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(1)

に対する心理教育について

著者 松田 光信

雑誌名 福井大学医学部研究雑誌

巻 6

号 1‑2

ページ 1‑16

発行年 2005‑12‑22

URL http://hdl.handle.net/10098/1011

(2)

看護学におけるアウトカムモデルとサブストラクションを用いた文献クリティーク

-統合失調症患者に対する心理教育について-

松田光信

看護学科 地域看護学講座 精神看護学領域

A literature critique using outcomes model and substruction in nursing science

- Psychoeducational therapy for schizophrenic patients

MATSUDA, Mitsunobu

Division of Mental Health and Psychiatric Nursing, Department of Community Health Nursing, School of Nursing, Faculty of Medical Sciences, University of Fukui

Abstract:

The purposes of this article are (1) to introduce the outline of the outcomes model and substruction, and (2) to introduce the example of synthesis and critique of literature about psychoeducational therapy for schizophrenic patients.

Recently, psychiatrists or psychologists are providing patients with education for medication using cognitive therapy, social skills training and psychoeducational therapy in Japan. Psychiatrists and psychologists are doing evaluation research of these structured educational programs.

The findings of critique using substruction and outcomes model are the outcome indicator of psychoeducational therapy for schizophrenic patients such as Knowledge,Behavior,Psychopathological symptoms,Self-esteem,Re-hospitalization for concepts of

“theoretical system”.

Key Words:substruction, outcomes model, critique, psychoeducation, schizophrenic patients

Received 22 August, 2005

accepted 2 November, 2005

(3)

はじめに

今日の医療および看護には,根拠に基づいた実践 (

Evidence Based Practice

)が求められている。

看護は,日常生活を送る人びとを健康という視点か ら援助する専門職である。また,看護の対象となる人 びとは,通常コントロールされることのない環境の中 で生活している。したがって,看護実践はその場の状 況あるいは環境から良くも悪くも影響を受けるため,

その時どきに行なわれる看護実践には一回性の原則が あるといっても過言ではない。これは,看護実践に関 する研究の推進を困難にする一要因だといえよう。

しかし,このような困難さを抱えながらも,今日で は看護実践の根拠(

evidence

)を蓄積するために成果研 究(outcome research)が積極的に行なわれている。この ような流れの中で,ヘルスケアリサーチにおける成果 研究の設計あるいはクリティークに有益な一つの方法 として,アウトカムモデルとサブストラクションが活 用されている。

本論文の目的は,

Holzemer,

. L.

が考案したアウト カムモデルと

Dulock, M. L.と Holzemer,

W. L.が考案 したサブストラクションの概要を紹介した後,実際に これらの手法を用いて文献を分析,統合,そしてクリ ティークした一つの例を紹介することである。

Ⅰ.アウトカムモデルとサブストラクションの概説 本概説は,雑誌『看護研究,

33

5

),

2000.

』の特集 として取り上げられた「研究枠組みと研究方法のクリ ティーク-サブストラクションによる分析と統合-」

のうち,「ヘルスケアリサーチのためのサブストラクシ ョンとアウトカムモデル」1)

Substruction and The Outcomes Model for Health Care Research」

2)「サブス トラクションの原理と実際」3)を要約したものである

(詳細は,雑誌参照4))。

1.アウトカムモデルの構造

アウトカムモデルは,①インプット(

inputs

);どの ような対象(あるいは状況)に対して,②プロセス

processes

);どのような介入や設定を行い,③アウ

トカム(outcomes);その目標/ゴールは何か,あるい は何でその介入や設定の結果を評価するのか,という 概念からなる横軸つまりシステム軸に,①クライアン

ト(client);対象,②プロバイダー(provider);ケア 提供者,③セッティング(

setting

);状況の

3

つの構成 要素からなる垂直軸を組み合わせた二次元的なモデル である(表

1

)。

このモデルを活用することによって,既存の文献や 新たに設計する研究がどのタイプの研究で,どのよう な意義をもつかなどという研究の概要をできるだけシ ンプルに描き出すことができる。このモデルのメリッ トは,どのようなタイプの研究にでも使用できること である。

