楕円曲線の等分点へのガロア群の表現と保型形式
小川 裕之
(大阪大学大学院 理学研究科)
1.
序Dirichlet
のη
関数というのはとても面白い関数で,たくさんの不思議な性質を持ち,整数論のいろいろな場面に顔を出します. 今回この報告で,
η
関数を使ったある計算を紹介いたします. ここ での内容のほとんどは,山本芳彦先生(2004
年9
月末逝去)が3
年に亘る闘病生活の中で考えられ ていたものです. 山本芳彦先生の計算の面白さ,理論に適った実験により新しい考え方を見い出し ていく手法の一端をここに紹介できればと思います.η
関数とは,複素上半平面H
上の関数でη(z) = e
2πiz24Y
∞n=1
(1 − e
2πinz)
で定義されます. 右辺の無限積は広義一様に絶対収束するので,
H
上の零点を持たない正則関数で す.x = e
2πiz/24とおくと,η
関数はx
の冪級数としてη(z) = x − x
25− x
49+ x
121+ x
169− x
289− · · ·
= X
∞n=1
¡
−12n
¢ x
n2と展開されます. Rademacherなどにより
SL
2(Z)
の作用に関する変換公式が知られているのです が,η
関数は重さ1/2
の保型性(指標付き)
を持ちます. ですからη
関数を4
つ掛けると重さ2
の(指標付き)
保型形式が得られます. 例えばη(z)
2η(11z)
2 はΓ
0(11)
に関する重さ2
のcusp form (newform)
です.η(z) η(2z) η(7z) η(14z)
はΓ
0(14)
に関する重さ2
のcusp form (newform)
です.このようなことは非常に良く知られたもので多くの方々の多くの研究があります. ところで
(Γ
0(N)
に関する)重さ2
のcups form
は,こうやってη
関数を適当に掛けたり割ったりして,作ることが できるのでしょうか? 実はそれだけではうまくいきません. どうして重さ2
のものη
関数からが できたのか,得られた関数を調べてみます. 4つのη
関数を2
つずつに分けて,それら重さ1
の関 数の性質を調べてみます. 次節で詳しく調べますが, levelN = 11
の場合newform η(z)
2η(11z)
2 は重さ1
のcusp form η(z) η(11z)
の自乗になっています. 山本芳彦先生は,このような観察をま ずは最も単純と思われる,重さ2
のcusp form
の空間の次元が1
の場合を調べるのが適当と考え ました. 調べるlevel N
は12
個(N = 11. 14, 15, 17, 19, 20, 21, 24, 27, 32, 36, 49)
です. 山本芳 彦先生が最後に指導された赤阪正純君が修士の研究テーマとして詳しく調べています. 赤阪正純君 はそれらのlevel
に対して(η
関数の変換公式から決まるΓ
0(N)
の指標に関する)重さ1
のcusp form
の空間の次元をもとめました.以下この報告では
level N = 11, 19, 26
について紹介します. 種数が1
となるlevel 11, 19
につ いては,そのほとんどは赤阪正純君の研究がもとになっています. level 26は種数が1
でないけど 導手26
のQ
上の楕円曲線のあるものを選びました. 他のlevel
でも同様の計算が可能で, そのそれぞれについてとても興味深い観察が得られます. 例えば
level 23 (種数 2,
絶対既約), level 2 (種 数0,
多様体が出てこない?), level 43 (種数3,
導手43
の楕円曲線の同種類が1
つ)などは典型例 として面白いものがあります. 山本芳彦先生の研究手法は, 例えて言うなら“火の無いところに煙
を立てる”ようなものです. この研究をしているさ中, “重さが0
の保型関数が一番難しいですね”“種数 0
っていう何にも手がかりの無いところが一番面白いんですね”山本芳彦先生にもう少し時 間の無かったことがとても悔やまれます.2. level 11
level N = 11
の場合を考える.f (z) = η(z) η(11z)
とおく.x = e
2πiz24 とおくとf (z) = x
12− x
36− x
60+ x
132+ x
180− x
276+ · · ·
で良く見るとすべてx
12 の冪になっています.y = x
12= e
πiz とおいてf (z) = y − y
3− y
5+ y
11+ y
15− y
23+ y
27− y
31− y
33− y
37+ 2 y
47+ y
49+ · · ·
となる. これは結局
Γ
0(11)
のcusp i∞
でのFourier
展開を求めたことになる. さてRademacher
の変換公式によると,σ =
µ a b c d
¶
∈ Γ
0(11)
に対してf (σz) = χ(σ) (cz + d) f (z)
が成り立つ. ここでχ
はΓ
0(11)
の位数2
の指標でχ(σ) = ¡ −11 d
¢ χ
2(σ)
で与えられる. 最初の
¡
−11d
¢
は拡張されたLegendre
指標(11
を法とするDiricheler
指標)で,χ
2は
χ
2: SL
2(Z)
mod 2−−−→ SL
2(Z/2Z) ' S
3−−→ {±1} ⊂
sgnC
×で与えられる
SL
2(Z)
の位数2
の指標である. ここでsgn
は置換群の符号とする. Γ0(11)
の2
つのcusp 0, i∞
のそれぞれでのf(z)
のFourier
展開を(Rademacher
の変換公式を使って)計算すると,f (z)
がΓ
0(11)
の指標χ
をもつ重さ1
のcusp form
であることがわかる(f (z) ∈ S
1(Γ
0(11), χ)).
