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一合成洗剤と住民運動一

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合成洗剤の諸問題について(IV)

一合成洗剤と住民運動一

家政科衣料学研究室 吉 田 紘 子

1まえがき       おける企業からの麟物こ対しての公害反対運動も含ま

れる。このように「自己の生存と環境とのかかわり」を 人間の活動が,その健康や生活の場を破壊すること一  対象化して認識することにより,人間の基本的権利とし 公害一は産業革命以後,特に第二次大戦後,生産力の急  ての「生存権」「生活権」「環境権」を自ら守る権利意 速な増大によって大きな社会問題となったものである。  識が住民運動の原動力になっている。

また,これは国際的レベルでも問題となり,1972年に開   一方,消費者運動もまた,1970年代,コンシューマリ かれた国連人間環境会議では,「よき人間環境を享受す  ズムの胎騰によって,「消費者の生活・生存に対する侵 ることは人類の共通の権利であり,各国の政府は環境の  害を排除し,自らの生活・生存を確立するための権利を 保全と回復をあらゆる政策の中で最優先する翻をもつ 自ら守鋤ための運動へと質的変換が起こり,従って,

        1)こと」を宣言した。      地域社会における生活を守る運動として展開する消費者

日本における公害問題は,1960年代は,経済高度成長  運動は,当然公害の問題をも含むようになってきた。

下で発生した水俣病,イタイイタイ病,四日市ぜんそく,  このように,新しい公害問題の解決には,消費者運動 PCB汚染などに代表される企業公害が主であったが,  と環境破壊に対する反公害運動,さらには労働運動との 1970年代に入ると,これらに加えて,自動車公害やゴミ  共闘が求められており,合成洗剤の問題はこの典型的な

・合成洗剤問題に象徴される流通・消費過程で発生する  例といえよう。従って,「合成洗剤追放運動」は,消費 公害が増えており,公害の複合化,都市から農村へと全  者運動より,住民運動としてとらえた方力㍉適切である 国的な汚染の拡大が深刻な問題となっている。      と考える。

消費過程での公害としては,自動車公害や,我々の生

活を便利にした生活の中の合成化学物質一合成洗剤,合      資源利用点 成繊維.プラスチックス,食品添加物など一による公害      自然保護運動

が顕著な例である。合成化学物質は物質自体の安全性   自然還流過程

生産過程 が問題とされてきたが,消費過程を経て,廃棄物として      公害反対運動

自然界に放出されて環境汚染物質となり・また,生態系    廃棄点    廃棄過程

生産点

へ大きな影響を及ぼしてしゐことも社会問題となってき   塁霧灘動 /

ている。      ノ       ! 住民運動もまた,1960年代の「企業の犯罪的行為を厳      ゴミ運動  消費奪運動  /      

しく追求する」ことから,「自らがその鋸繊で公害 廃棄過程 消斎一一 瀬過程

都市公害反対運動

を出さないようにし,主人公として町づくりをすること   (注)條原一「現代民主主義と都市」σ現代都市政策I」岩波書店,       2)       昭和四七年,113頁)かもとめられるようになった。」篠原は生産・消費の循

環過程において生ずる環境問題への住民運動を図1の      図1 現代社会の生活構造と市民運動 よう纐型化してい轟・冶成化学物質についてみると,

物質自体の安全性の追求が消費者運動であり,廃棄物に   合成洗剤は1956年に市販された当初からその安全性,

よる環境破壊に対しては,都市公害反対運動に,ゴミ運  環境への影響が,一部の研究者,消費者の間では問題と 動に,さらに,自然保護運動になる。また,生産過程に  され続けており,有害論争が繰り返されてきた。その中

(2)

126       茨城大学教育学部紀要 第26号

で,合成洗剤の安全性に疑問を抱く住民による「石けん  基準に従わない場合は有害」とわずかながら,企業,行 を使う運動」「合成洗剤追放運動」は次第に大きくなり  政は態度を変えてきている。これについては・次章で詳 単に人体への安全性を問題にする消費者運動から,環境  しく検討したい。

汚染を問題にする反公害運動さらには・環境破壊によ   3 住民運動と企業の動き って直接被害を受ける漁民,あるいは水道労働者達の運

動との共闘へと発展してきた。       合成洗剤は,第一次世界大戦中,ドイツにおいて食用 著者は,こ工数年来,この合成洗剤問題に関心を抱い  油脂が欠乏したため,石けん製造用に食用油脂の使用が てきた。第1蜜モは,合成洗剤の約80%を占めている。 禁止されたたむ石けんに代る洗浄剤の研究が進められ ABS系合成洗剤の安全性の問題について検討した。有  たのを契機として,各国で研究が進められた。その後も 害論.無害論いずれの研究においてもABSは「急性毒  輸入油脂の国家管理食糧統制などのため合成洗剤の研究 性,慢性毒性,催奇型性」など毒性を有する結果を示し  は国策という支柱に支えられて発展した。現在合成洗剤 ており,「明きらかに有害であることが証明されるまで  の約80%を占めているアルキルベンゼンスルホン酸塩は は,使用基準内で使用してもよい」か,「明きらかに無  日本に,1951年に輸入された。ABS系合成洗剤の性能向 害であることが証明されるまでは使肘べきではない1上のため渤剤(リン醐・ヶイ光増白潮の研究が進

ゥの安全性についての見解の相違にすぎないことが分っ  み粉石けんに劣らぬ性能の開発ができたこと・電気洗た た。最近,ABSにみられる毒性は,高級アルコール系  く機の登場,石油化学の発展などと関連して,また,厚 ネど他の合成洗剤にもみられることが儲されている魅 生省の「安全性の保証冶所用の中性酬の使馳欄 で,これは合成洗剤に共通のものと考えられる。    など行政的措置により,急速に生産量が増大している。

第2螂こお、、て鳳実際に家庭で使用されている洗剤 ・962年・こ,ABSの有害論,環境汚染論,誤飲による   \について,その特性や,消費過程で合成洗剤の諸問題が  中毒死事件などがマスコミに大きく取り扱われ・合成洗

どのように取り扱われているかを検討した。一般にいわ  剤の安全性について問題があることが指摘されたが,メ れている合成洗剤の利点については疑問の点が多く,家  一カーは厚生省の「通常の使用ならば無害」論を盾として 政学,家庭科教育では「便利さ,経済性」の点から,合  合成洗剤の安全性,「白さと香り」など見た目の洗浄効 成洗剤を評価しており,この科学における「合理的な生  果のPRによって普及に努めてきた。

