ネコの脱分化脂肪細胞および脂肪由来幹細胞 の調製と特性評価
日本大学大学院獣医学研究科獣医学専攻 博士課程
河野 正太
2013
目 次
序 文
1
第
1
章 ネ コ 脂 肪 組 織 か ら の 脱 分 化 脂 肪 細 胞 お よ び 脂 肪 由 来 幹 細 胞 の 調 製1.
緒 言2.
材 料 と 方 法3.
結 果4.
考 察5.
小 括第
2
章 脱 分 化 脂 肪 細 胞 お よ び 脂 肪 由 来 幹 細 胞 の 増 殖 能 の 評 価1.
緒 言2.
材 料 と 方 法3.
結 果4.
考 察5.
小 括項
1
5 7 11 18 21
22
23
25
30
32
3.
結 果4.
考 察5.
小 括総 括
謝 辞
引 用 文 献
38 44 47
48
52
53
序 文
(Heuberger and Wakshlag, 2011; Webster et al., 2012)
。再 生 医 療 の 中 心 的 な ア プ ロ ー チ は 、 幹 細 胞 を 用 い た 細 胞 移 植 治 療 で あ る 。 幹 細 胞 は 、 未 分 化 な 細 胞 で あ り 、 自 己 複 製 能 を 有 す る こ と 、 お よ び 複 数 の 細 胞 系 列 に 分 化 す る 能 力 を も つ こ と が 特 徴 で あ る 。 幹 細 胞 は 、 胚 性 幹 細 胞 と 体 性 幹 細 胞 に 大 別 さ れ る 。 胚 性 幹
(Embryonic stem:
ES)
細 胞 は 、 三 胚 葉 へ の 分 化 能 お よ び 無 限 増 殖 能 を 有 す る 細 胞 で あ る が 、 倫 理 的 問 題 や 細 胞 移 植 に よ る 腫 瘍 形 成 の リ ス ク な ど 臨 床 応 用 に 向 け て 克 服 す べ き 課 題 が あ る 。 体 性 幹 細 胞 の う ち 、 間 葉 系 幹 細 胞(Mesenchymal stem cells: MSC)
はFriedenstein
ら に よ っ て 骨 髄 か ら 初 め て 分 離 さ れ(Friedenstein and Kuralesova, 1971)
、現 在 ま で 最 も よ く 研 究 さ れ て い る 体 性 幹 細 胞 で あ る 。 国 際 細 胞 治 療 学 会 は ヒ トMSC
に 関 す る 議 論 の 叩 き 台 と し てMSC
の 最 小 基 準 を 定 義 し た :(1)
標 準 的 な 培は
CD11b
、CD79!
ま た はCD19
、 お よ びHLA-DR
に 陰 性 で あ る こ と 、(3) in vitro
に お い て 骨 芽 細 胞 、 脂 肪 細 胞 、 お よ び 軟 骨 細 胞 に 分 化 す る 多 分 化 能 を 有 す る こ と で あ る(Dominici et al., 2006)。 現 在 で は 、 骨 髄
だ け で な く 、 脂 肪 、 臍 帯 血 、 歯 髄 、 滑 膜 等 の 組 織 に も 上 記 の 条 件 を 満 た すMSC
が 存 在 し て い る こ と が 明 ら か に な っ て い る(Orbay et al., 2012; Wang et al., 2013)
。MSC
は 、ES
細 胞 に 比 較 し て 腫 瘍 形 成 の リ ス ク が 極 め て 低 く 、 す で に 様 々 な 疾 患 を 対 象 と し た 臨 床 試 験 が 行 わ れ て い る 。近 年 、 脂 肪 組 織 は
MSC
の 採 取 源 と し て 注 目 さ れ て い る 。 脂 肪 組 織 は 、 骨 髄 と 比 較 す る と 比 較 的 低 侵 襲 に 短 時 間 で 容 易 に 採 取 で き 、 組 織 中 の 幹 細 胞 数 が 多 い 。 そ の た め 脂 肪 組 織 中 のMSC
は 臨 床 応 用 す る 上 で 多 く の 利 点 が あ る 。し か し な が ら 、MSC は 最 終 細 胞 製 品 の 中 に 他 細 胞 が 混 入 す る 可 能 性 が 高 い こ と が 臨 床 応 用 す る 上 で 大 き な 障 壁 で あ る 。 安 全 性 の 高 い 再 生 医 療 を 実 現 す る た め に 、 理 想 的 な 移 植 細 胞 の 条 件 と し て 、 よ り 均 質 で あ る こ と が 求 め ら れ て い る 。Kano, Matsumoto
ら の グ ル ー プ は 成 熟 脂 肪 細 胞 を 天 井 培 養 す る こ と で 得 ら れ る 線 維 芽 細 胞 様 の 細 胞 が 高 い 増 殖 活 性 とMSC
に 類 似 し た 多 分 化 能 を 有 す る こ と を 明 ら か に し 、 こ れ を 脱 分 化 脂 肪 細 胞(dedifferentiated fat cells: DFAT)
と 名 付 け た(Yagi et al., 2004;
の よ う な 性 質 を も つ
DFAT
は 再 生 医 療 に 用 い る 新 た な 細 胞 と し て 期 待 で き る 。 ネ コ の 再 生 医 療 に 関 す る 研 究 は 非 常 に 少 な い 。 現 在 ま で に 、 ネ コ の 骨 髄 、 脂 肪 組 織 お よ び 胎 児 付 属 組 織 か らMSC
が 分 離 培 養 で き る こ と が 示 さ れ て い る(Martin et al., 2002; Mitchell et al., 2006; Quimby et al.,
2011; Iacono et al., 2012)
。DFAT
は 、少 量 の 脂 肪 組 織 か ら 調 製 が 可 能 で あ る た め 、 体 格 の 小 さ い ネ コ の 再 生 医 療 に お い て も 有 望 な 細 胞 源 に な る と 期 待 で き る 。本 研 究 の 目 的 は 、ネ コ の 成 熟 脂 肪 細 胞 か らDFAT
を 調 製 し 、 特 性 を 評 価 す る こ と で あ る 。第
1
章ネ コ 脂 肪 組 織 か ら の 脱 分 化 脂 肪 細 胞 お よ び 脂 肪 由 来 幹 細 胞 の 調 製
1.
緒 言 脂 肪 組 織 は 成 熟 脂 肪 細 胞 の ほ か に 、 間 質 血 管 画 分 (Stromal vascularfraction: SVF)
と 呼 ば れ る 種 々 の 細 胞 群 や 毛 細 血 管 か ら 構 成 さ れ て い る 。SVF
は 、脂 肪 間 質 細 胞 、マ ク ロ フ ァ ー ジ 、線 維 芽 細 胞 、血 管 内 皮 細 胞 、 血 管 平 滑 筋 細 胞 、 血 管 周 皮 細 胞 、 単 球 な ど 様 々 な 細 胞 が 含 ま れ て い る 。近 年 、こ のSVF
中 の1~ 3%の 細 胞 が 多 系 列 の 細 胞 へ の 分 化 能
を 有 す るMSC
で あ る こ と が 複 数 の 研 究 グ ル ー プ か ら 報 告 さ れ て き た(Astori et al., 2007; Fraser et al., 2008; Mizuno et al., 2012)
。 こ れ は 脂 肪 組 織 に は 骨 髄 の 約500
倍 も の 幹 細 胞 が 含 ま れ て い る こ と を 意 味 し て お り 、 脂 肪 組 織 は 再 生 医 療 の 新 た な 細 胞 供 給 源 と し て 注 目 さ れ て い る 。 脂 肪 組 織 中 の 間 葉 系 幹 細 胞 は 、processed lipoaspirate cells (PLA)、 脂 肪
組 織 由 来 幹 細 胞(adipose-derived stem cell: ADSC)
、 脂 肪 組 織 由 来 間 質 細 胞(adipose-derived stromal cells: ASC)
な ど 様 々 な 名 称 が 使 用 さ れし 、遠 心 分 離 す る こ と で 得 ら れ る
SVF
を 体 外 培 養 し 、プ ラ ス テ ィ ッ ク に 接 着 す る 細 胞 集 団 と し て 容 易 に 分 離 で き る 。し か し な が ら 、SVF は 不 均 質 な 細 胞 集 団 で あ り 、ASC に 特 異 的 な 分 子 マ ー カ ー も 未 だ 同 定 さ れ て い な い(Bunnell et al., 2008; Reinders and Rabelink, 2010)
。 細 胞 治 療 の 効 果 や 安 全 性 に 関 す る 確 実 な 臨 床 エ ビ デ ン ス を 担 保 す る た め に は 、 均 質 な 細 胞 製 品 が 望 ま し い 。 成 熟 脂 肪 細 胞 は 終 末 分 化 し た 細 胞 で あ り 、 一 般 的 に 増 殖 能 を 示 さ な い が 、 天 井 培 養 と い う 特 殊 な 方 法 で 培 養 す る こ と に よ り 、 増 殖 能 を も っ た 線 維 芽 細 胞 様 の 細 胞 を 得 る こ と が で き る 。Kano, Matsumoto
ら の グ ル ー プ は 、 こ の 細 胞 を 脱 分 化 脂 肪 細 胞(DFAT)
と 名 付 け た(Matsumoto et al., 2008)。 DFAT
は 少 量 の 脂 肪 組 織 か ら 調 製 す る こ と が で き る た め 、ド ナ ー に 対 す る 侵 襲 が 低 い 。ま た 、Matsumoto
ら はDFAT
に は 他 細 胞 の 混 入 が 少 な く 、 均 質 性 が 高 い こ と を 報 告 し て い る 。 し た が っ て 、DFAT
は 体 格 の 小 さ い ネ コ に お い て も 最 適 な 再 生 医 療 用 細 胞 源 で あ る と 考 え ら れ る 。 現 在 ま で に 、 ヒ ト 、 マ ウ ス 、 ブ タ 、 ウ シ お よ び ウ サ ギ か らDFAT
が 樹 立 さ れ 、MSC
と 同 等 の 多 分 化 能 を 有 す る こ と 、 そ し て 心 筋 梗 塞 、 腎 機 能 障 害 、 脊 髄 損 傷 な ど 様 々 な 疾 患 モ デ ル に お け る 治 療 効 果 を も つ こ と を 明 ら か に し て き た(Nur et al., 2008; Ohta et al., 2008; Jumabay et al., 2009)
。 本 章 の 目 的 は 、ネ コ の 成 熟 脂 肪 細 胞 か らDFAT
を 調 整 し 、ASC と 比2.
