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齊藤 純平

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Academic year: 2021

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麻布大学雑誌 第 23 巻 2011 年

【背景・目的】

近年,食生活の欧米化により,牛脂やバターなど の油脂・畜産物を摂食する機会が増えたために脂質 の過剰摂取が問題となっている。その結果,生体内 の調節バランスが崩れ,肥満や高血圧,糖尿病など の生活習慣病が発症する可能性が高くなると考えら れている。脂質の中でも飽和脂肪酸や一価不飽和脂 肪酸は,主にエネルギー源として利用されているが,

多価不飽和脂肪酸は,成長・生殖,中枢神経系等の 生体調節に重要な役割を果たしていることが知られ ている。多価不飽和脂肪酸には,その構造の違いか らリノール酸やアラキドン酸に代表される n-6 系脂 肪 酸 とα- リ ノ レ ン 酸 や エ イ コ サ ペ ン タ エ ン 酸

(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)などの n-3 系 脂肪酸に分けられ,それぞれの脂肪酸の役割に注目 が集まっている。食生活における脂質の過剰摂取が 問題となっている状況で,n-3 系脂肪酸のみ,摂取 不足が起因する多くの病的症状との関係が検討され ている。

n-3 系脂肪酸である DHA は脳組織に選択的に蓄積 し,記憶学習,うつ症状などの脳機能の改善に効果 のあることが知られている,網膜においても DHA は高濃度に蓄積し,その視覚機能に重要な役割を果 たしている。視覚機能を決定する主要因が網膜であ ることは明らかであるが,加えて眼周辺器官による 眼球の保護と至適環境の維持も重要な因子となりう る。この眼周辺器官には,涙腺,マイボーム腺,結 膜があり,それぞれ特徴づけられる涙液を分泌して いる。涙腺は主に眼周辺の潤いを保ち,細菌からの 保護を目的とした殺菌性水性物質を分泌する。マイ ボーム腺は涙液の最表層にある油性物質を分泌する

組織で,水性物質の蒸発を防ぐ働きがある。結膜か ら分泌されるのは粘着性物質のムチンで,眼球表面 と水性物質の間隙にあり,水性物質を眼球表面に張 り付ける働きをしている。これらの器官の機能低下 は,涙液減少を引き起こし,結果的に視覚機能の低 下を呈することになる。

そこで我々は,眼球の表面が乾燥して傷や障害を 生じ,視覚機能異常を起こすドライアイに着目し,

n-3 系脂肪酸欠乏マウスのドライアイ症状と涙液分 泌に関与している器官との関連について検討した。

【方法】

飼料は,AIN93G を基礎飼料とし,n-3 系脂肪酸を 欠乏させた飼料(n-3  Def,  18:3n-3;  0.15 %,  18:2n-6;

16.0 %),または含有した正常飼料(n-3  Adq,  18:3n- 3;  2.98 %,  18:2n-6;  15.5 %)をオリエンタル酵母株式 会社に依頼し作製した。動物は,日本チャールズリ バー㈱より購入した離乳直後の Crj:CD-1(ICR)系 雌性マウスに n-3  Def または,n-3  Adq を与え,飼 育・繁殖して得られた第 2 世代 44 週齢時の雄性マウ スを使用した。また,全ての個体は,角膜の損傷を 避けるために個別飼育し,授乳・飼育状態による偏 りが出ないように,各群の個体は全て母獣が異なる よう群分けした。

涙量測定には,ZONE-QUICK(昭和薬品化工株式 会社)を使用した。ZONE-QUICK はフェノールレッ ド糸で,瞼と眼球の隙間に 30 秒間糸を挟み,弱アル カリ性の涙液に反応し赤色に変色した部分を涙量と して測定した。

涙量測定後,それぞれの飼料群を均等に二分し,

魚油を 7 日間経口投与した。投与量は,DHA が 5 mg/

100

齊藤 純平

1

,原馬 明子

1, 2

,渡邉 芳剛

1

,川端 二功

2

,守口  徹

1

1

麻布大学 食品栄養学研究室,

2

日本水産 生活機能科学研

第 31 回麻布環境科学研究会 一般演題 9

(2)

第 31 回麻布環境科学研究会講演要旨

animal/  day となるように調整し,対照油にはパーム 油を用いた。投与終了後,涙量を再度測定し,その 翌日に解剖を行い,涙腺,マイボーム腺,網膜を採 取して脂肪酸分析を行った。

【結果・考察】

投与前の涙量は,n-3 Def 群は 5.91 ± 0.59 mm,n-3 Adq 群 9.64 ± 0.79 mm と,有意に n-3 Def 群で涙量が 減少し,ドライアイ症状を呈していると判断された

(p < 0.01)。これらのマウスに魚油を 7 日間経口投与 し,再度,涙量を測定したところ,n-3 Adq の魚油群 と対照群では有意な差は見られなかったが,n-3  Def の魚油群と対照群では 11.75 ± 2.11  mm と 7.07 ± 0.89  mm で魚油の投与による明らかな上昇が認めら れた(p < 0.05)。これらの結果から,n-3 系脂肪酸 の欠乏により涙量が低下するが,魚油などの n-3 系

脂肪酸を摂取することにより涙液が回復することが 示唆された。

また,涙線,マイボーム腺,網膜の脂肪酸組成で は,n-3 Adq 対照群と比較し n-3 Def 対照群で EPA や DHA 濃度は有意に低下していたが,n-3  Def  魚油群 では明らかな上昇が認められた。このことから,n-3 系脂肪酸欠乏による眼周辺組織の機能低下は魚油の 投与により改善し,涙量の向上に繋がった可能性が 示唆された。

以上のことから,n-3 系脂肪酸欠乏による涙量の 低下は,n-3 系脂肪酸の摂取で改善する可能性が考 えられた。また,魚油投与後の涙腺,マイボーム腺 において n-3 系脂肪酸の上昇が観察されていること から,n-3 系脂肪酸の摂取は,水性,油性,両方の 涙成分の分泌にかかわる機能低下に有効である可能 性が示唆された。

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参照

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