著者
丸尾 友朗
内容記述
学位授与大学: Osaka Prefecture University(大阪
府立大学), 学位の種類: 博士(工学), 学位記番号:
論工第1238号, 学位授与年月日: 2010-03-31, 指導
教員: 松本啓之亮.
大阪府立大学博士論文
大阪府立大学博士論文
大阪府立大学博士論文
大阪府立大学博士論文
階層的マルチエージェントシステムとそれに
対する汎用 MAF モデルエディタに関する研究
2010
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丸 尾 友 朗
第 章 序論 第 章 満足度空間を用いた協調取引システムモデルの解析及び構成法 序言 複数の主体が存在する系に対する俯瞰者導入型モデルの構成法 主体のモデル化と対象系のモデル化 対象系への俯瞰者導入 満足度の推定 現状認識と最適化 満足度の吸収 還元 協調取引システムモデルの構成 取引市場のモデル化 協調取引システムモデル 俯瞰者導入型モデルの適用 従来モデルにおける需要家の満足度評価関数 満足度空間と従来モデル分析 満足度空間上での需要家の満足度 従来モデル分析 満足度空間を用いた協調取引システムモデルの構成法 各主体の満足度 満足度関数と無差別曲線
取引の制約条件 入札情報を用いた組合せ最適化手法 シミュレーションと考察 基本となる共通な条件設定 実験 実験 結言 第 章 協調取引システムモデルに対するネットワークモデルの構成法 序言 サービス ビジネスモデル ネットワークモデル トランスポートプロトコル サービス管理 データの 化 電力取引システムの構築 開発環境 システム構成 携帯端末からのアクセス シミュレーション 信頼性の高いネットワークモデル 結言 第 章 汎用 モデルエディタの設計 序言
グラフィカルなモデルエディタ マルチエージェントモデル モデル構造と描画のマッピング モデル コード変換によるシミュレータ開発手法 モデルをコードに変換する技術 テンプレート 実験結果と評価 モデルエディタに関する評価 自動生成量に関する評価 作業量に関する評価 結言 第 章 結論 付録 法 最小二乗法と 法 法の適用 法による解法 法から 法へ 法 法による解法 付録 調整パフォーマンス優先型選択法 参考文献
第
章
序論
我々は 日常生活において様々な意思決定を行なっている 個人の意思決定は他の人々 の意思決定に影響を及ぼし 同時に 他の人々の意思決定は我々個人の意思決定に影響を 及ぼす 社会生活において 我々の意思決定は互いに依存し合っている このような現 象は 社会現象だけにとどまらず ソフトウェアをはじめとする様々な情報システムにも 見受けられる ソフトウェアは 年代の汎用コンピュータの急激な普及に伴い 需要 規模が急増した その結果 信頼性や生産性の低下 技術者不足を引き起こし ソフトウェ ア危機と呼ばれる社会問題となった この危機を契機にソフトウェア工学 が誕生し こ の中から新しいアイデアや技術が次々と提案され 年代に オブジェクト指向 と いう新しいアプリケーションパラダイムが誕生した オブジェクト指向では 開発者がもつシステムに対する世界観をオブジェクト単位でモ デル化することで表現する モデル化されたオブジェクトは互いにメッセージのやり取り を行ないながら依存 競合 あるいは協調し合うことでシステム全体として一つの世界観 を再現する ソフトウェア工学やオブジェクト指向といった新たな概念の誕生等により ソフトウェ アの生産コストは減少した しかし 年代に発生したインターネットの爆発的普及を 背景に それまで主にローカルで閉じていた情報システムはインターネットといった新た な通信媒体を利用し 互いにメッセージをやり取りしながら競合 協調し合うことで統合的な情報システムを構成するに至っている これらネットワークを介しオンライン接続された情報システムも 階層的に各層をとら えることで 構成要素同士が互いに依存 共存関係により結ばれて一つのシステムを構築 するという いわば我々が日常生活で経験している意思決定現象や オブジェクト指向に 準ずる構図を観ることができる このような構図を分析する手法としてマルチエージェントシステム という考えが提 唱されている マルチエージェントシステムとは 現代社会に数多く見られる社会現象を 解析するために提案された分析手法である これまでこれら社会現象を解析しようとさま ざまな数学的 物理学的手法が用いられてきた 現在でも数学的 物理的手法によ る解析は盛んに行なわれているが その一方で それらの手法で解析するのは困難である という見解の下 複雑系という考え方が登場し,問題の細分化を行なう科学的方法論以外 の考え方が台頭してきた マルチエージェントシステムでは 系を細分化することなく複 雑なまま扱い,全体を統一的に把握する.これは,系の構成要素とそれらの相互作用が系 全体にどのような影響を及ぼすのかという複雑系のメカニズムを明らかにしようというボ トムアップ的な分析手法として注目されている 本研究では このような統合的な情報システムをビジネスロジック層とそれをささえる ネットワークシステム層というように 階層的にとらえ それら各層をマルチエージェン トシステムとしてモデル化する そして モデル化された各層がマルチエージェントシス テムとして表現可能であることを利用して 汎用的なマルチエージェントシステム用モデ ルエディタを用いて一元的に開発 管理する統合的な開発環境の実現可能性について検討 する 以下 各章の構成について述べる 章では 主にビジネスロジック層について論じる ビジネスロジックは先に述べたよ うに 「自律的に意思決定を行なう因子 主体 が複数存在し それら主体間に生じる協調 競合関係といった相互作用により全体としての状態が決定する系」を対象とする このよ うな系を高向らの提唱したモデル に俯瞰者という新たな主体を導入し その主体に
系全体としての評価関数を最適化するという目的を与え 自律的に行動を起こさせること で間接的に系を構成する主体全体をより最適な状態へ誘導するというマルチエージェント モデルとしてのモデルの明確化を行なう そして このモデルの適用例として橋本ら により体系付けられた協調的電力削減モデルを より抽象的な協調取引システムモデ ルとしてモデル化すると共に 橋本らのモデルの問題点を数学的に分析し その問題点を 解決するためのモデル構成法を提案する 章では 主にネットワークシステム層について論じる 章で示したモデルは主にビジ ネスロジックに関するものであり それを統合的な情報システムとして実現する際に不可 欠となるネットワークシステムに関しては深く触れていない 章では そのネットワー クシステムの構成法について論じる 現在では ネットワークシステムを構成する際 イ ンターネットとの親和性の高さは非常に重要視される要因の一つとなっている そこで 章では 様々なユーザ層にも柔軟に対応でき インターネットとの親和性が高くなるよ うな分散ネットワークシステムを構築する このシステムは既存のインターネット技術 を全面的に利用したインターネットベースの分散ネットワークモデルを意識しており イ ンターネットとの親和性が非常に高い これにより提案システムでは マシンエージェン トによるアプリケーションアクセスの他 インターネットブラウザによるヒューマンエー ジェントとの連携 携帯端末によるネットワークアクセスや必要に応じてセキュリティの かかった通信路を提供するなど スケーラビリティの高いシステムを構築することが可能 である 章では 章 章の各層をマルチエージェントモデルで表現可能なシステムとして とらえた時 その特性をいかして 一元管理可能な統合開発環境を提供するための第一ス テップとして 汎用的なマルチエージェントフレームワーク 用モデルエディタの 設計を行なう フレームワークは ソフトウェアを開発する際にそのソフトウェアの汎用的な部分 同 種のソフトウェアに共通な部分 とそのソフトウェアに特化した部分を分離設計し 前者
