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教 育 政 策 過 程 の 分 析 ― 形 成 過 程 と決 定 過 程 に つ い て―

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教 育 政 策 過 程 の 分 析

― 形 成 過 程 と決 定 過 程 に つ い て―

熊 谷 忠 泰

Tadahiro  KUMAGAI:

Analyse vom Prozeß der Erziehungs-politik

— über den Prozeß ihrer Entstehung und Entscheidung —

1  は  じ  め  に

  本 稿 は,前 稿(長 崎大学教育学部 ・教育科学研究報告,第24号,昭 和52年)の 教 育 政 策 論 へ の序 章 」 を うけて,そ の本 題 を 論 じよ うとす る も ので あ る。

  序 章 に対 す る本 章 と して は,当 然 に 「教 育 政 策 論」 ぐら いを 標 題 に掲 げ るべ きで は あ ろ うが,漸 次 そ の 想 を 練 って い る間 に,そ の 標 題 を こ こで 用 い る こ と は とて も無 理 だ と い う こ と が 明 らか にな って きた 。 と い う理 由 は,筆 者 の 当初 の仮 説 の よ うに,教 育 政 策 が 深 く 教 育 の本 質 に関 わ る以 上,教 育 政 策 を 「論」 と して,そ れ 自体 を 抽 象 的 に考 え る こ と は必 ず し も適 当で は な く,む しろ具 体 的 な 「教 育 政 策 過 程」 の な かで,現 実 の教 育 と政 策 とが ど の よ うに 関 わ りを もち,相 互 に制 し合 って い る の か,同 時 に政 策 の な か に教 育 の在 るべ き 相 が ど の よ うに探 求 さ れ て い る の か な ど を み る こ と が必 要 だ と観 じ られ て き た か らで あ る 。 よ って,本 論 に 当 る部 分 は,一 般 政策 に即 して教 育 政 策 は い か に構 成 さ れ る の か,そ して,そ の こ と が教 育 の本 質 と い か に 関わ る の か(次 稿)を 傭 目敢 しよ う と構 想 し,本 稿 は そ の前 者 に あた る部 分 を 担 うも の と して 試 論 され た もので あ る 。

  さ ご,前 稿 まで の論 旨に よ れ ば,政 策 は,形 式 的 な面 か らす れ ば,人 間活 動 の合 理 化 機 能 現 象,換 言 す れ ば行 為 の知 能 的合 理 化 機 能 現 象 で あ る とい わ れ た が1),こ れ を 実 質 面 か ら考 察 す れ ば,ま さ に権 力 が そ の行 為 の正 当性 を誇 示 ・承 認 させ る た あ に,あ らゆ る政 治 的資 源 を総 合 した 「場」 に露 呈 さ れ た権 力 イ メー ジに外 な らな い とい わ れ た2)。 した が っ て,後 者 の立 場 を更 に追 究 して い く と,政 策 は,既 成 の,固 定 した 「もの」 で は な く,政 治 が 政 治 的資 源 と政 治 的 技 量 とを 結合 させ て 政 治 的 影 響 力 を 造 出 し,そ の 影 響 力 の下 に 社 的 正 当性 を確 立 した うえ で強 制 的 ま た は 或 る 制 裁 の下 に価 値 を配 分 す る一 そ う した機 構 の 会 総 体 で あ る とい う こ とに な ろ う。 この 意 味 で,政 策 は,政 治 過 程 ま た は 政策 循 環 過程, ひ い て は権 力過 程 で あ る と もい わ れ た3)。 しか しな が ら,こ れ らの諸 過程 を 円滑 に機 能 さ せ るた め に は,そ れ らの ス ク リー ン と して の 政 治 的 文 化 と,プ゚セ ス と して の変 換 過 程 の 二 つ を 看 過す る わ け に は い か な い と考 え られ た4)。

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長崎大学教育学 部教育科学研究報告  第25号

  よ って,わ れ わ れ は,以 下 この二 つ の もの(本 稿 で は 後 者)に 関 して 教 育 的 な 側 面 か ら 考 察 を 進 め て い く こ とにす る。

2  変換過程 の分析

  政 治 過 程 ま た は 政 策 過 程 は,入 カ ー 変 換 一 出力 の 円環 過 程 で あ る と見 撒 さ れ た 。  「入 力 」 は,政 治 体 系 の存 続 に深 く関 わ る環 境 内 の多 様 な事 象 や 条 件 の影 響 を 濃 縮 的 に把 握 す る要 約 変 数 で あ り,「 出力」 は,環 境 か らの要 求 に対 す る応 答 ま た は 要 求 を 抑 圧 す る努 力 と して の権 威 の 決 定 お よ び行 為 で あ る。 した が って,「 変 換」 は,ま さに この 入 力 と出 力 との連 係 変 数 な ので あ るが,ま た,具 体 的 に は入 力 に よ って把 握 され た 要 求 と 出力 に お け る権 威 の 決 定 お よ び行 為 と の間 の通 信,交 換,浸 透 と して説 明 す る こ とが で き る5)。

  しか し,出 力 の 「権 威 の決 定 お よ び行 為」 を 喚 起 ま た は 造 出す る 「通 信,交 換,浸 透 」 機 能 を 「機 関」 と して考 察 す れ ば,変 換 は さ らに 「形 成」 と 「決 定」 に分 析 す る こ とが で き る。 形 成 と決 定 は 政 治 過程 に お け る一 連 の 過 程 で あ り,連 続 的 に展 開 す る も の で あ る が,機 関 ・制 度 的 に は 異 な った 段 階 に 属 して い る ので,一 応 分 離 して 考 察 す る こ とが 必 要 で あ ろ うと考 え る。

  (1)  政 策 形 成 過 程 一 政 策 立 案 過 程

  政 策 が 企 画 され,立 案 され る過 程 を 総 括 して政 策 形 成 過 程 とい う。 そ れ は,権 力 が そ の 目的 を 達成 し よ うとす る政 治 過 程 の うち,重 要 な部 分 の 一 つ で あ り,種 々 の要 因 が錯 綜 し あ う複 雑 な 過 程 で あ る。 した が って,さ きに形 成 と決 定 とは 異 質 の 作 用 だ と して 分 離 した が,現 実 に,機 能 的 に 捉 え る場 合,両 者 間 に は む し ろ連 続 面 が 多 い こ と も看 過 して は な ら な い 。 そ れ は,例 え ば,政 策 を必 要 とす る問 題 状 況,そ れ らを 囲 緯 す る社 会 的諸 勢 力(圧 力 団 体,支 持 団 体 な ど)の 相互 作 用 お よび 形 成 ・決 定 を 促 進 す る諸 要 因 な ど が共 通 的 で あ るか らで あ る 。 た だ,形 成 の ダ イ ナ ミ ック ス が決 定 の そ れ に先 行 す る と い え る だ け で あ る。

  イ  政 策 形成 過 程 の分 析 と 「場 」

  前 稿 既 述 の よ うに,D・ イ ー ス トンに あ って は,政 策 形 成 過 程 は 政 治 体 系 の生 活 諸 過 程 と して 捉 え られ た 。す な わ ち,そ れ は,「 政 治 体 系 が 安 定 と変 動 の世 界 で い か に して首 尾 よ く存 続 す る か」 の課 題 に応 え る生 活 の 諸 過 程 で あ っ た 。 し た が って,政 治 体 系=権 は,自 己を 囲続 して 作 動 す る諸 条 件 に対 して 適 切 ・有 効 に反 応 す る必 要 が あ る。 こ の点 に 関 連 して,イ ー ス トンは,政 治 体 系 を 「途 方 もな く可 変 的 な能 力 」 だ とい った が6),こ 政 治 体 系 を して 先 の 課 題 に応 え しめ,「 可 変 的 な能 力」 た ら しめ る もの こそ,ま さ に政 策 形 成 過 程 の ダ イ ナ ミ ッ クスな ので あ る。 そ して,こ の 政策 形 成 過 程 の 複 雑 な ダ イ ナ ミッ ク

ス も,そ の 局 面 を 単 純 化 して 模 式 的 に示 せ ば大 よ そ つ ぎの よ う にな るで あ ろ う。

  政 策 形 成 は,政 策 需 要 とい う問題 状 況 が 認知 され,そ の 需 要 に応 え る と い う問題 解 決 の 必 要 性 が 意 識 さ れ た と ころ か ら出発 す る。 した が って,要 約 的 に い え ば,そ れ は,問 題 解 決 策 の探 求 と し て 展 開 す る。 熊 谷 一 乗 氏 はJ・A・ ロ ビ ン ソ ン,R・L・ マ ジヤ ー ク,