活」をエコロジカルな視点を入れて,考え直す必要性を   しかし,合成洗剤に対する消費者のばく然とした不安 指摘した。      感や「粉石けんを使う」運動などの積極的な住民運動に 第3羅おいては合成洗剤による,海剛1,湖沼,よって冶成洗剤・一カーの態度は次第に変イヒをみせて 地下水,土壌などの広範囲にわたる環境汚染,生態系へ  いる。

の影響,他の汚染物質との複合作用など我々の生活に及   1)安全性について

ぽす図りしれない影響が明きらかとなった。        1971年には合成洗剤の品質標示の改正に伴って,「幼 本稿においては,これまでのまとめとして,合成洗剤  児の手の届かないところにおく」・「使用基準を誤まっ に関する住民運動の動きをみることによって,この問題  た場合,また,体質によってはハダ荒れに注意する。」

の解決の方向を探りたいと考えた。      「万一飲みこんだ場合は応急措置を行なう。」など合成 洗剤の危険性についての注意や,使用方法についての注 2 合成洗剤問題の概要      意を明示するようになった。さらに,1973年には食品衛 合成洗剤問題の概況を知るたぬ住民運動,企業,行  生法の一部改正にょって,台所用洗剤の成分規格と使用 政,マスコ㍉などの動きを,「台所の恐怖」柳沢・山越  基準が設けられた。これによってメーカーは合成洗剤で 著(オール日本社)より,年表(表1)にまとめた。住  手が荒れる人に脂肪酸石けんへの切り換えをすすめる表 民運動については,主なものについて,著者が調べた。  示や使用基準に従った使用方法の表示が義務づけられ

水俣病,イタイイタイ病など他の公害問題と同じく,  た。

      また,「無公害洗剤」として,高級アルコール系,非企業と行政が一体となって住民運動に対置している。し

ゥし住民醐の動き縦って,「完全無害」から, イオン系などABS以外の界面活性剤を使っ姶成瀞ド1)

「通常の使用ならば無害」,「幼児には有害」,「使用  の開発が進められている。しかし,これらの界面活性剤

(3)

吉田:合成洗剤の諸問題について(π)      127

表1 合成洗剤問題年表

住民運動・マスコミ

行政(厚生省・通産省・地方自治体)

企業 ・ 研 究 者 1950ABS原料輸入。国内業者調

査を開始。

1951ABS合成洗剤国産1号製品

「ニューレックス」日本油脂から発 売。

1956厚生省 中性洗剤の安全性を保 証。環境衛生部長,全国都道府県 知事あてにABS合成洗剤による

野菜,食器類の洗浄を指導。

日本食品衛生協会,「ライポンF」

1960小谷新太郎氏,市販中性洗剤 を「日本食品衛生協会推奨品」に の皮膚に及ぼす影響について発

指定。 表。

1961横浜国立大学教授山越邦彦, 1961厚生省,日本食品衛生協会にメ 1961 ミヨシ化学社員,原因不明の

「処置なき汚水」を朝日新聞に

一カーの誇大広告を戒めるよう指

事故死。社員の健康診断実施。

発表。合成洗剤の公害問題に一

導方を要望。

ミヨシ化学パンフレット配る6

石を投ず。 1962厚生省公式見解(無害論)発表。 1962警察病院皮膚科部長,ABSの

1962柳沢氏らABS有害論を全国有 国会において中性洗剤の安全性に 皮膚浸透を発表。柳沢氏らのグ

力紙に発表。 ついて論議。

ループ研究成績発表(お茶の水

婦人公論 合成洗剤について特 日本食品衛生協会,厚生省への答

医学会)

集。

申として「通常の使用ならば無害」

庵島氏 中性洗剤「ライポンF」 の見解発表。

をミルクと誤って飲み急死す。

厚生省,無害答申の線に沿い,全

全国有力紙報道。 国都道府県衛生部長に主旨を徹底。

業界に「厚生省証明又は推奨」「完

全無害」の広告表現を避けるよう

通達。

1963通産省 合成洗剤の品質表示を 1964「世界保健機構(WHO)の機 義務づけ。

関誌にガンの原因につき洗剤が 衆院法務委員会で庵島氏の死につ 関係する」との記事掲載(朝日

いて質疑。

新聞)ハード洗剤の毒性と公害 1965衆議員社会労働委員会において 1965合成洗剤協会が自主的にソフ 問題掲載(朝日新聞) ABSの毒性と公害問題が追求さ ト化を始めた。岩手大田中氏 1966婦人民主クラブ 中性洗剤の

れ,国務大臣は中性洗剤の有毒性,

「妊娠している白鼠に中性洗剤

公害についてのパンフ作製,学 公害を認めた。厚生省は中性洗剤

を与えると脱脳仔が認められる」

習会

の使用濃度によっては人体に障害 と発表。

を起こすので,注意を徹底するよ 1967 「中性洗剤使用の実態とその う各都道府県等衛生主管部長あて 影響」が日本医学会総会におい

に通達。

てとりあげられた。

1968衆院予算委員会において,園田 1968合成洗剤の80%がソフト化さ 厚生大臣は「農業の溶剤と洗剤の れる。

溶剤は,近年の奇型児・不自由児

東京都立衛生研究所山岸氏は,

等の増加の原因ではないか」と発 DBSにより生体に免疫を生ずる

言。 ことを発表。

(4)

128      茨城大学教育学部紀要 第26号

住民運動・マスコミ

行政(厚生省・通産省・地方自治体)

企 業 ・ 研 究者 1969合成洗剤論争と題し,「有害 1969三重県立大学三上氏,メダカ

論けとぽす,生命忘れた企業向 1970文部省・厚生省 「中性洗剤」 とマウスの実験からメダカを柱

き行政」を掲載(読売新聞)

のシャボン玉使用について経口的

湾曲を主とした奇形仔となり,

1970都民生活の会,洗剤班,活動 に体内に入った場合有害であると

マウスでは通常の使用で外脳症,

始める。

してi関係方面に指導。 口蓋裂等の奇型を生ずると発表,

1971米ニューヨLク市郊外サフォ 1971通産省・厚生省は,合成洗剤の 名古屋市立大学佐藤氏は,ネズ 一ク郡で合成洗剤の販売,使用 表示を改正(資料1) ミの実験から発ガン物質とABS

