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実際総合原価計算 における物の流れの仮定

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実際総合原価計算 における物の流れの仮定

福 島 吉 春

1 .序 音

かって津曲直窮教授 は 『 原価計算論講義』のなかで,原価計算の 目的につい て 「 原価計算 は,企業 における財 ・用役の生産的消費のプロセスを原価の流れ として価値的に追跡 し,原価計算に与え られた特定の 目的に応え るかたちで, 数量的大 きさとしての原価を組織的かつ継続的に分類 ・測定 ・集計 ・分析 し, その結果を報告す る一連の手続体系 とい うことがで きる」1 )と述べ, また物 の 流れ とい う表現 について,次のよ うに解説 した。すなわち,「 厳密性を欠 く用 語ではあるが,本書では 『 財 ・用役の生産的消費のプロセス』を,物の流れ と

して表現す ることに しよ う 」2) と。

本稿 における 「 物の流れ」 とは,津曲教授のい う 「 財 ・用役の生産的消費の プロセス」を意味 している。

い うまで もな く, 原価計算の任務 を「 物の流れを原価 の流れ と して追跡す る」

と捉え る発想 は,おそ らく津曲教授の独創ではないと考え られ る。実際,同様 の主張 は しば しば原価計算のテキス トに見 られるのであるが,それ らの説明の 多 くは,物の流れを原価計算理論を構築す るさいの基礎 とは見 な していないの に対 して,津曲教授の主張 は当為論であって,たとえば,本稿のテーマである

1 )津曲直窮 『 原価計算論講義』中央経済社 ,1 9 85 ,p. 7

0

2) 同書 ,p.8 0

〔 6 9〕

(2)

7 0 商 学 討 究 第 4 6 巻 第 2・3 号

仕掛品原価の計算 に関 して,「そ こでの物 の流れか ら原価の流れへの翻訳 は, それ 自体を切 り離 して相対化す るな ら,平均法,先入先 出法,後入先 出法のい ずれかを選択適用 して,あたか も原価の流れによって逆 に物の流れを規定す る かのよ うな,総合原価計算 に固有 な計算手続を展開す るのであ る 」3) と指摘 し ている

ただ し教授の著書では,本稿で検討す るよ うな具体的な物の流れの実態,そ して原価計算 において設定 されている物や原価の流れの仮定には触れ られてい ない。

実際に生産的消費の過程 における 「 物の流れ」をいちど考え,「 物の流れ」

の観点か ら,現行原価計算 における 「 原価の流れ」を検討 した ら,原価計算理 論のひ とつの側面が明 らかになるので はないか ‑ そ う考えた ことが本稿執 筆の動機である。

ただ し原価計算 はひとつの体系であるか ら,その一部分のみを取 りあげて現 行理論 における仮定の当否を論 じて も, さほど意味はない。

しか し限 られた紙面で,具体的なテーマについて網羅的に検討す ることは不 可能なので,本稿ではとりあえず,総合原価計算 におけるもっとも基本的な計 算 と考 え られ る単純総合原価計算 における期末仕掛品原価 の計算 に焦点 を当 て,そ こで設定 されている仮定を析出す ることを 目的 とす る。

2. 平均法,先入先出法,後入先出法

ひ とくちに総合原価計算 とい って も,単純総合原価計算や組別総合原価計 算, 等級別総合原価計算な ど, 多 くの種類が あ り,また減損や仕損の発生 など, 計算内容 はさまざまである。

しか し,総合原価計算である限 り,いずれにおいて も期末仕掛品原価の計算 が必要 になる。その意味で,期末仕掛品原価の計算 は総合原価計算すべての基

3) 同書 ,p. 2 2 4 。

(3)

実際総合原価計算における物の流れの仮定 7 7 礎 となる計算である。

わが国 「 原価計算基準」 は24(2)「 総合原価計算 にお ける完成品総合原価 と期末仕掛品原価」において,その方法を 6 種類 に分 けてい る。第 1 は最後 に カ ッコ付 きで平均法 と書かれている方法であ り,つづ く第 2,第 3はそれぞれ 先入先 出法,後入先 出法 と書かれてい る。第 4 は直接材料費 のみによって期末 仕掛品原価 を計算す る方法で あ り,第 5 は予定原価 また は正常原価 によ る計 算, また第 6 は期末仕掛品の原価を毎期一定 と考え る方法である。 いずれ も実 際原価 の計算で はあるが, 第 4 以下 の方法が いずれ も 「( か くか くしか じかの) 場合 には」 とい う適用状況を限定す る表現で始 まっていることで も明 らかなよ うに,第 1 か ら第 3 までの平均法,先入先出法,後入先 出法の 3 種類が基本的 な計算の方法である。

このため原価計算 のテキス トは,一般 に以上 の 3 種類 の計算方法 の解説 に ペー ジを割いている。いま,それ ら既存の理論 を整理す るために,以下 のよ う な説明 レベルの相違を考えてみよ う 。

匡葛

図 1 期末仕掛 品原価 の計算方法 を説 明す る レベル

以下,各説 明 レベルの解説を,具体例 を挙 げて対比す るが,本稿で はスペー

スの関係で,特徴が現れている定義をひ とっずつ例示す るにす ぎず,網羅的な

調査 は行 わない。また,同 じくスペ ースの関係か ら, 先入先 出法 だ けを対比 し,

(4)

7 2 第 46巻 第 2 ・3号 他 の一 仮定 につ いて は省略す る。

まず① 「 原価計算の方法」 として説明す ることとは,物の流れあ るいは原価 の流れについて は触れずに,単 に計算方法だ けを説 明す る方法であ る。 この例 はわが国 「 原価計算基準」 にみ ることがで きる。すなわち 「 原価計算基準」 は その2 4「 総合原価計算 における完成品原価 と期末仕掛品原価」の (2) 2 にお いて先入先 出法を,「 期首仕掛品原価 は,すべて これを完成品の原価 に算入 し, 当期製造費用を,完成品数量か ら期首仕掛品の完成品換算量 を差 し引いた数量

と期末仕掛品の完成品換算量 との比 によ り,完成品 と期末仕掛品 とにあん分 し て完成品総合原価および期末仕掛品原価 を算定す る」 と説 明 している。 このよ

うな叙述 はかな り一般的である。

しか し,教育効果 を考えた場合,そのよ うな計算を行 う根拠 について,解説 があ った ほうが望 ま しい ことは言 うまで もない。

純粋 に②「 原価 の流れ につ いての仮定」とす る説 明 は, 数 と して は少 ないが, た とえば松岡俊三教授 による次の説 明が ある。すなわち 「この方法 は,先 に投 入 された原価か ら先 に完成品 とな って工程か らアウ ト・プ ッ トされ るとい う前 提の もとで,期末仕掛品を計算す るものである 」4) と。

また③物 の流れに関す る仮定 とみ る主張 はかな り多 いが, ここで は溝 口一雄 教授 の定義を再録 してお く。すなわち,「 先入先 出法 は,前期 か ら繰 り越 され た仕掛品に当期の作業が加え られて先 に完成品 とな り,また当期 に新 たに着手 した作業の一部 は完成品 とな り,他 の一部 は,仕掛品にな るとい う考え方 に も とづ いて,完成品 と期末仕掛品 とに原価 の配分 を行 う方法である 」5) と。

なお, 最 も基礎 的な④「 実際の物の流れ」に もとづ いて平均法,先入先 出法, 後入先 出法を説明 しているテキス トは発見で きなか った。 この ことは現実の生 産工程 における物の流れは複雑多様であ って,そのままで は原価計算の計算基 礎 とはな りえない ことを示唆 していると考え られ る。

