解析 II ・講義ノート
第
13回
(2021年 1月19日(火)配信分)
§13.
広義積分とガンマ関数
1
変数関数のリーマン積分は基本的には有界閉区間で定義され た関数について考え、開区間でしか定義されていない関数を積分 する際や、無限区間で積分する際には、広義積分と言うものを考 えました。これは開区間または無限区間に含まれる有界閉区間上 での積分値の、有界閉区間を内側から開区間または無限区間に限 りなく近付けたときの極限値、すなわち
∫ b
a f(x)dx = lim
a1→a+0 lim
b1→b−0
∫ b1
a1 f(x)dx
∫ +∞
−∞ f(x)dx = lim
a1→−∞ lim
b1→+∞
∫ b1
a1 f(x)dx
などと言うことで、極限値と言う以上、近付き方に依らずと言う
厳しい縛りがある上、たとえ
f(x)が連続関数であっても、閉区
間の場合と違って、その値が存在するとは限りませんでした。
ただし、具体的には計算できなくても、定義域全体で
|f(x)| ≤ g(x)
を満たすような関数
g(x)で、今考えている積分範 囲で広義積分可能なものが存在すれば、
f(x)もまた同じ範囲で広
義積分可能になると言う判定条件がありました。
この判定条件を適用することで、広義積分により定義される重 要な関数として、ガンマ関数
Γ(x)とベータ関数
B(x, y) ( B は β の大文字)があります。
Γ(x) := ∫ +∞
0 e−ttx−1dt (x > 0) B(x, y) := ∫ 1
0 tx−1(1 − t)y−1dt (x > 0, y > 0)
まず
e−t < 1 (t > 0)より、
0 < e−ttx−1 < tx−1 (0 < t ≤ 1)
で、
x > 0に対して、右辺の
(0, 1]での広義積分は
∫ 1
0 tx−1dt = lim
a1→+0
∫ 1
a1 tx−1dt = lim
a1→+0
tx x
1
a1
= lim
a1→+0
1 − a1x
x = 1
x
より有限な値として存在するので、広義積分
∫ 10 e−ttx−1dt
も有限
な値として存在します。
一方、
e−t/2tx−1 ≤ max
1≤t<+∞ e−t/2tx−1 =: C1(x) (1 ≤ t < +∞)
より、
0 < e−ttx−1 ≤ C1(x)e−t/2 (1 ≤ t < +∞)
で、
x > 0に対して、右辺の
[1, +∞)での広義積分は
∫ +∞
1 C1(x)e−t/2dt = C1(x) lim
b1→+∞
∫ b1
1 e−t/2dt
= C1(x) lim
b1→+∞
[−2e−t/2]b1
1
= C1(x) lim
b1→+∞(−2e−b1/2 + 2e−1/2) = 2e−1/2C1(x)
より有限な値として存在するので、広義積分
∫ +∞1 e−ttx−1dt
も有
限な値として存在します。
( C1(x) は具体的に求められますが、その式自 体は、この際あまり重要ではありません。)0 - t 6
s
s = e−ttx−1 [0 < x < 1 の場合]
+0←a1
←
1 b1 → +∞
→
( これはガンマ関数 Γ(x) 自身のグラフではありません。)
以上より、ガンマ関数
Γ(x)が広義積分により、有限な値を持
つ関数として定義されることが示せました。
また
(1 − t)y−1 ≤ max{1, 21−y} =: C2(y) (0 < t ≤ 1 2)
より、
0 < tx−1(1 − t)y−1 ≤ C2(y)tx−1 (0 < t ≤ 1 2)
で、
x > 0に対して、右辺の
(0, 12]
での広義積分は
∫ 1/2
0 C2(y)tx−1dt = C2(y) lim
a1→+0
∫ 1/2
a1 tx−1dt
= C2(y) lim
a1→+0
tx x
1/2
a1
= C2(y) lim
a1→+0
2−x − a1x
x = C2(y) 2xx
より有限な値として存在するので、広義積分
∫ 1/20 tx−1(1 − t)y−1dt
も有限な値として存在します。
一方、
tx−1 ≤ max{1, 21−x} =: C2(x) (1
2 ≤ t < 1)
より、
0 < tx−1(1 − t)y−1 ≤ C2(x)(1 − t)y−1 (1
2 ≤ t < 1)
で、
y > 0に対して、右辺の
[12, 1)
での広義積分は
∫ 1
1/2 C2(x)(1 − t)y−1dt = C2(x) lim
b1→1−0
∫ b1
1/2(1 − t)y−1dt
= C2(x) lim
b1→1−0
−(1 − t)y y
b1
1/2
= C2(x) lim
b1→1−0
−(1 − b1)y + 2−y
y = C2(x)
2yy
より有限な値として存在するので、広義積分
∫ 11/2 tx−1(1 − t)y−1dt
も有限な値として存在します。
0 -
t 6
s
s = tx−1(1−t)y−1 [0 < x <1,0 < y <1 の場合]
