市街地の景観における注視行動特性に関する研究
-街の印象を形成するエレメントとその表出-
日大生産工(院) ○古賀利郎
日大生産工 岩田伸一郎
1.はじめに
市街地空間では、広告や看板(以下、情報)は重要な景 観の構成要素であり、特に商業地域等では情報が建物の形 態やファサードデザインよりも街の景観に強く作用して いると言っても過言ではない。一つ一つの情報については、
その内容や色彩が類似する場合も多く見受けられるにも 関わらず、情報群として捉えたときには街ごとの特徴的な 印象が確かに存在している。
意図的に視線を引導する目的を持つ情報で構成される 市街地の景観を認識するときには、このような情報を含ま ない(含んでいても無視できる程度の量)風景を眺めると きとは基本的に異なる知覚のメカニズムが働いていると 推測される。本研究では、情報化された市街地の印象は情 報に向けられる注視行動パターンと強い関係を持つとい う仮説に基づき、注視行動パターンによって各市街地の景 観を類型化することで街に固有の視覚的印象が形成され るメカニズムを解明することを目指している。
注視行動に影響を及ぼす要因として、色彩分布に着目す る。情報には、一般的に建物や背景となる風景に対してア クセントの強い配色が施され、視線を引き付ける効果が期 待されている。色は、色相(H)/彩度(S)/明度(V)の 3 属 性によって表現されるが、このうち彩度(S)と明度(V)に関 しては数値によって定量的に比較することが可能である。
注視行動パターンはアイマークレコーダー(以下、EMR)
によって注視点や停留点として写真平面上に定量的にプ ロットすることができるため、彩度(S)と明度(V)の値につ いても同様に写真平面上に表示することができれば、相互 の関係性を比較したり分析することが可能になると考え られる。本稿では、彩度(S)と明度(V)を定量的に視覚化し た画像(以下、色彩分布画像)の作成方法と注視行動パター ンの抽出方法について報告する。
都市景観を対象とした景観認識の既往研究では、小泉他
文1)
は、銀座中央通りを対象として、建物高さの変化に伴 う街路の印象の変化と、建築ファサードと街路景観の印象 との関係を明らかにしている。川合他
文2)は、京都市祇園 地区を対象としたシークェンス空間において、注視を促す
空間構成要素を抽出する事で、街並みのイメージを形成す る景観構成要素を明らかにしている。また、渡辺他
文3)は、
実際に歩行して実験を行うという点に重点を置き、歩行者 と注視対象の位置関係に注目した上で、看板に対する歩行 者の注視傾向を明らかにしている。これらの研究では、景 観を認識する際の重要なエレメントとして、建築ファサー ドや空間構成、景観構成要素に着目しているのに対し、本 研究は情報の色彩分布と注視行動パターンの関係性に着 目して、景観がもたらす印象を説明しようとする点におい て類似する研究はなく独創的である。
2.研究の方法
色彩分布画像は市街地景観の画像(以下、景観画像)を 加工する事によって作成する。注視データに関しては、現 地において実際の風景を対象に記録することも可能では あるが、一定アングルを正確に設定することや、実験条件 もそろえることが難しい。色彩分布画像との比較分析を行 うことを考慮した場合、全く同じアングルの画像を用いて 分析する必要が生じることから、注視行動についても同じ 景観画像を対象として、実験を行うことが適当であると考 えられる。
2-1.色彩分布画像
彩度と明度の強度を視覚化させる方法として、グレース ケール濃度による表現が直感的な把握に効果的であると 考える。
まずは景観画像から彩度(S)と明度(V)の各ヒストグラ ムを作成する。ヒストグラム形状の MIN 値から MAX 値まで の値を等間隔に 20 等分することで 20 段階の閾値を設定し、
1 枚の景観画像から各閾値ごとに 20 枚の二値化画像を作 成する。これらの二値化画像に対して閾値の値に比例させ て濃度を設定し、重ね合わせることによって彩度と明度の 強度がグレースケールによる濃淡の分布として表現され た色彩分布画像を得ることができる。
Research on the analysis of eye fixation characteristic in townscapes -An element and the expression to form impression of the town-
Toshiro KOGA, Shinichiro IWATA