● ACR 調査と大規模データの
効率的な活用について
本稿では、ACR を初めとする大規模アンケート データについて、あるターゲットを決めると自動的 に全問クロス集計を行い、そのターゲットの特徴に ついて統計量を用いて自動的に抽出するプログラム を紹介します。 ACR(Audience and Consumer Report)は、 メディア接触状況と消費・購買状況の両面を同一対 象者にアンケートをしています。数万件の質問項目 を持つ大規模な調査データとなっており、ターゲッ トの特徴を見る上で豊富な項目が測定されていま す。消費者とメディア接触両面をシングルソースで 見ることができるため、メディアプランニングなど 行う際のデータとして広く利用されています。 このような大規模調査を用いて、あるターゲット、 例えば「健康について強い関心を持っている」人に ついてどのような商品を利用しているのか、どのよ うなメディア接触をしているのかといった特徴を見 ることを考えます。この場合、仮説があれば集計ア プリ「ACR for Win II」を用いて項目を指定して集 計することで確かめられますが、データから仮説を 探したい、というニーズもあると思います。 そこで本稿では、興味のあるターゲットを設定し たら、自動的に全設問をクロスして特徴のある項目 順に並び替え、ターゲットの特徴を容易に把握でき るようなマーケティング支援を行う探索的データ分 析プログラムを紹介します。また、この考え方を応 用した商品間の共起関係分析をご紹介します。具体 的には、共起関係の高い(関係性のある)商品を見 つけ出し、さらにネットワーク図を用いて可視化し ます。商品間の関係性を視覚化することで、どの商 品とどの商品がよく一緒に利用されているのかと いった競合・補完関係をグラフィカルに把握するこ とが出来ます。● ターゲットの特徴を探索的に
把握する仕組みとは
ターゲットの特徴を把握するには、各項目のスコ ア(平均値)を見ることが一般的だと思います。特 徴を抽出するためには、①ターゲットのスコア順に 並び替える、②全体(あるいは比較するターゲット があれば比較ターゲット)とターゲットのスコア差 が大きい順に並び替える、などの方法が考えられま す。スコア差による比較は、非常にシンプルでわか りやすいですが、ターゲットのサンプル数によりス コア変動が大きくなるため、全体(あるいは比較ター ゲットの)スコアとの比較には注意が必要です。そ こで、本稿ではカイ二乗検定と残差スコアを用いて 特徴量の把握を行います。 カイ二乗統計量とは、あるデータ内での統計的な 偏りを表す指標であり、クロス集計表を用いた有意 writer ソリューション推進局 メディア・コミュニケーション事業推進部 猪狩 良介Ad activity support Project Part.2
ターゲット特徴理解のための探索的データ分析
~探索的ターゲット特徴理解と商品間の共起関係の可視化分析~
図 1 カイ二乗統計量を算出するクロス表イメージ (2 × 2) x11:商品 A・B 双方に 1(On した人)の人数 x10:商品 A のみ 1(On)、商品 B は 0(Off)の人数 x01:商品 B のみ 1(On)、商品 A は 0(Off)の人数 x00:商品 A・B 双方とも 0(Off)の人数商品B
1
0 計
商品A
1 x
11x
10n
1A0 x
01x
00n
0A計
n
B1n
B0n
性検定などに多く用いられています。クロス表を用 いて、カイ二乗統計量の考え方を説明します【図 1】。 ここで、カイ二乗等計量は、(1)式のように表 現できます。
=
∑
−
ij ij ijx
μ
μ
χ
2 2(
)
(1) なお、μijは理論上 xijが取りうる期待値であり、 例えば x11の期待値μ11についてはn
n
n
B1 1A 11×
=
μ
(2) と表現されます。 カイ二乗統計量は、クロス表全体が特徴的かを探 る統計量です。個別の各項目 x11について特徴があ るか否かは残差分析を行って確認します。個別の x11に関する調整済み残差は、下記のように表現さ れます。(
)
(
1
)(
1
)
1 1 11 11 11 11n
n
n
n
x
x
Z
A B−
−
−
=
μ
μ
(3) ここで、調整済み残差 Z(x11)は大標本の下で 標準正規分布に従うことから、馴染み深い統計量と 考えることができます。調整済み残差のスコアの大 きい順に項目を並び替えることで、そのターゲット の特徴を見ることが可能です。分析 1
探索的ターゲット特徴理解
