奈良教育大学学術リポジトリNEAR
妊娠中の食生活を含むライフスタイルが骨密度に及 ぼす影響
著者 中口 緑, 米山 京子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学
巻 57
号 2
ページ 77‑83
発行年 2008‑10‑31
その他のタイトル Effects of Lifestyles Including Food Intake on Bone Density of Pregnant Women
URL http://hdl.handle.net/10105/719
妊娠中の食生活を含むライフスタイルが骨密度に及ぼす影響
中 口 緑 * ・ 米 山 京 子
奈良教育大学生活科学教育講座(保育学)
(平成
20
年5月7日受理)Effects of Lifestyles Including Food Intake on Bone Density of Pregnant Women
Midori NAKAGUTI * and Kyoko YONEYAMA
(Department of Life Science Education, Nara University of Education, Nara 630-8528, Japan)
(Received May 7, 2008)
Abstract
The purpose of this study is to examine the effects of lifestyles including dietary intake for preventing bone mineral loss during pregnancy. Bone mineral densities
(BMD)measured by ultrasound at the calcaneus, and urinary hydroxyproline concentrations adjusted for creatinine
(HP/Cre)
were measured in sixty-eight pregnant women aged 18 to 41 years, at 5-40 weeks of ges- tation. BMD was Stiffness calculated from the combined value of speed of sound and broadband ultrasound attenuation was used as an index of BMD. The relationship between Stiffness and lifestyles as current and past various foods intake frequency, physical activity and history of par- ticipating in sports obtained by questionnaire were examined using stepwise multiple regression analysis, including age, period of gestation, BMI at measurement of BMD and parity as inde- pendent variables.
1. Period of gestation and parity showed no significant association with BMD, whereas age was negatively associated.
2. Significant positive correlation was found between urinary H.P/Cre and period of gestation.
This result suggests that bone resorption increases with stage of gestation.
3. Significant relationships with Stiffness were found in five llifestyle factors. Stiffness of the preg- nant women who had increase of cow s milk and milk products intake, higher balance score showed by frequent intake of various nutritional foods, lower protein score showed by less fre- quent intake of protein-rich foods, frequent going out at daytime, and who had no occupation were higher significantly.
These results indicate that dietary various food intake containing cow s milk and milk prod- ucts considering intake of protein source food, and physical activity at daytime during pregnancy may be important for BMD maintenance of during pregnancy..
*
奈良教育大学大学院Key Words: Ultrasound bone mineral densitometry, Pregnsncy, Lifestyles, Food intake , Cow s milk and milk products
キ−ワ−ド: 超音波骨密度測定,妊娠,
ライフスタイル,食品摂取,
乳・乳製品
1.はじめに
妊娠中に胎児に必要とされるカルシウム(Ca)は総 量で
25
−30
gにも達する.このCa需要に対して,妊娠 中には初期より大量の活性型ビタミンDが産生され,消 化管からのCaの吸収が高まることが知られている(1,2). 妊娠中には大量のエストロゲンが分泌されているため,骨組織は保護されているという従来の報告(3)に対して,
近年の超音波法による骨密度測定では,内分泌や代謝的 な調節のみで胎児の要求量を充足できず,骨組織からの
Caの移行があり骨密度が低下することが報告されてい
る(4-6).妊娠中の骨密度は胎児の発育のため(4),出産後の母 乳中のCa濃度の保持のため(7),また,妊娠・出産後あ るいは更年期以後の骨粗鬆症予防のためなど母子双方の 健康の観点から高く保持することが望ましい.前述した ように妊娠中には骨代謝が亢進していることから,この 時期の食生活をふくむ生活習慣が骨密度に影響すること が考えられる.どのような生活習慣が骨密度に影響する かを明らかにすることは,妊娠中の骨量減少を抑制し,
青年期に獲得した最大骨量を維持するために,また骨代 謝の亢進しているこの時期に骨量をさらに増大させるた めに有用であるが,それらに関する知見は少なく,こと に一般的にCa摂取量の少ないわが国の婦人については 殆ど見られない.
本研究ではまず妊娠の進行度と骨代謝の関係を確認 し,骨密度と生活習慣との関係を横断的解析により検討 した.興味ある知見を得たので報告する.
