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市街地の景観における注視行動特性に関する研究

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Academic year: 2021

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市街地の景観における注視行動特性に関する研究

-街の印象を形成するエレメントとその表出-

日大生産工(院) ○古賀利郎

日大生産工 岩田伸一郎

1.はじめに

市街地空間では、広告や看板(以下、情報)は重要な景 観の構成要素であり、特に商業地域等では情報が建物の形 態やファサードデザインよりも街の景観に強く作用して いると言っても過言ではない。一つ一つの情報については、

その内容や色彩が類似する場合も多く見受けられるにも 関わらず、情報群として捉えたときには街ごとの特徴的な 印象が確かに存在している。

意図的に視線を引導する目的を持つ情報で構成される 市街地の景観を認識するときには、このような情報を含ま ない(含んでいても無視できる程度の量)風景を眺めると きとは基本的に異なる知覚のメカニズムが働いていると 推測される。本研究では、情報化された市街地の印象は情 報に向けられる注視行動パターンと強い関係を持つとい う仮説に基づき、注視行動パターンによって各市街地の景 観を類型化することで街に固有の視覚的印象が形成され るメカニズムを解明することを目指している。

注視行動に影響を及ぼす要因として、色彩分布に着目す る。情報には、一般的に建物や背景となる風景に対してア クセントの強い配色が施され、視線を引き付ける効果が期 待されている。色は、色相(H)/彩度(S)/明度(V)の 3 属 性によって表現されるが、このうち彩度(S)と明度(V)に関 しては数値によって定量的に比較することが可能である。

注視行動パターンはアイマークレコーダー(以下、EMR)

によって注視点や停留点として写真平面上に定量的にプ ロットすることができるため、彩度(S)と明度(V)の値につ いても同様に写真平面上に表示することができれば、相互 の関係性を比較したり分析することが可能になると考え られる。本稿では、彩度(S)と明度(V)を定量的に視覚化し た画像(以下、色彩分布画像)の作成方法と注視行動パター ンの抽出方法について報告する。

都市景観を対象とした景観認識の既往研究では、小泉他

文1)

は、銀座中央通りを対象として、建物高さの変化に伴 う街路の印象の変化と、建築ファサードと街路景観の印象 との関係を明らかにしている。川合他

文2)

は、京都市祇園 地区を対象としたシークェンス空間において、注視を促す

空間構成要素を抽出する事で、街並みのイメージを形成す る景観構成要素を明らかにしている。また、渡辺他

文3)

は、

実際に歩行して実験を行うという点に重点を置き、歩行者 と注視対象の位置関係に注目した上で、看板に対する歩行 者の注視傾向を明らかにしている。これらの研究では、景 観を認識する際の重要なエレメントとして、建築ファサー ドや空間構成、景観構成要素に着目しているのに対し、本 研究は情報の色彩分布と注視行動パターンの関係性に着 目して、景観がもたらす印象を説明しようとする点におい て類似する研究はなく独創的である。

2.研究の方法

色彩分布画像は市街地景観の画像(以下、景観画像)を 加工する事によって作成する。注視データに関しては、現 地において実際の風景を対象に記録することも可能では あるが、一定アングルを正確に設定することや、実験条件 もそろえることが難しい。色彩分布画像との比較分析を行 うことを考慮した場合、全く同じアングルの画像を用いて 分析する必要が生じることから、注視行動についても同じ 景観画像を対象として、実験を行うことが適当であると考 えられる。

2-1.色彩分布画像

彩度と明度の強度を視覚化させる方法として、グレース ケール濃度による表現が直感的な把握に効果的であると 考える。

まずは景観画像から彩度(S)と明度(V)の各ヒストグラ ムを作成する。ヒストグラム形状の MIN 値から MAX 値まで の値を等間隔に 20 等分することで 20 段階の閾値を設定し、

1 枚の景観画像から各閾値ごとに 20 枚の二値化画像を作 成する。これらの二値化画像に対して閾値の値に比例させ て濃度を設定し、重ね合わせることによって彩度と明度の 強度がグレースケールによる濃淡の分布として表現され た色彩分布画像を得ることができる。

Research on the analysis of eye fixation characteristic in townscapes -An element and the expression to form impression of the town-

Toshiro KOGA, Shinichiro IWATA

(2)

2-2.注視データ

大学生 10 名の被験者に対し、EMR(NAC 社製 EMR-8)を用 いた景観認識実験を行う(図 2) 。

被験者に対してディスプレイ上で景観画像を提示し、写 真がどこの街で撮影されたものかを考えてもらい、分かっ た時点で実験を終了する。分からない場合は、30 秒が経 過した時点で終了とする。実際に街の景観を臨むときの視 界に近づけるために、ディスプレイとの距離を調整し、レ ンズは視野角 62°のものを使用した。