をフローズンスポット 後者をホットスポットとして開発する これにより 同種のソフト ウェアを作成する際には ホットスポットのみを開発し差し替えることになるので開発コ ストが軽減される しかし,フレームワークを用いる際 コードベースでモデルを実装 管理していること が多く そのため フレームワーク変更の際に柔軟に対応することができず,たとえ同じ 内容のモデルであっても新たなフレームワークのために初めからモデルを作り直すことが 多い これらの解決をめざしてモデルを容易に管理する方策を実現するため,視覚的にわ かりやすく一覧性に富みかつ相互関係が一目で把握できるようにモデルを図式的に表現 するグラフィカルなマルチエージェントモデルエディタを開発し,これを用いたマルチ エージェントシミュレータ開発手法について提案する この際 モデルの保存形式として 形式を用い モデルを使用する際にはこれに変 換を加えてフレームワークに対応するソースコードを出力し,それをフレームワークに入 力する これにより,フレームワークに依存しない形式を実現し,変換機構を用意するこ とでさまざまなフレームワークに柔軟に対応できる汎用的なマルチエージェントフレーム ワーク用モデルエディタの実現をめざす 最後に 章では 本研究で得られた結果について総括し 今後の課題について述べる
第
章
満足度空間を用いた協調取引システ
ムモデルの解析及び構成法
序言
現代社会では 「自律的に意思決定を行なう因子 主体 が複数存在し それら主体間に 生じる協調 競合関係といった相互作用により全体としての状態が決定する系」が多く存 在する このような系ではその主体間に生じる相互作用から 個々の主体が自身の状態を より最適なものにしようとして起こした行動が 結果として逆に自身の状態を悪化させる といった事象がしばしば見受けられる このような系に対し それを数学的 工学的立場か ら体系的にとらえ 理論的に解明しようとする学問が古くから存在し 現在でも様々な角 度から盛んに研究が行なわれている 高向ら はこれら系に対し系全体としての評価関数を考え その評価関数を最適化 することで間接的に系を構成する主体全体をより最適な状態へ誘導するという最適化手法 の一つを提案した この手法は 系を構成する主体の状態を満足度と呼ばれる指標により 表現するとともに 系の対象をオンラインシステムとして表現可能なものに限定し その オンライン性をいかして系を構成する個々の主体の満足度を表わす関数をオンライン推定 し その推定値を元に最適化状態を導き出すという特徴をもっている 高向らはこの手法 の有効性を検証するため 電力需給システムの需要過多時における負荷削減を目的とした図 主体のモデル化 電力削減モデル に適用し 有効性を検証した 高向らの電力削減モデルは 橋本ら により複数の電力供給者および需要家が 存在し 市場を形成するという形式で体系付けられた しかし 橋本らの提唱したこのモデ ルは 満足度をある特殊な座標軸上で定義していたため その特殊性から特定の条件を満 たす主体しか適切に満足度を推定できないという問題があった 本章では 高向らのモデルを俯瞰者という概念を用いてより明示的にモデル化すると共 に 電力を一つの抽象的な資源としてとらえ その資源を取引する協調取引モデルとして 表現する そして 橋本らのモデルを数学的に解析することでモデルに存在する制約条件を導き出 し 問題点を明らかにすると共に その問題点を解決する手法として 満足度を表現する空 間 満足度空間 上でのモデル構成法を提案する
複数の主体が存在する系に対する俯瞰者導入型モデルの
構成法
本節では 自律的に意思決定を行なう因子 主体 が複数存在する系に対し その系に存 在する主体を 意思 満足度という つのキーワードとともに図 に示すようにモデル 化し その主体の集合をもとに系 対象系 をモデル化 そこに俯瞰者という新たな主体を複数の主体が存在する系に対する俯瞰者導入型モデルの構成法 導入することで俯瞰者導入型モデルを構成する
主体のモデル化と対象系のモデル化
主体のモデル化と合理的思考 本モデルで扱う系には 特に断りの無い限り 個の主体が存在するものとし 各主 体には から までの識別子が割り振られているものとする また 識別子 をもつ主体 その意思 満足度をそれぞれ と表記する 主体 対象となる系において何らかの目的をもって自律的に行動を行なう 因子 各主体は 内部に意思 満足度を保持している 意思 自律的行動を起こす仕組み 主体が保持する満足度等をもとに次 行動を決定する 満足度 主体自身の最適性を表現するための指標 様々な要因により時々 刻々と変化する可能性をもつ また 特に断りの無い限り 本章を通じて各主体は「合理的思考に基づいて意思決定を 行なう」ものとする ここで想定される合理的とは 次のようなものである 起こりうる結果に対し どの結果を望み どの結果を望まないか その結果の順序の みを自身で判断でき それに一貫性がある で考えた自分が好む結果を得られるように最適な選択を行なう 言い換えれば 満足度を最大にするように行動を起こす 対象系のモデル化 体の主体が存在する系を考える この系において各主体は 周りの状況に応じて自律 的に合理的な意思決定を行なう ただし 「周りの状況」は 自身を含む系に存在する各主 体の意思決定の集合 と系に存在する環境要因 を合わせたものとして図 対象系のモデル化 定義する これらによってモデル化される系 を図 に示す
対象系への俯瞰者導入
■俯瞰者の導入 一般に系全体の最適化を考えた場合 その最適化の評価基準作成のため に その系に存在する各主体の状態 満足度 を適切に認識する必要性がある しかし 一 般には各主体の満足度は他者に対しては未知である この問題に対処するため 本モデル 構成法では系を俯瞰できる主体 俯瞰者 を新たに導入し この俯瞰者に系に存在する各主 体の満足度を一括推定させ その推定した個々の満足度をもとに作成した系全体としての 最適性評価基準を俯瞰者自身の満足度とし この俯瞰者に自律的行動を起こさせることで 系全体の最適化を図る 以下に 俯瞰者に関する記号表記を示す 俯瞰者を表わす主体 俯瞰者の意思 俯瞰者の満足度 系全体としての最適性評価基準 本モデルでは 各主体が保持している満足度と 俯瞰者が推定する各主体の推定満足度複数の主体が存在する系に対する俯瞰者導入型モデルの構成法 図 俯瞰者導入型モデル を明確に区別するため以下の表記法を用いる ある主体 が 主体 の満足度 を推定した時 その推定値を と記す この表記法により例えば 俯瞰者 による主体 の推定満足度は と表現できる 上記によって構成される俯瞰者導入型モデル を図 に示す ■俯瞰者の満足度 俯瞰者の満足度 すなわち 系全体の評価値はその系の特性に大きく 依存するため 対象の系にあわせて様々なものが考えられる 式 に俯瞰者の満足度 評価基準の一例を示す また 俯瞰者の満足度が式 以外の形式で定義されたとして も 本モデル構成法は適用可能である