1 +0←a1
←
1
2 b1 → 1−0
→
( これはベータ関数 B(x, y) 自身のグラフではありません。)
以上より、ベータ関数
B(x, y)も広義積分により、有限な値を
持つ関数として定義されることが示せました。
Γ(x)
のみたす重要な性質に
Γ(1) = 1,Γ(x + 1) = xΓ(x),
Γ(n) = (n − 1)! (n ∈ N), Γ(x) = 2 ∫ +∞
0 e−u2u2x−1du, Γ(1
2) = 2 ∫ +∞
0 e−u2du = √
π (
ガウス積分
), Γ(x)Γ(1 − x) = πsin πx (0 < x < 1) (
相補公式
)B(x, y)
のみたす重要な性質に
B(x, y) = B(y, x),xB(x, y + 1) = yB(x + 1, y), B(x, y) = 2 ∫ π/2
0 sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ, B(1
2, 1
2) = π
があり、また両者の間には次の基本関係式が成り立ちます。
B(x, y) = Γ(x)Γ(y) Γ(x + y)
比較的簡単なものから確かめて行きましょう。ただし
′は全て
t
に関する微分を表すものとします。
まず、定義より直ちに次が得られます。
Γ(1) = ∫ +∞
0 e−tt0dt = ∫ +∞
0 e−tdt
= lim
b1→+∞
∫ b1
0 e−tdt = lim
b1→+∞[−e−t]b01
= lim
b1→+∞(−e−b1 + e0) = −0 + 1 = 1
一方、2番目の等式は部分積分により導かれます。
Γ(x + 1) = ∫ +∞
0 e−ttxdt = ∫ +∞
0 (−e−t)′txdt
= lim
a1→+0 lim
b1→+∞
∫ b1
a1 (−e−t)′txdt
= lim
a1→+0 lim
b1→+∞
{
[−e−ttx]ba1
1 − ∫ab1
1 (−e−t)(tx)′dt
}
= lim
a1→+0 lim
b1→+∞
{
(−e−b1b1x + e−a1a1x)
− ∫ab1
1 (−e−txtx−1)dt
}
= −0 + 0 + x ∫ +∞
0 e−ttx−1dt
= xΓ(x)
これから直ちに3番目の
Γ(n) = (n − 1)Γ(n − 1) = (n − 1)(n − 2)Γ(n − 2)
= · · ·
= (n − 1)!Γ(1) = (n − 1)!
を得ます。
つまり
Γ(n + 1) = n!より
Γ(x + 1)は、自然数
nに対してしか
定義されていなかった階乗を、
−1より大きい任意の実数に対し
て、自然に拡張した関数と言うことになります。
4番目の前半は、
t = u2と置換すればよいだけです。
0 < u < +∞
で
0 < t < +∞, √a1 ≤ u ≤ √
b1
で
a1 ≤ t ≤ b1, dt = 2uduより
Γ(1
2) = ∫ +∞
0 e−tt−1/2dt = lim
a1→+0 lim
b1→+∞
∫ b1
a1 e−tt−1/2dt
= lim
a1→+0 lim
b1→+∞
∫ √ b1
√a1 e−u2u−1 · 2udu
= lim
a1→+0 lim
b1→+∞ 2 ∫
√b1
√a1 e−u2du
= 2 ∫ +∞
0 e−u2du
この具体的な値については、基本関係式を用いるので、ちょっ
と後回しにします。
一方、
B(x, y)の定義で、
1 − t = sと置換すると、
0 < t < 1で
1 > s > 0, a1 ≤ t ≤ b1で
1 − a1 ≥ s ≥ 1 − b1, −dt = dsより
B(x, y) = ∫ 1
0 tx−1(1 − t)y−1dt
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
∫ b1
a1 tx−1(1 − t)y−1dt
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
∫ 1−b1
1−a1 (1 − s)x−1sy−1(−ds)
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
∫ 1−a1
1−b1 sy−1(1 − s)x−1ds
= lim
b2→1−0 lim
a2→+0
∫ b2
a2 sy−1(1 − s)x−1ds (← a2 := 1 − b1, b2 := 1 − a1)
= ∫ 1
0 sy−1(1 − s)x−1ds
= B(y, x)
また部分積分により、
xB(x, y + 1) = ∫ 1
0 xtx−1(1 − t)ydt = ∫ 1
0 (tx)′(1 − t)ydt
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
∫ b1