2012 年度 ACR データを用いて本手法の実デー タ解析事例を示します。なお、エリアは東京 30km 圏内とし、対象とするターゲットは「欲求 商品:電子書籍専用端末」とします。電子書籍専用 端 末 は、2012 年 に Amazon の Kindle や 楽 天 kobo、電子書籍ストア BookLive! などが新商品を 発売するなど、今後成長が期待されるカテゴリーで す。なお、今回の分析は 2012 年度調査データに なりますので、2012 年末に発売された Kindle な どは対象となっていない点にはご注意下さい。 < データ概要 > ・データ:ACR2012 ・エリア:東京 30km 圏内 ・分析項目:ACR 全項目 ・ 基準ターゲット:欲求商品(個人型) 電子書籍専用端末 < 分析結果 > 分析に際しては、単一回答設問(SA)と複数回 答設問(MA)の全ての項目を 1-0 データに変換し て全問クロス集計を行いました。調査項目約 26000 項目のうち、「欲求商品:電子書籍専用端末」 について、有意水準 1%でプラスの特徴が見られた ものは 2434 項目見受けられました。【表 1】に、 全項目を設定したターゲットとクロス集計した結 果、残差分析により関係性の高い項目トップ 10 を 示します。今回トップ 10 は全て商品(欲求・意識) となっており、特に「欲求商品:タブレット端末」 が最も高いスコアとなっています。次いで「欲求商 品:電子辞書」となっており、基準ターゲットは電 子機器が好きな人たちだと伺えます。なお、表 1 には併せて基準ターゲットのスコアと全体のスコ ア、基準ターゲットと全体のスコア差も掲載してい ます。これを見て解るように、特徴の順が必ずしも スコア差の順番とはなっていません。これは前述の ように、ターゲットスコアのサンプル数によりスコ ア変動が大きくなってしまうことが原因と考えられ ます。カイ二乗統計量や残差スコアはサンプル数の 影響も加味した上で特徴量が算出されます。 全問クロスした結果は、各ジャンル(例えばフェー ス項目や意識項目、商品項目)が混在しているため、 解釈には整理が必要です。そこで、「意識」と「雑誌」 について抽出し、それぞれフィルター機能を用いて ピックアップしたものを示します(「不明」は除き ます)。このように、全設問をクロス集計し、特徴 順に並び替えた後で、興味のある項目のみを任意に 抽出することが出来る点も本手法の利点と言えます。 抽出した「意識」項目については、「スキルアッ プのために、専門的に勉強したい」が最も高く、3 位は「インターネットで広告をよく見る方だ」、続 いて「テレビの海外報道に関心がある」となってお り、基準ターゲットは情報感度が高い人であること が伺えます【表 2】。 また、雑誌項目については「1 号閲読」のみをフィ ルターし、トップ 10 を抽出しました。最も高いの は「アスキー . PC」で、「日経パソコン」「日経 PC21」「日経 PC ビギナーズ」と続いており、い ずれもパソコン関係の雑誌であることが伺えます 【表 3】。大分類 中分類 小分類 アイテム (基準ター平均値 ゲット) 平均値 (全体) 平均値差分 (基準ターゲッ ト-全体) 残差スコア 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) タブレット型端末 65.5 13.4 52.2 17.1 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) 電子辞書 41.2 8.2 33.0 13.4 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) 分冊百科 10.9 1.0 10.0 11.5 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) スキャナー 21.0 3.7 17.3 10.3 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) 3D対応テレビ 35.3 9.1 26.2 10.2 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) ジョギングシューズ 33.6 8.8 24.8 9.8 商品(欲求・意識)欲求商品(世帯型) <世帯主及び女性 家事担当者のみ> 欲求商品(世帯型) ガス発電・給湯暖房機(エコウィル) 12.6 1.6 11.0 9.6 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) ステーションワゴン 21.0 4.2 16.8 9.4 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) フィルムカメラ 9.2 1.0 8.2 9.1 商品(欲求・意識) 欲求商品(個人型) 欲求商品(個人型) 電気自動車(EV) 31.1 8.7 