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産業 別給 与所 得分布 の推 移 と形 態

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29

産業 別給 与所 得分布 の推 移 と形 態 早 見 弘

1問 題 と 資 料

日本 経 済 が 高 度 成 長過 程 を た どっ て い る なか で,そ れ を 支 え て きた 雇 用 労 働 者 の所 得 分 布 は,ど の よ うに変 化 して きた か,ま た そ の分 布 を産 業 別 にみ た場 合,ど の よ うな特 徴 が 認 め られ るか,そ の特 徴 は な に が原 因 とな っ てい るの で あ ろ うか。 これ らの問題 を 解 明す る1つ の試 み と して,こ の稿 は 「民 間 給 与所 得 者」 を対 象 と して,そ の所 得 分布 の推 移 と産 業 別形 態 を求 め よ う

と思 う。

雇 用 労働 者 の所 得 は,い うまで もな く労 務 の対 価 と して 支払 わ れ た賃 金 ・ 俸 給 ・賞与 な どか らな って い る。 この 分 布が 注 目され るの は,先 進 諸 国 に お い て は 賃 金 ・俸 給 な どの分 配 国 民所 得 に しめ る比 重 が 高 く,か つ 成長 が著 し い とい うだ け で は な い。 雇 用 労 働 者 は就 業 者 の多 数 を しめ,彼 らの所 得 分 配 の 公 正 を め ぐる価 値 判 断 に よ って,政 治や 社 会 を動 か す 原 因 と もな り うるか らで あ る。 平 等 主 義 的 分 配 観 に も とつ く主張 は,労 働 者 階 級 へ の よ り多 い分 け 前 と,よ り平 等 な 受 取 り額 の獲 得 を 目指 す で あ ろ う し,機 能 主義 的 分 配 観 に 立 つ主 張 は,恩 情 主 義 的 分配 が もた らす 資 源 配 分 の悪 調 整 を 指摘 して, 競 争 市 場 と効 率 的 投 入 比 率 が 生み だす 所 得 分 配 こそ,平 等 主義 者 の論 拠 と も

(1)

な っ て い るmeri七cracyの 実 現 に 役 立 つ と 反 論 す る 。

*本 稿 の 大 要 は,7月3日 の 経 済 研 究 会 で 報 告 し た も の で あ る が,そ の 際,麻 田, 増 井 両 教 授 か ら コ メ ン トを 受 け た.ま た,別 表1の 計 算 は 本 学 計 算 セ ン タ ー の OKITAC‑5090Hを 使 っ た が,計 算 の プ ロ グ ラ ム は 竹 内 清 教 授(東 北 大 学)お

よ び 同 教 授 ゼ ミOB平 野 文 彦 氏(日 本IBM)の 御 援 助 に よ る も の で あ る.記 し て 謝 意 を 表 し た い 。

(1)(]f・M・Friedman,CapitalismandFreedom(ChicagoUniv.Press,1962),

chap.x;H.Wallich,The・CostefFree40m'Conservatismana.IV〈roaernCaPitalism

(Col】ier,1962),chap.4・

(2)

こ の よ うな 分 配 の 公 正 論 争 に は,所 得 の 機 能 別 分 配(functionaldistribu‑

tion)と 規 模 別 分 布(sizedistribution)の2つ の 問 題 が,し ば しば 平 行 して 語 られ る こ とが 多 い 。 しか し,賃 金 ・俸 給 の 分 け 前 が 大 き くな る こ と と,個 人 また は 世 帯 が 受 け 取 る 労 働 所 得 の 平 等 化 とは,必 ず し も結 び つ か な い 。 事 実 と して は,賃 金 の 分 け 前 が ふ え た 時 に,労 働 所 得 の 分 布 も平 等 化 した とい え る こ と も多 い が,機 能 別 分 配 の 比 重 と規 模 別 分 布 の 平 等 化 は 必 ず しも 平 行 しな い 。 こ の2つ を 結 ぶ 理 論 が 確 定 して い な い ば か りか,所 得 分 布 の 理 論 そ

(2)

の も の も極 め て多 彩 で あ る。 分 配 の公 正 に つ い て の平 等主 義 的 見 解 と機 能 主 義 的 見 解 の いず れ に と って も,事 実 の検 証 と仮 説 を と もな わず に,判 断 の 相 異 だ け が対 立 点 とな った時 代 は と うに過 ぎ去 って い る。 われ わ れ は,古 い 問 題 に新 しい資 料 と分 析 方 法 を も って 答 え な けれ ば な らな い。

こ こで対 象 と した 資 料 は,国 税 庁 総 務 課 編r民 間給 与 の実 態 民 間 給与 実 態 調 査 結 果報 告 一 』(以 下,「民給調査」 とよぶ。)で あ る。 この資料 は 源 泉 所 得 税 の課 税状 況 を 中心 とす る税 務統 計 で あ るが,つ ぎの よ うな性 質 を も っ て い る。(1)民 間 部 門 の給 与 所 得 者 を 対 象 とす る こ と。 源 泉所 得 税 の対 象者 で あ って も,日 雇 労 務 者,国 家 お よび 地 方 公 務 員,公 社 職 員,駐 留 軍 関係 従 事 員 は除 か れ る。 ② 個 人単 位 の年 間 給 与所 得 を 内 容 とす る。 個 人 単 位 で あ る こ とで は,労 働 省 大 臣 官房 労働 統 計 調査 部 編 『賃 金 構 造 基 本統 計 調査 報 告 』(以 下,「賃金構造調査」 とよぶ。)の 「常 用 労 働 者」を対 象 とす る資料 と類 似 す るが,「 民 給 調査 」 で は年 間 の賃 金 ・俸 給 お よび 賞与 総 額 が わか る。 「賃 金 構造 調 査 」 で は,調 査 月 の平 均 支給 額 お よび所 定 内給 与 と,前 年 に支 給 され た平 均 賞 与 額 が 記 載 され て い る。 ⑧ 免 税 点 以下 の 給与 所 得 者 が 除 かれ て い る。 この点 か ら指摘 され る こ とは,給 与所 得 者 で も高 額所 得 者 に偏 った 統 計 で あ る とい え る ので あ るが,そ うだ と して も戦 前 の第 三 種所 得 税 統 計 の対 象

(2)KBjerke,"SomeIncomeandWageDistributionTheories,"Weltwir彦 一

schaftliches肋 肋(1961),pp.46‑66;"IncomeandWageDistributions,

PartI:ASurveyoftheLiteratureノ'Revieoσ(ゾlnco〃reandVVealth,Series

16・no・3(Sept・1970),PP・211‑20・;H・Lyda】LTheS〃uo彦ure(ゾEarnin8s

(OxfordUniv.Press,1968).

(3)

産業別給与所得分布の推移と形態 31 範 囲か らみ る と(昭 和14年 では,188万 人),戦 後 は 格段 と広 い(第1表 参照)。

この よ うな 性 質 を もつ 「民 給 調 査 」 であ るが,こ の資 料 を用 い た実 証分 析 はか な りの伝統 を も って い る。 戦 前 を対 象 とす る もの で は汐 見 三 郎 教 授,早 川 三 代 治教 授,高 橋 長 太 郎教 授 に よ る所 得 分 布 係数 の 計 測が あ る し,戦 後 を 対 象 とす る も ので は,林 栄夫 教 授,貝 塚 啓 明 ・新 飯 田宏 助 教 授 お よび村 上 雅

(3)

子 助 教 授 に よ る所 得 税 の 所 得 再 分 配 効 果 の検 証 が あ る。 早 川 教 授,高 橋 教 授 の 研 究 は 企 業 別 ・産 業 別 賃 金 分 布 の 特 性 を 求 め られ,そ の 他 の 研 究 は 主 と し て 全 産 業 ・全 給 与 所 得 者 を 対 象 と した 所 得 分 布 を 計 測 さ れ て い る 。 こ の稿 は 産 業 別 給 与 所 得 分 布 の 推 移 と形 態 に 中 心 を お い て い る。 「産 業 別 」 に 力 点 を お くな らば,「 民 給 調 査 」 よ りも 「賃 金 構造 調 査 」 を 使 っ た ほ うが,よ り望 ま しい 結 果 が え られ る か も しれ な い 。 しか し,所 得 分 布 研 究 に と っ て 必 要 な 所 得 階 級 別 人 員 分 布 資 料 は,「 賃 金 構 造 調 査 」 で は 所 定 月 間 給 与 階 級 別 人 員 が あ る の み で,月 給 に 数 倍 す る 賞 与 の 分 布 統 計 を 欠 い て い る 。 ま た 階 級 内 の 総 所 得 額 が 記 載 され て い な い の で,階 級 値 と度 数 と を 掛 け て所 得 額 を 推 定 し な け れ ば な らな い 。 そ の うえ,最 上 位 の オ ー プ ン 階 級 に つ い て,そ の ク ラ ス の 所 得 分 布 の 型 を 推 定 しな け れ ば,最 上 位 階 級 の 人 員 お よ び 所 得 額 が 判 定 で き な い とい う不 便 さが あ る。 こ の よ うな不 便 さ は,そ れ 自体 と して興 味 あ る 問 題 で あ るが,当 面 の 問 題 と して は 回 避 して お く こ と に した 。 た だ,産 業 別 所 得 分 布 の 形 態 を 説 明 す る 場 合 に,部 分 的 に 補 助 資 料 と して 「賃 金 構 造 調 査 」 を 利 用 した 。

(3)汐 見 三郎r国 民所 得 の分配』(有 斐閣,1941);「 所 得 の分 布 と累進税」 日本統 計学 会編r国 民所 得 とその分 布』(日 本評論社.1944)所 収.