を全面中止。

を同時投与するとガン発生率は

1972洗剤のための連絡会結成。

数倍増加することを発表。

1973合成洗剤追放西日本集会,東 1973食品衛生法の一部改正により,

日本集会開催。

合成洗剤の成分規制,使用基準が

1974 「きれいな水といのちをまも 定まる。 1974花王石けん,ライオン油脂で

る合成洗剤追放全国集会」開催。

東京都は,独自の「中性洗剤の安

粉石けんの販売開始。

全性についての研究」から「小中 石けん洗剤工業会「合成洗剤と

学校の給食には中性洗剤を使わず,

粉石けん」のパンフで,合成洗 生野菜果物は,今後水洗いと塩素 剤の無害をPR。

殺菌で充分である」との通達を出 1975リン分の含有率の減少化(無 す。厚生省は合成洗剤の安全性を

リン洗剤,濃縮洗剤の発売。)

検討するために, 「合成洗剤研究 班」を発足。

1976 「合成洗剤研究班」班長の個人

見解として「LASには催奇性なし」

と発表。

通産省 粉石けんの品質表示を義 務づける。

が安全であると確認されているわけではない。     のとなることが予測されている。

無害を主張していたメーカー→よ,消極的ではあるカ㍉   粉石けんが好調に伸びている理由について,主力の中 合成洗剤の毒性を認めざるをえなくなっているといえよ  小メーカー各社では,石油化学製品である合成洗剤に対 う。       する消費者の不安感が高まり,粉石けんの長所短所をわ

2)粉石けんの販売について      きまえた上での根強い需要であり,着実に定着し始めて

「粉石けんを使う運動」をしていた人達は石けんの供  きたためとみている。これに対し,花王石けんやライオ 給を中小のメーカーに頼っていたが,「石けんを作らせ  ン油脂などの大手洗剤メーカーは「合成洗剤は,粉石け

る運動」をも進めていた。消費者の要求を入れて,1974 んのもつ洗たく物の黄ばみなどの欠点をカパーするもの 年には,合成洗剤の二大メーカーが「宣伝はしないが石  として消費者に受け入れられたもので,この点に気がつ

        10)

ッんも製造販売する」と態度を変えた。粉石けんの出荷  けば消費者は再び合成洗剤に戻ってくる」と依然強気の        10)

ハは表2のように,消費者運動の大きくなった,1973年  姿勢を崩していない。このようにいわば石けん運動とと には大きく伸びているが,翌年は作られた石油パニ・ク  もに歩んできた中小メーカーと,一方的に合成洗剤を住 による品不足,節約の余波で,大きく後退したが,1975 民におしつけてきた大メーカーの体質の差がはっきりあ 年はほ讐1973年並みの水準まで回復している。1976年1  らわれている。

月の出荷量前年度比は,合成洗剤は横ばい状態であるの   流通段階の状況を知るために,水戸市内のデパート,

に対し,粉石けんは210%と約2倍に増加している。(表  スーパーの市場調査を行なった。表4のように粉石けん 3) 1970年度の粉石けんの出荷量は近来になく多いも  の種類,販売店数は増えている。粉石けんの種類は1973

(5)

吉田:合成洗剤の諸問題について(】V)      129

表2 洗たく用石けん生座量,出荷量推移 に,さらに1976年にはスーパー開発の製品が加わり7種

生産量 (t) 類に増えている。水戸市内で粉石けんを置いている小売

固形 粉末

出荷量

在庫量 店数も1973年は,デパート2店,小売店1店のみであっ 1970年計 36,821 21,437 15,389 36,744 1,723 たのが,住民の「石けんを作らせ,売らせる」運動の中 1971年計

33,397

18,994

14,403

33,774 1,346 で次第に増え,本年9月の時点では,市内のほとんど全 1972年計

30,060

15,076 14,984 29,785 1,621 てのデパート,スーパーにおかれている。特に,消費者 1973年計

37,273 16,603

20,670 37,951 859 運動に敏感に対応するあるスーパーでは,「石けんコー 1974年計 15,517

ナー」を作り,粉石けんは自社製品を含めて5種類,シ 1975年計 20,392

ヤンプー,台所用の石けんを取り揃えていたことは注目

に値しよう。

表3 石けん・洗剤の生産,出荷,在庫      価格の点では,せんたく機(30のによるせんたく1回  実績と前年対比

当たり粉石けんはα8円から1a7円であるのに対し,合 1976年1月     (単位:トン) 成洗剤(濃縮洗剤)は9円前後であり「高い粉石けん」

石 品 目

生産雛瀦 出荷雛隅 在庫 である。また,大手スーパーの開発した粉石けんはもっ

浴  用

5851i 162   ,S,071:148 5,679 とも安く,合成洗剤と価格にあまり開きがない。しかし,

洗 固型

6911 92   0U99; 85 422 合成洗剤大手メーカー花王の粉石けんは,一番高く,他

粉末   5

P,904;215

  :

P.7841210 1,607 の中小メーカーの製品の2〜3割高となっている。価格

粉  末

t  体

27.5561104

@  3P2705;120

@  3

   ,Q6.6261108

@  2P0,240: 89   「

11,119 U,867

の問題は,「石けんを使う運動」の障害となってきたし,

。後はより大きな障害となると考えられるので,次の段 階として,「安く作らせ売らせる」ことを追求していか 表4 市販粉石けんの種類,販売店数価格

なければならないだろう。

@3)環境汚染について

販 売 店数 i30Z)に洗たく機 ABSによるハード洗剤の泡公害など水質汚染につい 粉石けんの種類

  11)

P973年 1975翠) 1976年

よる洗た ュ1回当り

フ価格円

ては,1965年,生分解性のよいソフト型LASへの切り b 自主的縫めてき認しかし旧本の現状では,

謄蔭縞旨ζ 1 1 1 12.7 フト化の効果はなく,合成洗剤による水質汚染は進む一 福ナある。これに対して,メーカー側は,合成洗剤によ

ミヨシコナセッケン

iミヨシ化学) 1 4

3

10.7〜12.7 る環境汚染は企業の責任ではなく,下水道施設の不備に るもので,行政の責任であると主張している。

花王コナセッケン

i花王 石鹸) 3

2

16.7 一方,合成洗剤に含まれているリン酸塩による水質汚

濁については,湖水や海水の富栄養化の大きな原因として

ニッサンコナセッケン

(ニッサン化学) 1 1 10.7 ビワ湖霞ケ浦などで問題となってきている。これに対

ジ ャ ス  ミ ン しては.リンの含有率を12%以下(現行15%以下)に自

(太陽 油脂)