表 1 アウトカムモデルの例

2.サブストラクションの構造 1)サブストラクションとは

サ ブ ス ト ラ ク シ ョ ン は , コ ン ス ト ラ ク シ ョ ン

construction

) と デ ィ コ ン ス ト ラ ク シ ョ ン

deconstruction

)の概念,すなわち構築あるいは分解

す る こ と に 関 連 し , 構 成 概 念 (

constructs

) や 概 念 (concepts)間の関係や,仮説的あるいは説明的な理論 的関係を明確にすることで,これらがある研究におい てどのように操作されているのかを探索する。このよ うに,研究を設計することや研究論文をクリティーク しやすくするためにデザインされた方法がサブストラ クションである。

サブストラクションは,理論的システム

theoretical system

と操作的システム

operational system

からなり,

研究の理論と方法論を結びつけている。

2)理論的システム

理論的システムは,公準(postulate)あるいは関係 性の記述(

statements of relationships

)によって,構成 概念(constructs)と概念(concepts)の関係を垂直方向 Inputs Processes Outcomes Client 年齢,性別,

病気の重症度など

セルフケア,

アドヒアランス,

家族ケアなど

QOL,

疼痛コントロール,

患者満足度など

Provider 年齢,性別,教育,

資格など

介入,ケアなど 職業生活の質,人 事異動,ミス,満足 度など

Setting 資源,信念など 患者と看護師の割

合など

死亡率,疾病率,

コストなど

(4)

に 検 討 す る こ と に 加 え て ,公 理(axioms) と命 題

(

propositions

)を明らかにすることによって概念間の

関連を横方向にも検討する。公理は構成概念間の関連 の記述,命題は概念間の関係性の記述を示す。

3)操作的システム

操作的システムでは,理論的システムで明らかにな っ た そ れ ぞ れ の 概 念 と , 経 験 的 指 標 (

empirical indicator)または測定用具(measurement)を関連付ける

ことが必要になる。概念は経験的指標から尺度(

score

) へと具体化され,測定可能なレベルへと操作化される。

一般的に,調査研究の中で使用される測定用具は,経 験指標として挙げられることが多い。そして,その下 位には,例えば名義尺度(

nominal

)や順序尺度(

ordinal

) といった“測定レベル”,リカートスケールやビジュア ル・アナログ・スケールなどの“得点化の方法”,

cm

mmHg

などの“数値の単位”などが尺度として図に 加えられる。このプロセスを通して,研究に用いられ た測定用具の妥当性や信頼性に注意を払うことができ るのである(図

1

)。

図 1 サブストラクションの構造

4)関係性の記述 relational statement

関係性の記述とは,サブストラクションの図に描か れた構成概念・概念・経験的指標・尺度に対する縦軸 と横軸の関係性,すなわち研究の仮説そのものと仮説 を支える理論的基盤についての記述を示している。し かし,関係性の記述は論文の中に見つからないことが よくある。このとき,研究枠組みの致命的な問題は,

①関係性に関する記述が曖昧,②関係性自体が充分検 討されていない,③検討されていてもその妥当性や整 合性が低いことが考えられ,クリティークのポイント となる。これを判断する力は,サブストラクションす る側に求められる。

5)サブストラクションの限界

サブストラクションは,論文をクリティークする上 で有用な方法論であるが,以下の点で万能な方法論と はいえない。

1

) わかりにくい図になることがある:研究枠組みが 複雑であったり,構成概念が多すぎると,サブス トラクションの図が複雑になり,わかりにくくな る場合がある。

2

) 「研究方法」の内容は記述できない:標本抽出 (

sampling

)や割り当て方法(

assignment

),必要な 標本数(sample size),分析方法を図の中に示すこ とができない。したがって,チェックできるのは,

変数ごとの尺度の選定までのプロセスである。

3)