丁 ・C・ チ ャー ル ス ワー ス らの見 解 を 斜 酌 しな が ら,次 の 四つ の位 相 を樹 て て い る7)。

  認 知 的位 相 一 情 報 収 集 ・分 析,状 況 判 断,問 題 の 明確 化 。

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教育政策過程 の分析  一形成過程 と決定過程 について一(熊 谷)

  評 価 的位 相 一 状 況 ・問題 に対 応 した政 策 目的 また は 政 策 手 段 につ い て の選 択 肢 の案 出 と     設 定,そ の比 較 検 討,既 成 の法 体 系 ・慣 行 な どの 法 規 範 的 制 約 条 件 と の関 連 の検 討 。一   調 整 的位 相 一意 思 決 定 参 加者 お よ び 利 害 関 係 者 相 互 の 対 立 ・葛 藤 の調 整,取 引 き,説     得,譲 歩,妥 協 。

  決 定 的 位 相 一 重 要 事 項 の確 認,意 思 決 定 責 任 者 の裁 定,意 思 決 定 参 加 者 の 談 合 な い し多     数 決 に よ る政 策 目的 ・政 策 手 段 の選 択,決 定 。

  以 上 の位 相 過 程 は,必 ず し も直 線 的 に順 序 を 追 って 経 過 す る と限 った もので は な く,相 互 に フ ィー ドバ ック しな が ら螺 旋 的 に反 覆 し,進 行 す る。 そ して,こ の 発 展 運 動 は,当 然 そ れ が展 開 され るた め の社 会 的 な 「場 」 を 必 要 とす るか ら,こ の 「場 」 が 政 策 形 成 の た あ の組 織,つ ま り 「機 構 」 を 構 成 す る ので あ る。 一 般 に,そ れ は広 義 に 「行 政 府 機 構」 とい

って よ いで あ ろ う。

  政 策 形 成 は,主 と して 行 政 府 機 構 とい う集 合 的 ・社 会 的 な 「場」 のな かで 遂 行 され る も ので あ る か ら,一 見,不 確 定 かつ 非 合 理 的 要 素 を 伴 うも の の よ うに受 け取 られ るが,現 実 的 に は一 定 の準 拠 枠 のな か で,組 織 的 に,し か も権 威 的 に行 わ れ る し,ま た 行 わ れ な くて は な らな い。 第 一 に,政 策 形 成 は,権 力 の維 持 ・獲 得 の た め に,そ の 権 力 行 使 の 一 環 ど し て,責 任 に裏 付 け られ た権 威(正 統 性)あ る もので な くて は な ら な い し,第 二 に,そ れ は,、ぼ う大 な情 報 収 集,そ の綿 密 ・適 確 な 分 析 を 通 して,可 能 な 限 りの客 観 性 と合 理 性 を 確 保 しな くて はな らな い。 こ う して,政 策 は,組 織 化 ・制 度 化 され た 権 威 あ る機 構 の な か で 形 成 され,そ れ ゆ え に正 当性 を もって 審 議 の 場 に 登 場 す る こ とが で き る仕 組 み にな って い る。 こ う した 制 度 化 され た 機 構 は,そ の 組 織 化 が 進 み,複 雑 化 す れ ばす るほ ど専 門 的 に 分 化 し,官 僚 化 を 進 め て い くこ とは 周 知 の とお りで あ る8)。

口  政策形成の諸機関

  政 策 の形 成 は,制 度 化 され た 機 構 を 媒 介 と して 組 織 的 に な さ れ る 意 思 決 定 の 過程 で あ る。 そ して,政 策 が 実 効 性 を もつ た め には,社 会 的 にそ の 正 当 性 が 公 認 され,し か もそ の 実 現 に向 か って 政 治 的 ・行 政 的 行 為 を 拘 束 す る もの で な くて は な らな い 。 教 育 政 策 の 正 当 性 と拘 束 性 は,明 治4年9月 に文 部 省 が 設 立 され て 以 来,制 度 化 され た 権 威 あ る機 構 の 中 で の 組 織 的 な 意 思 決 定 の 結 果 と して 形 成 され る こ と にな った 。 して み れ ば,政 策 形 成 過 程 に おい て 「機 構」 の 占め る比 重 は 重 い もの が あ る。        1

  しか しな が ら,機 構 そ れ 自体 は,何 ら政 策形 成 機 能 を果 す もの で は な い 。 そ れ は,機 構 にお け る役 割 組 織 に充 当 され る政 策 担 当者(公 認 され た 責 任者)を 得 て,は じめ て有 効 な 政 策 形 成 機 能 を 果 す こ とが で き るの で あ る。 ま た 一 方,担 当者 は,当 該 機 構 の 中 で公 認 さ れ た 一 定 の 役 割 を 占め る こ とに よ って,そ の 主体 的動 機 を生 か して 政 策形 成 活 動 を 行 うこ とが で きる 。 この よ うに,政 策形 成 の 機 構 とそ こに設 定 され て い る役 割 の 座 を 古 め る担 当 者 を 一 体 的 に 複 合 した もの が 政 策形 成 「機 関」 な の で あ る 。 政 策 形 成 機 関 は,入 力 要 因 を 把 握 し,処 理 して,政 策 に 変 換 す る一 種 の 情報 処 理 装 置 で あ り,政 治 ・行 政 過 程 に お い て 重 要 な 位 置 を 占 め て い る9)。 この 機 能 こそ が,政 治体 系 の 「途 方 もな く可 変 的 な能 力」 を 発 揮 させ る動 力 な の で あ る 。

  とこ ろで,戦 後 の 教 育 政 策形 成 機 関 は,戦 前 の勅 令 主 義 に対 す る法 律 主 義,官 僚 行 政 権

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長崎大学 教育学 部教育科学研究報告  第25号

に対 す る立 法 権 の 優 位 の 原 則 の下 に,政 党 が そ の主 体 と して 重 要 な位 置 を 占 あ る よ うに な った 。 しか も社会 ・政 治 構 造 の 複 雑 化 に伴 な う入 力 要 因 の多 元 化 に よ り,教 育 政 策 形 成 に 関与 す る行 政 官 庁 も,単 に文 部 省 だ け に限 らず,極 め て 多様 化 さ れ る よ う に な った 。 以 下,こ れ らの 機 関 に関 して ご く簡 略 に触 れ て お き た い 。

  政 党    戦 後,政 党 の果 す 政 策 形 成 上 の機 能 は,戦 前 とは比 較 に な らな い ほ ど増 大 して い る。 そ れ は,第 一 に,日 本 国 憲 法 に お け る主 権 在 民,国 会 優 位 の規 定 の下 に,議 会 制 民 主 主 義 と議 院 内閣 制 の制 度 が 確 立 し,そ れ に基 づ い て政 党 政 治 が行 わ れ て い る こ と,第 二 に,教 育 の運 営 と行 政 の在 り方 を 規 定 す る法 規 範 の 制 定 と運 用 が法 律 主 義 に立 って い る こ と,第 三 に,大 衆 民 主 主 義 の下 で 大 衆 の支 持 を獲 得 す る た あ に 政策 を提 示 す る こ とが 政 党 に と って必 要 不 可 欠 で あ る こ とな ど に 由 る もので あ るio)。

  教 育 政 策 が 立 案 さ れ て 国会 に提 出 さ れ る場 合 は,文 部 省 一 閣議 一 内 閣 提 出 法 案 と,政 党 一 議 員 提 出 法 案 の二 つ の ル ー トが あ る。 後者 の場 合 は,政 党 の 政策 形 成 機 関 が 文 部 省 か ら 独 自の立 場 で 政 策 を 形 成 し,党 と して法 案 化 を 決 定 し,普 通 の場 合 は20人 以 上 の,予 算 措 置 を 伴 う場 合 は50人 以 上 の 賛 成者 を も って 国 会 に 提 出 さ れ る11)。 議 員 提 出法 案 は,与 野 党 の対 立,駆 引 のた め に未 成 立 に終 る場 合 が 多 い が,政 策 を形 成 し,法 案 化 す る こ とが 政 党 支 持者,他 党,行 政 当局 者 に及 ぼす 政 治 的 効果 は 大 で あ る。 ま た,内 閣 提 出 の場 合 とい え ど も,特 に与 党 が形 成 過程 に 関係 す る こ とは 多 い 。議 院 内閣 制 と立 法 府 優 位 の 体 制 下 に あ って,文 部 省 は 与 党 の 承 認,支 持 な しに は 法 案 化 の 措 置 は とて も とれ な い のが 実 情 で あ るか らで あ る12)。

