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尖閣列島黄尾礁の火山岩

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松本征夫・野原朝秀

(昭和49年9月30日受理)

The volcanic rocks of the Kobi‑sho in the Senkaku‑retto

Yukio MATSUMOTO and Asahide NOHARA

(Abstract)

The results of the geological and petrological study of the basaltic rocks from Kobi‑sho in the senkaku‑retto, are summarized as follows.

1. The Kobi‑sho volcano is an insular volcano with a few of perfect craters consisting of stratovolcano. The activities of this volcano may be in Pleistocene time.

2. Essential constituent minerals are olivine, augite and plagioclase phenocrysts or micro‑

phenocrysts and in addition to these minerals, the groundmass anorthoclase and magnetite and glass. They are augite olivine basalt, and mafic mineral assemblages of these basaltic rocks

belong to IVb or IVb→c type.

3. Their chemieal and normative mineral compositions are shown in Table 1. Generally, they are rich in CaO, while poor in Al2O3 and TiO2 (Fig. 3). These basalts contain 0.84〜

‑0.24% of normative quartz. In the alumina‑total alkalies‑silica relation diagram, they are plotted in the area of alkali basalt area. Alkali content of these basalts are intermediate between KUNO's high‑alkali tholeiite and alkali rock in the total alkaies and silica diagram (Fig. 4). Other petrochemical characters of these basalts are shown in the normative or‑ab‑an, wo‑en‑fs, wo‑fo‑Q, Q‑fo‑fa and MgO‑(FeO+Fe2O3)‑(Na2O+K2O) diagrams.

I まえがき

尖閣列島は,尖閣群島あるいは尖閣諸島などと呼称された報告もあるが,ここでは黒岩(19 00)にしたがって「尖閣列島」の名称を用いることにする。

尖閣列島は南西諸島の西端にあって,八重山群島の石垣市の北北西約150数kmに位置して おり,東径123028′〜124034′,北緯25044′〜25056′の範囲に点在する島々である。本列島は魚 釣島,北小島,南小島,黄尾礁(久場島),赤尾礁(大正島)の各島と,沖の北岩,沖の南岩,

*日本火山学会1973年秋季大会にて講演発表(1973年10月24日,於棒名火山)

**長崎大学教養部地学教室

***琉球大学教養部地学教室

(2)

22 松本荏夫・野原朝秀

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第1図尖閣列島黄尾礁位置図

(Index map of the Kobi‑sho)

飛瀬などの岩礁からなっている。尖閣列島の総面積は,約6.3km2であり,最大の島は魚釣島 で約3.6km2の面積を有し,小論で述べる黄尾礁は, 1.08km2の面積を有している。

筆者の1人松本は1963年に八重山群島の西表島および鳩間島の学術調査をなし,その折か ら,八重山群島の北方に点在する無人島の尖閣列島の調査の必要性を痛感していた。幸に1970 年12月‑15日の10日間,長崎大学,九州大学の両探検部合同で,尖閣列島の魚釣島,北小 良,南小島の調査を実施することができ,その結果については,すでに公表している(松本・

近, 1973)<

小論で述べようとする黄尾礁は,尖閣列島中の唯一の火山島である。本島は尖閣列島の地質 構造区分を考察する上からも,琉球弧に沿う火山としてきわめて重要な位置に存在している。

それにもかゝわらず,きわめて交通の便が悪いために,いままでに火山学的調査は全く行なわ れていない。そのような火山島であるだけに1970年の調査の折に,黄尾礁の上陸調査も計画

していたのであるが,荒天にあわせて上陸許可も得られず,ついに黄尾礁の調査は断念せざる を得なかった。筆者の1人野原は,松本らの調査にわずかにおくれて1971年3月に琉球大学 尖閣列島調査隊の一員として本列島の調査をなし,その概要についてはすでに報告している

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(野原, 1971)。その折,幸に黄尾漁にも上陸することができ,本島の横断と若干の観察をす ることができた。

黄尾故の火山岩石学的研究は,本島の火山岩石区,または地質構造区分を考察する上に,負 重な資料を提供するものと確信する。本篇では,上記の黄尾族の調査結果と火山岩の室内研究 の結果についてのべる。したがって,本島の調査は野原であり,野原の採集した火山岩を検討