22.4 8.9 表 2 意識項目トップ 10(不明をのぞく) 中分類 小分類 アイテム (基準ター平均値 ゲット) 平均値 (全体) 平均値差分 (基準ターゲッ ト-全体) 残差 スコア 仕事・勉強・日常について スキルアップのために、専門的に勉強をしたい はい 67.2 37.9 29.3 6.8 スポーツについて 新しいスポーツに興味がある はい 42.9 21.9 21.0 5.7 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ 広告・その他の情報について インターネットで広告をよく見るほうだ はい 35.3 16.5 18.8 5.6 海外について テレビの海外報道に関心がある はい 67.2 43.9 23.4 5.3 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ 広告・その他の情報について パソコンや携帯などでメール広告をよく見るほうだ はい 31.1 14.7 16.4 5.2 仕事・勉強・日常について 情報通信機器関連にはくわしいほうだ はい 31.1 14.7 16.4 5.2 仕事・勉強・日常について 英語を学んでみたいと思う(現在学んでいる) はい 73.1 51.1 22.0 4.9 お金について 金融機関の商品やサービスの内容についていろいろ調べるほうだ はい 45.4 26.2 19.1 4.9 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ 広告・その他の情報について インターネットでTV放送など動画コンテンツを見ることに興味・関心がある はい 56.3 35.5 20.8 4.8 テレビCMや広告に対する好 みや考え方 自分のライフスタイルに合った内容のCMや広告は注目してしまうことが多い あてはまる 26.9 12.7 14.2 4.8 表 3 雑誌項目(1号閲読) アイテム (基準ターゲット)平均値 (全体)平均値 (基準ターゲット-全平均値差分 体) 残差 スコア 月刊誌 アスキー.PC 5.0 0.7 4.4 5.9 週刊誌 日経パソコン 5.0 0.8 4.2 5.1 月刊誌 日経PC21 5.9 1.1 4.7 5.0 月刊誌 日経PCビギナーズ 2.5 0.3 2.3 4.9 週刊誌 週刊アスキー 7.6 1.9 5.6 4.5 月刊誌 日経TRENDY 9.2 2.9 6.4 4.3 月刊誌 eclat 3.4 0.6 2.8 4.1 週刊誌 DIME 5.0 1.2 3.8 3.9 月刊誌 オール讀物 2.5 0.4 2.1 3.9 月刊誌 日経おとなのOFF 3.4 0.6 2.7 3.8
また、メディア接触周り(テレビ、ラジオ、イン ターネット)については数値データであるため、別 に計算しました。全体と比較して、基準ターゲット にはどのようなメディア接触傾向があるのかを示す ため、時間帯×曜日の数値を計算し、基準ターゲッ トと全体ターゲットの差分を【表 4】に示します。 ③のインターネットについては、全体と比較してプ ラスとなっている時間帯が多く見られます。これに より、全体と比較してインターネット関与の高い人 が「電子書籍専用端末」を欲しいと思っている、と いうことが確認できます。また、テレビについては 曜日時間帯によって、全体よりも低い箇所と高い場 所の差が見て取れます。この結果は、メディアプラ ンニングを策定する際の参考資料になると考えられ ます。 次に 1 時間ごとの接触率(週平均)を【図 2】 に示します。図 2 から見て解るように、週平均で みるとテレビについては基準ターゲットと全体でほ とんど差がないことが見て取れます。一方、ラジオ とインターネットではそれぞれ違いが見受けられま す。特にインターネットについては、21 ~ 22 時 台についての接触率が高い結果となっています。 ①テレビ 月 火 水 木 金 土 日 6 時台 0.6 -3 1.3 0.7 0 -0.8 1.8 7 時台 2.2 3.4 0.7 1.4 1.2 -0.6 4 8 時台 2.2 5.2 2.4 1.9 6 4.5 -0.6 9 時台 1.7 1.6 -3 0.3 0.6 0.8 2.6 10 時台 1.5 2.4 -0.7 -1.6 1.1 0 -0.8 11 時台 -0.6 -0.9 -1.9 -2.7 0.8 -2.4 -1.9 12 時台 -2.4 -1.9 -3.2 -2.1 -1.4 -2 -4.6 13 時台 -1.9 -3.7 -2.4 0.1 -1.9 -2.2 -0.9 14 時台 0.3 -2.4 1.6 1.1 -0.9 -0.8 -1.4 15 時台 -0.5 -2.7 2.1 -1.1 2.6 -1 -1.5 16 時台 