材 料 と 方 法1 )
供 試 動 物 本 研 究 は 、 一 般 動 物 病 院 に お い て 予 防 的 不 妊 を 目 的 に 卵 巣 子 宮 摘 出 術 ま た は 卵 巣 摘 出 術 を 受 け る ネ コ(1
~3
歳 齢)
の 飼 い 主 に 同 意 を 得 て 行 っ た 。 一 般 身 体 検 査 お よ び 病 歴 を 聴 取 し 、 臨 床 上 明 ら か な 異 常 の な い ネ コ を 対 象 に し た 。 キ シ ラ ジ ン2.0 mg/kg i.v. (AnaSed
®, Lloyd Inc., IA)
で 導 入 し 、ケ タ ミ ン10 mg/kg (
ケ タ ラ ー ル®, Daiichisankyo, Tokyo, Japan)
で 麻 酔 状 態 を 維 持 し た 。 抗 生 物 質 と し て ア モ キ シ シ リ ン15 mg/kg (ア モ ス タ ッ ク LA
注®, Meiji Seika, Tokyo, Japan)
を 投 与 し た 。 開 腹 中 に 腹 腔 内 脂 肪 組 織 の 一 部 を 採 取 し 、お よ そ37ºC
に 加 温 し た 滅 菌 リ ン 酸 緩 衝 生 理 食 塩 水(Phosphate buffered saline: PBS)
に 保 存 し た 。 採 取 か ら6
時 間 以 内 の 脂 肪 組 織 か ら 成 熟 脂 肪 細 胞 お よ びSVF
を 分 離 し た 。2 ) DFAT
の 調 製DFAT
の 調 製 は 、Matsumoto
ら の 方 法 に 従 っ て 行 っ た(Matsumoto et
al., 2008)
。 脂 肪 組 織 の 重 量 を 計 測 し 、 付 着 し て い る 結 合 組 織 お よ び 血浮 遊 す る 細 胞 を 採 集 し 、
2%
牛 胎 児 血 清(Fetal bovine serum: FBS)
添 加Dulbecco’s Modified Eagle Medium (DMEM)
で3
回 洗 浄 し た 。浮 遊 す る 細 胞 の 一 部 を4%パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド で 15
分 間 固 定 し 、PBS で 洗 浄 後 、AdipoRed (Cambrex, Walkersville, MD)
お よ びHoechst33342 (Sigma-Aldrich)
で10
分 間 処 理 し 、 そ れ ぞ れ 脂 肪 滴 お よ び 核 を 蛍 光 染 色 し た 。 成 熟 脂 肪 細 胞 を20%FBS
添 加DMEM
で 満 た し た12.5 cm
2培 養 フ ラ ス コ に 播 種 し た 。 成 熟 脂 肪 細 胞 が フ ラ ス コ の 培 養 面 に 接 触 す る よ う に フ ラ ス コ を 反 転 さ せ 、 天 井 培 養 を 行 っ た 。 天 井 培 養 中 に 細 胞 の 形 態 を 経 時 的 に 観 察 し た 。 天 井 培 養7
日 後 に 培 地 を10%FBS
添 加DMEM
に 交 換 し 、細 胞 培 養 面 が 底 面 と な る よ う に フ ラ ス コ を 再 び 反 転 さ せ た 。 細 胞 は0.05%
ト リ プ シ ン お よ び0.48 mM EDTA
を 用 い て 継 代 し 、 継 代(P) 3
ま で の 細 胞 を 実 験 に 用 い た 。3 ) ASC
の 調 製ASC
の 調 製 は 、Webb
ら の 方 法 に 従 っ て 行 っ た(Webb et al., 2012)
。 脂 肪 組 織 を コ ラ ゲ ナ ー ゼ に よ り 酵 素 処 理 し 、 成 熟 脂 肪 細 胞 を 採 集 し た 後 の 細 胞 浮 遊 液 を380 g
で5
分 間 遠 心 処 理 す る こ と に よ り 、SVF を 分 離 し た 。SVF (2
~5 x 10
6 個)
は12.5 cm
2 培 養 フ ラ ス コ に 播 種 し 、20%FBS
添 加DMEM
を 用 い て 培 養 し た 。 ま た 、SVF
の 細 胞300
個 をColony forming unit-fibroblast (CFU-F)
培 養 液(NH CFU-F Media,
養
4
日 後 に0.05%
ト リ プ シ ン お よ び0.48 mM EDTA
を 用 い て 継 代 し 、P3
ま で の 細 胞 を 実 験 に 用 い た 。4 )
フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー に よ る 細 胞 表 面 抗 原 解 析P1
に お い て60
~80%
コ ン フ ル エ ン ト に な っ たDFAT
お よ びASC
の 細 胞 表 面 抗 原 を フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー に よ り 解 析 し た 。 細 胞 数 を1 x
10
6個 に 調 整 し 、0.2%牛 血 清 ア ル ブ ミ ン(BSA)
お よ び1 mM EDTA
添 加PBS
に て 細 胞 浮 遊 液 を 作 製 し た 。ウ サ ギ 血 清 ア ル ブ ミ ン で ブ ロ ッ キ ン グ を 施 し た 後 、細 胞 浮 遊 液 に 以 下 の 一 次 抗 体 を4˚C
で30
分 間 反 応 さ せ た 。 す な わ ち 、 抗 ネ コCD14
抗 体(1:200, clone:CAM36A, VMRD,
Pullman, WA)、 抗 ヒ ト CD34
抗 体 (1:10, clone:581, Beckman Coulter,Fullerton, CA)、 抗 ネ コ CD44
抗 体 (1:200, clone:BAG40A, VMRD)、 抗 ネ コCD45
抗 体(1:200, clone:25-2C, VMRD)
、 抗 ヒ ト!
平 滑 筋 ア ク チ ン(!-SMA)
抗 体(1:200, clone:1A4, Dako, Glostrup, Denmark)
、Phycoerythrin (PE)
標 識 抗 ヒ トCD90
抗 体(1:200, clone:5E10, BD
Bioscience, San Jose, CA)、 お よ び PE
標 識 抗 ヒ トCD105
抗 体 (1:20,clone:SN6, eBioscience, San Diego, CA)
を 用 い た 。 ま た 、!-SMA
に つ い て はP2
のDFAT
お よ びASC
の 細 胞 集 団 に つ い て も 同 様 に 解 析 し た 。 無 標 識 の 一 次 抗 体 は 、 二 次 抗 体 と し てPE
標 識 ヤ ギ 抗 マ ウ スIg
抗 体1 x 10
4 個 以 上 の 生 細 胞 に つ い て 、CellQuest
ソ フ ト ウ ェ ア パ ッ ケ ー ジ お よ びBD FACS Calibur
フ ロ ー サ イ ト メ ー タ ー(Becton Dickinson, Bedford, MA)
を 用 い て 解 析 し た 。そ れ ぞ れ の ア イ ソ タ イ プ コ ン ト ロ ー ル の シ グ ナ ル と 比 較 し 、 陽 性 細 胞 の 割 合 を 計 測 し た 。5 )
統 計 デ ー タ は 平 均 ± 標 準 偏 差 で 示 し た 。 解 析 ソ フ トSPSS 16.0
ソ フ ト ウ ェ ア パ ッ ケ ー ジ (SPSS Inc. Chicago, IL) を 用 い て 統 計 学 的 解 析 を 行 っ た 。デ ー タ の 比 較 は 、Mann-Whitney U
検 定 を 用 い た 。P < 0.05
を 統 計 学 的 有 意 水 準 と し た 。3.