したのは松本である。また本篇の執筆は松本が担当した。

本篇を等するにあたって,岩石の化学分析の労をとられた九州大学石橋澄博士にお礼申し上 げる。また,種々便宜をいたゞいた琉球大学高良鉄夫教授,ならびに調査隊のメンバー各位に 感謝する。

なお,本研究に要した費用の一部は文部省科学研究費を使用した。記して当局に感謝する。

Ⅱ黄尾礁の火山学的位置

黄尾旗は,別名久場島またはユンクとも呼ばれた。この黄尾礁は東径123‑41′,北緯25‑56′

に位置しており,東西約Ikm,南北約Ikm,島の周囲約3.49km,面積1.08km2を有し,は ゞ円形の島である(第2図)。海岸線の屈曲は少なく,一般的に断崖絶壁をなしている。島は

第2図黄尾礁地形図と岩石標本採集地点(Nos. 1‑5)

(Topographic map of the Kobi‑sho and locality

of sample (Nos. 1‑5))

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24 松本従夫・野原朝秀

緩傾斜の円錐状の火山形態を示している。中央部には千歳山があり,標高118mの円錐丘であ る。その他2, 3の小円錐丘が存在する。千歳山頂上や,その他数個の小火口跡が存在する。

これらを一括して黄尾礁火山と呼ぶことにする。

黄尾礁火山に近接した火山島は,現在全く存在しない。しかしながら,尖閣列島の周辺にい くつかの火山活動が知られている。すなわち,八重山群島付近から,台湾の東方‑北方の海域 において,海底噴火の記録が残されており,これらを列記すれば次の通りである(Kuno,

1962)。

No.北緯東径

1 240 121050 ∫

2 〟 〟

3 25025 ′ 122‑20 ∫

4 26011! 122‑27!30〝

24‑34 ′ 125056 !

年月日備考 1853.10.29海底噴火 1854. 1海底噴火 1867海底噴火 1916. 4.18海底噴火

1925.10.31海底噴火,火山礫・軽石噴出 以上のような海底噴火(submarine eruption)が知られているが,これらの詳細は不明のま まである。したがって,この黄尾礁と密接な関係をもっ火山はあきらかではないが,大局的に 見れば,これらの火山現象や黄尾礁は,琉球弧に沿う火山と考えてよさそうである。

琉球列島は云うまでもなく弧状列島であるが,琉球列島とその周辺は,小西(1965)が論じ たように,東海陸棚区,琉球海盆区(琉球後背海盆区),古期琉球火山岩区,琉球火山帯区, 琉球地背斜区,琉球海溝区と帯状区分ができる。

この中で,古期琉球火山岩区と琉球火山帯区の両者は,前者がやゝ内側(西北側)の位置を 占める傾向があるが,部分的にはほとんど同列上にのる。こゝに位置する火山で,火山形態を 良く保存して,第四紀中でも比較的新しい火山を列記すれば次の通りである。阿蘇,加久藩, 姶良,阿多,鬼界の各カルデラを始めとして,九州本島では,阿蘇中央火口丘,霧島火山,桜 島,開聞岳火山の各火山である。さらに,硫黄島,口永良部島から,トカラ列島の口之島,中 之島,諏訪之瀬島,悪石島,上之根島,横当島と追跡され,さらに沖縄烏島に至る。沖縄鳥島 から西南方に火山は一時中断するかの如く,八重山群島西表島北東方約25km (北緯24034′, 東径125056′)の海底噴火が知られているのみである。諏訪(1968)も沖縄島島以西の琉球列 島では琉球火山帯の追跡が困難であることを報告している。

黄尾礁火山は,琉球火山帯区〜古期琉球火山岩区の内側(北西側)の琉球海盆区を距てて, 海深200m以浅の平坦な地形で特徴ずけられる東海陸棚区の外縁部に位置している。琉球海盆 は1,000‑2,000mの海深を有し,最深部は2,159mにおよんでいる。尖閣列島の魚釣島,北小 島,西小島の地質は,おそらく新第三紀中新世の砂岩を主とする魚釣島層と,これに対して近 大関係にある角閃石閃緑岩質扮岩などからなる(松本・辻, 1973)c