早川 三代治 「 所 得分布 に関す る諸考 察」 上掲 書所収;「 賃銀 の分布 に関す るノ ー ト」 『 商学 討究』第1巻1号(1950年11月) 。

高橋長太郎 「日本 の所得分布 」r経 済研究』第5巻2号(1954年4月);r所 得 分 布 の変動様式 』(岩 波書店,1955年),

林 栄夫 「階級 別 ・種類別 の所 得分布 と税負担 の問題」東京 都立大学r経 済 と 経 済学』第4号(1955年3月).

貝塚啓 明 ・新 飯 田 宏 「 税制 の所 得再分配効果」 館 ・渡 部編 『経済成長 と財 政 金融』(岩 波書 店,1965年)所 収.

村上雅 子 「財 政 に よる所 得再分 配,昭 和28〜39年 」 藤野 ・宇 田川 編 『 経 済成

長 と財政 金融 政策』(勤 草書房,1967年)所 収.

(4)

こ こで 対 象 とす る 期 間 は,1955(昭 和30)年 か ら1966(昭 和44)年 ま で の IS力 年 間 で あ る。 こ の 限 定 を 「民 給 調 査 」 に つ い て い うな らば,産 業 区 分 が 大 分 類 に 整 理 さ れ,階 級 別 人 員 と所 得 額 が ま と め られ た 資 料 に な っ た の は,

1955年 以 後 で あ る こ と に よ る 。 ま た 日本 経 済 の 成 長 経 過 に そ く して い うな らば,戦 後 の 復 興 期 を 脱 して 高 度 成 長 過 程 を 歩 み つ つ あ る期 間 に わ た り,成 長 と所 得 分 布 の 関 係 か らみ て も興 味 あ る 問 題 を 与 え て くれ る点 に あ る 。

皿 『民 間給 与 実 態 調 査 』 の対 象範 囲

は じめ に 「民 給 調 査 」 に お け る対 象 人 員 と所 得 額 の カ バ レ ッジ を 把 握 して お こ う。 第1表 は,総 理 府 統 計 局 編 『労 働 力 調 査 』 と の 比 較 で あ る。i欄 に よ る と,雇 用 者 総 数 に しめ る 民 間 給 与 所 得 者 数(納 税者 お よび 失格者 を問わ な い)の 比 重 は,30年 代 初 期 の61%か ら40年 代 に は80%に 拡 大 して い る 。

第1表 各 種 資 料

暦 年

1955(30) 賄和 1956(31) 1957(32) 1958(33) 1959(34) 1960(35) 1961(36) 1962(37) 1963(38) 1964(3g) 1965(40) 1966(41) 1967(42) 1968(43) 1969(44)

労 働 力 調

、(α)(わ)

1就 業 者i雇 用 者

41,190 「

41,970 43.030 43,240 43,680 44.610 45,180 45,740 46,130 46,730 47,480 48,470 49,200 50,020 50,400

16,900 18,230 19.570 20,500 21,580 22,730 23,790 24,960 25,780 26,690 27,830 29,020 30,710 31,480 31,990

査!

『   一一一 ヒ (c) 茄/δ

3 9 4 8 3 3 6 9 3 5 3 3 8 5 6 4 7 7 4 5 5 4 4 3 3 4 4 5 2 1

民 間 給 与 の 実

(の

1年 以 上

勤 続 者

8,219.0 8,744.8 9,431.4 10,268.0 10,855.0 11,715.5 12,963.1 14,104.8 15,249.2 16,122.9 17,169.9 18,277.1 1g,772.9 20,676.3 22,066.3

(θ) da/d

8 4 9 9 7 9 6 8 1 7 5 4 2 6 7 7 6 7 8 5 7 0 8 8 5 6 6 8 4 ・ 6 1 満 者 Gり 繋 ‑ 勤

2,014.5

2,346.8

2.514.9

2,273.2

2,783.9

3.260.4

3,582.7

3,483.3

3,653.6

3,812.4

3,648.6

3,757.3

4,381.2

4,372.1

4,847.7

(5)

産業別給与所得分布の推移 と形態 33 残 りの39%な い し20%の 雇 用 者 が,所 得 税 免 税 点 以 下 の 人 員 と推 定 さ れ る が,毎 年 所 得 税 の 課 税 最 低 限 度 の 引 上 げ に もか か わ らず 課 税 対 象 者 が 増 加 し て い く傾 向 が あ る 。 雇 用 者 の 増 加 は,就 業 者 に ふ く まれ る 自営 業 主 お よ び 家 族 従 業 者 の 減 少 と平 行 して 生 じて い る の で,自 家 就 業 か ら雇 用 労 働 者 へ の 転 換 が,こ の10年 間 に 急 速 に 進 ん だ こ とが わ か る 。 そ の うえ,雇 用 者 の 対 前 年 増 加 率(c欄)が33年 か ら40年 に か け て5%前 後 の 増 加 率 で あ っ た と き に,民 給 人 員 は か え っ て 急 激 な 増 加 を み て い る(θ お よび ん欄)。 これ は 所 得 税 対 象 者 の 増 加 で あ り,ま た 所 得 税 の 大 衆 化 を 物 語 る も の で あ る 。

民 給 所 得 者 の80%(15年 間 の変動幅 は73.5〜82.9%で あ り.ほ ぼ安定 してい る。) は,1年 以 上 勤 続 者 が しめ る 。 この 人 員 が,本 稿 の 産 業 別 所 得 分 布 の 対 象 者 で あ る。30年 に822万 人 だ っ た も の が,15年 後 に は2,210万 人,年 率7.4

%の 増 加 で あ る。 こ の 増 加 率 は 雇 用 者 の そ れ よ りも,ま た 参 考 に 掲 げ た 国 家

の 対 象 人 員 (1,000人,%)

態 官公庁勤務者

(為 臼

4ブ/フ」

1:1 ::1 測 ::1 ::1

;:割

1:11

‑7 .0

賃金構造基本統計調査

(9)(h) 計dg/9

「10 ,233.51 11、091.6!

11,946.3:

12,541.2 13,638.9 14,975.9 16,545.8 17,588.0 18,902.8 rg,935.3 20,818.5 22.034.4 24・,154.1 25,048.4 26,914.0

(の11 9/δ ■

. (ブ)

6.g「

8.41

::引 麗 '1::

1::

1:1 ::1

7.4

6 8 0 2 2 9 5 5 3 7 8 9 3 6 1 0 0 1 1 3 5 9 0 3 4 4 5 8 9 斗 6 6 6 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 7 8

3,871 3,908 4,103 4,210 4,339 4,462 4,576 4,706 4,887 5,174

5,307}  

5,4331 5,7411 F 6,025

5,605

}

常 (り 用 労 働 者

(、J6,'1.3)1

(2,061.3) (2,053.5) 9、042.9

1:191:9i

i

11,552.2 11,863.1 12,236.6 15,803.8 14,663.4 }

15,144.5 15,894.4 15,065.3 16,076.0

(吻 う ち 男 子

労 働 者

(1,594.2) (1,622.5) (1,589.1) 6,507.4 6,728.6 6,877.4卜 8,108.2 8,259.2 8,606.9 11,024.9 10,198.1 10,517.1 10,900.5 10.328.6

10.988.21

i

) μ ( 吻

(78.8)

(78.1)

(77.4)

72.0

72.0

70.7

70.2

69.6

70.3

69.8

69.5

69.4

68.6

68.6

68.4

(6)