全ての研究デザインに適応するわけではない:基 本的には,質的なフィールド研究を基本とする探 索的記述研究(

exploratory-descriptive design

)では なく,仮説検証型の実証研究(

experimental design

) に適応する方法だと考えてよい。まったく仮説を 持たないで臨む研究(現象学的アプローチ,エス ノグラフィーなど)や,研究プロセスの中で仮説 生成と検証を繰り返していくようなタイプの研究

(グラウンデッドセオリーメソッド,探索的因子 分析,共分散構造分析など)には適さない。

Holzemer, W. L.によれば,サブストラクションの図

に表現されているものは「

theory

(理論)/

variables

(変 数 )/measures( 測 定 ) 」 で あ り , 含 ま れ な い も の は

methodology

(方法論)」であるとし,具体的には「デ

ザイン(design)」「標本の抽出と割り当て(sampling &

assignment

)」「標本数(

sample size

)」「データ分析(

data analysis)」があるとしている。

3.サブストラクションとアウトカムモデルの関連 サブストラクションとアウトカムモデルは,独立し たクリティークの手法であるが,それぞれの長所およ び短所を補い合い,横軸が関連している。

サブストラクションでは,基本的にアウトカムモデ

理論

抽象 操作

construct

concept

(sub-concept)

empirical indicator

scale

Z X Y

[A] [A]

[p] [p]

それぞれの測定用具         (身体の計測,尺度)

名義nominal,順序ordinal・・・discrete 間隔interval,比ratio・・・continuous

・・・・・

・・・・・

[H] [H]

※ [A]=axiom, [p]=proposition, [H]=hypothesis

(5)

ルにおける横軸のセルの数だけ,横に構成概念とその 下位システムが並ぶと考えればよい。つまり,それぞ れの構成概念の下位には概念が配置され,必要であれ ば概念の下に下位概念(

sub-concept

)が加わる。した がって,通常は,構成概念から概念,下位概念へと縦 に進むにつれて,抽象度のレベルが下がり,より具体 的な操作化が行われるため横に並ぶ項目の数も増える ことが多い(図

2)

この

2

つのヒューリスティックス(

heuristics

★註1 な方法を関連づけることによって,ケアのアウトカム や根拠に基づいた実践(

evidence-based practice

)ある いは無作為抽出研究をサブストラクションするという 挑戦,研究デザインや測定用具,尺度という研究の精 度に関わる諸問題などについて考えやすくなるとされ ている。

図 2 サブストラクションとアウトカムモデルの関連

Ⅱ.アウトカムモデルとサブストラクションの実際

~統合失調症患者に対する心理教育に関する文献の分 析・統合・クリティーク~

本項からは,統合失調症患者に対する心理教育に関 する

2

件の文献を,アウトカムモデルとサブストラク ションの手法を用いて実際に分析し,次に分析結果を 統合してクリティークおよび考察する。

★註1 ヒューリスティック(

heuristic

):知的・研究的技 能開発技法

1.背景

現在,わが国では,精神科リハビリテーションの一 つとして心理教育が行なわれるようになったが,多く の場合は医師や臨床心理士らが中心に実践しており,

看護師が主体的に実践している施設は少ない。しかし,

心理教育に関する数多くの実践研究を行っている前田 正治医師(久留米大学医学部社会精神医学)と直接対 話する機会を得た際に,心理教育は,患者の生活に近 いところにいる看護師によって行われる方が効果的で あろうことが語られた。

精神科領域における服薬教育に関する論文は,服薬 自己管理を目的としてグループによる患者教育を実践 しその評価を報告したもの 5~8),服薬自己管理に向け た看護の取り組みを報告したもの 9),再発予防を目指 した心理教育の実践を通して看護師が学び得た内容を 報告したもの 10)が臨床を支える看護師によって数多 く報告されている。しかし,これらは教育プログラム の構造が不明確であるだけでなく,サンプル数も極め て少ない。