2.研究方法
2.1.対象者および倫理的配慮
対象者は,2006年7―9月に奈良市内の1産院に来院し た妊娠週数5〜40週,年齢18〜41歳の健康な妊婦71名 である.このうちCa剤を摂取していた
3
名を除き,68
名(初産婦
35
人,経産婦33
人)を分析対象とした.なお,対象者の中には妊娠期間中の2週間以上の臥床者,甲状 腺疾患,代謝性骨疾患,糖尿病の既往者および喫煙者は 含まれていない.
対象者に対しては研究開始時に研究の目的,協力いた だくこと,骨密度の本測定法は母体に全く影響を与えな いこと,得られたすべての情報は研究の目的以外に使用 しないことを明記した文書と口頭により研究協力を依頼 し,同意書への署名により同意を得た.また,研究開始 前に疫学研究に対する倫理審査を奈良教育大学学長に申 請し承認を得た.
2.2.測定・調査項目
骨密度,尿中の代謝物質の測定,現在および過去の食 生活・生活習慣の調査
2.3.骨密度の測定方法
骨密度測定には,毎回同一の超音波骨密度測定装置
(Lunar製 A‐
1000 INSIGHT)を用い,同一場所に
て右足踵骨で測定を行なった.この装置は超音波が踵骨 を 透 過 す る 際 の 超 音 波 伝 播 速 度 (SOS;SpeedOf Sound),超音波が踵骨で減衰する率である超音波減衰
係数(BUA;Broadbandultrasound attenuation)を
もとに算出されるStiffness(以後ST)を骨密度の指標 とした.算出式はStiffness=(0.67×BUA)+(0.28×SOS)−420である
(8).本装置は直接骨密度を測定するものではなく,踵骨部への超音波照射により得られた特 性を基に骨密度を算出するものである.従って,従来の X線照射による方法とは異なり,放射線被爆がないため 妊婦にも安心して使用できる唯一の方法である. 測定 を行う踵骨は
90
%以上が海綿骨であるので骨量の減 少・増加をいち早く探知できる.本機種は測定位置を明 確に把握できるリアルタイム・イメージングが内蔵され ており測定時の踵の位置を確認できること,また,乾式 法であり測定時間が短く被験者に与える負担が少ないと いう利点がある.本法の測定精度について,対象者5人 に1週間以内に10回繰り返し測定した場合の変動係数 は1.7〜6.9%(平均4.1%)で,従来の湿式法に比べると 幾分高いが,湿式法との相関は高かった(r=0.685,n=100
)(9).測定時には特に以下の点に注意した.被験者をキャス ターのついていない安定した椅子に背筋を伸ばして楽な 姿勢で座らせる,両方のメンブランと踵の両側面にエタ ノールを十分スプレーする,ふくらはぎサポーターの中 心にふくらはぎを置き,踵をできる限り後方に寄せプレ ビュー画像により踵骨の位置を確認する,測定中は動か せないなどである.測定は続けて
2
回行い平均値を採用 した.2.4.食生活を含む生活習慣および周産期要因の 調査項目,調査方法
食生活については現在の食事量や妊娠中の食事内容の 変化,食品摂取のバランス,塩分の摂りすぎ,香辛料の 好み,間食の回数,欠食の回数,食事作り,飲酒,喫煙,
コーヒー・紅茶の量,Ca剤・ビタミン剤の摂取,ダイ エットの経験,過去の牛乳摂取量,さらに
22
の食品群(1:卵,2:牛乳・チーズ・ヨーグルト,
3:肉・ハ
ム・ソーセージ類,4:魚介類・練り製品,5:小魚,6
:豆・豆製品,7
:緑黄色野菜,8
:その他の野菜,9
:果物,10
:海草,11
:きのこ,12
:いも類,13
:油 中 口 緑 ・ 米 山 京 子78
料理,14:インスタント麺類,15:めん類,16:おそ うざい・冷凍食品類,17:朝食,18:汁物,19:菓子 類,
20
:ジュース・炭酸飲料類,21
:ご飯,22
:パン)について(調査用紙には各食品群の代表的な食品名も表 示),最近1週間の摂取頻度を「1日に2回以上」「殆ど1 日に1回」「2,3日に1回」「週に1回」「殆どとらない」
の
5
段階で設問した.牛乳については1
日の摂取量を記 入とした.生活状況および身体活動については,現在の 職業有無,運動有無,過去の運動履歴,日中の外出頻度,骨折経験などである.周産期および背景要因として年齢,
出産回数,妊娠週数,身長,現在および妊娠前の体重,
体調の変化,貧血の有無,既往歴を調査した.