2

2曾 125〜13.5 主規制しており,非イオン系界面活性剤を使った無リン ダイエー粉石けん

iダ イ エ ー) 1 9.8

洗剤や,濃縮洗剤などの開発がすすめられている。濃縮 剤は.省資源エネルギーの洗剤とのキャッチフレーズ 皆さん石 け ん 1 13.6 で,1975年7月に花王石鹸が,11月にライオン油脂が発

表して以後,ほとんどの洗剤が濃縮化された。これは,

注1)販売店は水戸市内のデパート3,スーパースト 原材料の節約や輸送面での経費節約など,コスト引き下 ア4店を調査した。禿一ン店は1店と数えた。   げのメリヅトが大きいこと,使用量が従来の洗剤の半分 注2)価格は1976年9月現在のものである。     ですむたみ洗たく排水中に含まれるリン分の含有量が

自主規制以内におさえられ器3差いう.リ。トも持って、、

年は2社の2種類のみであったのが,1975年には5種類  るためが主な理由である。

(6)

130       茨城大学教育学部紀要第26号

このように,洗剤の質的変化によって,住民側の要求  のアワによるヨゴレ」,「カシンベック病の発生」など を消極的ながら一部とり入れる一方で,科学者を  汚水による公害問題や,庵島氏の中性洗剤誤飲による死       注2)

ョ員して合成洗剤の安全性,無公害性の裏付け,「合成  亡事件は住民の間に,厚生省に対する不信感を抱かせた 洗剤と粉石けん(日本右鹸洗剤工業会)」,「さわやか  にすぎない。この当時から,「合成洗剤追放」運動にか な暮らしと健康なからだ(ライオン家庭科学研究所)」  かわり始めている団体はいくつかあった。例えば,新潟       16)

ネどのパンフレットや,家庭科教師,消費者に対する学  県食品生活改善普及会は「生命を守る運動として慢性毒 習会の企画などにより.合成洗剤の安全性についてキャ  性試験を実施しないで許可した添加物を使った食品を買

ンペーンし,「合成洗剤追放」の住民運動に対置してき  わない活動を実施していて,厚生省を頂点とする食品衛 ている。       生行政に強い不信感をもち始めていたので,「合成洗剤 で野菜,果物を洗浄することについても不安をもち,自 4 住民運動と行政      主的に学習を深め,その中で「合成洗剤の毒性問題,環

 水俣癒イタイイタイ病など他の公害問題にみら札る  境汚染問題」についての認識を深め,「合成洗剤追放」      17)ように,合成洗剤問題においても,企業と政府,自治体  運動へと発展させている。また,婦人民主クラブは「ほ

との癒着がみられ,常に政府が企業擁護の立場に立って  んとに無害かどうかを知るために,中性洗剤の公害につ きている。      いてのパンフを作製し学習をつみ重ねながら,中性洗剤 合成洗剤が企業化され始めた1956年には,洗剤容器に  反対の運動を地域,地域で始め」ている。さらに,「国 表5のように「厚生省内食品衛生協会推奨品」,「厚生  民の健康はそっちのけで儲け本位の企業主義,それを擁 省指定」,「厚生省実験済」,「厚生省証明」などと洗  護する政府の無責任とにぶつかり,いよいよ運動を強く 剤が人体に無害であることを「厚生省の権威づけによっ  して禁止にまでもっていかねばと決意し,『買わない,

       14)

ト保証している。また,厚生省環境衛生部長は,全国都  使わない』運動に発展させていった。」と合成洗剤の危 道府県知事あてにABS合成洗剤による野菜,食器類の  険性を住民に普及させ,その使用をやめさせる運動と同 洗浄を指導するよう通達を出している。このように,厚  時に,厚生省,通産省など政府や各地方自治体への請願 生省は合成洗剤の無害性や使用することを積極的にすす  抗議行動を起こし,草の根的住民運動の拡大を図ってい めて,合成洗剤の普及に大きな役割を果している。    る。

これらの結果,工970年には厚生省,文部省からあいつ

表5 中性洗剤の包装例 いでシャボン玉禁止の通達が出された。中性洗剤の原液 厚生省実験証明 または,2〜3倍液を使用すると,石けんをとかし松や 1. 蜘虫卵が簡単に洗い落されます。 にかグリセリンをとかすよりも,手軽にシャボン玉遊び a 毒性がなく,衛生上無害です。 ができるということで,教科書,児童書,指導書などが 厚生省内日本食品衛生協会推奨品 _剤ことりいれてし轟,、97。年7月セこ厚生省は「夏季 における児童の事故防止対策の一項目として,また文部       15)

P960年には小谷氏によるABSの皮フ障害について,  省は「幼稚園教育課程編成にあたってのシャボン玉遊び また,1962年には柳沢氏らによ・る「ABS合成洗剤は無害  の取り扱いについて」の通達を出して,シャボン玉遊び ではない。」との発表が契機となって,合成洗剤の安全  への中性洗剤の使用を禁止している。この理由は,文部 性についての問題が大きくなり,国会でもとりあげられ  省の通達によると「中性洗剤が経口的に体内に入った場 た.厚生省は食品衛生調査会を通して「科学的」に調査  合に有害であることが指摘されており,幼児がシャボン した結果,。「中性洗剤を野菜,果物類,食品等の洗浄に  玉遊びの際に,誤って中性洗剤を吸引することが予想さ 使用することは洗浄の目的から甚だしく逸脱しない限り れますので」と中性洗剤の経口毒性をあげている。

人の健康を害う恐れはない」,すなわち,「通常の使用   さらに,1971年には家庭用品品質表示法の改正によっ ならぽ無害」との見解を出した。これは現在に至るまで, て合成洗剤の品質表示が義務づけられた。これは(資料 企業側の安全性の論拠となっている。         1)合成洗剤の成分,種類,用途,標準使用量や,使用

しかし,これは有害説をとる研究者,消費者を納得さ  上の注意として,幼児の手が届かないところに置くこと,

せるものではなかったし,むしろ,「多摩川の合成洗剤  使用後よく水洗いすること,野菜,果実等を長時間つけ

(7)

吉田:合成洗剤の諸問題について(麗)       131

たま玉にしないこと,使用のときは手袋を使用すること  さらに,「LAS塗布催奇性試験」に変わった。「安全性」.

