4 4 0 ‑ 弘 前 医 学 第 1 2 巻 第 3 号
酒精 中毒 治療 の予後 に関 す る研究
一 抗酒剤療 法 を中心 と して ‑
石 田 尚 正
I S
HI D A ‑ NA O M ASA
弘前大学医学部精神医学教室 ( 指導 和田豊治 教授) ( 2 6 .班.1 9 5 9 受付)
緒
言7ル コール性飲料 は古 代か ら人 顎 と共 にあ ら, これ に よる醒酌 はいつ も多 くの社会 問題 を起 して きた.そ して近年 ,酷酎時の犯罪や 覇酎運転の事 故等 が 目立 って きてお り' これ に関連 して, アル コール中毒者 の増加,そ し て特 に若年者 アル コール中毒の増加 の傾 向に は考 え させ られ る幾 多の問題が あろ う.
この よ うに アル コール性飲料 の摂 取 は,人 間生活 と深 い関係が あ るところか ら,それ に よって起 る身体的,殊 に精神機能 に及 ぼす影 響について,精神医学的立場か ら,主 と して 精神病理学的研究が古 くか ら多数 の研究者 に よって行 な わ れ て き た. ERNST RUDI N ,
1 )
KRAEPELI N,GyLS ,そ してわが 国で も中村, O ̲ i ) O ̲ 3 )
定利,三 田谷,平塚 ,加藤等の業績が ある.
しか し乍 ら, アル コール中毒 の治療 とい う 面で は極めて消 極的に 7ル コ‑ル中毒者 を専 門の精神病 院に収容 した上で禁酒す ることの みが,留 っての唯一 の治療 方法で あった. と 2 1 J 3 ころが 1 9 48 年 に HALD と JAcoBSEN が抗 酒 剤と して DI SULFI RA1 1 . 4( Ant abus e) を発見 し,臨床的に応用 したので, この領域 に もよ うや く化学療 法の時代が や って きた.か くて アル コール中毒 を抗酒 剤によって積 極的に治
4 : 5 ) 6 )
療 した幾 多の業績 もまた報告 さ れ る に至 っ ′ \ た.その上 ,1 9 53 年 に は FERGUSI ON が更 に
新抗酒 剤 として , CARBI MI DE の誘導体 で ある CI TRATED CALCI UM CAR B I MI DE ( C. C . C .
叉は Temposi l ) を発見 した.これ は Ant abuse 投 与で屡 々経験す る臨床的に好 ま しくない副 作 唱を除去す る目的の研究 の結果 と して発見 され た もので あるが, その臨床経験 について 7 ; 8 . 9 二 1 1 I L ) FERGUSI ON,BELL,ARMSTRONG ,和 田 等 の詳純な報告が ある.
ところで,それ らの薬剤治療 の諸報告は概 ね短 期間の治療 成績が主休 で あって,治療 後 の 年余 に亘 る実態調査に よる治療成績 は少 な い. したが って抗酒剤治療 の効果 を知 るには 不 充分な点が少 な くない.そ こで著者 は,過 去 3 年 間に治療 し得 た抗酒
剤治療 の予 後につ
いての精神医学的検討 を試みた.
なお,研究 対象 とな った被検者 の大 半は慢 性 7ル コール中毒者で あ るが, しか し中 には その状態 にまで達せず , ただ酒精噂癖 の故に 加療 を求 めた もの も見出 され るので,一 応酒 精噂帝者 が研究 対象で あると云 うのが妥 当で あろ う. しか しその殆ん どが広義 の 7ル コー ル中毒者 で あることは云 うまで もな い.
被検者及び調査方法
昭和 31 年 9 月よ り昭和 34 年 3 月に至 る間,
弘 前大学医学部 附属病院神経精神科 を訪 れ,
加療 され た無選択例 89 名につ いて,第 1 表 に
示 した如 きア ンケー トを出 したが, その うち
F 肝 I,
酒精中毒 治療 の予後 に関す る研究
調査資料の整 った45 名 を本研究 の 対 象 と し た.その内訳 は,入 院加療 3 3 名,外来治療 1 2 名か らな ってい る・年令は 1 8 才か ら 59 才 ( 辛 均年令は3 7 才)で,すべ て男性で あ る・
第 1 表 アンケート
Ⅰ その後 , 酒 は 1 ) 全然 のまない 2)( 年 月 日)か らのみは じめた.