図 満足度関数の推定 独立変数が 次元の場合 式 は各主体の推定満足度 とその主体に対する重み係数 の積和をもって系 全体としての評価値としている 重み係数 は 系に生じる各主体の状況 立場等の相違 を正規化するためのものである この重み係数 の決定法は 例えば 各主体ごとに観測 できる情報を利用し系に対する影響度を調べ その影響度が高ければ高いほど重みも大き くする等の手法が考えられる
満足度の推定
一般に満足度は他者にとっては未知な情報である また 時間や環境の変化によっても 刻々と変化する可能性がある そのためこの情報を他者が利用する際には何らかの手段を 講じる必要がある 本モデル構成法では この満足度をパターン分類と 法を用いた最小二乗 法によるパラメータ推定 付録 参照 の 段階法を用いる いま 図 に示すように 推定する主体 俯瞰者 を 推定される主体を とする のもつ満足度を表わす関数は 推定満足度を表わす関数は と表記される な お 図示する際の簡便性より 図 では満足度関数 は独立変数が のみの 変数複数の主体が存在する系に対する俯瞰者導入型モデルの構成法 関数としている 一般に満足度関数の独立変数は多変数で定義可能であり本節においても 独立変数をベクトル表記した を用いて解説する ■二段階法のアルゴリズム ※ 前処理として 推定する主体 は過去の実績や経験等から予め満足度を表わす関 数のパターンをパラメータ付き関数 といった形式で適当数用意しておく ただし は独立変数ベクトル はパラメータベクトルである 図 では がそれに相当する ① 推定される主体 の観測可能な情報を利用することで 推定満足度 を用意し ておいたパターンのうち適切なパターンに分類し 同時にパラメータの近似解 を初期値として与えておく 図 では関数 に分類され 初期値 が与えられている ② 推定される主体 から観測される 個の観測点の組 と①で得られたパラメータ付き関数からその残差を求め 法を用い た最小二乗法により反復計算を行なうことでパラメータベクトル を収束させる 図 では反復計算により が算出されている 法の大きな特徴として その収束計算の速さがあげられる この高速性か ら 一度主体 の推定満足度関数 が算出されると 時間遷移に伴う満足度の多少の 変化に対しても 処理①を必要とするほどの急激な変化でなければ追従推定が可能となる ことが期待される この二段階法により正しく満足度を推定するには 適切なパターンの 作成 分類法および近似解としての初期値決定法が不可欠である これら問題に関しては 各主体の行動的特徴をもとに代表的なパラメータ付き関数群を用意 分類する手法などが 考えられるが 実現に向けてはさらなる検討が必要である
図 現状認識と最適化
現状認識と最適化 満足度の吸収 還元
本節では対象系に存在する各主体の推定満足度 および重み係数 が適切な値と して与えられていると仮定し その仮定下における系全体の最適化について述べる 対象系の俯瞰者は 各主体の推定満足度 およびその重み係数 がわかれば 式 より系の現状を認識することが可能である 現状を認識した俯瞰者は 系に介入し 自身の満足度の最適化 すなわち 系全体が最適な状態に遷移するよう試みる この時 俯 瞰者と各主体の間で競合関係が生じる可能性がある複数の主体が存在する系に対する俯瞰者導入型モデルの構成法 俯瞰者の介入によって現状から新たな状態への遷移が試みられる時 系に存在する各主 体はその合理的思考から自身の満足度が低下するような状態への遷移は起こさない すな わち そのような状態遷移は最適化問題における実行可能領域内に存在していない このような状況を回避するため 本モデル構成法では各主体に対する満足度の吸収 還 元という概念を導入している 系全体の最適化を試みる時 いくつかの主体の満足度が減 少したとする この時系全体としては改善されているので 満足度が上昇している主体が 必ず存在する 俯瞰者はこの満足度が上昇している主体からその主体の満足度が遷移前の 状態よりも低下しない範囲で満足度を吸収し 状態遷移により満足度が減少する主体へ還 元する この満足度の吸収 還元作用により俯瞰者と各主体間の競合関係を回避し 系に存 在する各主体の満足度を低下させることなく 系全体の最適化を実現する 本モデル構成 法ではこの満足度の吸収 還元作用を実現する つの手法として 報酬と呼ばれる概念を 導入している 報酬概念を用いると 俯瞰者は満足度の上昇する主体から減少する主体へ 報酬の搾取分配を行なうことで満足度の吸収 還元作用を実現する 以上より 俯瞰者の現状認識と最適化に関する自律的行動は次のようにまとめられる 俯瞰者は系全体の現状を認識した後 系全体がより最適な状態へ遷移するよう系に介入 する この時俯瞰者は 必要に応じて報酬概念を用いた満足度の吸収 還元作用を利用し 最適化問題における実行可能領域を変化させ より最適な状態遷移の可能性を模索する この様子を図 を例に解説する 図 において俯瞰者は現状を認識した後 系の 最適化を試みるが遷移後の主体 の満足度が減少するため このままでは期待する状態 への遷移は起こらない そこで満足度が上昇している主体 から満足度の一部を吸収し 主体 に還元することにより 主体 の満足度の低下を防ぎ状態遷移を可能なものに変 化させ 状態遷移を実現している
図 取引市場
協調取引システムモデルの構成
ここでは 取引市場をモデル化し そこに俯瞰者導入型モデルを適用することで構成さ れる協調取引システムモデルについて述べる取引市場のモデル化
図 にモデル化された取引市場を示す 取引市場は 供給者 需要家 オークショニ アの 種類の主体が存在する また 取引対象は連続量として表わされる有償資源 とし 資源 単位当たりの対価は市場価格 で表現する 通常取引対象および市場 価格は非負 すなわち の範囲で定義されるが 本モデルでは特に断りの無い限り の範囲まで形式的に拡張して定義する協調取引システムモデルの構成 供給者 供給者 は 自己の満足度を上昇させるために資源 を市場価格 で売却することを目 的とする主体として定義される ただし は供給者を表わすシンボルである 供給者は取 引市場に複数体存在する これら供給者を区別するための識別子として を用いる また 特に断りの無い限り取引市場には 体の供給者が存在する すなわち は から まで の整数値をとるものとする いま 市場に存在する全供給者の集合を とする このとき は式 で表わさ れる 需要家 需要家 は 取引市場において自己の満足度を上昇させるために資源 を市場価格 で 購入することを目的とする主体として定義される ただし は需要家を表わすシンボル である 需要家は取引市場に複数体存在する これら需要家を区別するための識別子とし て を用いる また 特に断りの無い限り取引市場には 体の需要家が存在する すなわ ち は から までの整数値をとるものとする いま 市場に存在する全需要家の集合を とする このとき は式 で表わさ れる オークショニア オークショニア は取引市場を管理 運営し 市場特性に従ってその市場を最適化する ことを目的とする主体として定義される ただし はオークショニアを表わすシンボル である オークショニアは一つの市場に 体存在する 市場特性は その取引市場の性質 を表わす特性関数として表現され その市場の評価基準 すなわち オークショニアの満足
図 協調取引システムモデル 度を表わす関数として位置付けられる
