1 はじめに
1年 月に地方分権推進法が成立して以来、 全国の 地方自治体では地域の活性化、 あるいは 「まちづくり」
「まちおこし」 への様々な取組みや試みがなされている。
その中で 「地域ブランド」 の創出も少なくない。 これは、
地域特性を活かした商品・サービスと地域イメージをブ ランドとして結びつけることで、 地域イメージを上昇さ せ、 雇用の促進、 観光などへの相乗効果が生まれること が期待されるからである。 さらに、 地域の人々がその地 域を誇りに思う等、 地域を別の意味で豊かにする好循環 が生まれる可能性がある。 本稿で特に取り上げる岐阜県 各務原市においても2 、 「各務原キムチ」 を始めとする 地域ブランドの創出が試みられている。
こうした取組みに対する社会の関心は高いものの、 研 究対象としてはまだ新しく、 論文等の報告も多いとはい えない。 そこで、 本稿では地域ブランド戦略に関する論 文をサーベイしつつ、 「食」 を通じての 「まちづくり」
「まちおこし」 を行う各務原市に焦点を当て、 その取り 組みを調査、 分析し、 類似の戦略をとる他の自治体 (富 士宮市) との比較検討を行う。 さらに、 各務原市のその 他の特徴的な政策について概説し、 政策提言を行いたい。
本稿の構成は、 章はじめに、 章では地域ブランド について、 章ではまちづくりとしての地域ブランドの 創出について、 章では各務原市の地域ブランド戦略、
章では先進地域である静岡県富士宮市との比較を行い、
章では今後の地域政策についての提言を行う。
2 地域ブランド 2.1 ブランド
ここでは、 ブランドとは何かについて整理する事から 始めたい。
青木・恩蔵 ( ) によると、 「製品」 と 「ブランド」
とは、 概念的には別個なものである。 つまり製品開発と は、 技術力をベースとした 「モノの開発」 であり、 どの ような機能、 品質、 コストの製品で、 どれだけの市場シェ アを獲得するかが問題である。 これに対して、 ブランド 開発とは、 「意味の開発」 (モノへの意味付け) であり、
そこでは生活空間、 価値、 絆から、 どれだけのマインド シェアを獲得できるかが問題となる。 それゆえ製品開発 が 「作る仕組み」 に軸足を置いているのに対し、 ブラン ド構築は 「売れ続ける仕組み」 づくりである。
また、 ブランド論のケラー ( ) は、 自社 の製品を識別し、 他社のそれと差別化するための手段と して用いられる言語的あるいは視覚的な情報コードを3 、 一括して 「ブランド構築」 と総称した。 その上で、 これ らのブランド要素を選択・統合・伝達することによって
地域ブランドの創出
−各務原キムチを事例として−
Creating a regional brand: The case of Kakamigahara city
二 神 律 子
Ritsuko FUTAGAMI
1995
年5
月に地方分権推進法が成立して以来、 地方自治に関する議論は様々に展開されてきた。 全国の地方自治 体では地域の活性化、 あるいは 「まちづくり」 「まちおこし」 への様々な取組みや試みがなされている。 こうした取 組みに対する社会の関心は高いものの、 研究対象としてはまだ新しく、 論文等の報告も多いとはいえない。 そこで、本稿では地域やブランド戦略に関する文献をサーベイしつつ、 「食」 を通じての 「まちづくり」 「まちおこし」 を行う 各務原市に焦点を当て、 産業政策としての地域ブランド戦略を調査、 分析し、 類似の戦略をとる他の地域 (富士宮市) との比較を加え検証する。 さらに、 各務原市のその他の特徴的な政策について概説し、 政策提言を行う。
キーワード:地域ブランド、 まちづくり、 まちおこし、 地域活性化、 創造都市、 産業政策、 都市戦略
1本稿を作成するにあたり、 中部学院大学経営学部長の西田安慶教授 から大変有益なコメントを数多くいただいた。 また、 元各務原市産業部 観光交流課 (現在各務原商工会議所) の古田希雄氏に資料情報の提供に 多大な支援とご協力を得た。 ここに記して、 深く感謝の意を表したい。
各務原市は 「かかみがはらし」 と発音する。 各務を 「かがみ」 でなく
「かかみ」 と読む例は珍しい。 但し、 名古屋鉄道の駅名は 「かがみはら」
と読み、 の駅名は各務ヶ原と表記するなど、 発音・表記は つでは ない。
例えば、 名前、 ロゴ、 シンボル、 キャラクター、 パッケージ、 スロー ガンなど
自社製品を識別・差別化する行動 (=ブランド化) と、
その結果としてブランド化される製品 (=ブランド) と を各々別個に規定することにより、 一応の概念的整理を みている。 すなわち、 ①製品は、 これらのブランド要素 によって識別・差別化されることで選択対象としてのブ ランドとなる。 ②製品をブランド化するにあたっては、
適切な形でのブランド要素の選択、 統合、 そして伝達が 重要であり、 そこでは、 ブランド要素の記銘性や意味性 などが十分に吟味されなければならない。 ③それらのブ ランド要素と支援マーケティング・ミックスとが齟齬無 く噛み合い、 消費者の頭の中にブランド要素を手がかり とした知識のまとまり (ブランド知識) が形成される。
④形成されるブランド知識が頑強で好意的かつユニーク な構造ないし内容をもつ場合には、 いわゆる 「強いブラ ンド」 が構築可能である。
上述のようなブランド論は商業製品についてのもので はあるが、 これを地域に適応するのは必ずしも無理では ない。 例えば、 鳥居 ( ) は、 ほとんどのブランドは メーカーが作り出したものだが、 古くから 「産地ブラン ド」 が存在している事を指摘している。 その代表例がヨー ロッパにおけるワインである。 とくにフランスは、 原産 地呼称法で定められた産地と品質区分によって、 厳密に 格付けされている。 産地ブランドのマーケティングが長 い期間続けられ、 その結果として高い評価を受けるよう になった好例である。