Ⅱ またのみは じめた とすれば
A 1 ) 治療前 ほ どのまない 2) ほ とん ど変 りない 3) 余計 のむよ うにな った B 酒 の種類 1)洋酒 2) 清酒 3) 焼酎
4 ) その他
C 量 1 カ月平均 ( )回位 , 1 回 平均 ( )合,最高 ( ) 合 位 か Ⅲ 再 びのみは じめるよ うにな ったのは
1 )が まんで きな くて 2) 少 しな らいい と思 って 3 ) 人にすす め られて 4 ) やけ酒 で 5)その他
Ⅳ その後 の 日常生活 では
A 仕事 は 1 )ちゃん とや ってい る 2)な ん とかや ってい る 3) 全然 だ め B 人 に迷惑 をか け ることが 1 )ない
2) 時 々あ る 3) しば しばあ る C 家 庭の折 り合 いは 1 ) 良 い 2 ) あま り
よ くない 3) 悪 い
D 自殺 について 1 ) 考 えた事 がない 2) 考 えた事 が あ る 3) 決心 した事 が あ
る
Ⅴ 治療 の結果 としては 1 1 治療前 よ りよい 2) ほ とん ど変 りない 3) か えって悪 い
' 診断名別 にみ ると酒客 9 名,渇酒症 3名・
慢 性 アル コール中毒23 名,振戦 せん妄 3 名, アル コール幻覚症 3 名,痴呆状態 を主 とす る アル コール精神病 4 名で ある.
因みに,第 1 表 の アンケ ート Ⅰ・Ⅱ ・ Ⅲ は 治療 後の飲酒状況 ,Ⅳ は治療 後の社会復帰性 を調査 した もので, と くにⅣ の中の A は職務 に復帰 してい るか否か, B は対人 関係 の復帰 性, Cは家産への復帰性, D は自己に対す る 復帰性 をみた もので ある.
抗酒剤治療 の際 に行 われ る所謂試験飲酒 に 先立つ と こ ろ の抗酒剤 ( 即 ち Ant abus eや Tempos i l )の投 与法 は報告者 によ り異 るが , 我 々は Ant abus el日量0. 5 ‑1 . 0g を 3 分服で 1 週 間,一方 Tempos i lは衝撃投 与 を原則 と
‑ 4 4 1 した ( 即 ち試験飲酒 2 時間前 に 1 回だ け5 0‑
4 0 0 mg 投与す る)が ,なか には Ant abus eと 同様連 日投与 を試 み た も の も ある. また Ant abus eと Tempos i lとの併用が 5 例 ある.
抗 酒剤 の治療 実施 に先が げ,肝臓機能及 び 腎臓機能 を検査 ,禁断症状が消失 し,身体 的 に肝 ・腎の機能 に著 しい障害がない と看徹 し 得 た者 に抗 酒剤 を投与 した ことはい うまで も ない.なかには精神症状 の改善及 び禁断症 状 を除去す る為 に, トランキ ライザ ー等 による 諸療 法を施行 した もの も若干 ある.また,被 横列中 には肝臓庇叢剤 (メチオ ニン,グ ロソ サ ン,葡萄糖 , ビタ ミン剤等) による肝臓 障 害 の治療 と精神療 法 とのみを行 って,抗 酒剤 を使 岡しなか った1 4 例 も含まれ ているが,そ れ らの症例 は抗 酒 剤治療 例 と比較 対照 して調 査 した.
それ らの断酒療 法 に対す る効果 は,治療 後 の現状 を調査 において,殆ん ど完全 な禁酒 の 場 合のみを t t 寛解" と称 し,再 び飲酒 を試 み てはい るが,その量 や回数が以前に比 して激 減 し, 社会生活の円滑 な ものを t t 軽快" と し, 再飲酒後以前 と変 らぬ位 乃至 は増量 してい る
ものは t t 不変り と した.
なお,抗酒剤治療 例 にお ける飲酒試験時の 症状即 ち " 抗酒剤‑ アル コ‑ル反応"の効果 度 は第 2 表 に示す 如 くで あって,それ ぞれの 判定規準 に従 って総合判定 した.
