インドネシア共和国
外環漁港整備に係る
情報収集・確認調査
最終報告書
平成
22 年 10 月
(2010 年)
独立行政法人国際協力機構
(
JICA)
委託先
インテムコンサルティング株式会社
No. 東大 JR 10-034インドネシア共和国
外環漁港整備に係る
情報収集・確認調査
最終報告書
平成
22 年 10 月
(2010 年)
独立行政法人国際協力機構
(
JICA)
委託先
インテムコンサルティング株式会社
序文
(挿入)
調査位置図
テルクアワン②
⑦
⑥
⑤
③
④
①
ヌヌカン ビトゥン テルナテ テュアル クパン マカッサル テルクアワン②
⑦
⑥
⑤
③
④
①
ヌヌカン ビトゥン テルナテ テュアル テルクアワン②
⑦
⑥
⑤
③
④
①
ヌヌカン ビトゥン テルナテ テュアル クパン マカッサル通貨および換算レート
目 次
序文 調査位置図 通貨および換算レート 略語表、図表リスト 要約 第1 章 調査の概要 1.1 調査の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1.1 インドネシア国の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1.2 調査の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 調査の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.3 調査対象地域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第2 章 海面漁業の現状と課題 2.1 水産セクターの現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.1.1 水産業の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.1.2 生産面 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2.1.3 水産政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 2.1.4 水産セクターへの民間投資 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 2.2 海面漁業の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2.2.1 海面漁業の生産の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2.2.2 海産魚の流通・消費の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 2.2.3 水産資源の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 2.2.4 資源管理方策の実施状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 2.3 海面漁業の課題とインドネシア政府の対応策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 2.4 他ドナーの支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22第3 章 漁港整備の現状と課題 3.1行政の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 3.2外環漁港整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 3.2.1 外環漁港整備計画マスタープランの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 3.2.2 外環漁港整備計画ロードマップの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 3.3 外環漁港整備計画の特徴と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 第4 章 漁港の調査結果 4.1 調査対象漁港選定の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 4.2 対象漁港の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 4.2.1 調査対象地域の概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 4.2.2 各漁港の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4.3 漁港の調査結果のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113 4.3.1 7 漁港サイトの個別整備計画内容と課題 ・・・・・・・・・・・ 113 4.3.2 支援の検討における留意点 ・・・・・・・・・・・ 118 4.3.3 漁港整備支援についての考察 ・・・・・・・・・・・ 132 第5 章 漁港整備支援に関する検討事項 5.1 外環漁港整備計画の評価 ・・・・・・・・・・・・・・ 135 5.2 外環漁港整備計画の実施可能性に関する考察 ・・・・・・・・・・・・・・・ 141 5.3外環漁港施設整備計画を支援する場合の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・ 143 5.4 その他の留意事項 ・・・・・・・・・・・・・・・ 147
略語表
ADB Asian Development Bank アジア開発銀行
APBD Anggaran Pendapatan dan Belanja Daerah 地方歳出歳入予算
APBN Anggaran Pendapatan dan Belanja Negara 国家歳出歳入予算
BAPPENAS Bidang Ekonomi, Keuangan, dan Industri dan Kantor Menteri Negara Perencanaan Pembangunan Nasional /National Development Planning Board
国家開発企画庁
CTI Coral Triangle Initiative on coral reefs, fisheries and food security
-
DAK Dana Alokasi Khusus 特別交付金
DAU Dana Allocasi Umum 一般交付金
DG Directorate General 総局
DGCF Directorate General of Capture Fisheries 漁業総局
DKP Departemen Kelautan dan Perikanan 海洋水産局
EEZ Exclusive economic zone 排他的経済水域
EIA Environmental Impact Assessment 環境影響評価調査
FAD Fish Aggregating Devices 浮集魚装置
FKPPS Forum Koordinasi Pengelolaan dan Pemanfaatan Sumberdaya Ikan
漁業資源評価委員会
FMA Fisheries Management Area 漁業管理水域
GMP Good Manufacturing Practices -
IDB Inter-American Development Bank 米州開発銀行
IPTEK Sentra Informasi Ilmu Pengetahuan dan Teknologi 技術情報センター
IUU Illegal, Unreported, Unregulated Fishing 違法漁業
KEPMENTAN Keputusan Menteri Pertanian 農業省令
KKMB Konsultan Keuangan Mitra Bank ミトラ銀行融資サー
ビス
KKPE Kredit Ketahanan Pangan dan Energi エネルギー・食料確保
のための融資
KUB Kelompok Usaha Bersama コミュニティビジネ
スグループ
KUD Koperasi Unit Desa 村落協同組合
KUR Kuredit Usaha Rayat コミュニティビジネ
ス融資
LIPI Lembaga Ilmu Pengetahuan Indonesia/The Indonesian
Institute of Sciences
インドネシア科学院 LPPMHP Laboratorium Pengujian dan Pengawasan Mutu Hasil
Perikanan
漁業品質管理検査研 究所