協調取引システムモデル 俯瞰者導入型モデルの適用
需要家 供給者はそれぞれ自己の意思に基づいて自律的に行動を起こすため 一般には 市場に参加する多くの需要家 供給者の意思は互いに競合し合う その結果 需要に供給が 追いつかない需要過多状態や供給が需要を上回る供給過多状態による取引不能状態 ある いは価格高騰や価格下落などが発生する これら問題を解決するため 取引市場を一つの 系とみなし オークショニアを俯瞰者に 需要家 供給者をその他の主体にマッピングし 市場価格を環境要因とみなすことで俯瞰者導入型モデルを適用し オークショニアによる 報酬の搾取分配による満足度の吸収 還元作用により取引市場の状態改善を図る 本章で はこのモデルを協調取引システムモデルと呼ぶ 図 にモデル化された協調取引シス テムモデルを示す協調取引システムモデルの構成 報酬は 需要家にとっては無償で享受され 供給者にとっては提供する際にコストの発 生する連続量 として定義される 資源や市場価格同様 報酬も特に断りの無い限り の範囲まで形式的に拡張して定義する 協調取引システムモデルでは 非最適供給状態にある取引市場に対し オークショニア が各需要家に対して資源購入量の調整依頼を行なうことで取引市場のより最適な供給状態 への遷移を試みる この遷移の際 供給者の満足度は上昇することが期待されるが 需要家 の満足度が低下する恐れがある この需要家の満足度低下を回避するため オークショニ アは満足度の上昇した供給者からその一部を報酬という形式で搾取し 需要家へ無償提供 する
従来モデルにおける需要家の満足度評価関数
橋本らの提案した協調取引システムモデル 従来モデル では 需要家 の満 足度を表わす評価関数として および を定義している は 市場価格が の取引市場において 資源量 を購入した時の需要家の満足度に 対する評価値を表わす関数として位置付けられており 購入する資源量 と市場価格 の 関数として定義される は 享受する報酬量 を加味した評価関数として位置付けられており 市場価格 の状況下で 調整依頼を受けた結果 購入する資源量を とした時の評価値 とそ の見返りとして享受する報酬量 の和として定義される 需要家 が享受する報酬量 は 市場価格を 調整依頼を受ける前の購入資源量を 調整依頼を受けた後の購入資源量を とするとき 次式により算出される このように従来モデルでは 需要家 の満足度を表わす評価値 と報酬量を同次元として扱う 言い換えれば 需要家 の評価値は満足度そのものではなく満足度を報 酬量に換算したものとして定義されている この満足度に対する報酬量への換算作用の影 響により 従来モデルでは特定の需要家しか正しく評価できないという問題が生じている 次節ではこの問題点を満足度空間を用いて分析することで明らかにする
満足度空間と従来モデル分析
満足度空間は 各主体の満足度そのものを表わす空間として定義される また 従来モデ ルにおける需要家の評価関数との混同を避けるため 満足度空間上における需要家 の 満足度を 等と大文字を用いて表記する満足度空間上での需要家の満足度
従来モデルの分析に先立ち 分析に必要な満足度関数関連の諸定義について述べる 満足度関数 満足度空間上における需要家 の満足度 を 購入する資源量 と享受する報酬量 および市場価格 により一意に決定する関数として定義する また 特に断りの無い限り 満足度関数は以下の性質をもつと仮定する は に関して偏微分可能 簡便性のため 以下のような表記法を導入する 市場価格 をある定数 で固定した時の需要家 の満足度を 等と表記する満足度空間と従来モデル分析 報酬量満足度関数 市場価格 の状況下で 資源量 をある定数 で固定した時の需要家 の満足度を表 わす関数 を考える は 報酬量 のみを独立変数とする 変数関数である 特に の時 は市場価格 の状況下で ある報酬量 のみからなる満足度を 表わす関数となる 本節ではこれを 市場価格 下における需要家 の 報酬量満足度関 数と呼び で簡易表記する いま 次の法則を導入する 単一無償財に対する満足度は狭義に単調増加する この時 報酬は無償財なので関数 は 狭義の 単調増加関数となる 報酬量換算関数 報酬量満足度関数 は狭義に単調増加するため 報酬量と満足度の間に 対 の関 係が成立する したがって 逆関数 が存在する 逆関数 は 市場価格 の状況下において ある満足度 が与えられた時 報酬の みからその満足度を得るために必要な報酬量を表わす関数である 本節ではこれを 市場価格 下における需要家 の 報酬量換算関数と呼ぶ 資源量満足度関数 市場価格 の状況下で 報酬量 をある定数 で固定した時の需要家 の満足度を表 わす関数 を考える
は 資源量 のみを独立変数とする 変数関数である 特に の時 は 市場価格 の状況下で ある資源量 のみからなる満足度を 表わす関数となる 本節ではこれを 市場価格 下における需要家 の 資源量満足度関 数と呼び で簡易表記する
従来モデル分析
制約条件の導出 従来モデルにおいて は 市場価格 を任意定数 で固定した時の需要家 の資源 量 と報酬量 に関する満足度 を報酬量換算関数 により報酬軸上へ写 像したものとしてとらえることができる この関係を式 に示す 同様に は 市場価格 を任意定数 で固定した時の需要家 の資源量 に関する満 足度 を報酬量換算関数 により報酬軸上へ写像したものとしてとらえること ができる この関係を式 に示す 式 を式 に代入すると 式 が得られる 式 の両辺を で写像すると 需要家 の資源量と報酬量に対する満足度に 関する制約条件として 式 が導かれる満足度空間と従来モデル分析 制約条件のモデル的意味 式 より 従来モデルでは下記に示される内容を意味する制約条件が存在してい る 市場価格 の状況下において 資源量 のみからなる満足度 を報酬量に換算し た量 と報酬量 との和 に対する報酬量満足度 右辺 値 は資源量 と報酬量 に関する満足度 左辺値 と一致する 従来モデルでは この制約条件を満たす需要家しか正しく評価できない 具体的には以 下の タイプに応じた評価誤差が発生する 型 このタイプの需要家は 適切に満足度が評価される したがって この需要家に対し ては報酬は適切な量が支払われることになる 型 このタイプの需要家は 実際よりも満足度が低く評価される したがって この需要 家に対しては報酬は必要以上に支払われることになる 型 このタイプの需要家は 実際よりも満足度が高く評価される したがって この需要 家に対しては満足度を維持するのに十分な報酬は提供されない 満足度関数分離型需要家と報酬量満足度関数 従来モデルの分析を進めるに当たり 式 が成立するような満足度関数特性をも つ需要家を考える
式 は市 場価格 の 状況下 におい て 資源量 と報 酬量 に関す る満 足度 が資源量 のみからなる満足度 と報酬量 のみからなる満足度 に分離できることを意味しており 本章ではこのような特性をもつ需要家を満足 度関数分離型需要家と呼ぶ 満足度関数分離型需要家と報酬量満足度関数に関する定理を 以下に示す ■定理 報酬量満足度関数 が線形関数ならば 需要家 は満足度関数分離型需 要家である 証明 報酬量満足度関数 が線形関数であると仮定する この時式 に 線 形関数の性質である加法性を適用することにより 式 が導出される 証明終わり ■定理 資源量満足度関数 の値域が任意の実数値を取ると仮定する この時 需 要家 が満足度関数分離型需要家ならば 報酬量満足度関数 は線形関数となる 証明 資源量に関する つの任意定数 を考える いま 市場価格を とし を 調整依頼を受ける前の購入資源量 を調整依頼を受けた後の購入資源量と考え この時 享受する報酬量を とすると 式 および式 より式 が成立する また 式 と式 および式 と式 より 式 が成立する 満足度関数分離型需要家であることより 式 の左辺を変形して を右辺に移項し 両辺を で写像すると