お よび地 方 公 務 員,公 社 職 員 の 増 加 率(為 欄)を も 上 回わ っ て い る。 雇 用 面 か らみ た政 府 部 門 の拡 大 テ ン ポは,人 員 の ウエ イ トお よび 増 加 率 でみ る限 り 民 間部 門 に か な りの遅 れ を も って い る。

も う1つ 参 考 資 料 と して 掲 げ た の は 「賃 金 構 造 調査 」 に あ る 「常 用 労 働 者 」 全産 業 合計 人 員(1欄)で あ る。 ここに 「常 用 労 働 者 」 とは,(1)期 間 を 定 め な い で雇 用 され る労働 者,(2)1月 を こえ る期 間 を定 め て 雇用 され る労働 者,(3)1月 以 下 の期 間 を定 め て雇 用 され る労 働 者 また は 日々雇 入 れ られ る労 働 者 の うち調 査 対 象 期 日(42年 まで毎年4月,43年 は6月)以 前2月 の各 月に お い て18日 以上,ま た は調 査 対 象 期 日以前6月 に お い て通 算 して60日 以 上 同 一 事 務 所 に 雇 用 され た もの ,を い う。 この推 定 人 員 は 民 給 人 員 に 及 ぼ な い が,男 子 労働 者(事 務系 ・労務系をふ くむ)の 比 重 が 次第 に 低 下 して い るの が 注 目され る@欄)。 「民 給調 査 」 に 男女 別 人 員 が記 載 され て い るの は30年 ま で な ので,産 業 別 の 男女 労働 者 比 率 の変 化 は,「 賃 金 構 造 調 査 」(第7表 参照)

と 『労 働 力 調 査 』 に よ るほか は ない 。女 子 労働 力 の参 加 は,男 子 労働 者 所 得 の減 少 関 数 で あ る,と い われ て い るが,『 労 働 力調 査 』 の検討 か ら梅 村 又次 教 授 は,わ が 国 に つ い て は所 得 の減 少 関数 で あ る と ともに 就 業 機会 の増 加 関 数 で もあ る とされ,と くに この傾 向が 著 しい の は,昭 和28年 下期 まで の女

(4)

子 労 働 者 の 増 加 率 で あ った,と 指 摘 され て い る。 本 稿 の対 象 期 間が 始 ま る以 前 に,女 子 労 働 者 が切 り開 いた 就 業 機 会 は,や が て34年 以 後 に お け る学 卒 若 年 労働 者 の相 対 的 不 足 とあ い ま って,以 前 に もま して婦 人 に よ って埋 め ら れ て きた とみ るべ きで あ ろ う。 実 の ところ,女 子 労働 者 は 在 職 期 間 も 短 く (平均4.4年 とい う。),そ の所 得 は 同 年代,同 一職 種 を とって も 男子 労 働 者 よ り低 い か ら,女 子 労働 者 の 増 加 は産 業 内そ して恐 ら く企 業 内 に お い て も,所 得 分 布 を不 平 等 化 す る傾 向 を もつ。

つ ぎに,民 給所 得 者 の 年 間給 与 総 額 に 移 ろ う。 こ こに 年 間 の給 与 総 額 と は,所 得 税法 第28条 第1項 にか か る 「給 与所 得 」 を い い,同 条 第2項 の 給

(4)梅 村又次r戦 後 日本の労働力』(岩波書店,1964年).p・87.

(7)

産業別給与所得分布の推移 と形態 35 与所 得 控 除 を行 な う以前 の 金額 を さす 。 この 中味 は,給 料 ・賃 金 ・諸 手 当 お よび 賞 与,非 課 税 部 分 を 超 え る現 物給 与,役 員 の認 定 賞与 か らな ってい る。

この給 与 所 得 と対 比 され るの は,分 配 国 民所 得(当 期価格による。)を 構成 す る

「賃 金 ・俸 給」 で あ る。 「そ の 他 の給 与 お よび 手 当」 と 「社 会 保 険 雇 主 負担 」 は,比 較 の共 通 性 を保 った め 入れ て い ない 。 も っ とも,給 与 所 得 に も脱 落す る部 分 が あ る。 そ れ は確 定 申 告 ・修正 申告 また は 更 正 ・決 定 等 に よる申 告納 税 対 象 とな る給 与 所 得 で あ る。 この資 料 は 国税庁 総 務 課編r申 告所 得 税 の実 態 一 申告所 得 税 標 本 調 査結 果 報 告一 』 お よびr国 税庁 統 計 年 報 書 』 で あ るが,こ れ に も とつ い て1人 の所 得 者 が2ヵ 所 以上 の事 業 所 か らえた 給与 所 得 を求 め た り,ま た 事 業 所 得 ・配 当所 得 等,そ の 他 の所 得 との 合計 か ら給与 所 得 だ け を抽 出す る こ とは 殆 ど不 可能 で あ る。 給 与所 得 者 と して 申告 納 税 を 必 要 とす るの は,「 民 給 調査 」 が カバ ーす る以上 の 高額 者 に偏 るで あ ろ うか ら,「 民 給 調査 」 か ら求 め た 分布 係数 は,個 人 単 位 の所 得 分 布 をや や過 少 に 表 わ してい るか も しれ ない。 この ほ か,交 際 費 や 免 税 の旅 費 な どに も給 与 所 得 と してふ くめ て よい部 分 が あ るだ ろ うが,こ れ もそ の捕 捉 と所 得 階 級別 の 配 分 が難 しい。

以 上 の よ うな制 約 もあ るが,第2表 に よる と,源 泉所 得 税 の対 象 とな る給 与所 得総 額 は,分 配 国民 所得 に お け る賃 金 ・俸 給 の60%か ら90%へ と高 ま

っ て い る(ブ 欄)。 賃 金 ・俸 給 の 比 重 は,43.5%か ら45%へ と(δ 欄),こ の 15年 間 に1.5%し か ふ えて い な い の に,賃 金 ・俸 給 に しめ る民 間 給 与所 得 の 比 重 が,30%も 増 加 した のは,人 員 の増 加 に つ い て も言 え る よ うに,労 働 力雇 用 化 の進 展,給 与 の上 昇 お よび免 税 点 が相 対 的 に低 水 準 に あ るた めで あ る。 事 実,民 給総 額 の増 加率 が10%以 下 で あ った の は昭 和33年 だ け で あ っ て,36年 に は26%と い う驚 異 的 記 録 さえ残 して い る。 しか も賃 金 ・俸 給 の . 増 加 率 が低 下 した ときに は(33年,38年 〜41年),民 給 所 得 も 低 下す るが,そ れ が上 昇す る ときに は 急 速 な増 加 率 で 上 昇 して い くとい う動 きを み せ る。

民給 所 得 のほ ぼ93%は,1年 以上 勤 続 者 の所 得 で あ り,人 員 の比 重 と同 じ

よ うに 安 定 して い る。 この金 額(e欄)は,以 下 で しめす よ うに,11産 業 に

(8)

第2表 労 働 所 得 と 構 成 比 (10億 円,%)

暦 年

5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 5 5 5 5 5 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 1 1 + 1 4 ー 一 1 1 る 1 1 ー ム ー 1 1 乙 1 1 1

分配国民所得(の

(う)(c)

ψ 廣金.俸 給

5 6 3 9 0 6 6 3 1 5 0 8 5 7 0

43 唱 43 44 45 42 42 44 45 45 47 46 45 44 45

3.093.4 3,506,1 3,987.1 4,295.7 4,760.4 5,454,1 6,463.0 7,685.6 8,979.5 10,354.6 11,960.7 13,672.4 15,790.7 18,386.4

(の

dc/c

0 3 7 7 8 6 5 9 8 3 5 3 5 4

8 3 3 7 0 4 8 8 6 5 5 4 5 6 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 義 ‑ .且

民 間 給 与 所 得 」 轍 比

(の1(f)1(9)1(h)

鍛 却 薪 計 階

1,705.5 2,021.7 2,349.7 2,581.2 2,968。3 3,516.3 4,416.6 5,361.4 6,425.4 7,522.9 8,704.0 10,025.6 12,263.8 14,603.7 21,374.31,6,3117,865.・

9.il1,825.9

18.5 16.2 9.9 15.0 18.5 25.6 21.4 19.8 17.1 15.7 15.2 22。3 !