MMAF Ministry of Marine Affairs and Fisheries 海洋水産省
MSY Maximum Sustainable Yield 最大持続生産量
NMTDP National Medium Term. Development Planning 国家中期開発戦略
NTB Nusa Tenggara Barat 西ヌサテンガラ
NTT Nusa Tenggara Timur 東ヌサテンガラ
ORFP-DP Outer Ring Fishing Port Development Project 外環漁港整備計画
PELINDO Pelabuhan Indonesia インドネシア港
PMA Penanaman Modal Asing /Foreign Direct Investment 外国投資会社
PMDN Penanaman Modal Dalam Negeri/Domestic Investment 国内投資会社
PPI Pangkalan Pendaratan Ikan/Fish Landing Place タイプD:地方の水揚
げ拠点
PPN Pelabuhan Perikanan Nusantara/Archipelago Fishing Port タイプB:国営の主要
漁港
PPP Pelabuhan Perikanan Pantai/Coastal Fishing Port タイプC:沿岸漁業に
対応した主要漁港
PPS Pelabuhan Perikanan Samudera/Oceanic Fishing Port タイプA:遠洋漁業に
も対応可能な大型漁 港
PRPT Pusat Riset Perikanan Tangkap 漁業研究センター
RERUM Perusahaan Umum 漁業公社
RKP Rencana kerja Pemerintah 政府実行計画
RPJM Rencana Pembangunan Jangka Menengah 国家中期開発計画
RPJMN Rencana Pembangunan Jangka Menengah Nasional 国家中期開発計画
RPJP Rencana Pembangunan Jangka Panjang 長期開発計画
SPA Sumbangan Perhitungan Anggaran 特別経済地区
TAC Total Allowable Catch 漁獲可能量
TP Task Assistance -
TPS Teknologi Pengelolaan Sumberdaya Perairan 水産資源加工技術
UNCLOS United Nations Convention on the Law of the Sea 国連海洋法条約
UPT Pertemuan Unit Pelaksana Teknis 漁港管理機関
VMS Vessel Monitoring System 船舶監視システム
図表リスト
章 図表番号 図表タイトル 頁 第1 章 表 1.1-1 「イ」国の基礎データ 1 第2 章 表 2.1-1 漁業生産量(2003-2008) 4 2.1-2 漁業者数(海面及び内水面)(2003-2008) 5 2.1-3 漁船数(海面漁業)(2003-2008) 5 2.1-4 水産加工業及び流通業従事者数 6 2.1-5 MMAF 中期計画 2010-2014 における主要目標値 8 2.1-6 インドネシアが加盟している地域漁業協力機関等 10 2.1-7 水産分野における民間等の投資状況2004-2008 11 2.2-1 主要魚種別の海面漁業生産量(2003-2008) 12 2.2-2 海面漁業者数(2003-2008) 13 2.2-3 水産加工経営体数及び従事者数 14 2.2-4 水産加工業認定証明書発行数 15 2.2-5 各漁業管理区の海面漁業生産量(2003-2008 年) 17 2.2-6 「イ」国の海面漁獲漁業MSY の推移 18 2.2-7 各漁業管理区のMSY、TAC 19 2.2-8 東西漁業管理区のMSY・TAC と漁獲量の比較 20 図 2.2-1 水産物の州別一人当り消費量 16 2.2-2 インドネシア漁業管理区 17 第3 章 表 3.1-1 海洋水産省職員数 23 3.1-2 「イ」国の漁港タイプ 243.1-3 海洋水産省への予算配分Budget Allocation of MMAF 26
3.1-4 海洋水産省非課税収入PNBP の推移 2005-2009 27 3.2-1 外環漁港整備マスタープランの漁港別概要 33 3.2-2 外環漁港整備費用 36 3.2-3 外環漁港整備の経過 40 3.2-4 調査対象7漁港サイトにおける事業展開 41 図 3.1-1 漁港管理組織 27 3.1-2 漁港施設の劣化事例 28 3.2-1 選定された8 漁港 38 第4 章 表 4.1-1 調査対象外環漁港リスト(東部インドネシアの7 漁港) 47 4.2-1 調査対象サイトの概況 48
4.2-2 民間コンプレックス施設事例(Maritim Timur Jaya、テュアル) 49
4.2-3 NTB 州の漁業生産量 2004-2008 52
4.2-4 西ヌサテンガラ州の漁獲漁業生産量(2004-2009) 52
4.2-5 水産資源ポテンシャルの推計(西ヌサテンガラ州) 52
4.2-6 西ヌサテンガラ州及び中央ロンボク県における大きさ別漁船数
表 4.2-7 中央ロンボク県の漁業者数2004-2009 54 4.2-8 PPN テルク・アワン施設概要 57 4.2-9 テルク・アワン整備事業費 59 4.2-10 海面漁業生産量と生産金額(2004- 2008 年) 61 4.2-11 マカッサルの冷凍庫を保有する水産加工場 (2009 年現在) 62 4.2-12 ウンティア漁港整備事業費 66 4.2-13 東ヌサテンガラ州の漁業生産量 (2004-2008 年) 67 4.2-14 東ヌサテンガラ州とクパン市の漁業生産量 68 4.2-15 東ヌサテンガラ海域における水産資源ポテンシャル推計 69 4.2-16 2007 年の PPP クパン漁港水揚げ量 69 4.2-17 PPP クパン漁港の利用漁船数(2007 年) 70 4.2-18 クパンにおけるサイズ別漁船数(2004-2009 年) 70 4.2-19 クパン漁港主要施設 74 4.2-20 PPP クパン漁港の収入源 75 4.2-21 東カリマンタン州の漁業生産量 2004-2008 78 4.2-22 ヌヌカンにおける規模別漁船数,2007-2009 年 80 4.2-23 ヌヌカン県の漁業者数(規模別), 2006-2008 80 4.2-24 ヌヌカン漁港整備予算 83 4.2-25 北スラウェシ州の漁業生産量(2006-2009 年) 85 4.2-26 北スラウェシ州の漁船サイズ別の数2008 年 87 4.2-27 ビトゥンの主要魚種別漁業生産量2009 年 87 4.2-28 PPS ビトゥン漁港に荷揚げされる魚の量と金額の推移 2008-2009 年 88 4.2-29 ビトゥン漁港主要施設 90 4.2-30 PPS ビトゥン港の収入源 2008-2009 年 93 4.2-31 ビトゥン漁港利用漁船数(5/19-5/20;現地調査による) 94 4.2-32 PPS ビトゥン港の船舶の寄港の頻度 2008-2009 年 94 4.2-33 ビトゥン漁港必要荷揚げ施設延長の試算 95 4.2-34 テルナテにおける魚種別漁業生産量2002 - 2007 年 98 4.2-35 テルナテ漁港主要施設一覧 101 4.2-36 PPN テルナテ漁港施設を利用する漁船の数 2008-2009 年 102 4.2-37 PPN テルナテ漁港における製氷工場からの氷供給量 2008- 2009 年 102 4.2-38 民間製氷工場によるブロックアイスの供給量2008 - 2009 年 102 4.2-39 PPN テルナテ漁港の収入 2008-2009 年 103 4.2-40 テルナテ漁港必要荷揚施設延長の試算 105 4.2-41 テルナテ漁港拡張計画事業費 106 4.2-42 マルク州における漁業生産量 2006-2008 年 107 4.2-43 テュアル市を含む東南マルク県の漁船数 108 4.2-44 テュアル市を含む東南マルク県の漁業者数 109 4.2-45 テュアル漁港主要施設 111 4.3-1 7 漁港サイト整備計画と課題 114
4.3-2 7サイトの状況一覧表 119
図 4.2-1 Maritim Timur Jaya 社(テュアル) 49