満足度空間と従来モデル分析 式 より を消去すると式 が導出される 式 において は互いに独立な任意定数であることを考慮し 次の変数変換 を行なう この変数変換により 式 は 式 と表わせる よって 資源量満足度関数 の値域が任意の実数を取りうる時 式 は任意の実 数 に対して成立する ここで 解析学の分野で 一般に次のことが知られている 任意の実数 に対し となる連続関数は 定数 に限る 報酬量満足度関数 は単調増加関数 すなわち 連続関数である ゆえに 報酬量満足 度関数 は線形関数となる 証明終わり 非線形な報酬量満足度関数をもつ満足度関数分離型需要家 資源量満足度関数 の値域が任意の実数を取りうる時 従来モデルでは満足度関数 分離型需要家が正しく評価されるためには 報酬量満足度関数が線形関数であることが必 要条件となっている これを踏まえ 非線形な満足度関数をもつ満足度関数分離型需要家 に関する分析を行なう いま 式 における両辺値の差 すなわち 式 を考える
この需要家が満足度関数分離型需要家であると仮定し 式 に式 を代入 し を消去すると式 が得られる と置き を任意定数 で固定すると は の関数として式 のように表わせる 以降 且つ の範囲に限定して考える ※ は原点を通り単調に増加する関数なので である 式 に を代入して また を で微分すると 式 に平均値の定理を適用することで式 を満たす が存在することが示 される 報酬量満足度関数が下に凸な関数の場合 より 式 から式 が成立する ただし 等号成立は の時 よって 式 より式 が成立する ただし 等号成立は の時 報酬満足度関数が上に凸な関数の場合 より 式 から式 が成立する ただし 等号成立は の時
満足度空間を用いた協調取引システムモデルの構成法 よって 式 より式 が成立する ただし 等号成立は の時 したがって 従来モデルでは 満足度関数分離型需要家の満足度は報酬量満足度関数が 下に凸ならば過大評価され 上に凸ならば過小評価されることになる
満足度空間を用いた協調取引システムモデルの構成法
各主体の満足度
供給者 の満足度 は ある市場価格の状況下で 売却する資源量 と提供する報酬 量 が決定すると一意に定まる すなわち 売却する資源量 と提供する報酬量 および 環境要因である 市場価格 により一意に決定する関数として定義する 需要家 の満足度 は ある市場価格の状況下で 購入する資源量 と享受する報酬 量 が決定すると一意に定まる すなわち 購入する資源量 と享受する報酬量 および 環境要因である 市場価格 により一意に決定する関数として定義される オークショニア の満足度 は 市場特性に大きく依存するため 市場ごとに適切に 設定する必要がある 以下に一例を示す ここで はオークショニアによる供給者 および需要家 の推定満足度であ り は供給者 および需要家 に対する重み係数である図 市場価格 固定 の状況下での満足度関数と無差別曲線
満足度関数と無差別曲線
オークショニアの介入により取引市場に状態遷移が生じる時 需要家や供給者は合理的 思考に基づき自律的に行動するため 状態遷移前よりも満足度を低下させるような行動は 起こさない 例えば 需要家 を考え その満足度を として固定し 購入する資源量 を変化させる この時 満足度を維持するためには享受する報酬量 は追従して変化しな ければならない つまり 満足度を固定した時 資源量 と報酬量 の間には何らかの関 係式が存在することになる いま 市場価格 の状況下において 需要家 の満足度 を に固定する 式 は 市場価格 においてある一定満足度 を満たすための資源量 と報酬量 の関係を表わす式である いま 図 のように満足度関数 が形成する 次 元グラフを考え 満足度 をそのグラフにおける標高としてとらえるとき 式 は標 高 を表わす等高線として表現される 本モデルではこの式 で表わされる曲線を 経済学用語に倣い 市場価格 の状況下における満足度 に対する 無差別曲線と呼ぶ満足度空間を用いた協調取引システムモデルの構成法 図 需要家 左図 および供給者 右図 の無差別曲線と満足度の増減 なお この概念は供給者側にも同様に当てはめることができる ■需要家の資源と報酬の無差別曲線 いま 需要家 の満足度を固定 すなわち 無差別 曲線を一つ決定する この状態から需要家の購入する資源量 を固定したまま享受する報 酬量 のみを増加させた場合 需要家の満足度は増加する 逆に 享受する報酬量 のみ を減少させた場合 需要家の満足度は減少する この様子を図 の左図に示す ■供給者の資源と報酬の無差別曲線 供給者 の満足度を固定 すなわち 無差別曲線を 一つ決定する この状態から供給者の売却する資源量 を固定したまま提供する報酬量 のみを減少させた場合 供給者の満足度は増加する 逆に 提供する報酬量 のみを増加 させた場合 供給者の満足度は減少する この様子を図 の右図に示す
取引の制約条件
本節では オークショニアによる状態遷移が正常に行なわれるために必要な制約条件に ついて述べる 以下 供給者 が最終的に売却する資源量を 提供する報酬量を と する 同様に需要家 が最終的に購入する資源量を 享受する報酬量を とする ■資源に関する制約条件 各需要家の購入する資源量の総和と各供給者の売却する資源量 の総和は一致しなければならない 式■報酬に関する制約条件 各需要家の享受する報酬量の総和は各供給者の提供する報酬量 の総和を越えてはならない 式 ■満足度に関する制約条件 供給者 が取引において想定している満足度を とする とき 取引により供給者が得る満足度 はこの値を下回ってはならない 式 市場価格を とするとき 式 の制約条件は 満足度 に対する無差別曲線を用 い式 によって表わされる 同様に 需要家 が取引において想定している満足度水準を とするとき 実際の取 引により供給者が得る満足度 はこの値を下回ってはならない 式 市場価格を とするとき 式 の制約条件は 満足度 に対する無差別曲線を用 い式 によって表わされる 以上よりオークショニアの自律的行動は 式 を全て満 たしつつ 自身のもつ特性関数の評価値をできうる限り最適なものとするような定数の組 を見つけ出す 条件付最適化問題とし て表現される
満足度空間を用いた協調取引システムモデルの構成法 図 需要家 左図 および供給者 右図 の入札情報
入札情報を用いた組合せ最適化手法
