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包括利益計算の体系小 野 正 芳 佐 藤   恵 山 浦 裕 幸

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Academic year: 2021

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<その他(報告書)>

「千葉経済大学共同研究費助成取扱規程」に基づく共同研究

包 括 利 益 計 算 の 体 系

小 野 正 芳  佐 藤   恵  山 浦 裕 幸 

 「会計は企業の動的な活動を会計用語と貨幣数値で表現したもの(井上[1999]

p.4)」である。したがって、会計計算のルールは、モデル化された企業行動を 表現するためのルールとなっているはずである。とすれば、包括利益も、モデ ルとなっている企業行動を表現するために必要なものであると考えられる。で は、会計計算が対象とする企業行動はどのようなものなのであろうか。

 まず企業は資金調達市場において投資家から資金を調達する。そして、その 資金を使って事業を行う。企業が行う事業について、旧くは、企業は国民経済 に資する存在であり、消費者の需要を充足する任務をもつ存在と考えられてき た(森田[1960]p.245)。この企業の任務は財の移転を通じて、あるいは財の 変形を通じて遂行される。

図表1

 図表1は企業と販売市場・調達市場の関係を示したものである。企業は、販 売市場にしかアクセスできない実体に対して、調達市場で取引されている財・

サービスを提供する存在である。例えば、小売業の企業が消費者に対して、店

(2)

頭(販売市場)において、メーカー(調達市場)から仕入れた商品を販売する ような活動である。

 また、調達市場では、財だけでなく、電力や労働力といったサービスも取引 されていると考えられよう。図表1に当てはめると、例えば、製造業の企業が 部品メーカーから仕入れた部品、電力会社から仕入れた電力と、労働調達市場 から調達した労働力を組み合わせて新しい財を創造し、販売市場で販売するよ うな活動を想定できよう。

 このように、企業を、調達市場と販売市場の仲立ちをする存在であり、財の 移転や財の変形を行い、新たな価値を創造する存在であるととらえると、企業 の利益とされるべきは消費者の需要を充足した程度であろう。シュミットは「需 要充足に関する企業の役立ちを測定するには、調達市場と販売市場の間の価格 差を計算しなければならない。この価格差が企業の利益である(Schmidt[1951]

p.56)」と述べた。そして、この活動の結果を表しているのが純利益である。

 また、現代においては、金融市場の発達により、自ら調達市場と販売市場の 仲立ちするだけでなく、他の企業に対して、当該業務を委託することも容易で ある。ある企業(A)が別の企業(B)の株式を取得するのは大きく分けて2 つの理由がある。グループ化と純投資である。

 グループ化(子会社化、関連会社化)の場合、ある企業(A)が別の企業(B)

へ投資するという形式をとっているため、形式上は別の企業に対する調達市場 と販売市場の仲立ちの委託であるが、(A)は(B)を支配しており、実質的に は(A)が調達市場と販売市場の仲立ちを行っていると解釈できる。とすれば、

グループ化の実態は、(A)による財の移転・財の変形であると解釈すること ができ、上記の活動と何ら変わらない。したがって、調達市場と販売市場の間 の価格差を計算し、それを利益とすることが適切であり、連結会計という手段 によって、純利益の要素として計算される。

 純投資とは、ある企業(A)が別の企業(B)へ投資し、(B)からの配当の 受け取りおよび(B)株式の価格上昇を通じて、(B)によってなされた消費者

(3)

の需要の充足の一部を享受する行為といえよう。配当は(B)が創造した価値 からなされる。したがって、(A)が(B)から配当を受け取ったときにその配 当を(A)の利益として記録することは、(A)が価値を創造した場合に調達 市場と販売市場の間の価格差を計算することと同義である。したがって、この 部分についても純利益として計算されることが適切であり、上記の結論とも首 尾一貫している。図表2は純投資の場合の、企業と販売市場・調達市場の関係 を表している。

図表2

 ところで、(B)株式の株価には(B)が新たに創造した価値あるいは今後創 造すると株式市場参加者によって期待されている価値が反映されているはずで ある。また、(B)株式の株価は株式そのものに対する市場における需給等(政 治、金利、為替など当該企業には直接的に関係のない事象を含む)に起因して 変動する部分がある。企業が消費者の需要を充足する任務を持つのであれば、

純投資に関してもその需要を充足した程度を明らかにしなければならず、(B)

株式の株価変動がその充足の程度を表す第一の候補となりうる。しかしながら、

この株価変動には企業固有の事象以外の事柄も含まれるため、純利益と同じレ ベルで会計計算に組み込むことはできない。したがって、その他の包括利益と いう純利益とは区別された区分で計算される必要があるのである。

 包括利益が導入されるまでは、上記の異なる企業活動を1つの利益であらわ

(4)

そうとしてきた。そこでは、実現したもの(純利益)と実現していないもの(そ の他の包括利益)という区分で議論されてきた。しかし、本稿で明らかにした ように、純利益とその他の包括利益は実現と非実現という区分ではなく、対象 となる企業活動の違いである。ゆえに、純利益とその他の包括利益は異なる利 益概念なのである。

 なお、上記結論に至るまでに以下のような成果も得た。

山浦裕幸他[2014]「予算実績差異分析の実際と予算制度の問題点」『産業経理』

第73巻第4号,産業経理協会,135-152頁。

小野正芳[2014]「ウィッティントンと剥奪価値」日本会計研究学会スタディ グループ第13回研究会における単独報告。

小野正芳[2013]「包括利益計算におけるリサイクルの違い-日米における純 利益計算に対する視点の違い-」,『経理研究』第56号,中央大学経理研究所,

275-284頁。

小野正芳[2013]「チェンバースと最適適合」『学説研究による会計理論構築の 探求』,日本会計研究学会スタディグループ中間報告書,115-125頁。

小野正芳[2012]「包括利益計算におけるリサイクルの違い-日米における純 利益計算に対する視点の違い-」日本会計研究学会第71回大会における単独 報告。

佐藤 恵[2013]「財務的弾力性の現代的意義-リース会計を考察の起点とし て-」『千葉経済論叢』第49号,19-34頁。

佐藤 恵[2013]「使用権モデルにおける説明概念の二義性-取得原価主義と の整合性の観点から-」日本会計研究学会第72回大会における単独報告。

佐藤 恵[2012]「使用権モデルの財務的表現の検討-セール・アンド・リー スバック取引における売却損益の認識-」日本会計研究学会第71回大会にお ける単独報告。

(5)

〈引用文献〉

井上良二[1999]『新財務諸表論』。

森田哲彌[1960]「期間利益の分配可能性と尺度性 -実体資本維持説の利益 概念を中心にして-」『一橋大学研究年報 商学研究』第4号,227-303頁。

F. Schmidt[1951]Die organische Tngeswertbilanz.

(おの まさよし 本学准教授)

(さとう めぐみ 本学准教授)

(やまうら ひろゆき 本学教授)

参照

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