2.5.尿中の骨代謝物質の測定
妊娠の進行と骨代謝との関係を調べるため,昼間の
1
回尿を採取した.17N-HC r
により124
℃,3
時間加水分 解し,骨コラーゲンの代謝物である尿中ハイドロキシプ ロリン(以後HP)をParekhらの方法(10)により測定し,同時に測定したクレアチニンとの比として用いた(以後
HP/Cre)
.2.6.集計・解析方法
1)食生活を評価する各指標の算出
各食品群の摂取状況を把握するために,個々の食品群 の摂取頻度について1:卵から20:ジュース・炭酸飲料 類までは「1日に2回以上」を5点,「殆ど1日に1回」を4 点,「
2
,3
日に1
回」を3
点,「週に1
回」を2
点,「殆どと らない」を1
点と得点化した.21
:ご飯,22
:パンにつ いては「殆ど1日3回」を6点,「殆ど1日2回」を5点,以 後は他の食品群と同様とした.それらをもとにバランス スコア,たんぱく質スコア,カルシウムスコア,菓子ス コアの4
スコアを作成した.算出方法は表2
に示す.2)解析方法
骨密度との関係について,各項目の中で連続変量につ いてはPearsonの積率相関係数により,離散変量につい てはカテゴリーごとの骨密度平均値をカテゴリー間で比 較し分散分析法により有意差検定を行った.次に,骨密 度を従属変数,年齢,妊娠回数,妊娠週数,妊娠前の
BMI(Body Mass Index)および生活項目の中で骨密
度との関連の比較的大きかった項目を独立変数とし,10%レベル(分析①)および5%レベル(分析②)で
モデルから削除の条件で,変数減少法による重回帰分析 を行った.さらに,項目相互間の関連性を考慮して骨密 度と生活要因全体の構造を探るためにパス解析を行っ た.モデル適合度の指標として,CFI(比較適合度指 標),RMSEA(平均二乗誤差平方根),AIC(赤池情報 量基準)を用い,CFIが0.9
以上,RMSEAが0.05
未満を モデル適合の基準とした.分析にはSPSS Ver.12, AmosVer.5を用い,危険率5%を有意水準とした.
3.結 果
対象者の年齢,妊娠週数,妊娠回数,身長,妊娠前お よび現在の体重,BMIおよび骨密度測定結果の記述統 計 値 を 表 1 に 示 す .
BMI18. 5以 下 の 「 痩 せ 」 が 6 人
(
8.8%)存在した.ST値は 58
−126
,平均値90.7
,標準 偏差14.9
で個人差が大きく,ほぼ正規分布を示した(図 1).ST値は妊娠週数と一定の関係は認められなかっ た.また,妊娠回数が多いほど低い傾向が見られたが,統計的に有意差は認められなかった.尿中HP/Creと妊 娠週数の関係を図2に示す.なお,HP/Creの分析は,
採尿の可能であった妊娠22週までの33人についてのみ 行われた.両者間にはr=0.498(p=0.002)の有意の正 相関が認められた.
年齢,妊娠週数,妊娠前および現在のBMI,各種食品 摂取スコアの平均値,標準偏差およびST値との単相関 係数を表2に示す.4つの食品摂取スコアはいずれもほ ぼ正規分布を示し,単相関係数はいずれも有意ではなか った.
過去及び現在の生活習慣の各項目のカテゴリー別に
ST値の平均値と標準偏差を表3−1,表3−2に示す.有
意な関連の見られた項目は「職業の有無」,「香辛料の使 用頻度」,「妊娠前の活動量」,「日中の外出頻度」で,専表1 対象者の特性及び骨密度測定結果
業主婦,香辛料の使用頻度が少ない,妊娠前に運動をし ていた,日中の外出頻度が多い場合にST値が有意に高 かった.