式 や式 で表わされる効用に関する制約条件を満たすためには オーク ショニアは需要家や供給者の無差別曲線を推定しなければならない 本章では 段階法に よる推定法を提案しているが 実現へ向けては未解決な部分が多く存在する 本節ではこ のような問題に対し 需要家や供給者に取引可能点を入札してもらい その入札された情 報群を利用した組み合わせ最適化問題に帰着させる手法を提案する この手法により 無 差別曲線を推定できない需要家に対しても 取引が可能な場を提供し さらに 取引を行 ないつつ 推定に必要となる需要家の取引情報を収集することが可能となることが期待さ れる ■入札情報による組み合わせ最適化手法の手順 調整依頼を受けた各需要家 は 調整可能な資源購入量 およびその資源量で 調整するために必要な報酬量 の組を 個算出する ただし は 調整依頼を受ける前の購入量を表わす点 すなわち とする 需要家 は算出した情報 をオークショニアに入札 する各供給者 は 売却したい資源量 とその資源量で売却できるときに提供可能 な報酬量 の組 を算出し オークショニアに入札する オークショニアは入札された情報を利用し 組み合わせ最適化問題として取引案を 策定する 需要家 供給者は共に合理的思考に基づき行動を起こすと仮定しているので 図 に示 すように少なくとも自身の満足度は維持するような入札情報を提示してくると思われる この情報を用いることにより 需要家や供給者の満足度関数を推定することなく取引案を 策定することが可能となる ■需要家数に対する計算量 需要家一人当たりの平均入札数を とする この時 需要家 の入札情報に対し全探索をかけた場合の計算量は式 でもわかるように 需要家数 に対し指数オーダとなる この膨大な組み合わせの中から短時間である程度最適な解を発見するためには何らかの手 法が必要である 本章では最急勾配法を利用して解の探索を行なう調整パフォーマンス優先選択法 付録 参照 を提案している
シミュレーションと考察
本節では 提案手法の有効性を検討するために実行したシミュレーションについて述 べるシミュレーションと考察
基本となる共通な条件設定
■市場価格決定法 今回のシミュレーションでは市場価格を決定する際には式 を 用いた ただし および はシミュレーションのために便宜上用意した 各供給者 需要家 が報酬概念を導入しない場合に想定される希望価格および取引資源量であり シミュレーションのために供給者 需要家に適当な値を算出させている ■需要家の満足度関数 需要家の種類として 式 を満たし 報酬の満足度関数が 線形タイプ 対数タイプ 指数タイプで表わされる 種類の需要家を用意した ただし は資源に関するパラメータであり は価格に関するパラメータ は資 源による満足度に対する報酬の満足度比率である パラメータ は 予め適切に設定された初期値と市場価格決定時に用いた各需要 家の入札情報 を用いた最小二乗法によりパラメータ調整を行なうことで決定して いる ■供給者の満足度関数 供給者側の満足度関数は 式 のようにした ただし は資源に関するパラメータであり は価格に関するパラメータ は資源によ る満足度に対する報酬の満足度比率である 式 は で微分可能ではないが表 実験 における設定仕様 需要家数 線形型 対数型 指数型 希望価格 ~ 一様乱数 希望取引資源量 一様乱数 資源パラメータ初期値 価格パラメータ 報酬パラメータ ~ 一様乱数 供給者数 希望価格 ~ 一様乱数 希望取引資源量 一様乱数 資源パラメータ 価格パラメータ 報酬パラメータ ~ 一様乱数 本シミュレーションにおいては支障をきたさないのでこのまま使用する
実験
■目的 従来モデルの制約条件式 を満たさない需要家に対し 従来モデル 提案 モデルの両手法により資源調整を行なった場合の満足度の変化を比較検討することで 提 案手法がより多彩な需要家に対応可能であることを確認する ■条件設定 従来手法 提案手法ともに 表 の仕様に基づいて資源調整を行なった ま た 需要家の満足度関数は既知 すなわち 完全に推定ができていると仮定し 各需要家に 対する資源削減量は市場価格決定後 各需要家により算出される資源調整前の希望購入資 源量に比例して決定し 享受する報酬量は各手法の算出法に基づき決定した 実験結果と考察 シミュレーション結果を表 に示すシミュレーションと考察 表 各需要家ごとの平均満足度 需要家タイプ 従来手法 提案手法 報酬導入前 報酬導入後 報酬導入前 報酬導入後 線形型 対数型 指数型 ■線形型 報酬に関する満足度関数が線形関数である需要家に対しては 従来手法 提案 手法 共に適切な報酬を提示できている これは 報酬関数が線形関数であるため 従来手 法における制約条件式 が成立しているためである ■対数型 報酬に関する満足度関数が対数関数である需要家に対しては 提案手法では適 切な報酬が支払われているのに対して 従来手法では必要以上の報酬が支払われているこ とがわかる これは 対数関数が上に凸の関数であるためオークショニアは需要家の満足 度を実際の満足度よりも低く評価しているためである ■指数型 報酬に関する満足度関数が指数関数である需要家に対しては 提案手法では適 切な報酬が支払われているのに対して 従来手法では十分な報酬が支払われていないこと がわかる これは 指数関数が下に凸の関数であるためオークショニアは需要家の満足度 を実際の満足度よりも高く評価しているためである
実験
■目的 入札情報を用いた組み合わせ最適化手法による資源調整シミュレーションを行な い 市場運営の効率性と需要家の提供情報数に関する検討を行なう ■条件設定 本実験における設定仕様を表 に示す ただし システム全体の評価値 オークショニアの満足度 は 需要家および供給者の 満足度が既知であるものとして式 をもとに次式により算出した表 実験 における設定仕様 需要家数 線形型 対数型 指数型 希望取引資源量 一様乱数 最低必要資源量 ~ 一様乱数 資源パラメータ初期値 価格パラメータ 報酬パラメータ ~ 一様乱数 供給者数 希望取引資源量 一様乱数 資源パラメータ 価格パラメータ 報酬パラメータ ~ 一様乱数 また 供給者の提供する報酬量 および調整失敗などで資源の購入量と売却量の各総 和に差が生じた場合の供給者の売却資源量 は便宜上次式による比例配分で決定した 実験結果と考察 本シミュレーションは 表 の仕様に基づき 市場価格が決定した後 組み合わせ最適 化手法を用いた資源調整を が の各場合に対し 回ずつ試行した ただし 入札数は報酬量が の時の点も含むため となる 各需要家は 回試行ごとに 最低 必要資源量が保持できる範囲内で無差別曲線上に一様乱数で 個発生させてオークショ ニアに入札する 表 に今回のシナリオの結果生じた削減率を 表 に 回試行時 における失敗回数 希望資源売却総量にまで削減できなかった回数 と最大誤差率を 表
シミュレーションと考察 表 実験 における資源削減率 希望資源購入総量 希望資源売却総量 削減率 表 実験 における削減失敗回数と最大誤差 入札数 削減失敗回数 最大削減誤差 最大削減誤差率 表 実験 におけるシステムの評価値の変化 入札数 調整前 失敗時平均 成功時平均 全平均 に資源調整前後におけるシステム全体の評価値を示す ■失敗回数と削減誤差について 取引資源量の削減における失敗回数は 入札数が 点を 切ると著しく増加している また 取引点数が 点の時は 回試行中 回失敗している すなわち 入札数が 点のときは 回中 回は 程度の削減誤差を発生させるリ スクが潜んでいることとなる 需要家の入札数の増加はより細かな間隔での情報提供を意味しており 一般に需要家の 負担は増大する したがって 需要家の負担と安定な市場運営を見極めその必要情報量付 近での調整を行なうことが必要であると思われる ■システム全体の評価値について 資源削減前後における評価関数の値は 削減に成功 失敗にかかわらず基本的に増加している これは 資源削減を行なうことで 最適取引点に