19・1115・646・ ・

2,171.0 2,530.4 2,740.1 3,162.4 3,792.0 4,780.9 5,781.4 6,901.4 8,095.3 9,312.7 10,682.9 13,142.1

23・3119・168・9

  (のi(ブ)

・/・ig/・

0 9 5 8 4 5 0 2 9 2 9 1 2 1 7 9 1 3 3 6 9 4 5 6 8 7 8 3 5 9 5 6 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 8 8 8

1 7 9 1 4 5 3 8 6 7 8 3 7 4 6 5 7 8 0 2 4 8 9 1 2 2 3 7 9 3 5 5 5 6 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 8

3 9 6 3 4 9 1 9 4 3 0 7 0 1 5 2 8 6 8 5 9 6 0 9 7 5 4 3 9 2 1 1 1 1 1 2 2 1 1 1 1 2 1 2

r昭 和40年 基 準 ・改 訂 国 民 所 得 統 計 』(1969年),1965年 以 後 はr国 民 所 得 統 計 年 報 』(1971年)に よ る.

分 解 さ れ,所 得 分 布 を 求 め る基 礎 とな る。

以 上 の よ うに 「民 給 調 査 」 の 人 員 と所 得 の カ バ レ ッジ は,30年 代 当 初 に お い て は,雇 用 者 の60%,所 得 の60%を 捉 え る に す ぎ な か った が,そ の 後 次 第 に 範 囲 を ひ ろ げ,40年 代 に 入 る と人 員 で は80%,所 得 も80%を 越 す に い た っ た 。 こ とに 最 近 に お け る 「民 給 調 査 」 は,高 額 所 得 者 に 偏 り あ る とは い え,い わ ゆ る サ ラ リー マ ン の 人 員 と所 得 の 圧 倒 的 多 数 を 抑 え て い る,と い

っ て よ い で あ ろ う。

こ の よ うな サ ラ リー マ ン の 圧 倒 的 多 数 は,第3表 に しめ され る よ うに,11 の 産 業 に 分 か れ て 勤 務 して い る。 「民 給 調 査 」 は 産 業 大 分 類 に よ っ て所 得 階 級 的 人 員 な らび に 階 級 別 年 給 与 所 得 を 記 載 して い る。 大 分 類 と い っ て も,例 え ば 「賃 金 構 造 調 査 」 で は 「製 造 業 」 と して 一 括 さ れ て い る部 分 が,「 民 給

(9)

産業別給与所得分布の推移と形態 37

第3表 産 業 区 分

大 分 倒 摘 要

鉱 建 繊 化

麟 水 産 刻 農業 林業

業 業 業

工 工 設 維 学

金 属 機 械 工 業 そ の 他 の製 造 業

卸 小 売 業

金 融 保 険 業 運 輸 通 信 公 益 業 サ ー ビス業その他

水産業

石炭鉱業 金属鉱業 非金属鉱業 総合および職別土建業

紡績業 製糸業 織物業 衣服その他の繊維製品製造業 化学工業 紙お よび類似品製造業 ガラスおよび土石製品製造 業 石油精製 ・石炭製品 ゴム製品製造業

第一次金属製造業(鉄 鋼業をふ くむ)機 械製造業 電気機械 器具製造業 通信機械器具製造業 自動車 ・船舶製造業

食料品製造業 木製品および類似品製造業 計量器 ・測定器 ・ 医療 ・理化学機械製造業 出版印刷業(新 聞 ・製本をふ くむ) 卸売業 小売業 百貨店 飲食店業

金融 ・保険 ・信託業 証券お よび商品取品業 不動産業 運輸通信業 倉庫業 電力 ・ガス ・水道業

映画その他の娯楽 病院診療所 私立学校 各種組合 分類不 能 の業種

調 査」 で は繊 維 工 業,化 学工 業,金 属機 械 工 業,そ の他 の製 造 業 の4つ に 分 れ て お り,逆 に運 輸 通 信 公益 業 に つ い て は,運 輸通 信業,ガ ス ・水道 ・電 気 業 お よび 倉庫 業 を ま とめ て い る。

所 得 分 布 を み るた めに,ど の よ うな 産 業 分類 を 用 い る のが 望 ま しい か, とい う闇題 は,労 働 市 場 に お い て 同質 的 技 能 を もつ 労働 者 の需 給 が 成 立 し, on‑job七rainingの 差 を 除 い て,産 業 間 に賃 金 の 均 衡 化格 差 だけ が 存 在す る

よ うに分 類 す るの が 望 ま しい で あ ろ う。 しか し,あ る1人 の労 働 者 が どこか の産 業 に属 す る,あ る企 業 に採 用 され よ うとす る場 合 を考 え てみ よ う。彼 自 身 に は 男女 の差,学 歴,仕 事 の経 験,年 齢,家 族 の有 無 な どつ いて 回 わ る し,一 方 の企 業 側 に も労 務 系 か事 務 系 か,大 企 業 か 中小企 業 か,資 本操 備 率 の大 小 な ど,細 か く見 て い くほ ど労 働 者 も企 業 も同質 的 グル ー プに ま とめ る の は難 しい こ とに な ろ う。 「賃 金 構 造 調査 」 に は 以上 ほ とん どの表 章 が 網羅

され,調 査 月 に おけ る賃 金 の多 次 元 的 構造 を 知 る こ とが で き るが,前 述 の よ

うに,年 給 与 額 の 推 定 に は不 便 で あ る。 ここで は 「民 給 調 査 」 の産 業 分 類 を

(10)

そ の ま ま使 うこ とに した 。 た だ し,30年 以 後 の 資料 に は,産 業 ご とに あ ま り詳 しい業 種 を掲 げ て いな い し,特 定 の業 種 につ いて は所 属 産 業 を入 れ 替 え た と思 われ る と ころが あ る。 例 え ば29年 の 産 業分 類 摘 要 欄 に は,石 油 ・石 炭 ・ゴム製 品製 造 業 は 「そ の他 の 製 造 業 」 に 入 って いた が,39年 に い た っ て 「化学 工 業 」 に現 わ れ て くる。 また,当 初 「金 属 機械 工 業 」 に 入 って い た 医療 ・理 化 学 ・光 学 機 械製 造 業 と時 計 製 造業 が,後 年 に いた っ て 「そ の他 の 製 造 業 」 に現 われ て くる。 この よ うな組 み替 えが,な ぜ 生 じた か は知 る こ と が で きな いが,後 述 の 男女 労 働 者 比 率 で は,「 民 給 調 査 」 に 合 わ せ て 「賃 金 構 造 調 査」 の 中分 類 を整 理 して お くこ とに した 。

皿 産業別給与所得分布 の測定

1.測 定 法 の選 択

所 得 分 布 の測 定 法 に は,い くつ か の 方 法 が あ る。 本 稿 で は ジ ニ集 中 係数 (λ)を 使 った 。 周 知 の よ うに,こ の 係数 は ロー レン ツ曲線 と均 等 分 布 線 とに よ って 囲 まれ た 面 積 が,均 等分 布 線 を斜 辺 とす る直 角二 等 辺 三 角 形 に 占 め る 比 率 を表 わ し,係 数 が ゼ ロに近 づ くに した が って平 等化 す る と定 義 され る。

ジ ニ集 中係 数(λ)は,つ ぎの よ うな算 式 で 求 め られ る。 γεを所 得 階 級 別

(5)

人 員 の百 分 比,9dを 低所 得 層 か ら累 積 した階 級 別 所 得 額 の百 分 比 とす る と, 2司̲Σ7巫 土 望包

10,000.

ジ ニ係数 を 測 定 法 と して選 択 した 理 由は,計 算 が 簡 単 で あ り,多 くの研 究

(6)

業 績 も ジ ニ係 数 を 用 い て い る とい う こ とだ け で は な い 。2,3の 積 極 的 理 由

(5)大 川 ・ 宇 田 川 編 『財 政 学 講 義 』(青 林 書 院,1969年).PP・101〜2.

(6)ロ ー レ ソ ツ 曲 線 か ら 幾 何 的 に ジ ニ 係 数 を 求 め る 方 法 に つ い て は,J・Mincer,

̀̀Applica七ionsofaNewGraphicMethodinStatisticalMeasurement

,"

∫ournalofAmericanStatisticalAssociati(m,voL52,no.280(Dec。1957),ま

た ロ ー レ ソ ツ 曲 線 の 応 用 に つ い て は,R・Schutz,"OntheMeasurementof

Incomelnequality,"American.Ebonomicj磁 吻 ω,voL41,no.1(March1951), pp.107‑22.お よ びG.B.Hainsworth,"TheLorenzCurveasaGeneralTool

ofEconomicAnalysis,"EconomicRRcord,voL40,n.o.91(Sept.1964),pp.426‑

41.