この重さ
1
のcusp form f (z)
を自乗すると重さが2
になる.σ = µ a b
c d
¶
∈ Γ
0(11)
に対してf(σz)
2= (χ(σ) (cz + d) f (z))
2= χ(σ)
2(cz + d)
2f (z) = (cz + d)
2f (z)
χ
の位数が2
であることに注意.f (z)
はΓ
0(11)
に関する重さ2
のcusp form
である. ところで もしf (z)
とは線形独立な指標χ
に関する重さ1
のcusp form g
があれば,f g
も重さ2
のcusp form (f g ∈ S
2(Γ
0(11)))
になり先のf
2 とは線形独立になる.S
2(Γ
0(11))
の次元は1
なので結局 そのようなg
は存在しない. 即ちS
1(Γ
0(11), χ)
の次元は1
である.ここで述べた次元の計算は, 前節で触れた, 山本芳彦氏に指導を受けた最後の学生の赤阪正純 君が修士論文にまとめました. 赤阪君はさらに
S
2(Γ
0(N))
の次元が1
次元になるすべての場合(N = 11, 14, 15, · · · , 49
の12
個)に,η
関数2
つの積(η(m z) η(n z))
をうまく選んで(N = m n)
その積がΓ
0(N )
の適当な指標χ
に関する重さ1
のcusp form
であることを示し,さらに多くの場合にその
cusp form
の空間の次元を求めました.これまで重さ
1
のcusp form
の多くがθ
関数を使って構成されていましたが,その場合はDirichelet
指標からくるΓ
0(N )
の指標(Γ
1(N )
で消えている) に関する正則modular form
になっていました. また
Deligne-Serre
の定理などで, 重さ1
のcusp form
のL-関数がガロア群の適当な表現の Artin L-関数に等しいことが知られていますが,
その場合もそのcusp form
の指標はDirichlrt
指 標でした.L-関数について調べてみます. cusp form f (z) = P
∞n=1
b
ny
n に付随するL-関数を
L(s, f ) = X
∞n=1
b
nn
−sとおく.