このような地質と,その構造的位置から,小西(1966)は,琉球地背斜区に露出する地質区 に属せしめずに,さらに内側の新生代後期火山岩区として,例えば中部九州西端の離島部の地

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質区のアルカリ岩石区に比較されるものとして論じている。これは九州において,五島列島に 比較して論じていると考えられる。一方,これに対して黄尾礁の火山を,前述の琉球火山帯に

属せしめて,この火山帯を沖縄烏島から黄尾礁,さらに台湾の彰佳喚(Pengchiahsu),大屯 (Tatun)火山に至るものとする意見もある。

Ⅲ火山地質概説

黄尾礁の地質に関しては,古く明治33年宮島(1900)が玄武岩と報告しており,また恒藤 (1910)が,全島悉く玄武岩からなり,地表は,その溶岩流と玄武岩の噴出物で蔽われている と報告している。また正木(1941)は,黄尾礁は火山島で,全島溶岩からなり,頂上に旧噴火 口が存在することを報告しているが,岩石名は記されていない。

黄尾礁は数個の旧噴火口を有する火山島であり,岩石は普通輝石かんらん石玄武岩の溶岩流 および同質の抽出物からなる。島の形態と若干の観察から判断すると,円錐状の本島中央部付 近からの噴火のくり返しによって,溶岩流と火山抽出物を噴出し,傾斜の緩い成層火山を形成 したものであろう。さらに黄尾礁の火山活動末期には,千歳山頂上部の噴火口および中腹の噴 火口からの噴火によって,火山弾および岩淳を周辺に抽出せしめたものと推定される。

頂上部の旧噴火口は,現在直径約40m,深さ20mである。島の中腹にある旧噴火口は,直径 15‑20m,深さ10m程度である。なお,黄尾礁は米海軍の標的目標として軍事訓練に使用され ていたために,噴火口状の小さな凹地がいくつか見られるが,これらは貧弱な植物相と,弾の 破片の存在によって,噴火口であるか,弾痕であるか容易に区別することができる。以上の噴 火口の保存状態などから,黄尾礁火山は更新世のある時期に形成されたものと推定される。

Ⅳ黄尾礁の岩石記載

黄尾礁において,この火山を構成する溶岩流から,第2図に示したように5地点(Nos.1 5)から,それぞれ岩石標本を採集した。これらの岩石について記載する。

これらは,何れも普通輝石かんらん石玄武岩である。肉眼的には黒色〜灰黒色〜黒褐色,酸 化した部分は赤褐色を示し,やゝ多斑品質の中粒の斑晶質岩であり,またしばしば多孔質にな っている。

鏡下では,斑晶として斜長石,かんらん石,普通輝石を認める。石基は問粒状組織を示し, 斜長石,アノーソクレース,かんらん石,普通輝石,磁鉄鉱,チタン鉄鉱およびガラスからな

る。

かんらん石:斑晶かんらん石は,ふつう1mm以下であるが,極めて稀に最大4mmに達す る。一般に短柱状の自形〜半白形を示すが,しばしば融食されて丸味を有したものや,湾入部 をもったものを認める。また,かんらん石はしばしばイデインダス石化している。包有物と

して,磁鉄鉱粒を含む。斑晶かんらん石の光軸角は2Vx‑93‑‑83‑を示し, POLDERVAART

(6)

26 松本橿夫・野原朝秀

(1950)の図によれば,成分はFo93‑Fo73 (Mol. %)で, forstente‑chrysohteに属す る。かんらん石の周縁部には単斜輝石の反応縁を有するものと,有しないもののそれぞれが認 められる。これは溶岩流の場所の違いによって,そのそれぞれがあることも推定されるが,さ らに重要なことは,一枚の薄片の中で,単斜輝石の反応縁を有するかんらん石と,これを有し ないかんらん石の両者が存在することである。石基中のかんらん石の光軸角は2Vx‑i 820を示し, Fo83‑Fo71 (Mol. %) (Poldervaart, 1950による)であり, chrysoliteに属 する。