4) 松岡俊三 『現代原価計算』税務経理協会 ,1 9 9 1 ,p. 1 2 1 0

5 )溝 口一雄 『 最新例解原価計算』中央経済社 ,1 9 7 1 ,p. 1 2 0 0

(5)

実際総合原価計算 にお ける物 の流 れの仮定 7 3 ちなみに津曲教授の定義 は以下の とお りである。すなわち 「 先入先出法 は, 原材料投入か ら完成品産出までの製造過程が,継続的な順序関係を維持 して一 連の流れを累積 していると仮定 して,期首仕掛品原価 と当期製造費用 との合計 額を,当期完成品数量 と期末仕掛品完成品換算量 とに分割す る 」6) と。難解な 表現ではあるが,③物の流れの仮定にもとづ く原価計算方法 として捉え られて いる

以上のように説明の レベルを 4 段階に分けると,本稿のテーマは,③におけ る物の流れの計算 と①および② における原価の計算 とを意図的に区分 し,前者 か ら後者‑の計算の引継を明示的にたどることにあると言 うことがで きる。

さて,本稿ではいちお う以上のように 3 つの説明 レベルに分類 したが, この 分類 は学説 と呼べ るような絶対的な分類ではない。 ここでは先入先出法に注 目 してパター ンに分 けたが,平均法あるいは後入先出法の説明に注 目すれば別な 分類 になる可能性がある し,また以上の記述 は多分 に表現上の好みに関わって いて,他の レベルでの説明を考慮 していないとい う意味ではない らである 0 いずれに分類すべ きか迷 う説明 も多 く,む しろテキス トの執筆 にあた って , 「 説 明の レベル」はあま り意識 されていないと考え られる。

む しろここで注 目したいのは,③物の流れ と( 塾原価の流れ との関係 について 論述 している文献の存在である。

そのよ うな主張は物の流れの仮定を,む しろ他の方法 と比較 したときの先入 先出法の優秀性を主張す る根拠 として使 っている。

た とえば松本雅男教授 は,平均法を批判 した箇所で,「 実際原価計算では, 実際の 『 物の流れ』 とそれによって生ず る実際の 『 原価の発生』に即す るよう に,原価を集計す るのが, もっとも正 しい製品原価の計算法である。そこで実 際の生産順序をみると,まず期首仕掛品を仕上げ,つ ぎに当期の投入材料 に着 手す るのが普通である。・ ‑‑この見地か らいえば・ ‑‑先入先出法がす ぐれた製 品原価の計算法である 」7) ( 省略は福島) と述べている。

6) 津曲,前掲書 ,p. 227 0

(6)

7 4 46 巻 第 2 ・3 号

この観点か らす ると,平均法 は,松本教授 によって 「 期首仕掛品原価 と当期 に発生 した製造費用 との合計額を完成品 と期末仕掛品に配分す るので,期首仕 掛品原価の一部が期末仕掛品に含 まれ ることになるか ら, この製品原価の計算 法 は,実際の 『 物の流れ』 に即 していないことになる 」8) と批判を受 けること

になる。

つ ま り,先入先 出法 と平均法 とを物の流れの仮定 とい う観点か らみると,先 入先出法のほうが現実 に即 した計算方法であって,優れているとい う主張に結

びっ くのである。

このような結論 は,いまひとつの期末仕掛品原価の計算方法である後入先出 法批判 とも結びつ く。すなわち,松本教授 によれば 「 後入先出法 においては, 程度の差 はあるけれ ども, どの場合 に も期首仕掛品原価が期末仕掛品原価 とし て残 ることになる 。 しか し実際の 『 物の流れ』 は,前述 したよ うに,まず期首 仕掛品か ら完成 されるのであるか ら, この原価計算法 は,実際の 『 物の流れ』

に即 していない原価計算であ り,実際原価計算の論理か らいえば,適正な方法 とは認めがたい 」9) とい う結論 になる

すなわち,単 に計算方法だけに注 目した場合 には,平均法,先入先出法,級 入先 出法 は平板な,期末仕掛品原価計算の 3 種類の方法であるが,物の流れを 想定 した場合には,物の流れに即 した計算方法である先入先 出法,必ず しも物 の流れに即 していない平均法,そ して物の流れによる期末仕掛品原価計算 とい う観点か らみれば不合理 な後入先 出法 とい う位置づ けが与え られ ることにな 7 )松本雅男 『 原価計算』国元書房 ,1 9 7 1 ,p. 1 06 。同様な主張は岡本清教授の著書に もある。岡本清 『 原価計算 〔 五訂版 〕 』国元書房 ,1 99 4 ,p. 29 7 。また小林健吾教 授は 「 先入先出法は,一般的な製造過程での実状により合致 しているといえる」と 認めた上で , 「しか し,業種,製造方法によってはこのようにいいえない場合もあ るし,まして原価発生の実態に接近 しているからといって,製品原価の正確な算定 以外の特定の原価計算目的により合致 しているかどうかは別問題である」( 小林健 吾 『 最新原価計算論』中央経済社 ,1 9 7 8 ,pp. 1 5 6‑57 ) と述べている。計算方法 と原価計算データの利用目的との関連も避けられない問題ではあるが,本稿で論 じ る余裕はない。

8 )松本,前掲書 ,p. 1 0 6 。また岡本,前掲書 ,p. 29 3 参照。

9 )松本,前掲書 ,p. 1 1 3 。

(7)

実 際総合 原価計算 にお け る物 の流 れの仮 定 7 5 る。

このため他方 には,む しろ物 の流れ と原価の流れ との対応を否定す る論述 も ある。た とえば小林哲夫教授 は 「 仕掛品原価を計算す る場合 に注意すべ きもう 一つの点 は,期首仕掛品原価 と当期製造費用が どのよ うに完成品 と期末仕掛品

に流れ るか とい うことである これ は,必ず しも物の流れに即 して考え る必要 はない。すなわち,商品や材料の払 出原価 の計算 と同様 に,価格変動の影響等 も考慮 して,原価の流れにつ いて一定の仮定をおいて計算 を行 うことにな る。

仕掛品原価 の計算 においては,平均法,先入先 出法,後入先 出法 とい う三つの 方法が用 い られ る 」1 0) と解説 している。

原価計算の任務が,生産過程 における物 の流れか ら,原価 とい う手段 を使 っ て写像 を作 ることであるとすれば,物の流れが先入先 出的であれば原価の計算 において も先入先 出法 を採用 し,物の流れが平均 的,すなわち期首仕掛品 と当 期投入分 とに平等 に加工作業 を加 え るのであれば平均法を採用すべ きだ と主張 す るのが もっと も理論的か と思 われ るが,今 日の原価計算論 はそのよ うには

な っていないのである 。

3. 仮設 数 値 によ る計 算 方 法 の例 示

本節で は,物の流れを計算 してか ら原価を計算す るとい うプロセスをた どる とは,具体的にどのよ うな計算 を行 うのか,簡単 な数値例 を使 って実際に計算 してみ る。

数値例 を以下のよ うに設定す る。

数値例 ‑ 1

〔 物量 データ〕

期首仕掛 品 20 0 k g 進捗率 3 0%

1 0 ) 小林哲夫 『 原価計算 一理論 と計算例 ‑』中央経済社 ,1 9 8 3 ,pp. 1 0 4‑0 5 0

(8)

