修士論文(研究報告書)要旨
論文(報告書)タイトル:「中国における日系企業の現地人材確保について−ホワイト
カラー人材確保を中心に−」
学籍番号:AM18023
氏
名:WANG XIAO
指導教授:張 相秀 教授
【論文(報告書)の構成】
第1章 はじめに 第2章 先行研究 第3章 事例研究 第4章 仮説及び実証研究 おわりに 【論文(報告書)の内容】 1.研究目的 本論文は、中国における日系企業を対象に、ホワイトカラーと呼ばれる中核的な人材の確保と育 成についての調査研究である。中国労働者の高い転職・離職の実態調査をベースに、モチベーショ ンなどの側面から日系企業の魅力を高めることと、確保した中国現地の優秀な人材が長く勤めなが ら経営成果の向上に貢献できるようなリテンション戦略などについて検討していく。 2.研究方法 研究目的を実現するために、本研究では人的資源管理(HRM)とモチベーションに関する諸理論 を中心に文献調査を行った。その結果、日本と中国の間で雇用とHRMの慣行が大きく異なることが わかった。成果主義を取り入れる企業が相対的に日本より中国の方が高い。日本企業では、グロー バル化などの経営環境の変化にもかかわらず、依然として三種の神器と呼ばれる日本的経営システ ムを堅持している企業が多い。一方、中国の労働市場は需給アンバランス(ミスマッチ)が続いて おり、分野によっては人材不足と高い離職率が顕著な状況である。したがって、日本企業にとって は現地の優秀な管理層の人材確保とリテンションが大きな経営課題、特にHRMの重要課題となって いる。 事例研究においては、上海に進出している大手日本企業の現地法人を見学し、法人長など経営層 とのインタビューを行った。 3. 先行研究 日本企業が中国に進出する時、管理層の人材確保、および育成の在り方について知るために文献 調査を行った。日系企業における現地人材の離職率、および人材確保のための制度やシステムなど の実態を中心に調査を行った。4. 事例研究 上海に立地した日本企業のなか、Y社とM社という2つの日本企業を訪問し、両社のトップマネジメ ント層との質疑応答を行った。質問の時間と質問の数が限られているため、中国現地人材の活用を中 心に質問した。質問から得られた知見を活かして、仮説だけではなく、観測変数の設定もより合理的 にすることができた。 5. 実証研究 仮説の実証のために、アンケート調査などから得たデータを用いて統計的分析を行った。日本企業 の中国子会社のトップマネジメント層とのインタビューを通じて、仮説実証の補完を行った。 6.研究結果 以上のようなことから、本研究では、適切な人的資源管理を行うことで、離職率を下げることが可 能であることがわかった。しかし、現地人材を管理職として採用するケースが少ないという点から考 えると、ホワイトカラー人材の現地化には依然として多くの問題が残されている。 文献調査と事例研究の結果に基づき、本論では、4つの仮説を提起し、アンケート調査を通じて仮 説を検証した。アンケート調査の結果を用いてパス解析を実施した結果、仮説1の「HRMの現地化は、 組織パフォーマンスの向上に正の影響を及ぼす」、仮説2の「人材育成の現地化は、HRMの現地化に プラスの影響を与える」および、仮説4の「文化・コミュニケーションの現地化は、HRMの現地化に プラスの影響を与える」、という3つの仮説が統計的に有意な結果となった。特にHRMの現地化に関 しては、現地ホワイトカラー人材の高離職率の解決に貢献することが明らかになった。また、人材育 成の現地化程度は、HRM全体の現地化程度を大きく促進することもわかった。 最後に、先行研究で示したように、外発的モチベーションは労働者、特にホワイトカラーの生産性 に最も大きな影響を与えるが、今回の調査を見る限り、報酬や待遇などの外発的モチベーションはH RMの現地化程度に影響を与えず、HRMの現地化を通して組織パフォーマンスに影響を与えることも できなかった。そのため、現時点ではホワイトカラー人材向けの高水準の待遇や本社管理職への昇格 など、キャリアパスを改善することよりは、OJT、幹部間の研修などの研修プログラムの現地化を推 進する方が効果的であることが明らかになった。