普通輝石:斑晶普通輝石は,ふつう1.5‑0.5mmで,最大2.2mmに達する。一般に短柱状自 形‑半白形を示す。双晶はしばしば認められ, (100)を双晶面としている。累帯構造も認めら れ,包有物は磁鉄鉱粒,斜長石などである。光軸角は2Vz‑53‑‑460,屈折率はβ‑1.681' 1.689であり, Hess (1949)の図によれば,推定平均成分はWo40En48Fsl2 (Mol. %)であ

り, diopsidic augiteに属する。石基中の普通輝石の光軸角は2Vz‑510‑450,屈折率は β‑1.688‑1.698で,推定平均成分はWo39En4lFs20 (Mol. %) (Hess, 1949による)であ

り, augiteに属する。

斜良石:斑晶斜長石はふつう2‑0.5mm,最大2.5mmに達する。一般に長柱状〜短柱状の 自形〜半白形を示す。双晶は,アルバイト式,アルバイト・カルルスパッド式,ペリクリン式 等である。累帯構造は顕著に認められ,包有物として,燐灰石,褐色ガラスを認める。斑晶斜 長石の屈折率はγmax. ‑1.576, αmin. ‑1.553であり, Chayes (1952)の図によれば成分は An75‑An48 (Mol. 96)であり, bytownite‑labradorite‑andesineに属する。石基の斜長 石の屈折率は, γmax. ‑1.564, αmin. ‑1.551で,成分はAn57‑An45 (Mol. %) (Chayes, 1952による)で, labradorite‑andesineに属する。

磁鉄鉱:微斑晶〜石基中に認める。ふつう0.1mm以下の粒状〜自形結晶として認められる。

以上の鏡下観察から,鉄苦土鉱物の組み合わせは, Ⅳb型ないしⅣb‑C型(久野, 1954)で ある。したがって,鉱物組み合わせからは,アルカリ岩系とソレイアイト岩系との中間型に属 することになり,高アルミナ岩系または高アルカリソレイアイト岩系(Kuno, 1968)に属す る可能性が考えられるが,これについて次に検討をすすめる。

Ⅴ黄尾礁火山の岩石化学

避尾礁を構成する普通輝石かんらん石玄武岩3ケの分析値,ノルム値および, or‑ab‑an, wo‑en‑is, wo‑fo‑Q, Q‑fo‑fa, MgO‑FeO+Fe203‑Na20+K2Oのそれぞれの百 分比を第1表に示す。

同表からあきらかなように,これら3ケの分析値はお互によく似ている。 SiOs値は49%台 でありSi0,に対して飽和の程度はノルムQからあきらかなように,丁度飽和するか,しな いかの程度である。ちなみにノルムQは0.84, 0.18と,不飽和のそれは‑0.24である。 A1203 は15%台で比較的少なく,それに対してCaOは11%台で比較的多い値を示している。また,

(7)

第1表草(詳宗玄砦語)o化学成分とノルム値

(Chemical compositions and norms of basaltic rocks from the Kobi‑sho volcano)

(K. Ishibashi, analyst)

Na20とK20の値はふつうと考えてよい のであるがK2Oの値はやゝ多くTiO,

は0.60S以下で少ない値を示している。ま たD. I.値(differentiation index)は 27.94, 28.ll, 28.84である。

この黄尾礁の玄武岩類が,'その他の火山 岩類平均化学成分に比してどのような特徴 をもっているかを知るために,第3図に HarkerのSiOcに対する酸化成分変化 図を示した。さらに本図には,比較補助線 として,世界火山岩平均化学成分(Daly, 1933),日本火山岩平均化学成分(Taneda, 1963),琉球火山帯平均化学成分(Matsu‑

moto, H., 1963)の変化線を示してある。

本図からあきらかなように,黄尾礁の玄 武岩類は,世界火山岩平均化学成分に比し

てCaOが多くMaOがやゝ多く, Na20+K2O, Na20, Ti02が小さく, A1203,やゝ小さく,その他の成分は同様 な値を示している。日本火山岩平均化学成 分に比較するとFeO+Fe203, Fe2Oa MgO, CaO, Na20+K2O, K2Oの値が