7 6 4 6 巻 第 2・3 号

当期材料投入 900k g 完成品量 800k g

期末仕掛品 300k g 進捗率 50%

〔 原価データ〕

期首仕掛品 主要材料費 22, 222 円 加工費 4, 680 円 当期製造費用 主要材料費 1 23, 456 円 加工費 86, 420 円

なお,材料 は生産工程の始点で全量投入 され るもの とす る。

数値例を説明す る必要 はないであろう。 どのよ うな原価計算のテキス トに も 載 っている単純総合原価計算の, もっとも基本的な計算例である。

以下,先入先出法,平均法,後入先出法の順 に,物の流れの計算,原価の計 算 に分 けて計算 してみ る。

3. 1 先入先 出法

先入先出法を仮定す ると,物の流れおよび これにもとづ く原価の計算 は以下 の とお りとなる 。

〔 物 の流れの計算〕

インプット 期首仕掛品 当期投入 合計

数量 ( 進捗度) 200( 0 .3 ) 9 00(0) 1 ,1 00 前期加工作業量 20 0×0 .3‑6 0 0

アウ トプット 完 成 品 完 成 品 期末仕掛品 1 .1 00 60 数量 ( 進捗度) 20 0(1) 80 0‑200‑6 0 0 30 0( 0 .5 )

進捗度の増加

加工作業量 ( 前期作業) 200×0 1‑0 . .3‑60 3‑0 .7 1‑ 0‑ 1 0 0 .5‑ 0‑0 0 . 5

( 当期作業) 20 0×0 .7‑1 40 6 00× 1‑60 0 ‑ 30 0×0 .5‑1 5 0 89 0

表 1 先入先出法 にお ける物 の流れの計算

(9)

実際総合原価計算における物の流れの仮定 7 7 計算方法について簡単 に説明 しよう

まずイ ンプ ッ トには,作業を加える対象を記入する。本例の場合,作業対象 は期首仕掛品 と当期投入材料のふたっである。先入先出法の場合,加工作業 は まず期首仕掛品に加え られ ると仮定す る

数値例では,期首仕掛品は200k g , 完成品は 800k g であるか ら,期首仕掛品はすべて完成す ることになる。すなわ ちイ ンプッ トとしての期首仕掛品2 00k g はすべて完成品になると仮定で きる。

さて, この200k g は進捗率30 パ ーセ ン トか ら完成 ( 進捗率 1 00%) まで進んだ のであ るか ら,当期 に行われた作業 は 1‑0 .3‑0.7 によ り ,70%分 とい うこ

とになる この7 0%をイ ンプ ッ トされた数量200k g に乗 じると1 40 ,す なわち 期首仕掛品を完成 させ るのに完成品1 4 0k g 相当の加工が当期 に行われた と計算 できる

他方,当期 に投入 された主要材料 は900k g であるが,作業の結果 は完成 した もの と期末仕掛品 とに分かれ る。 この うち完成品量 は,全体の完成品量800k g か ら,期首仕掛品か らの完成品量200k g を減 じて求める。期末仕掛品量 は仮設 データそのままである。完成品になった ものは未加工の投入 ( 進捗率 0%)か ら完成 ( 進捗率1 00%) までの加工作業が投 じられたので,(1‑ 0‑ 1 によ り) 1 を乗 じる。また期末仕掛品は未加工 ( 進捗率 0%)状態か ら進捗率50%まで 作業が進捗 したのであるか ら,その数量 ( 300k g) に進捗度の進展 ( 50%)杏 乗 じて,加工作業量 としては完成品1 50k g 分が投入 されたと計算す る

次に,以上で計算 した物量を原価 に換算す る。

原価の計算 は,上述 した 「 物の流れの計算」の数量を金額 に置 き換えたにす ぎないが,形式が見 慣れない ものなので,説明が必要であろ う

計算表 は,第 1 行 に計算対象 となる製造原価を費 目別,すなわち前期の 「 主 要材料費」 と 「 加工費」 ,そ して当期の 「 主要材料費」 と 「 加工費」に分 けて 表示す る。それぞれの項 目が,当期の加工作業の結果,どうなったのかについ ては表 1のアウ トプ ッ ト欄 に示 されているので,各物量 ( 主要材料費について は 「 数量」 ,また加工費 については 「 加工作業量 」) の比で原価を配分す る。

以上の計算結果は表 3 「 通常の先入先出法」の結果 と一致する。

(10)

ア β 4 6 巻 第 2・3 号

〔 原 価 の計 算 〕

主 要 材 料 費 の計 算

期首仕掛品材料費 当期材料費 計 物量 金 額 物量 金 額 物量 金 額 期酋仕掛品 2 0 0 2 2 , 2 2 2 9 0 0 1 2 3 , 4 5 6 2 0 0 2 2 , 2 2 2 当期投入 合計 . 9 0 0 1 2 3 , 4 5 6

2 0 0

2 0 0 2 2 2 2 , , 2 2 2 2 2 2 9 0 0 1 2 3 , 4 5 6 1 , 1 0 0 1 4 5 , 6 7 8 期末仕掛品

完成孟 ( 期首仕掛品分) 3 6 0 0 0 0 4 8 1 2 , , 1 3 5 0 2 4 2 3 0 0 0 0 4 2 2 1 , , 2 1 2 5 2 2 ( 当期投入分)

( 完成品合計) 単位原価 6 0 0 8 2 , 3 0 4 2 0 . 0 2 2 , 2 2 2 6 0 0 8 2 , 3 0 4 8 0 0 1 0 4 , 5 2 6

加 工 費 の計 算

期首仕掛品加工費 当期加工費 合 計 主要材料費 加工費合計 作業量 金 額 作業量 金 額 作業量 金 額

期首仕掛品 6 0 4 , 6 8 0 8 9 0 8 6 , 4 2 0 6 0 4 , 6 8 0 2 6 , 9 0 2 当期投入 合計 8 9 0 8 6 , 4 2 0 2 0 9 , 8 7 6

6 0

6 0 4 4 , , 6 6 8 8 0 0 8 9 0 8 6 , 4 2 0 9 5 0 9 1 , 1 0 0 2 3 6 , 7 7 8 期末仕掛品 完 ( 成 品 期首仕掛品分) 1 1 5 4 0 1 0 1 4 3 , , 5 5 6 9 5 4 2 1 5 0 0 1 0 1 4 8 , , 5 2 6 7 5 4 5 4 5 0 , , 4 7 9 1 7 6 ( ( 当期投入分) 完成品合計) 6 0 4 , 6 8 0 6 7 0 4 0 5 0 7 8 1 , , 2 8 6 5 1 5 6 8 0 0 0 5 0 7 8 6 , , 2 5 6 3 1 5 1 1 4 8 0 1 , , 5 0 6 6 5 1

表 2 先 入 先 出法 に お け る原価 の計 算

なお,以上 の計 算 結 果 は純 粋 先 入 先 出法 1 1) が提供 す る前 期 の作 業 と当期 の 作 業 とを区別 したデ ー タを表示 して い る ことを確 認 して いただ きたい0

ll ) 純粋先入先出法についてはたとえば以下を参照。ただ し現在では,その経営管理上

の有効性については疑問視 され ることが多い.松本,前掲書 ,pp. 1 0 7‑0 8 ,岡本,

前掲書 ,pp. 3 0 2‑0 5 ,小林健吾,前掲書 ,pp. 1 5 3‑5 5 ,樫井通晴 『 経営原価計算

論 〔 増補版 〕 』中央経済社 ,1 9 8 1 ,pp. 1 9 0‑9 1 。なお次の文献では,純粋先入先出

(11)