4.2-2 ビトゥン周辺の水産加工場 50 4.2-3 西ヌサテンガラ(NTB)州 51 4.2-4 テルク・アワンから域外への水産物の流通 54 4.2-5 テルク・アワンにおける漁業活動 56 4.2-6 PPN テルク・アワン漁港整備計画図 58 4.2-7 ウンティア 漁港の位置 60 4.2-8 Untia / マカッサルにおける漁業活動 63 4.2-9 PPN ウンティア 漁港整備計画図 65 4.2-10 PPN ウンティア 漁港整備状況 65 4.2-11 東ヌサテンガラ州地図 67 4.2-12 水産物の国内流通と輸出ルート 71 4.2-13 クパン漁港周辺地域の漁業活動 73 4.2-14 クパン漁港現況と拡張計画 76 4.2-15 東カリマンタン州 78 4.2-16 ヌヌカンにおける鮮魚流通経路 81 4.2-17 ヌヌカン周辺の漁業活動 82 4.2-18 ヌヌカン漁港整備計画図 84 4.2-19 崩壊した桟橋と現在の施工状況 84 4.2-20 北スラウエシ州行政地図 85 4.2-21 ビトゥン漁港及び周辺地域の漁業活動状況 89 4.2-22 ビトゥン漁港施設概要図 91 4.2-23 ビトゥン漁港施設現況 92 4.2-24 ビトゥン漁港の利用状況 94 4.2-25 ビトゥン漁港拡張計画 96 4.2-26 PPN テルナテ漁港の位置 97 4.2-27 テルナテ漁港および周辺地域の漁業活動状況 100 4.2-28 テルナテ漁港現況 104 4.2-29 テルナテ漁港拡張計画 105 4.2-30 PPN テュアル漁港の位置 107 4.2-31 テュアル漁港周辺の漁業活動概要 110 4.2-32 テュアル漁港全景 111 4.2-33 テュアル漁港現況 112 4.2-34 テュアル漁港拡張計画 113 第5 章 表 5.1-1 外環漁港整備計画の実施工程(予定表) 138 5.1-2 「イ」国の外環漁港施設の要件 140 5.2-1 過去10 年間の漁港整備数 142 5.3-1 港湾の開発に関する規定 147
i
要 約
1. 調査の概要 1.1 調査の背景 インドネシア共和国(以下「イ」国と記す)は、海洋水産資源に恵まれ、2008 年の漁業従事者 数約274 万人(海面 224 万人、内水面 50 万人)、漁獲漁業の生産量約 520 万トン(海面 470 万トン、 内水面50 万トン)の世界有数の漁業大国である。水産物の一人当たりの年間消費量は、2005 年の 23.95kg から 2008 年には 28.00kg と年々増加してきており、水産物は国民の良質なタンパク供給源 として重要である。海面漁業においては、西部水域では乱獲によって水産資源が減少しつつある。 一方、東部水域では水産資源状況は比較的良好なものの、漁港等基本インフラ、水産物流通システ ムの整備・改善の遅れが影響し、漁業者の収入は依然低いままである。「イ」国において、持続的 な水産資源の利用を図るには、漁業管理に係る制度・規則の改善に加えて、広大な領土内での地域 的に均衡のとれたインフラ整備の実施促進が重要であると考えられる。漁港の基本施設と、漁獲物 の保蔵・加工施設などの機能施設整備に対する支援を検討するに当たり、「イ」国水産セクターの 健全な発展を支援するという観点から、漁港施設整備を行う意義、位置付け、水産分野支援におけ る優先順位を確認する必要がある。 1.2 調査の目的 「イ」国水産業(水産資源、水産物流通・加工等を含む)、漁港施設整備の現状と課題について、 最新情報を入手するとともに、「イ」国政府の政策や取組み、他ドナーの動向も踏まえて課題整理 を行い、「イ」国水産セクターの健全な発展を支援するという観点から、漁港施設整備への支援を 行う意義、位置づけ、水産分野支援における優先順位を確認し、漁港施設整備にかかる日本の支援 枠組みの検討に資する情報を整理することを目的とする。 1.3 調査対象地域 インドネシア全土。ただし、インドネシア政府が外環漁港整備の優先度が高いとしている、7 漁 港(テルク・アワン港(西ヌサテンガラ州)、マカッサル港(南スラウエシ州)、クパン港(東ヌサ テンガラ州)、ヌヌカン港(東カリマンタン州)、ビトゥン港(北スラウエシ州)、テルナテ港(北 マルク州)、テュアル港(マルク州))について、現地調査を行った。 2. 海面漁業の現状と課題 2.1 水産セクターの現状 「イ」国の漁業生産量は漸増傾向にあり、2008 年では 2003 年の 591 万トンが 1.53 倍の 905 万ト ンに達し、中国、ペルーに次いで、世界第3 位を占めている。内訳は、漁獲漁業が 520 万トン(57%)、 養殖が385 万トン(43%)である。海面漁獲漁業生産量は 2003 年の 438 万トンから 2008 年の 470 万トンと7%微増、内水面漁獲漁業生産量は 2003 年の 30.9 万トンから 2008 年の 49.4 万トンと 62.5%ii 増加している。一方、海面養殖生産量は2003 年の 24.9 万トンから 2008 年の 196.6 万トンと 7.9 倍 であり、汽水養殖生産量の同期比1.9 倍、内水面養殖生産量の同期比 2 倍と比較して著しい伸張を 見せている。なお、養殖の総生産量のうち海藻類は2003 年の 23 万トンが 2008 年には 214 万トン と約9.3 倍に伸びている。漁業者数は、海面及び内水面を合わせて約 273 万人である。うち、内水 面従事者数は約50 万人を占める。水産加工業従事者数は 2005 年 32.9 万人から 2009 年 36.3 万人 へと約10%増加している。水産物の輸出に関しては、2003 年 85.7 万トンから 2008 年 91.1 万トン へ増加し、金額では同期比16.4 億米ドルから 26.9 億米ドルへと増加している。水産物の輸入に関 しては、2003 年 10.7 万トンから 2008 年 28.0 万トンへ増加し、金額では同期比 0.9 億米ドルから 2.6 億米ドルへと増加している。輸入量で 2.6 倍、金額で 2.9 倍の増加である1。2008 年の輸入量の 中で最も多いのは冷蔵・冷凍魚類で8.4 万トンと全体の 30%を占めている。水産物の輸出と輸入を 比較すると、輸出超過である状況には変わりないが、輸出の伸びに比べて輸入の伸びが大きい。 2.2 海面漁業の現状 年間水産物生産量905 万トン(2008 年)のうち、海面漁業によるものが約 470 万トンと全体の 52%を占める。魚種別に見ると、2008 年の 422 万トンのうち、単一魚種として最も多いのがムロア ジの約33 万トンである。ムロアジは 2003 年も約 30 万トンとこの 6 年間常に最も漁獲量が多い魚 種である。次いでカツオの約30 万トン、クンブン(和名なし:アジの類)約 25 万トン、アンチョ ビー約20 万トンの順となっている。輸出産品として大きなキハダマグロは 2008 年には約 10 万ト ンと2003 年から比較すると 5 万トンも少ない2。エビ類は多少のばらつきはあるものの年間で 20 万トン台半ばを維持している。大型浮魚類は、全体として2003 年と 2008 年の比で 1.4 倍程度に増 えている。2008 年現在、海面漁業従事者数はインドネシア全国で約 224 万人であり、49.6%の海面 漁業従事者が専業漁業者である。 水産加工分野では、インドネシア経済水域外で操業する外国漁船が漁獲した水産物が内陸部の加 工場の加工原料として利用されている。加工場はインドネシア企業、外国企業との合弁企業、外国 企業のパターンがある。海洋水産省の方針として、インドネシア漁船に漁獲させ、外国企業との協 力で原料を加工場に供給することを奨励している3。水産加工品としてはインドネシアの水産統計 上の分類として、塩干品、煮魚、発酵食品(ベラチャン、ペダ、魚ソース)、燻製品、冷凍品、缶 詰、すり身がある。2008 年の生産量のうち、最も多いのは冷凍品で約 46 万トン、次いで塩干品約 45 万トンであり、この 2 品目で水産加工品生産量の約 75%を占める4。
MSY(最大持続生産量:Maximum Sustainable Yield)は、5 年に一度 LIPI(インドネシア科学院: The Indonesian Institute of Sciences)、海洋水産省海洋水産研究局、大学、NGO 等から成る作業チー
ムによって生物学的に評価され、その80%を TAC(許容漁獲量:Total Allowable Catch)としてい
る。MSY との関係では、WPP-RI571(マラッカ海峡・アンダマン海)及び WPP-RI714(トロ湾・
1 Import Statistics of Fishery Products 2008 2 Capture Fisheries Statistics of Indonesia 2008 3海洋水産省水産加工流通総局での聞き取りによる 4 Capture Fishery Statistics of Indonesia 2008