  こ う して,政 党 お よ び そ の 政策 形 成 機 関 の 存在 を 無 視 して は,戦 後 の 教 育 政 策 の形 成, 立 案 の実 態 を 把 握 す る こ とは で きな い 。 い ま,試 み に与 党 自由民 主 党 の政 策 形 成 機 関 に つ い て 述 べ る とつ ぎ の よ うで あ る 。

  自 由民 主 党 は,昭 和30年 の 保 守合 同 以 来,単 独 で 政 権 を 担 当 して きた 最 大 の政 党 で あ る だ け に,そ の政 策 形 成 機 関 も専 門 化 が 進 み,体 制 も整 備 され て い る。 そ こ に は,政 務 調 査 会 に所 属 す る二 つ の 機 関 が 存在 す る。

  文 教 部 会 は,主 と して各 年 度 ご との 文 教 予 算 編 成 を 中 心 に,短 期 的 に解 決 を 要 す る教 育 上 の諸 問題 に つ い て 具 体 的 な 政 策 を 立 案 し,そ の立 法 化 を 図 る推 進 力 とな る 。構 成 員 は 両 院 の文 教 委 員 会 所 属 議 員 と希 望 者 の うち部 会 長 の委 嘱 した議 員 で,60〜80名 前 後 で あ る。

正 ・副 会 長 と も若 手 議 員 が 占 めて い る よ うに,全 体 と して部 員 の年 令 は若 い の が 特 色 で あ る。 これ に対 し,文 教 制 度 調 査 会 は,全 般 に古 参 議 員 を以 て構 成 し,正 ・副 会 長 に は 大 臣,次 官 経 験者 を お い て い る。 そ の任 務 は,長 期 的 展 望 に立 つ 政 策 の基 本 方 針 を 確 立 す る こ とで あ るが,特 に重 要 な 政 策 課 題 に対 して は小 委 員 会 を 常置 して い る。構 成 員 は 希 望 議 員 を以 て あ て,情 勢 に よ って 大 き く変 動 す る。 部 会 と調 査 会 の構 成 員 は 重復 して 所 属 して い る者 が 多 く,特 に役 職 者 は ほ ぼ例 外 な くそ うで あ り,ま た 緊急 か つ重 要 な 政 策 課 題 の解 決,重 要 法 案 の形 成 に 際 して は,し ば し ば合 同会 議 が 開 か れ て い る13)。

  文 部 省    勅 令 主 義 の戦 前 に お い て は,文 部 省 は 枢 密 院 や 内務 省 か らの可 成 りの 制約 は あ った が,ほ ぼ独 占 的 に教 育 政策 の立 案,決 定,執 行 を と り仕 切 って い た 。 しか し,戦 後 は,文 部 省 設 置 法(第5条)の 規 定 の下 に指 導 助 言 を 中 心 と す る サ ー ビ ス機 関 た る こ とが 要 請 され,政 策 形 成 ・決 定 機 能 は 相対 的 に低 下 した 。 そ の結 果,議 院 内閣 制 の下 で 政党 の

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教 育政策過程の分析  一形成過程 と決定過程 について一(熊 谷) 影 響 下 にお か れ,い や 否 な しに与 党 との 関 係 を 深 めて い る。

  しか し,専 門 的 に分 化 した 官 僚 制 教 育 行 政 事 務 機 構 か ら成 る文 部 省 が,単 な るサ ー ビス 機 関 に甘 ん じるは ず は な く,し だ い に 政 策 形 成 過 程 に重 要 な 位 置 を 占 めつ つ あ る こ と は周 知 の とお りで あ る。 大 臣 官 房 は,文 部 省 所 管 の予 算 案 を 作 成 す る ほ か,基 本 的 な 文 教 施 策 につ い て 調 査,企 画 し,所 管 事 務 に関 す る一 般 的 調 査 統 計 を 行 な い,必 要 な資 料 の収 集, 解 釈,結 果 の 利 用 が 法 的 に(文 部省設置法第7条)で きる こ とに な って い る。 これ は,文 部 省 の もつ 法 的 権 限 で あ り,明 らか に政 策 形 成 の 範 疇 に属 す る機 能 で も あ る。 また,国 家 行 政 組 織 法(第16条)に よ れ ば,文 部 大 臣 は,教 育 行 政 上 の事 項 に 関 して 法 律 ・政 令 の 制 定 を 必 要 と認 め る と きは 案 を 具 して 内閣 総 理 大 臣 に提 出 し,閣 議 には か る こ とが で き る と い う立 法 発 議権 が 法 的 に保 障 され て い る。 な お,法 律 の許 す 範 囲 内 に お いて で は あ るが,国 会 とは 無 関 係 に行 政 裁 量 に よ って 決 定 で き る訓 令,通 達,告 示 を 発 して 現 場 を 拘 束 す る ζ

と もで き る14)。

  現 行 法 体 系 に よれ ば,文 部 省 と教 育 委 員 会 お よ び国 公 私 立 学 校 と の間 に は上 下 関 係 は な い はず で あ る。 しか し,現 実 には 建 前 上 の対 等 関 係 を 越 え て,指 導 助 言 権,教 育 予 算 執 行 権,勧 告 ・措 置 要 求 権,承 認 権 な らび に行 政 命 令 権 な どの 行 使 に よ って 上 一 下 の 行 政 的 支 配 関 係 が で き上 って い る15)。 こ う して,文 部 省 の公 教 育 体 制 支 配 機 能 お よ び 政 策 形 成 機 関 と して の機 能 は,現 実 には い ぜ ん と して 強 大 で あ る。

  審 議 会    文 部 省 設 置 法(第26条,第27条)に よ れ ば,現 在,文 部 省 には14の 各 種 審議i会 が 設 け られ て い るが,教 育 政 策 形 成 に直 接 的 に関 係 し,か つ 重 要 な もの と して は 中 央 教 育 審 議 会 が あ る。 この こ とは,他 の 審 議 会 が 法 第27条 に一 括 して 列 挙 ・表 示 して あ る の に対 して,当 審 議 会 の 設 置 に 関 して は独 立 の条 文(第26条)と し,こ れ を 受 け て 政令(中 央教育 審議会令,昭27年6月),規 則(中 央教育審議会規 則)が 制 定 され て い る こ と に よ って も理 解 で き る。

  中 央 教 育 審 議 会 は,教 育 刷 新 審 議 会 の あ とを 受 け て,昭 和27年6月,文 部 大 臣 の 諮 問 に 応 じて 「教 育 ・学 術 又 は 文 化 に関 す る基 本 的 な 重 要 施 策 に つ い て 調 査 審 議 し」  「建 議 す る」(中 教審令第1条)た め の 機 関 と して設 け られ,文 部 省 に お け る教 育 政 策 形 成 を 方 向 づ け る重 大 な 使 命 を 負 わ され て い る。 委 員 定 数 は20名,任 期2年 で,文 部 大 臣 が 「人 格 高 潔 な る有 識 者」 の 中 か ら内 閣 の 承 認 を 得 て 任 命 す る。 時 に,正 委 員 の ほ か,特 別事 項 を 審 議 す るた あ に 臨 時 委 員,専 門事 項 を調 査 す る た め に専 門 委 員 が お か れ る こ と も あ る。 昭 和28 年7月 「義 務 教 育 に 関 す る答 申」(第1回)を 行 な って 以 来,今 日まで に24回 の答 申 を 行 な って い る。

  委 員 の構 成 は,そ の 時 ど き に よ って異 って い る が,原 則 と して 文 部 大 臣 の 自由 裁 量 に 一 任 され て い る た め,発 足 以来,時 の 文教 政策 に 批判 的 で な い 人 物 に偏 りが ちで,結 局 「財 界 代 表 プ ラス学 界 ・教 育 界 の 長老 に よ って構 成 さ れ,保 守 的 傾 向 が 強 く見 ら れ る の が 特 色」 とな った 。 ま た,当 審 議 会 は,独 自の調 査 研 究機 関 を もた ず,そ れ を 文 部省 に依 存 し て い るた め,文 部 省 の意 向 に 沿 った答 申 を 作成 した り,或 は 文部 省 案 を 権 威 づ け,正 当 化 す る意 味 を もつ だ け だ と い わ れ る こ と もあ る16)。          関 係 官庁    社 会 に お け る教 育 需 要 の増 大 や産 業 シ ス テ ム の 複 雑 化 に 伴 な い,教 育 政策 形 成 に 積 極 的 に 関係 す る官 庁 も しだ い に増 加 して い る 。