調 査 成 績
治療 を受 けた45 例の中 ,寛解1 8 例 ( 407 0) , 軽快 1 2 例( 2 77 0) ,不変1 5 例 ( 337 0)で あった
( 第 3・4表参照)
1. 治療方法 と予後 の関係
本項 目にお ける成績 は第 3 表 に示 す通 りで
ある.即 ち抗酒剤以外 の治療 ( 即 ち肝 庇護剤
電撃療 法, トラソキ ライザー,精神療 法)の
みを行 った1 4 例では,寛解 は 6 例で43 7 0,餐
快 は 4 例 で約3 0 7 0 ,不変 も4 例 で約3 0 7 0 で あ
った. これ らの症例 は殆ん ど肝 ・腎機能異常
が改善 しなかった ものや,或 いは精神症状の
4 4 2
‑自 覚 症 状
石
第 2 表 抗 酒剤‑ アル コ‑ル 交芯J F n I 状
̲ ∴ ∴ ∴ ∴ ∴
L顕 画 顔 面 紅 潮 顔 面 紅 潮 発 汗,流 涙 唱 吐 他 覚 症 状 な し 硝 眼 結 膜 充 血 眼 結 膜 充 血 血 圧 下 確 血 圧 下 降
L 持 永
定 号 判
令
:・rj・.] 記
i E I
第 3 表 治療 別 にみた予後
l
予 後 、 寛 撃‑ 且 旦 . 香 .変 計 治 療 法 ‑ \、 、 i Z I ト 入院 外来㌧ J 入院 外来 入院 外来 肝 庇 護 剤 2≧2i2≧1 2・2・l l 丹 比 謹 剤 1 ,
, p̲̲ i , L 止 、 L L 1 1 電 撃 療 法
一 再甘 露 葡
トラソキ ライザ ー
Ant abus e Te mp
osilAnt abus e Te mp
osil計
予 後
2 9
三 十 (1 0 1 414 9日 ・1 015
1 8 1 2
.i 1 5 ( 4 0 %) ( 2 7 %)」( 3 3 %)
寛 活酒剤以外 表 , i 解 抗 酒 剤 使 用 軽 抗 酒剤以外 の
治 療
快 抗 酒 剤 使 用 不
抗 酒剤以外 の
治・ 療
変 抗 酒 剤 使 用
計
快 復が不良の為 に,抗酒剤治療 が出来 なか っ た ものであ る.抗酒剤治療 の 31 例に於 いては 寛解が 1 2 例で 約4 0 % ,軽快が 8 例で約Ii,不 変が 1 1 例で 3 5 7 0で あった.
2. 治療 法 と禁酒持続 期間 との関係 治療 後の完全禁酒持続 胡間は,最少 3 カ月 最 高 3 年間の経過追究結果で は第 4 表 に示す
よ うで あった.
即 ち ,4 5 別中 ,1 5 例は 1 年以上完全禁酒 を 保 ち, 又他の 1 6 例 は 3 カ月以上完全禁酒 を保持 している.ただ しその内の 5 例は,未 だ観察 期間が 6 カ月以 内で あ る.再発 ( 軽快 と不変) の 2 7例中 ,6 例が不 明で あるが , 期間の明瞭な
もの 2 1 名中で も大部分の 1 9 例 は 6 カ月以 内に 第 4 表 完 全 禁 酒 持 続 期 間
月
4 5 6 7 OO ど H .「且 2
年 期 間 計 ト 2 1 2 ‑3 不明
3
.2
3 1≧4 911.21 24 註 . ( ) は外来治療者
L l ・ 1‑ 告 ‑ ) 2 3
1 2( 1 ) 9
F (1 )! 4
酒精中毒治療の予後に関する研究 ‑ 4 4 3
;・)/
亡コ
再飲酒 を開始 してい る.特 に抗酒剤による治 療 を受 けた ものは,すべ て 1 カ月以上の禁酒 を障っていたのに反 し,抗 酒剤以外の治療 の みを受 けた ものでは 1カ月以 内に再発 して元 の飲酒量 に戻 った 3 例がみ られ る.
この結果か らみ ると,抗酒剤治療 が有効で あ り,その効果 は大部分の患者 に於 いて凡 そ 3 カ月の有効期間が保持 され るよ うであるし またほぼ 6 カ月以 内が再飲酒の危険性が多い と云 い得 よ う.