重回帰分析の結果を表4に示す.分析に含めた変数は,
年齢,妊娠週数,食事内容(乳・乳製品)の変化,タン パク質スコア,バランススコア,カルシウムスコア,日 中の外出頻度,職業の有無,妊娠前のBMI,妊娠前の活 動量,妊娠回数(初産,経産),コーヒー・紅茶の摂取 頻度,食事作りである.分析①では,妊娠回数,職業有 無,妊娠中の乳・乳製品増加,外出頻度,バランススコ ア,たんぱく質スコア,年齢がモデルに含まれ,初産婦,
中 口 緑 ・ 米 山 京 子
80
図1 骨密度(Stiffness△)の分布
△:本文参照
図2 尿中HP/Creと妊娠週数の関係
N=33
表3-1 周産期状況・現在の生活習慣と骨密度
(Stiffness)との関係
N=68
表3-2 過去の生活習慣・身体状況と骨密度
(Stiffness)との関係 表2 StiffnessとBMI、年齢、妊娠週数、バランススコア、
たんぱく質スコア、カルシウムスコア、
菓子スコアとの単相関係数(r)
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専業主婦,妊娠中の乳・乳製品増加,日中の外出頻度が 多い,バランススコアが高い,たんぱく質スコアが低い,
年齢が若いほど骨密度が高いという結果が得られた.ま た,分析②では,分析①から妊娠回数を削除した6つの 変数が含まれ,各変数の符号も全く同様で,すべて有意 であった.分散分析および重回帰分析で骨密度との関連 の有意または比較的大きかった項目を観測変数とし,骨 密度とのパス係数の有意な変数および変数相互間の有意 な共変量を取り込み,比較的小さな共変量を誤差変数と
して削除して自由度を高めたパス解析の結果,元データ への適合性も高いと認められた最終モデルを図3に示 す.骨密度とのパス係数は,年齢,職業有無,外出頻度,
乳・乳製品増加,たんぱく質スコアでは負,バランスス コアでは正で,すべて有意であった(p<0.01).また,
たんぱく質スコアは香辛料使用頻度,バランススコアと いずれも正の,職業有無と外出頻度は負の有意の共変量 が認められた.出産回数はモデルから削除された.
4.考 察
まず,妊娠中の骨代謝について,HP/Creは全員が非 妊婦の正常値以上で,妊娠週数との正相関が認められた ことから,妊娠後半期においてのみでなく,妊娠前半期 から妊娠の進行に伴い骨吸収が亢進していることが確認 された.
妊娠中の生活要因の中で骨密度に有意に関連する項目 として,食生活ではバランススコア,たんぱく質スコア,
妊娠中の乳・乳製品の増加がモデルに含まれ,バランス スコアが高いほど,たんぱく質スコアが低いほど,妊娠 中に乳・乳製品摂取量を増やした者ほど骨密度が高いと いう結果が得られた.
たんぱく質スコアが高いほど骨密度が低いという理由 について,たんぱく質スコアが高いことはたんぱく質摂 取量が多いことを示唆するが,たんぱく質は腸管からの
Ca吸収を高める働きがあるが,妊娠中には胎児のCa要
求に応じるため,たんぱく質摂取量が多いほど骨組織か らのCa吸収も高くなり骨密度が低下すると考えられる.以前にも同様の所見を得ている(11).妊娠中は胎児の発 育のためにたんぱく質摂取量を増やす必要がある為,こ の現象は不可避と考えられる.
バランススコアがモデルに含まれた理由として,バラ ンススコアは高いほど種々の食品を万遍なく摂取してい ることを示すが,魚類や干ししいたけに多く含まれるビ タミンDは腸からのCa吸収を促進すること,果物や緑 黄色野菜に多く含まれるビタミンCは骨コラーゲンの生 成に必要であり,豆・豆製品に含まれるイソフラボンは 骨吸収を抑制するなどの作用があることから,種々の食 品を組み合わせて摂ることが骨密度を高めることに繋が ったと考えられる.ここで,「食事作り」とバランススコ アとの関係を見ると,「3食とも作る」が「1食以下」に 較べ有意にバランススコアが高かったことから,自ら食 事作りをすることがバランススコアを高めると言えよう.