結 果 検 討 を 行 っ た ネ コ は24
頭 で あ っ た 。 全 頭 か ら 重 量 約0.5
~1.0 g
の 脂 肪 組 織 を 採 取 し た 。 こ の 脂 肪 組 織 か ら1
~2 x 10
6の 成 熟 脂 肪 細 胞 、 お よ び2
~5 x 10
6のSVF
を 分 離 で き た 。DFAT
お よ びASC
は 脂 肪 組 織 を 採 取 し た す べ て の ネ コ に お い て 調 整 す る こ と が 可 能 で あ っ た 。1) DFAT
の 調 整 脂 肪 組 織 を コ ラ ゲ ナ ー ゼ 処 理 お よ び 遠 心 分 離 し た 後 、 浮 遊 す る 上 層 の 細 胞 は 、 単 核 で 単 胞 性 の 成 熟 脂 肪 細 胞 で あ っ た (図1-1-A)。 天 井 培
養3
日 目 に は 、 一 部 の 成 熟 脂 肪 細 胞 が 細 胞 質 を 伸 長 さ せ 、 フ ラ ス コ 天 井 の 培 養 面 に 接 着 性 を 示 し た 。 接 着 し た 細 胞 は 、 非 対 称 性 に 分 裂 し 、 線 維 芽 細 胞 様 のDFAT
を 産 出 し た(
図1-1-B)
。 こ のDFAT
は 、 対 称 性 に 分 裂 を 繰 り 返 し 、5
日 目 に は コ ロ ニ ー を 形 成 し た(
図1-1-C)
。7
日 後 に は サ ブ コ ン フ ル エ ン ト に 到 達 し 、 約5~15 x 10
5cells/cm
2 の 細 胞 を 得 る こ と が で き た (図1-1-D,
表1)。
2 ) ASC
の 調 整す る と 、
2.2 ± 0.4%
の 細 胞 が コ ロ ニ ー を 形 成 し た 。ASC
を 調 製 す るSVF
の 至 適 播 種 濃 度 は1.6 x 10
5cells/cm
2で あ っ た 。 こ の 培 養 条 件 下 で は 、 増 殖 し たASC
は 約4
日 後 に サ ブ コ ン フ ル エ ン ト と な り 、 約1.5~ 3.0 x 10
5cells/cm
2 の 細 胞 を 得 る こ と が で き た(
図1-2-C,
表1)
。3 ) DFAT
お よ びASC
の 細 胞 集 団 の 解 析 フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー 解 析 に よ り 、同 一 個 体 に 由 来 す るP1
のDFAT
お よ びASC
は 、CD44 (91.1 ± 8.0
お よ び82.4 ± 17.5%)、 CD90 (90.4 ± 7.2
お よ び95.9 ± 2.5%)
、お よ びCD105 (95.6 ± 2.7
お よ び93.1 ± 5.0%)
に 陽 性 で あ り 、 単 球 マ ー カ ーCD14
、 造 血 幹 細 胞 マ ー カ ーCD34
、 お よ び 汎 リ ン パ 球 マ ー カ ーCD45
に 陰 性 で あ っ た(図 1-3)。 ま た 、 ASC
の 細 胞 集 団 に お け る! -SMA
陽 性 細 胞 の 割 合 は 、P1
に お い て15.2 ± 7.2%
、 お よ びP2
に お い て6.3 ± 7.2%
で あ り 、 そ れ ぞ れDFAT
の 細 胞 集 団 のP1
に お け る2.2 ± 3.2%
、 お よ びP2
に お け る1.5 ± 0.6%
に 比 較 し て 有 意 に 高 値 で あ っ た(
図1-4, P<0.05)
。図
1" 1.
ネ コ 脂 肪 組 織 か ら 単 離 ・ 培 養 し た 成 熟 脂 肪 細 胞 の 形 態 変 化 。 単 離 し た 細 胞 の 蛍 光 顕 微 鏡 像(AdipoRed
お よ びHoechst33342, A)、 な
ら び に 天 井 培 養3
日 目(B)
、5
日 目(C)
、お よ び7
日 目(D)
の 細 胞 の 位 相 差 顕 微 鏡 像 。Scale Bar: 100 µ m
。図
1"2.
ネ コ 脂 肪 組 織 か ら 単 離 ・ 培 養 し た 間 質 血 管 画 分(SVF)
の 形 態 変 化 。 単 離 ・ 培 養 直 後 の 細 胞 の 蛍 光 顕 微 鏡 像 (AdipoRed お よ びHoechst33342, A)
お よ び 位 相 差 顕 微 鏡 像(B)
、 な ら び に 培 養4
日 目 の 位 相 差 顕 微 鏡 像(C)
。Scale Bar: 100 µm
。表
1. P0
に お い て 得 ら れ るDFAT
お よ びASC
の 細 胞 数⊧✀ ᛶู య㔜
(kg)
⬡⫫⤌⧊㔜㔞(g)
P0
࠾࠸࡚ᚓࡽࢀࡿ⣽⬊ᩘ(cells/cm
2)
DFAT (7
᪥┠)
ASC (4
᪥┠)
Cat 1 㞧✀
㞤2.8 0.6 4.8 x 10
53.3 x 10
5Cat 2 㞧✀
㞤3.1 0.4 8.0 x 10
51.4 x 10
5Cat 3 㞧✀
㞤3.4 0.4 14.0 x 10
52.7 x 10
5Cat 4 㞧✀
㞤3.0 0.5 4.6 x 10
51.7 x 10
5!"#$ !"%$ !"$&
!"$$ !"'( !"#(&
()&* #)(* #)(*
+&)'* ',)&* '&)-*
"./0
!"#$ !"%$ !"$&
#)(* ()'* #)%*
/1!
!"$$ !"'( !"#(&
-'),* '+)%* ,&)&*
図
1-3. P1
に お け るDFAT
お よ びASC
の 細 胞 表 面 抗 原 の 代 表 的 な ヒ ス ト グ ラ ム 。 マ ー カ ー シ グ ナ ル(
紫 色)
お よ び ア イ ソ タ イ プ コ ン ト ロ ー ル シ グ ナ ル (緑 色)。
!"#$ #%&
Į60$ Į60$
'()* +(,*
図
1-4. DFAT
お よ びASC
の!-SMA
陽 性 細 胞 の 割 合 。P1
に お け るDFAT
お よ びASC
の 代 表 的 な ヒ ス ト グ ラ ム(上 )。 マ ー カ ー シ グ ナ ル (紫 色 )
お よ び ア イ ソ タ イ プ コ ン ト ロ ー ル シ グ ナ ル (緑 色)。P1
お よ びP2
に お け るDFAT
お よ びASC
の!-SMA
陽 性 細 胞 の 比 較(
下,
平 均±
標 準 偏 差)
。*: P < 0.05
。4.