f (z) = η(z) η(11z)
について, L-関数L(s, f )
はEuler
積L(s, f ) = Y
p
L
p(p
−s)
−1 をもつ. ここで各Euler
因子はL
p(T) =
1 p=2
1 − T p=11
1 − T
2p
はQ( √
−11)/Q
で惰性(1 − T )
2or 1 + T + T
2p
はQ( √
−11)/Q
で完全分解 完全分解するp
に対するp-因子 L
p(T )
は,π
をp
を割るQ( √
−11)
の素元とすると(Q( √
−11)
の 類数は1) π ≡ 1 mod (2) (Q( √
−11)
の整数環での合同)のときL
p(T ) = (1 − T )
2,
そうでないと きL
p(T ) = (1 + T + T
2)
−1 である.K = Q( √
−11)
のイデアルの指標を使って書ける.K
の(2)
を法とするイデアルの類をH (2)
とおく.K
は類数1
で2
は惰性し,K
の単数群は{±1} (1 ≡ −1 mod (2))
なので, (2)を法とするイデアル類の数は3 (= (2
2− 1)/1)
である.H (2)
の位数3
の指 標λ
をとり,λ
のHecke L-関数を L(s, λ) = Q
p
(1 − λ(p) Np
−s)
−1で定義するとL(s, f ) = L(s, λ)
を得る. 重さ
1
のcusp form f(z) = η(z) η(11z)
のL-関数が, Hecke L-関数として表すことがで
きた.L
2をK
の導手(2)
の類体とする.L
2はK
上3
次巡回拡大で(2)
の外不分岐. 類体の一意性よ りL
2はQ
上ガロア拡大になる. 実際にL
2 はK
上x
3− 2x
2+ 2 = 0
で定義され,Q
上のその3
次式の最小分解体である.L
2 のQ
上のガロア群はS
3 に同型で, Gal(L2/K) (' Z/3Z)
の生成元τ (位数 3)
と,複素共役ι
で生成される.ρ
をGal(L
2/Q)
の2
次元既約表現の指標とする.S
3 の2
次元既約表現は共役をのぞいてただ一つなので,その指標ρ
はただ一つに定まる.L(s, ρ, L
2/Q)
を指標ρ
に関するArtin L-関数とする.
このときL(s, λ) = L(s, ρ, L
2/Q)
になるので,重さ
1
のcusp form f (z) = η(z) η(11z)
のL-関数が, Artin L-関数として表された.
Deligne-Serre
の定理の類似がη
関数の変換公式から現れた指標に対しても成り立つことをlevel
N = 11
の場合に見た. 保型関数体の種数が1
となる他のlevel N
についても同等のことが言えま すが,η
関数の積から得られる重さ1
のcusp form
を少し変形する必要がある. これについては次 節のlevel N = 19
の場合に触れる.ところで
modular
曲線X
0(11) = Γ
0(11)\H
∗ は種数が1
つまり楕円曲線です.X
0(11) : Y
2+ Y = X
3− X
2− 10X − 20
で定義される.
X
0(11)
の2
等分方程式は,X
3− X
2− 10X − 79/4 = 0
で,最小分解体
L
0はQ
上S
3-拡大である.
判別式は−161051/16
=−2−411
5なので,K = Q( √
−11)
を中間体にもち,L/Q
は2
と11
の外不分岐である.L
はK
上3
次巡回拡大で分岐しうる素点は2
と11
の上にある. 11− 1 = 10
は3
と素なのでL/Q
は2
のみ分岐で,結局先のL
2に一致する.以上のことから, modular楕円曲線
X
0(11)
の2
等分点の体をL
とおく. Gal(L/Q)の2
次元既 約表現の指標ρ
のArtin L-関数 L(s, ρ, L/Q)
についてL(s, ρ, L/Q) = X
n
a
nn
−sとする. M¨ollin変換して
f (z) = X
n
a
nq
2n(q
2= e
πiz)
とおくと,このとき
f (z)
はΓ
0(11)
の指標χ
に関する重さ1
のcusp form
である.3. level 19
level N = 19
のとき,f (z) = η(z) η(19z)
とおく.x = e
2πiz24 とおくと,f (z) = x
20− x
44− x
68+ x
140+ x
188− x
308− x
380− · · ·
すべての項がx
4 の冪なので,y = x
4= e
2πiz6 とおくと,f (z) = y
5− y
11− y
17+ y
35+ y
47− y
77− y
95− y
119+ y
125+ · · ·
となる. これも前節の
level N = 11
のときと同様に, Γ0(19)
のcusp i∞
でのf (z)
のFourier
展 開である. Rademacherの変換公式により,σ =
µ a b c d
¶
∈ Γ
0(19)
に対してf (σz) = χ
5(σ) (cz + d) f (z)
が成り立つ. ここで
χ
はΓ
0(19)
の位数6
の指標で,χ(σ) = ¡ −19
d
¢ χ
6(σ) χ
6(σ) = e
2πi6 (ac+cd+bd−bdc2+3c)で与えられる.