3・ 初診時の病名乃至 は状態像 と予後 冒頭で も述べ た通 り,本研究 の対象は酒精 堵癖者であるが,その大 半は酒精中毒である その細部にわた る状態像別の診断を主 と して 予 後を検討す ると第 5 表 の よ うで ある.即 ち
第 5 表 受診時診断乃至は状態像
̲ ̲ ̲ : ̲ : ̲ : ㍉ I ̲ ‑ ‑ ; ̲
忘喜 : ‑ : . ‥ 二 ‥ ∴ ∴ ∴‑ I ‑ : ‑ I
寛 解 軽 快 不 変 計 改善率
4 1 3 75% F 6 7%
酒客の 5 0 7 0 弱 を除 くと寛解 ・軽快 を合算 した 改善率 はいずれ も 7 0% 近辺であって大差がな い.従 って症状の重症度 と改善率 は強 ち平行 す るとは断 じ得ない.ただ渇酒症 は比較的改 善率が よいが, しか しこれ とて も観察期間が 長 びけば或いはまた改善率が低下す るか も知 れない.
以上の結果 は性格面の特徴を一応抜 いて述 べ た もので,その点か らみた結果 は改 めて一 括 して後述す る.
また,初診時の精神状態か ら予後 を検討す ると,その結果 は第 6 表の よ うで ある.
因みに精神状態像 としては,心気症 ・強迫 症等 の神経衰弱状態,抑 うつ ・不関等の滅動 状態,発揚 ・不安 ・不機嫌 ・衝動等の増動状 管,幻覚 ・妄想等 の幻覚妄想状態,錯乱 ・せ
ん妄 ・健忘等の錯乱状態,作話症 ・記憶力減 退 ・見 当識消失等 の記憶減退状態,痴呆 ・欠 陥等 の欠陥状態及び病的醒酎傾向な どが あげ られ る.
第 6 表 受診時精神症状
神 経 衰 弱 状 態 減 動 状 態 増 動 状 態 幻 覚 状 態 妄 想 状 態 錯 乱 状 態 記 憶 減 退 状 態 欠 陥 状 態 病 的 酪 酎 傾 向
そ の 他
3 4 4 5 3 2 4 6
762
094 6
175.
in12
132
313
1152 1 5 3 3 1 3 2 4
さて,第 6 表 に示 した如 く,初診時精神症 状では,増動状態が最 も多 く,幻覚状態,妄 想状態,病的酷酎傾 向,神経衰弱状態,滅動 状態,記憶減退状態の順 になっている.
ところで,それ らの症状 と予後 との関係 を み るに,記憶減退状態や欠陥状態 を有す る も のでは寛解例がない.滅動状態 を示す ものが 最 も寛解率が よ く,次 に病的醒酎傾向を有す る もの,幻覚状態 ・錯乱状態の ものが比較的 寛解率が よ くなってい る.
4. 遺 伝負因 と予後 との関係
遺伝負因については, 4 親等 内に大酒家 を 認 めた もの 1 4 例,病的離酎者 を認 めた もの 2 例 あ り,負因率 3 5 % であった. この 1 6 例中, 寛解 は 7例,軽快 は 4例,不変 は5 例である.
即 ち完全に禁酒 している ものは 7 例で,再飲 酒 した ものは 9 例 とい うことにな る. この結 果か らは遺伝負因を有す る ものは,必ず しも 予後不良で あるとは断 じ難 い.
5. 性格 と予後 との関係
l l )
精神病質については今 日 K. ScHNE I D E R
の分類が用い られ るので, この類型 に従 って
性格傾 向を検討 してみた.爆発性を有す る も
のが 1 8 例で最 も多 く,意志薄弱性が 1 7 例 ,自
信欠 乏性が 11 例 , 発揚性が 1 0 例 , 顕揚欲性及 び
叫4‑
気分不安定性が各 々 6 例であった.