iii バンダ海)はMSY を超えた漁獲が行われており、資源が維持不可能な程度までに過剰漁獲となっ ている。TAC の範囲を超えた漁獲が行われているのは上記 2 漁業管理区以外に、WPP-RI572+573 (インド洋西スマトラ+インド洋南ジャワ・南部ヌサテンガラ・西チモール)、WPP-RI712(ジャ ワ海)である。 インドネシア漁業管理区 (出典:2010 年漁業管理区に関する省令 No. Per.01/MEN/2009) 「イ」国では、2000 年以降の地方分権化の促進に伴って、新たな資源管理制度が導入されてい る。資源と漁業の管理を管轄する権利を中央、州と県(又は市)の3 つのレベルに分けている。沿 岸域4 浬は県(又は市)が管轄権を持ち、4 浬以遠 12 浬までは州が管理する。12 浬以遠の沖合経 済水域及び公海等の国際水域等での操業は中央政府の管轄である。 漁業管理の一環として、100GT より大きな外国漁船とインドネシア漁船に VMS 搭載の義務があ り、60GT-100GT の漁船は政府によってトランスミッターを、60GT 未満漁船はオフライン VMS を 供与される5。海洋水産省によると、2003-2010 年に計 3,500 隻に VMS を搭載済みである(全体の 80%)。漁業許可については、中央政府が 30GT 以上の漁船に対して、州が 10-30GT 漁船に対して、 県、市が 10GT 未満漁船に対してそれぞれ権限を持っている6。その他違法漁船の取締、拿捕に関 しては、海軍、水上警察、海洋水産省資源管理監督総局の3 者が権限を持ち、水上警察が「イ」国 水域内のみの管轄であるのに対し、資源管理監督総局は「イ」国水域内とEEZ 内を管轄し、3 者が 連携して任務にあたっている。 2.3 海面漁業の課題とインドネシア政府の対応策 外国漁船等によるIUU 漁業が 12 浬以遠において横行しており、その監視体制強化を図り、資源 を有効に活用することが課題となっている。IUU 問題に関し、海洋水産省ではその対策として VMS
(船舶監視システム:Vessel Monitoring System)を使った IUU(違法漁業:Illegal, Unreported, Unregulated Fishing)漁船の取締り強化対策を実践している。水産物流通、加工のためのインフラ
5 Indonesian Fisheries Book 2010 6 MMAF 官房総局統計情報センター
iv 施設を整備すること、中小企業を支援し輸出を促進すること、投資促進、コミュニティの中での中 小事業体形成支援、漁民等のための金融機関の発展、100 箇所の離島、島嶼部のインフラ開発、加 工・流通を担うビジネスを行う組織や会社の能力強化などが国家開発中期計画にあるミナポリタン 計画に盛り込まれ、関連事業が進められている。輸出企業に対する支援としては、HACCP、GMP などの国際品質管理基準認証を企業が取得することを義務付け、そのための費用を国家予算で拠出 している。資源管理のベースとなる漁獲データ収集の方法が県により統一されておらず、収集デー タの精度を高めることが求められている。現在、漁獲データは毎月各県から海洋水産省に対してイ ンターネットを介して送付されるシステムが使用されている。各県には3 名の水産統計職員(養殖、 漁業、水産加工担当)がおり、原則協同組合中小企業省管轄のKUD(村落共同組合:Koperasi Unit Desa)の毎日の取扱い数量からデータを収集することになっているが、KUD が存在しない所では県 職員が直接魚市場や水揚浜でサンプリング調査を行い、かつサンプリングの頻度や方法もまちまち であるため、情報の信頼性については疑問が残る。海洋水産省では年2 回エヌメレーターに依頼し て州及び県のデータをチェックしている。 3. 漁港整備の現状と課題
「イ」国の漁港はMinistry Decree No.PER16/MEN/2006, No.KEP.10/MEN/2004 に従って次表に示
す4 タイプに分けられ、それぞれ利用漁船の規模、水揚量、漁港施設規模、管理主体が定められて いる。 「イ」国の漁港タイプ7 漁港タイプ 漁港数と管轄 漁港の規格等 A:遠洋漁業にも対応 可能な大型漁港 (Oceanic Fishing Port)
6 港 国(海洋水産省) 管理 60GT 以上の船が1日当たり 100 隻以上入港できる漁 港。水深-3m 以深、300m 以上の接岸施設など。「イ」 国領海、EEZ および外洋で操業する漁船が対象。 B:国営の主要漁港 (Archipelago Fishing Port) 13 港 国(海洋水産省) 管理 30GT の漁船が1日当たり 75 隻入港可能。水深-3m 以深、150m 以上の接岸施設など。インドネシア領海 内とEEZ で操業している漁船を対象。 C:沿岸漁業に対応し た主要漁港(Coastal Fishing Port) 2 港が国管理 10GT の漁船が1日当 たり30 隻入港できる 漁港。水深-2m 以深、 100m 以上の接岸施設 など。 内海、多島海で操業してい る漁船が対象。 44 港が地方政府 管理 内海、多島海、インドネシ ア領海内で操業している漁 船が対象。 D:地方の水揚げ拠点 (Fishing Landing Place) 895 ヶ所 地方政府、地方自 治体管理 3GT の漁船が1日当たり 20 隻入港できる漁港。水深 -2m 以深、50m 以上の接岸施設など。内海およびイ ンドネシア領海内で操業している漁船が対象。 (出典:DG of Capture Fisheries, MMAF, 2009 他)
3.1 外環漁港整備計画マスタープランの概要
「イ」国における海洋水産資源の利用比率には地域格差が顕著にある。この格差は、漁港施設の
整備レベルと関係している。全国で813 港(2004 年当時)ある漁港のうち、多くは小規模な D タ
v イプ漁港(PPI)が占めると同時に、「イ」国西部のジャワ、スマトラおよび内海部に多く分布し、全 体の7 割以上を占める一方で、東部および外環部には少なく、全体の 2 割強にすぎない8。この漁 港施設の分布は、現在の海洋水産資源状態にも関連する。インドネシア領海の外環部にあたる地域、 すなわちインド洋、南シナ海、アラフラ海、スラウェシ海などにおいて、水産資源の利用度はまだ 高くはなく、未利用の資源が多くあると評価されている。しかし、漁港が少ないことにより、これ ら外環部の海域に関して、水産資源と漁獲の十分な調査・モニタリングおよび違法操業に対する監 視を行うことは困難な状況である。同時に外環地域は、漁港が少ないだけでなく、産業・経済の開 発も遅れている状態にある。こうした外環地域の開発の遅れは、地域社会の衰退にもつながりかね ない。この解決のためには、未利用の状態にある外環地域の海洋水産資源を、水産分野だけでなく 地域社会・経済・環境分野の力を動員し、適切な資源管理のもとで有効に活用する必要がある。以 上の状況より、以降の漁港整備のために、将来の漁港の配置・立地場所に関する調整と展望、開発 方針と開発ステップに関する調査を実施することが必要と判断され、外環漁港整備マスタープラン 調査(Pekerjaan Penyusunan Masterplan Pengembangan Pelabuhan Perikanan di Lingkar Luar Wilayah Indonesia, Developmental Master Plan Composition, Outer Ring Fishing Port of Indonesian Territory (CODE: SU-01), Dec.2004, Final Report ; PT. Perentjana Djaja)が、2004 年に実施された。
外環漁港整備マスタープランでは、2004 年当時 813 あった漁港の中から 20 の州における合計 25
の漁港およびサイトを開発対象として選定し、重点的に基盤整備を行うことを決定した。 3.2 外環漁港整備計画ロードマップの概要
2010 年、海洋水産省は外環漁港整備計画ロードマップ(ROAD MAP, OUTER RING FISHING PORTS DEVELOPMENT, Pengembangan Pelabuhan Perikanan di Lingkar Luar Wilayah Indonesia, 2010, DIRECTORATE GENERAL OF CAPTURE FISHERIES)を策定し、現時点における外環漁港整備計 画の全体概要と進捗状況および段階的な実施計画を示している。なお、2010 年時点では、マスタ ープラン策定時の813 港から 968 港に漁港の数が増大している。 外環漁港整備は、以下、3 段階の段階的な実施が計画されている。 フェーズ 1: インドネシア東部地域および国境地域のサイトを優先する。対象は 8 サイト (Bitung、Merauke、Pengambengan、Nunukan、Ternate、Teluk Awang、Kupang、 Makassar)に関する開発計画の検討を行い、うち 6 箇所について詳細設計、4 箇所 について開発に着手する。以上を5 ヵ年で実施する。予算は 10,800 億 IDR。 フェーズ 2: フェーズ I のサイトの事業の継続。西部インドネシアについて、9 サイト開発計 画検討、10 サイトにおいて詳細設計、9サイトでの開発事業開始。期間は 5 年半 で事業費は10,800 億 IDR。 フェーズ 3: 外環漁港事業の最終段階。東部地域と同様の事業を西部地域でも開始する。5 年 半の期間で事業費は3,050 億 IDR。
フェーズ 1 において選定された 8 漁港に関しては、2006 年、BAPPENAS に申請され、Blue Book
