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高感度フォトクロミック色素の開発

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Academic year: 2021

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高感度フォトクロミック色素の開発 

フォトクロミック材料の簡易合成法の開発 

山口忠承*1  藤田祐史*1  大﨑徹郎*1  野見山加寿子*1  入江正浩*2  

Development of High Sensitive Photochromic System

Development of Simple Synthetic Method of Photochromic Compound Tadatsugu Yamaguchi, Yuji Fujita, Tetsuro Osaki, Kazuko Nomiyama, Masahiro Irie  

フォトクロミック色素であるジアリールエテン誘導体は,両異性体の熱安定性,繰り返し耐久性にすぐれている ことから,次世代の光メモリ材料や光の量を検知する材料として期待されている。本研究では,一段階で合成が可 能な新規フォトクロミック化合物を開発した。この化合物は良好な光応答性を示し,熱的安定性と繰り返し耐久性 を有することが確認できた。 

 

1  はじめに 

情報記録の高度化に伴い,磁性材料から光記録材料 へのシフトが始まっている。現在,1回だけ書き込み可 能なCD-RやDVD-R,何度でも書き換え可能なDVD-RAMや 青色レーザーによって情報を書き込むBlue-rayディス ク等が市販されている。 

何度でも書き換え可能な光記録材料の候補として,

ジアリールエテン誘導体がある(図1)。この誘導体は,

光照射により可逆に2つの構造異性体が生成すること が知られている1)。この材料はメモリ材料として求め られる高速応答性,熱的安定性,繰り返し耐久性等の 要件を全て満たしている。さらに,この誘導体の中に は3次元情報記録に必要な2光子フォトクロミック反応 を示すものも確認されており,現在市販されている媒 体を上回る記録密度を有する媒体となる可能性を有し ている。このような優れた性能は,光照射によって生 成するヘキサトリエン,シクロヘキサジエン構造の可 逆な電子環状変化に基づいている。この環化反応を自 在に制御できる系が構築できれば,ジアリールエテン 誘導体でなくても光メモリ材料等に適用可能な材料が 提供できるものと考えられる。 

昨年度,ジアリールエテン誘導体の合成中間体がこ のようなヘキサトリエン,シクロヘキサジエン構造異 性を示すことを報告した2)。これにより安価にフォト クロミック色素を供給できることが示された。本年度 は,さらに検討を進め,一段階で合成可能なフォトク ロミックマレイン酸無水物の開発に成功した3)。本法 

X X

R2 R5

R3 R6

R1

R4

X X

R2 R5

R3 R6

R1

R4

開環体

(ヘキサトリエン構造)

閉環体

(シクロヘキサジエン構造) 

図1  ジアリールエテンのフォトクロミック反応   

では,市販試薬を混合するだけで簡単かつ短時間で合 成可能である。本報告では,2-アリール-3-(1-プロペ ニル)マレイン酸無水物の合成方法とそのフォトクロ ミック反応性(図2)について報告する。 

 

O

X

O O

Y 1a: X=NCH3; Y=Me

O

X

O O

Y 400 nm

>500 nm

1b: X=NCH3; Y=Me

2a: X=S; Y=OMe 2b: X=S; Y=OMe  

図2  マレイン酸無水物のフォトクロミック反応   

2  研究,実験方法 

フォトクロミックマレイン酸無水物誘導体の合成ス キームをスキーム1に示す。 

1aの原料である1,2-ジメチルインドールと3-ペンテ ン酸は精製なしで用いた。 

1,2-ジメチルインドール600mg(4.1mmol)をジクロロ メタン7mlに溶解し,0.36ml(4.1mmol)のオキザリルク ロリドを5℃で加えた。3-ペンテン酸410mg(4.1mmol) と1.2mlのトリエチルアミンを先ほど調整した溶液に

*1  化学繊維研究所 

*2  九州大学 

(2)

加えた。反応混合物を1.5時間撹拌した後,溶媒を減圧 留去した。残渣をシリカゲルカラム(展開溶媒:クロロ ホルム)で精製し1aを得た(収率47%)。 

2aは,原料として1,2-ジメチルインドールの代わり に2-メトキシベンゾチオフェンを用い同様な手法で合 成した。 

N

S OMe

O

S

O O

OMe 1a

O

N

O O

2a (47%)

(66%) 1) (COCl)2 2) 3-pentenoic acid

1) (COCl)2 2) 3-pentenoic acid

  スキーム1  マレイン酸無水物1a,2aの合成法   

3  結果と考察 

化合物1aのヘキサン溶液中での吸収スペクトルを図 3に示す。 

 

300 400 500 600 700

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Wavelength / nm

Absorbance

1a(開環体)

1b(閉環体)

光定常状態

図3  1aの吸収スペクトル   

2aも1aと同様にヘキサン溶液中で紫外光と可視光照 射によりフォトクロミック反応を示した。結果を図4 に示す。2bへの異性化率は26%である。 

500 600 700

300 400 0.0 0.2 0.4 0.6

Wavelength / nm

Absorbance

2a(開環体)

2b(閉環体)

光定常状態

図4  2aの吸収スペクトル         

この閉環体は,デカリン中80℃で1日以上安定であっ た。また,開環−閉環反応は10回以上繰り返し可能で あることを確認した。 

表1に両化合物の開環体,閉環体の吸収極大波長と吸 光係数,及び量子収率を示す。 

 

表1  1,2のフォトクロミック特性 

e/103 dmmol-1cm-1

a b 光閉環 光開環

1

4.86 4.40 0.035 0.23

(411 nm) (438 nm) 2

7.18 7.31 0.10 0.32

(436 nm) (492nm)

(400nm)

(400 nm) (492 nm)

(450 nm) 化合物

量子収率

   

化合物1の光閉環量子収率は0.10であり,ジアリール エテン誘導体である2,3-ビス(2,4,5-トリメチルチオ フェン-3-イル)マレイン酸無水物が0.12であることか ら,ほぼ同じ値となっている。一方,光開環量子収率 は0.32であり,これは2,3-ビス(2,4,5-トリメチルチオ フェン-3-イル)マレイン酸無水物のそれ(0.16)より高 い値となった。 

化合物2では光閉環量子収率(0.035)が光開環量子収 率(0.23)より小さくなっている。反応点がメトキシ基 のジアリールエテン誘導体の場合,光閉環量子収率が 光開環量子収率より大きくなることが知られている。

これから,2-アリール‐3-(1-プロペニル)マレイン酸 無水物では,その光異性化の傾向が異なることが確認 できた。 

(3)

4  まとめ 

一段階で合成可能なフォトクロミックマレイン酸無 水物誘導体の合成法を確立した。反応は,市販試薬を 原料として数時間以内で行うことができた。光照射に より生成した閉環体(着色体)は熱的に安定で,繰り返 し耐久性も示した。このフォトクロミックマレイン酸 無水物誘導体は,熱不可逆というメモリ性材料に必要 な性能を有しており,このような化合物の簡易合成法 の開発が,これら光記録材料の実用化に大いに役立つ ものと考えている。  

 

5  参考文献 

1)M.Irie:Chem.Rev.,Vol.100,p.1685(2000)  2)山口忠承,藤田祐史,入江正浩:福岡県工業技術セ

ンター研究報告,No.14,p.18(2004) 

3)T.Yamaguchi,  M.Irie:  Chem.Lett. , Vol.34 , p.64(2005) 

参照

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