奈良教育大学学術リポジトリNEAR
【研究ノート】中国語における「?」の意味
著者 張 忠鋒
雑誌名 奈良教育大学国文 : 研究と教育
巻 21
ページ 52‑55
発行年 1998‑03‑30
URL http://hdl.handle.net/10105/10698
【研 究 ノ ー ト】
中 国 語 に お け る 「給 」 の 意 味
張 忠 鋒
「日本 語 の語 彙 』(ケ ー ス ス タ デ イ ・森 田 良 行 ・村 木 新 次 郎 ・相 澤 正 夫 編 集)<ケ ー ス 13・ 対 義 語 〉 【発 展 】 の4は 、 中 国語 の 「給」 の 意 味 に つ い て 、 次 の よ う に述 べ て い る。
坤 国 語 の 「給」 は,日 本 語 の 「や る(あ げ る)」 と 「も ら う(い た だ く)」 の ど ち ら の 意 味 に も な る。"こ の 解 釈 に対 して 、 私 は大 き な疑 問 を抱 い て い る。 とい うの も、 「多合」 は 、
日本 語 の 「や る(あ げ る)」 また は 「くれ る(く だ さ る)」 に相 当 し、 日本 語 の 「も ら う」
は、 中 国 語 の 「得 到 」 「牧 到 」 の 意 味 で あ る とい う の が私 の 考 えで あ り、 「給 」 は 「も ら う (い た だ く)」 に も相 当 す る とい う こ の本 の 結 論 が 一 体 何 に 基 づ い て 出 され た の か 、 よ く理 解 で き な い か らで あ る。
もち ろ ん、 〈私 は 彼 か ら本 を一 冊 も らっ た 。 〉 とく彼 は 私 に本 を一 冊 くれ た 。 〉 が 同 じ 現 象 を表 して い る よ う に 、 中 国 語 に もく我 杁 他 那 里 得 到 了 一 本 需 。 〉 とく 他 送 給 我 了 一 本 需 。 〉 と い う表 現 も あ る 。 しか し、 日本語 で は、 同 じ現 象 を表 現 す るの に、 動 作 の 主体 が 変 わ る と、 動 詞 も 「も ら う」 か ら 「くれ る」 に変 化 す る よ う に 中 国 語 で も動 詞 が 「得 到 」 か ら 「給 」 に 変化 す る の で あ る。 した が っ て、 「給 」 は 、 「くれ る」 の 意 味 で あ り、 「も ら う」 の 意 味 は持 た ない と私 は 思 う。 更 に この 問 題 を明 確 す る た め に 、 こ こで は 、 まず 「給 」 の意 味 を あ らた め て 検 討 して み る こ とに す る。
「給 」 に は 、 さ ま ざ ま な意 味 が あ る。 品 詞 か ら に る と く 動 詞 〉 の 「給 」 と く 介 詞 〉 の
「給 」 と く助 詞 〉 の 「給」 の 三 種 類 が あ る 。 例 え ば 、① 他 給 了 我 一 本 需 。
② 他 給 我 冥 了 一 本 需 。
③ 房 同 我 都 給 牧 拾 好 了 。
① の 「給 」 は、 〈動 詞 〉で 、 〈彼 は私 に本 を一 冊 くれ た。 〉 とい う意 味 に な る 。 ② の
「給 」 は く 介 詞 〉で 、 〈彼 は私 に本 を 一冊 買 って くれ た 。 〉 或 い は く 彼 は私 に本 を一 冊買 っ た 。 〉 と い う意 味 に な る 。③ の 「給」 は く 助 詞 〉 で、 〈 部 屋 は私 が も う片 付 け て し ま っ た た(よ)。 〉 。
つ ま り、① の 「給 」 は く 与 え る 〉 とい うく 動 作 〉 を表 し、 文 脈 に よ って 、<く れ る 〉の