0 -3 3.4 -0.6 0.4 -1.7 -2.8 17 時台 0.3 -1.3 2.4 1.6 -0.2 0.9 -0.8 18 時台 -4.8 -2.5 0.4 2 2.4 -0.7 -2.6 19 時台 -4 -4.6 -3.2 -2.2 -0.7 2.8 2.1 20 時台 -3.6 -6.9 0.6 2.1 5.2 3.2 3 21 時台 1.4 3.8 2 7.7 8.5 -8.7 -0.8 22 時台 1.5 -3.6 4.2 1.3 -3.8 -9.9 -4.3 23 時台 3.9 -0.8 -4.3 -2 -2.2 -1.6 -2.9 24 時台 -2.1 -2.1 -2.7 -1.5 -2.6 -0.5 1.6 表4 メディア接触時間帯の比較(基準ターゲット - 全体) ②ラジオ 月 火 水 木 金 土 日 6 時台 -1 -0.4 -1.2 -1.7 -0.1 -0.1 -1.4 7 時台 -0.5 0.2 -0.6 -0.8 -0.5 0.2 -0.7 8 時台 -0.6 -1.9 -2.2 -1.7 -2.1 -2.1 -0.6 9 時台 1.9 -1.6 -0.1 0.3 0.2 -2.2 0.6 10 時台 -0.8 -1 -0.1 -2.9 -1.7 0.2 2.3 11 時台 -0.9 -0.9 -2.4 -2.2 -0.7 -0.4 2.4 12 時台 -1.6 -1.5 0.3 1.3 -2 1.1 -0.5 13 時台 0.2 -1.4 -2 -0.4 0.1 0.3 3.4 14 時台 -0.8 -3.1 -3.1 -1.4 -1.6 -0.2 1.4 15 時台 -0.7 -2.8 -1.2 -3 0.4 -1.6 2.9 16 時台 2.4 -0.7 -0.3 -1.6 0.7 -0.4 0.9 17 時台 0 0.4 0.5 0.7 3 2.9 -0.1 18 時台 0.4 2.3 0.7 1.7 1.5 1.6 0.9 19 時台 1.2 0 0.1 -0.2 2.1 -0.4 -0.9 20 時台 1.8 1.8 1.2 2.7 0.3 0.6 -0.6 21 時台 -0.5 0 0.6 1.3 0.2 1.1 -0.6 22 時台 0.1 0.5 0.2 1.7 0.9 1.2 0.9 23 時台 1.3 1.5 1.4 1.2 0.4 2.1 1.7 24 時台 2 -0.5 0.6 -1.1 0.4 2.3 1.6 ③インターネット 月 火 水 木 金 土 日 6 時台 0.7 0.9 -0.5 0.8 0.2 -0.4 -0.2 7 時台 2.5 0.7 0.1 -0.2 0.4 -0.3 0.5 8 時台 2.5 -0.2 0.3 0.3 1.9 -1.1 -0.3 9 時台 2.4 3.4 0.1 1.1 2.2 0.9 0.9 10 時台 1 2.9 0.6 4.5 4.8 1.3 0.9 11 時台 3.9 0.5 3.7 -0.9 3.7 -0.2 2.3 12 時台 1.7 -0.6 -1.5 -0.9 0.8 -1.7 1 13 時台 1.5 1.2 0 -0.1 1.7 0 0 14 時台 5.2 -0.2 1.2 1.4 4.4 3.4 0.5 15 時台 2.4 4.1 0.8 2 -0.4 0.7 2.1 16 時台 1.4 1.5 1.2 -0.3 0.3 3.2 3.5 17 時台 2.1 1.3 2.4 1 1.7 2.4 4.8 18 時台 2.3 2.6 5.1 3.8 2 -0.4 3.1 19 時台 3.7 3.9 1.3 1.4 2 -0.2 2.1 20 時台 3 2.4 1.8 1.8 0.6 3.3 3.6 21 時台 7.5 4.7 3.4 9.6 5 3.4 4.4 22 時台 6.7 5.3 5.1 9.5 6 3.7 8.8 23 時台 1.7 1.6 -0.1 4.5 -1.7 -0.8 5.4 24 時台 0.7 2 0.8 0.2 -1 -1 0.1 + 5%以上 +3%以上 ー 3%以下 ー 5%以下 図 2 テレビ・ラジオ・インターネットの時間帯接触率(週平均) (1)テレビの時間帯接触率 (2)ラジオの時間帯接触率 (3)インターネットの時間帯接触率 (時台) 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 (時台) 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 (時台) 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 (%) (%) (%) 0 10 20 30 40 50 全体 基準ターゲット 0 2 4 6 8 全体 基準ターゲット 0 5 10 15 20 全体 基準ターゲット