考 察 健 康 な ネ コ の 腹 腔 内 脂 肪 組 織 か ら 成 熟 脂 肪 細 胞 を 分 離 し 、 こ れ を 天 井 培 養 す る こ と で 、 線 維 芽 細 胞 様 のDFAT
を 調 製 す る こ と が で き た 。DFAT
は 少 量 の 脂 肪 組 織 か ら 大 量 調 製 が 可 能 で あ る こ と か ら 、 獣 医 療 に お い て も 再 生 医 療 に 用 い る 細 胞 と し て 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 は ネ コ に お け るDFAT
の 調 製 に 関 す る 初 め て の 報 告 で あ る 。0.5
~1.0 g
の 脂 肪 組 織 か ら1
~2 x 10
6個 の 成 熟 脂 肪 細 胞 お よ び2
~5 x 10
6個 のSVF
を 得 る こ と が で き た 。 単 離 し た 成 熟 脂 肪 細 胞 の 一 部 は 、 天 井 培 養3
日 目 で 細 胞 質 を 伸 長 さ せ 培 養 面 に 接 着 性 を 示 す よ う に な っ た 。 著 者 の 研 究 グ ル ー プ は 以 前 に 、 細 胞 核 を 蛍 光 ラ ベ ル し た 成 熟 脂 肪 細 胞 を 天 井 培 養 し 、タ イ ム ラ プ ス 撮 影 す る こ と に よ り 、約40%
の 成 熟 脂 肪 細 胞 か ら 線 維 芽 細 胞 様 の 形 態 を 示 すDFAT
が 非 対 称 分 裂 に よ っ て 産 生 さ れ る こ と を 明 ら か に し た(Matsumoto et al., 2008)
。 こ のDFAT
は 、 そ の 後 は 対 称 性 に 分 裂 し 、 高 い 細 胞 増 殖 活 性 を 示 す と と も に 、Lipoprotein lipase, Leptin, Peroxisome proliferator–activated receptor "
(PPAR")
な ど の 脂 肪 細 胞 マ ー カ ー 遺 伝 子 の 発 現 が 消 失 し て お り 、細 胞 増 殖 や 分 化 調 節 に 関 わ る 遺 伝 子 群 の 発 現 が 増 加 し て い る こ と を 明 ら か に し た(Matsumoto et al., 2008; Ono et al., 2011)。 こ れ ま で の 報 告 と 同
ASC
も ま た 少 量 の 脂 肪 組 織 か ら 大 量 に 調 製 す る こ と が 可 能 で あ っ た 。 ネ コ 脂 肪 組 織 か ら 分 離 し たSVF
中 の 約2%の 細 胞 が コ ロ ニ ー を 形
成 す る 自 己 複 製 能 を 有 す る 細 胞 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 こ れ は ヒ ト や マ ウ ス に お け る 研 究 結 果 と 合 致 す る 。Friedenstein
ら は 、骨 髄 間 質 細 胞 を 低 密 度 に 培 養 し た 結 果 、 形 態 学 的 に 線 維 芽 細 胞 に 類 似 し た 細 胞 コ ロ ニ ー を 形 成 し 、こ の よ う な 細 胞 は 急 速 に 接 着 し 、in vitro
に お い て 高 い 増 殖 能 を も つ 細 胞 で あ る こ と を 報 告 し て い る(Friedenstein et al., 1970)。CFU-F
コ ロ ニ ー を 形 成 す る 細 胞 は 多 分 化 能 を も っ て お り 、CFU-F
ア ッ セ イ は 組 織 中 のMSC
数 を 推 測 す る こ と が 可 能 で あ る(Friedenstein et al., 1987)
。 他 動 物 種 と 同 様 に 、 ネ コ の 骨 髄 単 核 球0.05-0.005%
の 割 合 でCFU-F
コ ロ ニ ー を 形 成 す る 細 胞 が 存 在 す る と い う 報 告 が あ る(Friedenstein, 1980; Owen and Friedenstein, 1988; Martin etal., 2002)
。し た が っ て ネ コ の 脂 肪 組 織 は 骨 髄 に 比 較 し て100
~1,000
倍 の 間 葉 系 幹 細 胞 が 存 在 し て い る 可 能 性 が あ る 。ASC
はSVF
の 一 部 の 細 胞 で あ る た め 、 細 胞 集 団 にASC
以 外 の 細 胞 が 不 均 質 に 含 ま れ て い る 可 能 性 が あ る 。 本 研 究 に お い て 、 平 滑 筋 細 胞 マ ー カ ー で あ る!-SMA
に つ い て 解 析 す る と 、P1
のASC
に お い て 約15%、
そ し て
P2
に お い て 約6%
の 細 胞 が 陽 性 を 示 し た 。継 代 に よ り 陽 性 細 胞 の 割 合 は 減 少 し て い る も の の 、ASC
に は 少 な く と もP2
ま で は 、 平 滑質 を も つ 。 天 井 培 養 は こ の 性 質 を 利 用 し た 培 養 方 法 で あ り 、 成 熟 脂 肪 細 胞 を 選 択 的 に 培 養 す る こ と が 可 能 で あ る 。 ま た 、
DFAT
は 細 胞 密 度 の 高 い 培 養 条 件 下 に お い て!-SMA
に 弱 陽 性 を 示 す 傾 向 が あ る 。以 上 の 理 由 か らDFAT
に お け る 平 滑 筋 細 胞 の 混 入 の 可 能 性 は 低 く 、 一 部 のDFAT
が!-SMA
陽 性 を 示 し た 可 能 性 が あ る 。 し た が っ て 、DFAT
は 、ASC
に 比 較 し て 、継 代 早 期 に お い て 血 管 平 滑 筋 細 胞 な ど の 混 入 が 少 な い 、 よ り 均 質 な 細 胞 集 団 で あ る と 考 え ら れ る 。5.
小 括健 康 な 若 い ネ コ か ら 採 取 し た 腹 腔 内 脂 肪 組 織 か ら 成 熟 脂 肪 細 胞 を 単 離 し 、 天 井 培 養 す る こ と で
DFAT
を 得 る こ と が 可 能 で あ っ た 。DFAT
は 、ASC
と 同 様 に 高 い 増 殖 能 を 有 し て お り 、さ ら に 継 代 早 期 に お い てASC
よ り も 均 質 な 細 胞 集 団 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。第
2
章脱 分 化 脂 肪 細 胞 お よ び 脂 肪 由 来 幹 細 胞 の 増 殖 能 の 評 価
1.
緒 言 第1
章 に お い て 、ネ コ に お い て もDFAT
を 調 製 す る こ と が 可 能 で あ る こ と を 示 し 、加 え てDFAT
はASC
に 比 較 し て 均 質 性 が 高 い こ と が 示 唆 さ れ た 。 一 般 的 に 用 い ら れ て い る 幹 細 胞 の 基 準 の 一 つ は 、 ク ロ ー ン 増 殖 す る 自 己 複 製 能 を 有 す る こ と で あ る 。従 来 か らCFU-F
ア ッ セ イ は 、未 分 化 な 自 己 複 製 能 を も つMSC
を 検 出 す る た め に 用 い ら れ て き た 。 現 在 ま で にDFAT
がCFU-F
コ ロ ニ ー 形 成 能 を も つ か 明 ら か に し た 報 告 は な い 。 ま た 同 じ 細 胞 種 で あ っ て も 、生 物 種 に よ っ て 適 切 な 培 養 条 件 は 異 な る 。 本 章 の 目 的 は 、 ネ コDFAT
お よ びASC
のCFU-F
コ ロ ニ ー 形 成 能 お よ び 増 殖 能 を 評 価 し 、 適 切 な 細 胞 培 養 条 件 を 明 ら か に す る こ と で あ る 。2.
材 料 と 方 法1 ) DFAT
お よ びASC
第
1
章 と 同 様 の 方 法 を 用 い て 、 同 一 個 体 に 由 来 す る 脂 肪 組 織 か らDFAT
お よ びASC
を 調 製 し た(n=4)
。2 ) CFU-F
コ ロ ニ ー 形 成 能P1
のDFAT
お よ びASC
の コ ロ ニ ー 形 成 能 を 評 価 す る た め に 、 細 胞 密 度50 cells/ 35-mm
培 養 皿 の 密 度 に 調 整 し 、CFU-F
培 養 液(NH CFU-F medium, Miltenyi Biotec)
で37ºC 5%CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー で14
日 間 培 養 し た 。 細 胞 は4%パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド で 固 定 後 、 メ タ ノ ー ル に 溶
解 し た0.5%
ク リ ス タ ル バ イ オ レ ッ ト で5
分 間 染 色 し た 。蒸 留 水 で2
回 洗 浄 し 、50
個 以 上 の 細 胞 か ら な る 細 胞 集 団 を コ ロ ニ ー と し て 計 測 し た 。3 )
細 胞 増 殖 ア ッ セ イP1
のDFAT
お よ びASC
細 胞 倍 加 時 間(PDT)
を 評 価 す る た め に 、1 x
10
4cells/ 35-mm
培 養 皿 の 密 度 で 細 胞 を 播 種 し 、2
日 お き に10
日 間 細 胞 数 を 計 測 し た 。 細 胞 倍 加 時 間 は 以 下 の 式 に し た が っ て 算 出 し た 。Nt:
計 測 時 の 細 胞 数 、N0:
播 種 し た 細 胞 数3 )
継 代 培 養 の た め の 培 養 条 件 検 討P1
のDFAT
お よ びASC 1 x 10
4個 を 高 グ ル コ ー ス(4.5 g/l)
ま た は 低 グ ル コ ー ス(1.0 g/l)
の10%FBS
添 加DMEM
、 ま た は 脂 肪 細 胞 用 培 養 液(CSTI303-MSC, Cell Science & Technology Institute, Miyagi, Japan)
で 継 代 培 養 し た 。ま た 、細 胞 を ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 (BD Bioscience) を 用 い て 継 代 培 養 を 行 い 、 細 胞 の 形 態 を 観 察 し た 。4 )
統 計デ ー タ は 平 均
±
標 準 偏 差 で 示 し た 。 統 計 学 的 解 析 は 解 析 ソ フ トSPSS 16.0
を 用 い て 行 っ た 。デ ー タ の 比 較 は 、Mann-Whitney U 検 定 を 用 い た 。P < 0.05
を 統 計 学 的 有 意 水 準 と し た 。3.