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意 味 に な る わ け で あ る 。② の 「給 」 は 、後 に 出 て くる動 詞 く 芙 〉の 補 助 成分 と して く 対 象
〉 を表 す 。 ③ の 「給」 は 、動 詞 の 前 に持 っ て くる こ とに よ って 、 〈 語 気 〉 を強 調 す る こ と に な る。 ① を く語 彙 レベ ル の 意 味 〉 とい う よ う に理 解 す る な らば 、 ② と③ は く 文 法 的 な役 割 〉 とい う よ う に理 解 す れ ば 良 い で あ ろ う。 とい う の は 、① の 「2ムー口」 が 文 の 中 に お い て 、 独 立 して 文 の成 分 の ひ とつ に な る の に対 して 、② と③ の 「給 」 は 単 独 に 文 の 成 分 と して は な ら ない 。 か な らず く介 詞 連 語 〉 の形 で 、 また は 〈 述 語 動 詞 の 補 助 成 分 〉 と して 、 文 の 中 に あ らわ れ る。 日本語 の文 法 に し たが っ て 説 明 す る と、 ② は く 格 助 詞 〉 の よ う な存 在 で あ り、③ は く 語 気 助 詞(よ)〉 か ま た は く助 動 詞(し ま う)〉 の よ う な もの で あ る 。 具 体 的 に分 析 して み る と、次 の よ う な構 造 に な る 。
① 他 給 了我 一 本 需 。 → 彼 は私 に 本 を一 冊 くれ た 。→ 「給 」 は 、<く れ る 〉 に相 当 す る。 文 の く述 語 〉で あ る。 英 語 の 動 詞<give>と 同 じ意 味 で、hegaveme abook。 とな る。
② 他 給 我 冥 了一 本 需 。 → 彼 は私 に 本 を一 冊 買 っ た 。→ 「給 」 は 、 対 象 を 表 し、
〈 に 〉 に相 当 して 、(給+我)と い う句 全 体 が文 の 中 で 修 飾 語 に な る 。 こ の 場 合 は、 英 語 の介 詞<for・to>の よ う な 役 割 を果 た す 。heboughtabookfor
me。 と な る。
③ 房 同我 都 給 牧拾 好 了 。 → 部 屋 は私 が もう片 付 け て しま っ た(よ)。 → 「給 」 は、 〈 助 動 詞(し ま う)〉 に相 当 して 、(述 語 動 詞)の 補 助 成 分 と して 、 語 気 を 強 調 す る。 こ この 「給」 は 、 場 合 に よ って 省 略 す る こ とが で き る。
以 上 は 「給 」 を 品詞 の面 に お い て 、 分 析 して み た も の で あ る 。 今 度 は 、① ② ③ そ れ ぞ れ につ い て 、r現 代 漢 語 詞 典 』 に よ り、 更 に細 か く整 理 す る と、次 の よ う な 結 果 が 見 られ る。
まず 、 「現 代 漢 語 詞 典 』 の解 釈 を見 る。
1:使 対 方 得 到 某 些 奈 西 或 某 稗 遭 遇 。 2:用 在 劫 洞 的 后 面,表 示 交 与,付 出 。 3:カ 。
4:引 避 劫 作 的 対 象 。
5:叫;辻 。a)表 示 使 対 方 作 某 事 。b)表 示 容tst方 作 某 事 。c)表 示某 科1遭遇 。 6:助 洞 。 直 接 用 在 表 示 被 劫 、 処 置 等 意 思 的句 子 的 胤 吾劫 洞 的 前 面 、 以 加 強 悟 『 。