前節では、ACR などの大規模アンケートデータ について、あるターゲットを決めると自動的に全問 クロス集計を行い、統計量を用いて、そのターゲッ トの特徴を自動的に抽出するプログラムの分析事例 を紹介しました。本節では、その手法を商品間の共 起関係分析に応用します。具体的には、共起関係の 高い(関係性のある)商品を見つけ出し、さらにネッ トワーク図を用いてそれを可視化する分析方法を紹 介します。商品間の関係性を視覚化することで、ど の商品とどの商品がよく一緒に利用されているのか という競合・補完関係を視覚的に把握することが出 来ます。
● ネットワーク図を用いた
商品間ネットワークの作成
前節で紹介したように、カイ二乗検定と残差分析 により、ある商品と関係性の深い商品をピックアッ プすることが出来ます。更に、ピックアップされた 商品と他の商品を同様に残差分析することで、商品 間の関係性をネットワークグラフで見ていくことが 可能となります。 具体的には、前節で紹介した調整済み残差 Z(x11) がある水準α以上のものを「強い共起関係」がある とし、商品間のネットワークを張ります。なお、こ の分析においては調整済み残差 Z(x11)が任意に 設定した水準α以上の場合、「有意である」と呼ぶ ことにします。 < 全体のアルゴリズム > Step1: 基準となる商品を決め、商品 A と置きま す Step2: 商品 A と対象の商品間の標準化残差を求 めて、任意の水準以上のものを 1 とおき、 商品 A と有意な商品群 { 商品 B,C,...N} と の間にネットワークを張ります Step3: Step2 で有意な商品群のそれぞれに対し て、他の商品との標準化残差を求め、有 意な商品群 { 商品 R,S,...,W} との間にネッ トワークを張ります 以上、Step2 と Step3 を任意の回数だけ繰り返 します。 ※ ただし、STEP3 において、商品 A と有意な商品 群同士(例えば商品 B と商品 C)の間に有意な 関係が見られることも考えられますが、同じ商品 す。これは、あくまで基準商品Aを基点としたネッ トワークの広がりを見るためです。 < データ概要 > ・データ:ACR2012 ・エリア:東京 30km 圏 ・分析項目:商品の使用銘柄(MA) (1) シャンプー・リンス・トリートメント等 カテゴリー 全 151 ブランド 基準ブランド:花王セグレタ(シャンプー) (2) 飲料(アルコールを除く)全 366 ブランド 基準ブランド: キリン午後の紅茶ストレー トティー (1) シャンプー / リンス・コンディショナー類の 分析 シャンプー・リンス・コンディショナーなどの商 品利用についての分析を行います。シャンプーやリ ンスなどのカテゴリーでは、違うカテゴリーでも同 じ商品名を持つことがあるため、ここでは各ブラン ド名の頭にシャンプーであれば「S_」といった記 号をつけてプロットします。 中心に基準商品が濃いオレンジ色の丸でプロット されており、基準商品から直接ネットワークが引か れているもの(基準商品と強い関係性が見られた商 品)は薄いオレンジ色でプロットしています。また、 濃いオレンジの丸は薄いオレンジの丸の商品と有意 な関係がみられたものですが、白丸と基準商品(濃 いオレンジの丸)の間に有意な関係性はありません。 また、解りやすくスコアの大きさによって、商品 の丸の大きさを 3 段階に変えています。例えば、 「BS_ 花王ビオレ u さっぱりさらさら肌」は一番大 きな丸、中心の「S_ 花王セグレタ」は二番目の丸、 「HP_ 花王セグレタ」などは一番小さな丸となって います。また、矢印の太さも商品間の共起関係の強 さによって 3 段階に変えており、最も太い線、2 番目に太い線、それ以外の線になります。 なお、商品と商品のネットワークについては、ネッ トワークの方向性、つまり商品 A → B の関係はあ るが、商品 B → A の関係はない、などは本データ からは判断が出来ません。商品間のネットワークが 結ばれているものについては、「強い共起関係があ る」といえますが、競合商品か補完商品かを明確に 判断することは難しいです。例えば、一般的にはシャンプーとリンスは補完商品といえますが、リンスと トリートメントは競合商品と考えられるでしょうか。 また、今回は集計の母数を全体ベースとしていま すが、「女性」など、任意のターゲットを母数に設 定して分析することも出来ます。 < カテゴリー名称:銘柄名の前に付与 > S:シャンプー RC:ヘアリンス・ヘアコンディショナー HP:ヘアパック・ヘアトリートメント NWT:洗い流さないタイプのトリートメント BS:ボディーシャンプー 【図 3】の結果から、競合・補完関係の把握とブ ランド展開についてのカテゴリーマネジメントに対 する示唆が得られます。