実 際総 合 原 価 計 算 に お け る物 の流 れ の仮 定

〔 通常の計算 一先入先 出法〕

7 9

主 要 材 料 費 加 工 費 計 物 量 金 額 加 工 作 業 量 金 額

期首仕掛品 20 0 2 2 , 2 2 2 6 0 4 , 6 8 0 2 6 , 9 0 2 当期投入 合 計 1 ,1 9 0 0 0 0 1 1 2 4 3 5 , , 4 67 5 6 8 9 8 5 9 0 0 8 9 6 1 , , 4 1 20 0 0 20 23 9 6 , , 87 7 7 6 8 . 期末仕掛品 完 成 畠 30 8 0 0 0 1 41 0 4 ,1 , 5 5 2 2 6 8 1 0 5 0 0 1 7 4, 6 , 5 5 6 3 5 5 1 5 81 5 , , 0 7 61 1 7

表 3 通常の先入先出法

3. 2 平 均 法

次に平均法を使用 した場合の計算を,先入先出法で行 ったのと同様に,物の 流れの計算 と原価の計算 とに分けて示す。

〔 物の流れの計算〕

インプット 数量 ( 進捗度) 期首仕掛品 2 0 0( 0 . 3 ) 当期投入 9 0 0(0) 1 合計 , 1 0 0 前期加工作業量 2 0 0 ×0 . 3 ‑6 0 0

アウトプット 数量 ( 進捗度)

進捗度の増加 加工作業量 ( 前期作業) 完成 品 期末仕掛品 完成 品 期末仕掛品 1 , 1 8 0 6 9 0 0 0 2 0 0¥旦 ( 1) 2 0 0×且 ( 0 . 5 ) 9 0 0 ×一里 生 ( 1 ) 9 0 0 ×且 ( 0 . 5 )

1 , 1 0 0 1 , 1 0 0 1

,

10 0 1 , 1 0 0

‑1 4 5 . 4 5 ‑5 4 .5 5 ‑6 5 4 . 5 5 ‑2 4 5 . 4 5 1‑0 . 3 ‑0 . 7 0 . 5 ‑0 . 3 ‑0 . 2 1‑0‑1 0 . 5 ‑0‑0 . 5

1 4 5 ‑4 . 4 5×0 3 . 6 3 . 5 3

1 4 5 . 4 5×0 . 7 5 5 4 4 . . ‑1 5 5 5×0 5 6 ×0 . 3 . . 6 3 2 5 . 0 0

( 当期作業) 6 5 4 . 5 5×1 2 4 5 . 4 5xO . 5

表 4 平均法 における物の流れの計算 ( 1 )

法 に加 えて純 粋後 入先 出法 が解説 され て い る。 佐 藤進 『明解 原価計 算 』中央経 済社 ,1

9 8 4 ,p. 1 2 6 0

(12)

ββ 商 学 討 究 第 46 巻 第 2 ・3号

最初 に,平均法 における物の流れの計算が,先入先出法における物の流れに おける計算 ( 表 1) と,物量欄,加工作業量欄 とも合計で一致 していることを 確認 して もらいたい。それは基本的に, どのような計算上の仮定を設 けようと

も,計算対象 となる材料および加工作業量 は同一であ り,ただ物の流れの仮定 によって,前期か ら繰 り越 された材料および加工作業 と当期に投入 された材料 および加工作業が,どのような比率で完成品 と期末仕掛品とに分かれ るか とい

う仮定において異なるだけだか らである。

なお表 4 のよ うに物の流れを計算 してみると,平均法が,物の流れ として, 期首仕掛品 と当期投入材料 とにたい して同等の加工作業を加えてい くと仮定 し ているのではないことは明 らかである。すべての材料が期首 に一括 して生産工 程に投 じられるのな ら話 は別であるが,継続的に材料が投入 され ると仮定する 限 り,工場に存在する期首仕掛品 と当期投入材料 とに同等 に加工作業を加えて いけば,期首仕掛品のほうが多 くの作業を受けることになる。 この ことは当該 期 間開始直後の生産工程 に存在す る作業対象を考え ると理解で きる。 この と

き,生産工程には期首仕掛品が圧倒的に多いのであるか ら,同等に作業を加え ると,ほとんどの作業 は期首仕掛品に加え られることになる。その後,投入材 料の比率 は高 くなってい くが,期首か ら期末まで ( 完成 した ものは別 として) 生産工程に存在 しつづける期首仕掛品のほうが,同等以上の加工作業を受 ける ことは確かだか らである。 したが って物の流れか ら見た場合,平均法 とは原価 計算期間を通 してみた場合,期首仕掛品 と当期投入材料が結果的に同等の作業 を加え られたかのように計算す る方法 ということになる。

ともあれ,表 4の計算結果を原価に換算すると表 5のようになる 。

表 5 上の計算結果 は,主要材料費の計算は通常の平均法の結果 と一致 してい るが,加工費 は一致 しない。加工費の計算が異なるのは,加工作業 1 単位あた りの単費が,期首仕掛品に含 まれていた前期の加工費 と当期加工費 とで異 な り,その相違を計算に反映させ る手順が 2つの方法で異なるか らである。

したが って物の流れを一度計算する方法 も, 表 7のように期首仕掛品加工費 と

当期加工費 とか ら平均の単位あた り加工費を計算 してか ら物の流れに即 した加

(13)

実際総合原価計算 における物の流れの仮定

〔 原価 の計 算〕

主要 材料費 の計算

期首仕掛品材料費 当期材料費

物 量 金 額 物 量. 金 額 物 量 金 額 ‑ 期首仕掛品 2 0 0 2 2 , 2 2 2 9 0 0 1 2 3 , 4 5 6 2 0 0 2 2 , 2 2 2 当期疫入 合計 2 0 0 2 2 , 2 2 2 9 0 0 1 2 3 , 4 5 61 , 9 1 0 0 0 0 1 1 2 4 3 5 , , 4 6 5 7 6 8

期末仕掛品

完成品 ( 期首仕掛品分) 1 5 4 4 5 . . 5 4 5 5 1 6 6 , , 0 1 6 6 1 1 2 6 4 5 5 4 . . 4 5 5 5 3 8 3 9 , , 6 7 6 8 9 7 3 1 0 4 0 5 . 4 5 3 1 9 6 , , 7 1 3 6 0 1 ( 当期投入分)

( 完成品合計) 1 4 5 . 4 5 1 6 , 1 6 1 6 5 4 . 5 5 8 9 , 7 8 7 8 6 5 0 4 0 . 5 5 8 1 0 5 9 , , 7 9 8 4 8 7

加 工費 の計算( 彰

8 1

期首仕掛品加工費 作業量 金 額 作業量 当期加工費 金 額 作業量 合 金 額 計 加工曹合計

要 材 料 費

期首仕掛品 6 0 ノ 冬6 8 0 6 9 0 8 6 , 4 2 0 6 0 4 , 6 8 0 2 6 , 9 0 2

当期投入 合計

期末仕掛品 ( 期首仕掛品分) 8 9 0 8 6 , 4 2 0 2 0 9 , 8 7 6 6 0 4 , 6 8 b 8 9 0 8 6 , 4 2 0 9 5 0 9 1 , 1 0 0 2 3 6 , 7 7 8 1 6 . 3 6 5 1 , 2 7 6 1 0 ‥ 9 1 1 , 0 5 9 2 7 . 2 7 5 2 , 3 3 5

( 当期投入分) ( 期末仕掛品合計)

