Boomsma(2000) は、 双 生児サンプルにきょうだいサンプルを加えるこ とで、サンプル数を増加させ、かつ観測変数を 増やすことにつながり,非相加的遺伝と共有環 境の影響の検出力を高めるとしている。また、 奥田、他 .(2007)では、双生児データだけの 分析結果と双生児データにきょうだいデータを 加えた分析結果がほぼ同じ結果であったことを 報告している。
そこで、本研究では、Okuda, et. al. (2005) に よる研究の双生児データに、研究1で用いた きょうだいデータを加えて、体力・運動能力の 個人差に対する遺伝要因及び環境要因の相対的 寄与率を算出することを目的とした。 方法 1.調査対象者
Okuda, et. al. (2005) における双生児データと 研究1におけるきょうだいデータを用いた。双 生児データは、小学 5 年から中学 3 年までの一 卵性双生児 90 組、二卵性双生児 68 組で、計 158 組,316 名である.きょうだいデータは、 小学5年から中学3年までの児童・生徒のきょ うだい 496 組、計 992 名である。 2.調査内容 各学校が実施している新体力テストの結果を 用いた。分析したテスト項目は、握力、上体起 こし、長座体前屈、反復横とび、50M 走、立 ち幅とびの 6 項目である。 3.分析方法 双生児データ及びきょうだいデータを年齢と 性ごとに標準得点に変換して分析した。分析は,
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mo-tor aptitude among pre-adolescent boys, Univer-sity Microfilms, U. S. A. , 1970. 松浦義行、幼児の健康状況と体格・運動能力に対する で異なると仮定したモデルは最適モデルとして 選択されなかった。性で影響が異なるモデルが 選択されたのは、握力、反復横跳び、立ち幅跳 びの3項目であった。また、非相加的遺伝要因 が組み込まれたモデルはいずれの項目でも採択 されなかった。簡単に説明しておくと、握力で は、その個人差に対し相加的遺伝要因と非共有 環境要因が影響する AE モデルで、かつ各要因 からの影響度に性差が認められるモデルが採択 された。すなわち、握力の個人差に対する相加 的遺伝要因と非環境要因の相対的寄与率は、男 子の場合 76%と 24%であるのに対し、女子の 場合 72%と 27%である(丸め誤差のため計 100%にはならない場合もある)。次に、上体お こしでは、上体おこしの個人差に対して相加的 遺伝要因、共有環境要因、非共有環境要因が影 響する ACE モデルが最適モデルであった。つ まり、上体おこしの個人差は、相加的遺伝要因 30%、共有環境要因 19%、非共有環境要因 52%で説明されることになる。
双生児データだけで分析した Okuda, et. al. (2005) の結果と比較してみると、性の影響を考 慮しなければ握力、立ち幅跳びの2項目では推 定値の結果は概ね一致している。上体おこし、 長座体前屈、反復横跳び、50M 走の 4 項目に おいては、両者の結果に大きな違いが認められ る。この原因については様々な要因が影響して いることが推測されるし、きょうだいデータを 加えての分析に問題があるとも言える。多くの 双生児データを確保して、再検討する必要があ る。 引用文献
Alberts, C. L. and Landers, D. M., Birth Order, Motor 表6 体力・運動能力の個人差に対する各要因の寄与率 項目名 最適モデル a2 am2 af2 c2 cm2 cf2 e2 em2 ef2 握力 S-AE 0.76 0.72 0.24 0.27 上体おこし ACE 0.30 0.19 0.52 長座体前屈 CE 0.21 0.79 反復横とび S-AE 0.60 0.78 0.40 0.22 50M 走 ACE 0.34 0.21 0.45 立幅とび S-AE 0.73 0.52 0.27 0.48 a:相加的遺伝、c:共有環境、e: 非共有環境、m:男、f:女、s:性差ありモデル
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Envi-ronmental Effects on Physical Fitness and Motor Performance. International Journal of Sport and Health Science, 3:1-9, 2005. 奥田援史・堀井大輔・叶俊文、幼少年期の Body Mass Index に関する双生児・きょうだい研究,滋賀大 資料 1 各測定項目の記述統計 身長 体重 握力 上 体 おこし 長座体 前 屈 反復横 と び 持久走 シャト ルラン 50M 走 立幅 跳び ボール 投 げ 小学 5 年 男 M 138.48 34.07 17.79 19.58 33.90 40.12 − 50.21 9.01 157.88 26.61 SD 5.70 7.94 3.50 4.55 7.28 6.94 − 20.22 0.78 17.83 7.12 女 M 140.91 35.16 17.09 15.82 36.85 35.73 − 38.51 9.32 152.40 15.81 SD 7.08 8.08 3.91 5.37 7.73 5.77 − 15.54 0.92 21.77 5.02 小学 6 年 男 M 147.67 39.70 22.51 20.87 37.99 44.79 − 59.85 8.41 172.73 31.22 SD 7.19 8.12 5.08 4.30 7.52 6.02 − 21.77 0.85 17.99 7.51 女 M 149.15 40.99 20.90 17.08 38.31 39.30 − 43.12 8.93 158.09 18.61 SD 7.02 8.41 4.66 4.22 6.48 6.88 − 18.22 0.71 20.29 6.79 中学 1 年 男 M 152.10 42.86 25.69 23.55 39.24 47.51 414.30 8.24 185.58 19.42 SD 8.03 10.30 6.46 5.88 7.53 7.32 74.45 0.94 25.32 5.19 女 M 152.35 44.34 22.26 18.83 43.67 42.81 289.04 8.91 161.89 12.25 SD 6.14 8.17 4.31 4.43 7.56 5.26 41.76 0.85 19.09 3.05 中学 2 年 男 M 161.54 49.43 32.75 25.40 41.30 48.55 390.47 7.71 205.09 22.02 SD 8.25 7.66 6.63 4.37 10.25 6.89 77.61 0.91 25.08 5.03 女 M 156.97 49.39 25.23 18.85 45.80 41.95 294.06 8.94 165.23 12.72 SD 4.35 8.56 5.30 6.23 9.53 5.84 34.88 0.85 23.05 3.73 中学 3 年 男 M 167.08 59.80 37.18 26.18 45.64 49.95 406.34 7.35 213.27 23.43 SD 6.89 46.23 6.10 5.83 9.92 7.30 86.80 0.76 27.59 5.17 女 M 157.36 49.55 25.86 19.60 44.98 42.99 305.99 8.64 168.22 14.29 SD 5.39 7.14 4.49 4.96 8.81 5.73 37.38 0.74 20.17 3.66