などの表示を義務づけており,「通常の使用」でない場  問題の一部にのみ焦点をあてて,それが「安全性」問題 合,適正な使用法でない場合は有害であることを認めた  のすべてであるかのような意図的策謀が感じられる。第 ものといえよう。しかし,成分は陰イオン系,陽イォン  ニに,純粋なLASの塗布であって合成洗剤の胎児への 系,非イオン系などとしか記入されないため,住民がも  影響試験ではなかった。胸骨異常,棘突起異常,精巣下 っとも関bのあるLASであるのか,高級アルコール系で  降不全,等,有意な差で胎児の発育障害を誘発したこと あるのか,界面活性剤の種類について知ることができな  が黙視された。第三に,この西村報告は研究班の報告で い,また界面活性剤,ヶイ光剤以外の成分を知ることが  はなく,西村氏個人の見解である。第四に,LAS自体 できないなど不備な点が多く,住民側の要求に完全に答  にも奇形を含む生体障害性は見られるが,LASを含む えたものではなかった。      いわゆるLAS系合成洗剤の障害性は一段と強いと主張 1973年には,食品衛生法の一部改正によって「野菜,  しているが,この点についての充分な解明がなされてい 果物または,飲食器の洗浄剤については,規格及び使用  ない」

基準を定めるとともに,有害な洗剤の販売,使用を禁止   さらに,西村報告において「20%LASの塗布群では,

できる」と台所用中性洗剤が食品添加物と同様に取り扱  その妊娠の成立または進行が阻害されたり.胎児の体重 われるようになった。メーカーに対しては,使用基準に  の低下をひきおこす場合があると判断される。また一部 従った使用方法の表示や,合成洗剤で手が荒れる人に脂  の骨格の原基における化骨の遅延が3研究室で認められ 肪酸石けんへの切り換えをすすめる表示などが義務づけ  たが,これは胎児の体重低下には付随するものとして理 られた。しかし,これは,合成洗剤の毒性を認め,住民  解しうる。」と母体,胎児への影響を認めているが,「こ 側の要求を消極的に受け入れたという評価よりはむしろ, の20%七AS液の濃度は,ヒトが使用する際の指示濃度

「使用基準」を守って,野i菜,果物は中性洗剤で洗わな  の500倍にもあたる濃厚なものであるから,これに担当 ければならないということを法制化する結果にな論で する条件が・トで勧得るとは考えがたい.」と台所用洗 はないか,「疑わしきは罰する」という食品衛生の基本  剤では原液を薄めないで使う人が多い実態を無視しての 鵬がつらぬ源てしな識どと,「合成洗剤追放」運 安全館をして、、る.今回もまた,、962年の場合と同じ 動に関わっている住民達は,この改正に反発を示してい  く,厚生省の「科学的な」安全性試験が企業の「合成洗

る。      剤には催奇型性はない,安全である。」論を「科学的」

また,この年,厚生省は再度,合成洗剤の安全性を検  に証明する役割を果たしたといえよう。

討するために,合成洗剤のプロジェクトチーム「合成洗   1973年には「洗剤のための連絡会」,「合成洗剤追放 剤研究班」を発足させた。これは,主婦の皮膚障害の体  東および西日本集会」を開くなど,「石けんを使う運動」

験,ABS(LAS)の催奇性,発ガン補助作用など相つ  「合成洗剤追放運動は一層の拡大を示した。2節でも示 ぐ研究報告により,住民側の不安が高まったこと,住民  したように,この年には急速に粉石けんの需要が増えて 運動も前年に「洗剤のための連絡会」が結成されるなど・ おり,粉石けんの種類も増えてきた。粉石けんの中には,

大きな力となってきたことなどのために安全性論争が激  合成界面活性剤,ケイ光増白剤の混入など品質が問題と しくなったなかで作られた。1976年3月「五ASの催奇  なる場合もあったり,合成洗剤と粉石けんの判別ができ         21)

ォに関する合同研究」として,結果が発表された。今回  ない消費者も多いことが問題となっていた。1976年にな の報告は,四つの研究グループの意見の不一致が起こり, って,「従来から合成洗剤及び洗浄剤については表示が 結論が出ないためとして,その一で4研究所の結果を併  義務づけられでいたが,複雑な成分の商品が多く出回っ 記し,その二で班長個人の見解として「中性洗剤による  てくることにより,これらのものと石けんの区分が不明 胎児の奇型性はない」と報告している.これに対して, 確となり,とくに強い石けんの指定が要望されてい認 研究班のひとつ三重大グループは次の様に反論し,合成  ので,家庭用品品質表示法の改正によって,石けんが指 洗剤追放運動と連ケイして抗議行動を起こしている12) 定品目に餓られた.合成洗剤も「社会的融腰望が

「第一に,環境衛生局食品化学課から提示された課題  あって全面改正されている。洗たく用洗剤の表示例を資 は,はじめ「合成洗剤の安全性試験であったのが,その  料2に示した。今回の改訂によって,洗剤の定義が,表 後,「中性洗剤の皮膚塗布による胎児への影響の試験」, 6のように定められ,明確になった。成分の名称が「界

(8)

132      茨城大学教育学部紀要 第26号

面活性剤(20%),直鎖アルキルベンゼン系,りん酸塩   る消費者保護協定」を締結して,自治体が小売業者と協

(恥。,として、2%,硫酸塩_....」と具体的蔽示さ定して,石けんの売場擁保するヶ一鶏出始めている。

れ,成分の含有量も明きらかにされるようになった。こ   AF2禁止運動の場合のように,地方自治体の禁止の動 の改正は,住民側の要求をほぼ全面的に認めたものとい  きの輪が,厚生省の考え方を変え,政策をも転換させる えるが,定義が複雑すぎ,一般の人には理解しにくい。  ことになるのであろうか。