2.2 地域ブランド
近年、 日本における地域ブランドへの関心の高まりは 目覚しいが、 この始まりはどこにあったのだろうか。 関・
遠山 ( )、 あるいは佐々木・石原・野崎 ( ) な ど、 地域ブランドの議論の始まりは、 商標法が一部改正 され 年 月に施行された 「地域団体商標制度」 にあっ たとする論者は多い。
この 「地域団体商標制度」 についての解説を特許庁の ホームページから引用する4。
「近年、 特色ある地域づくりの一環として、 地域の特 産品等を他の地域のものと差別化を図るための地域ブラ ンド作りが全国的に盛んになっています。
このような地域ブランド化の取組では、 地域の特産品 にその産地の地域名を付す等、 地域名と商品名からなる 商標が数多く用いられています。 しかしながら、 従来の 商標法では、 このような地域名と商品名からなる商標は、
商標としての識別力を有しない、 特定の者の独占になじ まない等の理由により、 図形と組み合わされた場合や全 国的な知名度を獲得した場合を除き、 商標登録を受ける ことはできませんでした。
このような地域名と商品名からなる商標がより早い段 階で商標登録を受けられるようにすることにより、 地域
ブランドの育成に資するため、 平成 年の通常国会で 商標法の一部を改正する法律 が成立しました。 平成 年 月 日に同法が施行され、 地域団体商標制度がス タートし、 高い関心を集めています。」
これから分かるように、 ここに 「地域ブランド」 とい う言葉が使われており、 地域づくりとしての地域ブラン ドの創出ということが、 政策としてはっきりと打ち出さ れている。 この地域団体商標が始まって3年目の 年 月現在では、 出願件数は 件にのぼり、 登録査定は 件である。 このうち岐阜県は、 出願件数 件、 登 録査定では、 美濃焼、 下呂温泉、 岐阜提灯、 飛騨牛、 飛 騨・高山の家具、 関の刃物など 件ある。
この地域団体商標制度に先立ち、 日本政府は 年 月に内閣に「地域再生本部」を設置している。 こうした国 の政策は、 当然それ以前からの地方活性化への議論を引 き継いだものであることには間違いない。
3 「まちづくり」 「まちおこし」 としての 地域ブランド創出
3.1 地域ブランド創出
年 月に地方分権推進法が成立した。 この当時は 権限を地方に委ねることを求める要求が各方面から出さ れる一方で、 一部の地方公共団体では中央政府頼みの姿 勢を改める気配はなかった。 経済的効果を考えれば、 中 央に権限を集中させておくことは非効率、 不公平を助長 しかねない5。 この頃より、 地方分権の議論が一気に噴 出し、 また地域の活性化が地域に任されるという方向付 けが出来てきたようである。
関・及川 ( ) は、 以下の様に説明している。 「地 域のことは地域で」 という枠組みができるにつれ、 地域 に独自な産業を形成していこうとする動きが強まる。 地 域を豊かにするためには、 産業を活発化させ、 雇用を拡 大し、 外からの資金を引き付ける事が不可欠との認識が 高まる。 しかし食べる為に働いた時代とは異なり、 現代 では 「豊かな社会における産業化」 であり、 人々に 「希 望と勇気」 を与えていくものとして新たな 「地域ブラン ド」 を作り上げなければならない。
こうした状況の中で、 各地で様々な試みが行われてき た。 地域ブランドとはそれ以前の 「伝統工芸品」 をさす 言葉ではなくなり、 むしろそこでの取組みを意味するの に近くさえなっているように考えられる。
3.2 「食」 を通じての地域ブランド創出
地域ブランドのブームのようなものは、 地域での 「ま ちおこし」 の取組みと同時に起こっているようであるが、
食を通じての地域ブランド創出という観点でそれを行っ ている地方自治体もある。 関・遠山 ( ) は、 そこに 着目し、 「 食 の地域ブランド戦略」 としてまとめた。
その中で、 食を通じての地域ブランドを5種のカテゴリー
地方分権の経済分析については、 井堀・土居 ( ) などに詳しい。
特許庁の公式ホームページ を参照
した。
に分類し、 の地域を取り上げて紹介している。 第1の カテゴリーは地域ブランド品の形成である。 これは、
「夕張メロン」 「魚沼コシヒカリ」 「関鯵、 関鯖」 「松阪牛」
「十勝ワイン」 等に代表される元々の素材の良さに加え、
地域の文化や歴史人々の思いが加わり、 独特の存在感を 形成するものである。 第 のカテゴリーは 「新しい 食 と不思議な空間」 というものであり、 地域に人を呼び込 み、 楽しませようとするものである。 これは地元の素材 と、 地域の暮らしに密着したものであり、 いわば 級 グルメの世界といえる。 「東京両国のもんじゃ焼き」 「博 多の屋台街」 「神戸のそばめし」 などが挙げられる。 第 3のカテゴリーは 「 食 を軸にした街づくり」 という ものである。 「餃子の街の宇都宮」 「横浜の中華街」 など はすでに確立している。 横浜の中華街は、 市内の一部地 域に中華に関連する事業者が集積し、 景観的にも独特な ものを形成しているのに対し、 宇都宮市は、 餃子の店が 街全体に広がっており地域イメージの形成に成功した例 ともいえる。 第4のカテゴリーは 「農山村の むらおこ し 」 である。 中山間地域といういわゆる条件的不利な 地域で耕作条件等に恵まれていない地域が、 国土の % あるが、 こうした地域では地域ブランド戦略を進めてい くことが難しい。 しかし 「高知県馬路村」 のような成功 例を見ることが出来るので、 このカテゴリーは今後の課 題である。 第5のカテゴリーは 「食の 産学連携 」 で あるが、 産学連携は現在の日本のテーマであり、 これか ら活発化していかなければならない発展途上の分野であ る。