第 7 表 性格面における特性
\
予 後 寛 解 軽 快 不
変T 三 堵 \\ 入院 外来 入院 外来 入院 外来 抑 う つ 性 . 3
!1 狂 信 性
罪 揚 欲 性 気 分不 安定性 爆 発 性 無 情 性 意 志 薄 弱 性 無 力 性
1‑日 2 'LJ
VJに ■ 1 mぷ
2 2
3 4
CU石
計
n山l
r山 つ̲
5 一‑
VJ に
笥 n VJ に 0 4 1 1 ハhU 6 8 1 7 4
これ らの性格類型 と予 後 との関係 を一括 し て示す と,第 7 表 の よ うである.即 ち寛解率 の最 もよか ったのは抑 うつ性 と無 力性 とで あ って,抑 うつ性 4 例中 3 例が,無 力性 4 例中 3 例が寛解 を示 していた. 自信欠 乏性 は 11 例 中豊解 7 例で,比較的良好な成績 を示 してい る. しか し発揚性 10 列 車 3 例,気分不安定性 6 列 申2 例 , 爆発性 1 8 例中 5 例 , 意志薄 弱性 1 7
例中 6 例に夫 々寛解 をみた とは云 え , 顕 揚 欲性の ものは 6 例申寛解 をみた ものが皆無 で あった.また外来治療 は入 院治療 よ り成績が 悪か った.特 に意志薄弱性性格の もので は一 人の寛解 列 もな く,従 って この類型 の もので は入院治療 が最 も望 ましい と云わな ければな らな い.
6. 環境状態及び症状程度 と予後 との関係 ここでい う環境状態 とは対象別 の環境 を評 価 した もので,第 8 表 の通 りで ある.酒類 に 緑が遠 く, 自 らのむのでなければ飲酒機会が 殆ん ど無 いと云 う環境で,且 つ固園に指導的 人物が存在す る場合を (+) と し,その何れ を も欠 く場合を ( 捕) と し,その何れかが 滞 っていない場合 を( +)とした.また第 9 表 の 対社会的症状程度 とは,飲酒 による障害 の強 さを示 した ものである.つま り病識 が あって 治す意志が あ り,社会的に も著 しい障害 を示 していない場合を (+),その うち社会的障害
田
をかな り来 た してい る場 合を ( +‡ ‑ ) , 病識が不 確実で治療 ‑の協 力性な く,且 つ社会 的障害 の著 明な場合 を ( 料) とした.
次 いでその成績 をみ ると,環境状態 に於 い ては ,(+)が 4 例 ,(+)が 2 8 例, ( 料)が
1 3 例で ある.対社会的症状程度 に於 いては, (+)が 7 例 ,(汁)が 2 0 例 ,( 料)が 1 8 例 と な ってい る.従 って これ らの対象例は,殆ん どすべ て重症 に懐 いてい ると云 うことが出来 よ う.それ らの条件 と予後成績 との関係 は夫 々第 8 表 ・第 9 表 の通 りで ある.
第 8 表 生活環境状態 i Z !
予 後 ]寛 解 軽 快 不 変
+ 1:3: !
計
ニ 1 2 1 6 3 3・ ;鳥 , 工 ;
第 9 蓑 受診時の対社会的症状の程寛 予 後 寛 解 .軽 快 不 変
症 状\ \ 、
程
度 \ \
+
≠山 =
入院 外来入 院 外来 入院 外来
2 8 EiJn
1 2 亡U
W Ll 訓UJ .I
計
先づ環境状態 に於 いては,予 後成績 とほほ 比 例 して環境状態 のよい ものほ ど寛解 率が高 くな ってい る.次 に対社会的症状程度 に於 い ては,環境状態 と同様に,症状程度 が軽度で あ る者 ほ ど寛解率が高 くな ってい る.
7. 受診迄 の飲酒期間 と予 後 との関係
われわれの被検 例 の飲酒 開始 L F令 は ,1 4 才
よ り 30 才で,平均 21 才で あった.飲酒開始 よ
り受診 乃至加療迄 の飲酒期 間は最少 3 年 よ り
最大 3 8 年間,平均 1 7 年間で あ り ,l l ‑2 0 年間
飲酒が最 も多い. この飲酒期間 と予後 との関
係 は第 1 0 表 に示す通 りで ある. 10 年以 内の例
で は,寛解が 2 例 ,軽快が 4 例 ,不変 が 4 例
飲 酒期間
寛 解
軽 快
不 変
l3
1
計
1i4
改 善 率 6 0 %
酒精 中毒拾秦の予後 に関 す る研 究
第 1 0 表 受 診 加 療 迄 の 飲 酒 期 間
2 1 ‑2 5 2 6 ‑ ‑3 0
4 4 5
2 : 3 1 一 ± ⁝ ︼ 3 3
i千 一 6 ︹ rl
で,改善率 は平均6 0% で あ る.1 1 年か ら2 0 g.