表6 洗剤 の定義      5 住民運動の方向

品名[鰹用洗たく用石けん  婦臓叢鷺犠鷲整瀧灘欝

(純石けん分が大部分のもの)       体的に中成洗剤の安全性について学習を深めていった。

洗たく剤      ぽす影響も大きい」との認識を深め,「石けんを使う運

鯉澱蓉界面活性剤)製2さらに「合成洗剤追鋤へと発展さ 

洗たく用合成洗剤も・同様に三種類に分けられている。  10数年前から運動を始め,対外的に大きな影響を与え 全国に広がっている「合成洗剤問題」の住民運動は各  てきた婦人民主クラブは,運動の経過を「中性洗剤反対 地域の自治体に対して,「合成洗剤追放」を働きかけて 12年の歩謂の中で「39年、、月,,ルクと間猷て中性 いる。具体的には学校給食で果物,野菜洗いに中性洗剤  洗剤を飲んだ庵島さんの記事を婦人民主クラブにとりあ の使用を禁止させる運動が,全国的に行なわれている。  げ大きな反響をよび,このために,ライオン油脂からの 国の場合は,これまでみてきたように,常に住民運動に  広告を中止されるほどの苦しい事態にも直面した。しか 対置してきたが,地方自治体の場合は,住民運動の要求  し,会員,読者の中から中性洗剤による湿疹に悩む訴え

に沿って住民の側にたった対策をとる自治体もあらわれ  も多くあるので,ほんとうに無害かどうか知るために」

始めている。       自ら学習し,「中性洗剤反対の運動を地域,地域で始め,

東京都では,住民側の「学校給食に中性洗剤の使用を  洗剤の毒性,生物にどんな影響があるか,肝臓の機能の 禁止させてほしい,とくにABSを含んだもので野菜,  低下,ガンの危機もある,他の物質との相乗作用,洗剤 果物を洗うことは即刻やめてもらいたい,消費者サイド の公害などについて多くの人達との話し合いをいたると で洗剤の再検査をしてほしいなど」の申し入れに対し,  ころでもつようになり,反対運動はクラブ外の団体にも

「洗剤に関係のある各局の責任者が集まって調整会をつ  広がり全国的に波及していった。」また,「国民の健康 くり,都民参加の都政をすすめてきた。このなかで,都  はそっちのけで儲け本位の企業主義それを擁護する政 独自に「中性洗剤の安全性についての試験」を行ない,  府当局の無責任とにぶつかり,いよいよ運動を強くして

1973年5月に「野菜,果物の洗浄は,とくに中性洗剤を  禁止にまで持っていかねばと決意し,『買わない,使わ 使用しなければならないという必要性に乏しく,今後は  ない』運動へと発展させていった。」と述べている。

+分な水洗を徳、食品衛牡の効果をあげるよう指 また瀞民生活の会洗剤齢97。年「都民生活大学

        25)

アすることとした。」との見解を発表し,「小学校の給  『都民の生命と健康を守る講座』を修了した受講生達が,

食には中性洗剤を使わず,生野菜,果物は今後水洗いと 自主団体として都民生活の会を作り,その中で洗剤問題 塩素殺菌だけで充分である。」との通達を出した。横浜  について学習した者達の集りの「洗剤班」が生まれ「先 市,大阪府,京都市,兵庫県,名古屋市,愛知県,島根  づ実態調査として1,600枚の洗剤使用状況のアンケート 県と,東京都に続いて,「給食に合成洗剤の使用を禁止」 をとり,それをまとめ」,「資料として中性洗剤の使用       26)

キる自治体は増えている。      禁止を行政や企業に働らきかけた結果,テレビや新聞で また,行政をまきこんだ消費者運動の例として,川崎  もとりあげられ」マスコミにより,より効果的に「住民 市,仙台市のように「洗たく用石けんの安定供給に関す  の間に侵透して」いかぜた。

(9)

吉田:合成洗剤の諸問題について(W)      133

        30)

結椏s消費者連合会は,世田谷母親連絡会,二子玉川  えて,合成洗剤の危険性を追求し,安全な洗剤としての 子どもを守る会,玉川母の会の共催(消費者連合会の前  「石けん」を使う運動である。これは,1960年の後半か 身)で柳沢文正博士を招き,「中性洗剤で汚染される多  ら1970年にかけて,欠陥車問題,チクロ入り食品……な 摩川」というテーマの講演会を開き,世論の換起に努め, ど消費者の安全をおびやかす問題が相次ぎ消費者運動の また,「多摩川を醜い屍の川に変えてしまった元凶はほ  質的変換運動が起った。すなわち,消費者の生活,生存 かならぬ中性洗剤であり,これを追放しない限り,多摩  に対する侵害を排除し,自らの生活生存を確立するた 川の浄化はありえないと『多摩川の自然をとり戻す会』  めの消費者の権利を自ら守る運動への変換一賢い消費 を結成し,また,粉石けんを開発するなどの中性洗剤追  者から消費者主権を主張する消費者ヘーによって,食 放運動」をすすめてきた。       品,プラスチックスなど有害な生活物質を追求する消費 1965年より新潟食品生活改善…普及会は生命を守る運動  者運動が高まるとともに,洗剤運動も全国的に大きな広 の中で.慢性毒性試験をしない食品添加物を含んだ食品  がりを示した。

を買わない活動をしていた。その一環として,新しく普   後者は,「洗剤に汚された立山の自然」, 「日本の最 及し始めた中性洗剤に疑問をもち,学習会を重ねる中で, 南端にも洗剤の摩の手」,「洗剤やめて自然と共存」,

「ABS中性洗剤は使わない」という方針をたて,さらに  「チュラサの海を消すな」など自然破壊に対する自然保 ABSによる環境破壊を知って「合成洗剤追放運動」へと  護運動であり,「魚の奇病に洗剤が一役」,「石けんで すエめてきた。      魚を呼び戻そう」,「魚を殺す界面活性剤」,「川の水

このようにして,合成洗剤に関する住民運動は,さま  から洗剤,稲が全滅」,「多摩川のアワ公害にびっくり」

ざまな地域で,さまざまな方法で,草の根運動として全  など合成洗剤の環境破壊に対する反公害運動である。さ 国に広がっていった。しかし,石けんを使う消費者はま  らに,「志摩の真珠が死んでいく」,「漁協中心に洗剤 だまだ少数である。これをより大きな運動とするために  追放」,「アワビの幼生,洗剤で死滅」,「ママレモン 1972年4月にいくつかの団体が,それぞれ「石けんを使  密漁の毒薬に」など,合成洗剤の水質汚濁という環境破 い合成洗剤を告発していこうということ」で集まり,「自  壊によって直接被害を受ける生産者である漁民達の漁協 分自身のまわりから公害をなくす運動,国やメーカーに, を中心とした運動や, 「下水道に対する合成洗剤の影響」