「シャンプー 花王セグレタ」 については、同じセグレタブランドのリンス・コン ディショナーやヘアパック・ヘアトリートメント、 洗い流さないタイプのトリートメントなどの共起関 係が非常に強く、同じブランドの複数カテゴリーの マネジメントがうまくいっていることが伺えます。 しかし、中心の「S_ 花王セグレタ」と「HP_P&G パンテーンクリ二ケア」が直接ネットワークで結ば れており、ヘアパック・トリートメントについては P&G に顧客が流れている可能性があります。この ように、商品間の共起関係を可視化することで、競 合・補完関係の把握などを行うことが出来ます。 ドリンク類(アルコール除く)の分析結果 アルコール類を除くドリンク類の分析を行います 【図 4】。なお、図の見方は先ほどと同様です。結果 から、「キリン午後の紅茶ストレートティー」と強 い関係があるのは、「キリン午後の紅茶ミルク ティー」「キリン午後の紅茶レモンティー」「リプト ンリモーネ」などの紅茶飲料が多いですが、「サン トリー伊右衛門」といったように、緑茶飲料とも強 い共起関係があるようです。このように、同じドリ ンク類でも、紅茶や緑茶飲料といったような異なる カテゴリー間でも高い共起関係があることが本手法 を用いて確認できます。 また、商品間の共起関係をプロットしたら、次に 商品の利用者の特性把握を先ほどの全問クロスプロ グラムに行うことで、利用者の分析も同時に行うこ とができます。ここでは、中心の「午後の紅茶スト レートティー」利用者と中心からネットワークで繋 がれている「伊右衛門」利用者のふたつのユーザー 図 3 花王セグレタ(シャンプー)を中心とした関係図 S_花王エッセンシャルダメージケアリッチプレミア S_花王アジエンスしっとりリッチタイプ S_花王セグレタ S_クラシエナイーブ S_ユニリーバラックススーパーダメージリペア S_P&Gパンテーンクリニケア S_DHC RC_花王エッセンシャルダメージケアリッチプレミア RC_花王セグレタ RC_クラシエナイーブ RC_P&Gパンテーンクリニケア RC_DHC HP_花王エッセンシャルダメージケアニュアンスエアリー HP_花王アジエンスしっとりリッチタイプ HP_花王セグレタ HP_資生堂マシェリ HP_ユニリーバモッズ・ヘア HP_P&Gパンテーンクリニケア HP_P&G h&s NWT_花王エッセンシャルダメージケア NWT_花王セグレタ NWT_資生堂水分ヘアパック NWT_資生堂マシェリ NWT_いち髪 NWT_ユニリーバモッズ・ヘア NWT_P&Gパンテーンナチュラルケア NWT_Noz(ノズ). BS_花王ビオレuさっぱりさらさら肌 BS_花王ビオレuうるおいしっとり肌
について全問クロスを行います。【表 5】(次頁)に 「フェース」の一部を抜粋して示します。なお、残 差スコアが有意水準 1%でプラスのものにハッチン グをかけています。表 5 のフェース比較より、「午 後の紅茶ストレートティー」については若い女性 (10 ~ 30 代)について有意なプラスの影響が見 られます。また、家族形態「親と子、夫婦と親など の 2 世帯」が高くなっており、性年代などのフェー スに特徴のある商品と考えられそうです。一方、「伊 右衛門」については残差スコアで有意な項目はあり ませんでした。スコアを全体と比較してみても大き な差異は見受けられず、フェースに偏りのない幅広 い商品と考えることが出来そうです。 次に、フェースで特徴のみられた「午後の紅茶ス トレートティー」について「意識」を見てみます。 【表 6】(次頁)に「意識」項目の結果を特徴順にソー トした結果を示します。「インスタント冷凍食品を 抵抗なく使える」が最も高く、他にも「ダイエット に関心がある」「肌の手入れに気をくばっている」「料 理のレパートリーを広げるよう努力している」と いった、若い女性特有の項目が特徴的な結果となっ ています。一方で、「人気や流行を知るために、広 告は大いに役立っている」「広告は買物をする際に 大いに役立っている」なども高くなっており、広告 感度の高い人といえそうです。 カルピスウォーター ザ・プレミアムカルピス ファンタオレンジ ファンタグレープ ファンタハニーレモン キリン小岩井ミルクとコーヒー グリコカフェオーレ 雪印コーヒー 小岩井コーヒー キリン午後の紅茶ストレートティー キリン午後の紅茶ミルクティー キリン午後の紅茶レモンティー キリン午後の紅茶パンジェンシー茶葉2倍ミルクティー リプトンリモーネ リプトンアップルティー リプトンレモンティー(紙パック) リプトンミルクティー(紙パック) リプトンアップルティー(紙パック) コカ・コーラ紅茶花伝ロイヤルミルクティー コカ・コーラ紅茶花伝プレミアムティーラテ アサヒFAUCHON(フォション) 伊藤園TEA’S TEA NEW YORK ベルガモット&オレンジティー 伊藤園TEA’S TEA NEW YORK GREEN&REDアップルティー 伊藤園おーいお茶 キリン生茶 サントリー伊右衛門 サントリー伊右衛門焙じ茶 コカ・コーラ綾鷹 伊藤園ウーロン茶 サントリー烏龍茶 アサヒ十六茶 コカ・コーラ爽健美茶 大塚製薬ポカリスエット コカ・コーラアクエリアス サントリーはちみつレモン コカ・コーラQoo ニチレイアセロラリフレッシュ