vi 2006-2009 に採用された。2004 年以降の外環漁港開発において実施された施策を次表に示す。なお、 2005 年よりウンティア(マカッサル)が外環漁港計画に組み込まれた模様で、これ以降外環漁港 は26 サイトとなっている。ウンティア漁港の整備事業は、2005 年に詳細設計が実施され、2006 年 より漁港建設工事が開始されている。 外環漁港整備の経過 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 Outer Ring
Fishing Port Province 準備、FS ; ⓐ レヴュー ⓑ; Rehab./Impro v. of Jakarta Fishing Port;ⓓ Operational & Rehab./Impro v. of Fishing Port Facilities; ⓔ Detail Design ; ⓐ 工事 ; ⓑ Operational & Rehab./Imp rov. of Fishing Port Facilities; ⓔ Proposals of Outer Ring Fishing Port to the Blue Book Proposal 2006-2009 Detail Design ; ⓐ
Master Plan & Detail Design ; ⓑ Signing Aide Memoire ; ⓒ 工事(TP) ; ⓐ 工事 (DAK) ; ⓑ 工 事 (Deco Funds); ⓒ 工 事 (TP) ; ⓐ 工 事 (Deco Funds); ⓒ Loan Agreement (IDB) ; ⓓ Operational & Rehab./Impro v. of Fishing Port Facilities; ⓔ 工事 (TP); ⓑ 工事 (DAK); ⓒ Implementatio n of Development / IDB; ⓓ Operational & Rehab./Impro v. of Fishing Port Facilities; ⓔ 工事(TP州); ⓑ 工事(TP県); ⓒ Operational & Rehab./Impro v. of Fishing Port Facilities; ⓓ Institutional Reform and detail design (IDB); ⓔ Sabang Labuhan Haji NAD ⓔ ⓔ ⓑ ⓒ;工事 ⓒ; 工事 ⓒ; 工事 ⓒ;工事 Belawan Sibloga North Sumatra ⓑ ⓔ ⓔ ⓔ ⓒ ⓒ ⓓ, ⓔ ⓓ, ⓔ ⓓ, ⓔ ⓓ, ⓔ ⓓ, ⓔ ⓓ, ⓔ Bungus West Sumatra ⓑ, ⓔ ⓔ Review Master Plan ⓔ ⓔ ⓓ
Tarempa Riau Island ⓐ, ⓒ;工事 ⓒ; 工事
Pulau Baai Bengkulu ⓔ ⓔ ⓐ ⓑ, ⓒ;工事 ⓒ; 工事 ⓑ;工事 ⓑ;工事
Pemangkat West
Kalimantan ⓑ, ⓔ ⓔ ⓔ ⓔ ⓓ
Nunukan East
Kalimantan ⓐ ⓑ;工事 工事 ⓐ;工事 ⓐ;工事
Jakarta Jakarta ⓓ;JBIC Loan Phase-V, ⓔ D/D & Rehab./JICA Rehab & Improv/JICA Rehab & Improv/JICA Rehab & Improv/JICA Pelabuhanra tu West Java ⓔ ⓔ ⓑ ⓔ ⓔ ⓓ Cilacap Central
Java ⓔ ⓔ Development / Improv. ⓔ ⓔ ⓓ
Sadeng DI Yogyakarta ⓔ Prigi Pondokdada p East Java ⓔ ⓔ ⓑ,ⓒ;工事 ⓔ ⓒ; 工事 ⓔ ⓑ, ⓒ;工事 ⓓ ⓑ;工事 Pengamben gan Bali ⓔ ⓔ ⓓ Teluk Awang West Nusa Tenggara ⓐ ⓑ;工事, ⓔ 工事 by Deco Funds for NTB ⓒ;工事 ⓐ;工事 ⓑ;工事 ⓒ;工事
Kupang East Nusa
Tenggaara ⓐ
Bitung North
Sulawesi ⓑ;工事 Review Design
Kwandang Gorontalo ⓒ;工事 ⓒ; 工事 ⓑ;工事 ⓑ;工事 Tual Maluku ⓔ ⓔ 埋立他 ⓔ ⓔ ⓓ Ternate North Maluku ⓔ 用地取得, ⓔ ⓔ ⓓ Merauke Biak Papua West Papua ⓐ ⓑ;工事 ⓐ 工事 by Deco Funds ⓑ, ⓒ;工事 ⓐ;工事 ⓑ;工事 ⓒ;工事
Solong West Papua ⓑ
Makassar South
Sulawesi ⓐ 工事
vii 3.3 外環漁港整備計画の特徴と課題 ① 海洋水産資源の合理的な活用 「イ」国全体としては、年率で 0.55%の漁獲量拡大9をめざしている。これは、過剰漁獲の抑制 による漁獲減少分に対し、未利用資源量の有効活用および IUU による漁獲の削減効果を期待する と、現実的な目標値であると考えられる。水産資源が適切な管理のもとで活用されるためには、外 環漁港において正確な漁獲情報の取得を図るとともに、監視船のパトロール拠点となることが必要 である。この点では、漁船が漁港施設を利用することを徹底し、同時に漁港整備が資源管理関連施 策と適切に連携されることが必要である。 ② 国際規格に準じた設備 氷・水の供給体制は全般的に不足しており、重要度は高い。また、衛生的な荷捌き環境を提供す ることは、水産加工会社からの要請にこたえる品質の原料を提供する上で、今後重要性を増すと考 えられる。 ③ 施設整備計画の規模・内容 選定された外環漁港の地理的な配分は、漁船の活動をまんべんなく外環地域の海域に展開する点 で適切と考えられる。ただし、すでに開始された事業に予算不足による遅延が見られるように、事 業の全体規模は、「イ」国単独で実施できる範囲を超えていると考えられる。 外環漁港整備マスタープランでは、各漁港の受け持つ海域の利用可能な上限の資源量を漁獲量と し、これに対応した施設規模を定めるというアプローチととっている。各サイトのポテンシャルや 利用者・裨益者について検討されていないため、過大・過剰な設備となる恐れがある。この点につ いては、詳細検討において十分な調査と検討が行われ、修正されることが必要である。なお、個々 の漁港の具体的な整備内容は、マスタープランの後に実施される詳細設計・調査に委ねられており、 具体的なイメージをマスタープランで見ることはできない。 ④ 漁獲物の域外流通環境 水産物の域外への流通のためには、冷凍コンテナ輸送サービスを利用できる環境があること、大 型輸送船による輸送が可能・現実的であること、商港や空港への道路アクセスも整備されることが 必要である。コンテナ輸送に関しては、近年進められてきた港湾施設整備により、インドネシア東 部地域においても、マカッサルを中継拠点としスラバヤを発着港とする定期コンテナサービスが開 始されており、すでに今回調査サイトから冷凍コンテナを使った水産物の出荷が行われている。 4. 漁港の調査結果 4.1 7 漁港サイトの個別整備計画内容と課題 本調査において対象とした7 つのサイトについての調査結果から、以下の「表 7 漁港サイト整備 計画と課題」としてまとめた。なお、現地調査においては、各サイトの特徴・現状・問題点などを 関係者との協議で、できるだけ明確にして情報収集・確認を行うことが重要であると考え、SWOT 分析を用いた。
viii 7 漁港サイト整備計画と課題 サイト 利用想定 施設拡張規模 期待される便益 課題 PPN テルク・ア ワン 背後集落にある145 隻の船外機船(サンパン)。お よび東海岸にある2 つの PPIからの転向漁船が想定さ れる。既に 3 隻程度の漁船が新設漁港に係留してい る。 ロンボク島内での 30GT 級の新規参入船の見通し は不明。州全体でも10-20GT 漁船は 145 隻。 ただし、漁港への進出を検討している民間水産事 業者が複数社あるとのこと。 用地の規模は当初段階での漁港利 用には十分の余裕がある。 桟橋として、小型漁船用と-3m の 30GT 級用を計画。延長は最大の想定 規模となっているが、当初は最低必 要延長での整備が可能。 ・零細漁業者において、漁船の大型化をはかり、 エカス湾外での操業を期待している。 ・他のPPI 利用漁船の内、インド洋方面を漁場 としている漁船にとって漁場への距離が短縮 される。 ・ロンボク島南のインド洋における漁業監視船 の拠点。 ・アクセス道路が未整備。漁港事業と並 行して道路整備見通しの確認が必要。 ・電力供給が限定的。 ・利用漁船の需用、動向および関連施策 の確認が必要。 ・予算不足による整備事業の遅滞。 PPN ウ ン テ ィ ア(マカッ サル) 南スラウェシ州全体で 20GT 級以上の漁船は 149 隻。マカッサル近郊の漁船は10GT 未満。30GT 級漁 船の需用は不明。 既存の漁船はマカッサルのPPI を利用中であるが、 施設不足が顕著。これらを対象利用とするかは不明。 既存PPI との役割分担が未整理。 -3m 水深確保のため約 600m の沖出 し、大規模な防波堤、および浚渫が 必要となっている。 施設規模はPPN の規定をもとに決 定。 ・PPI での係留施設、荷捌き施設不足解消。 ・荷捌き施設の衛生環境改善、漁獲物の品質向 上にて、加工業者の品質要求に対応。 ・流通拠点環境の水産分野における活用促進。 ・利用漁船の需用、動向および関連施策 の確認が必要。 ・予算不足による整備事業の遅滞。 ・漁港周辺の漂砂影響に注意。 PPP (PPN) クパン 10GT 以上の中・大型漁船の利用が主体。現況で年 間利用隻数は 879 隻、月当たりでは盛期で 100-140 隻が利用。近隣PPI とは機能分担が図られている。 現況から大幅な漁船増がないとすれば、用地需要 は不明。 盛 期 で は桟 橋 必 要規 模 が現 況の 2.5 倍以上となり、オーバーフロー状 態。この解消として、桟橋拡張計画 はほぼ適正規模。 休憩泊地の需用大きい。 ・盛漁期における混雑と空き待ちの解消。 ・迅速な陸揚げによる漁獲の品質向上。 ・沖での転載解消と漁獲情報および資源管理の 強化。 ・漁業監視船の拠点。 ・桟橋不足のため、洋上で漁獲を転載。 桟橋施設の不足解消が喫緊の課題。 ・利用形態を含めた拡張計画の見直しに て、より合理的な計画となる可能性があ る。 PPN ヌヌカン 地元漁業者はマレイシアに近いサバティク島に居 住し、漁港位置から離れる。この漁業者が主対象。 現地の漁船は船外機船主体で、動力船は5GT 未満ま で。30GT 級漁船の需用は不明。 有力仲買人が政府支援活用にて 30GT 漁船導入を 検討中(1 隻)。 PPN として最小規模の桟橋計画。 ・域外出荷の拠点。氷供給、衛生環境下での荷 捌きにて品質向上。 ・漁獲情報の収集と漁獲管理体制の強化。 ・国境海域での操業拠点となり、安定・定常的 な漁業活動を支援。漁業監視船の拠点。 ・利用漁船の需用、動向の確認が必要。 ・サバティック居住漁業者の利用を行政 指導する際の実効。 ・劣悪な施工のため、基部の構造安全性 に不安。 PPS ビトゥン 零細漁船から大型商業漁業船までが利用中(年間 21,000 隻)。 現時点では、荷揚げと出漁準備の施設が重合し、 混雑の一因となっている。施設増強とサービス・利 便性向上で、施設利用が促進される可能性高い。 現在の利用隻数をベースに算出し た必要バース長に対し、拡張計画に よって小型船用施設はほぼ充足され る。 大型船については出漁準備に滞船 が出る可能性があるものの、現況を 大きく改善できる。 ・小型船の空き待ち解消、および大型船の空き 待ち解消。 ・私有桟橋の拡大を抑制し、漁獲取扱いの漁港 集約を促進。 ・衛生的環境での荷捌きにより、漁獲の品質向 上、加工業者の品質要求に対応。 ・現拡張計画以上の規模拡大は難しい。 ・隣接する国営水産企業との機能分担。 ・既設日よけルーフの機能は良好であり、 さらなる拡充が計画されても良い。これ を含めた衛生管理機能の検討が期待され る。 PPN テルナテ 既存 PPI との役割分担が未整理。ほぼ同じ活動が PPN と PPI で行われており、主として PPN が利用さ れている。現況で施設の不足は生じていない。 現在の利用隻数をベースに算出した 必要バース長(約 160m)に対し、既存 施設で丁度均衡がとれている。 2 系統の桟橋のうち1基には港湾であふれた船 舶も休憩に利用している。これを解消すれば、 漁船用の施設は現況以上となり、新設の必要性 は不明。 ・利用漁船の需用、動向の確認にもとづ く施設規模算定が必要。 ・PPI との機能分担の整理が必要。 PPN テュアル 2009 年の利用漁船数が 30 隻のみであり、現在、PPN テュアルに漁獲の陸揚げはない。 現在、大型漁船・輸送船はPPN アンボンおよび PPS ビトゥンを利用していると推定される。 2007 年以前は大型漁船の利用で賑わ っており、施設拡張に見合う需用も あったと考えられる。 特になし。 ・漁獲陸揚げのない状態の解消が重要課 題。 ・大型漁船利用に関するPPN アンボン・ PPS ビトゥンとの競合。
ix 4.2 7 漁港サイトの漁港整備支援についての考察 漁港の整備計画は本来、公的セクターが適正な空間利用計画を作り、それを遵守させると共に、利用漁 船の大きさや数に見合う漁港を整備すべきである。7 サイトの中で、テルク・アワン、ウンティア(マカ ッサル)、ヌヌカンの3 サイトは新規の漁港建設工事が既にインドネシア政府予算で開始されている。「イ」 国政府は毎年予算確保のための努力を継続中であるが、予算承認に時間を要すること、承認される予算金 額が小さく建設工事費用の一部しか支出されないこと等の理由から工事の進捗に長期間を要している。ま た、施工監理体制、技術上の問題もあり、「イ」国側の期待値には届かないのが実情である。迅速な整備を 進めるためにも「イ」国側はドナーによる支援に大きな期待を寄せている。とくに、漁港・港湾施設整備 分野で実績があり、技術的に厳格であり、国際品質基準が確保できる日本の支援を望んでいる。 さらに、沿岸漁業資源環境に悪影響を与える無制限な沿岸開発、例えばマングローブ林の埋め立て等に よる漁港の開発整備などは、持続的水産業発展の視点から阻止すべきである。調査対象7 サイトの中では ヌヌカンがマングローブ低湿地にあること、ヌヌカンの建設予定地からは離れているがサンゴ礁保全地域 があること、テルク・アワン漁港の湾口部の一部にゴシキエビの産卵、育成場があること、クパン市が沿 岸環境保全に力を入れていることなどに十分に配慮していく必要がある。 いずれのサイトにおいても、支援の前提として、事業における裨益者の把握、施設の使用形態、想定さ れる便益に関する調査・分析と、これに基づく施設規模の検討が必要である。特に新設漁港サイトでは、 裨益者が全く考慮されていなかったり、近隣の既存 PPI との機能分担、利用対象者の区分けが行われてい ないので、注意を要する。この点では、外環漁港計画に挙げられた各サイトに関し、期待される成果・便 益に関する分析と、これに基づく計画の見直しを実施することが望ましいと考えられる。 5. 漁港整備支援に関する検討事項 5.1 外環漁港整備計画の妥当性 (1) 妥当性 外環漁港整備計画は、貧困削減、食料安全、環境と災害管理、低開発地域・遠隔地・紛争後の支援とい う「イ」国社会及び水産セクターのニーズに合致するものである。また、漁港整備は、地方分権化に関連 した地方における地域産業の育成、新たな経済拠点の構築という政策目標や地域社会のニーズを満たす手 段として適切であると考えられる。 また、年間約550 万トンと年々増加する国内需要の充足という大きな使命があり、これからは世界の漁 業大国として水産物の国際需要にも答えて水産セクターの国家経済への貢献度を拡大していくという課題 がある。「イ」国政府はこれらのニーズに的確に答えていかなければならないが、同国の漁業生産量は年間 500 万トン程度であり、国内の海洋水産資源量(MSY640 万トン、TAC512 万トン)からみてほぼ上限に達 しており、海面漁獲漁業分野での今後の総生産量増加は期待できない。しかし、国内水域でも漁船群の活 動に偏りがあり、資源の利用度が低く開発の可能性がある水域が残っている。これら水域は主に「イ」国 の外環に沿った周縁の遠隔地でありほとんどが低開発の地域である。したがって、漁港を整備し、不均等 な水産資源の利用状況を是正し適正な漁業生産量を確保していくニーズは高いと考えられる。外環漁港整 備は、EEZ 内の低利用水域での資源の有効活用を図り、EEZ 外の国際水域で操業する漁船に活動拠点を提
x 供することによって、「イ」国周縁水域での漁業操業の安全確保と水産資源の適正な利用、IUU 漁業の根 絶等に大きく寄与する計画である。このため、「イ」国外環地域において国際基準に見合った新たな漁港を 整備する外環漁港整備計画の開発ニーズは極めて高いと言える。 (2) 効率性 本事業の効率性について、アウトプット、期間、事業費の点から検討した。MMAF の外環漁港整備計画 の実施にあたっては当初から国際機関、海外ドナーからの協力支援を期待しているが、その重要性から既 に2004 年にマスタープランを策定し、独自予算(中央、地方、特別予算等)を駆使し、外環漁港 26 につ いてフェーズ1 からフェーズ 3 までに分けて総事業予算 6 兆 5 千億 IDR(約 650 億円)、実施期間 8.5 年計 画で事業を開始している。外国の支援は時間がかかるという理由からであり、独自予算で自立的に事業を 本来は行いたいというあらわれであると推察される。しかしながら、フェーズ1 の計画工事の実施に際し、 ヌヌカンでは桟橋建設鋼管杭の荒天による倒壊破損があり、テルクアワン及びマカッサルでは事業予算の 執行遅れによって建設工事が停滞し、完成時期の先延ばしなど問題が顕在化してきている。したがって、 現在のところ完成の見通しがたっておらず、本計画の効率性は小さいと判断せざるを得ない。この原因は、 技術的なこともあるが、海外ドナーの支援がタイムリーに得られていないことも一因となっている。 (3) 効果の見込み 「イ」国政府は、外環漁港の整備によって、国境周辺水域の安全操業確保、国内外操業船への支援サー ビス向上、IUU 等違法操業による損失減少、整備した外環漁港を利用する国内外企業による雇用機会増加、 そして外環漁港整備地域の経済成長の新たな拠点形成などの効果発現を期待しているが、漁港整備単体で の発現効果は施設の直接雇用などであり、これらの効果を発現していくには資源・生産・加工・流通・小 売・消費(及び廃棄)など他の関連計画と連携した施設の運営管理が不可欠である。効果の見込みについ て、工事進捗状況及びその考えられる原因から判断すると、独自の予算でフェーズ1(9 ヶ所)の全サイト の工事を完成に導くことはほぼ不可能である。とくに、海外からの資金協力に関する支援が得られない場 合は、対象漁港数を絞り込むなどの代替案はあるが、続くフェーズ2(フェーズ 1 に入らなかった東部地 域のソロン、ビアク、クワンダンの3 ヶ所、及び西部地域 6 ヶ所の計 9 サイトが対象)、フェーズ 3(西部 地域の8 サイト)も各々2005 年、2007 年に一部工事を開始しており、外環漁港整備計画全体に影響を及ぼ すことになる。 いずれにしても、外環漁港整備の開発ニーズは大きく、IUU 漁業の絶滅など緊急性のある事業計画であ り、既に完成している埋め立て護岸工事などが後続工事の資金難からそのまま放置されることのないよう に、計画の実施促進に向けた解決策を早急に模索していく必要がある。 5.2 外環漁港整備計画の実施可能性に関する考察 (1) インドネシア側が漁港整備計画を遂行する可能性 「イ」国政府は全国に約960 の漁港を有し、漁業資源の持続的な利用のために、とくに地方における漁 港インフラ施設の整備に注力してきている。最近10 年で約 370 の漁港を整備してきた実績を持っている。
xi 外環漁港は、従来のクラスA 又は B に該当し、現在クラス A が 6 ヶ所、クラス B が 13 ヶ所ある。これら のことから、漁港整備に関する技術的な力は十分にあるものと判断される。しかしながら、本調査の対象 である外環漁港整備計画は、国際基準に見合った規模・仕様とする計画であり、現在岸壁の嵩上げ工事を 実施中のジャカルタ漁港(西部地域の外環漁港の拠点港としての位置付けにある)での経験などを踏まえ て、着実に実行していく必要がある。 「イ」国の漁港施設は現在2 つの組織によって運営・管理されている。一つは海洋水産省漁業総局に属 する漁港管理機関(UPT)、もう一つは商業施設を対象とする国営企業省管轄の漁業公社(PERUM)であ る。しかし、工事完成までの責任主体は、海洋水産省漁業総局(担当部署は漁港局)であり、各サイトに より年により事業費予算の出所が変わるため、時に地方政府(州又は県、市など)となることもあるが、 あくまで全体の実施責任は中央政府にある。外環漁港整備計画は3 段階のフェーズに分かれ、全国 26 の漁 港を国際基準に見合う規模・仕様に仕上げるという大型プロジェクトであり、総額6 兆 5 千億 IDR(約 650 億円)、実施期間8.5 年を想定して既に開始されているプロジェクトである。したがって、プロジェクトの 運営維持管理に必要な能力も過去の実績で単純にカバーできるものであると楽観はできない。 外環漁港整備は、水産資源の持続的利用を実現することを目標とする計画であり、「イ」国の開発計画に おいて緊急性の高い事業として認定されている。もちろん、実施に当たっては国際機関、海外ドナーから の協力支援を期待していたが、その緊急性からすでに2004 年にマスタープランを策定し、独自予算(中央、 地方、特別予算等)を駆使し、外環漁港26 についてステージ 1 からステージ 3 までに分けて総予算 6 兆 5 千億IDR(約 650 億円)、実施期間 8.5 年計画で事業を開始している。外国からの支援の実現までには時間 がかかるという理由からであり、独自予算で自立的に事業を本来は行いたいというあらわれであると推察 される。しかしながら、計画工事の実施に際し、桟橋建設鋼管杭の荒天による倒壊破損、事業予算の執行 遅れによる建設工事の停滞、完成時期の先延ばしなど問題が顕在化してきている。フェーズ1 の新規建設 漁港であるテルクアワン、ヌヌカン、メラウケなどは2005 年の工事開始以来、毎年予算がついて継続して いるが、当初の予定期間内に終えることのできる十分な金額には至っていないのが実情である。今後、必 要な事業予算が確保できるか予断を許さない状況にある。このように「イ」国政府は、本計画の必要性、 緊急性から、独自予算と独自の実施組織で工事を始めているが、フェーズ1 の工事進捗状況、工事実施監 理状況から判断して工程に大幅な遅延が生じている。 (2) インドネシア側が計画を遂行するための要点 「イ」側が確実に計画を遂行していくには、日本をはじめとする海外からの、次のような技術支援が不 可欠である。 ① 計画の実施主体である海洋水産省の海洋漁業総局漁港局の技術者を含むスタッフへの技術指導 ② 技術的な支援の一環として、とくにプロジェクトの監理に焦点をあてた技術指導 5.3 外環漁港施設整備計画を支援する場合の留意点 以下に、外環漁港施設整備支援における留意点を挙げる。 (1) 漁港施設整備支援における留意点
xii 1) 施設整備の基本的な考え方 施設整備計画における要点は、施設が使われるか、どの程度有効に活用されるかということに尽きる。 ハード施設は、時間の経過で陳腐化するし、維持管理がうまく機能しないとその寿命は半減してしまうこ ともある。したがって、本調査の対象である外環漁港施設整備計画においても、必要な品質(Q)を維持 し、決められた事業コスト(C)内で、定められた期間内(D)に建設工事を着実に完成させることがもっ とも大事な点である。 2) 各サイトにおける需要予測・開発方向性再評価の必要性 3) 外環漁港整備事業の実施主体の明確化 4) 支援産業(水産加工・水産流通)整備計画との一体的実施の必要性 5) 技術的責任範囲の明確化 6) 施工監理の重要性 7) 漁港利用のポテンシャルと運営計画の必要性 (2) 環境社会配慮の留意点 ① 水産分野の事業に関する関連規定として、エビ・魚類の養殖池の開発は地域及び沿岸の生態系(物質・ 水質)、地形、マングローブ帯の生態系に影響を与えるとして、開発の規模・内容(面積、淡水・海水別) に応じた規定が定められている。外環漁港整備に関しても畜養施設などを設置する場合には、担当部署に 確認していく必要がある。 ② 漁港施設については、港湾に関する規定が適用される。漁港整備において、EIA の検討対象となるの は埋め立て、浚渫、杭打ち等の建設行為である。防波堤、岸壁、護岸、埋め立て等、施設の種別・規模に 応じてEIA の要否、評価委員会の実施レベル(省、州、地方)などが規定されている。波浪・海流・漂砂・ 大気などの配慮事項にも言及している。次表に示す項目に該当する行為について、環境影響に関する解析 を実施する必要がある(この規定は新システムのものである)。また、漁港施設の場合、EIA の実施責任は 海洋水産省にある。 本調査は、既存情報の収集・分析を中心とした調査であるため、対象地域の概要については網羅できて いるが、詳細については明確にできていない部分が多々ある。したがって、今後、外環漁港施設整備に対 する支援を検討する際には、必要な詳細情報を事前の調査により収集し、プロジェクトの枠組みの中で既 設工事に関する責任の所在を明確にするとともに、全体的な品質を確保するための具体的な案件の実施方 法について議論を重ねていく必要がある。 以上
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第
1 章 調査の概要
1.1 調査の背景 1.1.1 インドネシア国の概要 北緯6°8′~南緯 11°、東経 94°45′~141°間の太平洋とインド洋の境界に位置し、約 1 万 7,500 の島々から なる世界最大の島嶼国である。その国土面積は約191 万 km2(日本の5.1 倍)、自国経済水域の総面積は約 580 万 km2(世界第3 位)、海岸線の総延長は約 8.1 万 km(世界第 2 位)である。その地理的特性から、多 種多様な海洋・漁業資源に恵まれている。「イ」国の基礎データは次の表のとおりである。総人口は 2009 年で2.31 億人(政府推計)、首都ジャカルタの人口は 922 万人である。人口増加率は 1.2%と安定してきて いるものの貧困人口は3,496 万人と総人口の 15.1%を占めている。ここ数年、連続して大きな自然災害に遭 遇したものの、GDP 成長率は 6~7%を維持しており、マクロ経済全体への影響は軽微にとどまっている。 今後とも、持続的な経済成長を維持し、貧困率の低下など国家開発計画上の大きな課題を克服していくた めには、各産業分野におけるインフラ整備を含む国内外の投資をさらに促進していく必要がある。 表1.1-1 「イ」国の基礎データ 項目 内 容 地理・気候 国土面積191 万 km2 熱帯性気候(平均27℃、乾季 4-9 月、雨季 10-3 月) 人口 231,000 千人(2009 年政府推計)、人口増加率 1.2%(1990-2008 年平均)、 首都ジャカルタの人口922 万人(2009 年政府推計) 貧困人口3,496 万人(貧困率 15.1%、2008 年) 民族・宗教・言語 マレー系を主体とする300 以上の部族、華人は全人口の約 3% 600 万人 イスラム教(約90%)、他にキリスト教、ヒンズー教、仏教等 インドネシア語(公用語)、他に250 以上の地方語 GDP・産業構成 5,107 億ドル(2008 年)、一人当り 2,239 ドル、実質成長率 6.1%(2008 年) 農林水産業14%、鉱業等 11%、製造業 27%、卸・小売サービス業 20%等 就業人口・失業率 農林水産業44%、鉱業等 1%、製造業 12%、卸・小売サービス業 11%等 8.46%(2008 年 2 月)(高水準で推移) 輸出額 1,367 億ドル(2008 年)、うち対日輸出額 277 億ドル(2008 年) 輸入額 1,051 億ドル(2008 年)、うち対日輸入額 151 億ドル(2008 年) (出典:JETRO、国・地域別情報(J-FILE)インドネシア) 1.1.2 調査の背景 インドネシア共和国(以下「イ」国と記す)は海洋水産資源に恵まれ、2008 年の漁業従事者数約 274 万 人(海面224 万人、内水面 50 万人)、漁獲漁業の生産量約 520 万トン(海面 470 万トン、内水面 50 万トン) の世界有数の漁業大国である。さらに、養殖業の発展は著しく2008 年の養殖業者数約 276 万人、その生産2
