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プリント配線基板内蔵用高容量薄膜コンデンサの開発

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Academic year: 2021

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プリント配線基板内蔵用高容量薄膜コンデンサの開発 

−塗布法により銅基板上に作製したチタン酸バリウム薄膜の誘電特性− 

藤吉 国孝*1  牧野 晃久*1  有村 雅司*1  山下 洋子*1  

Development of a Film Capacitor Embedded Print Wiring Board with a High Capacitance Density

−Dielectric Properties of Barium Titanate Thin Films Fabricated by Coating Method onto Copper

Substrate−

Kunitaka Fujiyoshi, Teruhisa Makino, Masashi Arimura and Yoko Yamashita

 

我々はこれまで,高濃度ゾルゲル法と呼ばれる方法でチタン酸バリウムのナノ粒子を合成し,合成したナノ粒子 の分散溶液を,表面が白金で被覆されたシリコンウエハ等に塗布し,その後熱処理することで薄膜を作製してきた。

本研究では,本手法を用いて銅基板上にチタン酸バリウム薄膜を作製し,誘電特性等を評価し,薄膜コンデンサと しての応用の可能性を検討した。その結果,多数回のスピンコート・窒素気流下での乾燥・仮焼成処理により膜厚 約800nmの薄膜を作製し,窒素気流下600℃で熱処理すると,クラックの無いチタン酸バリウム薄膜が作製できた。

この薄膜の電気的特性を評価したところ,比誘電率が約150,誘電損失が約3%であり,薄膜コンデンサとしての要 求特性を満たしていた。 

 

1  はじめに 

近年の信号伝送の大容量・高速化に伴い,電子機器 の軽薄短小化・高機能化も急速に進展している。これ らの要求に対し,近年,プリント配線基板へ部品を内 蔵することが提案されており,薄膜状のコンデンサを 基板内に形成し,上部に電極を作製して受動部品を作 り込む方法が報告されている。この様な薄膜コンデン サ形成用材料として,誘電率の大きな無機フィラーを 混合した樹脂を用いるものがあり,それらを用いたコ ンデンサ形成,特性等についての報告がなされている が,一般的に比誘電率が低く,容量密度の点で更なる 向上が望まれている1)。 

一方,我々はこれまで,高濃度ゾルゲル法と呼ばれ る方法でチタン酸バリウムのナノ粒子を合成し,合成 したナノ粒子の分散溶液を表面が白金で被覆されたシ リコンウエハ等に塗布し,その後熱処理することで薄 膜を作製してきた2)。しかし,プリント配線基板にお ける電極の材質としては,高価な白金等ではなく,銅 が一般的である。そこで本研究では,本手法を用い,

銅基板上にチタン酸バリウム薄膜を作製し,誘電特性 等を評価し,薄膜コンデンサとしての応用の可能性を 検討した。 

2  研究,実験方法  2-1  装置等 

基板には,約30mm×約30mm×約2mmの銅基板を用い た。スピンコーターにはミカサ(株)製1H-DX2を用い,

管状炉には(株)いすゞ製作所製 高温度管状炉KRB- 24HHと全自動温度制御装置UT-21Hを用いた。真空置換 式管状炉には,共栄理化器(株)製精密ガス雰囲気管 状熱処理炉を用い,第一熱研(株)製ジルコニア式酸 素計ECOAZ TB-ⅡVとコントロールユニットC-28Bを用 いて酸素濃度を測定した。走査型電子顕微鏡(SEM)観 察には,電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)の,日 本電子(株)製JSM-840Fを用いた。比誘電率及び誘電 損失の測定には,アジレント(株)製インピーダンス アナライザHP4192Aを用い,抵抗率及びリーク電流密 度の測定には,アジレント(株)製pAメータHP4140B を用いた。 

2-2  チタン酸バリウム結晶性ナノ粒子の合成 

1.0MのBa,Tiアルコキシド溶液に水を加えて加水分 解を行い,密閉容器中でエージング処理を行い,チタ ン酸バリウムの結晶性ナノ粒子を合成した。 

2-3  コーティング溶液の調製 

合成したチタン酸バリウムの結晶性ナノ粒子を2-メ ト キ シ メ タ ノ ー ル に 投 入 後 , 超 音 波 処 理 を 行 い , 0.2mol/Lの結晶性ナノ粒子分散液を調製し,これをコ  