少しでも不安がある以上安全なものを作らせていく消費  「水道労働者も合成洗剤に反対」と水質汚濁の問題を深

         34)

メの権利を主張する。」という主旨で「洗剤のための連  刻に受けとめていた水道労働者による運動も含まれてい 絡会」が結成された。これがさらに,合成洗剤追放東日  る。

本集会,西日本集会を経て,1974年には,第1回「きれ   さらには,合成洗剤を普及させてきた,行政,企業に いな水といのちを守る合成洗剤追放全国集会」へと発展  対して,蔦「洗剤企業は許せない」,「功妙だった企業の し,全国各地域の住民運動,労働運動などが連帯して   宣伝」と企業責任の追求や,「まやかしの厚生省おスミ

「合成洗剤追放と水質汚染一環境破壊に反対して闘って  つき」,「現実離れの厚生省シロ判定」,「政府の態度 いく讐)ことが艦されて,現在蛭っている.   峨しい怒り」と常に企業膿の端ひご立ってきた政府

次に,日常生活の中からの住民の告発「洗剤の告発99  批判によって,行政や企業に「合成洗剤を作らせない,

人の証言」から合成洗剤追放運動をみてみると,合成洗  売らせない」ことを要求する運動がある。また,「行政 剤追放運動には,人体への有害性を追求する消費者運動  の側に啓蒙」をと,行政をまきこんだ運動の展開も考え の側面と,環境破壊を追求する反公害運動の側面とをあ  られているが,これは前節で述べたように,革新自治体 わせもっている。これは,また,洗剤の毒性によって被  に成功例がみられるσ

害者となる反面,環境破壊に関しては加害者となるとい   また,この運動にかかわる中で,「危険性を知りつつも,

う二面性をも示している。      なお便利さに走る多くの人を見る中で,単なるく合成洗剤

前者は「金魚の死を見て運動へ」,「洗剤のかゆみに  から石けんへ〉ではなく,生活の転換をも含めた追放運動を 悩まされた長女」,「洗剤湿疹の6年間」,「洗剤で指  考えなければならない」と生活の質的転換が求められ始めてい

先の感覚なくなる」,と合成洗剤による障害の体験や,  る禽成洗剤の危険性と環境汚染を訴えるだけでは,これ以上

石けんに切り換えたことにより「子どもの湿疹が治った」 運動の進展をみない状態になっており,「便利さと経済性」

「消えた指紋が元に戻る」など障害が治った体験をふま  から「生命の安全性を優先する文明をもった生活への転換

(10)

134       茨城大学教育学部紀要 第26号

へと,生活の見直し運動の一環として位置づけている。  探ることを試みたが,これは全国にいわゆる草の根運動

「ごく普通の市民層が合成洗剤への疑念をつのらせ   として広がっており,あまりにも数が多く,多種多様で さXやかな行動の第一歩を踏み出すことが,あらゆる生  あるため,部分的に集め得た資料さえも,充分に把握で 活分野に食いこんでいる合成化学物に対して目を開かせ  きたとは言えない。残念ながら,始めの意図に反して,

る端緒になる」と「反合成洗剤運動の積極的意義」を見  全国レベルでの運動,いわぽこの運動の表面を探りえた

出し,さらに,「少くとも環境汚染を進める側には立つまい  にすぎない。

と決心し,運動の中で〈自動車をもたぬ〉〈ゴミを減ら   反合成洗剤運動は10数年の内に細い流れから徐々に,

す〉〈資源を大切に〉など51ケ条の項目を作りました。 徐々にではあるが,太い流れへと成長してゆき,地域に

《合成洗剤をやめる》ことも私にとって環境破壊に抗す  根ざした粘り強い運動を続けてきている。これは,合成 る大切な行動の一つです」と人間としての生活権,生存  洗剤の追放によって,我々の「生活権」「生存権」「環 権を守るためには,他の反公害運動の一環として,この  境権」を守る意義はもち論大きいが,現代の新しい型の公 運動を位置づけ,自らの生活を変えることから行動を始  害一自動車,プラスチックス,合成繊維など消費過程 めている。      で生ずる消費公害,原子力発電などのエネルギー公害な  合成洗剤に関する住民運動の具体的な活動方法として  ど一の解決に対しても重要な役割,先導的な役割を果

ヘ款のような形がとられて認。     してきたのではないかと考えている.

①初期の段階として消費者個人として合成洗剤を使 この消費公害やエネルギ訟害の解幣は現代の大 墲ネい,従って合成洗剤を拒否し,石けんを使うことに  量生産様式そのものの改革あるいは廃棄が検討されねば

なるので,石けんの共同購入,あるいは,メーカーに作  ならない。すなわち,従来の合理的,文化的な生活とし らせる,売らせる運動がある。      て,先づ「便利さと経済性」が,「安全性」が求められ

②①の消費者の輪を広げていき,さまざまな啓蒙活動, てきたが,さらに進んで,「安全なら認める」というこ 粉石けんの共同購入への巻きこみや,消費者の最強の権  とではなく,「本当に人間の生活にとって必要なのかど 利であるボイコットの呼びかけ運動がある。      うか」を考え,自らの生活を問い直し・「人間」優先の

③企業に対しての合成洗剤を作らせない売らせない  視点から「生活」をあるいは「文明」を問い直していく

(石けんを作らせ,売らせる)という働きかけの運動で  ことが求められている。「便利で安い合成洗剤」から,

申し入れ,抗議,あるいは株主大会を利用した「一株株  「不便で高い石けん」への転換は・「生活問い直し運動」

主運動」などがある。       の典型的例であり・また・先導的役割を果してきたとい

④行政に対して,一つは企業に対する行政の指導的立  えよう。

場を利用して,合成洗剤の製造・販売の禁止を働きかけ,  また,住民達が,自分達の生活や環境の被害の体験を もう一つは,行政内部での合成洗剤使用を中止させる,  ふまえて,主体的に学習するなかで・国や企業の科学論