までは削減できなくても その状況に近づけることができたことに対する評価値の上昇に よるものである また 取引点数が増加するに従ってシステム全体の評価関数の値が増加 しているのは 資源削減量に対するより効率のいい削減案を作成できていることに起因し ている したがって 解探索アルゴリズムを改善することにより より効率的な資源削減案 を作成できるものと期待される
結言
本章では 従来モデルを解析することでその問題点を明確にし その問題点を解決する ために満足度空間上に資源取引市場を形成し これにより多彩な需要家に対応可能な協調 取引システムを構築した また 評価関数が推定困難な状況での市場参加モデルとして 需要家の入札情報に基づ く組合せ最適化手法による資源削減案の作成法を提案した 今回提案したシステムは 主に需要家側に言及したものである したがって 今後の課 題として 評価関数の推定法を確立するとともに 供給者側における公平な負担報酬の分 配法をはじめとした供給者側の問題点の解析を行なうことで多彩な供給者 需要家が混在 する状況下でも公平でかつ安定な資源取引を行なえる取引システムのモデル構築があげら れる第
章
協調取引システムモデルに対する
ネットワークモデルの構成法
序言
協調取引システムは一般に ビジネスプロセスに関するビジネスモデルと ネットワー クに関するネットワークモデル とから構成される しかし 章で示したモデルはビ ジネスモデルに関するものであり ネットワークモデルに関しては深く触れていない そ こで本章では 協調取引システムのネットワークモデルを提案する 協調取引システムに対するネットワークモデルはその性質上 分散ネットワークモデル が適していると考えられる また 各ノードは分散ネットワークモデルの特性から同時並 行的に様々なプロセスを処理できるだけでなく セキュリティやアベイラビリティ等を考 慮し 適切なセキュリティレベルの通信路の構築や 各ノードによる自己診断 ノード間に おける相互診断といった機能を有し 各ノードがそれら機能を自律的に制御できることが 望ましい 本章では このような自律的な制御機能を有したマルチエージェントシステム 的側面をもつ分散ネットワークモデルをマルチエージェント型分散ネットワークモデルと 呼ぶ 現在 このようなネットワークモデルはいくつか提案されている しかし 現在提案されているモデルの多くは単一研究所内などといった局所的なネットワーク環境 を想定しており ファイアウォールを越えるような大規模なネットワークを構築するには工夫が必要である 一方 協調取引システムは 幅広いユーザ層により形成される大規模 システムを想定している したがって ファイアウォール障害による接続性の問題はクリ ティカルな要素となる そこで本章では 様々なユーザ層にも柔軟に対応でき ファイアウォールを越えた大 規模システムにも耐え得るマルチエージェント型分散ネットワークモデルの実現を目指 し その基礎となる分散ネットワークモデルを提案する 提案モデルにより ファイア ウォールを意識することなくビジネスモデルから協調取引システムを構築することが可能 となる 提案モデルは基盤技術として サービスを採用している サービスは既存のイ ンターネット技術と を全面的に利用したインターネットベースの分散アプリケー ション技術であり インターネットとの親和性が非常に高い これにより提案モデルでは マシンエージェントによるアプリケーションアクセスの他 インターネットブラウザによ るヒューマンエージェントとの連携 携帯端末によるネットワークアクセスや必要に応じ てセキュリティのかかった通信路を提供するなど スケーラビリティの高いシステムを構 築することが可能である
サービス
本章では 提案モデルの基盤技術となっている サービスについて述べる サービスは図 のように次の 要素から構成される プロバイダ:サービス提供者 リクエスタ:サービス利用者 レジストリ:サービス登録簿 プロバイダは提供するサービスのインタフェースを と呼ばれる 形式のインタフェース記述言語により記述し それととビジネスモデル 図 サービスアーキテクチャ もに レジストリにサービス を登録する リクエスタは必要な機能やサービス名などによりレジストリに検索をかけ そのサービスの によるインタフェース情報を取得する リクエスタはこの情報を もとにプロバイダにアクセスし サービス提供を受ける これによりリクエスタがプロバイダのインタフェース情報を取得するのはサービスを 実行するタイミングとなり レジストリに接続した時点で最新の を入手し 有効なサービスを利用することが可能となる ま た こ れ ら 一 連 の や り 取 り は す べ て ベ ー ス の メ ッ セ ー ジ プ ロ ト コ ル により行なわれる
ビジネスモデル
本章では 協調取引システムの具体的なビジネスモデルとして 著者らが想定した架空 の電力取引プロセスを使用する この架空の電力取引プロセスでは需要家 供給者間の電力取引をオークショニアを介し図 オークションの処理の流れ たオークション方式にて行なう オークションプロセスでは 第 次入札 第 次入札 需要家取り引き締結 供給者取り 引き締結の つのステージを設けている 図 にオークションの処理手順を示す 第 次入札では 需要家 供給者は希望する電力取引量及び価格を入札する 入札が終 了すると オークショニアは入札された値に基づき市場均衡価格を算出し公開する 第 次入札では 需要家 供給者は公開された市場均衡価格に基づき電力取引量を算出 し直し その値を入札する 入札が完了すると 需要家取引締結 供給者取引締結ステージに順に移り それぞれ オークショニアにより需要家 供給者の電力取引量が決定される
ネットワークモデル
ネットワークモデル
提案モデルでは トランスポートプロトコル サービス管理 データ形式を規定してい る また インターネットとの親和性が非常に高く 携帯端末からのアクセス機構などを必 要に応じて容易に導入することが可能であるトランスポートプロトコル
サービスの標準メッセージプロトコルである が規定しているのは通信の 際に必要となるデータ形式のみである したがって 実際にネットワークを構築する際に は その通信路となるトランスポートプロトコルが必要である 提案モデルでは トランス ポートプロトコルとして を利用した 方式を採用している は の世界で 等のファイルを転送する際に使用される代表的なア プリケーションプロトコルであるが 方式ではこの を メッセージが送信される際のトランスポートプロトコル すなわち送信元から送信先まで の通信管理を担うプロトコルとして採用する これにより メッセージは パ ケット内に格納され ファイアウォールの設定を変更することなく通過することが可能と なる また などのセキュリティプロトコルによりセキュリ ティのかかった通信路を提供できるなど 今回の通信アーキテクチャに必要な機能を多く 備えているといえるサービス管理