完成品 ( 期首仕掛品分) 1 2 2 . 7 2 5 l l , 9 1 7 1 2 2 . 7 2 5 l l , 9 1 7

1 6 . 3 6 5 1 , 2 7 6 1 3 3 . 6 3 5 1 2 , 9 7 6 1 5 0 1 4 , 2 5 2 5 3 , 9 8 2 4 3 . 6 3 5 3 , 4 0 4 1 0 1 . 8 1 5 9 , 8 8 6 1 4 5 . 4 5 1 3 , 2 9 0 2 9 , 4 5 1 4 3 . 6 3 5 3 , 4 0 4‑7 5 6 . 3 6 5 7 3 , 4 4 4 8 0 0 7 6 , 8 4 8 1 8 2 , 7 9 6

蓑 5 平 均法 にお ける原価 の計算 ( 1)

〔 通常 の計算 一平均 法 〕

主 要 材 料 費 加 工 費 合 計 ■ 物 量 金 額 加工作業量 金 額

期首仕掛品 2 0 0 2 2 , 2 2 2 6 0 4 , 6 8 0 2 6 , 9 0 2

̲ 当期投入 合計 1 ,1 9 0 0 0 ̲1 0 1 2 45 3 , , 4 6 5 7 6 8 8 9 9 5 0 0 8 9 6 1 , ,1 4 20 0 0 2 2 0 3 9 6 , , 87 7 7 6 8 期末仕掛品

完 成 品 3 8 0 0 0 0 1 3 0 9 5 ,7 , 9 3 4 0 8 1 8 5 0 0 0 1 7 4, 6 ,7 3 8 1 4 6 1 5 8 4 2 , , 1 6 6 1 4 4

表 6 通 常 の平均法

(14)

82

加工費の計算( 卦

商 学 討 究 第 4 6 巻 第 2・3 号

期首仕掛品加工費 作業量 金 額 作業量 当期加工費 金 額 作業量 合 金 額 計 加工費合計 主要材料費 期首仕掛品 6 0 4 , 6 8 0 8 9 0 8 6 , 4 2 0 6 0 ‑4 , 6 8 0 2 6 , 9 0 2

当期投入 合計

期末仕掛品 ( 期首仕掛品分) 6 1 0 6 . 3 6 5 4 , 6 8 0 8 9 1 0 0 . 9 1 8 6 , 4 2 0 *9 8 2 9 5 0 0 7 . 2 7 5 2 , 8 9 6 6 1 1 , , 5 4 . 1 2 0 5 0 0 3 2 2 0 3 6 9 , , 8 7 7 7 6 8

( 当期投入分) ( 期末仕掛品合計)

完 ( 成 品 期首仕掛品分) 1 2 2 . 7 2 5 ‑ 1 2 2 . 7 2 5 l l , 7 6 8 . 6 8

1 6 . 3 6 5 1 3 3 . 6 3 5 1 5 0 1 4 , 3 8 4 . 2 1 5 4 , 1 1 4 . 2 1 4 3 . 6 3 5 1 0 1 . 8 1 5 1 4 5 . 4 5 1 3 , 9 4 7 . 8 9 3 0 , 1 0 8 . 8 9 ( 当期投入分)

( 完成畠合計) ‑ 4 3 . 6 3 5 6 5 4 . 5 5 ‑ 7 5 6 . 3 6 5 8 6 5 0 0 4 . 5 5 6 7 2 6 , , 7 7 6 1 5 7 . . 7 9 9 1 0 1 5 8 2 2 , , 5 6 5 6 4 3 . . 7 6 9 9 ° 表 7 平均法 における原価の計算 (2 :通常の計算 と一致する計算)

工費の計算を行 うと,端数は別 として,既存の計算方法 と同一の結果が得 られる。

表 7のアスタ リスクは,そこで単費の計算が行われていることを示す。

この計算結果か らみると,平均法 は,期首仕掛品 と当期投入材料 とか ら同等 に完成品 と期末仕掛品が作 られるという物の流れにおける仮定のほかに,期首 仕掛品の単費 と当期に投入 された原価財の単費が同 じである,すなわち単費も 期首仕掛品 と当期投入分 とのあいだで加重平均 されるという仮定がおかれてい ることが判 る。ちなみに本数値例では,主要材料費については通常の方法 と物 の流れを仮定す る方法 とで同 じ結果になったが,その理 由は,本例では主要材 料が工程の始点で投入 され ると仮定 しているか らである。 この仮定の もとで は,期首仕掛品に含まれていた材料であろうと,当期に投入 された材料であろ うと,結局 は当期完成品 と期末仕掛品 とに,800 対300の比率で配分 されて し まうので,結果的に同 じになる。

さて,上記 した 「 期首仕掛品に含 まれ る原価財の単費 と当期に投入 された原

価財の単費が加重平均 され る」とい う仮定は,しば しば平均法が, 前期 ( 以前)

(15)

実 際総合原価計算 にお け る物 の流れの仮定 8 3 に行われた作業 と当期 に行われたものとを区別 しないとして批判 されるところ である。

それでは何故に,そのような仮定が設 け られているのであろうか。

その理由は,本稿の数値例では平均法によって物の流れの計算が可能であっ たが, これが不可能になる状況があるか らである。それは,期首仕掛品 とくら べて期末仕掛品の進捗度が小 さくなる場合である

数値例における 「 期首仕掛品 と当期投入」 と 「 完成品 と期末仕掛品」の物量 および進捗率を交換 した,次の数値例を考えてみる。

数値例 ‑2

〔 物量データ〕

期首仕掛品 3 0 0 k g 進捗率 5 0 %

当期材料投入 8 0 0 k g

完成品量 9 0 0 k g

期末仕掛品 2 0 0 k g 進捗率 3 0 %

上述 したの とまった く同様 に物の流れを計算 してみ ると,表 8 のよ うにな る。

問題 は期末にいたって もまだ仕掛品にとどまる期首仕掛品 5 4 . 5 5 k g 分の加工 費の計算にある。 この仕掛品は期首 においては進捗度が 5 0 % であったものが, 期末 には進捗率 3 0 % になったのであるか ら, 進捗率は 2 0 % 後退 した ことになる

つま り完成品に換算 して 1 0 . 9 1 k g 分の加工作業が抜 き取 られた ことになる。現 在の原価計算理論ではマイナスの加工作業 とい う発想 はないので,計算が不可 能になるのである。 これを解決す る手段 として,現行の計算 においては,期首 仕掛品に含 まれていた 1 2 2 . 7 2 5 も,当期 に作業 した もの とみな して単費を加重 平均 し, しか も行われた作業量を 1 2 2 . 7 2 5‑1 0 . 9 1 ‑1 1 1 . 8 1 5 と減 じることで計 算を可能 に していると考え られる。

なお,以上の解説を逆にみれば,マイナスの加工作業 とい う発想を導入すれ

(16)

84

〔 物 の流 れの計算〕

商 学 討 究 第 46 巻 第 2 ・3 号

インプット 期首仕掛品 当期投入 合計

数量 ( 進捗度) 3 0 0( 0 . 5 ) 8 0 0 ( 0 ) 1 , 1 0 0 前期加工作業量 3 0 0×0 . 5 ‑1 5 0 0

3 0 0×一 旦生 (

1

) 3 0 0 ×‑ 一 旦

(

0.3

) 8 0 0×‑ 一 旦 生 ( 1 ) 8 0 0 × ‑ 一 旦生 ( 0 . 3 ) 1 , 1 0 0 1 , 1 0

0

1 , 1 0 0 1 , 1 0 0

‑2 4 5 . 4 5 ‑5 4 . 5 5 ‑6 5 4 . 5 5 ‑1 4 5 . 4 5 ‑ 1‑0 . 5 ‑0 . 5 0 . 3 ‑0 . 5 ‑‑0 . 2 1‑0‑1 0 . 3 ‑0 ‑0 . 3