つ ま り,その1:相 手 に何 か を得 させ た り、何 か の不 幸 な こ とや 面 倒 な こ と を さ せ た り す る こ と。 例 え ば,① 給 他 一 本 需 。 彼 に 本 を一冊 与 え る 。 ② 給 他 一 ノト打 缶 。 彼 に 打 撃 を 与 え る 。要 す る に,A給B(も の ・こ と)。 日本語 に訳 す と、Aさ ん はBさ ん に(も の ・こ と) を与 え る。 とな る 。 「給 」 とい う言 葉 自体 に は、 日本 語 の 「あ げ る 」 「くれ る 」 の よ うな く 方 向性 〉が 表 せ な い が 、 す べ て は文 の全 体 の 文 脈 に よ り、 そ の 〈 方 向 性 〉 が 自然 に見 え て くる 。 「給 」 の後 に出 て くる く 対 象 〉 が 「私 」 な ど とい うく 第 一 人 称 〉 の場 合 は 、 「給」 は
「くれ る」 の意 味 が 読 み とれ る。 逆 に 「私 」 とい うく 第 一 人称 〉以 外 の場 合 に な る と 「あ げ る 」 の意 味 にな る わ け で あ る。 また 、 話 す 立 場 に よ り 「あ げ る」 か 「くれ る 」 か適 切 に 理 解 す る こ と に な る。 文 の 中 に 「給」 は述 語 動 詞 と して 、独 立 して 機 能 す る。
そ の2:「 給 」 は、 他 の 動 詞 の後 に つ い て、 〈与 え る 〉 の 意 味 と して用 い られ て い る。
こ こで 注 意 す べ き点 は 、 「皇ムt口」 の前 の 動 詞 に 、 も と も と〈 与 え る 〉 の意 味 が 含 め ら れ て い る 場 合 、 「給 」 は 省 略 され て も文 全 体 の 意 味 が きち ん と成 立 す るか ら、構 わ な い が 、 も し、
そ の 動 詞 に 「与 え る」 とい う意 味 が な い場 合 、 「給 」 が か な らず 必 要 に な る と い う こ とで あ る。
例 え ば,① 送(給)他 一 万 円 的 圏 需 券 。
② 留 給 他 一 万 円 的 圏 需 券 。
① の場 合 、 「送 」 とい う語 に は 、相 手 に く送 り与 え る 〉 とい う意 味 特 徴 が あ るか ら、「給 」 は あ っ て も な くて も、 文 の意 味 が 変 わ らな い 。② の 場 合 、 「留 」 に は 、 〈 残 す 〉 と い う意 味 だ け で く 与 え る 〉 とい う意 味 特 徴 が 含 ま れ て ない の で 、 「給 」 は な け れ ば 、 文 の 意 味 が 変 わ る の で は な く、文 自体 が 成 立 しな い。
そ の3:〈 … の た め に 〉 の意 味 で あ る。 例 え ば:我 給 大 家 我 水 去 。私 は 皆 さ ん の た め に 水 を探 し に行 く。Aさ ん はBさ ん の た め に … をす る。 とい う型 に な る 。
そ の4:動 作 の対 象 を表 す 。 日本 語 に す る と さ ま ざ ま な 形 に な る 。 た と え ば:Aさ ん は Bさ ん に … を す る 。Aさ ん はBさ ん に 向 か っ て … す る 。Aさ ん はBさ ん に代 わ っ て … をす る。Aさ ん はBさ ん に対 して … す る。 な ど。3の 〈 … の た め に 〉 も、 この 中 に内 包 され る もの で あ る。 例 と して取 り上 げ て み る と、① 他 給 我 打 針 。 彼 は私 に 注 射 す る 。 ② 他 給 我 招 手 。 彼 は 私 に 向 か って 手 を振 っ て い る 。③ 我 給 他 考 試 去 了 。 彼 に代 わ って 、 試 験 を 受 け に 行 っ た 。 な ど。
そ の5:使 役 ・受 け 身 を 表 す 。 「給 」 は く に… させ る 〉 ・〈 に … され る 〉 の 形 に な る 。 例 え ば,① 把 お掌 来 給 他 看 。 本 を持 っ て きて 、 彼 に読 ませ る。 ② 羊 給 狼 吃 了 。 羊 は 狼 に食