やゝ高くA1203, FeO, Ti02の値がや ゝ低く,その他の成分は同様な値である。

琉球火山帯火山岩平均化学成分に比較する とFe203, FeO, FeO+Fe203, CaO, K20がやゝ多くA1203, Na20, TiO2, やゝ小さい値を示している。これらのこと から,黄尾礁玄武岩類の一般的特徴は, A1203, TiOsの値が比較的少なくCaO の値が比較的高いとゆうことができる。

久野(Kuno, 1960)は,高アルミナ玄 武岩を提唱した時SiO;によって細分し たA1203とK20と相関関係図によって

ソレイアイト玄武岩,高アルミナ玄武岩, アルカリ玄武岩を3区分している。黄尾礁

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松本雀夫・野原朝秀

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‑→ Si02

第3図黄尾礁火山岩の酸化成分変化図

(Harker'soxidevariationdiagram) D世界火山岩平均化学成分(Daly,1914) J日本火山岩平均化学成分(Taneda,1962)

R琉球火山帯火山岩平均化学成分(Matsumoto,1963)

の玄武岩をこの図に点示すると,アルカリ玄武岩系区に点示される。さらに久野は(Kuno, 1968)は,高アルカリソレイアイトを提起した時にSiOsとNa20+K2Oとの関係図で,ア ルカリ岩系,高アルカリソレイアイト系+高アルミナ玄武岩系,低アルカリソレイアイト系に 3区分している。黄尾礁の玄武岩をこの図に点示して第4図に示す。第4図では,黄尾礁の玄 武岩は,高アルカリソレイアイト区域に接してアルカリ岩系区に点示される。以上のように, 前述の2種類の図ではアルカリ岩系区に点示されるのであるが,有色鉱物の組み合わせは,既 述の如くかんらん石と普通輝石との問に反応関係があるものとないものとがあって,アルカリ 岩系とソレイアイト岩系との中間的性質を有していることになる。したがって化学成分と有色 鉱物とを同時に吟味すると,高アルカリソレイアイトに近い性質を有していることになる。

一方,北九州から山陰における大陸系玄武岩類の化学的性質は,一般にA120 2^3に富み,

CaOに乏しい傾向が認められる(松本彊夫,1961;Matsumoto,Y.1968)cこの地域の大陸 系玄武岩類に比して黄尾礁の玄武岩は,A1203,Ti02に乏しく,CaOに富む。ちなみに, 北九州大陸系玄武岩類の平均化学成分はSiO」が47.5‑50.0^のものにおいて,A1203‑

16.81#,Ca0‑9.19^,TiO2‑1.57#であるのに対して,黄尾礁のそれはA1203‑15.55

・15.72#,Ca0‑ll.83‑ll.96#fTiO2‑0.58‑0.60%である。したがって,北九州大陸系 玄武岩と黄尾礁の玄武岩類の岩石化学的性質は,相当に異なることになる。

また,Chayes(1964;1965)による大洋島の玄武岩はSi02<54^,Thornton‑Tuttle

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55 50

> Si02

第4図Na20+K20‑Si02図

(Total alkalies‑SiO2 diagram)

黒丸黄尾礁 白丸霧島火山 十字開聞岳 三角横当島

比<50の岩石をとった場合, 1.75#以上のTiO,を含むものが94%もあってTiO」値が一般 に高いことを示している。このことと,黄尾礁の玄武岩のTiO」を比較すると,黄尾礁のそ れはTi05は0.6096以下でありTi02の値が著しく低いことが指摘され,大洋島玄武岩と 異なった岩石化学的性質を有することになる。

次に,黄尾礁の玄武岩が琉球系の火山に比較して,どのような岩石化学的性質を有している かを検討する。これは,黄尾礁火山が,西南諸島に沿う1火山であるが,琉球系に属せしめて よいかどうかを吟味するためのものである。そのために,苦鉄質岩石の産出が比較的知られて いる霧島火山(沢村・松井1956;進野, 1966),開聞岳火山(中村, 1971),桟当島(松本往 夫・松本幡郎, 1966)の火山岩の化学成分と比較してみる。