a1 (tx)′(1 − t)ydt
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
[
[tx(1 − t)y]ba1
1 − ∫ab1
1 tx{(1 − t)y}′dt
]
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
[{b1x(1 − b1)y − a1x(1 − a1)y}
− ∫ab1
1 txy(1 − t)y−1(−1)dt
]
= 0 − 0 + y ∫ 1
0 tx(1 − t)y−1dt = yB(x + 1, y)
を得ます。
t = sin2 θ
と置換すると、
0 < θ < π2
で
0 < t < 1, Sin−1√a1 < θ < Sin−1√
b1
で
a1 < t < b1, dt = 2 sin θ cos θdθより
B(x, y) = ∫ 10 tx−1(1 − t)y−1dt
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
∫ b1
a1 tx−1(1 − t)y−1dt
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0
∫ Sin−1√ b1
Sin−1√a1 sin2(x−1) θ cos2(y−1) θ · 2 sin θ cos θdθ
= lim
a1→+0 lim
b1→1−0 2 ∫ Sin−
1√ b1
Sin−1√a1 sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ
= lim
a2→+0 lim
b2→π/2−0 2 ∫ b2
a2 sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ (← a2 := Sin−1√
a1, b2 := Sin−1√ b1)
= 2 ∫ π/2
0 sin2x−1 θ cos2y−1 θdθ
を得ます。
これから直ちに
B(1 2, 1
2) = 2 ∫ π/2
0 sin0 θ cos0 θdθ = 2 ∫ π/2
0 dθ = π
も得られます。
基本関係式を導くには、重積分の広義積分を用いる次の方法が 代表的です。途中で
(u, v) = (r cos θ, r sin θ)と変数変換
(置換
)し
ています。
Γ(x)Γ(y) = 4 ∫ +∞
0 e−u2u2x−1du ∫ +∞
0 e−v2v2y−1dv
= 4 ∫ +∞
0
∫ +∞
0 e−u2−v2u2x−1v2y−1dudv
= 4 ∫ π/2
0
∫ +∞
0 e−r2(r cos θ)2x−1(r sin θ)2y−1rdrdθ
= 4 ∫ π/2
0
∫ +∞
0 e−r2r2x+2y−1 cos2x−1 θ sin2y−1 θdrdθ
= 4 ∫ +∞
0 e−r2r2(x+y)−1dr ∫ π/2
0 cos2x−1 θ sin2y−1 θdθ
= Γ(x + y)B(x, y)
[
練習課題
]ここでは、広義積分の定義に戻って極限を考える部
分を省略しています。ここまでの各性質の証明に倣って、省略せ
ずに書いてみましょう。
基本関係式で特に
x = y = 12
ととると、
Γ(1
2)Γ(1
2) = Γ(1)B(1 2, 1
2) = 1 · π
より
Γ(12) = √
π
が得られます。
積分
∫ +∞
0 e−u2du =
√π 2
について、上の基本関係式の証明で最初から
x = y = 12
とおいた
計算が、よく紹介されています。
Γ(1
2)
の値は、相補公式からも簡単に導けます。実際
x = 1 2と
とると、
Γ(1
2)Γ(1
2) = Γ(1
2)Γ(1 − 1
2) = π sin π
2
= π
より
Γ(12) = √
π
を得ます。
e−u2
の原始関数は初等関数では表せないので、どの方法で導く にせよ、この等式は重要です。
相補公式の証明については、次回お話します。
第
12回練習課題の解答
f(x, y) = √
1 − x2 − y2
とおけば、
( f(x, y) = (1 − x2 − y2)1/2ですから、べき関数の微分と合成関数の微分の公式より
)fx(x, y) = − x
√1 − x2 − y2, fy(x, y) = − y
√1 − x2 − y2
より
dS =
√
1 + fx2 + fy2dxdy = 1
√1 − x2 − y2dxdy
を得ます。従って、求める面積は
∫ ∫
x2+y2≤1
√ 1
1 − x2 − y2dxdy = ∫ 1
−1
∫ √
1−x2
−√
1−x2
√ 1
1 − x2 − y2dydx
= ∫ 2π
0
∫ 1 0
√ r
1 − r2drdθ = ∫ 2π
0 [−√
1 − r2]10dθ
= ∫ 2π
0 {0 − (−1)}dθ = ∫ 2π
0 dθ = [θ]2π0 = 2π