2 4 5 ‑1 . 4 5 2 2 ×0 . 7 . 2 5 5

2 4 5 . 4 5×0 . 5 5 5 4 4 . . ‑2 5 5 5×0 5×( 7 . 2 . 7 5‑ 5 ‑0 . 2 ) 0 ‑ 0

( 当期作業) 6 5 4 . 5 5×1 1 4 5 . 4 5×0 . 3

表 8 平均法 における物 の流れの計算 (2 :進捗度が後退す る例)

ば,かか る状況 において も先述 した平均法 によ って計算が可能であることを示 唆 している。 しか し,マイナスの加工作業 はそれ 自体,物 の流れの仮定 として 非現実的であろ う。いずれ に しろ, この問題 は本稿 の検討範囲だけか ら結論を

出すべ き問題で はない と考 え られ る。

3. 3 後入先出法

期末仕掛品原価を計算す るさいの第 3 の仮定が後入先 出法で ある。

ただ し後入先 出法が先入先出法,平均法 とな らぶ第 3 の仮定であるか といえ ば,その答えはいささか微妙である。英米 におけるテキス トで は,一般 に期末 仕掛品原価 の計算方法 としては平均法 ( wei ght ed‑ averagem et hod) と先入 先 出法 ( FI FO m et hod) とを解説す るのが普通であ り 1 2 )わが国 において も, 1 2 )多数 あるが,た とえば以下を参照。Shi l l i ngl aw ,G. , CostAccoz L nt i ng/Anal ‑ ys i sand Cont rol ,3rd ed. ,1 972,pp. 1 62‑66・ ,Mat z,Adol ph,Ot hel J.

Curry and Mi l t on F.Usry ,CostAcc ount i ng/Pl aT m乙 ng and Cont r ol ,

5 t h ed. ,197 2,p. 152 f f . ただ し以下 の文献 で は,先入先 出法 を解説す る理 由 と し

て,平均法 と くらべて理論的に優れている点 とともに資格試験 に出題 され ることを

(17)

実際総合原価計算における物の流れの仮定 85 後入先 出法 につ いては解説 していないテキス トが あるはか,た とえば次の溝 口 一雄教授 のよ うに,物 の流れか ら考え られ た方法 とはみなさない見解があ るか らであ る。す なわ ち,「 後入先 出法を仕掛品評価 に適用す るとい うの は,先入 先 出法のよ うに物の流れの順序か ら考え るのではな くて,純粋 に費用収益の対 応 につ いての考 え方だけか らきた ものであ る 」 1 3) と。

しか しなが ら一般 にはわが国の多 くのテキス トにおいて,後入先 出法 によ る 期末仕掛品評価 は説明 されているので,以下,簡単 に紹介す る

後入先 出法 による計算 には,期首仕掛品完成品換算量 と期末仕掛品完成品換 算量 との大小関係 によ り 2 種類 ある 。

本稿の数値例 ‑ 1はその うち,期首仕掛品完成品換算量 <期末仕掛品完成品 換算量 とな る例である。

表 9 および表 1 0 が物 の流れを計算す る方法を示 しているが,計算結果だけを みれば,表 11 に示す通常の後入先 出法の結果 と異 なるところはない。

しか しなが ら, この計算 が先入先 出法 の仮定 に完全 に合致 して い るか とい

〔 物 の流れの計算 :期首仕掛 品完成 品換算量 <期末仕掛 品完成 品換算量 〕

インプット 数量 ( 進捗度) 期首仕掛品 20 0( 0 . 3 ) 90 当期投入 0(0) 1 合計 , 1 0 0 前期加工作業量 20 0×0 . 3‑6 0 0

アウ トプット 期末仕掛品 期末仕掛品 完 成 品 1 .1 0 6 0 0 数量 ( 進捗度) 20 0( 0 . 5 ) 30 0‑20 0‑1 0 0( 0 . 5 ) 8 00(1)

進捗度の増加

加工作業量 ( 前期作業) 0 2 .5‑0 00×0 . . 3‑0 3‑60 . 2 0 . 5‑0‑0 0 . 5 1‑0‑ 1 0 表 9 後入先 出法 にお ける物 の流れ の計算 ( 1)

挙げており,日本における論調 とはいささかニュアンスを異にする 。Hor ngr e n , Char l e sT. ,CostAccount i ng/A Manageri alEmphasi s ,2nded. ,1 9 67 , p. 6 41;Ne uner,JohnJ.W.andEdwardB.Deaki n Ⅲ ,CostAcco乙 上 nt ‑ L ng/Pri nc i pl esandPr act i ce ,9t hed. ,1 97 7,p. 8 0 .

1 3 ) 溝口,前掲書 ,p. 1 2 2 。

(18)

86 商 学 討 究 第 4 6 巻 第 2・3 号

〔 原価の計算〕

主要材料費の計算

期首仕掛品材料費 当期材料費 合 計 物 量 金 額 物 量 金 額 物 量 金 額

期首仕掛品 当期投入 合計 2 2 0 0 0 0 2 2 2 2 , , 2 2 2 2 2 2 9 9 0 0 0 0 1 1 2 2 3 3 , , 4 4 5 5 6 6 1 , 2 9 1 0 0 0 0 0 2 0 1 1 2 4 2 3 5 , , , 2 4 6 2 5 7 2 6 8 期末仕掛品

完成品 2 0 0 2 2 , 2 2 2 8 1 0 0 0 1 0 1 0 3 9 , , 7 7 1 3 7 9 3 8 0 0 0 3 0 1 0 5 9 , , 9 7 3 3 9 9

加工費の計算

期首仕掛品加工費 作業量 金 額 作業量 当期加工費 金 額 作業量金 額 計 主要材料費 加工費合計 期首仕掛品 6 0 4 , 6 8 0 ̲ 8 9 0 8 6 , 4 2 0 6 0 4 , 6 8 0 2 6 , 9 0 2

当期投入 合計

期末仕掛品 ( 期首仕掛品分) 8 9 0 8 6 , 4 2 0 ̲ 2 0 9 , 8 7 6 6 0 4 , 6 8 0 8 9 0 8 6 , 4 2 0 9 5 0 9 1 , 1 0 0 2 3 6 , 7 7 8 6 0 4 , 6 8 0 4 0 3 , 8 8 4 1 0 0 8 , 5 6 4 4 4 , 5 0 3 ( 当期投入)

完成品 8 5 0 0 0 7 4 7 , , 8 6 5 8 5 1 8 5 0 0 0 7 4 7 , , 8 6 5 8 5 1 1 8 4 7 , , 8 4 2 5 5 0 表10 後入先出法 における原価の計算( 1)

えば,いささか疑問であろう なぜな ら後入先出法 とは,た とえば岡本清教授

の定義 によれば,「 月初仕掛品が あればその加工 をあ とまわ しに し,新 たな

ロッ トの加工 に着手 しこれを完成 させ,なお余力があれば月初仕掛品の完成に

ふ りむける, という計算仮定を もつ方法である 」1 4) となっている。 この仮定 に

忠実に従えば,本数値例の場合,当期投入材料 は9 00k g であるのに対 して完成

品量 は800 k g であるか ら,当期 に投入 された作業対象すべてが完成 されず,一

部が期末仕掛品 として残 った ことになる。だ とすれば計算仮定上,期首仕掛品

1 4 ) 岡本,前掲書 ,p. 3 0 7 0

(19)