SiOc‑Na20+K2O図(第4図) :本図には比較補助線として,日本および日本近郊におけ るアルカリ岩系,高アルミナ玄武岩系,ピジオン輝石質岩系のそれぞれの境界線(Kuno, 1965)を入れてある。本図においては,黄尾礁の玄武岩のみが,アルカリ岩系区に点示される が,その他の火山はよりアルカリが低い方に点示されている。すなわち,桟当島火山岩は,も っともアルカリの少ない側のピジオン輝石質岩系(低アルカリソレイアイト岩系)区に点示さ

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30 松本筏夫・野原朝秀

れ,開聞岳の火山岩は高アルミナ岩系(高アルカリソレイアイト岩系)区に点示され,霧島火 山のそれは高アルミナ岩系とソレイアイト岩系の両区にまたがって点示されている。すなわ ち,黄尾礁の玄武岩は,化学成分からは琉球系の他の火山岩に比して,もっともアルカリ岩的 であり,霧島,開聞岳,桟当島の各火山と異なった岩石化学的性質を有しているとゆうことが できる。

ノルム長石成分三角図(第5図) :本図においては,黄尾礁の玄武岩類は,琉球火山帯の他 の火山岩に比して,もっともノルムorに富んだ位置に点示される。また,健界火山岩平均化 学成分や,琉球火山帯火山岩平均化学成分に比しても,はるかにノルムorに富んだ位置に点 示される。すなわち,ノルムanは50‑51^に対して,ノルムorは15%以上であり,この点 に関してはアルカリ岩的である。霧島火山の分布点範囲(ki)を示してあるが,これよりもノ ルムorに富んだ位置に点示されている。また,アルカリかんらん石玄武岩本源マグマ,ソレ イアイトかんらん石玄武岩本源マグマWarner玄武岩に比較してもノルムor成分に富んだ 位置に点示されている。すなわち,これら比較した何れの火山岩とも性質が異なっており,黄 尾旗の玄武岩は,独特の岩石化学的特微をもっていることが示されている。

an

黒丸 白丸(ki) 十字(ka)

三角 D R A TO

T W

霧島火山開聞岳

桟当島世界火山岩平均化学成分(Daly, 1914)

琉球火山帯火山岩平均化学成分(Matsumoto, 1963) アルカリかんらん石玄武岩本源マグマ区域

ソレイアイトかんらん石玄武岩本源マグマ区域 ソレイアイト玄武岩本源マグマ区域

Warner玄武岩区域

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第6図ノルム輝石成分三角図

(Normative pyroxene triangular diagram)

記号は第5図と同じ

ノルム輝石成分三角図(第6図) :本図では黄尾礁の玄武岩はすべて第I区に点示され,世 界火山岩平均化学成分の早期に近接して点示され,アルカリ岩系区域には点示されない。ま た,本図においては,アルカリかんらん石玄武岩本源マグマ区域,ソレイアイトかんらん石玄 武岩本源マグマ区域,ソレイアイト玄武岩区域Warner玄武岩区域の何れとも離れて点示さ れているものwarner玄武岩区域,ソレイアイトかんらん石玄武岩本源マグマ区域にやゝ近

く点示されている。また,琉球系の各火山に比較すると,何れの火山よりも,ノルムwOが多 い位置に点示されている。これも,化学成分でCaOが多くA1203が低い値を示しているこ とを述べたが,その現われであろう。

ノルムwo‑fo‑Q三角図(第7図):本図においては,アルカリかんらん石玄武岩本源マ グマ,ソレイアイトかんらん石玄武岩本源マグマ,ソレイアイト玄武岩本源マグマWarner 玄武岩の何れとも異なった場所に点示される。また,琉球系の各火山の火山岩に比較して,何 れの火山よりも,ノルムWOが多く,ノルムQが少ない位置に点示される。したがって,こ れらの何れとも異なるとゆう特徴を有することになる。さらにまた,この図で,黄尾礁の玄武 岩はN点付近に点示されている。本図でNR線はかんらん石と輝石間の反応関係を示すもの であり, EN線は両鉱物の同時晶出関係を示すものである。したがって,黄尾礁の玄武岩の1 点は同時晶出を示す側に,他の2点は反応関係を示す側に点示されていることになる。岩石記 載で述べたように,黄尾礁の玄武岩にはかんらん石と単斜輝石との問に反応関係があったりな かったりすることと比べると,興味ある位置に点示されていることになる。化学成分の僅かの