最 近 に お け る 英 米 の 所 得 分 布 の 研 究 に つ い て は,A・R・Thatcher,"The*

(11)

産業別給与所得分布の推移 と形態 39 も あ る 。 第1に,λ は ジ ニ集 中 指 数 δ と一 定 の 関 係 を も ち,ま た δ は パ レ ー ト分 布 が 妥 当 す る 範 囲 一 試 算 して み る と ,上 位 か ら20%以 内 で あ る が

は,パ レ ー ト係 数 α と も 一 定 の 関 係 を も っ て い る 。 した が っ て,λ,δ,α

(7)

は 理 論 的 には 一 定 の関 係 で 相 互 に転 換 で き る とい う利 点 が あ る。 た だ し,原 数 列 か らそれ ぞ れ 計 算 して み る と,必 ず しも理 論 的 な 関 係 を 満 た さ ない け れ

ど も。 第2に,所 得 分 布 の僅 か な 差 異 も敏 感 に反 応 す る点 で は,え と δは α よ り優 れ てい る。所 得分 布 は殆 どの場 合,正 の非 対 称分 布 を しめす ので,上 位 か ら累 積 す る よ りは 下 位 か ら累 積 す る え と δ の ほ うが 大 きな数 値 と して 現 われ 易 い。 第3に,均 等分 布線 を判 定 基 準 とす る7・は,個 人所 得 を独 立変

*Distril)utionofEarningsofEmployeesintheGreatBritain ,s'∫ournalof RoyalStatisticalSociety,SeriesA,no.131,Part2(1968),pp.133‑81.お よ びE.C.Budd,"PostwarChangesintheSizeDistributionoflncomein

theU.S∵'AmerioanEconomicReview,vol.60,no。2(May1970),pp.247‑61.

(7)パ レ ー ト分 布 は,Nをy以 上 の 所 得 階 級 に 属 す る 人 員,yを 階 級 別 所 得 ま た は 階 級 別1人 あ た り 所 得 と す る と,

N=Aダ α(1)

両 辺 の 対 数 を と る と,logN=logA一 αlogy・

ジ ニ 分 布 は,5を 高 所 得 層 か ら 累 積 し た 所 得 額,nをSに 対 応 す る 人 員 と す る と,

n・=(1/c)sδ (2) 両 辺 の 対 数 を と る と,109n=δIogS‑logC.

α と δ の 関 係 は ・ δ==

。lll‑i.

ジ ニ 方 程 式 に お い て,Σn・ ・N,Sを 総 所 得 額 と す る と 2>=(1/e)5δ

(2)を ㈲ で 除 し,@/1>)=x,(s/s)=2と す る と,

万=90

(3) (4) (4)式 が ロ ー レ ン ツ 曲 線 の 方 程 式 で あ る,こ の 曲 線 と均 等 分 布 線 に 囲 ま れ た 面 積 を μ と す る と,

λ は μ/(1/2)で あ る か ら,

μ一去一∫肋

ZiO

÷ ∫励

0 11

2δ 一←1.

λ=互 一 と

δ十1.

田 村 市 郎 「所 得 不 平 等 度 の 意 義 及 測 定 法 」 日 本 統 計 学 会 編 『国 民 所 得 と そ の 分 布 』(1944年),PP・186〜7.ま た,H,Dalton,"TheMeasurementofthe

InequalityofIncomes・"Eco7zomiclournal,vol・30(Sept・1920),PP・359‑60・

(12)

数 とす る社 会 厚 生 関 数 が 与 え られ,限 界 社 会 厚 生 の 逓 減 関 数 を 規 定 で き る な らば,え の 変 化 に よ っ て 社 会 厚 生 の 増 減 も判 定 で き る。 こ う した 性 質 は,も と も と所 得 分 布 の 測 定 が た ん に 分 布 を 現 わ す 方 程 式 を 検 索 し,そ の 当 て は め の 精 度 を 確 立 す る こ と よ り も,社 会 厚 生 の 分 布 と総 量 に ど の よ うに 関 連 す る か に,問 題 の 出 発 点 が あ っ た こ とを 想 起 す る な らば,測 定 法 と して 望 ま し い 厚 生 的 基 礎 を も っ て い る と い うべ きで あ ろ う。 こ う した 主 張 は,古 くは H・Daltonに よ り,ま た 新 し くはR.Bentze1に よ っ て 述 べ られ,さ らに D・J・AignerとA・J・Heinsは,社 会 厚 生 関 数 を 特 定 の 数 式 に 規 定 して , λ,δ,α な ど に よ る 所 得 平 等 度 の 適 用 範 囲 を 厚 生 関 数 の タ イ プに よ っ て 限 定

(8)

づ け て い る。 こ の よ うな 業 績 を 顧 る と,「 分 布 の 型 と 関 わ りの な い λ を 求 め て も,そ の 解 釈 に は難 点 が 伴 う」 とい う批 判 は 回 避 す る こ とが で き る。 も っ と も,λ に は,ロ ー レ ソ ツ曲 線 が 交 差 して も,同 じ数 値 が え られ る こ と が あ る。 こ の 欠 点 に は 十 分 承 知 して い な け れ ば な らな い 。

(9)

2.労 働 市 場 の 概 観

は じ め に,こ の15年 間 の 労 働 市 場 の 変 化 に つ い て 概 観 し て お こ う 。 (1)昭 和30〜34年.高 度 成 長 の 開 始 と 持 続 が,こ の 期 間 の 労 働 市 場 に 特 徴 を 与 え て い る 。 す な わ ち,国 民 総 支 出 に し め る 民 間 資 本 形 成 は 重 化 学 工 業 を 中 心 と し て 著 し く 増 加 し,さ ら に 軽 工 業,建 設 業,運 輸 通 信 業 へ と 波 及 し た 。 こ の た め 製 造 業 の 雇 用 が 増 加 す る と と も に 投 資 の 波 及 に よ っ て 建 設 業, 運 輸 通 信 業 に お い て も,さ ら に 卸 小 売 業,農 業 に も 影 響 を 与 え,労 働 市 場 の 規 模 が 拡 大 し た 。

若 年 人 口 は 増 加 し た が,進 学 率 の 急 上 昇 に よ っ て 中 学 卒 業 者 の 就 職 希 望 者 が 減 少 し は じ め た が,高 校 卒 業 者 の 求 人 難 ま で に は い た ら ず,若 年 労 働 力 人

(8)H.Da】ton,乃 掘.

R.Bentzel,"TheSocialSignificanceofIncomeDistributionStatis七ics,"

Review(ゾIncomeandレVealth,Series16,no.3(Sept.1970),PP.253‑64・

D.J.Aigner&A.J.Heins,"ASocialWelfareviewoftheMeasuremellt

ofIncomeEquality,)tゴ わ鼠,Series13,no.1(March1967),pp.12‑25。

(9)こ の 小 節 は,津 田 真 激r日 本 の 労 務 管 理 』(東 大 出 版 会,1970年),第4章 に よ

っ て い る.

(13)

産業別給与所得分布の推移 と形態 41 口の企 業 規 模 別 配 分 に は 顕著 な変 化 は現 わ れ て い な い。 一 方,農 業 で は就 業 者 数 の大 幅 な減 少 が み られ,農 村 を 出た 学 卒 者 は 製 造 業 に41%,サ ー ビス 業 に21%,卸 小 売 業 に18%な ど,い ぜ ん と して 第 三 次 産 業 に 雇 用 され る傾 向 が 強 か った。

大 企業 に おけ る労 使 関 係 は,新 規 雇 用 の若年 労働 力 を底 辺 と した ピラ ミ ッ ド型従 業 員年齢 構 成 に 支 え られ て,年 功 序 列賃 金 格 差 の完 成 を み せ た 。 こ う した 大企 業 の賃 金上 昇 は,ベ ース ・ア ップに よ る よ りも定 期 昇 給 制 に よ るほ うが大 きか った。

② 昭 和35〜40年.高 度 成 長 が 持 続 し前 期 と同 じ く労 働 需 要 は強 調 で あ った が,こ の期 に いた って 若 年 労働 力 の供 給不 足 が 生 じ,求 人倍 率 は中 ・高 卒 業 者 ともに3倍 を こえた 。雇 用 者 は この期 も製 造 業 と くに金 属 機 械 工 業 な

どを 中心 に 増加 し,し か も大 ・中 ・小 の どの企 業 規 模 で も増加 した 。

大 企 業 は 初任 給 の大 幅 な引上 げ を お こな い,学 卒 者 に つ い て は産 業 間 で 同 等 の水 準 に 達 した の で,30歳 まで の 年 齢 層 に つ い て は 規 模 的 賃 金 格 差 は 消 滅 す るに い た った。 中小 企 業 で は 中 ・高年 層 の雇 用が すす み,年 齢 別 構 成 に お け る規模 別相 異 が ほ乏 ん どな くな った。 中高 卒 者 の供給 不 足 とは逆 に,大 学 卒 業 者 の みが 一一 貫 して増 加 した の で職 員層 が 急 速 に ふ え,こ れ ま で大 学 卒 の 重要 な就 職 先 で あ った 第三 次 産 業 か ら,第 二 次産 業 へ の就 職 が ふ え,か つ 中小 企 業 の雇 用 が 目立 って きた 。