また、 例えば田村 ( ) では、 独特な 「食」 を持つ 地域を 以上紹介し、 こうした 「食」 が地域の活性化に 成功した例を多く挙げている。
4 各務原市の地域ブランド戦略
4.1 各務原市の概要と産業政策
6各務原市は、 岐阜県の南部、 濃尾平野の北部に位置し、
南は木曽川を挟んで愛知県と接し、 西は岐阜市と接して いる。 総面積は であり、 交通面では東海北陸自 動車道の岐阜各務原ICがある。 国道 号、 JR高山本 線および名古屋鉄道各務原線が東西に走り、 県道 号が 南北を縦断して基幹交通網を形成している。 名古屋との アクセスも良く、 中部国際空港 (セントレア) とは電車 で 分で直結している。
産業面では、 年 (大正6年) の各務原飛行場開設 に伴い集積した航空機産業を基幹産業に、 自動車、 工作 機械産業、 繊維業、 薬品製造業も発展している。
人口は最新のデータで ( 年度)、 約 万人であり 緩やかな増加を続けている。 年度の国勢調査では
万 千人で岐阜県下第 位であった。
製造品出荷額 ( 年度) では、 億円を超え、 岐 阜県下第 位の製造業の都市 (まち) である。 こうした 地域特性を生かして、 グレーターナゴヤ構想の一翼を担っ て発展していこうというのが、 各務原市の産業政策であ る。
自衛隊基地のまち各務原、 工業のまち各務原、 こうし た完成した各務原像は経済的にも政策的にも安定してお り、 変革の必要は無いのかもしれない。 しかしながら、
地方自治の時代に政策的に人の呼べる特産品が必要であ ると各務原市は考えた。 工業都市であるので、 産業観光 は1つの目玉になるであろう。 実際、 産業観光のツアー は限定的ではあるが地元の大中小様々な企業を巻き込ん で実験的に開始され成功をみた。 これに加え、 戦略を多 角的に仕掛ける各務原市は、 「食」 を通じてのまちおこ し (= 「各務原キムチ」) にも目をつけた。
4.2 各務原キムチ
ここでは、 「各務原キムチ」 の成り立ちについてまと める事とする。 誰もが疑問に思うであろう 「各務原」 と
「キムチ」 という取り合わせは、 各務原市と韓国の春川 市との関係より始まる。
4.2.1 各務原市と春川市の関係
各務原市は 「世界と交流する都市」 を地域戦略のひと つとしている7。 そこで、 年 月に、 関連などの ベンチャー企業の成長が目覚しい韓国春川市と、 知識・
情報分野での交流を行うため産業交流協定を結び、 各務 原市と春川市の交流が始まった8。 この交流は産業交流 の枠を超え、 スポーツや文化を通じた市民間の交流にま で広がったことから、 各務原市政 周年という節目の年 を迎えた 年の 月 日には、 両市は姉妹都市提携を 結ぶに至った。 時を同じくしてこのころ日本では韓国ド ラマ 「冬のソナタ」 が爆発的に流行した。 この春川市が 冬のソナタの舞台であったことから、 姉妹都市 周年の 記念イベントを 「 冬のソナタ 春川物語」 と銘打って、
年 月 日〜 月 日まで 日間にわたり開催した。
このイベントは、 時の韓流ブームと重なり、 全国から 万人を越える集客をし、 マスコミにも大きく取り上げら れるなど、 大きな成功を収めた。 このイベントの経済効 果について十六銀行経営相談室 ( ) が分析している。
それによると、 直接的経済効果が 億円、 また産業連関 分析の手法を用いて分析した間接的経済効果が 億円、
合計で約 億円の経済波及効果があったと報告されてい る。 しかし各務原市はこの成功に単純に満足することな く、 次なる一歩を踏み出すことになる。 つまり、 この成 功を一過性のものとせず、 持続的なものとするための研
活動の様子が、 各務原市観光交流課内の各務原国際協会 (
) が発行する に報
告されている。 この節は、 を参考にした。
この試みは後に、 世界知識産業都市連合 ( ) の設立へと発展した。
この節は、 各務原市産業部産業政策室 ( ) 「各務原市産業振興ビ ジョン グレーターナゴヤで煌く産業活力創造都市・各務原の躍進」 を 参考にした。
究会が翌 年 月に開催されたのである。
4.2.2 「各務原キムチ」 都市おこしプロジェクト
各務原市と春川市の交流から始まった 冬ソナ イベン トではあるが、 その発展を持続的にするために、 何が可 能であるかこの研究会では活発な議論が行われた。 その 結果、 イベント開催中に最も人気のあった商品である「キムチ」 に各務原の特産品である 「にんじん」 をむす びつけた 「各務原キムチ」 が考案された。 研究会の委員 は、 各務原商工会議所、 かかみがはら、 各務原日韓 親善協会、 大学教員、 流通業者、 飲食業者、 野菜生産者 など計 名からなり、 「キムチ日本一の都市研究会」 と 名付けられた。 そして 「各務原キムチ」 の定義づけ、 企 画の価値向上・差別化・各務原市ならではの特徴づけな どを検討した。
この活動は、 「各務原キムチ」 都市おこしプロジェク トへと発展し、 年度決算額 円 (含市負担 金 万円、 県補助金 万円)、 年度予算額
円 含市負担金 万円 の事業となり、 「各務原キムチ」
は新たな各務原市の特産品として 年 月に販売開始 となった。
プロジェクトの目的は、 各務原市と姉妹都市である大 韓民国春川市との国際交流のシンボルとして 「各務原キ ムチ」 のブランド化を図り、 「各務原=キムチの都市」
のイメージを定着化させ、 普及・振興を推進するととも に、 各務原市の新たな食文化、 観光資源として情報発信 していくことである。 また、 マスコミ等を通して す ることで、 交流人口の増加も目指す。
プロジェクトの主な内容は、 ( ) 参加店の募集、 認定:
市内の業者を対象に製造、 販売、 調理の募集を行い、 研 究会が審査の上、 認定を行う。 ( ) 市民参加型事業:市 民向けにキムチ漬け講習会の開催、 これは家庭でキムチ を漬ける都市を目指し、 継続的に開催する。 ( ) 各務原 キムチ :市内および各地で開催されるイベントに出 展し、 各務原キムチおよび各務原キムチ料理の試食販売 を展開する。 ( ) その他:各務原キムチのテーマソング、
各務原キムチ味の菓子開発、 キャラクターグッズの開発、
後述する愛 リーグへの加盟、 − グランプリ (後述) の参加検討などであった。 これから分かるようにプロジェ クトの内容は多岐にわたっていたが、 年現在、 それ らの全てが実を結んでいる。 また、 プロジェクトとして の予算化は終了したが、 「キムチ日本一の都市研究会」
の活動はさらに進化発展を続けている。
4.2.3 「各務原キムチ」 の定義
ここで、 「各務原キムチ」 の定義を示しておく。 「各務
原キムチ」 とは、 ①各務原の特産品である にんじん が 入っていること、 ②春川市の特産品である 松の実 が入っ ていること、 ③ 「キムチ日本一の都市研究会」 の審査、
認定を受けていることである。
ここで、 ①の にんじん は、 各務原の特産品ではある が 、 各務原産とすると季節が限定される為、 あえて産 地を問わないとしている。 ②の 松の実 も同様に産地を 問わないとする。 松の実は韓国の王宮キムチなど高価な キムチのみに使用される食材であり、 日本に流通してい るキムチの原料にはほとんど見られない為、 通常のキム チとの差別化をはかる要素ともなっている 。 ③の認定 システムは、 各務原キムチの品質を保つ為ではあるが、
「キムチ日本一の都市研究会」 が各務原キムチの発展戦 略を練る上で、 現在の全体像を把握するのにも役立って いる。
4.2.4 多角的な取組み
ここでは、 各務原キムチを売り出す多角的な取組みを 紹介する。 初めに、 重要な取組みのひとつである各務原 キムチまつりについて述べる。 第 回各務原キムチまつ りは 年 月に開催された。 当時は各務原キムチ発売 周年のイベントとして開催されたということである。
しかし、 回限りのイベントで終わらせない方針はすべ てに於いて貫かれており、 第 回が 年 月に開催 された。 そして、 第 回は 年 月 日・3日に環境 共生型テーマパークの河川環境楽園で開催された。 第3 回においては、 グランプリ岐阜ダービーとして 「川 中島の戦い!各務原キムチ鍋 奥美濃カレー」 が目 玉とされた。 グランプリについては4.4節で解説 するが、 様々な試みを網の目のように繋ぎ合わせ、 また 持続させる事で、 地域ブランド創出をより確かなものに しているのが見てとれる。
また、 年 月には韓国家庭料理のカリスマと呼ば れる柳香姫シェフによるキムチ漬け・キムチ料理講習会 を開催しており、 関係レストランとのコラボレーション も検討されている。
さらに、 年 月には各務原市・各務原商工会議所 合同講演会&シンポジウムが 「各務原キムチ・各務野や さい魅力形成」 をテーマとして開催された。 パネルディ スカッションでは、 各務原キムチの今後の展開について 各界の識者による活発な討議がされた。
その他、 各務原キムチ販売店と各務原キムチ認定料理 取扱店を載せた各務原キムチマップを毎年更新しながら 配布し、 地域の活性化に一役買っている。
4.2.5 産官学民連携
地域づくりでは、 産官学民連携がキーワードとなるが、
市民をどう巻き込むかは最も重要な課題である。 各務原
各務原の街を走ると、 その土が特徴的であることに気付かされる。 濃 い黒色でさらさらと細かく、 にんじん作りに適している。 (各務原の土 は甲子園の土にもなっている。 高校球児がスライディングした際にユニ フォームが黒くなる土である。)
日本では白菜キムチがほとんどである為、 にんじん、 松の実その他 の野菜が入った各務原キムチは、 味わいが深く実際のところ美味である。
キムチはその点でも成功を収めていると言っても過言で はない。 各務原市産業部観光交流課では、 年秋に 各務原キムチの発売開始以来、 市民向けのキムチ漬け講 習会を開催しているが、 年 月には市民からの講習 会参加者が、 延べ 人を越えた。 受講者はそれを家庭 で再現するわけだから、 それを食することで関わる市民 の数は 人の数倍という事になろう。 まさに日本で最 も市民が家庭でキムチを漬ける都市になりつつあるわけ である。
また市民がこのプロジェクトに積極的に参加するとい う視点で見れば、 イメージキャラクターの 「キムぴ〜」
は 年 月に商標登録として認可されたが、 その着ぐ るみの2体さえも市民の手作りである。 その他、 市民が 作詞作曲したイメージソング 「キムチの気持ち」 も誕生 し、 それを地元の合唱団等が合唱、 盆踊り、 吹奏楽演奏、
よさこいソーランなどにも活用するなど、 様々な広がり を見せている。
地元企業の協力も得て様々なグッズ・企画も生まれた。
「ポテトチップス各務原キムチ味」 がご当地商品として 開発された他、 ビール企業が 「各務原キムチ」 を入れた ポスターを製作している 。 その他、 コンビニと共同企 画した弁当や惣菜などが、 期間限定で販売されたり、 地 元の酒造メーカーが日本酒と各務原キムチのセットを贈 答用に販売したりしている。
この節は、 「ワークショップ」 抜きには終われないだ ろう。 各務原キムチ関係者によるワークショップを 年に開催し、 各務原キムチの課題・問題点を整理 した。 それを引き継ぎ、 年度はワークショップが、
月、 月、 月、 月の 回開催された。
その内容テーマは①各務原キムチ・各務野やさいのモ デル店づくり 、 および②核となる拠点作りである。 ワー クショップ参加者は、 キムチ日本一の都市研究会委員、