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32 松本健夫・野原朝秀

WO

en

第7図ノルムwoイ0‑Q三角図

(Normative wo‑fo‑Q triangular diagram) 記号は第5図と同じ

Q

第8図ノルムQ‑fo‑fa三角図

(Normative Q‑fo‑fa triangular aiagram)

記引ま第5図と同じ

(13)

差が,前述のような原因になっているのかもしれない。

ノルムQ‑fo‑fa三角図(第8図).本図では,黄尾礁の玄武岩は,アルカリかんらん石玄 武岩本源マグマ,ソレイアイト質かんらん石玄武岩本源マグマ,ソレイアイト玄武岩マグマ, Warner玄武岩の何れの区域からもやゝ離れて点示されている。一般にこれらに比して,ノル ムfaが少ない位置に点示されているが,これは酸化作用によってFeOがFe203に変化し たためであろう。化学成分からもやゝ Fe203の値がやゝ高く示されている。また,琉球系の 他の火山に比較すると,何れの火山よりも,ノルムQが少ない位置に点示されており,これら の火山岩の何れよりも,もっとも早期の岩石であることが示されている。また,健界火山岩平 均化学成分の早期の岩石とほとんど同じ位置に点示されている。

MgO‑(FeO+Fe203)‑(Na20+K2O)三角図(第9図) :本図では,久野のピジオン輝石 質岩系区に,黄尾碇の玄武岩は点示され,また,アルカリかんらん石玄武岩本源マグマ区域内 とこれに近接して点示されている。しかしながら,アルカリかんらん石玄武岩本源マグマと異 なることは,ノルム長石成分,ノルム輝石成分,ノルムwO‑fo‑Q,ノルムQ‑fo‑faの各 三角図であきらかに示されている。また,この図では,健界火山岩平均化学成分,琉球火山帯 火山岩平均化学成分の早期成分とほとんど一致している。

第9図MgO‑(FeO+Fe203)‑(Na20+K2O)三角図 (MgO ‑(FeO+Fe203)‑(Na20+K2O) triangular diagram

Pピジオン輝石質岩系区域(久野, 1954) H紫蘇輝石質岩系区域(久野, 1954) Sスケールガード貫入岩変化線 その他の記号は第5図と同じ

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34 松本雀夫・野原朝秀

以上のように,各相関図と各三角図で検討した結果,黄尾旗の玄武岩の岩石化学的性質は, 琉球系の各火山とも異なるし,また北中部九州西端の離島部の玄武岩とも異なる。あるいは太 拝島の玄武岩やその他の玄武岩に比しても異なった岩石化学的性質を有している。

これらの点から,黄尾礁火山は少なくとも琉球系の火山(いわゆる琉球火山帯)に属せしめ ない方がよいと考える。また,北中部九州西端の離島部の大陸系玄武岩に比較されるとする小 杏(1965)の見解も,岩石化学的にはまだ問題が残っており,今後検討する必要があろう。む

しろ黄尾礁火山のみの火山区〜岩石区として考察すべきものかもしれない。

:m:i目迅

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(16)

図版説明

黄尾礁火山の普通輝石かんらん石玄武岩の顕微鏡写真. ×20。

0:かんらん石, A:普通輝石, p:斜良石 第I図版

1 no.KO‑2,平行ニコル.

2同上,十字ニコル。

3 no.KO‑2,平行ニコル。

4同上,十字ニコル。

5 no.KO‑3,平行ニコル。

6同上,十字ニコル。

7 no.KO‑3,平行ニコル0 8同上,十字ニコル。

第Il図版

9 no.K0‑4,平行ニコル。

lo回上,十字ニコル。

ll no. K0‑4,平行ニコル,かんらん石と普通輝石の間に反応関係が認められる。

12同上,十字ニコル。

13 no. KO‑5,平行ニコル。

14同上,十字ニコル。

15 no.K0‑6,平行ニコル。

16同上,十字ニコル。

(17)
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第Ⅱ図版

参照

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