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長崎大学教育学部教育科学 研究 報告 第25号

  ま ず,総 理 府 に は青 少 年 対 策 本 部 が お か れ,同 本 部 は年 々 「青 少 年 白書 」 を 刊 行 して 青 少 年 育 成 の方 途(   )を示 唆 して い る。 同 本 部 の外 郭 に は青 少 年 対 策 協 議 会,青 少 年 育成 国 民 会 議 な どが あ り,そ れ ぞ れ 青 少年 施 策 を 企 画 し,推 進 して い る。

  経 済 企 画 庁 は,そ の所 管 す る経 済 審 議 会 な どを 通 して 国 の総 合 的 な経 済 計 画 を 立 案 す る な か で,労 働(     )力の育 成,訓 練 の 問 題 を 取 扱 い,教 育 政 策 形 成 に大 き く関与 して い る。 池 田 内 閣 時 代 の所 得 倍 増 計 画 に お い て,経 済 審 議 会 の人 的 能 力 部 会 が 「経 済 発 展 に お け る人 的 能 力 開 発 の 課 題 と対 策 」(昭 和38年1月)を 答 申 し,経 済 成 長 時代 に お い て必 要 な 教 育 政 策 の 方 途 を 示 唆 した こ とは す で に 周知 の と お りで あ る。 そ して,こ れ は,そ の 後 の 大 学 理 工 科 系 学 部 ・学 科 の 増設,後 期 中 等 教 育 の多 様 化 計 画 に大 き な影 響 を 与 え た もの で あ る。

  通 商 産 業 省 も産 業 構 造調 整 の 立 場 か ら教 育 政 策 形 成 に 関与 す る よ うに な った 。 そ の 最 た る 例 が 昭 和48年7月 に な され た産 業 構 造 審 議 会 の 中間 答 申で あ る が ジ こ れ は,昭 和47年6 月 の 「知 識 集 約 化時 代 にお け る人 聞 能 力 の充 実 お よ び これ に調 和 した産 業 の あ り方 如 何 」 とい う諮 問 に対 して,同 審 議 会 人 間 能 力 部 会 が行 な った もの で あ る。 そ れ は,産 業 構 造 の 知 識 集 約 と と もに,教 育 需 要 が増 大 し,生 涯 教 育 が必 要 とな る こ とを強 調 し,そ の 具 体 策 を 提 示 した もので あ る17)。

  要 す る に,こ れ らの 諸 機 関 は 文 部 省 と強 い連 係 を保 ち な が ら,わ が 国教 育 政 策 形 成 上 の 重 要 な 役 割 を 果 しつ つ あ る。

ハ  戦後政策形成 の特色 と問題点

  公 教 育 は,そ の 本 質 的 な 観 点 か らみ て 深 く政 治 に 組 み 込 ま れ て い る。

  第 一 は,そ の 制 度 的 側 面 に おい て で あ る 。 い うま で もな く,公 教 育 は,国 民 教 育 を 全 面 的 に負 荷 す る もの と して,公(    コ)的事 業 と して制 度 化 され て い る もの で あ るか ら,そ の こ とに よ って そ の運 営 費 の大 部 分 は国 また は地 方 公 共 団体 に よ って 賄 わ れ て い る。 ま た,こ の公 共 性 の た め に,そ の 運 営 上 の ル ー ル は,教 育 上 の不 均 衝 ・不公 正 が 生 じな い よ う に一 律 的 に 公 権 力 の作 用 と して 一 定 の 法 規 範 の下 に維 持 され て い る。 第 二 は,そ の 機 能 的 側 面 に お い て で あ る。 公 教 育 と して の国 民 教 育 は,国 民 全 体 を 精 神 的 ・心 理 的 に統 合 し,ま た一 定 度 まで の知 的 ・技 能 的 レベ ル を 確 保 す る責 務 を もつ 。 この こ とは,公 教 育 の そ の責 務 へ の 対 応 如 何 に 関 わ らず,公 権i力と して は,統 治上 の必 要 か ら当 然 の こ と と して 強 要 す る で あ ろ う。 こ れ らの 点 か らみ て,教 育 が,公 教 育 体 制 を 執 るか ぎ り,そ の 政 治 的 中立 性 に幾 多 の 疑 問 が投 げ か け られ る の も当然 で あ ろ う。

  政 治 体 制 ま た は 態 様 の変 化 は,当 然,公 教 育 を め ぐる政 策 形 成 過 程 に も大 き な変 化 を 与 え る。 敗 戦 ま で の わ が 国 の公 教 育 は,天 皇 制体 制下 の 政 治 過 程 に組 み 込 まれ て い た。 そ こ で は,公 教 育 の 意 思 形 成 ・決 定 過 程 の準 拠 枠 とな る法 規 範 は,議 会 の そ れ に よ らな い勅 令 と して 制 定 され て い た。 した が って,教 育 政策 の形 成 と決 定 は1予 算 に関 わ る もの を 除 い て はす べ て教 育 勅 語 に象 徴 さ れ る天 皇制 イ デ オ ロギ ー に統 一 され た 価 値 観 の もとで,天 の大 権 事 項 と し て枢 密 院 と 行 政 官 庁(文 部 省,内 務 省)の 内部 操 作 に よ って な され て い た 。

  政 策 形 成 お よ び そ の 決定 過 程 が社 会 的 に今 日的 意 味 を も って 意 識 され 始 め た の は,ま に公 教 育 の 体 系 が 国民 主権 の も とで 法 律 主 義 の 構 造 に転 換 して か らの こ とで あ る 。 法 律 主

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義 の 決 定 構 造 は,議 会 制 民 主 主 義 と政 治 の 合 法 的 支 配 とい う二 契 機 を は らん で い る。 こ こ か ら,戦 後 政 策 形成 の 二 つ の 特 色 が 露 わ に な る。

  議 会 制 民 主 主 義 とは,政 治 形 態 上 議 会 制 を 採 択 す る主 権 在 民 の政 治 原 則 を い う もの で あ るが,議 会 制 と民 主 主 義 と は本 質 的 に は 同義 とみ て よ い。 す な わ ち,民 主 主 義 が主 権 在 民 の 原 則 に 立 ち,国 民 の 参 政 権 を 広 く認 め よ う とす る政 治 上 の 原 理 で あ る の に対 して,議 会 制 は 個 人 の 自由 主 義 思 想 を 基 盤 と し,国 民 の参 政 権 一国 民 投 票 権 を 前 提 と した代 表 者 に よ って 構 成 され る立 法 機 関 にお い て 国 民 意 思 の決 定 を 行 お うとす る もので あ る か らで あ る。

議 会 制 は,国 民 投 票 権 と と も に,民 主 主 義 か ら必 然 的 に導 出 され る制 度 で あ って,と もに 代 表 者 原 理 と多 数 決 原 理 とを そ の 基 盤 とす る。 しか し,敢 て い え ば,民 主 主 義 の 思 想 的 根 拠 は,消 極 的 に個 人 の 自 由を 権 力 か ら保 障 しよ うとす る議 会 制 の 自 由主 義 思 想 以 上 に積 極 的 で あ り,む しろ個 人 の 国 家 権 力e国 政 へ の参 加 を 確 保 しよ うとす る もので あ る。 が,そ れ は ど うで あれ,議 会 制 民 主 主 義 は,む し ろ結 論 と して の 多 数 決 を 導 出す る討 論 の 過 程 を 重 視 す る もの で あ る18)。

  戦 後,わ が 国 新 憲 法下 に お け る議 会 制 民 主 主 義 は,当 然 の こ とな が ら国 政 上 立 法 府 の 優 位(憲 法第41条)を 招 来 し,そ れ に 対 応 し て 政 策 形 成 機能 上 政 党 の 比 重 の 増 大 を 結果 し た 。 しか しな が ら,こ の こ とは,一 方 で は 教 育 政策 の 決 定 あ るい は 立 法 化 過 程 に さ ま ざ ま な 政 党 間 対 立 や対 立 要 因 の 参 加 を 拡 大 し,は げ しい 社 会 的 混 乱 を惹 起 した し,他 方 で は さ らに これ に加 え て 教 育 行 政 制 度 上 の 欠 陥,民 主 的 政 治 態 度 の 発 育 不 全 や イデ オ ロギ ー の 硬 直 的 な 対 立 とい う悪 条 件 が 重 な って,戦 後 に お け る教 育政 策 の形 成,決 定 過程 を しば しば 鋭 い 政 治 的 対 決 の場 に して きた とい え る。