結 果1 ) CFU-F
ア ッ セ イDFAT
お よ びASC
はP1
の 時 点 で い ず れ もCFU-F
コ ロ ニ ー 形 成 能 を 示 し た 。DFAT
の コ ロ ニ ー 形 成 効 率(35.8 ± 4.4%)
は 、ASC (20.8 ± 5.2%)
よ り も 有 意 に 高 か っ た(P<0.05,
図2-1)。
2 )
増 殖 ア ッ セ イDFAT
お よ びASC
は 紡 錘 形 の 形 態 で あ り 非 常 に 類 似 し て お り 、10
日 後 に サ ブ コ ン フ ル エ ン ト に 達 し た(図 2-2)。P1
に お け るDFAT
お よ びASC
の 細 胞 倍 加 時 間 は 、 そ れ ぞ れ48 ± 9
時 間 お よ び50 ± 13
時 間 で あ り 、 両 者 に 有 意 な 差 は な か っ た(P=0.48,
図2-3)
。3 )
継 代 培 養 の た め の 条 件 検 討P1
のDFAT
お よ びASC
の 形 態 を 観 察 す る と 、継 代 培 養 の 経 過 に 伴 い 、 結 節 性 の 細 胞 凝 集 塊 を 形 成 し た 。 こ の 凝 集 は コ ン フ ル エ ン ト の 時 点 で 特 に 顕 著 と な り 、 接 着 性 を 失 い 培 養 皿 か ら 剥 離 し た 。 ま た 、 低 グ ル コ ー スDMEM
ま た は 脂 肪 細 胞 用 培 養 液(CSTI303-MSC)
を 用 い た!"#$ #%&
図
2-1. P1
に お け るDFAT
お よ びASC
のCFU-F
コ ロ ニ ー 形 成 能 の 比 較 。DFAT お よ びASC
を50 cells/ 35-mm
培 養 皿 の 密 度 で 培 養 し 、21 日 後 に 形 成 さ れ た 代 表 的 な コ ロ ニ ー(
上 段)
お よ び コ ロ ニ ー 数 の 定 量 評 価(
下 段,
平 均±
標 準 偏 差)
。Scale bar: 1 mm
。*: P < 0.05
。図
2-2. P1
に お け るDFAT
お よ びASC
の 代 表 的 な 細 胞 形 態 。1 x 10
4/
35-mm
培 養 皿 の 細 胞 密 度 で 播 種 後 、2
、6
、 お よ び10
日 目 の 位 相 差 顕 微 鏡 像 。Scale bar: 100 µ m
。図
2-3. P1
に お け るDFAT
お よ びASC
の 増 殖 曲 線 。1 x 103/cm
2の 細 胞 密 度 で 播 種 後 、10
日 ま で2
日 お き に 細 胞 数 を 計 測(
平 均±
標 準 偏 差)
。図
2-4. P1
のDFAT
を 通 常 の 培 養 皿 お よ び ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 に 播 種 し た 後 、11
お よ び14
日 目 の 細 胞 形 態 。 培 養 経 過 に 伴 い 形 成 さ れ た 細 胞 凝 集 塊(矢 印 )
の 位 相 差 顕 微 鏡 像 。Scale bar: 100 µm。
4.
考 察CFU-F
ア ッ セ イ は 低 密 度 に 細 胞 を 播 種 し 、ク ロ ー ン 増 殖 に よ る コ ロ ニ ー 形 成 能 を 有 す る 細 胞 を 検 出 す る 。 本 研 究 で はP1
に お け るDFAT
お よ びASC
を 低 密 度 に 培 養 し 、コ ロ ニ ー 形 成 能 を 比 較 し た 結 果 、DFAT
に お い て 形 成 さ れ た コ ロ ニ ー 数 はASC
の 約2
倍 で あ っ た 。P1
に お け るASC
のCFU-F
コ ロ ニ ー 形 成 効 率 は ヒ トASC
に お け る 過 去 の 報 告 の 結 果(12.5%)
に ほ ぼ 一 致 し て い た(McIntosh et al., 2006)
。こ れ ら の 結 果 よ り 、DFAT
はASC
に 比 較 し て 自 己 複 製 能 を 有 す る 未 分 化 な 細 胞 を 多 く 含 ん で い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、本 研 究 に お い て 、ネ コDFAT
の 増 殖 活 性 はASC
と 同 等 で あ り 、 細 胞 倍 加 時 間 の 平 均 は48
~50
時 間 で あ っ た 。こ の 結 果 は 、そ れ ぞ れ ヒ ト 、ラ ッ ト 、お よ び ウ サ ギ のDFAT (Matsumoto et al., 2008; Sakuma et al., 2009; Kikuta et al., 2013)
、 な ら び に ヒ ト 、 ウ マ 、 お よ び イ ヌ のASC
の 結 果 と 同 程 度 で あ っ た(Vidal et al., 2007; Izadpanah et al., 2008;
Spencer et al., 2012)。
ネ コ 脂 肪 組 織 か ら 調 製 し たDFAT
お よ びASC
か ら 細 胞 治 療 に 必 要 な 細 胞 数 を 得 る た め に は 継 代 培 養 に よ る 細 胞 増 幅 が 必 要 で あ る 。 両 細 胞 と も 継 代 培 養 に 伴 い 細 胞 密 度 が 高 く な る と 、 細 胞 同 士 が 凝 集 し 、 剥 離Ohta et al., 2008; Jumabay et al., 2009)
、 動 物 種 特 異 的 な 現 象 で あ る と 考 え ら れ た 。 培 養 液 お よ び 培 養 皿 の コ ー テ ィ ン グ 基 質 を 検 討 し た 結 果 、 ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 を 用 い た 場 合 に 、 細 胞 凝 集 塊 は 形 成 さ れ ず 、14
日 以 上 の 単 層 培 養 が 可 能 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。Neupane
ら は 、 イ ヌ のASC
を ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 に て 培 養 す る こ と で 骨 分 化 誘 導 す る 際 に 起 こ る 細 胞 凝 集 を 回 避 で き る こ と を 報 告 し て い る(Neupane et al., 2008)。 ラ ミ ニ ン は 基 底 膜 を 構 成 す る 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス の 一 つ
で あ り 、3
種 類 の サ ブ ユ ニ ッ ト 鎖 の 組 み 合 わ せ に よ り 、16 種 類 の ア イ ソ フ ォ ー ム が 同 定 さ れ て い る(Ekblom et al., 2003; Scheele et al., 2007;
Tzu and Marinkovich, 2008)
。 本 研 究 に 用 い た ラ ミ ニ ン1
は イ ン テ グ リ ン を 介 し て 、 細 胞 接 着 お よ び 生 存 を 強 化 す る ホ ス フ ァ チ ジ ル イ ノ シ ト ー ル3-キ ナ ー ゼ (PI3k) /Akt
シ グ ナ ル 経 路 を 活 性 化 す る こ と が 知 ら れ て い る(Gu et al., 2002; Ekblom et al., 2003; Gu et al., 2003)
。し た が っ て 、 ラ ミ ニ ン がPI3k/Akt
シ グ ナ ル 経 路 を 介 し て ネ コDFAT
お よ びASC
の 接 着 を 強 化 す る こ と に よ り 、 細 胞 凝 集 を 抑 制 し 、 単 層 培 養 の 維 持 に 寄 与 し た 可 能 性 が あ る 。以 上 の よ う に 、ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 は 、DFAT
お よ びASC
の 接 着 を 強 化 し 、長 期 的 な 継 代 培 養 を 可 能 と す る た め に 有 効 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。5.
小 括 ネ コDFAT
はASC
に 比 較 し て 自 己 複 製 能 を も つ 未 分 化 な 細 胞 を 多 く 含 ん で い る こ と が 示 唆 さ れ た 。DFAT
お よ びASC
は 同 程 度 の 高 い 増 殖 能 を 示 し た が 、 長 期 の 継 代 培 養 を 行 う た め に は 足 場 と し て ラ ミ ニ ン が 必 要 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。第
3
章脱 分 化 脂 肪 細 胞 お よ び 脂 肪 由 来 幹 細 胞 の 多 分 化 能 の 評 価
1.
緒 言 第1
章 に お い て ネ コ の 成 熟 脂 肪 細 胞 か ら 調 製 し たDFAT
がASC
と 同 様 の 細 胞 表 面 抗 原 を 発 現 し て い る こ と を 明 ら か に し 、 第2
章 に お い て は 高 い 自 己 複 製 能 お よ び 増 殖 活 性 を 有 す る こ と を 明 ら か に し た 。 多 分 化 能 は 、MSC の 重 要 な 特 徴 の 一 つ で あ る 。ASC
はin vitro
に お い て 適 切 な 分 化 誘 導 刺 激 に よ っ て 、 脂 肪 細 胞 、 軟 骨 細 胞 、 骨 芽 細 胞 へ と 分 化 す る 。 本 研 究 の 目 的 は 、DFAT
お よ びASC
が 多 分 化 能 を 有 す る こ と を 評 価 す る こ と で あ る 。 多 分 化 能 の 評 価 に は 、 脂 肪 、 軟 骨 、 お よ び 骨 に 加 え て 、 平 滑 筋 細 胞 へ の 分 化 誘 導 を 行 っ た 。2.