わ れ た 。
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そ の6:直 接 に受 け 身文 ・処 置 の 意 味 を表 す 文 の 述 語 動 詞 の 前 に用 い られ て、 言 葉 全 体 の 語 気 を 強調 す る だ け で、 具体 的 な意 味 が な い 。 日本 語 の 助 詞 く よ 〉 ま た は 助 動 詞 く し ま う 〉 とい う よ う に理 解 す れ ば 良 い と思 うの で あ る。 例 え ば,① 失 友 都 叫 雨 水 給 淋 湿 了 。 髪 の 毛 を雨 に ぬ ら さ れ て し まっ た 。 「叫 」 は く 受 け 身 〉 の表 現 で 、 「給 」 は く しま う 〉 とい う 意 味 を と らえ た ほ うが 良 い 。② 弟 ・把 花 瓶 給 打 杯 了 。 弟 は 花 瓶 を壊 して し ま った。 ただ し、
「給 」 は く助 詞 〉 と して の 用 法 につ い て 、 口 頭 語 的 な色 彩 が 濃 い 。 とr現 代 漢 語 」 に は 述 べ て い る 。
上 記 の解 釈 と例 文 を 含 め て み る と、 「給 」 はく 与 え る 〉 の意 味 とい う〈 語 彙 〉 レ ベ ル の 意 味 も あ れ ば 、 〈 対 象 を表 す ・使 役 ・受 け 身 ・語 気 を 強 調 〉 とい うく 文 法 〉 的 な役 割 も あ る 、 とい う こ とが 分 か る 。 こ こで 、 あ らた め て 当 初 の 疑 問 をふ り返 って み る と、 「給 」 に は や は りく も ら う 〉 の意 味 が ない とい うこ と に な る 。
例 え ば 、5の 例 文 ① 把 需 掌 来 給 他 看 。 とい う文 を 、 本 を持 っ て きて 、 彼 に読 ん で も ら お う。 とい う よ う に 日本 語 に訳 して も、 間 違 い と は言 え ない が 、 た だ そ の 文 の意 味 を十 分 に 伝 達 す る こ とが で きな い と気 が す る。 仮 に 、 そ の よ う に理 解 した と して も、 あ く まで もく して も ら う〉 の 意 味 で あ って 、 〈 も ら う〉 の 意 味 に は な ら な い。 私 は 「現 代 漢語 辞 典 』 以 外 、 ま たr漢 語 大 辞 典 』 や 「新 華 字 典 』 や 「中 国語 辞 典 」 や 「岩 波 日中 辞 典 』 や 「現 代 中 国 語 辞 典 」 な ど に もあ た って 調 べ て み た が 、 〈 も ら う 〉 の意 味 に相 当 す る解 釈 は 一 つ も 目 あ た ら な い 。
以 上 で は 、 中国 語 の 「給 」 につ い て 、 す こ し考 察 して み た。 もっ と も基 本 的 な と こ ろ に 触 れ た だ け で 、 説 明 が つ か な い と ころ が 多 くあ る と思 わ れ る 。諸 賢 の 指 導 を待 ち たい 。
参考文献:
1=「 現代 漢語」(高 等教育 出版社 ・黄伯 蕃/屡 序奈主編 ・1991年1月) 21「 現代 漢語詞 典」(商務 印書館 ・1986年)
31「 漢語 大辞典」(漢 語大辞 典出版社 ・1994年4月) 41「 新華 字典」(商 務印書館 ・1992年重排 本) 5:「 中国語辞典」(大 学書林 ・鐘 ケ江信光 ・1960年3月)
6:r岩 波 日中辞典 」(岩波書 店 ・倉石武 四郎 ・折敷瀬 興編 ・1982年12月) 71r現 代 中国語 辞典」(光 生館 ・香坂順 一編著 ・1981年8月)
(本学大学院生)