  つ ぎ に,合 法 的 支 配 とは,国 家 の 権 力行 使 が 法 定 の手 続 き に合 致 す る と同 時 に,そ の 内 容 にお い て も個 人 の権 利 や 自由 を尊 重す る 正 義 や公 正 の観 念 に 適 合 す べ き こ とを求 め る 原 理 で あ って,古 くか ら法 制 の 基 本 原 理 とい わ れ て きた 「法 の支 配」 に あた る観 念 で あ る。

法 の 支 配 は,当 然 に権 力 を法 に よ って 制 御 す る とい う発 想 に基 づ くもの で あ る か ら,い わ ゆ る 「警 察 国 家」 に対 す る 「法 治 国家 」 の原 則 で あ って,実 質 的 に は 権i力分 立,法 に よ る 行 政,基 本 的 人 権 な どを 構成 要 素 とす る19)。M・ ウ ェーバ ー は,合 法 的 支 配 と い う観 念 を 法 律体 系 に遵 って な さ れ る支 配 だ と考 え,そ して,そ う した支 配 を組 織 的,能 力 的 に担 当 で きる もの と して 官 僚 制 を重 視 した。 事 実,今 日の政 治 の執 行,つ ま り行 政 は,す べ て 法 に遵 って な され,専 門 的 な執 行 者 と して の官 僚 を 現 実 に生 み 出 して い る 。 この こ とは, 必 然 的 に政 策 形 成 過 程 に お け る官 僚 お よ び行 政 機 関 の機 能 の 増 大 を 結果 し て く る。 しか し,こ の 同 じ機 構 が,形 式 的 合 法 に 陥 って 繁 文 縛 礼 主 義 や 無 責 任 な権 威 主 義 お よ び制 度 自 体 の もつ 閉 鎖 的 な セ ク シ ョナ リズ ム に堕 して い る こ と も否 定 で き な い一 面 で あ ろ う。

  最 後 に,戦 後 わ が 国 にお け る政 策 形 成 の第 三 の 特 色 は,政 党 と官 僚 制 の機 能 増 大 と並 ん で,大 衆 民 主 主 義 の原 則 が 除 々 に根 付 き,そ れ を 培 う の に重 要 な 機 能 を 果 した産 業 の発 達 と そ の構 造 変 化,そ れ の もた ら した 情 報 化 現 象 とい う社 会 的 基 盤 の著 しい変 動 で あ る。 社 会 条 件 の変 動 は,必 然 的 に入 力 需 要 を 複 雑 化 し,多 元 化 させ て,こ れ まで の よ うな 単 純 ・ 直 戴 的 な入 力 受 容 装 置 で は 不 十 分 とな る。 また これ に対 応 して 出カ ー 入 力 の フ ィー ドバ ッ

ク機 能 も複 雑 とな って,情 報 収 集 機 能,そ の分 析 と解 釈 機 能 の専 門 化 が 要 請 され て く る。

当然 の こ とで は あ るが,変 換 過程 と機 能 の 多元 化 は不 可 避 とな るで あ ろ う。 この よ うな 政

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長崎大学教育学部教育科学研究報告  第25号

策 形成 過 程 の多 元 化 は,具 体 的 に は各 種 の支 持 団体,圧 力 団 体,世 論,マ ス ・コ ミな ど に よ って 構成 され る。 加 えて,国 民 の政 治 的 関 心 度 あ るい は 自覚 と理 解 度 は,多 元 性 の質 を 一 そ う高 次 元 の もの に ま で高 めて い くで あ ろ う。今 後 の政 策 形成 過 程 は,単 に社 会 環 境 条 件 の 変 動 に 止 ま らず,入 力 需 要 の質 の 向上 と量 の 拡 大 に適 確 に応 え,し か も迅 速 に対 応 し 得 る もの で な くて はな らな くな って くる で あ ろ う。

  以上 の よ うな 状 況 に対 応 す る た あ に執 られ る一 般 的 措 置 は,歴 史 的 に は ま ま み られ る大 政 府 主 義 の 完 成 で あ る。 それ は,ま ず 第 一 に,行 政府 諸 機 関 の増 設 で あ り,第 二 に,当 然 の こ とな が ら各 機 関 で 働 く専 門 職 員 の増 加,そ して 第三 に,行 政府 の職 能 増 大 お よ び定 員 増 に 伴 な う経 費 の膨 脹 を もた らす20)。 これ らの諸 現 象 は,消 極 政 治 か ら 積 極 政 治 へ と行 政 府 機 能 の 推 移 に伴 な う必 然 の成 行 きで は あ るが21),問 題 は,こ の 結 果 が,と もす る と 悪 しき行 政 国 家 の 成 立 を 促 進 す る とい う こ とで あ る 。      ,

  行 政 国 家 とは,機 能 構 造 面 か らつ る現 代 国家 の特 性 把 握 の 試 み の 名 称 で あ って,そ は,本 来,政 治 の 出力 過 程(執 行)の 担 当者 で あ る行 政 が,同 時 に 入 力 過 程,す な わ ち政 治(基 本 政策 の 形 成 ・決 定)に も進 出 して,そ の 中心 的 役割 を担 うよ う にな った 国 家 を い う22)。現 代 の 高 度 資 本 主 義 国 家 が,そ の 支 配 体 制 の維 持 ・強 化 の た め,ま す ます 社 会 経 済 へ の積 極 的 介 入 を 強 めて 国 家 職 能 を 拡 大 せ ざ る を得 な い こ とか ら,必 然 的 に こ の形 態 の 国 家 の 相貌 を 深 め て い くの は 常 識 に 属 す る と い って も過 言 で は な い 。

  今 日の 国 家 は,そ の 体 制 の 如 何 を 問 わ ず,社 会 の変 動 と 自 らの積 極 性 の ゆ え に高 度 な行 政 国 家 で あ る こ とは 否 定 で きな い 。 こ う した行 政 国家 化 は,現 象 的 に は,第 一 に行 政 府 に 対 して 立 法 過程 に お け る実 質 的 主 導 権 を 転 移 させ,第 二 に行 政 過程 そ の もの が 政 治 に変 質 し,第 三 に本 来 行 政 の 一 部 で あ る財 政 機 能 が 政 治 的 意 義 を増 大 し,第 四 に 以 上 す べ て の収 敏 点 と して の計 画 化 権 力 を 行 政 府 が 独 占す る とい う諸 経 過 を 経 て 進 行 す る もので あ る23)。

それ 故 に極 端 な 行 政 国 家 に対 して は,い くつ か の鋭 い批 判 が投 げ か け られ て い る。

  第 一 に,行 政 国 家 は 現 代 憲 法 の 根 本 理 念,つ ま り民 主 主 義 の成 立 基 盤 を 掘 り くず して, テ ク ノ ク ラ シ ー へ と指 向 す る。 そ こで は,計 画 化 を 頂 点 とす る行 政 の専 門 技術 性 が 民 主 主 義 の理 念 で あ る 国 民 の 主 権 性 に 取 って 代 わ って 上 位 に就 こ う とす る か らで あ る 。 第 二 に, 行 政 国家 は民 主 民 義 の 同 義 語 た る統 治 機 構 原 理 の 最 で あ る 議 会 制 を,官 僚 制 へ と歪 曲す

る。 議 会 が 国 政 の 中 心 で あ る とす る憲 法 的 要 請 は,テ ク ノ ク ラ シー へ の推 移 に伴 な い,政 治 的 内実 に豊 富 な専 門 技 術 的 知 識 能 力 の 保 持 者 た る テ ク ノ ク ラ ッ トに よ る事 実 上 の 支 配 に

よ って そ の貫 徹 を大 き く阻 ま れ,遂 に は 後 者 に席 を 譲 らざ るを 得 な くな る 。 第三 に,行 政 国 家 は 「法 の支 配 」 を も形骸 化 し,や が て 「計 画 の支 配 」 を 代 置 す る方 向 へ働 く。 行 政 国 家 に お い て 行 政 が必 然 的 に 帯 び る専 門 技 術 性 ・大 量 性 ・機 動 性 ・不 可 逆 性 が,行 政 立 法 の 増 大,給 付 的 授 益 的行 政 の増 加,自 由 裁 量 の 拡 大 とな って 現 わ れ,行 政 の立 法 的事 前 拘 束 お よ び 司 法 的 事 後 統 制 を 困難 な ら しめ るに 及 ん で,極 めて 危 険 な状 態 に 陥 る。 さ ら に国 家 計 画 体 制 の進 行 は,行 政 計 画 が 全 面 的 に法 律 の 委 任 を受 け て,実 質 的 に法 律 に代 位 した り,む し ろ行 政 計 画 が法 律 の 制 定 ・改廃 を 逆 に 響 導 す る こ とす ら稀 で な くな る。 第 四 に, 行 政 国 家 は以 上 の よ うな変 質 に止 ま らず,民 主 主 義 の 統 治 目的 の最 高 規 範 た る 自由主 義 す