χ
6 についてもう少し詳しく見ると,χ
6: SL
2(Z)
mod 6−−−→ SL µ
2(Z/6Z) −−→ hζ
6i ⊂ C
×1 1 0 1
¶
7−→ ζ
6( = e
2πi6)
前節と同様に, Γ0
(19)
の2
つのcusp 0, i∞
でのf (z)
のFourier
展開を計算するとf (z)
がΓ
0(19)
の指標χ
5に関する重さ1
のcusp form
であることがわかる(f (z) ∈ S
1(Γ
0(19), χ
5)). level N = 11
のときと違って指標χ
の位数が2
でないので,f (z)
を自乗して重さが2
のものを作っても指標が 消えない. 上のχ
の定義式より, kerχ ⊃ Γ
1(19) ∩ Γ(6) ⊃ Γ(6 × 19)
だからker χ
も合同部分群 である. cusp formf (z)
は合同部分群ker χ
に関する重さ1
のcusp form (f (z) ∈ S
1(ker χ))
と 見ることもできる. kerχ
はそれより小さなlevel
の主合同部分群を含まないので, この見方ではf (z) = η(z) η(19z)
のlevel
は114 (= 6 × 19)
となる. 前節のη(z) η(11z)
のときはその指標の核は
Γ(22)
を含む(Γ(11)
は含まない)のでlevel
は22 (= 2 × 11)
となる. これはあとでHecke
作 用素を考えるにあたり必要となる.S
1(ker χ) = M
5k=0
S
1(Γ
0(19), χ
k)
S
1(Γ
0(19), χ
1)
に属するcusp form g
が取れたなら,f g
はΓ
0(19)
の変換に関して指標の部分が 消える. つまりf g ∈ S
2(Γ
0(19))
になる. 逆にF
をΓ
0(19)
に関する重さ2
のnewform
とする と,F/f
はΓ
0(19)
の指標χ
に関する重さ1
のmodular form
になる. Γ0(19)
のcusp
でzero
で あることがわかればF/f ∈ S
1(Γ
0(19), χ)
を得る.η
関数はもともと上半平面で非零正則なので,F/f
も上半平面で正則である. あとΓ
0(19)
の各cusp
で零であればよい. 2πi F(z) dz
はmodular
曲線X
0(19) = Γ
0(19)\H
∗ の正則微分形式であり,またX
0(19)
は種数が1
なので微分因子の次数 は0 (= 2 (1 − 1))
なので極も零点ももたない.X
0(19)
の任意の点において局所変数をt
とする と2πi F (z)
dzdt は非零正則である. Γ0(19)
のcusp x
0 をi∞
にうつす整数係数の一次分数変換ϕ (∈ SL
2(Z))
を適当にとると,x
0 の局所変数としてt = e
2πiϕ(z)/h(h
はある正の整数)がとれる.2πi F (z) dz
dt = h t
−1F (z) dz
dϕ(z) = h t
−1F (ϕ(z))
F (z)
はcusp
で丁度1
位の零点になっている. 例えばcusp i∞
ではq = e
2πiz が局所変数 でF (z) = (const) q + (higher terms) (F
は正規化されていたので(const)
は1)
と展開される.一方
f (z) = η(z) η(19z)
のcusp i∞
での展開は先に求めていた.y = e
2πiz6 で,f (z) = y
5+ (higher terms)
であった. 従ってq = y
6に注意すればF/f = (const) y + (higher terms on y)
を得 る.F/f
はcusp i∞
で零点になる. もう一つのcusp 0
でも同様にして零点になっていることがわ かる. 即ちF/f
はΓ
0(19)
の指標χ
に関する重さ1
のcusp form
である(F/f ∈ S
1(Γ
0(19), χ)).