以内の例では,寛解 が 1 0 例,軽快 が 6 例,不 変が 9 例で,改善 率は平均6 4% で あ る. 21 軍 か ら 30 年以 内の例で は,寛解 が 4 例,軽快が 1 例,不変 は見 当 らな い.31 年か ら 40 年以 内 の例で は,寛解が 2 例,軽快が 1 例,不 変が 2 例で,改善率 は平均 60%で ある. この結果 か
らみ ると,飲酒 開始 よ り加療迄 の飲酒期 間の 短 い者 ほ ど予 後が良 好で あ るとは云 い難 い.
第 1 1 表 治療時 の年令
予 か
畢堅 寓 0 ‑2 9 j 3 0 ‑3 9 ・ 4 0 ‑4 95 0 ‑5 9
\ ■ ‡ l l
軽 2 6 2 2
餐 .; l l
.可 下
ー 一 ー
2 2
1 2 7 1 4 3 % 6 3 ヲ ∠ i8 3 0 4 7 1 % 因みに初診時 軍令 と予 後 との相関をみれ ば第 11 表 の如 くで ある.即 ち,2 9 才以 下 の 例 で は,寛解 が 1 例 ,軽快が 2 例,不変が 4 列で 改善率は平均43 7 0で あ る.3 0 才か ら3 9 才以内 の例で は,寛解 が 6 例,軽快が 6 例,不変が 7 例で,改善率 は平均63%で ある.4 0 才 か ら 49 才以 内の例 では,寛解 が 8例,軽快が 2例 不変が 2 例で,改善率は平均8 3 7 0であ る.5 0 才 か ら59 才以 内の例で は,寛解 が 3 例,軽快 が 2 例,不変が 2 例で , 改善率 は平均71 %で あ る. この結果 か らみ ると,初診時年令 の若 い者 ほ ど予 後が一般 に不良 に傾 いていると云 わな ければな らない.
l 2
1 1
2 ≒ 4 1 0 0% 6 0 %
]L 1 i
8. 試験 飲酒回数 と予後 との関係
抗 酒剤治療 群 にお ける試 験飲 酒 回数 と予後 との関係 は,第1 2 表 に示す如 く, 1 回のみの 試 験飲酒 でかな りの効果がみ られ る.即 ち 1
第 1 2 表 抗酒剤 治療例 にお け る試験飲酒 回数
\ ぞ 験監鼠 1 予後 \
解 快 変
計 4 1.1 3ix 2 1 1 2 4
回のみの試験飲酒 を行 った1 6 例申,寛解 は 6 例 ( 約407 0) ,軽快 は 5 例 ( 約30%) ,不変 は
5 例 ( 約3 07 0)で あった. 3 乃至 4 回の試 験 飲酒 を行 な った 7 例中,寛解 は 4 例 ( 約607 0) 軽快が 1 例,不変 は 2 例で あった. これ よ り 試 験飲酒 回数 は, 1回のみよ りも 3乃至 4回
も行 った万が ,予後 の点で良好な結果が得 ら れ るとい うことにな る.
9. 抗酒剤‑ アル コール更応度症状 と予後 との関係
第 1 3 表 は抗酒剤治療例 にお ける試験飲酒時 の抗酒剤‑ アル コール反応度 ( 第 2 表参照) と予後 との関係 をみた もので ある.
中等度 乃至 はそれ以上の反応 を示 した もの
の改善率 は70 7 0 以上で あ り,軽度反応者 の予
後は極 めて不良 であ る. したが って反応 の強
度 に比例 して予後 も良好 であ るとい う結果が
得 られ る.
4 46‑
第 1 3 表 抗 酒剤 ‑ アル コール反応度
試 験 酒
反 応 効 果 ‑ 1 ‑ 1
宗一首 「 I I T 11
改 善 率 0 % ! J 5 0 % t7 0 %
石
3) 2 2 71 . 4%
1 0. 再飲酒動機
第 1 4 表 は,治療 後禁酒が破れた ものに対 し ど うい う動機 か ら再飲酒す るに至 ったか を調 査 した結果で ある. この調査の中で最 も多か ったのは, 「少 しな らいい と思 って」 と云 う のが 1 8 例 (約 6 07 0) で あ りI 「我慢 出来な く て」が 5 例 ( 約 1 57 0) , 「人にすす め られ て」
が 4 例 ( 1 0 7 0 強) , 「や け酒で」が 2 例 ( 約 5 7 0),其の他が 2 例で あった.t t 少 しな らいい と思 って" とい うことの意 味には必ず し も意 志薄弱ばか りが関係す るとは云い得 ないか も 知れないが, しか しその因子が大 きい ことは 否 めない.又 「我慢出来な くて」 と回答 した 5 例 に共通 した性格傾 向は,意志薄弱性 ( 3 例) と発揚性 (2 例)で あった . 「人にすす め られ て」の 4 例 申, 3 例 が爆発性 ・意志薄 弱性の両傾向 を有 していた . 「や け酒で」の
2 例 は共 に発揚性の傾 向を有 していた.