*1  化学繊維研究所 

(2)

ーティング溶液とした。 

2-4  チタン酸バリウム薄膜の作製 

チタン酸バリウム薄膜は,以下の塗布・乾燥・仮焼 成・本焼成操作を行うことで作製した。 

2-4-1  塗布 

調製したコーティング溶液を銅基板上にスピンコー トすることで塗布した。 

2-4-2  乾燥 

試料を管状炉内に設置し,窒素気流下150℃で5分間 熱処理し,乾燥させた(図1)。 

             

図1  管状炉の模式図   

2-4-3  仮焼成 

真空置換式管状炉内に試料を設置し,真空排気・窒 素注入を酸素濃度が15ppm以下になるまで繰り返した 後,窒素気流下400℃で1時間熱処理し,仮焼成とした

(図2)。 

             

図2  真空置換式管状炉の模式図   

2-4-4  本焼成 

真空置換式管状炉内に試料を設置し,真空排気・窒 素注入を酸素濃度が15ppm以下になるまで繰り返した 後,窒素気流下600℃で1時間熱処理し,本焼成とした。 

2-5  SEM観察 

作製したチタン酸バリウム薄膜は,FE-SEMを用いて 表面を観察し,クラックやボイドの有無を確認した。

また,サンプルの割断面観察を行うことにより膜厚を 算出した。 

2-6  電気的特性の測定 

電気的特性の測定は,銅基板上に作製した薄膜表面 に1mmΦのアルミ電極を蒸着させ,測定装置に銅下部 電極とアルミ上部電極を接続して測定を行った。 

 

3  結果と考察 

3-1  乾燥・仮焼成・本焼成条件の検討  3-1-1  乾燥条件の検討 

管状炉および真空置換式管状炉を用い,いずれも窒 素気流下150℃で,銅基板を熱処理した。その結果,

いずれの乾燥条件でも,目視観察では銅基板に変化が みられず銅光沢を保ったままであった。このため,乾 燥処理は,より操作が簡便な,管状炉を用いた窒素気 流下で行うこととした。 

ガス

窒素ガス

ゴム栓 ゴム栓

電気炉 ガス

窒素ガス

ゴム栓 ゴム栓

電気炉

3-1-2  仮焼成条件の検討 

管状炉および真空置換式管状炉を用い,いずれも窒 素気流下400℃で,銅基板を熱処理した。その結果,

管状炉では銅基板が酸化し黒変した。一方,真空置換 式管状炉では,目視観察では変化がみられず,銅光沢 を保ったままであった。 

真空置換式管状炉は密閉性に優れており,また,試 料を設置した後,真空排気・窒素注入が可能(図2)

なため,酸素濃度を15ppm以下とすることができる。

その結果,熱処理しても銅の酸化が抑えられたと考え られる。一方,管状炉では簡易的にゴム栓で連結して いるだけであり(図1),密閉性があまり良くないため,

窒素気流下でも周囲の空気が混入し,酸素濃度が高く なり,熱処理により銅が酸化して黒変したと考えられ る。 

電気炉

真空ポンプ

窒素ガス

ガス

電気炉

真空ポンプ

窒素ガス

ガス

以上の結果から,仮焼成は真空置換式管状炉を用い,

窒素気流下で行うことにした。 

3-1-3  本焼成条件の検討 

真空置換式管状炉を用い,窒素気流下600℃で,銅 基板を熱処理した。すると,目視観察では変化が見ら れず銅光沢を保ったままであった。このため,本焼成 は真空置換式管状炉を用い,窒素気流下で行うことに した。 

3-2  薄膜熱処理条件の検討 

銅基板上にコーティング溶液を多数回スピンコート し,膜厚約800nmのチタン酸バリウム薄膜を作製した。

その後,本焼成を行い,表面のSEM観察を行った結果,

得られた薄膜表面にクラックが見られた(図3)。 

(3)

                   

図3  塗布・本焼成後のチタン酸バリウム薄膜表面の SEM写真 

 

これは,本焼成前の薄膜中に溶媒や配位子が存在し ており,本焼成時の熱処理に伴い,これら溶媒や配位 子が除去されることで,薄膜の体積収縮が起こったた めと考えられる。 