F/f
のi∞
でのFourier
展開を少し計算しておきます.F/f = y + y
7− y
19+ 2y
25− y
43− 3y
55+ y
61− y
73− 3y
85+ 2y
121− · · ·
f
の展開で現れたy
の冪指数は6
を法として5
余り,F/f
の展開で現れたものは6
を法として1
余る. 展開を少し詳しく計算するとF/f
と√
3 f
の係数に数論的乗法性があることが観察できる.実際このことも証明できます. ここで
g
±(z) := F (z)/f (z) ± √
3 f (z)
とおく.g
± ともにker χ
に 関する重さ1
のcusp form
である. それぞれL-関数を作ると,
係数に数論的乗法性があることか らEuler
積表示をもつ. 実際L(s, g
+) = Y
p
L
p(p
−s)
−1 ここで各Euler
因子はL
p(T ) =
1 p = 2, 3
1 + T p = 19
1 − T
2p
はQ( √
−19)/Q
で惰性1 + T
2or 1 − T + T
2p
はQ( √
−19)/Q
で完全分解or 1 ± √
3 T + T
2K = Q( √
−19)
は類数1
で, 2も3
も惰性している. (6)を法とする合同類群H (6)
は位数24
の 巡回群で5
の上の素イデアルp
5= ((1 + √
−19)/2)
で生成される. 位数12
の, (6) を法とするイ デアルの指標λ : H (6) −−→ hζ
12i ∈ C
∗を
λ(p
5) = ζ
12= e
2πi12 で定義するとき,L(s, g
+) = L(s, λ) (= L(s, λ))
を得る.L(s, g
−)
についてもL(s, g
−) = L(s, λ
5) (= L(s, λ
5))
従って,
η
関数の積から得られた重さ1
のcusp form g
± について, そのL-関数は K
上の法(6)
の指標の
Hecke L-関数であることがわかった. L
λ を,指標λ
に関するK
の上の類体とする. 前節同様
L
λ はQ
上のガロア拡大体で, ガロア群は位数24
の二面体群である. 結局L(s, g
±)
はGal(L
6/Q)
の2
次元既約表現の指標に関するArtin L-関数として表すことができる.
ところで
(少し見方を変えて) K = Q( √
−19)
の法(6)
の指標λ
について,λ (λ
11), λ
5(λ
7)
のHecke L-関数は,
重さ1
のcusp form
のL-関数になっていたわけだが, λ
3(λ
9), λ
4(λ
8), λ
6 のL-
関数はどうなっているのだろうか. ここではλ
4 について調べてみる.λ
4 は(6)
を法とする位数3
の指標になるのだが,λ
4 の導手は(2)
になる. つまりλ
4 に関するK
の類体は,導手が(2)
のK
の類体L
2である.L(s, λ
4) = P
∞n=1
a
nn
−sに対して, M¨ollin変換してf
0(z) =
X
∞n=1
a
nq
2n(q
2= e
πiz)
具体的に係数を求めて
f
0(z) =q
2− q
25− q
27+ q
92− q
112− q
217+ q
219+ 2q
232+ q
352− q
243− q
245− q
247+ q
552− q
261− q
263− q
273+ q
277+ q
812+ 2q
283+ q
85− q
295− q
992+ · · ·
さてここで, この関数
f
0 を自乗してみる.f
0(z)
がq
2 の奇関数(奇数次の項しか現れない)
なの で,その自乗はq
2 の偶関数(偶数次の項しか現れない).
だからq = q
2= e
2πiz でf
0(z)
2= q − 2q
3− 2q
4+ 3q
5− q
7+ q
9+ 3q
11+ 4q
12− 4q
13− 6q
15+ · · ·
これはF(z) (Γ
0(19)
に関する重さ2
のnewform)
に等しい!!前節のように
modular
楕円曲線X
0(19)
の等分点の体との関係を調べる.X
0(19)
はX
0(19) : Y
2+ Y = X
3+ X − 9X − 15
で定義される楕円曲線で, 2等分方程式は
X
3+ X
2− 9X − 59/4 = 0
判別式= −19
3/2
46
等分方程式は(X
3− 15X
2− 77X − 87)
判別式= −2
219
3×(X
3+ 4X
2+ 18X + 46)
判別式= −2
219
3×(X
6+ 15X
5+ 86X
4+ 105X
3− 2X
2+ 123X + 38) = 0
判別式= −2
43
319