l l . 社会復帰性
治療後患者 の生活が ど うな ってい るか とい う点か らみた予後 の調査成績 は,第 1 5 表 に示 第 1 4 表 再 飲
\飲 酒 動 機
‑ ‑ ‑ : ミ ー
軽 快
計
我 浸 出 来 な く て 少 し な ら し
田
第 1 5 表 社 会 復 暗 性 A 職務上
ち ゃ ん と や って い る
% # 1 1 2 (6) I
計 B 対 人的
6 6( ' 2 2 三 1
34し 85%) !
な ん とか
や っ て いる
2 (1) 5 8 ( 1 0 %)
嘉 も 譜 警 息 F l誓警警 宗 が な
い時 に あ る 寛 解 t 8( 5 ) 3 軽 快 ∃ 6( 2 ). 2( 2) 不 変 L 5 ( 2) 5 ( 2) 計 l 2 8( 67 %) ・ ・ 1 4( 3 3 %)
C 対家匪
家 庭の折 り 合 いは よい 寛 解
軽 快 不 変
計 D 対 自己
̲ ‑ l l ̲ ・ f / ̲ T ‑ t = 1
寛 解
軽 快
不 変
全 然 だ め
要 警譜 豊 l 雫 質 語
りよ く な い ∈ 悪 い
1 三 … 三三 1 1 . . 3 4 ( 80%)1 4( 1 0%) . 4( 1 0%) 自殺 につい :自殺 につし
il . jf ・ , ‑ ' . I[' 票 . t J : . = Fi L 予 ' ] : L I L . 11( 5 )
6( 3) 1 8( 2 ) 3
自殺 につい て決心 した 事 が あ る
計 ■ 3 5( 9 0 %) 4( 1 0 %) 註 ( ) は投 酒剤 以 外 の治療 を うけた もの
酒 動 機
他
2
( 6 %)
I r I ' r
l}
酒精 中毒治療 の予後 に関す る研究
す通 りで あった.即 ち碍務 に復帰 し,間違い な くやってい る ものは 85 7 0'家庭生活 も問題 な くよ くや ってい る もの は 80 7 0 で あ る.対 自 己 に関 して 「自殺 について考 えた こ と が な い」 と回答 した もの 90 7 0 で あ る.一般 に,職 務 上や対家庭乃至 は対 自己 に関す る復帰 性 は 良好 で あった と考 え られ る. しか し対人 的な ものに関 しては, 「ひ とに迷惑 をか け る こと がない」 と回答 した ものは,他 の もの よ り成 績 が劣 り ,6 7 7 0で あった. これ は対人 関係 の 復帰 が最 も困難 で あ ることの一端 を示 して い る.なお,再 発例 ( 軽快 と不変 )で はすべ て に於 いて適応失 敗が 多 くな ってい ることが 目 立つ.
症 例
上述 の よ うな綜舎成績 を得 た症例 の うちか ら若干例 を抜 き,その実 際 を詳述 し て み よ
う.即 ち次 の通 りで あ る.
症 例 1:38 才,鉱 山夫 .慢 性酒精 中毒 . 遺 伝負 因 :父が大酒 家 .
飲酒 歴 : 30 才時 の第 2 子 出生 以来 何 とな く 飲 酒 を欲 し,付合 い程度 の飲酒 か ら 2‑ 3 年 の うちに次 第 に毎 日晩酌 5 台程度 の む よ うに
‑ 4 4 7 な った. 3 6 才時 の夏 か ら手 指振戦 が現 われ た が , 今迄 5 台程度 の飲酒 は欠か した事 がない ・ 梯子酒 が大好 きで あ る.飲酒 後,時 に妻 に対
して暴行 す る事 はあ るが,特 別他人 に危害 を 加 え るとい う事 はなか った.昭和 3 3 年 9 月仕 事 上で上役 と飲酒 し暴れ ,注意 され た.その 頃 か ら朝 一杯 ひっか けてか ら仕事 に出 る事 が 多 くな った.又此 の頃 胃の具合 も悪 く,飲酒 す ると調 子 が よ くな るので ,益 々飲 酒す るよ うにな った. 血圧が高 いか らとよ く注意 され るのだが ,飲 みた くて仕様 がな い.現在迄特 別 もの忘れす るとか,幻覚 はな い.醇酎が ひ どか った翌 日に仕 事 を休 む事 が屡 々み られ て 来 た.