そこで,残存溶媒・配位子を除去する目的で,乾燥 操 作 を 取 り 入 れ た 。 塗 布 操 作 ・ 乾 燥 操 作 を 膜 厚 約 800nmになるまで繰り返した。その後,本焼成を行い,

表面のSEM観察を行った結果,得られた薄膜表面に図3 と同様のクラックが見られた。これは,薄膜中の残存 溶媒や配位子の除去が不十分であったためと考えられ る。 

更に,残存溶媒・配位子を更に除去する目的で,仮 焼成操作を取り入れた。塗布操作・乾燥操作・仮焼成 操作を膜厚約800nmになるまで繰り返した。その後,

本焼成を行い,表面のSEM観察を行った結果,得られ た薄膜表面にクラックが見られなかった(図4)。しか し,1万倍以上の高倍率で詳細に表面形態を観察した ところ,所々に非常に小さなボイドは見られた(図5)。

これは,本焼成時の熱処理に伴い,薄膜中のチタン酸 バリウムナノ粒子の焼結が起こり,体積が収縮したた めと考えられる。その体積収縮量はあまり大きくなく,

図3のようにクラックを生じる程ではないが,小さな ボイドは生じてしまうと考えられる。 

このクラックが見られなかった薄膜について,次に 電気的特性を評価した。 

3-3  電気的特性 

銅基板上に塗布・乾燥・仮焼成・本焼成して作製し たチタン酸バリウム薄膜表面に1mmΦのアルミ電極を 蒸着させ,測定装置に銅下部電極とアルミ上部電極を 

 

100μm

               

  30μm

図4  塗布・乾燥・仮焼成・本焼成後のチタン酸バリ ウム薄膜表面のSEM写真 

                 

  30nm

図5  塗布・乾燥・仮焼成・本焼成後のチタン酸バリ ウム薄膜表面のSEM写真(図4の拡大写真) 

 

接続して電気的特性の評価を行った。比誘電率と誘電 損失の周波数依存性を図6に示す。 

100kHzでの誘電損失は2.9%であり,比誘電率は151 であった。この比誘電率の値と,薄膜の割断面のSEM 写真から見積もった膜厚(800nm)から容量密度を算 出すると,167nF/cm2であった。 

                 

0 25 50 75 100 125 150 175 200

10

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周波数

(Hz)

比誘電率

0 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25

誘電損失

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誘電損失

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図6  作製したチタン酸バリウム薄膜の比誘電率と誘 電損失の周波数依存性 

(4)

                 

図7  作製したチタン酸バリウム薄膜の電圧−抵抗率 特性 

                   

図8  作製したチタン酸バリウム薄膜の電界強度−電 流密度特性 

   

また,電圧−抵抗率特性を図7に,電界強度−電流 密度特性を図8に示す。10V以下の印可電圧で,抵抗率 は1013Ωcm以上,リーク電流密度は10-8A/cm2以下であ った。 

以上の結果から,電気的特性は一般的な薄膜コンデ ンサとしての要求特性に近いものであり,今後,薄膜 コンデンサとしての応用が期待される。 

  4  まとめ 

高濃度ゾルゲル法でチタン酸バリウムのナノ粒子を 合成し,合成したナノ粒子の分散溶液を調製し,コー ティング溶液とした。この液を用いて,銅基板上に多 数回のスピンコート・窒素気流下での乾燥・仮焼成処 理 に よ り 膜 厚 約 800nm の 薄 膜 を 作 製 し , 窒 素 気 流 下 600℃で熱処理すると,クラックの無いチタン酸バリ ウム薄膜が作製できた。この薄膜の電気的特性を評価 したところ,比誘電率が約150,誘電損失が約3%であ り,薄膜コンデンサとしての要求特性を満たしていた。 

5  文献 

10

6

0 10

印可電圧(V)

抵抗率

1) 桑 子 富 士 夫 : 表 面 技 術 , 55 巻 (2 号 ) , pp.110-113  (2004) 

2)桑原誠, 倉田奈津子, 緒方道子, 山下洋子, 有村雅 司:セラミックス, 36巻(6号), pp.412-416(2001)   

6  謝辞 

本研究は,NEDO技術開発機構平成17年度産業技術研 究助成事業の助成を受け実施しております。 

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電界強度(V/cm)

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