ら蚕 食 しな い で は お か な い 。計 画 化 を 究 極 とす る行 政 国 家 の論 理 は,自 由 ど人 権 の保 障 に 代 え て,む しろ制 約 と拘 束 を必 然 化 し,自 由 主 義 は 一 転 して 統 制 主 義 へ と変 性 す る。 最 後

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教育政策過程の分析  一形成過程 と決定過程 について一(熊 谷)

に,行 政 国家 は 自由主 義 憲法 規 範 構 造 の制 度 的 保 塁 た る分 権 制 を,そ の対 極 た る集 権 制 へ と逆 転 す る。 分 権 制 は,広 義 に は,中 央 権i力の水 平 分 立 のみ な らず,垂 直 的 分 権,つ ま り 地 方 自治 を も包 含 す る もので あ る が,行 政 一計 画 権 力 の肥 大 は立 法 と執 行 を均 質 化 し,司 法 機 能す ら極小 化 す る(行 政 に よ る 既成 事 実 化)こ とに よ って,事 実 上 行 政 へ の権 力 統 合 を 果 す24)。 今 や 行 政 国 家 は,も はや 単 な る憲 法 現 実 と い うよ りは,む し ろ 憲法 規 範 関係 的 性 格 を もつ とい って も過 言 で は な い。

  しか し,行 政 国 家 の完 成 は,そ の 機能 的基 盤 に 官僚 制 な く して は あ り得 な い の で あ る 。 ま さ に,官 僚 制 は,政 策 執 行 の テ クノ ク ラ ッ ト と し て,単 に 行 政 事 務 の 執 行 者 に止 ま ら ず,そ れ を 通 して 政 策 形成 に 影 響 を 及 ぼす 官 僚 の 一 大 組 織 で あ るか らで あ る。 定型 化 と機 能 の合 理 的分 化 を 通 して,客 観 的 な 基 準 に 従 い,専 門 知 識 を 動 員 して 能 率 的 に事 務 を 処 理 し得 る組 織 と して の 官 僚 制 の 貢 献 は非 常 に 大 きい 。 これ な くして は現 代 行 政 国 家 の 機 能 と され る公 共 政 策 の遂 行,公 共事 務 の 管 理 は不 可 能 とな り,政 治 過 程 に お け る フ ィー ドバ ッ ク も成 立 しな くな る とい って も過 言 で は な い。

  だ が,そ の反 面,官 僚 制 に は 「官 僚 主 義」 とい わ れ る よ うな 好 ま し くない 病 弊 も あ る。

過 度 の独 善 的 感 覚,先 例 慣 行 へ の埋 没,セ ク シ ョナ リズ ム,弾 力 性 の欠 如,責 任 逃 れ,繁 文 褥 礼 な ど,本 来 高 度 の形 式 的 合 理 性 の ゆ え に最 も能 率 的 な組 織 と し て 機 能 す づ き も の が,現 実 に はか え って 実 質 的 非 合 理 性 を 生 み 出 し,期 待 に反 して 非 能 率 的 な 組 織 と して し か機 能 しな い場 合 も あ る。 さ ら に批 判 さ るべ き は,技 術 的 手 段 の体 系 と して 統 治 機 構 の 中 に は あ込 まれ て い る官 僚 制 が,既 述 の よ う に そ の発 達 過 程 で 自律 性 を 獲 得 し,自 ら権 力 を 追 求 す る 目的 的 存 在 に転 化 す る こ とで あ る。 つ ま り,技 術 的 手 段 の体 系 が肥 大 化 し,そ の 内部 に専 門的 知 識 ・技 能 ・情 報 が蓄 積 され て い くにつ れて,逆 に支 配 の実 権 が行 政 官 僚 の 手 中 に握 られて い くので あ る。 こ れ が 「官 僚 支 配 」 の 問題 で あ る25)。

  高 度 資本 主 義社 会 の 中 で不 断 に反 覆 さ れ る広 範 囲 な産 業 構 造 の変 化 と現 代 の大 衆 デ モ ク ラ シー の 綾 なす 急 激 な社 会 変 革 に対 応 す る政 策 形 成 は,必 然 的 に大 政府 主 義 を招 来 しrそ して,そ れ は,現 実 政 治 の 相貌 と して は行 政 国家 の態 様 を選 択 した 。 ま た一 方 で は,戦 後 わ が 国 の 憲法 規 範 が民 主 主 義 へ と転 換 さ れ た こ とに よ って,議 会 制民 主 主 義 と法 律 主 義 の 政 治原 則 が確 立 した 。 政 党 と立 法府 の 機 能 が戦 前 の そ れ に 比 べ て 格 段 に 権 威付 け られ た の は,わ が 国 の場 合,以 上 の よ うな 歴 史 的事 情 に よ る もの で あ った 。 しか しな が ら,資 本 主 義 と 自由主 義 の もた ら した統 治 機 構上 の大 政府 主 義 一 行 政 国 家 化 は,そ れ 自身 の 中 に 内 蔵 す る官僚 制 化 を推 し進 あ,歴 史 の 経 過 と と もに行 政府 優 位 の 相貌 を 呈 しは じめ た こ とは 否 定 で きな い26)。 因 み に 「官 僚 機 構 は,日 本 の 戦 後 の 政 党 が新 し い 衣 裳 を ま と って 政 治 の 舞 台 で 主 役 を 演 ず るた め には 懸 けが え のな い 基 盤」27)に す らな った の で あ る。 結 局 「戦 後 の国 会 も政 党 も,… … … 精 緻 な 官 僚機 構 の舞 台 で 踊 って い た に す ぎ な い」28)と い わ れ て も仕方 の な い こ とで あ ろ う。 教 育 政 策 形成 に 関 して,行 政 府,な か ん ず く文 部 省 の 占 め る地 位 を 推 して 知 るべ きで あ ろ う29)。

(2)  政 策 決 定 過 程 一 立 法 過 程

  政 策 は,当 初 か ら一 個 と確 定 した もの で は な く,そ の最 終 過 程 の 「決 定 」 に いた る まで の間 に は,複 数 の も のが 「評 価 」 され 「調 整 」 され る過 程 を 通 して,可 能 性 を 有 す る も の

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TO

長崎大学教育学部教育科学概究報告  第25号

の み が姐 上 に上 せ られ る。 そ して,こ の も の が,最 後 に法 的 に制 度 化 さ れ た 機 関で 「決 定」 され た とき,そ の 正 当 性 が 公 認 され,公 的 な 拘 束 力 を もつ.もの と して 政 策 とな る。 し た が って,政 策 決 定 は,政 策 の 公 式 化 を め ぐる一 連 の意 思 決 定 過 程 の最 終 段 階 で あ り,し政 策 過 程 の終 結 点 と して位 置 づ け られ る。 そ れ は,政 策 の 形 成 か ら決 定 に い た る過 程 を 動 か す 諸 要 因 の ダ イ ナ ミッ クな 相互 作 用 が 収 束 し,価 値 の 権 威 的 ・拘 束 的 配 分 に関 す る決 定 を 生 み 出す 場 面 で あ り,そ こで は,政 治 過 程 の 基 底 を な す 政 治 的 エ ネル ギー が凝 集 し,相 対 立 す る勢 力 の葛 藤 が 鋭 く顕在 化 す る 。 価 値 観 や イ デ オ ロデ ー の多 様 化 が 認 め られ,し か も 諸 政 党 の 自 由 な政 治 活 動 が 法 的 に保 障 され て い る今 日の よ うな 政 治 制 度 の下 で は,こ と に 価 値 観 ・イデ オ ロギ ー ま た は利 害 の対 立 に 関 係す る 政 策 決 定 の 場 合,一 そ う激 烈 な 相 剋 が 展 開 す る。 戦 後 わ が 国 の教 育 政 策 決 定 を 特 徴 づ け て い るの は,こ う した 対 立 に根 ざす 与, 野 党 お よ び そ の支 持 団 体 相互 間 に み られ る激 しい 相剋 の 過 程 で あ る30)。