一方,構造化されたプログラムの成果研究は,国内 外を問わず主に医師らが行っている。そして,社会復 帰病棟に入院中の統合失調症圏の患者に対する認知行 動療法を用いた「地域生活への再参加プログラム」の 有効性と安全性に関する研究 11)や認知療法を受けた 急性期精神疾患患者の回復に関する研究 12)が無作為 割り付け試験によって行われているほか,統合失調症 患者に対する心理教育の効果に関する研究 13~15)も数 多く行われている。また,統合失調症患者に対する自 己管理教育プログラムの効果に関する研究では,患者 にとって診断および服薬管理について学ぶことが最も 役立つ16)と報告している。

これらの研究で用いられた測定用具は,疾病・薬物 知識度調査(Knowledge of Illness and Drugs Inventory;

KIDI

),洞察尺度(

Insight Instrument; II

),症状尺度

(Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS),総合評価尺度

Global Assessment Scale; GAS

),陽性・陰性症状評価 尺度(Positive and Negative Syndrome Scale; PANSS), 精 神 科 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 行 動 評 定 尺 度

(Rehabilitation Evaluation Hall and Baker; REHAB)を 代表とする海外で開発された評価尺度であり,評価の 視点が患者の知識や症状の変化に置かれている。

(6)

さらに,近年行われている精神科リハビリテーショ ンプログラムに関する成果研究では,単一の介入効果 を測定するに留まらず,さまざまな心理社会的治療を 組み合わせることによって,より効果的な介入方法が 検討され始めている。

2.文献の分析・統合・クリティークの目的

文献を分析・統合・クリティークする目的は,統合 失調症患者に対するグループによる心理教育の成果研 究がどのように設計され,その成果はどのような指標 で評価されているのかを把握することである。

3.文献の選定方法

Pub Med

を使用し,全年(1968-2004年)を対象と

してキーワード検索を行なった。全年を検索の対象と したのは ,精 神科領域 にお いて無作 為化 対照試験

RCT

randomized control trial

)を実施することが倫 理的観点から非常に困難であるため,ほとんど存在し な い で あ ろ う と 想 定 さ れ た か ら で あ る 。 結 果 ,

「psychoeducation and psychiatry」では

25

件(RCT3件),

psychosocial and treatment and psychiatry

」では

612

件 (

RCT21

件 ) ,「

psychosocial and intervention and psychiatry

」では

127

件(

RCT13

件),「

compliance and therapy and psychiatry

」では

595

件(

RCT13

件)の論文 が抽出された。このようにして検索した

50

件の

RCT

による論文の中から,統合失調症患者を対象として,

グループによる心理教育が行なわれ,単にトピックス 的な記事ではない研究論文という基準を満たした

2

件 の文献を採用した。選定した論文は,“統合失調症患者 に対するグループ認知行動療法とグループ心理教育の 無作為化比較に関する研究”17)と“統合失調症の外来 患者とそのキーパーソンに対する心理教育的介入の長 期効果に関する研究”18)である。前者の論文を№1と し,後者を№

2

として区別した。論文の概要は,表

2

に示した通りである。また,これらの論文は,いずれ も準実験研究デザイン(

quasi-experimental design

)に よる成果研究(outcome research)であったため,アウト カムモデルとサブストラクションの手法を用いて分析

した(表

3,4,図 3,4)

なお,図中の実線および破線は,文献の中に構成概 念と概念,あるいは概念と経験的指標等の関係が明確

に記述されているか否かで区別し,記述されているも のを実線で,記述されていないものを破線で示した。

また,図

3

の[

Y2

]の構成概念を二重の破線で囲んだの は,文献の中に概念の記述はあるものの,構成概念が 記述されていなかったため,筆者が命名した構成概念 である。さらに,スケールの「?」マークは,文献の 中に十分記述されていなかったため,筆者による推測 であることを示している。