●おわりに
本稿では、ACR のような大規模アンケートデー タについて、あるターゲットを決めると自動的に全 問クロス集計を行い、そのターゲットの特徴をカイ 二乗検定による残差分析を用いて自動的に抽出する 探索的データ分析プログラムと、その考え方を応用 して商品間の共起関係を可視化分析する分析手法を ご紹介いたしました。本分析プログラムを利用する ことで、興味のあるターゲットに対して、そのター ゲットの特徴について探索的に仮説を見つけること が出来ます。また、本手法を商品間の共起関係の可 視化分析に応用することで、ブランドマネジメント を行う上での参考になると思われます。なお、この ような商品間の競合・補完関係などを見る場合は、 POS データなどの購買実績データを用いて同様の 分析をした方がよりリアルな結果が得られる点は否 めません。しかし、購買実績データはごく限られた 個人属性にしか紐づいておらず、ターゲティングな どのより深い知見を得ることは難しいです。一方で ACR は、商品については購買実績データほどリア ルな数字ではありませんが、個人のデモグラフィッ ク属性はもとより、生活意識やメディア接触などに ついて、情報豊かな分析が可能である点が利点であ ると考えられます。また、分析 2 は商品周りのデー タを用いましたが、閲読雑誌や視聴テレビ番組など のデータを用いた分析も可能です。 今後、皆さまの課題解決・支援として本手法がお 役に立てれば幸いに思っております。今回ご紹介し ました分析に限らず、ご興味・ご意見・ご質問など ございましたら、当社営業担当まで気軽にお問い合 せ下さい。 表 5 「午後の紅茶ストレートティー」利用者と「伊右衛門」利用者の「フェース」比較 中分類 小分類 項目 (全体)平均 「午後の紅茶ストレート ティー」利用者 「伊右衛門」利用者 残差 スコア 平均 全体平 均との 差分 残差 スコア 平均 全体平 均との 差分 本人の性別 本人の性別 男性 10 代 4.6 0.6 5.3 0.7 -1.7 3.4 -1.2 本人の性別 本人の性別 男性 20 代 8.4 -2.1 4.9 -3.5 1.5 9.8 1.4 本人の性別 本人の性別 男性 30 代 11.4 -1.6 8.2 -3.2 -0.2 11.2 -0.2 本人の性別 本人の性別 男性 40 代 10.5 0.3 11.1 0.6 1.4 11.9 1.4 本人の性別 本人の性別 男性 50 代 7.8 -1.8 4.9 -2.9 0.4 8.2 0.4 本人の性別 本人の性別 男性 60 代 8.6 -3.6 2.5 -6.2 1.5 10 1.4 本人の性別 本人の性別 女性 10 代 4.1 3.4 8.2 4.1 1.4 5.1 0.9 本人の性別 本人の性別 女性 20 代 7.6 3.9 13.9 6.3 1 8.5 0.9 本人の性別 本人の性別 女性 30 代 10.6 3.3 16.8 6.2 -0.1 10.4 -0.1 本人の性別 本人の性別 女性 40 代 9.9 2.2 13.9 4 -0.5 9.4 -0.5 本人の性別 本人の性別 女性 50 代 7.7 -1.2 5.7 -1.9 -2.3 5.7 -2 本人の性別 本人の性別 女性 60 代 8.8 -2.5 4.5 -4.3 -2.5 6.4 -2.4 本人の性別 本人の性別 男 51.3 -4.7 36.9 -14.4 1.9 54.5 3.2 本人の性別 本人の性別 女 48.7 4.7 63.1 14.4 -1.9 45.5 -3.2 本人の未・既婚 本人の未・既婚 未婚 27.1 1.3 30.7 3.6 0.6 28 0.9 本人の未・既婚 本人の未・既婚 既婚(離別・死別を含む) 72.9 -1.3 69.3 -3.6 -0.6 72 -0.9 家族形態 家族形態 単身(1人住まい)世帯 9.5 -1.9 6.1 -3.3 -1.5 8 -1.4 家族形態 家族形態 夫婦2人だけの世帯 14.4 -2.7 8.6 -5.8 0.7 15.2 0.8 家族形態 家族形態 親と子、夫婦と親などの2世代世帯 64.1 2.9 72.5 8.5 -0.1 63.9 -0.1 家族形態 家族形態 親と子と孫などの3世代以上の世帯 10.6 1.1 