4 結局L
2 が2
等分点の体で,L
λ が6
等分点の体の部分体(X -座標の体)
になっている.以上の結果は,山本芳彦氏が亡くなる半年前に得たもので,とても不思議な,それでいてとても自 然に見えます. 山本芳彦氏は
F/f , g
± について,もっと踏み込んだ説明を考えました. 素数p
に対して重さ
1
のHecke
作用素を次で定義します. levelN
の重さ1
のcusp form f (z) = P
∞n=1
a
ny
n(y = q
h= e
2πizh)
に対してf |T
p= X
∞n=1
b
ny
nb
n= a
pn+ ¡ −N p
¢ a
n/pと定義します. また
f |U
p= X
∞n=1
a
pny
nと定義します. level
N = 19
の今の場合に戻って,f (z) = η(z) η(19z)
とする.N
0= 6 × 19 = 114
とおく. このときf
とF/f
で張られた2
次元複素線形空間は, Hecke 作用素T
p(p - N
0), U
p(p | N
0)
の作用で閉じていて,その作用は可換である. またT
5 に関してF/f = f |T
5(F/f)|T
5= 3 f
この空間へのT
5 の行列表現はµ 0 1 3 0
¶
なのでF/f ± √ 3 f
が
Hecke
作用素の同時固有関数である. これは先のg
± に他ならない. Hecke作用素T
5 の作用でf ∈ S
1(Γ
0(19), χ
5)
が,f |T
5= F/f ∈ S
1(Γ
0(19), χ)
に移る.S
1(ker χ)
への作用としては閉じて いる.S
1(ker χ)
の部分空間S
1(Γ
0(19), χ) ⊕ S
1(Γ
0(19), χ
5)
はHecke
不変部分空間になっている.さて
Hecke
作用素を使うと,f (z) = η(z) η(19z)
とおく. この節のはじめに定めたΓ
0(19)
の指 標χ
に関してf (z) ∈ S
1(Γ
0(19), χ
5)
である.y = e
2πiz6 で展開したときの冪指数は6
を法とし て5
に合同で, 6 を法として5
に合同なQ( √
−N )/Q
で完全分解する素数5
をとる. このときf |T
5∈ S
1(Γ
0(19), χ)
でf |T
5f
はΓ
0(19)
に関する重さ2
のnewform
になる.g
±= f |T
5± √
3 f ∈ S
1(ker χ)
は正規化されたHecke
固有形式で, L-関数L(s, g
±)
はX
0(19)
の6
等分点の体のガロ ア群の2
次元既約表現の指標のArtin L-関数に等しい.
またX
0(19)
の2
等分点の体のガロア群 の2
次元表現の指標のArtin L-関数を M¨ollin
変換して得られた関数f
0(z)
は, Γ0(19)
の重さ1
のHecke
固有形式 で, 実はχ
3を指標にもつ.4. level 26
保型関数体の種数が
1
でない例level N = 26
の場合を計算する. 重さ2
のcusp form
の 空間S
2(Γ
0(26))
の次元は2
で,Q
上定義された2
つのHecke
同時固有関数をもつ場合である.f
1(z) = η(z) η(26z), f
2(z) = η(2z) η(13z)
とおく. どちらもgcd(1 + 16, 24) = gcd(2 + 13, 24) = 3
なので, cuspi∞
でy = x
3= e
2πiz8 で展開される.f
1(z) = y
9− y
17y −
25+y
49+ y
65− y
105− y
129+ y
185+ · · ·
f
2(z) = y
5− y
21− y
37+ y
85− y
109+ y
117+ y
125+ y
141− y
189− y
197+ · · · Rademacher
の変換公式により,σ =
µ a b c d
¶
∈ Γ
0(26)
に対してf
1(σz) = χ(σ) (cz + d) f (z)
f
2(σz) = χ(σ)
5(cz + d) f(z)
が成り立つ. ここで
χ
はΓ
0(26)
の位数8
の指標で,χ(σ) = ¡ −23
d
¢ χ
8(σ) χ
8(σ) = e
2πi8 ((a−2d−bdc)c0+bd)(c = 26c
0 とおいた)で与えられる.χ
8 についてもう少し詳しく見ると,χ
8: SL
2(Z)
mod 8’−−−→ SL
2µ (Z) mod 8’ −−→ hζ
8i ⊂ C
×1 1 0 1
¶
7−→ ζ
8( = e
2πi8)
ここでmod 8’
はSL
2(Z)
を法µ 8Z 8Z 16Z 8Z
¶
でみたものとする.