材 料 と 方 法1 )
脂 肪 分 化 誘 導10%FBS
添 加DMEM
を 基 礎 培 地 と し て 、1 µ M
デ キ サ メ タ ゾ ン(Sigma-Aldrich)
、0.5 mM 3-Isobutyl-L-methylxanthine (IBMX, Sigma-Aldrich)、 0.5% Insulin-Transferin-Selenium-X (Invitrogen)を 添 加
し た も の を 脂 肪 分 化 誘 導 培 地 と し て 用 い た 。DFAT
お よ びASC
は 基 礎 培 地 を 用 い て ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 上 で コ ン フ ル エ ン ト ま で 培 養 し 、 脂 肪 分 化 誘 導 培 地 に て37˚C 5%CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー で4
日 間 培 養 し た 。4
日 以 降 は 基 礎 培 地 に1 µ M
デ キ サ メ タ ゾ ン を 添 加 し た 培 地 に 変 更 し 、3 日 ご と に 培 地 交 換 し て14
日 目 ま で 培 養 し た 。コ ン ト ロ ー ル と し て 、 ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 上 で コ ン フ ル エ ン ト に な っ た 細 胞 を 基 礎 培 地 で 同 期 間 培 養 し た 。14
日 後 に 脂 肪 滴 を 検 出 す る た め にOil Red O
染 色 を 行 っ た 。 培 地 が 入 っ た ま ま の 培 養 皿 に 培 地 と 同 量 の4%パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド を 加 え 、
10
分 間 前 固 定 し た 。 固 定 液 を 捨 て 、 さ ら に4%パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド
に て1
時 間 固 定 し た 。Oil Red O
を 溶 解 し た イ ソ プ ロ パ ノ ー ル 溶 液 と 純 水 を3:2 (v/v)
で 混 合 し て10
分 間 室 温 に 静 置 し 、 濾 過 し た 後 、 染 色 液 と し て 使 用 し た 。蒸 留 水 で 洗 浄 後 、上 記 染 色 液 に て20
分 間 染 色 し 、光2 )
軟 骨 分 化 誘 導 軟 骨 へ の 分 化 誘 導 は 、 ペ レ ッ ト 培 養 法 に て 行 っ た (Johnstone et al.,1998)。 P0
のDFAT
お よ びASC
を0.05% ト リ プ シ ン お よ び 0.48 mM EDTA
を 用 い て2 x 10
6cells/ml
に な る よ う に 細 胞 懸 濁 液 を 調 整 し た 。15 ml
チ ュ ー ブ に1 ml (2 x 10
6cells/ tube)
ず つ 分 注 し 、300 g
で3
分 間 遠 心 し た 。 上 清 を 除 去 し 、 市 販 の 軟 骨 分 化 誘 導 培 地(NH ChondroDiff medium, Miltenyi Biotec)
を 加 え 、 さ ら に500 g
で10
分 間 遠 心 し た 。 空 気 の 出 入 り が 可 能 に な る よ う に キ ャ ッ プ を 緩 め 、2 日 ご と に ペ レ ッ ト が 崩 れ な い よ う に 培 地 交 換 し た 。21
日 間 の ペ レ ッ ト 培 養 の 後 、 ペ レ ッ ト を4%
パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド に て1
時 間 固 定 し た 。実 体 顕 微 鏡(VB-7000, Keyence, Osaka, Japan)
に て 観 察 後 、5 µmの パ ラ フ ィ ン 切 片 を 作 製 し 、ヘ マ ト キ シ リ ン エ オ ジ ン 染 色 、 マ ッ ソ ン ト リ ク ロ ー ム 染 色 、 お よ び ト ル イ ジ ン ブ ル ー 染 色 を 行 っ た 。ま た 、2
型 コ ラ ー ゲ ン に 対 す る 免 疫 染 色 を 行 っ た 。免 疫 染 色 は 、0.2% Triton X-100
に て 膜 透 過 処 理 し 、 正 常 ヤ ギ 血 清 に よ り ブ ロ ッ キ ン グ し た 後 、ウ サ ギ 抗 ヒ ト2
型 コ ラ ー ゲ ン 抗 体 (1:500, Invitrogen) を4˚C
で 一 晩 イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 二 次 抗 体 と し てAlexa 594
標 識 ヤ ギ 抗 ウ サ ギIgG
抗 体 を 用 い て 染 色 し た 。Hoechst33342
で 核 染 色 し 、共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡(Olympus FluoView FV10i, Olympus)
に て 観 察 し た 。10 mM #-
グ リ セ ロ リ ン 酸 、お よ び50 µ M L-
ア ス コ ル ビ ン 酸 を 添 加 し た 培 地 を 骨 分 化 誘 導 培 地 と し た 。35-mm ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 を 用 い て コ ン フ ル エ ン ト ま で 培 養 し た 細 胞 を 骨 分 化 誘 導 培 地 に て21
日 間 培 養 し 、 細 胞 の 形 態 を 位 相 差 顕 微 鏡 に て 観 察 し た 。 培 地 交 換 は3
日 ご と に 行 っ た 。ま た 、DFAT
お よ びASC
を1 x 10
6cells/ml
の 密 度 の 細 胞 浮 遊 液 を 調 整 し 、100 µ L
を#-
カ ル シ ウ ム 三 リ ン 酸(#-TCP)/
コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ(5 x 5 x 2 mm, b-TCP
径 100~300 µ m;
乾 燥 重 量# -TCP: コ ラ
ー ゲ ン =10: 1, Olympus Terumo Biomaterials, Tokyo, Japan)
に 播 種 し 、 骨 分 化 誘 導 培 地 で37˚C 5%CO
2イ ン キ ュ ベ ー タ ー に て24
時 間 培 養 し た 。 基 礎 培 地 で 培 養 し た 細 胞 を コ ン ト ロ ー ル と し た 。3
~4
日 ご と に 培 地 交 換 し 、 同 時 に# -TCP/
コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ を 反 転 さ せ た 。21
日 間 の 培 養 後 、培 養 皿 に て 培 養 し た 細 胞 お よ び# -TCP
コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ を4%
パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド で1
時 間 固 定 し 、 純 水 に 溶 解 し た1% Alizarin Red S
に て 室 温 で3
分 間 染 色 し た 。検 体 は50%
エ タ ノ ー ル に て 脱 色 し 、 実 体 顕 微 鏡 に て 観 察 し た 後 、10 µm
厚 の パ ラ フ ィ ン 切 片 を 作 製 し 、 光 学 顕 微 鏡(Olympus BX50)
に て 観 察 し た 。4 )
平 滑 筋 細 胞 分 化 誘 導5%FBS
添 加DMEM
を 基 礎 培 地 と し て 、5 ng/ml TGF-#1 (R&D Systems,
Minneapolis, MN)
を 添 加 し た 培 地 を 平 滑 筋 細 胞 分 化 誘 導 培 地 と し た 。7
日 間 分 化 誘 導 し た 細 胞 は 、4%
パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド に て 固 定 し 、0.2% Triton X-100
で 膜 透 過 処 理 、正 常 ヤ ギ 血 清 で ブ ロ ッ キ ン グ し た 後 、 マ ウ ス 抗 ヒ ト! -SMA
抗 体 (1:200) を4˚C
で 一 晩 イ ン キ ュ ベ ー ト し 、二 次 抗 体 と し てAlexa 594
標 識 ヤ ギ 抗 マ ウ スIgG
抗 体(1:500)
を 用 い て 染 色 し た 。Hoechst33342
に よ り 核 染 色 し 、免 疫 蛍 光 顕 微 鏡(Eclipse TE
2000-U, Nikon)
を 用 い て 観 察 し た 。3.