(具体的には学校給食が重点になっている。)運動があ  に対決し切ってきたことは・充分に評価されなければな る。       らない。

最近は・行政と対立するのではなく・行政をまきこん  資料 1 だ運動が展開されており,いくつかの地方自治体にみら

れる(3節参照)。       合 成 洗剤 の 表示

①,②,③,④各々の運動が,地域,地域の状況によ

@      〔合成洗剤〕

って・あるいは・運動体の力量によって・各「草の根」   ◇品名は「合成洗剤」◇成分は陰イナン系,陽イオン 運動体が独自に,「自分にできることとして」考えた運  系.非イオン系,両性イオン系にわける。新しくけい光 動がくり広げられているのが,合成洗剤追放運動の特徴  剤,酵素,漂白剤が配合されていたら「けい光剤配合」

といえよう。      というように付記◇種類は・アルカリ性(PH11・0以上)

弱アルカリ性(同11.0以下&0以上)中性(8.0以上α0 おわ り に      以上)の3つに分ける◇用途は,衣料品用,野菜果実等 用.食器用,家具用の4つに分ける(ただし食品や食器

「合成洗剤の諸問題について」をまとめる意味で・「合  洗いに適さないものには,そのように付記する)◇正味

成洗剤問題」の住民運動について,調べ,解決の方向を

(11)

、1

吉田:合成洗剤の諸問題について(W)      135

量は,キロ・グラム,グラム,立方センチ・メートルの    参 考 文 献 3つの単位ρいずれか◇標準使用量は水1リットルあた

りのグラムか立方センチ・メートル(ほかに水30ないし  注1)セリーナ,などの「無公害」洗剤

40リットルあたりの適量を付記したり,さじやコップの       注2)安全性についての解説 小谷,繊消誌,16274

量をあげてもよい)◇使用上の注意は,アンダーライン       ー

@       (1975),桝田,ibid,16304(1975)吉川, ibid,を引き,活字を大きくするとかラベルの色を変えて目立       _     ・

つようにして,つぎの項目を書く。      !皇341(1975)

①幼児の手が届かないところに置くこと。        衣生活編集龍衣生活,10,26,43,50,(1975)

②シ・ボン玉遊露の幼児のいたずらに臆すること・、)庄司光溶縮一;日本の鰭P.、(岩波縮)

般灘灘識論た場舘たは荒れ性の (・975)

者が使用する場合は使用後,ハダ荒れを防止するよう  2)前掲(1)

注意すること。      3)松原治郎,似田貝香門;住民運動の論理P199(学

⑤使用後,よく水洗いすること(食品,食器用だけ)  陽書房)(1976)

⑥野菜・果実等を長時間つけたままにしないこと(食  4)正田彬;消費者の権利P.176(岩波新書)(1972)

器用だけ)      5)吉田紘子;茨城大学教育学部紀要,23,135−145

⑦万一,飲みこんだ場合には応急措置を行なうこと

       (1973)(弱アルカリ性,中性だけ一その具体的な方法も示す)

⑧使用のときはゴム製または合成樹脂製の手袋を使用  6)石森直俊:三重県立大学医学部解剖学教室業績集

することなど      1g,2g−57(1g71)      一

@      坂下栄,県勲,秋吉智;三重医学 18,2,3      一

124−143(1974)

資料 2      7)吉田紘子;茨城大学教育学部紀要,24,215−225(1974)

8)吉田紘子;茨城大学教育学部紀要,25,177−188(1975)

(洗たく用合成洗剤の表示例)

家庭用品品質表示法に基づく表示 9)

品名洗たく用A 洗 10)日本経済新聞,「伸びる粉石けん」,1976,8,24

成分 界面活性  20%   アルキルベン

@ ゼン、 りん酸 (POとして12%) 11)吉井雅子;昭和48年度卒業研究論文

硫酸塩、 酸 、けい酸塩、 12)安達悦子;昭和50年度卒業研究論文

蛍光剤配合

液性弱アルカリ性

ユ3)日本経済新聞;洗たく用洗剤「濃縮時代」へ1975,

用途 木 ・ 愚  用

@ 1β6Kg 10.30

水14に対して0£39

14)柳沢文正;日本の洗剤 P.181(績文堂)(1973)

たく の A 30 に対して25望

(200酩コ・プ約圭) 15)小谷新太郎;食品衛生研究,1239−43(1962)       一

使用上の注意

恬c1の手が くところに かないこと。

16)盲並渇14)  P.270−274

・シャボン玉遊び等の幼児のいたずらに注意 17)婦人民主クラブ;合成洗剤追放のために(合成洗剤

すること。

E原液をスポンジ等につけて使用する場A、

追放東日本集会,P.58,(1973)

荒れ の者が 用する場A よ  間こわ 18)前掲14) P.254

たって 用する場Aは 炊事用 の手袋を

19)  擢     P.283

● 用後 水 いを励行  等肌 れを 止

@るよう注、ること 20)  〃       P.274

●万一飲みこんだ場合セこは、水を飲ませる、 21)LASの催奇性に関する合同研究報告;厚生省環境

吐かせる等の応急措置を行うこと。

恬p途外には使用しないこと。

衛生局,(1976)

0000石けん株式会社 22)消費者リポート(247号),合成洗剤シロの研究発表 東京都千代田区霞が関1−3−1

電話 03−501−1511 (1976)

(注)①文字の大きさを特定して、見やすいよ 23)山田守;消費者No.205,20−25(1976)

うに表示させることとしている。      24)前掲14) P.282

②〜の部分は改正部分である。

25)中性洗剤に関する調査研究の結果について;東京都 衛生局,(1g735,2g)

(12)

136       茨城大学教育学部紀要 第26号

26)合成洗剤に対する自治体の対策・指導についてのア 31)洗剤告発99人の証言;環箋破壊7(5)2−39

ンケート調査結果(日本消費者連盟);合成洗剤追放   (1976)

のために P.69      32)正田彬;消費者の権利,P,176(岩波新書)(1970)

27)ノ」野虎彦;環境破壊,7(5)48−53 (1g76)  33)岩下誠徳;環境破壊7,(5),59

28)前掲14) 278−285      34)きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国集会資 29)都民生活の会洗剤班;合成洗剤追放のために(合成  料,これまでの経過と今後の方針について(197へ11,

洗剤追放東日本集会)P.67−68,(1973)      29)

30)東京都消費者連合会;合成洗剤追放のために,51−58 35)前掲1) P.1

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