12.7 2.1 0.3 10.9 0.3 家族形態 家族形態 兄弟(姉妹)または友人同士の同居 1.1 -1.7 0 -1.1 0.2 1.2 0.1 家族形態 家族形態 その他 0.4 -1 0 -0.4 1.8 0.7 0.4中分類 小分類 (全体)平均 スコア残差 平均 全体平均との 差分 料理について インスタントや冷凍食品を抵抗なく使える 59.7 4.3 72.5 12.9 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 人気や流行を知るために、広告には大いに関心がある 30.3 4.1 41.8 11.5 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 広告は買物をする際に大いに役立っている 48.1 4.1 60.7 12.6 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 買い物をする際にクーポン券や割引券をよく利用する 43.8 3.9 55.7 11.9 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について フリーペーパー・フリーマガジンをよく見るほうだ 19 3.7 27.9 8.9 健康について ダイエットに関心がある 56.3 3.6 67.2 10.9 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 街なかの広告看板やネオンをよく見るほうだ 24.8 3.5 34 9.3 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について テレビ番組は始めから終りまでチャンネルを変えずに見るほうだ 33.1 3.3 42.6 9.5 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について インターネットで情報を収集することがよくある 65.5 3.3 75 9.5 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 興味のある商品の広告はきちんと見るようにしている 65.1 3.3 74.6 9.5 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 店頭情報をよく見るほうだ 43 3.3 52.9 9.8 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 映画・本編前の広告をよく見るほうだ 39 3.2 48.4 9.4 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について テレビCMをよく見るほうだ 36.3 2.9 44.7 8.4 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について パソコンや携帯などでメール広告をよく見るほうだ 14.7 2.9 20.9 6.3 ファッション・身だしなみについて 肌の手入れに気をくばっている 38.8 2.8 47.1 8.3 料理について 料理のレパートリーを広げるよう努力している 46.1 2.8 54.5 8.5 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 雑誌の購入はその号の特集に左右されやすい 38.3 2.7 46.3 8 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について インターネットでTV放送など動画コンテンツを見ることに興味・関心がある 35.5 2.7 43.4 7.9 ファッション・身だしなみについて 人がどのようなかっこうをしているか気になるほう 43 2.6 50.8 7.8 環境・社会活動について 家族とのコミュニケーションを大切にしている 80.7 2.6 86.9 6.2 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 今のテレビは自分にとって楽しめるものである 61.9 2.5 69.3 7.3 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 新聞の折込チラシが実生活に役立つことが多い 34.1 2.5 41.4 7.3 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・広告・その他の情報について 雑誌の内容を話題にすることがよくある 24.5 2.4 30.7 6.3