一般に分散環境でのネットワーク構築には クライアントからの要求に対して適切なオ ブジェクトを活性化しメソッドを実行し 状況に応じて活性化したオブジェクトを再び不 活性化させるといった一連のライフサイクルを管理するための機構が必要である図 サービス管理 さらに サービスでは によるメッセージ通信を行なうため に対す るシリアライズ デシリアライズ機能を有した機構も必要となる 本モデルではこれらの機構は 実装ソフトウェアとサーブレットコンテナを連携 させる手法を採用している 図 サーブレットコンテナは サーバ上でサーブ レットを動作させるための機構であり オブジェクトの活性化 メソッドの実行 およびオ ブジェクトの非活性化など一連の機能を有している クライアントは サービス要求を 実装ソフトウェアによりシリアライズし サー バに送信する サーバは受信したメッセージを 実装ソフトウェアによりデシリア ライズし 解析結果をもとにサーブレットコンテナによりサービスを実行し その結果を 実装ソフトウェアによりシリアライズしクライアントに送り返す これら一連の流れにより によるサービスシステムが実現される
データの
化
提案モデルでは ビジネスモデルの全データを 形式のデータとして保管する データを 化することにより データがプラットフォームから独立し 様々な言語や アプリケーションにより利用することが可能となる また はデータ変換が容易な ことから 外部公開用データなどを動的に作成することが可能となる また に関す るセキュリティツール等を使用することにより 電子署名の施されたデータにより信頼性 の高い情報交換が実現できる電力取引システムの構築
電力取引システムの構築
節で述べた架空のビジネスモデルに対し 節で提案したネットワークモデルを適 用することで架空の電力取引システムを構築した開発環境
電力取引システムの開発環境として 以下のものを用いた 実装言語 サーバ サーブレットコンテナ パーサシステム構成
この電力取引システムは オークショニア 需要家 供給者の 要素から構成される こ れらのクラス図を図 に示す 各要素は状態監視等のための 最適値を算出するため のエージェント そして 形式のデータ格納クラスをもつ この電力取引システムに おけるデータ構造を図 に示す 需要家および供給者は による通信を行なうための通信プロキシを保有し それ により による通信を介してオークショニアとオークションを行なう 図 に 電力取引システムの実行状態を示す この図はシステム全体を見るために 需要家 供給者 オークショニアが全て同じマシン上で立ち上がっているが これらは全て 異なるマシン上で動作させることが可能である図 ネットワークモデルのクラス図
携帯端末からのアクセス
近年 携帯電話や 市場の成長には目覚しいものがあり これら情報端末からのア クセス可能性が重要視されている そこで本システムでは これら端末から本システムへ のアクセス経路として を介したサーブレットによるオークショ ニアへの代理アクセス機構を導入した これにより入札者は携帯端末により現状の取引状 況を把握したりすることが可能となる 図 に代理アクセスの概念図を示す 代理アクセス機構ではオークショニアとの によるやり取りはサーブレットが行ない はサーブレットと情報端末とのイン タフェースとして使用している これにより による通信ロジックは外部定義とし てより明確にプレゼンテーションから分離される サーバは情報端末からアクセスを受けるとその あるいは のフォーム電力取引システムの構築
図 電力取引システム に入力された情報を引数としてサーブレットを呼び出す サーブレットは により オークショニアへ代理入札を行ない 結果を に送信する は受け取った結果をも とに ファイルを情報端末に提供する
シミュレーション
章で構築した電力取引システムの有効性を確認するために シミュレーションを 行なった シミュレーションは のイーサネットで接続された 台の を用 いた 各 のスペックは表 の通りである 表 において シミュレーション開 始前の 使用率は メモリ使用量は である また 全 とも には を使用している 上に供給者を 上には需要家を 作成し これら の入札シミュレーション 図 代理アクセスの概念図 表 システムの性能 者により 上でオークションを行なった 表 にシミュレーションの結果を示す ただし とは サービス当たりの処理 時間のことで 各サービスごとに測定した平均時間により与えられる また 使用率 および 使用量はともに に対するものであり 使用率には 市場 均衡価格算出時などローカル演算時の 使用率 ほぼ は除外している 本システムに用いたネットワークモデルは分散システム技術として サービス を使用している 分散システム技術には
表 シミュレーション結果 表 多重度と待ち時間 等多く存在し ており これら分散システム技術により実装された分散システムの中には サービス応答 時間が数 数十 程度のものも存在している このようなシステムと比べると 本システムのシミュレーション結果は数倍遅いといえる これは が 等のように専用のトランスポートプロトコルを用いないこ とや メッセージプロトコルが冗長性のあるテキストデータであるためであると考えら れる しかし これらシステム導入時にサーバを並列化することで対処することができると考 えている
シミュレーション 図 多重度と待ち時間 例えば 本システムを の待ち行列モデルとしてとらえると 本シミュレーショ ンの平均処理時間 に対し 入札が 分間に 万件の割合でポアソン分布に従って発生 するとした時のサーバの利用率 は式 で表わされる 平均処理時間 件 平均到達率 件 利用率 したがって 利用率 を 以下に抑えるにはサーバの多重度は 以上でなければならな い 多重度が のとき 番目のサーバの利用率 は式 で表わされる 利用率 多重度 よって 番目のサーバに対する平均待ち時間 は式 で表わされる 平均待ち時間
図 および表 にシミュレーションの平均処理時間 に対するサーバ多重度と 待ち時間の関係を示す これより サーバの多重度を 程度にすることによりサービス 待ち時間を 秒以下に抑えることが可能である したがって 本システムにおいてサービ ス応答の遅さは や などといった分散技術を利用した実装による接続 性の低下に比べてクリティカルな要素とならず より実用性の高いシステムであると思わ れる
信頼性の高いネットワークモデル
本章で提案したネットワークモデルは データを全て 形式としてプラットフォー ムから独立させているが これら独立したデータをデータベースの管理下におくことで より信頼性の高いネットワーク構築が可能となる また 各サービスを機能レベルで細分化することで 機能レベルでの追加 変更 および 並列化を行なうことができるようになり より大規模なネットワークへの対応が可能なス ケーラビリティの高いモデルとなる このような考えを 提案したネットワークモデルに導入し 節の架空プロセスをビジ ネスモデルとした電力取引システムの基礎設計を図 に示す 図 のシステムは 入札者と入札者の個人認証を行なう公的機関である認証局 入札 者の代わりに入札を行なう代理業者であるエージェントプロバイダ そして オークショ ニアに相当するサーバサイドシステムから構成される サーバサイドシステムはサービス を行なうサーバ群とデータベースから構成され による疎結合で構築される トランスポート以下の層は プロトコルスタックに準じたプロトコル階層と なっており などによりセキュリティのかかった通信路を実装することが可能である 図 のシステムは規模に合わせたサーバの静的な多重度を考慮してシステムを導入 することを前提としているが 本システムでは を書き換えることで動的にサーバ を並列化することも可能である これにより過負荷時のみ他のサーバを緊急的に対象とな信頼性の高いネットワークモデル
図 電力取引システムの基礎設計
るサーバとして稼動させたり 他のオークション市場のサーバへ転送するなどといったこ