各務原キムチ都市おこし隊、 大学生、 高校生、 各務原市、
各務原商工会議所と幅広い。 筆者は第 回目の会議を見 学させていただいたが、 外部講師による講義の後、 参加 者 (高校生も含めて) が熱心に討議している姿に、 感銘 を受けた。
また、 前述の通り 「キムチ日本一の都市研究会」 委員 や、 ワークショップの参加者は産官学民の全てから出て おり、 多角的な産官学民連携が出来ていると総括できる。
4.3 岐阜の特産品へ
岐阜県では 、 岐阜の特産品を創出・確認しようとい う試みにより 「飛騨・美濃じまん運動」 を 年度から
実施している。 これを推進する為、 「じまんの原石」 の 選定が 年 月に行われた。 「各務原キムチ」 はこれ に応募し、 件の応募の中から選定されたわずか 件 の 「じまんの原石」 の1つとなった 。 選定理由を長く なるが、 各務原キムチの地域ブランド戦略をうまく表現 しているので以下に引用する。
「 各務原キムチ は産学官連携による市民参加型の 都市おこし事業としてスタート。 三者がうまく連携する ことで、 そのブランド化に成功し、 地域振興へと繋がっ ている。 市民向けに キムチ漬け講習会 キムチ料理 講習会 などを開催し、 広く浸透すると同時にキムチを 家庭で漬ける都市、 愛する都市へとなりつつある。
各務原キムチの商品開発に伴う地元野菜の利用による 地産地消の促進、 各種派生商品の開発および販売に伴う 商業施設および飲食店の振興、 各務原キムチマップやホー ムページによる情報発信、 イメージソングを活用した地 域が一体となった 活動、 各種マスメディアに掲載に よる 各務原市 及び 各務原キムチ のブランド化な どが図れている。」
4.4 全国へ
この節では、 「各務原キムチ」 の全国へ向けた取り組 みを紹介する。 初めに、 全国へのマスメディアへの登場・
掲載も少なくないことを挙げたい。 例えば、 テレビ等で 岐阜県案内の1つとして取り上げられる例などあるが、
の食彩浪漫のテキストに於いてキムチが特集され た際には 、 「岐阜・各務原キムチ」 として ページにわ たり各務原市および各務原キムチが紹介された。 また、
全国商工会議所連合会の機関紙に於いても 、 各務原市 が、 「まちの知名度アップのための仕掛けがてんこもり 各務原キムチ で都市おこし」、 と紹介されたりしてい る。
次に、 前述の 「各務原キムチ」 都市おこしプロジェク トでの全国展開の1つの目標であった愛Bリーグへの加 盟、 グランプリへの参加について解説する。
4.4.1 愛 B リーグ
17グランプリとは、 「 級ご当地グルメでまちおこ し団体連絡協議会」 (通称:愛Bリーグ) が主催する食 の祭典である。 従って、 グランプリを説明する前に、
この協議会の説明が必要であろう。
この愛 リーグは、 その理念を、 「 級ご当地グルメ で、 地域から日本を元気にする。」 とし、 「地元の食 (= 級ご当地グルメ) を愛し、 その魅力をもっとたく さんの人に知ってもらいたいと考えて活動している人た
1ビールの宣伝ポスターでは同様の記述が榊原 ( ) にも見られる。
ご当地モノビールポスターについては、 前述の古田氏によれば、 各務原 市が富士宮市に訪問した際に情報を得たという事であるが、 現在の民の 官への積極的な参加を印象付けるエピソードでもある。
各務原市には、 「各務原キムチ」 の他に、 「各務野やさい」 という市 民ボランティアによる地産地消のプロジェクトがある。
岐阜県 産業労働観光部 観光・ブランド振興課
この 件の原石の中から、 「岐阜の宝もの」 が 件、 「明日の宝もの」
が 件選出された。
日本放送出版協会 ( ) 「 食彩浪漫」 2月号 全国商工会議所連合会 ( ) 「石垣」 3月号
この節と次節は、 B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会の 公式ホームページを参照にした。
ち (= 級ご当地グルメでまちおこし団体) が、 他地域 と連携することにより、 自分たちの活動の幅を広げてい くための連絡協議会」 である。 第 回 1グランプリ に出展した団体が中心となって 年 月に設立されて いる。
会則によれば、 「B級ご当地グルメでまちおこしをし ている団体を会員とする。 会員の定義は、 以下の通りと する。 地域で愛されているB級ご当地グルメでブランド 化を目指して活動している団体・グループであること。
B級ご当地グルメとは
・食べたら旨いと絶対の自信をもっておすすめできるも のであること。
・地元の人が日常的に食べているもの、 又は日常的に食 べることができるものであること。
・食材ではなく、 料理として提供されるものであること。
・特定の一飲食店のメニューではなく、 その街に行けば 複数の店で提供していたり、 一般家庭で食べることがで きるものであること。」 とあり、 会員の定義はかなり厳 しい。 ここで分かるとおり一過性のものや商業目的のも のははっきりと排除されている。 また、 級ご当地グル メの定義のうち、 特に、 最後の条項を満たすのはそれほ ど簡単ではない。
4.4.2 B-1 グランプリ
グランプリに出展できるのは、 全国各地で、 級 ご当地グルメによるまちおこしを目指して活動している 団体であり、 愛 リーグに加盟している団体である。
この グランプリは、 年 月に、 八戸せんべい 汁研究所の企画プロデュースにより、 青森県八戸市で第 1回を開催したのがその始まりである。 食でまちおこし をしている 団体が参戦し 、 「富士宮やきそば」 が初代 グランプリを獲得した。 年 月には、 第 回大会 を静岡県富士宮市で開催し、 団体が参戦し、 「富士宮 やきそば」 が連覇を達成している。 第3回 グラン プリは、 年 月に久留米市で 団体の参戦により開 催した。 第 回は、 秋田県横手市にて 年 月に開催 される予定である。