4.文献の統合

アウトカムモデルとサブストラクションの手法を用 いて分析した

2

つの文献を統合し,その結果の特徴に ついて考察する。

1)アウトカムモデルによる文献のクリティーク 統合したアウトカムモデル(表

5

)を端的に表現す るならば,「精神科領域における心理教育は,精神科医 および臨床心理士によって,入院もしくは退院してい る統合失調症患者のグループにプログラムを提供され,

その成果は精神症状,再入院状況,行動,知識,

QOL

の改善という指標によって評価されている」というこ とができる。

ところが,この図からは,

provider

として看護師が 参画していないことがわかる。しかし,

outcomes

の項 目のうち,行動(

behavior

)と

QOL

は対象者の日常生活 そのものに密着しているため,ここに看護師の専門性 を発揮する余地があると考えられる。また,

processes

からは,集団療法(

group therapy

)によってプログラム が運営されていることがわかる。

心理教育の多くはグループで行なわれているが,今 日では,グループのみならず個別に行なわれるものも ある。しかし,経験的に述べるならば,outcomesの項 目 の 行 動 に 含 ま れ る 服 薬 コ ン プ ラ イ ア ン ス (compliance with medication) や 服 薬 管 理 (medication

management

) そ し て 危 機 管 理 の 技 能 (

crisis management)に関しては,専門家による情報提供より

もグループメンバーが互いの経験を語り合うことを通 して情報交換する方が,各々の患者にとっては理解し やすく受け止めやすいようである。それだけでなく,

心理教育の運営方法は,個人を対象とするよりもグル ープを対象に運営する方がコストを削減することにつ ながると考えられる。

(7)

表 2-① Outline about 2 articles

(8)

表 2-②

(9)
(10)
(11)
(12)
(13)

表5 Synthesis- the outcome model as the results of synthesizing 2 articles

(14)

2)サブストラクションによる文献のクリティーク 統合したサブストラクション(図

5)からは,

「統合 失調症患者を対象として集団への介入を行なうと,症 状の自己コントロールができる」という公理が導き出 された。この“症状の自己コントロール”という構成 概念は,知識(