結 果1 )
脂 肪 分 化 誘 導 脂 肪 分 化 誘 導 培 地 に て 培 養 し た 細 胞 の 一 部 は 、7
日 目 ご ろ か ら 細 胞 質 内 に 小 滴 が 出 現 し た 。 こ の 小 滴 はOil Red O
染 色 に よ り 赤 色 に 染 色 さ れ 、 中 性 脂 肪 を 主 体 と す る 脂 肪 滴 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 培 養 期 間 の 経 過 に 伴 っ て 、 細 胞 質 内 に 脂 肪 滴 を 含 む 細 胞 お よ び 脂 肪 滴 の サ イ ズ が 大 き く な る 様 子 が 観 察 さ れ た(
図3-1,
分 化 誘 導 あ り)
。 コ ン ト ロ ー ル と し て 基 礎 培 地 で 培 養 し た 細 胞 で は 、 脂 肪 滴 の 存 在 は 認 め ら れ な か っ た(図 3-1,
分 化 誘 導 な し)。2 )
軟 骨 分 化 誘 導 軟 骨 分 化 誘 導 培 地 で21
日 間 ペ レ ッ ト 培 養 し た チ ュ ー ブ 内 に 白 色 の 細 胞 ペ レ ッ ト が 形 成 さ れ た 。 こ の ペ レ ッ ト は 直 径1 mm
程 度 で 、 表 面 は 滑 ら か で あ っ た (図3-2)。 2
型 コ ラ ー ゲ ン の 免 疫 染 色 に よ り 、 ペ レ ッ ト の 一 部 が 陽 性 を 示 し た 。 ま た 、 ト ル イ ジ ン ブ ル ー 染 色 に よ り ペ レ ッ ト 組 織 の 一 部 が 硝 子 軟 骨 の 特 徴 的 所 見 で あ る 紫 色 の 異 染 性 を 示 し た 。3 )
骨 分 化 誘 導細 胞 を
#-TCP/
コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ に 播 種 し 、 骨 分 化 誘 導 し たDFAT
お よ びASC
で は 、 カ ル シ ウ ム 沈 着 を 検 出 す るAlizarin Red S
染 色 に よ り ス ポ ン ジ の 表 面 が 強 く 赤 色 を 示 し 、 さ ら に 内 部 で は# -TCP
の 周 囲 に カ ル シ ウ ム 沈 着 が 観 察 さ れ た(
図3-3,
分 化 誘 導 あ り)
。 基 礎 培 地 で 同 期 間 培 養 し た コ ン ト ロ ー ル で は 、Alizarin Red S
に 陰 性 で あ っ た(
図3-3,
分 化 誘 導 な し)
。4 )
平 滑 筋 分 化 誘 導 平 滑 筋 細 胞 分 化 誘 導 培 地 に て7
日 間 培 養 す る と 、DFAT
お よ びASC
と も に50%
以 上 の 細 胞 が 平 滑 筋 マ ー カ ー で あ る! -SMA
陽 性 を 示 し た(図 3-4,
分 化 誘 導 後)。 ASC
の 一 部 の 細 胞 は 分 化 誘 導 前 か ら! -SMA
陽 性 を 示 し 、血 管 平 滑 筋 細 胞 の 混 入 が 示 唆 さ れ た (図3-4,
分 化 誘 導 前)。
図
3-1. DFAT
お よ びASC
の 脂 肪 分 化 能 の 評 価(Oil Red O
染 色)
。 基 礎 培 地(
誘 導 な し)
お よ び 脂 肪 分 化 誘 導 培 地(
誘 導 あ り)
に て 培 養 し た14
日 目 の 位 相 差 顕 微 鏡 像 。Scale bar: 100 µm。
図
3-2. DFAT
お よ びASC
の 軟 骨 分 化 能 の 評 価 。軟 骨 分 化 誘 導 培 地 に て14
日 間 の ペ レ ッ ト 培 養 後 に 形 成 さ れ た ペ レ ッ ト(
上 段 左)
お よ び の ペ レ ッ ト 内 部 の2
型 コ ラ ー ゲ ン(Col II)
免 疫 染 色 後 の 蛍 光 顕 微 鏡 像(上
段 右)。 ヘ マ ト キ シ リ ン エ オ ジ ン 染 色 (HE)、 マ ッ ソ ン ト リ ク ロ ー ム 染
色(MT)
、 お よ び ト ル イ ジ ン ブ ル ー 染 色(TB)
後 の 光 学 顕 微 鏡 像(
下 段)
。Scale bar: 200 µm
。!"#$
#%&
&'()**+,'-./01
!"#$
%& '$ $(
図
3-3. DFAT
お よ びASC
の 骨 分 化 能 の 評 価(Alizarin Red S
染 色)
。 基 礎 培 地 お よ び 骨 分 化 誘 導 培 地 に て 培 養21
日 後 の#-TCP/
コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ の 表 面 の 実 体 顕 微 鏡 像 、お よ び 内 部 の 光 学 顕 微 鏡 像 。Scale bar:
200 µ m。
図
3-4. DFAT
お よ びASC
の 平 滑 筋 細 胞 分 化 能 の 評 価( ! -SMA
免 疫 染 色)。分 化 誘 導 前 お よ び 誘 導 後 に お け る 蛍 光 顕 微 鏡 像 。 Scale bar: 100 µ m。
4.
考 察 本 章 で は 、 間 葉 系 幹 細 胞 の 特 性 の 一 つ で あ る 多 分 化 能 を 評 価 し た 。Matsumoto
ら の 報 告(Matsumoto et al., 2008)
と 同 様 にDFAT
お よ びASC
は 、そ れ ぞ れ の 分 化 誘 導 刺 激 に よ り 脂 肪 、軟 骨 、骨 、お よ び 平 滑 筋 細 胞 に 分 化 す る 能 力 を 有 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 デ キ サ メ タ ゾ ン 、 イ ン ス リ ン 、IBMX
を 添 加 し た 脂 肪 分 化 誘 導 法 に よ り(Scott et al., 2011)
、ネ コDFAT
の 脂 肪 分 化 能 が 証 明 さ れ た 。デ キ サ メ タ ゾ ン は イ ン ス リ ン と の 相 互 作 用 に よ り グ ル コ コ ル チ コ イ ド 受 容 体 を 刺 激 し 、MSC の 様 々 な 細 胞 系 列 へ の 分 化 を 誘 導 す る(Grigoriadis et al., 1988)。 ま た 、 IBMX
は デ キ サ メ タ ゾ ン と と も にPPAR "
の 発 現 を 誘 導 す る(Kim et al., 2010; Gurriaran-Rodriguez et al., 2011)
。 誘 導 さ れ た 脂 肪 細 胞 の 分 化 度 を 明 ら か に す る た め に 、 分 子 マ ー カ ー の 発 現 解 析 や 機 能 試 験 を 行 う 必 要 が あ る 。 ペ レ ッ ト 培 養 に よ り 、表 面 の 滑 ら か な 軟 骨 様 の 細 胞 塊 が 形 成 さ れ た 。 ペ レ ッ ト 内 部 は 細 胞 外 マ ト リ ッ ク ス に 富 み 、 硝 子 軟 骨 マ ー カ ー で あ る2
型 コ ラ ー ゲ ン 陽 性 お よ び ト ル イ ジ ン ブ ル ー 染 色 に て 紫 色 の 異 染 性 を 示 す 像 が 認 め ら れ た 。 一 方 、 こ の よ う な 硝 子 軟 骨 に 特 徴 的 な 染 色 像 は ペ レ ッ ト 表 層 近 く の み に 認 め ら れ 、 大 部 分 は 未 熟 な 軟 骨 組 織 で あ る こ誘 導 法 を 開 発 す る 必 要 が あ る
(Wakitani et al., 1994; Matsumoto et al., 2010)。
ネ コDFAT
お よ びASC
は 細 胞 足 場 と し て#-TCP/
コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ を 用 い る こ と で 骨 分 化 能 を 示 し た 。 デ キ サ メ タ ゾ ン は 骨 分 化 の 重 要 な 調 節 因 子 で あ るRunt-related transcription factor 2 (Runx2)
、Osterix (Osx)
、 お よ びBone morphogenetic protein (BMP)
の 発 現 を 促 進 し 、ALP
活 性 を 上 昇 さ せ る 。#-グ リ セ ロ リ ン 酸 お よ び L-ア ス コ ル ビ ン 酸 は 、骨 基 質 で
あ る1
型 コ ラ ー ゲ ン の 産 生 を 促 進 し 、 カ ル シ ウ ム 沈 着 に 関 与 す る 。 ヒ ト や ブ タ のDFAT
は コ ン フ ル エ ン ト の 段 階 で 骨 分 化 誘 導 を 開 始 す る 標 準 的 な 方 法 で カ ル シ ウ ム の 沈 着 を 認 め る 骨 芽 細 胞 へ 分 化 さ せ る こ と が 可 能 で あ る (Matsumoto et al., 2008)。 第2
章 に お い て ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 を 用 い る こ と で コ ン フ ル エ ン ト に 達 し た 後 に 単 層 培 養 を 維 持 す る こ と が 可 能 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 し か し な が ら 、 ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 を 用 い た と し て も 、 骨 分 化 誘 導 に よ り 細 胞 は 凝 集 塊 を 形 成 し 、 デ ィ ッ シ ュ 表 面 か ら 剥 離 し た 。 近 年 の 組 織 工 学 の 進 歩 に よ り 、 細 胞 の 支 持 体 と し て の 役 割 を 果 た し 、 増 殖 お よ び 分 化 を 促 進 す る ス キ ャ ホ ー ル ド が 注 目 さ れ て い る(Liu et al., 2008; Matsushima et al., 2009)
。#-TCP
コ ラ ー ゲ ン ス ポ ン ジ を ス キ ャ ホ ー ル ド と し た 骨 分 化 誘 導 に よ りし て コ ラ ー ゲ ン マ ト リ ッ ク ス の 存 在 が 重 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。
本 研 究 に お い て 、ネ コDFAT
は#GF- # 1
を 添 加 し た 培 養 に よ り! -SMA