量385 万トンを数える。水産物の一人当たりの年間消費量は、2005 年の 23.95kg から 2008 年には 28.00kg
と年々増加してきており、水産物は国民の良質なタンパク供給源として重要である。また、2008 年には年
間約91 万トンの水産物を輸出し 27 億米ドル(約 2,700 億円)の外貨を獲得し、農林水産分野における輸出産
品の重要な位置を占めている。
海面漁業の漁業管理水域(FMA:Fisheries Management Area)は、2006 年末にそれまでの全国 9 水域から
スマトラ、ジャワ、バリ、ヌサテンガラ沖のインド洋水域がスンダ海峡で二分され10 水域となった。さら に、2009 年に漁業資源の適正かつ持続的な利用を容易にするためスラウエシ海・太平洋水域がハルマヘラ 島の北端に位置するモロタイ島付近で二分され全国11 水域に再編成された(政令 No.PER.01/MEN/2009 に よる)。これら関連法規の改善は、漁業管理水域の変更により漁業活動の管理を強化し、水産資源の適正か つ持続的な利用を図るために必要な措置である。海面漁業においては、西部水域では乱獲によって水産資 源が減少しつつある。一方、東部水域では水産資源状況は比較的良好なものの、漁港等基本インフラ、水 産物流通システムの整備・改善の遅れが影響し、漁業者の収入は依然低いままである。多様な水産資源の 活用、漁獲物の品質向上によって漁業者の収入改善を図っていくには、漁港での水揚げ作業の効率化、セ リ等公正な取引システムの導入促進による漁業者の経済的地位向上、保蔵及び加工施設の整備、そして消 費地への流通網の確立などが必要となる。 また、水産資源の有効利用という観点からも漁獲物の衛生的な環境での取扱いによる品質の確保は重要 である。「イ」国において、持続的な水産資源の利用を図るには、漁業管理に係る制度・規則の改善に加え て、広大な領土内での地域的に均衡のとれたインフラ整備の実施促進が重要であると考えられる。漁港の 基本施設と、漁獲物の保蔵・加工施設などの機能施設整備に対する支援を検討するに当たり、「イ」国水産 セクターの健全な発展を支援するという観点から、漁港施設整備を行う意義、位置付け、水産分野支援に おける優先順位を確認する必要がある。 以上の状況を踏まえ、本調査では、水産分野の現状、政策をレビューして課題を把握するとともに、海 面漁業にかかわるステークホルダー、漁業及び水産物加工に関わる民間企業等の社会経済的状況とニーズ、 今後の動向予測と、水産資源の現状と今後の動向予測等を把握し、加えて漁港施設にかかる情報を収集・ 整理する。 1.2 調査の目的 「イ」国水産業(水産資源、水産物流通・加工等を含む)、漁港施設整備の現状と課題について、最新情 報を入手するとともに、「イ」国政府の政策や取組み、他ドナーの動向も踏まえて課題整理を行い、「イ」 国水産セクターの健全な発展を支援するという観点から、漁港施設整備への支援を行う意義、位置づけ、 水産分野支援における優先順位を確認し、漁港施設整備にかかる日本の支援枠組みの検討に資する情報を 整理することを目的とする。 本目的に沿った本調査におけるアウトプットは次のとおりである。 (1) 水産セクターの現状と課題が整理される。 (2) 水産セクターの政策的重点課題とそれらに対する対応方針が確認され、その関連において、漁港施設整 備の位置づけが確認される。加えて、漁港施設整備にかかる中・長期的方針が確認され、当該分野の課題
3 が整理される。 (3) 「イ」国政府が整備を希望している漁港における海面漁業、水産物加工、水産物流通、漁港施設の現状 と課題、それらに対する行政の取組み状況が整理される。 (4) 「イ」国東部における漁港施設整備の現状と課題が整理される。 (5) 漁港施設整備支援の方向性を検討する際の参考資料として、漁港施設整備に関わる全般的な現状、取組 み状況、課題、留意点等が整理される。 1.3 調査対象地域 インドネシア全土。ただし、インドネシア政府が外環漁港整備の優先度が高いとしている、7 漁港(テル ク・アワン港(西ヌサテンガラ州)、マカッサル港(南スラウエシ州)、クパン港(東ヌサテンガラ州)、ヌ ヌカン港(東カリマンタン州)、ビトゥン港(北スラウエシ州)、テルナテ港(北マルク州)、テュアル港(マ ルク州))について、現地調査を行った。
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第
2 章 海面漁業の現状と課題
2.1 水産セクターの現状 2.1.1 水産業の概要 「イ」国の漁業生産量は漸増傾向にあり、2008 年では 2003 年の 591 万トンが 1.53 倍の 905 万トンに達 し、中国、ペルーに次いで、世界第3 位を占めている。内訳は、漁獲漁業が 520 万トン(57%)、養殖が 385 万トン(43%)である。近年の生産量の伸びは養殖によるところが大きく 2003 年と 2008 年の比で 3.14 倍 となっている。漁獲漁業については2003 年と 2008 年の比で 1.10 倍と増えているが、ほぼ横ばいであると 言える。漁獲漁業における海藻類採取量は減少しているが、行政の指導等により沿岸零細漁業者をはじめ 沿岸住民が海藻養殖業に参加し生産体制が養殖業にシフトしてきているためである。 2.1.2 生産面 下表に示すとおり、海面漁獲漁業生産量は2003 年の 438 万トンから 2008 年の 470 万トンと 7%微増、内 水面漁獲漁業生産量は2003 年の 30.9 万トンから 2008 年の 49.4 万トンと 62.5%増加している。一方、海面 養殖生産量は2003 年の 24.9 万トンから 2008 年の 196.6 万トンと 7.9 倍であり、汽水養殖生産量の同期比 1.9 倍、内水面養殖生産量の同期比 2 倍と比較して著しい伸張を見せている。海面養殖の著しい増加は海藻 養殖によるところが大きく、同期比生産量は6.4 倍となっている1。 表2.1-1 漁業生産量(2003-2008) (単位:トン) 2003 2004 2005 2006 2007 2008 Capture Fisheries Marine (Seaweed) Inland water 4,691,796 4,383,103 (64,610) 308,693 4,651,121 4,320,241 (8,677) 330,880 4,705,869 4,408,499 (9,670) 297,307 4,806,112 4,512,191 (4,996) 293,921 5,044,737 4,73,280 (4,643) 310,457 5,196,328 (57%) 4,701,933 (2.917) 494,395 Aquaculture Marine Brackish water Fresh water 1,224,192 249,242 501,977 472,973 1,468,610 420,919 559,612 488,079 2,163,674 890,074 643,975 629,625 2,682,597 1,365,918 629,610 687,069 3,193,565 1,509,528 933,833 750,204 3,855,200 (43%) 1,966,002 959,509 929,688 合計 5,915,988 6,119,731 6,869,543 7,488,709 8,238,302 9,051,528 (100%)(出典:DG of Capture Fisheries & DG of Aquaculture, MMAF, 2009)
水産業の生産部門を担う漁業者数は、海面及び内水面を合わせて約273 万人である。このうち、内水面
の従事者数は約50 万人でほぼ安定している。専業漁業者が全体の約半分を占めるが 2003 年と 2008 年の比