年度の第3回グランプリの出展状況を表1にした。
北は北海道富良野市から南は福岡県まで参戦団体は全国 から集まっている。 この表より グランプリらしく 単価が低い事が見て取れる。 また、 表中第2回参戦団体 には○を付した。 第 回の参戦団体より3団体増加して
1 グランプリは勿論、 車のレースの グランプリを捩ったもの であろう。 それに倣い、 出展者は 「参加」 と言わずに 「参戦」 と言う。
この節ではそれに従った。
B グランプリ 久留米実行委員会による 「第 回B級ご当地グル メの祭典B−1グランプリ」 チラシより作成
所在地 名称 団体名称 第2回 価格
群馬県 太田市 上州太田焼そば 上州太田焼そばのれん会 ○
埼玉県 行田市 行田ゼリーフライ 行田ゼリーフライ研究会(行田市のフライマップ) ○ 岐阜県 郡上市 奥美濃カレー 奥美濃カレープロジェクト実行委員会 ○
福岡県 久留米市 久留米やきとり 久留米やきとり日本一の会 ○
静岡県 袋井市 袋井宿たまごふわふわ 袋井市観光協会 ○
兵庫県 姫路市 姫路おでん 姫路おでん普及委員会
静岡県 裾野市 すその水ギョーザ すそのギョーザ倶楽部 ○
青森県 八戸市 八戸せんべい汁 八戸せんべい汁研究所 ○
秋田県 横手市 横手やきそば 横手やきそば暖簾会 ○
長野県 駒ヶ根市 駒ヶ根ソースかつ丼 駒ヶ根ソースかつ丼会 ○
静岡県 静岡市 静岡おでん 静岡おでんの会 ○
福井県 小浜市 浜焼き鯖バラチラシ寿司 御食国若狭倶楽部 ○
神奈川県 厚木市 厚木シロコロ・ホルモン 厚木シロコロ・ホルモン探検隊 ○ 山梨県 大月市 おつけだんご 大月市おつけだんごの会
北海道 富良野市 富良野オムカレー 食のトライアングル(農・商・消)研究 ○ 青森県 黒石市 黒石つゆやきそば やきそばのまち黒石会
青森県 青森市 青森生姜味噌おでん 青森おでんの会 ○
兵庫県 高砂市 高砂にくてん 高砂にくてん喰わん会 ○
静岡県 富士宮市 富士宮やきそば 富士宮やきそば学会 ○
鳥取県 鳥取市 とうふちくわ膳 鳥取とうふちくわ総研 ○
秋田県 仙北市 あいがけ神代カレー 神代地域活性化推進協議会
福岡県 北九州市 小倉発祥焼うどん 小倉焼うどん研究所 ○
静岡県 浜松市 浜松餃子 浜松餃子学会 ○
岐阜県 各務原市 各務原キムチ鍋 キムチ日本一の都市研究会 ○
いるが、 第 回に参戦し第 回に参戦を取りやめたとこ ろがあることから、 初参戦は 団体である。 岐阜県から は、 「各務原キムチ」 の他に 、 「奥美濃カレー」 が参戦 している。 結局この大会では、 「厚木シロコロ・ホルモ ン」 が優勝し、 「富士宮やきそば」 の 連覇はならなかっ た。 位に 「八戸せんべい汁」、 そして 位のブロンズ グランプリには 「各務原キムチ鍋」 が入った。 「
各務原キムチ 都市おこしプロジェクト」 にあるよう に、 年当時には 「各務原キムチ」 は グランプ リに参戦することを目標に掲げていたが、 翌 年には 参戦を果たし、 年には 位のブロンズグランプリ受 賞と、 成功への階段を一気にかけのぼった感がある。 こ の第 回大会は 日間で同時開催の 「くるめ食の祭典」
と合わせて 万 千人の来場者を記録した。 これは予想 の 万人を大きく上回っており、 グランプリもイベ ントとして大きく成長していることが伺える。
4.5 地域ブランド創出と各務原キムチの分析
地域ブランドの創出に決まった理論があるとは言い切 れないが、 関・古川 ( ) が、 (いわゆる) 級グル メを地域ブランドにする為に必要な条件をまとめている。
それによると、
① 本物でなくてはならない。
② 消費者に語れるエピソードにあふれていなければな らない。
③ ブランドを作るドリーマーが必要である。
④ ブランドの夢はけっして利己的であってはならない。
⑤ 小さな力をひとつのベクトルにそろえ、 競争と共創 により全体最適を目指すことが重要である。
⑥ 級グルメを糊しろにして、 地域間の連携を常に図 らなければならない。
の6点が重要である。 ここでは、 これらの点を各務原キ ムチについて検証してみる。 まず、 ①の本物であるとい う点だが、 各務原キムチは、 本場の韓国から講師を呼ん だり、 韓国で学んだ人が講師になったり、 料理研究家が 日本向けの独自の味を追求したりと、 食材として一流で ある。 さらにキムチに松の実が入っている等の差別化も 進んでいる。 ②のエピソードという点でも、 「 各務 原キムチ」 で述べたように、 各務原市と春川市の出会い から、 韓流ブーム、 冬ソナ イベントの成功等々エピソー ドに満ち溢れている。 ③でのブランドを作るドリーマー として、 元各務原市産業部観光交流課の古田希雄氏を挙 げておきたい。 古田氏は春川市との交流の一環で 年に わたり春川市役所に在任し、 豊富な情報と貴重な知識を 得た。 古田氏の経験と知恵さらに情熱が無ければ 「各務 原キムチ」 は生まれなかったであろう。 ④の 「ブランド
の夢はけっして利己的であってはならない」、 および⑤ の 「小さな力をひとつのベクトルにそろえ、 競争と共創 により全体最適を目指すことが重要である」 に対する答 えは 「キムチ日本一の都市研究会」 が出している。 産官 学民の協働により各務原キムチの地域への浸透と全国へ の発信は一応の成功を収めている。 最後の⑥であるが、
愛 リーグへの加盟、 グランプリへの参戦で形になっ てきているようである。
このことから、 「各務原キムチ」 は、 級グルメを地 域ブランドにする為に必要な条件をすべて兼ね備えてい ると言うことができる。
また、 「 食 を通じての地域ブランド創出」 の節 で紹介した関・遠山 ( ) の5つのカテゴリーがある。