この時 期 の特 徴 と して,若 年 労働 力 の産 業 間 ・企 業 間移 動 が 激 し くな った こ とが あげ られ る。 これ は 全産 業 ・全 企 業 規模 に お け る若 年 労 働 力需 要 の強 調 を反 映 して生 じた こ とで あ るが,男 子 に つ い て は製 造 業 か ら建 設 業 ・運 輸 業 へ,女 子 に つ い て は卸 小 売 業 ・サ ー ビス業 間 の移 動 が 激 しか った。

(3)昭 和40年 代.30年 代 とは 質 的 に 異 な った労 働 市 場 の状 況 が 予想 され

る。1つ は 出生率 ・死 亡 率 が ともに 欧 米 水準 を下 回 わ り,人 口構 成 が高 齢 化

して い く一 般的 傾 向が あ る。 新 規 学 卒 者 の供 給 不 足 に ともな って企 業 間 で の

引抜 き,広 告 に よ る転職,女 子 労 働 力 の大幅 な参 加 が い まや 常態 とな りつ つ

あ る。 こ う した状 況 の な かで,30年 代 末 まで に 解 消 して きた30歳 以下 の規

(14)

模 別 賃 金格 差 は,30歳 以上 の格 差 縮 小 に 引 きつづ い て い くと ともに,そ れ 以下 の年齢 層 で は賃 金上 昇 率 が 相 対 的 に鈍 化 しは じめ,若 年 層 の規 模 別 格 差

(10)

が 拡 大 す る 傾 向 を み せ は じめ て い る 。 3.産 業 別 給 与 所 得 分 布 の 特 徴

こ の よ う な 労 働 市 場 の 推 移 の な か で,給 与 所 得 者1年 以 上 勤 続 者 に つ い て の ジ ニ 係 数 は,つ ぎ の グ ラ フ の よ うな 動 き を た ど っ て い る(別 表1参 照)。 こ の15年 間 の 動 きを み る と,つ ぎ の よ うな 諸 傾 向 が 見 出 さ れ る。

(1)所 得 分 布 の 平 等 化 傾 向.全 産 業 の 係 数 に 代 表 され る よ うに,給 与 所 得 者 の所 得 分 布 は,32〜34年 に い た る ま で 不 平 等 化 して い た が,そ れ 以 後 は 平 等 化 の 傾 向 を しめ して い る。 第4表 は 別 表1の ジ ニ 係 数 か ら,産 業 別 の 傾 向 線,λ の 平 均 値(λ),そ の 標 準 偏 差(σ)お よ び 変 動 幅(Range)を 求 め, そ れ を ま とめ た も の で あ る。 グ ラ フ の 観 察 を 裏 づ け る よ うに,傾 向 線 の 年 あ た り変 化 係 数 は す べ て マ イ ナ ス で,平 等 化 傾 向 を しめ して い る。30〜34年 の 不 平 等 化 は 見 逃 す わ け に い か な い が,15年 の な か で は2の 上 昇 は0.02程

第4表 ジ ニ 係 数 の トレ ン ド,平 均,標 準 偏 差 お よ び 変 動 幅

傾 向 線 一λ

業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 他 産∵ 鉱 嚥

全 農 鉱 建 繊 化 金 そ 卸 金 運 サ

20==0.4325‑‑0.0070t

、 〜1==0,3810‑0.0043t λ2==0.2959‑0.0030t え3==0.3606‑0.0035t R4=・0。3829‑0。0033t

2,s==0.4104‑0.0067t A6=0.3734‑0.0045t Z7==0.4162‑0.0058t λ8==0.4232‑・0.0049t 2g==0.4181‑0.0055t RiO==0.3238‑0.0056t λエ1==0.4014‑0.0037t

O.3761 0.3569 0.2722 0.3325 0.3562 0.3569 0.3374 0.3672 0.3837 0.3728 0.2786

σ

0.0357 0.0268 0.0215 0.0187 0.0223 0.0322 0.0279 0.0272 0.0246 0.0273 0.0268

・・37171…2・9

Range 0.0959 0.0904 0.0848 0.0663 0.0860 0.1094 0.0939 0.0872 0.0705 0,0984 0.0912 0.0699

⑳ 東 英 夫 ・北 沢敏男 「賃金構 造にみ られ る最近 の変化 の特徴 とその背景」 西

川俊 作編 『労働 市場』(日 本経済新 聞社,1971年),

(15)

44↓ λ 玉

4242 4040

36

3232 30 28 2626 2424 2222

%%

λ 4242

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38

36

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1双)3し)

28

2626

24211

22

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産業別給与所得分布の推移 と形態 ジ ニ 係 数 の 推 移(一 年以上勤続者)

λ

一 一

、lill・032343638404244ilii3・323t4,・638・ ・12・"

43

↑一一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 」L一 一 一 一 一 一 一̲一̲一 一 一 一̲

獅32343638404244焔30323・ ・136384042U

(16)

度 で あ るの に た い し,低 下 の 幅 は0.1に も達 す る。

平 等 化 傾 向が も っ とも著 しい産 業 は,化 学工 業,金 融 保 険業,金 属 機 械 工 業,運 輸通 信 公 益 業 であ る。 これ は 傾 向線 の係 数 の大 きさお よび レンジ の大 小 を産 業別 に順 位 づ け てみ た 結果 に よ る。 男女 別,学 歴,年 功,事 務 系 ・労 務 系,資 本 集約 度,企 業 規 模 の相 異 な ど,異 質 な 労働 者 集 団 の特 性 をす べ て 無 視 した うえ で,こ れ らの産 業 の λが9%以 上 も 低 下 して い る のは 注 目す べ き傾 向 とい え る で あ ろ う。

この よ うな平 等 化傾 向は,30年 代前 半 に おけ る設 備 投 資 の 増 加 と労 働 市 場 の ス ケ ール の拡 大 に よっ て,若 年 労働 者 の雇 用 が ふ え,低 所 得 グル ー プが ふ え た こ と,後 半 に いた って これ らの グル ー プが 中所 得 層 に シ フ トし,そ の人 員 比 と所 得 比 とが 大 き くな った こ と,ま た この期 に は 若 年 労働 者 の供 給 不 足 に よ って低 所 得 層 の給 与 上 昇 率 が 高所 得 層 のそ れ を上 回 わ った こ とな どに よ

る もの とみ られ る。 新 規 参 入 者 の コホ ー トが 毎 年 同 じ規 模 で あ るな らば,年 功 序 列 型賃 金 体 系 に よって 分 布 係数 は,ほ ぼ 同 じに な った であ ろ うが,コ ホ

ー ト構 成 が変 化 した こ と,な らび に賃 金 上 昇に よ って,上 記 の よ うな 傾 向を 生 じた もの といえ る。

② 分 布 係数 の産 業 間 格 差.低 下 傾 向 の大 小 を無 視 して,産 業 間 の λの レベ ル を 比較 して み る と,平 均 的 に 平 等水 準 の 高 い産 業 と 低 い産 業 とが あ る。 グ ラフで もわ か る よ うに,低 位 置 に あ って平 等 水 準 が 高 い の は,鉱 業, 運 輸 通 信公 益 業 で あ る。 この2産 業 は 第4表 の λ お よび 傾 向線 の定 数 項 の 数値 を み て も著 し く小 さ い。 逆 に,平 等 水準 が 低 い のは,金 融 保険 業,そ の 他 製 造 業,卸 小 売 業,サ ー ビス業 そ の他 の第 三 次 産 業 で あ る。 繊 維 工 業,化 学工 業 お よび 金属 機 械 工 業 の3つ の製 造 業 は,平 等 水 準 か らみ る とほ ぼ 同等 な 地 位 に あ る。

産 業 間 に み られ る平 等 水 準 の差 異 は,産 業別 労 働 力 構 成 の本 質 的 相 異 に根

ざ して い る よ うで あ る。 この点 に つ い て,早 川 三 代 治 教 授 は 「同 じ工 業 内 の

男 女 工 別賃 金統 計 に よる と,男 子工 員 の賃 金分 布 曲線 は丘 が低 く,そ の裾 も

な だ らか で,正 規 分 布に 近 い形 を しめす の にた い して,女 子工 員 の賃 金分 布

(17)