  と こ ろで,政 策 決 定 の メカ ニ ズ ム に 関 して い え ば,い か な る集 団 が,い か な る要 求 ・利 害 の下 に,い か な る様 式 で政 策 の決 定 過 程 に 参加 しか つ 作 用 しあ うの か,政 策 決 定 を め ぐ

る諸 集 団 の 相 互 作 用 過 程 は ど の よ うに展 開 さ れ る の か を 明 らか に す る こ とで あ ろ う。 この 課 題 を解 くこ と に よ って,政 策 決 定 の メカ ニ ズ ム は,政 策 対 象 の あ り方 を 決 定 す る勢 力 が 何 で あ る の か,政 策 対 象 の あ り方 が 決 ま る メカ ニ ッ クス が ど の よ うな もの で あ るの か,さ

らに ま た 政策 対 象 に お け る意 思 決 定 過 程 が何 に よ って 支 配 さ れ て い る の か を 知 る こ とが で き る の で あ る31)。

イ  政 策 決 定 の メ カニ ズ ム

  政 策 決 定 は,社 会 に お け る 問題 状 況 に対 す る解 決 策 の選 択 で あ り,当 該 社 会 の 行 為 の 指 針 お よ び規 範 の設 定 を 行 う集 合 的 な 意 思 決 定 で あ る。 した が って,政 治 的 次 元 に お け る集 団 の社 会 的 適 応 の 一 種 で あ る と もい え る。 政 策 決 定 を こ の よ うに解 す れ ば,そ の 規 模 の大 小 を 問 わ ず,い か な る機 能 集 団 で あれ,環 境 の変 化 に適 応 して そ の成 員 を 制約 しな が ら 自

らを 維 持 しよ う とす る社 会 集 団 にみ られ る普 通 一 般 の現 象 で あ る とい え よ う。 そ こで,単 位 集 団 を 基 準 と して 政策 決 定 を 考 え る と,つ ぎの よ う にな るで あ ろ う。

A・ 多 機 能 的 集 団 で の 政 策 決 定

④  国家 の場 合    立 法府 での政策決定

自治体 の場 合(都 道府県,市 町村)

        行政体,議 会で の政策 決定 B  単機能 的集団 での政策 決定

    ◎  行 政 府 の場 合(専 門 的 に分 化 し た行 政 官 庁,公 団,公 社)         専 門 行 政 体 で の 政 策 決 定

    ④  各 種 団 体 の場 合(政 党,会 社,組 合 その 他 民 間 諸 団 体)         団 体 内で の政 策 決定

こ の場 合,政 策 決 定 の 有 効 範 囲 を み る と,

@は,決 定 の効 果 ・影 響 が 国全 体 に 及 び,⑤ は,直 接 的 に は そ れ ぞ れ の 地 域 に限 定 さ れ

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教育政策過程 の分析  一形成過程 と決定過程について一(熊 谷)

る 。◎ は,そ の 及 ぶ 範 囲 は 国 全 体 で あ るが,専 門 的 に 分 化 され た事 項 に限 られ 無 さ らに,

④ は,そ れ ぞ れ の 団 体 内 に限 定(但 し,政 党 に つ い て は,そ の 内容 い か ん に よ って 必 ず し も一 定 しな い)さ れ る32)。

  ま た,拘 束 力 の 強 度 とい う点 か らみ る と,④ の 場 合 が 最 も強 く,多 くの場 合,法 律 とい う形 を と り,他 の い ず れ の 政 策 決 定 を も拘 束 す る。 公 教 育 に関 す る 政 策 決 定 につ い て は,

④ の場 合 が 量 的 に も多 い が,な お,「 規 則 」 とい う形 で⑤,「 訓 令 」 「通 達 」 「告 示」 な ど の形 で ◎,学 校 内部 で の 「規 程 」  「内規 」 な ど の形 で ④ が あ る。 た だ し,以 下 で 取 り上 げ る政 策 決 定 は,立 法 府 レヴ ェ ル の それ に限 定 した い。

  とこ ろで,既 述 の よ うに,戦 後 わ が 国 に お け る政 策 決 定 の 特 徴 は,要 す る に法 律主 義 で あ り,と くに公 教 育 体 系 の維 持 ・管 理 に関 す る重 要 事 項 につ いて は,立 法 府 に お いて 法 律 の形 を とる政 策 決 定 が 行 わ れ て い る。 それ ゆ え に,そ の過 程 は,イ デ オ ロギ ーを 異 にす る 政 治 勢 力 の激 しい抗 争 に よ って 特 徴 づ け られて い る。 この 過 程 に つ い て は,前 稿 に お い て,既 にH・D・ ラ ス ウ エ ル の機 能 的 段 階 づ けやH・A・ サ イ モ ンの変 数 の 相互 対 応 型 な どに よ って 一 応 の分 析 を示 して は お い たが33),さ らに 重 ね て 本 稿2節(1)項 イ の 「位 相 」 に よ って 説 明を 加 えて お き た い。 そ の場 合,こ の過 程 は,政 策 形 成 過 程 と同様 の位 相 を と

って 進 行 す る とい うこ とが前 提 とな って い る 。 しか し,仮 りに位 相 は 同 じで あ って も,政 策 形 成 の場 合 の それ と決 定 の場 合 の そ れ とで は 内 容 的 に若 干 の 相違 が み られ るの は 当 然 で あ る。 とい う理 由 は,前 者 形 成 の場 合 は,そ の 過程 に参 画す る構 成 員 が共 通 の価 値 観 ・イ デ ォ ロギ ー に立 って い る こ とが多 い の で,つ ぎの 評価,調 整 が行 わ れ易 い が,後 者 の 決定 (立 法)の 場 合 は,そ れ ぞ れ政 治 的 イ デ オ ロギ ー,党 派 的利 害 が 相 反 し,し か も複 数 の も の が 相 対立 す る た め,前 者 に 比 べ て そ の 増 幅 の 度 が大 きい か らで あ る。

  認 知 的 位 相 一提 案 者 に よ る 趣 旨 ・内 容 の説 明,質 疑 応 答 。

  評価 的 位 相 一反 対 者 の批 判,意 見 陳 述。 評価 は価 値 観,イ デ オ゚ギ ー を 基準 と して行 わ     れ,し か も二 者 択一 的 で 厳 しい 。       ,        ̲   調 整 的 位 相 一 評価 の 相 違 を 埋 め,葛 藤 収 拾 の た めの 話 し合 い,取 引,裏 面 工 夫。 合意 す     れ ば 原 案 どお りだ し,時 には 原 案 修 正,時 には対 立 の ま ま次 の位 相 へ 進 む こ とす ら あ     る。

  決 定 的 位 相 一 政 策 決 定 過 程 の 最 終 局 面 。 合 意 ・妥 協 が 成 立 す れ ば満 場 一 致,そ うで な い     場 合 は 多 数 決 に よ る採 決 。・未 調 整 ・対 立 の ま ま の場 合 は,強 行 採 決 また は小 数 派 の ボ     イ コ ッ トも あ り得 る34)。

  政 策 決定 過程 を上 記 四 位 相 の 螺旋 運 動 とす れ ば,当 然 にそ の 運 動 を成 立 させ る 「場」 が あ るは ず で あ る。 そ の 場 は,そ れ を 主 導 的 に動 か して い る主 体,主 体 の 目標 ・ね らい,主 体 の運 動 の準 拠,運 動 の状 況 とい っ た要 因が 相 互 に作 用 しあ って 構 成 され る ダ イ ナ ミ ック な シ ス テ ムで あ る。

運動 の主 体=諸 勢 力 群

  法 案 を提 出 し,成 立 させ よ うとす る主 体 的勢 力 と,そ れ を抑 止 し よ う と す る 勢 力 が あ り,前 者 を仮 りに順 勢 力 と い え ば,後 者 は抗 勢 力 とで もい え よ う。 立 法 府 に お け る順 勢 力 の顕 在 的部 分 は多 くの場 合 政 府 ・与 党 で あ り,後 者 は野 党 で あ ろ う。 しか し,順,抗 と も

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長崎大学教育学部教育科学研究報告 『第25号

それ ぞ れ 自 らを支 持 す る潜在 的 部 分 と して の院 外 団 体 を有 し,そ れ が,顕 在 的 部 分 の エ ネ ル ギー 源 と な って い る 。 決 定 過 程 の 分 析 に お いて は,各 勢 力 の 組 織 力,行 動 力,価 値 観 ・

イデ オ ロ ギ ー,政 策 へ の 関 心 度 と意 欲 な どが 問題 とな るで あ ろ う。

目標 ・ね ら いe政 策 の 内容

  これ に は,立 法 の 動 機,政 策 対 象,目 標 と手 段 が含 ま れ る。 つ ま り,価 値 配分 の仕 方 を 決 定 す る もの で あ る 。 教 育 体 系 に 配 分 され るべ き価 値 はつ ぎ の 四つ で あ ろ う。