実際総合原価計算における物の流れの仮定 87 には加工作業が加え られなか った ことになるが,それにもかかわ らず,数値例 において,仕掛品の進捗度 は期首仕掛品の 30% か ら期末仕掛品の 50% へ と増加

している

加工が加え られなか ったはずなのに進捗度が増加す るのは明 らかに矛盾であ る。

上述 した物の流れの計算な らびに下記の通常の計算は, この矛盾を 「 期首仕 掛品の加工進捗度が進展 した分 については, とりあえず加工作業が加え られた

ものとす る」 と仮定す ることによって回避 していると見なす ことがで きる。

なお,同 じ問題 は,加工作業が加え られないにもかかわ らず加工進捗度が減 少す る場合にも生 じる。 しか も, この状況では,進捗度が減少す るので,平均 法の解説で指摘 したマイナスの加工作業 という問題を抱えることになる。

すなわち,期首仕掛品完成品換算量 <期末仕掛品完成品換算量 となる場合 は,期首,期末の仕掛品加工進捗度が同 じであるとい う特殊な場合を除いて, 厳密な意味での後入先出法の適用 は不可能である。

〔 通常の計算 一後入先 出法〕

主 要 材 料 費 加 工 費 合 計

物 量 金 .顔 加工作業量 金 額

期首仕掛品 200 22,222 60 4,680 26,902 当期投入 合計 1,1 9 00 00 1 1 23,456 45,67 8 890 950 86,420 91 ,1 00 209,876 236 ,778 期末仕掛品

完 成 品 300 800 1 35,939 09,7 39 800 1 50 7 1 3,41 7,681 9 1 49 87 ,358 ,420

裏目 通常の後入先出法 (1 : 期首仕掛品完成品換算量<期末仕掛品完成品換算量の場合)

他方,期首仕掛品完成品換算量よりも期末仕掛品完成品換算量のほうが小 さ

い場合 は,たとえば平均法を解説 したときに使用 した数値例 ‑2 のような状況

が考え られ る

(20)

8 8 4 6 巻 第 2・3 号

〔 物 の流 れ の計算 :期首仕掛 品完成品換算量 >期末仕掛 品完成 品換算量〕

イ ンプッ ト 期首仕掛品 当期投入 合計

数量 ( 進捗度) 30 0( 0 .5 ) 80 0(0) 1 ,1 0 0 前期加工作業量 30 0×0 .5‑1 5 0 0

アウ トプット 期末仕掛品 完成品 完 成 品 1 .1 1 0 50 0 数量 ( 進捗度) 20 0( 0 .3 ) 1 00 ̲(1) 80 0(1)

進捗度の増加

加工作業量 ( 前期作業) ‑ 0 .3‑0 20 0×0 .5‑‑0 . 5‑1 00 .2 1 1‑0 0 0×0 .5‑0 .5‑5 .5 0 1‑ Oi l 0

蓑1 2 後入先 出法 にお ける物 の流れの計算 ( 2 )

表1 2 に示 したよ うに,数値例 ‑ 2 は進捗度が期首の50%か ら期末の30%へ と 後退 しているので,マイナスの加工作業 とい う状況が生 じる。

そ こで, この問題 を回避す るために,以下 のように,数値例 を加工進捗度が 進展す る状況 に変更 し,また金額的なバ ラ ンスを とるために期首仕掛品原価 も 変更 して,計算方法 を例示す る。

数値例 ‑3

〔 物量 データ〕

期首仕掛品 300k g 進捗率50%

当期材料投入 800k g 完成品量 900k g

期末仕掛品 200k g 進捗率70%

〔 原価 データ〕

期首仕掛品 主要材料費 44,444 円 加工費 14,680 円 当期製造費用 主要材料費 1 23,456 円 加工費 86,420 円

なお,材料 は生産工程の始点で全量投入 され るもの とす る。

(21)

実際総合原価計算 における物の流れの仮定 8 9

イ ンプ ッ ト 期首仕掛品 当期投入 1 合計 , 1 0 0 前期加工作業量 3 0 0×0 . 5‑1 5 0 0

アウ トプ ツ下 期末仕掛品 完成品 完 成 品 1 .1 1 0 5 0 0 数量 ( 進捗度) 2 0 0( 0 .7 ) 1 0 0

( 1 )

8 0 0(1)

進捗度の増加

加工作業量 ( 前期作業) 2 0 .7‑0 0 0×̲ 0 . . 5‑0 5‑1 . 0 2 0 1 1‑0 0 0×0 . 5‑0 . 5‑5 .5 0 1‑ 0‑ 1 0 表 1 3 後入先 出法 にお ける物 の流れの計算 ( 3 )

〔 原価 の計算 〕

主要材料費 の計算

期首仕掛品材料費 当期材料費 合 計 物量 金 額 物量 金 額 物量 金 額 期首仕掛品 3 0 0 4 4 , 4 4 4 8 0 0 1 2 3 , 4 5 6 3 0 0 4 4 , 4 4 4 当期投入 合計 8 0 0 1 2 3 , 4 5 6

3 0 0 4 4 , 4 4 4 8 8 0 0 0 0 1 1 2 2 3 3 , , 4 4 5 5 6 1 6 , 1 0 0 1 6 7 , 9 0 0 期末仕掛品

完成品 ( 期首仕掛品分) 2 1 0 0 0 0 2 1 9 4 , , 6 8 2 1 9 5 2 1 0 0 0 0 2 1 9 4 , , 8 6 2 1 9 5 ( 当期投入分)

( 完成品合計) 1 0 0 1 4 , 8 1 5 8 0 0 1 2 3 , 4 5 6 8 9 0 0 0 0 1 1 2 3 3 8 , , 4 2 5 7 6 1

加工費 の計算

期首仕掛品加工費 当期加工費 合 計 加工費合計 主要材料費 作業量 金 額 作業量 金 額 作業量 金 額

期首仕掛品 1 5 0 1 4 , 6 8 0 8 9 0 8 6 , 4 2 0 1 5 0 1 4 , 6 8 0 5 9 , 1 2 4 当期投入 合計 1 5 0 1 4 , 6 8 0 8 9 0 8 6 , 4 2 0 1 , 0 8 9 4 0 8 0 9 6 1 , , 4 1 2 0 0 0 2 2 0 6 9 9 , , 8 0 7 0 6 0

期末仕掛品

完 ( 期首仕掛品分) 成 品 1 0 5 0 0 4 9 , , 8 7 8 9 7 3 4 5 0 0 4 3 , , 8 8 8 5 4 5 1 1 4 0 0 1 0 3 9 , , 6 7 4 7 8 1 4 2 4 3 , , 3 5 0 6 0 3 ( 当期投入分)

( 完成品合計) 5 0 4 , 8 9 3 8 8 0 5 0 7 0 8 7 2 , , 6 5 8 3 1 6 8 9 0 0 0 7 0 8 7 7 , , 4 6 8 2 9 1 2 2 0 2 5 1 , , 7 1 3 0 7 0

表 1 4 後入先 出法 における原価 の計算 ( 2)

(22)

90 商 学 討 究 第 46 巻 第 2 ・3 号

〔 通常 の計算 一後入先 出法〕

主 要 材 料 費 加 工 費 合 計 物 量 金 額 加工作業量 金 額

期首仕掛品 300 44, 444 1 50 1 4,680 59,1 24 当期投入 合計 1 ,lo 80 0 o 1 167 23,456 ,900 1 ,0 890 40 101,100 8 6,420 209, 269,000 87 6 期末仕掛品