産業別給与所得分布の推移 と形態 45 は 峰 が 高 く,そ の分 布 範 囲 も狭 く男 子工 員 の2分 の1ぐ らい で あ る。 男女 工 員 の賃 金 を 合成 した 分 布 が 正 の 非対 称 度 を しめす のは 女工 賃 金 の 非対 称 で あ

(11)

る 。」 と指 摘 して い る。 そ こ で 男 女 労 働 者 の 賃 金 別 人 員 分 布 に よ っ て,こ の 命 題 を 確 め て み よ う。 第5表 に よ る と,観 察 さ れ た4年 に つ い て,男 女 労 働 者 い ず れ の 賃 金 の 分 散 も狭 ま っ て は い るが,女 子 労 働 者 の 賃 金 分 散 は 男 子 よ

り狭 く,し か も歪 度 が 大 き い 。 と くに36年 に お け る歪 度 は0.20を しめ し,

第5表 賃 金階級別 労働者構成比 と特性値

(調査産業 計,企 業規模 計,%)

定 期 給 与 額

1全 労 働 者

136年139卸2年143年136年i39年i42年;43年136年13・ 年14・年143年

男 子 労 働 者 女 子 労 働 者

〜9 ,999円 10,000〜19,999

20,000〜29,999 30,000〜39,999 40,000〜49,999 50,∞0〜59,999 60,000〜69,999 70,000円 〜

ll

ilOO.100.1100.100

22.3 38,3 21.6 10.2 4.2 1.8 0.8 0.8

4.71.110.48.92.O

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1.95.3i8.斗1.lii.6

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100.100.

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第 一 ・扮 位(Q、)千 円1・.51i5.5 中 位 数 働 〃li6・5i23・ ・ 第 三 ・4分 位(Q3)〃25.8:34.8

分 散 係 数0.93'0.82 歪 度(Sk)0.220.18

(1)特 性 値 は.賃 金 階 級23区 分 よ り算 出.

(・)分散係数一竪 (・)&一 輿 轟i並

(4)

21.1{25.4114.3【20.Sl28.434.617.7 31.3137.8121。 。 、9.139.,14,.49.7 46.755.9』9.gS39.55・ ・1「62・912.7

郷lll:lll:1招:lll:lll:i6

11.7 14.5 18.0 0.43 0.11

2.33,8

1.011.7   Q.4iO.7

闘1161

16.019.4 19.623.61 24・fl29・0 0.4210.41

・・141・ ・13

『賃 金 構 造 基 本 統 計 調 査 報 告 』,昭 和43年,第1巻,P・71.

(ID「 賃 銀 の 分 布 に 関 す る ノ ー ト」 『商 学 討 究 』 第1巻1号(1950年11月).p・1。

レ パ ー ゴ ッ ト も,25歳 か ら64歳 ま で の 通 年 男 子 雇 用 者 に つ い て,そ の 所 得 分 布 が 正 規 分 布 に 近 い こ と を 見 出 し て い る.(:f'S・Lebergott,"TheShapeof

theIncomeDistribution,"AmericanEcomomicReview,vo1.49(June1959),

pp.340‑1,

(18)

39年 に は0.11に 低 下 して 男子 労働 者 の歪 度 に近 づ いた が,そ の後 再 び正 の 非対 称 度 を強 め て い る。 男女 を 合 わせ た 全 労 働 者 は,早 川 教 授 ⑳ 指摘 の よ う に広 い分 散 と大 きな歪 度 を表 わ して い る。

女 子 労 働 者 の賃 金 分 布 が,こ の よ うな性 質 を もつ とす れば,女 子 労 働 者 を 多 く雇 用 す る産 業 で は 必然 的 に平 等 水 準 の低 下 が 予 想 され る。 第6表 は 「賃 金構 造 調 査 」 の うち,サ ン プル数 を 増加 した4つ の年 に お け る女 子 労 働 者 の 比 率 を しめ した もの で あ る。 全産 業 で は次 第 に女 子 比率 が 高 ま ってい く傾 向 が み られ るが,構 造的 に女 子 労 働 者 の多 い産 業 は繊 維工 業,金 融 保険 業,卸 小売 業 で あ り,繊 維 を 除 い た2産 業 は平 等 水 準 の低 い産 業 で あ る。 繊 維 工 業 は"女 性 産 業"と もい え るほ どで あ るが,金 融 保 険,卸 小 売 よ りも平 等 水 準 は 低 くは な い。 これ は女子 労 働 者賃 金分 布 の歪 度 と狭 い分 散 とい う性 質 が あ った と して も,低 い給 与 水準 で分 布 は平 等 化 し,30%の 男子 労 働 がか りに 高 い給 与 と正 規 分 布 に近 い形 を も った と して も,女 子賃 金 の集 中度 を破 る こ と は で きなか った 結果 とみ る こ とが で き よ う。

これ とは逆 に"男 性 産 業"の 代 表 は鉱 業,運 輸 通信 公益 業 で あ る。 これ に近 い のが 建 設 業 で あ るが,前2者 が平 等水 準 が 高 い のは 男 子賃 金 の分 布 が 中所 得 層 に集 中 し,10〜13%の 女 子 人 員 を も って して も,男 子賃 金 の平 等 水 準 を 引 き下 げ る こ とが で きな か った 結果 で あ る。 建 設 業 は女 子 労 働者 比 率 が

第6表 女 子 労 働 者 比 率 (%)

33年 36年 39年 42年

業 業 業 業 業 業 業 業

工 険 エ エ 械 売

産 設 保

維 学 機 小 属 融

全 鉱 建 繊 化 金 卸 金

運 輸 通 信 公 益 業

28.0

9.3

10.4・

70.9

29.2

17.1

34.9

36.7

13.1

29.8 9.5 12.2 71.7 30.0 20.2 37.3 斗2.O l3.6

30.2 12。2 13.0 71.3 29.5 20.5 38.6 45.3 13.8

31。4

10.4

15.4

69.9

29.5

22.0

40.5

48。6

13.1

(19)

産業別給 与所得分布の推移 と形態 47 小 さい に もか かわ らず 平 等 水 準 が低 い。 高 度 成長 経 済 の なか で 雇 用 成長 率 が 変 動 を伴 い な が らも 年 率14%を しめ した のは この建 設 業 で あ るが,こ の反 面,1年 未 満 勤 続 者 の割 合 が11産 業 の な か で も っ と も高 い の も 建 設 業 で あ る。退 職 ・転 職 ・帰 休 な どに よ って1年 以 内 に建 設業 を去 り,ま た新 規 に 参 入 して,建 設 業 に携 わ る者 は勤 務 者 全体 の20〜25%に 達 す る。 この 現 象 は 30〜35年 に か け て強 く現 わ れ,32年 に は30%に も達 して い る。 免 税 点 以上 の 給与 所 得 者 に して この移 動 率 で あ る。 女 子 が 多 い繊 維 工 業 で さえ移 動 率 は 年 平 均23%以 下 で あ り,金 融 保 険 業 で は17%以 下 で あ る。 この よ うに 高 い 移動 率が 男子 労 働 者 の 多 い産 業 に み られ る のは,建 設 業 に お け る未 熟 練 労 働 者 の集 合離 散 を 物 語 る もの で は な か ろ うか 。 男子 が 多 い に もか か わ らず,平

等水 準 が 低 い のは,未 熟 練 労 働 者 の大 量雇 用 とそ の 高 い移 動 率 で あ ろ う。

化 学 工 業,金 融 機 械 工業 は"男 性 的産 業"で あ る。 化 学 工 業 に は ゴム製 品製 造 業 の よ うに 女 子 比率4L2%(42年)と い う産 業 もふ くん で い るが,化 学 工 業 全 体 の な か で この女 子 の ウエ イ トは 小 さ い。 金 属 機 械 工 業 に は鉄 鋼 業 の よ うに9.3%と い う"男 性 産 業"も あ れ ば,電 気 通 信 機 械 器 具 製 造業 の よ うに39.5%と い う"女 性 的産 業"も あ る。"男 性産 業"と"女 性 的産 業"を ふ くむ 金 属 機 械 工業 で は,全 体 と して 女 子比 率 の上 昇 傾 向 もみ られ る。 しか しこれ まで の と ころ これ らの産業 の 平等 水準 に は顕 著 な特 色 は み ら れ な い よ うに 思 う。

③ 平 均給 与所 得 格 差 と分 布 係 数 第7表 は 別 表2に も とつ い て,各 年 と も全 産 業 を100と す る産 業 別 平 均 給 与所 得 の指数 を表 わ した もので あ る。