現在症 :性格 は明朗 ・多弁 ・社交 的 ・我俸 虚栄 ・気分 易変 ・易倦 ・意 志薄 弱で あ る.精 神身体症状 と して は,手 指振 戦 , 高血 圧症 1 90
‑11 0 mmHg を認 めた他 に異常 はない.肝臓 機能 正常 ,心電 図及 び脳波 も正常 .
試 験飲酒 :第 1 回 目 : Ant abus e l日量 0・ 5 g 7 日間,総量 3. 5 g 授 与 し, 8 日目に 2 級清酒
(7ル コール含量 1 57 0) を用 いて試験 飲 酒 を 行 な った.試 験飲 酒 時 の状態 は第 1 6 表( I )に 示 す 通 りで あ る.
第 1 6 表 (Ⅰ) 症例 Ⅰの第 1 回 目試験飲酒時所見
(分 ) ( C. C . ) ( mg/ dl )
I( mmHg)
■(/ 分) 臨 床 経 過
0! , 45 1 4 0 ‑ S OL 6 4
1 01 1 6 0 1 6 0 ‑ 9 0; 1 2 0 j警冨芸竺 ・ 漂 i讐 芸霊 感,脚 部席 動感
甘n
2
Hl 甘 n 3 4
6 0 終 了後 3 0 6 0
1 2 0 1 2 時 間 2 4 時間
2 8 0 1 2 0 ‑ 6 【 ‖ 1 45 号頭痛 ,全身動揺感,動 障 3 6 0I
48 0.
1
5 4 0;
終 7 t
: : o = . 5 ㍍ 1 0 5 40. ‑ 1 0
甘 n lt九 日1 4 4 9 〜 〜 〜T̲ nU O 3 00 9 1
7 9 5 6 3 6 2 00 4 4 ,l rl
1 2 0 1 1 5 1 2 0
6 8
2 升位 のんだ よ うだ 腹部不快圧迫感
全身のふ るえ,視野 がかすむ,胃が苦 しい
,堰 喉部灼熱 感
全身倦怠 ,苦悶
蒼 白な顔色 にて眠 って い る.
苦悶状
苦悶状軽減 ,頭痛
平常 に戻 ってい る
lf ̲∫LMh 量 ..̲ー︻̲ ⁝ ⁝ J=.. ノ ー ‑ .・⁝ L蔓 f一▼h‑I . .I ./ ・‑ 事 J T.1 、 「
4 4 8‑ 石
第 1 6 表 (Ⅱ) 同上第 2 回 目試験 時所 見
( 分 )) 1
4111 3 0 . ‑ 8 0 6 4
臨 床 経 過
1 0
2 0
終 了後
3 0
6 0
三 4 2 蓋蓋 貞
2 0 0
:1 1 0 ‑ 4 0 1 3 4 2 2 0
終 了 5 0. ‑ 0 1 1 2
6 0. ‑ 2 0 8 0 1 2 0 . ‑ 7 0 7 4
顔面紅潮 ,熱 感,呼吸促進 ,頭重感,全 身動揺 感 酒がにがい
1 升 位呑 んだ気分,胸部 圧迫感 頭痛 ,苦悶秩 ,噴気 ,呑 む気 しない
曜吐 3 回
苦悶状軽減 ,吐気 な し 殆 ん ど平常 に恢復
第 1 6 表 (Ⅲ) 同上,第 3 回 目試験 時所見
血 圧 泳
0 4 5 1 4 0 ・ ‑8 5
16 0
1
5 1 0 0 1 2 0・ ‑7 0 8 0 1 0
j1 40: 1 1 2 2 0
jl l
終 丁 針 6 0!
1 2 0
;去 2 4 芸冨 t
2 4 0 終 了 .
nU