完 成 品 ‑ 20 90 0 0 1 29 38, ,629 271 1 900 40 87,399 1 3,701 225,670 43, 330 表 1 5 通常の後入先出法 (2 :期首仕掛品完成品換算量>期末仕掛品完成品換算量の場合)

物の流れを経 由す る方法 と通常の方法 とで,材料費 については結果が一致す るが,加工費の計算 は一致 しない。加工費の計算が一致 しない原因は,期末仕 掛品に含 まれ る加工作業の起源に関する仮定の違いにある。すなわち通常の計 算 においては,期末仕掛品の加工作業 ( 200 ×0 . 7‑140) は,期首仕掛品に含 まれ る加工作業 ( 300 ×0 . 5‑150) の うち 1 40k g 分がそのまま残 った と仮定 し て計算 しているのに対 して,物の流れを計算す る方法で は,期首仕掛品 300kg が まず当期 中に完成 した 100k g と期末 まで完成 しなか った 200k g とに分かれた

と考え,当期中に完成 した ものには,当期の加工作業が完成品 50k g 分 ( 1 00×

(1‑0.5) )投 じられ,また期末 に仕掛品 として残 っている物 に対 して はそ の進捗度 の進展分 ( 200 × ( 0.7‑ 0 . 5)) の加工作業が当期 中に加え られた と 仮定 して計算 している

したが って,加工費の計算 において,表 1 6 のように,● 期末仕掛品の加工作業 の うち 140k g 分 は期首仕掛品を起源 とす るかのように計算すれば,通常の計算

と一致 した結果が得 られる。

したが って後入先出法における計算の仮定 には,少な くとも以上の 2種類が あることになるが,通常の計算における仮定は物の流れの仮定 というよ りも, 完成品換算量の流れを仮定 しているもの と考え られる。すなわち,進捗率 20%

の仕掛品が 100k g あることは進捗率 50% の仕掛品が 40k g あるの と等 しいと考え

ていると解釈で きる。物の流れを考えた場合,両者が状況 として異なることは

(23)

実際総合原価計算 における物の流れの仮定 加工費の計算②

9 1

期首仕掛品加工費 作業量 金 額 作業量 当期加工費 金 額 作業量 合 金 額 計 主要材料費 加工費合計 期首仕掛品 1 5 0 1 4 , 6 8 0 8 9 0 8 6 , 4 2 0 1 5 0 1 4 , 6 8 0 5 9 , 1 2 4 当期投入 合計 8 9 0 8 6 , 4 2 0 2 0 9 , 8 7 6

1 5 0 1 4 , 6 8 0 8 9 9 0 0 8 6 8 , , 4 7 2 3 0 9 1 , 0 4 0 9 1 , 1 0 0 2 6 9 , 0 0 0 期末仕掛品

完成品 ( 期首仕掛品分) 1 4 1 0 1 0 3 , 7 9 0 7 9 1 1 1 4 0 0 1 0 9 3 , , 7 7 0 1 1 8 4 1 3 8 , , 3 5 3 3 0 3 ( 当期投入分)

( 完成品合計) 1 0 9 7 9 8 8 0 9 0 0 8 7 7 6 , , 6 4 8 2 0 1 8 9 0 0 0 0 8 7 7 7 , , 6 3 8 9 1 9 2 2 0 2 1 5 , , 1 6 3 7 7 0 表 1 6 後入先出法における原価の計算 (3 :通常の計算 と一致す る計算)

いうまで もな

4. 結 看

結論を述べ る前 に断 っておかなければな らないのは,筆者 としては現行の計 算方法に代えて本稿で述べた計算を使用すべ きだ と主張するわけではないこと である。ただ,物の流れを仮定す ることによって,現行の計算がい くつかの仮 定にもとづいていることを指摘することが本稿の 目的であった。

そのような仮定にもとづ く計算がお こなわれざるをえない理 由は,いうまで もな く,総合原価計算を支える大 きな前提である先入先出法,平均法,後入先 出法の仮定が必ず しも生産工程 における物の流れを反映 していない ことにあ る

繰 り返す ことになるが,原価計算を して,原価を手段 として,生産工程にお

ける物の流れの写像を作 ることであるとすれば,おそ らく,物の流れが先入先

出法的であれば原価の計算において も先入先出法を使用 し,また生産工程が平

均法的であれば原価の計算において も平均法を使用すべ きだ とするのが もっと

(24)

9 2 46 巻 第 2 ・3 号

も理論的な主張だ と思われ るが,現行の理論 はそ うはな っていないのである。

その理 由は, 第 1 に, 実際の生産工程 の流れ は一般 に複雑で, 先入先 出法的, あ るいは平均法 的 といった単純 な捉え方 で は掌握 しきれない こと, また第 2 に,物の流れを前提 に した原価計算を考え ると,特殊な製造業を除いて先入先 出法が一般 に正 しい原価計算の方法 とい うことにな って,平均法 と後入先 出法 は排除され ることになるが,平均法 には①計算が簡単であること,②前期加工 の期首仕掛品原価 と当期の製造費用 とをな らして求めた製品原価が他の方法 に よって求めた製品原価 よりも価格決定や財務諸表の作成に役立っ という考えが あること 1 5 ), さ らには③ よ り広 い費 目範 囲に もとづいて期末仕掛品原価を計 算す ることで,計算上の誤謬があったときの影響を小 さ くで きること,以上の よ うな利点が考え られ る。また後入先出法の場合 はなん といって も,その節税 効果が見逃せない 。 1 6)

以上のよ うな現代的な理 由のはかに,歴史的な理 由も考え られ る。

す なわち , 1939 年 に出版 されたギルマ ンの著書 Account i ng Conce pt so f Pro fi t は会計学を コンベ ンシ ョンの体系 と して解説 しているが,その うちの

「その他の コンベ ンシ ョン」に順序 の コンベ ンシ ョン ( s e que ncec onve nti o ns) とい うのがあ り,それによると会計 においては,実際の物の流れが どのよ うな ものであって も,それを無視 して物の流れを仮定す る (ことがで きる) と説か れている 。1 7) い うまで もな く,ギルマ ンが想定 している棚卸資産 は商品や材料 など,企業内部で変形を受 けることのない資産であろうが,原価計算 における 期末仕掛品原価の計算 に平均法,先入先 出法,後入先出法か らの選択が許 され ている背景 には,少 な くとも 1930 年代 にはすで に認 め られた仮定 の位置を 占 めていたコンベ ンションの影響をみ ることがで きるのである 。

ともあれ, 本稿 冒頭で も述べたよ うに, 原価計算 はひ とつの体系であ るか ら, 1 5 ) 松本雅男,前掲書 ,p. 1 07 。

1 6 )Horngren,Charl esT.and GeorgeFost er ,Cos tAcc ount i ng/A Man‑

ager i alET nPhas i s,7t hed. ,1 99 1 ,p. 568n.

17 )Gi l man ,S , , Ac count i ng Conc e pt so fPro fi t ,1 939 ,pp.254‑5 5 . 久野光朗

訳 『 ギルマン会計学 ( 上) 』同文舘 ,1965 ,pp. 205‑06 。

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実際総合原価計算 における物 の流れの仮定 9 3

実際総合原価計算における大 きな前提である期末仕掛品原価の計算に して も, 他の問題 との関係を抜 きに して論 じることはで きない。本稿で提示 した物の流 れに関す る計算 も,その意味で,他の状況に適用 した結果を考慮 しなければ充 分 とはいえない。

次の機会 には,減損あるいは仕損が発生す る状況における物の流れの計算に

ついて検討す る予定である。

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