これら5つのカテゴリーはそれぞれ興味深いが、 この観 点から 「各務原キムチ」 を分析するとどうなるだろうか。
初めに第 のカテゴリ−の地域に根ざした 級グルメ という点でここに分類されるであろう。 また、 第3のカ テゴリーである 「 食 を軸にした街づくり」 の宇都宮 パターンともとれる。 さらに 「キムチ日本一の研究会」
からすると、 第5のカテゴリーである 「食の 産学連携 」 がより進んだ 「食の 産官学民連携 」 が成功している 事例とも言える。
5 「富士宮やきそば」 との比較
ここでは、 第1回、 第2回の グランプリで優勝を 遂げた 「富士宮やきそば」 と、 「各務原キムチ」 につい ての比較検証を行う。 「富士宮やきそば」 については、
榊原 ( ) に詳細な報告があるので、 それを参照した。
5.1 静岡県の富士宮市と岐阜県の各務原市
静岡県の富士宮市は、 富士山の西南に広がり、 静岡県 での人口規模が 番目、 約 万人の都市である。 富士宮 市は富士山をご神体として平安時代に造営された浅間大 社の門前町であった。 工業もあるが自然環境にめぐまれ た地域である。
一方、 岐阜県の各務原市は木曽川沿いの都市であり、
人口規模は 万人と若干富士宮市より多いが、 中規模都 市という点で同じカテゴリーに入る都市である。 航空自 衛隊の基地のまちとして、 また工業都市として認知され ている。
富士山のまち富士宮と、 飛行機のまち各務原であるが、
どちらも卓越した伝統的特産品や、 超越した食文化があ るわけではない。 むしろ、 地域ブランドとしては 「食」
ではなかった比較的落ち着いた中都市が、 食を通じたま ちおこしを展開している点が共通項である。
5.2 「富士宮やきそば学会」 と 「キムチ日本一の都市研 究会」
ともに、 学会、 研究会というアカデミックな名称がつ いているのが興味深い。 「富士宮やきそば学会」 は、 富
大会には 「各務原キムチ鍋」 で参戦した。 グランプリには毎回、 戦 略的に 「鍋」 で参戦している。 キムチは辛い為に鍋の方が食べやすいこ と、 また嗅覚に訴えることで遠くから人を引き付ける事が出来るからで ある。
士宮市の中心市街地活性化基本計画の策定にあたり 年に開催された 「市民まちづくりワークショップ」 に端 を発する。 年続いたワークショップの終了後、 関係有 志が引き続き活性化を検討するなかで、 富士宮市にはお 好み焼き店 (やきそば店) が多い事に気付き、 さらに富 士宮の焼きそばが富士宮独自の調理法であることを確認 し 、 やきそばでまちおこしをすることを決めるに至っ た。 「富士宮やきそば学会」 は当初 「やきそば 麺」 と いう名称で調査活動をおこない 「富士宮やきそばマップ」
を作成したが、 その後 「富士宮やきそば学会」 と名称を 改めた。 つまり、 行政主導のワークショップがそのもと ではあるが、 あくまでも市民の活動であることが特徴で ある。 学会という名称ではあるが、 学術的な活動を目的 としているわけではないようである。
これに対し、 「キムチ日本一の都市研究会」 は、 その 本部を各務原市産業部観光交流課に置いており、 「各務 原キムチ」 を成功させる市役所のプロジェクトの牽引役 である。 しかしながら官が主導している研究会ではある ものの、 その研究会委員は前述の通り、 各務原商工会議 所、 かかみがはら、 各務原日韓親善協会、 大学教員、
流通業者、 飲食業者、 野菜生産者などであり、 産官学民 連携となっている。 研究会という名前の通り、 「各務原 キムチ」 を如何に発展させるかの戦略的研究を活発に行っ ている。 また、 研究会の委員である大学教員が栄養学の 観点から 「各務原キムチ」 を分析し学会発表するなど 、 学術的な研究との結びつきもある 。
5.3 「富士宮やきそば」 と 「各務原キムチ」
初めに 「富士宮やきそば」 に関して言えば、 「富士宮 やきそば学会」 が作成した 「富士宮やきそばマップ」 を 観光客に配布し、 まちおこしを実施した。 付近に富士山 を中心とした観光資源が豊富にあることも手伝い東京圏 より日帰り観光のツアーが実施されるようになり、 まち おこしの成功例といえるようになった。 食を通じた地域 ブランドづくりのなかでは、 富士宮やきそばは1つの特 徴的な例である。 なぜなら、 富士宮のやきそばは自然発 生的に以前から多くやきそば店がその街に存在し、 それ があとから発見され、 地域の特徴と位置付けられたから である。 富士宮にやきそば店がなぜ多く発生したかは、
榊原 ( ) にも明らかにされてはいないが、 横浜の中 華街が 、 横浜に中国人居住者が多いことから自然に発 生した様に、 自然発生的に出来上がる地域ブランド・地 域グルメという1つのパターンである。
これに対し、 「各務原キムチ」 は、 まちおこしという 当初の目的こそ同じであれ、 その発生の姿は反対である。
もともと各務原にはキムチ文化はなく、 まちおこしの道 具として人為的に考案されたグルメである。 しかしなが ら、 地元の人々に永く愛されてきたという歴史や文化は 無いものの、 短時間に地域の人々に愛され支持されるよ うになったことは高く評価される。 むしろこの例は、 新 しいまちおこしのパターンとして、 今後広く認知されて いく可能性があるのだろう。
正反対の成り立ちの歴史を持つ両者であるが、 同様に グランプリに参戦し、 優勝や入賞を勝ち取っているとこ ろは興味深い。
6 おわりにかえて:各務原市の都市戦略
本稿で取り上げてきたように、 各務原市による食を通 じての地域ブランドの創出は、 特徴的であり成果を出し つつある。 今後も、 現在の活動であるキムチ日本一の都 市研究会、 ワークショップ、 各務原キムチマップ、 各務 原キムチまつり、 グランプリへの参戦、 産官学民協 働等々はすべて継続発展させていき、 地域ブランドに磨 きをかけていくことになるだろう。 さらに言えば、 研究 会を 化するなどして組織化すること、 各務原キム チを商標登録すること、 さらにブランドとしての価値を 守る管理体制を構築していく必要もあるだろう。