また,妊娠中の乳・乳製品の摂取量を増加させるほど 骨密度が高い理由については,乳・乳製品は小魚や緑黄 色野菜に較べ腸管からの吸収率がはるかに高く主要な
Ca源であることから,種々の栄教素のバランスを考慮
してもCa摂取量の増加は骨密度に影響を与えると考え 図3 骨密度に影響を与える要因 −パス解析の結果表4 変数減少法による重回帰分析の結果
られる.妊娠中のCa摂取量を増大させた介入研究では,
妊娠中の骨密度低下をもたらさないことが報告されてい る(3).
「日本人の食事摂取基準(
2005
年版)」(12)では妊娠中 には活性型ビタミンDやエストロゲンが上昇し腸管から のCa吸収率が上昇するため,妊娠中には付加量は必要 ないと変更されている.しかし,たんぱく質の摂取量に は付加量が設けられ,たんぱく質摂取量が多いほど骨密 度は低下することから,骨密度保持のためには,たんぱ く質摂取量に応じたCaの付加量が必要であると言える.なお,妊娠前および妊娠中のBMIについて,妊婦でな い一般成人では骨密度と正相関が見られるが,本研究で 有意な要因としてあげられなかったのは,妊娠中には骨 代謝が亢進しており,BMIより胎児の要求や妊娠中の生 活の影響が大きかったためと考えられる.また,香辛料 の使用頻度が多いほど骨密度が低い理由については,香 辛料の使用頻度とタンパク質スコアの間に関係が見られ たので,香辛料の使用頻度が間接的に骨密度に影響を与 えたと推測される.
生活習慣の項目では,日中の外出頻度と職業の有無に おいて骨密度と有意の関連が認められた.日中の外出頻 度が多いほど骨密度が高い理由については,日中外出す ることによって身体活動量が増えることが考えられる.
また,太陽光により体内のビタミンD合成が促進し,Ca の吸収が促進することが推測される.新生児に骨の発育 が十分でないために頭骨がへこむ頭蓋ろうが22%もあ るとの報告がなされているが(13),本研究は対象者が十 分ではなく,しかも横断的解析であるため骨密度への日 光の影響を断定はできないが,妊娠中の日中の外出は少 なくとも身体活動の効果があり,骨密度を高めるために 有用と言えよう.
専業主婦ほど骨密度が高いという理由については,職 業の有無は食事作りの回数と有意の関係が見られ,「3 食とも作る」は職業婦人では18.2%に対し,専業主婦で
は
54.3%と高く,食事作りの回数が多いほど骨密度が高
い傾向が見られていることから,食事作りの回数が交絡 変数になったものと考えられる.本分析では食事作りの 回数が多いほどバランススコアが高いという結果も得ら れており,食生活が骨密度に繋がった可能性が考えられ る.しかし一方,バランススコアは骨密度への影響要因 として独立して挙げられていることから,「職業有り」
の場合の食生活以外の要因,多忙な生活やストレスが骨 密度へ影響した可能性も否定できない.
過去の生活習慣では以前の報告(5)と異なり,骨密度 との有意な関連は認められなかった.今回の分析では妊 娠中の食事習慣を詳細に考慮しており,骨密度へのそれ らの影響が大きいこと,また,対象集団の年齢幅や妊娠 週数の偏りが大きいことなどのために明確な相違が見い
だせなかったと考えられる.従って一般的に骨密度を高 めるために有効であると認められている生活習慣を否定 するものではない.
5.要 約
2006
年7
−9
月に奈良市内の1
産院に来院した妊娠週数5
〜40
週,年齢18
〜41
歳の健康な妊婦で,妊娠中にCa剤 を摂取していない68名を対象に超音波法による骨密度 の測定,尿中骨代謝指標の測定,食生活および生活習慣 の調査を行った.1.妊娠週数および出産回数は骨密度と有意な関連は 見られず,年齢は有意の負相関が見られた.
2.妊娠の進行に伴い骨吸収が亢進することが確認さ れた.
3.妊娠週数および年齢を考慮した重回帰分析の結果,
妊娠中に乳・乳製品の摂取量が増加,バランススコアが 高い,たんぱく質スコアが低い,日中の外出頻度が多い,
職業なしの場合に骨密度が有意に高いという関係が認め られた.
これらの所見は妊娠中の骨密度保持のためには,たん ぱく質食品の摂取頻度に応じて,乳・乳製品を含む種々 の食品を摂取すること,日中の外出頻度を増やすことが 有効であることを示している.
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