陽 性 の 平 滑 筋 細 胞 へ の 分 化 能 を 有 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 間 葉 系 幹 細 胞 は 平 滑 筋 細 胞 へ の 分 化 能 を も つ こ と が 知 ら れ て い る(Kinner et
al., 2002; Gong and Niklason, 2008; Kurpinski et al., 2010)
。#GF-#1
はMSC
の 平 滑 筋 細 胞 へ の 分 化 を 誘 導 す る 重 要 な サ イ ト カ イ ン で あ る 。Smad2
ま た はSmad3
をsmall interfering RNA
導 入 に よ り ノ ッ ク ダ ウ ン さ せ る と!-SMA
の 発 現 が 低 下 す る こ と か ら 、TGF-#1
に よ る 平 滑 筋 細 胞 へ の 分 化 誘 導 に はSmad2
お よ びSmad3
の 活 性 化 が 関 与 し て い る 可 能 性 が 考 え ら れ て い る(Chen and Lechleider, 2004)
。血 管 平 滑 筋 細 胞 は 血 管 の 重 要 な 構 成 成 分 の 一 つ で あ り 、 血 管 の 収 縮 弛 緩 の 生 理 的 な 機 能 や 血 圧 お よ び 血 流 分 布 を 司 っ て い る 。 虚 血 部 位 に 注 入 さ れ たMSC
の 一 部 は 血 管 平 滑 筋 細 胞 に 分 化 し 、 脈 管 形 成 に 寄 与 し た と す る 報 告 が あ る(Gojo et al., 2003; Yoon et al., 2005)
。DFAT
も ま た 、 平 滑 筋 細 胞 の 細 胞 系 列 に 分 化 す る 可 能 性 が あ る 。 ヒ ト お よ び ラ ッ ト に お い てDFAT
が 、 平 滑 筋 細 胞 分 化 誘 導 に よ り! -SMA, Calponin
な ど の 平 滑 筋 特 有 の マ ー カ ー を 発 現 し 、 膀 胱 平 滑 筋 や 尿 道 平 滑 筋 の 再 生 に 寄 与 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る(Sakuma et al., 2009; Obinata et al., 2011)
。 今 後 、 ネ コDFAT
のin vivo
に お け る 平 滑 筋 細 胞 へ の 分 化 能 お よ び 平 滑 筋 組 織 の 再 生 能 を 検 討 す る 必 要 が あ る 。小 括
ネ コDFAT
お よ びASC
は 、分 化 誘 導 刺 激 に よ っ て 脂 肪 細 胞 、軟 骨 細 胞 、 骨 芽 細 胞 、 お よ び 平 滑 筋 細 胞 に 分 化 す る 多 分 化 能 を 有 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。総 括
1 g
未 満 の 脂 肪 組 織 か ら 成 熟 脂 肪 細 胞 を 単 離 し 、天 井 培 養 す る こ と で 線 維 芽 細 胞 様 のDFAT
を 調 製 す る こ と に 成 功 し た 。 こ のDFAT
は 、ASC
と 同 様 にMSC
に 共 通 す る 細 胞 表 面 抗 原 を 発 現 し 、 高 い 増 殖 活 性 を 示 し た 。 ネ コ のDFAT
お よ びASC
は 、 継 代 培 養 後 に 細 胞 密 度 が 高 く な る に つ れ て 細 胞 凝 集 塊 を 形 成 し 、 剥 離 に 至 る 傾 向 が 認 め ら れ た が 、 ラ ミ ニ ン コ ー ト 培 養 皿 に よ り 凝 集 形 成 が 抑 制 さ れ 、 継 代 培 養 の 維 持 が 可 能 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 さ ら にDFAT
はASC
と 同 様 に 脂 肪 、軟 骨 、骨 、平 滑 筋 細 胞 と い っ た 間 葉 系 の 細 胞 系 列 へ の 多 分 化 能 を 有 し て い る こ と が 証 明 さ れ た 。 再 生 医 療 に 用 い る 細 胞 と し て 、DFAT
に は3
つ の 有 利 な 点 が あ る 。 第 一 に 、DFAT
は 均 質 な 細 胞 集 団 で あ る 。 本 研 究 に お い て 、ASC
は 初 代 培 養 か ら の 継 代 後 、 細 胞 集 団 に!-SMA
陽 性 細 胞 が 検 出 さ れ た が 、DFAT
に お い て は ほ と ん ど 検 出 さ れ な か っ た 。 ま た 、 本 研 究 か ら は 言 及 で き な い が 、培 養 さ れ たASC
の 細 胞 集 団 に は 血 管 内 皮 細 胞 が 継 代 後 も 除 去 さ れ ず に 残 存 す る こ と が 報 告 さ れ て い る(McIntosh et al., 2006;
Mitchell et al., 2006)。 こ の 理 由 と し て 、 骨 髄 MSC
やASC
は 不 均 質 な 細 胞 集 団 を 付 着 培 養 す る こ と で 得 ら れ る 細 胞 群 で あ る た め 他 細 胞 が 混 入 す る 可 能 性 が 高 い こ と が 考 え ら れ る(Clark and Keating, 1995; Zuk et
al., 2001)
。 一 方 、DFAT
は 浮 遊 す る 成 熟 脂 肪 細 胞 を 単 離 後 に 天 井 培 養い る 。
第 二 に 、DFAT は 極 め て 少 量 の 脂 肪 組 織 か ら 調 製 す る こ と が 可 能 で あ る 。Matsumoto
ら は 以 前 に 、5 x 10
4個 の 脂 肪 細 胞 、 つ ま り100 mg
に 相 当 す る 少 量 の 脂 肪 組 織 か ら 十 分 量 のDFAT
を 得 ら れ る こ と を 報 告 し て い る 。 ネ コ の よ う な 小 動 物 で は 、 得 ら れ る 組 織 量 も 少 な い た め 、 よ り 少 量 の 組 織 か ら 効 率 よ く 大 量 の 多 能 性 細 胞 を 調 製 す る 技 術 が 望 ま れ る 。DFAT
は 少 量 の 脂 肪 組 織 か ら 大 量 調 製 が 可 能 な た め 、 ネ コ の 自 家 移 植 を 用 い た 再 生 医 療 や 細 胞 治 療 の 細 胞 源 と し て 期 待 が も て る 。 第 三 に 、DFAT
は ド ナ ー 患 者 の 年 齢 に 関 係 な く 調 製 す る こ と が で き る 。 我 々 の グ ル ー プ は4
歳 か ら81
歳 の18
名 す べ て の 人 間 の ド ナ ー か らDFAT
を 調 製 し 、年 齢 に か か ら わ ず 多 分 化 能 を も つ こ と を 確 認 し て い る 。こ の よ う な 性 質 は 、様 々 な 年 齢 の 患 者 に 対 し てDFAT
の 自 家 移 植 を 可 能 に す る 。 本 研 究 に 供 し た 脂 肪 組 織 は す べ て 若 齢 の ネ コ か ら 採 取 し た も の で あ り 、高 齢 の ネ コ か ら 調 製 し たDFAT
に お い て も 特 性 を 評 価 す る 必 要 が あ る 。 骨 髄MSC
お よ びASC
は 免 疫 調 節 能 、 血 管 新 生 能 、 お よ び 抗 炎 症 作 用 を も ち 、 こ れ ら の 効 果 は 主 に 細 胞 に よ る 多 様 な サ イ ト カ イ ン の 分 泌 が 寄 与 し て い る(Keating, 2012)
。 近 年 、 ヒ トDFAT
が 骨 髄MSC
お よ びASC
と 類 似 し た サ イ ト カ イ ン の 分 泌 能 を 有 す る こ と が 明 ら か と な り 、 ネ コ に お い て も 検 証 す る 必 要 が あ る(Kikuta et al., 2013)。
ド ナ ー 年 齢 、 性 別 、 ま た は 採 取 方 法 や 部 位 が
MSC
の 数 お よ び 性 質 に 影 響 す る こ と が 報 告 さ れ て い る(Izadpanah et al., 2006; Schipper et al., 2008; Baglioni et al., 2009; de Girolamo et al., 2009; Siegel et al., 2013)。
ま た 、ネ コ に お け る
DFAT
に よ る 細 胞 治 療 を 行 う た め に 、生 体 へ の 移 植 実 験 に よ り 有 効 性 お よ び 安 全 性 を 評 価 す る 必 要 が あ る 。 本 研 究 に よ り 得 ら れ た 知 見 が 、 ネ コ に お け る 再 生 医 療 の 発 展 に 貢 献 す る こ と が 期 待 さ れ る 。謝 辞
稿 を 終 え る に あ た り 、 終 始 懇 篤 な る 御 指 導 を 賜 り ま し た 日 本 大 学 医 学 部 機 能 形 態 学 系 細 胞 再 生 移 植 医 学 分 野 松 本 太 郎 教 授 お よ び 同 生 物 資 源 科 学 部 獣 医 内 科 学 研 究 室 上 地 正 実 教 授 に 深 甚 な る 謝 意 を 表 し ま す 。 ま た 、 貴 重 な 御 助 言 お よ び 御 校 閲 を 賜 り ま し た 同 獣 医 生 化 学 研 究 室 杉 谷 博 士 教 授 、 お よ び 同 動 物 生 体 機 構 学 研 究 室 加 野 浩 一 郎 教 授 に 深 謝 致 し ま す 。 ま た 、 本 研 究 を 進 め る に あ た り 、 御 協 力 お よ び 御 助 言 頂 き ま し た 同 医 学 部 細 胞 再 生 移 植 医 学 分 野 風 間 智 彦 助 手 に 深 謝 致 し ま す 。 本 研 究 を 行 う 上 で 貴 重 な 実 験 材 料 を 快 く 提 供 し て 頂 き ま し た 同 生 物 資 源 科 学 部 獣 医 内 科 学 研 究 室 研 究 員 原 田 佳 代 子 先 生 に 深 謝 致 し ま す 。 日 々 多 忙 な 診 療 お よ び 研 究 活 動 の 中 、 甚 大 な る ご 協 力 を 惜 し ま れ な か っ た 同 医 学 部 小 児 科 学 分 野 風 間 美 奈 子 博 士 お よ び 同 医 学 部 細 胞 再 生 移 植 医 学 分 野 山 元 智 衣 博 士 に 深 謝 い た し ま す 。引 用 文 献