また、 食を通じた地域おこしに関しては、 各務原キム チが先行しているもののそれのみならず、 前述の 「各務 野やさいプロジェクト」、 あるいは商工会議所青年部の 実施する 「各務原カレー祭」 があり、 多彩であることも 記しておきたい。
この章ではおわりにかえて、 各務原市の特徴的な都市 戦略を概観し、 今後の政策提言を行いたい。
各務原市の都市 (まち) づくり戦略には、 景観行政と いうもう1つ別の側面があることを忘れてはならない。
食を通じてのまちづくり同様、 地域の景観を活用しての まちづくりに取り組む地方自治体も増加してきている 。 各務原市は、 年に景観法が制定されたのを受け、
翌年の 年には全国に先駆けて景観行政団体になっ ており、 その景観計画はまちづくり戦略の一翼を担って いる 。
各務原市は、 食を通じての都市 (まち) づくり、 景観 を通じての都市 (まち) づくり、 と有機的な都市 (まち) づくり戦略を展開している。 そして、 どちらもゆっくり と着実に成功しつつある。 地域ブランドも都市 (まち) おこしが基になっているケースが多いが、 都市おこしの 先には都市創りがあるようである。 近年盛んになってい る創造都市の議論がそれを物語っている。
榊原 ( ) によれば、 その特徴とは①やきそばの麺:コーティン グ、 腰の強い麺、 ②肉かすの使用:油のラードを搾り取った後の凝縮し た油、 ③だし粉:いわゆる削り粉、 である。
岐阜女子大学家政学部の小川宣子教授が、 一般のキムチと 「各務原 キムチ」 の栄養学的比較検討を行い、 「各務原キムチ」 が一般のキムチ より栄養学的に優れていることを報告している。
従って、 学術的な報告は本稿が 番目となる。
横浜の中華街同様、 イギリスのロンドン、 カナダのバンクーバーな ど世界中にチャイナタウン (中華街) が存在している。
まちづくりの視点で、 東海道の関 (三重県) の地域再生などがある。
この事例では、 上野・井口・高橋・山本・庄山・野村・二神 ( ) で は、 地域の歴史・文化と、 地域の取組みをつなげ掘り下げる事による地 域学を提唱している。
詳しくは、 各務原市 ( ) 「各務原市景観計画」 を参照されたい。
今後の都市おこしは、 地域の活性化にとどまらず、 創 造的に都市を作り出す方向に転換していくであろう。 そ の好例が、 昨年度より文化庁表彰が始まった 「創造都市」
である。
文化庁では、 文化芸術の振興を都市の経営戦略に位置 付ける地方自治体を選定し、 「文化芸術創造都市」 に対 する文化庁長官表彰を 年度に開始している。 初年 度である 年度では、 「ナショナルアートパーク構想」
でまちづくりをする横浜市、 市民運動により八幡掘の再 生運動に取り組む近江八幡市、 基地依存体質を脱却し国 際文化観光都市にシフトしつつ、 ちゃんぷーる文化で伝 統文化と異文化のコラボレーションを行う沖縄市 、 戦 争体験のない都市として歴史と創造のまちを目指す金沢 市の4つの市が表彰の栄誉を得た。 これらの都市はそれ ぞれ大変魅力的でそのまちの特性で人を呼び込む力があ るだろう。 また創造都市として一見全く先進的な試みを したように見える。 しかしながら、 その内容を熟慮する ならば、 決して新しい文化を産み出したのではない。 つ まり、 地域文化の視点で見るならば、 その地域文化その ものを活用しているのである。 これにならえば、 各務原 市も、 各務原独自の文化を再考する事からはじめ、 現在 の経済優位性を有効活用し、 食を通じての都市 (まち) おこしを楽しみつつ、 景観を通じてのまちづくりを推進 させさらに発展させたその先に、 創造都市としてのこの 都市 (まち) があるのではないだろうか。
参考文献
1. 青木幸弘・恩蔵直人編 ( ) 「製品・ブランド戦 略」 有斐閣アルマ
2. 井堀利宏・土居丈朗 ( ) 「日本政治の経済分析」
木鐸社
3. 上野達彦・井口靖・高橋秀治・山本真吾・庄山徹・
野村浩・二神律子 ( ) 「文化の社会的効果に関 する定量的分析研究報告書Ⅱ」 三重県高等教育機関 連絡会議
4. 各務原国際協会 ( ) . 5. 各務原市 ( ) 「各務原市景観計画」
6. 各務原市産業部産業政策室 ( ) 「各務各務原市 産業振興ビジョン−グレーターナゴヤで煌く産業活 力創造都市・各務原の躍進−」
7. ケラー、 . . (恩蔵直人・亀井昭宏訳) ( )
「戦略的ブランドマネジメント」 東急エージェンシー 8. 榊原省吾 ( ) 「地域ブランド」 に関する一考察−
富士宮やきそばの成功事例を中心とした分析−、 浜 松学院大学研究論集、 浜松学院大学、 第 号 9. 佐々木純一郎・石原慎士・野崎道哉 ( ) 「地域
ブランドと地域経済」 同友館
. 十六銀行経営相談室 ( )、 「各務原市 「 冬のソ ナタ 春川物語」 に関する調査レポート、 「経済月 報」 . 、 十六銀行営業支援部
. 関満博・及川孝信編 ( ) 「地域ブランドと産業 振興」 新評論
. 関満博・遠山浩 ( ) 「 食 の地域ブランド戦略」
新評論
. 関満博・古川一郎 ( ) 「 級グルメ の地域ブ ランド戦略」 新評論
. 全国商工会議所連合会 ( ) 「石垣」、 月号 . 田村秀 ( ) 「 級グルメが地方を救う」 集英社
新書、 集英社
. 鳥居直隆 ( ) 「ブランド・マーケティング」 ダ イヤモンド社
. 日本放送出版協会 ( ) 「 食彩浪漫」、2月号
旧名称はコザ市。 嘉手納基地の門前町として発展してきた。 沖縄市 は年少人口が日本一高く、 実際に若々しいまちである。