  ④  教 育 環 境 の 物 的 条 件 整 備 に 関 す る もの   ⑤ 教 育 の 理念,目 標,内 容,方 法 に関 す る もの   ◎  教 育 の 管 理 ・運 営 に 関 す る もの

  ④  教 職 員 人 事 に 関 す る もの

  こ の うち,④ を 除 け ば す べ て 関 係者 の 価 値 観,利 害 に直 接 的 に関 連 して お り,し た が っ て,順,抗 間 の 緊張,対 立,葛 藤 が 激 しい 。

運 動 の準 拠 一機 構,法 制,手 続 な ど

  政 策 決 定 が 行 わ れ る 際,運 動 が そ れ に 従 って 執 り運 ばれ て い く準 拠 で あ る。 例 え ば,立 法 府 の それ は,ま ず 衆 ・参 両 院 の 委 員 会 か ら本 会 議 へ,し か も衆 議 院 先 議 で あ り,そ の 際 法 令,慣 例 に悸 る こ とは 許 され な い 。

運 動 の状 況 一 問 題 状 況,権 力 状 況

  問 題 状 況 と は,政 策 形 成 ・決 定 を刺 戟 し,促 進 す る外 的 状 況 で あ り,権 力 状 況 とは,勢 力群 の 実 際 の動 向 に影 響 す る順 ・抗 勢 力 の 比,世 論,院 外 運 動 な どで あ る。 問 題 状 況 が 厳

し く,権 力 状 況 が盛 り上 って い る と き,順,抗 の対 立 は最 も激 しい もの が み られ る35)。

  政 策 決 定 過 程 は,上 記 四つ の諸 要 因 が か らみ 合 い な が ら,さ らに 四 つ の 位 相 を 経 過 して, 展 開 す るダ イ ナ ミッ クな もの と考 え る こ とが で き る。

ロ  教育 における意思決定構造

  教 育 と政 治 と の 関係 か らい え ば,教 育 政策 の 決 定 は,公 教 育 の体 系 内 だ け で な され る も の で は な く,む しろ 政 治 体 系 が 公 教 育 体 系 に対 して 行 な う 「出力 」 を決 定 す る とい う形 で な され,ま さ に政 治体 系 の 作 用 に 属 す る こ とで あ る。 政 治 体 系 は,教 育 界 は い うま で も な く,そ の他 各 種 の社 会 ・環 境体 系 か ら種 々の 教 育 要 求 を イ ン ・プ ッ トし,そ れ を 自 ら の変 換 器 匠か けて 実 効 性 あ る教 育 政策 を策 定 し,必 要 な政 治 的 資 源 を 動 員 しな が ら公 教 育 体 系 内 に 拘 束 的 に ア ウ ト ・プ ッ トす るの で あ る。 す なわ ち,政 治 体 系 は,権 力 とい う媒 体 を 挺 子 に して 公 教 育 体 系 に対 して 政 策 決 定 を 行 ない,行 政 を して それ を実 施 させ る の で あ る。

そ れ ゆ え に,教 育 政 策 の 決 定 は,政 治体 系 と公 教 育 体 系 とが 相 接 して 相 互 に作 用 し合 う境 界 過 程 に位 置 づ け られ る の で あ る。 決定 され た 教 育 政 策 は,既 述 の法 律 主 義 の決 定 構 造 の なか で は,公 教 育 体 系 の す べ て の意 思 決 定 過 程 の準 拠 枠 と な り,全 教 育 過 程 に お け る意 思 決定 過 程 を 制 約 す る機 能 を果 す の で あ る 。 そ して,法 律 主 義 の決 定 構 造 に お い て は,国 会 に お け る政 策 決 定 が す べ て の もの に 優 って 重 要 な意 味 を もつ こ とに な る36)。

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教育政策過程 の分析  一形成過程と決定過程 について一(熊 谷)

  と ころ が,観 点 を 代 え て,組 織 体 と して の公 教 育 を組 織 自体 とい う観 点 か らみ る限 りで は,そ れ 自体,公 教 育 は 目標 の遂 行 に み あ った 構造 を有 し,意 思 決 定 の 過程 を 内在 させ て い る とい う こ と もで き る。 した が って,組 織 は 意 思 決定 の 連 鎖 か ら 成 立 す る も の で あ っ て,シ ス テ ム と して 捉 え る こ とが で き る。 換 言 す れ ば,公 教 育 を 意 思 決 定 の連 鎖 か ら成 立 す る シス テ ム だ とみ る こ とが で きる 。 そ こで,公 教 育 の体 系 は,そ の 展 開 段 階 に 対 応 して 重 層 的 に 形 成 され る意 思 決定 の 構 造 を もつ と考 え て よい で あ ろ う。 こ の構 造 は,当 然 教 育

↓ の 目標 達 成 に 向 って 作 動 す る と考 え て よい 。 そ の 作 動 過 程 が 意 思 決 定 過 程 な ので あ る。

そ こで,そ の 過程 は,問 題 状 況 に対 応 して戦 略 的 要 因 を 識 別 し,目 標 と手 段 を 選 択 して 明 確 に限 定 し,教 育 の実 践 行 為 を 導 き,指 導 す る 過程 な の で あ る。

  熊 谷 一乗 氏 は,公 教 育 の 展 開 段 階 と意 思 決 定 の 構 造 お よび 過 程,な らび に両 者 の 関 係 を 明 らか に す る た め に,清 水 義 弘 氏 の 教 育 社 会 学 で 用 い る構 造 論 的 接 近 法 を 援 用 し,若 干 の 内容 修 正 と用語 の変 更 を加 え て,別 表 の よ うな 「公 教 育 に お け る意 思 決 定 構 造」 の 枠 組 を 作 成 して い る37)。

公教育 におけ る意思決定構造  (一 力 の作用す る方向) 意思齪 段階1意 思齪 の内容i意 思決定の主体1意 思決定の則 意思齪 の順

→ 教 育 政 策       i

    ↓ 教 育 制 度     i     ↓ 教 育 組 織     i     ↓ 教 育過 程     i       ↓ 一 教 育 変 動

画 ・立

政 ・財

営 ・管

導 ・教

求 ・運

国 ・地 方 の 議 会 内 閣・自治 体 首 長

国 ・ 地 方  の

行 政 機 関 教 育 機 関 ・施 設(教育 管

理 職) 教    職    員

)

ス世

(

法  規  範 法  規  範

威 信 ・慣 行

影  響 

政 策 決 定 行 政 決 定 経 営 決 定 作 業 決 定 運 動 決 定 熊谷一乗 「教育政策決定の力学」 よ り   この表 に よ って,わ れ わ れ は,公 教 育 の展 開段 階(シ ー クエ ンス)と 意思 決定 の 構造 お

よ び過 程(ス コー プ)の 関 係 を体 系 的 に,し か も容易 に理 解 す る こ と が で きる。 この場 合,展 開 の段 階 は,拘 束 力 の強 さ,範 囲(教 育 変 動 だ け は例 外)を 基 準 と して,政 策 一 制 度 一組 織 一 過 程 と展 開す る。 つ ぎ に,ス コー プ に 関 して い え ば,そ れ ぞ れ の 各 段 階 に対 応 して そ れぞ れ に制 度 化 さ れ た機 構 が あ り,そ こ で権 威 的 な 意思 決定 が な され(そ の場 合 の 内 容,主 体,規 準,性 質 につ いて は,表 示 の と お りで あ る),下 位 の 決定 を 拘束 す る こ と が 明示 さ れ て い る。 つ ま り,公 教 育 の体 系 が 目標 を達 成 す る た め に,そ の 意思 決定 が 重 層 的 に構 成 され て い る こ とが 一 目 瞭然 で あ る。

  こ こで,一 言,「 教 育 変 動」 につ い て触 れ て お か な くて は な らな い 。 同氏 に よ れ ば,教 育 変 動 を シ ステ ム と して め公 教 育 の構 造 的 変 化,或 は制 度,組 織,過 程 の構 造 の 「動 態 」

とみ れ ば,そ れ は,「 静 態 的 次 元 」 に あ る と見 倣 さ れ る 四領 域 とは異 な った次 元 に位 置付 け られ るで あ ろ うが,だ か らと い って,教 育 変 動 を四 領 域 か ら 隔 絶 す る こ と は 適 当で な

参照

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