民給 所 得 の増 加 率が も っ と も 高 か った36年 に は,産 業 間 格 差 が む しろ縮 小 して い る こ とが わ か る。 この な か で どの 年 も最 高 の 水準 を しめ してい るの は 金融 保 険 業 で あ る。 前 述 の よ うに,こ の 産業 は女 子 比率 が 高 く しか も平 等 水 準 が低 い。平 均 給 与 の 格段 の高 さ と所 得分 布 の特 性 は,ど の よ うに 結 びつ く

の で あ ろ うか 。 金融 保 険 業 で は企 業 規ec1,000人 以上 の大 企 業 に76%(42年)

の 労働 者 が集 中す る。 この76%の な か の 男子 労 働 者 の所 定 月給 は 女 子 の1.6

倍,年 賞与 は2.7倍(男 子月給の5.3ヵ 月分)に な る。 この数 字 を 掲 げ た だ け

(20)

第7表 平 給 給 与 指 数

1955 1958 1961 1964 1967 1969

轟麟 鉱 業撫i讐1灘 畢 蟻1繋 韓 灘幾

1…8176・3レS・gl127・gi1・8・57・ ・6

… 一 一

1‑■ 一,‑

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198・673・1iU・51125・4'107・169・5

93・7170・6i73・71111・ 197.468.9

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で も,金 融 保 険 業 に 参 加 して い る 男子 労 働 者 は,女 子 労 働 者 とは隔 絶 した

「無 競 争 集 団」 を つ くってい る とい え そ うで あ る。

金融 保 険業 につ いで 平 均給 与 が 高 い の は運 輸 通 信 公益 業 で あ る。 この産 業 は 男 子比 率 が 高 く平 等 水準 も高 いが,1年 以 上 勤続 者 の 増加 率 は年 率5.5%o 程 度 で あ って 決 して 高 くは な い。 雇 用 増 加 率 が 比較 的低 位 に止 まって い た こ

とに つ い ては,資 本 集約 度 の大 き さが 影 響 を もつ とい われ て い る。 資 本集 約 度 の大 きい産 業 ほ ど雇 用 増加 率 が 低 く,小 さい産 業 ほ ど高 い。 建設 業,卸 小 売 業,サ ー ビス業 な どは後 者 の ケー スで あ る。 運 輸 通 信 公益 業 の よ うに資 本 集 約度 が 高 く,雇 用 増 加 率 が小 さけ れば,新 規 参 入 者 が つ く り出す 低 所 得 グ ル ー プは,平 等 水 準 に は 比較 的小 さな ウエ イ トしか 与 え な い。 しか も,こ の 産 業 で は企 業 規 模1,000人 以上 に36.3%e,500人 〜999人 に10.1%o,100人

〜499人 に28 .4%,30人 〜99人 に12.4%,30人 未 満に12.7%(43年)と,

大 企 業 と中企 業 の2極 集 中的 雇 用 者 配 分 が 特 徴 で あ る。 女 子 比 率 が 小 さい こ と と相 ま って,平 均 給与 で は第2位 を維 持 し,所 得 分 布 の平 等 水 準 も高 い。

おそ ら く,変 動 係数 に よ って分 布 を表 わ した な らば,運 輸 通 信 公益 業 が 平 等 水 準 で は 第1位 に な った で あ ろ うと思 わ れ る。

雇 用 増 加 率 が低 く,平 均 給 与 も低 い方 で は な く,雇 用 者 分 布 は大 企 業 に 集

中 して しか も平 等 水 準 が 高 い例 は,鉱 業 で あ る。 鉱 業 で は1年 以上 勤続 者 の

年 あ た り増加 率 は,マ イナ ス7%で あ る。 小 規模 企 業 が 整 理 され1,000人 以

上 の企 業 に58%の 人 員が 集 中す る。 鉱 業 に 止 ま った者 は,就 業 の限 界純 利

(21)

産業別給与所得分布の推移 と形態 49 益 が 他 産 業 よ り高 くな った か らこそ 止 ま りえ た の で あ るか ら,同 経 験,同 学 歴 の 男 子労 働 者 で あ れ ば平 均 給 与 が 高 い の は 当然 で あ る。 衰 退 産 業 ほ ど限 界 条 件 が 去 就 を左 右 す る効 果 は 強 い と考 え られ る。

以上 とは逆 に,平 均給 与 が つ ね に 最 下位 な の は繊 維 工 業 で あ る。前 述 の通 り,高 い 女子 比 率 が この結 果 を もた ら して い る と思 われ るが,給 与水 準 の高 低 と企 業 規模 別 雇 用者 配 分 は この産 業 に は あ ま り説 得 力 を もた な い。 な るほ ど繊 維工 業 で は30人 未 満 の 小企 業 に30%の 雇 用者 が 働 い ては い るが,小 企 業 集 中 一低平 均 給 与 水 準 とは い えな い。 なぜ な ら,卸 小売 業 で は 同規 模 の企 業 に52.6%も 集 中 して お りなが ら,平 均 給 与 で は繊 維工 業 を上 回 っ て い る か らで あ る。 卸 小 売 業 の平均 給 与 が繊 維 工 業 を上 回 り,平 等水 準 が や や 劣 る の は,男 子労 働 者 の比 率 の 高 さが 一・ 因で あ ろ うと思 われ る。

この ほ か の産 業 に おけ る平 均 給 与 水 準 と平 均 水 準 との関 係 に つ い ては,あ ま りは っ き り した こ とは わ か って い な い。 た だ上 述 の産 業 に つ い て いえ る こ とは,平 均 給 与 と 平 等 水 準 とは 共 変 関 係 を しめ さな い こ とだけ は 確 か で あ る。 む しろ分 散 と歪 度 とが問 題 で あ ろ うが,そ れ らを と って も各 産 業 の所 得 分 布 の特 徴を つ く り出 して い る要 因 は,決 して一 率 で は な さそ うで あ る。

W残 さ れ た 問 題

高 度 成 長過 程 の な か で,そ れ を 支 え て きた 雇 用労 働 者 の所 得 水 準 は,た し か に 上 昇 し産 業 内 で の 所 得 分 布 も 平 等 化 が み られ た。 しか し 産 業 別 にみ る

と,平 均 給 与 の格 差 は縮 小 しつ つ あ る とは い え いぜ ん と して残 って お り,平 等 水 準 も産業 的 特 性 を反 映 して 高 低 の差 は解 消 して い な い。 われ わ れ は この 存 在 理 由を あ ま りに 男女 労 働 者 比 率 に お きす ぎた か も しれ な い。 しか し,わ が 国 の雇 用慣 習 は 男女 両 グル ー プを 異 質的 な労 働 力 と して 扱 うこ とが 多 か っ た こと も事実 で あ る。 所 得 分 布 の理 論 そ の ものが,多 くの仮 説 に満 た され て は い る もの の,い まだ 多 くを承 認 せ しめ るもの の な い現 状 で は,以 上 の要 因 も単 純 で はあ るが 無 視 しえ な い よ うに思 う。

た だ 本 稿 で扱 った 方 法 は,産 業 別 とは い え労 働 者 の 性別 所 得 分 布 をそ れ ぞ

(22)

れ 分 離 して は い な い し,経 験,学 歴,労 務 系 ・事 務 系 の区別 もお こな っ て い な い。 これ らの特 性 を共 通 に した うえ で,な お,産 業 別 に所 得 分 布 の差 が 認 め られ るか ど うか は,今 後 の検 討 に また なけ れ ば な らな い。

さ らに 企業 規模,資 本 集 約 度 の相 異が,労 働 者 の所得 分 布 に どの よ うな影 響 を与 えて い るか,本 稿 で は2,3の 産 業 につ い て,そ れ に ふ れ た と ころ も あ るが,い まだ一 般 化 の域 に は 達 して い な い。 ま った く考 慮 の外 に おい た の は,教 育 の 普 及 と所 得 分 布 の関 係 で あ る。 教 育 の効 果 は,こ こで対 象 と した 15年 間 で は 扱 い切 れ な い 長 期 的影 響 力 を もつ もの と思 われ,こ の期 間 内 で は進 学 率 の上 昇 と新 規学 卒 者 の供 給不 足 に よ る若 年 労働 者 の賃 金格 差 の解 消 だ け が表 面 化 した 影 響 力 で あ った 。 本稿 は 以上 の諸 問題 を発 見 しなが ら,産 業 別 給 与所 得 分 布 の推 移 とそ の形 態 の摘 出に 終 始 した。

(1971.8.15)

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(23)

産業別給与所得分布の推移 と形態 51

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参照

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