f
1, f
2ともにΓ
0(26)
のcusp (4
つ ある)で零になる. 重さ1
のcusp form
である.f
1∈ S
1(Γ
0(23), χ), f
2∈ S
1(Γ
0(23), χ
5)
である.cusp i∞
でのy-展開 (Fourier
展開)に現れるy
の冪指数はf
1 が8
を法として1
と合同で,f
2 が8
を法として5
と合同になっている. 前節level N = 19
のときに定義したHecke
作用素の作用を 見てみる. 素数p ≡ 5 mod 8
をQ( √
−26)
で惰性しない素数とする.p = 5, 13, 37, 61
など. Hecke 作用素をf
1 に作用させると,f
1|T
5= −y
5+ y
13− y
21+ y
37+ 2y
45− 3y
85+ y
109− 3y
125+ y
141+ · · · f
2とは異なるがy-展開の冪指数は 8
を法として5
と合同になっている.f
1|U
13= f
2f
1|T
37= −f
1|T
5f
2 はf
1 からHecke
作用素で得られる. 以下すべてf
2 かf
1|T
5 の定数倍に等しい.f
2 に作用さ せてみるとf
2|T
5= y + y
17+ 2y
25− y
65+ y
81− y
105− 2y
113+ y
121− y
129− 2y
153+ · · · y-展開に現れる冪指数は 8
を法として1
に合同であるが,f
1 とは異なる.f
2|U
13= f
1f
2|T
37= −f
2|T
5これらすべて
f
1↔ f
2 で対称になる.y-展開の冪指数が 8
を法として3
のものと7
のものも作る ことができる. そのためには,素数p ≡ 3 mod 8
をQ( √
−26)
で惰性しない素数をとる.p = 3, 43, 131, 139
など.f
1|T
3= y
3+ y
27− y
35− y
43− y
51− y
91− y
131+ y
139+ 2y
147+ y
179+ · · · f
2|T
3= −y
7+ y
15+ y
39+ y
47− y
63− y
71− y
111+ y
119+ y
135+ y
151+ · · ·
となる. 他のp = 43, 131, 139
ではf
1|T
43= −f
1|T
3f
1|T
131= −f
1|T
3f
1|T
139= f
1|T
3f
2|T
43= −f
2|T
3f
2|T
131= −f
2|T
3f
2|T
139= f
2|T
3結局,
f
1をHecke
作用素で動かして得られる関数の全体のなす複素線形空間をV
26とおくと,V
26の次元は
6
で,f
1, f
1|T
3, f
1|T
5, f
2(= f
1|U
13), f
2|T
3, f
2|T
5 を基底にもつ. この空間でのHecke
同 時固有関数はg
1= 2f
1+ √
3f
1|T
3+f
1|T
5+2f
2+ √
3f
2|T
3+f
2|T
5g
2= 2f
1− √
3f
1|T
3+f
1|T
5+2f
2− √
3f
2|T
3+f
2|T
5g
3= 2f
1+ √
3f
1|T
3−f
1|T
5−2f
2− √
3f
2|T
3+f
2|T
5g
4= 2f
1− √
3f
1|T
3−f
1|T
5−2f
2+ √
3f
2|T
3+f
2|T
5g
5= −f
1−f
1|T
5+f
2+f
2|T
5g
6= −f
1+f
1|T
5−f
2+f
2|T
5である. それぞれについて
L-関数を作ると, Q( √
−26)
の導手が℘
2(2
の上の素イデアル)の冪の イデアル指標のHecke L-関数として書くことができる.
さらにGalois
群の2
次指標のArtin L-
関数になると思われるが,まだ確かめてはいない. 導手が26
のQ
上の楕円曲線の同種類は2
つあ るのだが, Artin L-関数としての表示はそれらの楕円曲線の8
分点の体のGalois
群の2
次指標か らくるものと思われる.f
1(z) = η(z) η(26z)
にHecke
作用素を作用させて得た関数だが,これらから重さ2
のcusp form
を作る.F
1, F
2∈ S
2(Γ
0(26))
をnewform
とする.F
1= q − q
2+ q
3+ q
4− 3q
5− q
6− q
7− q
8− 2q
9+ 3q
10+ 6q
11+ q
12+ q
!3+ · · · F
2= q + q
2− 3q
3+ q
4− q
5− 3q
6+ q
7+ q
8+ 6q
9− q
10− 2q
11− 3q
12− q
13+ · · ·
このときf
1f
2|T
3= −q
2+ 2q
3− q
5+ q
6− q
7− q
8− 4q
9+ 2q
10+ 4q
12+ q
13+ · · ·
= (F
1− F
2)/2
である. 幾つか等式をあげると,F
1= −f
1|T
3f
1|T
5= −f
2|T
3f
2|T
5F
2= f
1|T
3(f
1|T
5+ 2f
2) = f
2|T
3(f
2|T
5+ 2f
1)
これらのことから,