knowledge

),行動(

behavior

),精神症状 (

psychopathology symptoms

),自尊感情(

self-esteem

),

再入院(

re-hospitalization

)からなる概念によって構成 され,さらに知識は患者およびキーパーソンの知識 (

patients’ knowledge

key persons’ knowledge

),行動 は 服 薬 コ ン プ ラ イ ア ン ス (

compliance with medications

)と対処技能(

coping skills

),自尊感情は自 己効力感(

self-efficacy

)とコントロールの位置(

locus of

control

)からなる下位概念によって構成されていた。

しかし,対象者は思考過程に障害が現れやすい統合 失調症患者であることから,彼らの知識(

knowledge

),

自尊感情(self-esteem)が病的体験に全く影響されない とは考えにくい。さらに,人間の行動(

behavior

)は,

認知状況に左右されることを考慮すると,統合したサ ブストラクションで明確化された

5

つの概念で集団へ の介入を評価できるのは一部分に過ぎないと考えられ る。

3)研究デザインの妥当性

2

件の文献に関する研究デザインの妥当性(

validity

) についてクリティークした結果は,表

6

の通りである。

クリティークした文献を今後さらによりよい研究へと

発展させるには,いくつかの課題が挙げられた。とり わけ

2

件の文献に共通する課題は,①標本数

sample size

;小さいこと,②成熟

maturation

;研究期間内に患 者の状態が変化し,それに合わせて薬剤の内容も変更 されている可能性があること,③脱落率

mortality

;高 いこと,④標本抽出

sampling

;便宜的標本抽出である こと,という点が挙げられる。したがって,これらの 問題を解決することができれば,研究成果の妥当性を 高めることができると考えられる。

表 6 2 件の文献に関する研究デザインの妥当性 G ro u p

in te rv e n tio n

C o m p lian ce w ith m ed ic atio n s

P sych o p ath o lo g y S ym p to m s S c h iz o p h re n ic

p a tie n ts

•S o c io d em o g ra p h ic ch ara cte ristic s

•P sy c h o lo g ica l ch ara cte ristic s

•M e d ical ch ara cte ristic s

S elf- e ffic ac y

L o c u s o f c o n tro l S elf-

e ste e m S y m p to m s s e lf- c o n tro l

P atien ts’

k n o w led g e

C o p in g sk ills K e y p e rso n s’

k n o w led g e

K n o w le d g e B e h a v io r R e -H o sp italiz a tio n

【 Z 】 【 X 】 【 Y 】

con stru ct concept

図 5 Synthesis- the theoretical system of substruction as the results of synthesizing 2 articles

(15)

まとめ

本論文では,アウトカムモデルとサブストラクショ ンの手法の概要と,実際にそれを用いて

2

件の文献を 分析,統合,そしてクリティークした結果を紹介し若 干の考察を加えた。

アウトカムモデルとサブストラクションの手法を用 いた分析を接続することは,研究を全体的に捉えよう とするものである,と同時にヒューリスティックな手 法でもある。この手法は,研究論文をクリティークす ることと同様に,新しい研究を設計する際にも極めて 有用であることが明らかにされていることから,ヘル スケアリサーチを推進するうえで貢献するといえるだ ろう。

看護学はさまざまな研究手法を用いて,人びとの日 常生活を 健康 の側面か ら援 助する看 護実 践の根拠 (evidence)を蓄積しているが,今後は,成果研究の論 文を読む力,設計する力,実施する力がますます要求 されるだろう。

謝辞

アウトカムモデルとサブストラクションの手法およ び例示した文献クリティークについては,

Holzemer, W.

L.

先生(カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授,

聖路加看護大学客員教授),田代順子先生(聖路加看護 大学教授)にご指導いただきました。こころより感謝 いたします。

<引用文献>

1) William L. Holzemer/岸本好美,坂牧千秋,中嶋須磨子,

和田恵美子,田代順子 訳(2000):ヘルスケアリサー チのためのサブストラクションとアウトカムモデル,看 護研究,33(5),355-359.

2) William L. Holzemer (2000): Substruction and The Outcomes Model for Health Care Research,看護研究,33

(5),360-363.

3) 藤崎郁(2000):サブストラクションの原理と実際-サ ブストラクションを自分のものにするために-,看護研 究,33(5),365-375.

4) 焦点:研究枠組みと研究方法のクリティーク-サブスト ラクションによる分析と統合-(2000),看護研究,33

(5).

5) 南貴博, 折戸眞由美, 川井外志夫, 玉田加代子(2002):

精神障害者社会生活評価尺度を指標としたグループア プローチの有効性の検討 服薬自己管理者の増加を目 指して,日本精神科看護学会誌,45(2),383-387.

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7) 木高広美, 渋谷咲子, 前川貴代(2002):服薬グループ療 法にイノベーション採用過程のモデルを導入した学習 効果,日本精神科看護学会誌,45(1),279-282.

8) 安馬英規(2002):服薬自己管理の実例報告 服薬自己 管理プログラムマニュアルの作成と実践,日本精神科看 護学会誌,45(1),271-274.

9) 寺谷幸夫, 梅原計次, 佐崎みのり, 西本卓史(2002):服 薬自己管理の見直しを通して見えてきたこと,日本精神 科看護学会誌,45(1),275-278.

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(17)

表 2-①  Outline about 2 articles
図 5  Synthesis- the theoretical system of substruction  as the results of synthesizing 2 articles

参照

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