実験により得られた EMR データから、注視点を抽出する

図 1 研究のフローチャート

図 2 実験装置

が、これらのデータには被験者ごとの個人差が表れること が予想される。そのため、被験者全員分のデータを重ね合 わせることで、10 人の平均的な注視傾向を示すデータと して扱うことにする。

3.画像作成 3-1.対象の選定

情報が景観のイメージに強く作用している市街地とし て、以下の 6 地区を事例として選定する。

①「銀座」 「日本橋」 ・・・袖看板が張り出して設置されて いる。

②「渋谷」 「秋葉原」 ・・・建物壁面に貼り付けられた平面 的な平看板が多い。

③「原宿」 ・・・建物屋上から飛び出した立体的な屋上看 板が多い。

④「原宿 2」 ・・・情報が建物のファサードと一体化して デザインされている。

市街地を訪れて交差点を渡る時、視界がひらけるため、

街を広範囲に見渡すことができる。本研究では、その際に 目にする景観がその地区の印象形成にとって重要な役割 を果たすものだと考え、交差点の中心から道路軸方向に対 して撮影した景観画像を用いる(図 3) 。

図 3 景観画像

3-2.色彩分布画像の作成

対象地域の景観画像から彩度と明度のそれぞれのヒス トグラムを作成する(図 4) 。

彩度ヒストグラムでは、各街とも 0 から 50 付近で最高 値を示し、彩度が高くなるに連れて緩やかに減少していく 傾向が見られる。MIN 値はどの街も 0 だが、MAX 値は各街 の景観画像ごとに異なる。このことは、各景観画像ごとに 閾値の間隔が異なり、同じ濃度の領域であっても彩度の値 が異なることを意味する。本研究の目的は、景観画像相互 の彩度の比較を行うことではなく、それぞれの景観画像内 における彩度の分布と注視行動パターンとの関係を明ら かにすることであるため、画像間で同じ濃度の領域が同じ 彩度となる補正は行っていない。

明度ヒストグラムでは、日本橋、秋葉原は山が MIN 値方

(3)

向に偏り、渋谷、原宿2は MAX 値方向に偏った。各市街地 とも MIN 値が 0、MAX 値が 255 のヒストグラム形状となっ た。彩度ヒストグラムの閾値とは異なり、全ての街の景観 画像において、0 から 255 の値を 20 段階に分解した共通 の閾値を設定した。

上記に説明した閾値に基づき、2-1 で示した手順に従っ て 20 枚の二値化画像を作成し、これらを重ね合わせるこ とで図 5 に示す彩度分布画像及び明度分布画像を導いた。

図 4 彩度・明度各ヒストグラム

図 5 色彩分布画像(秋葉原)

3-3.注視データの作成

2-2 に示した手順に従った景観認識実験により EMR デー タを記録した(図 6 上) 。EMR データでは、注視点は 0.06

秒以上視線が停留した位置(停留点)を中心とし、停留し た時間の長さを直径とした円の配置と、その間の視点のパ スとして表示される。被験者ごとに停留点の位置や大きさ に個体差があることがわかるが、注視点の重複個所もいく つか見られる。個々の被験者の EMR データから注視点を抽 出し、全被験者分を重ね合わせることで(図 6 下)が得られ た。

4.まとめ

得られた注視点集合と色彩分布画像を重ねた図を(図 7) に示す。彩度の色彩分布画像については、濃度の高い看板 付近に注視点が集中する傾向が見られ、注視行動と彩度の 分布に相関性が表れていると評価することができる。明度 の色彩分布画像については、濃度の高い場所に対しても低 い場所に対しても注視点の集中が表れていることから、明 確な関係性を見出すことは難しい結果と考えられる。

今回のデータ作成の作業によって、彩度の色彩分布画像 と注視行動の間に何らかの関係性が存在することを確認 できた。今後は、今回作成したデータをもとに、注視行動 と彩度の関係性をより明確に判別することを可能にする 画像処理の方法や、具体的な注視行動パターンの類型化方 法について検討する予定である。

図 6 4 人分の EMR データとそこから抽出した全被験者の注視点集合

(秋葉原)

(4)

図 7 注視点と色彩分布画像

図 8 停留点と彩度分布画像

「参考文献」

1)小泉光司他、 「銀座中央通における建物高さと建物ファサードに着 目した景観分析-個性的な街路景観創出を目的とした VR を用いた 景観分析(その 1)-」 日本建築学会計画系論文集第 613 号、 P151-158、

2007.3

2)川合康央他、 「街路空間での代替視野画像での注視を促す空間構成

要素の研究-京都中心市街地の景観形成過程が夫々異なる街路の シークェンス-」日本建築学会計画系論文集第 542 号、P169-174、

2001.4

3)渡辺聡他、 「商業地街路における歩行者の看板注視傾向に関する研

究-銀座中央通りにおける歩行実験の分析-」日本建築学会計画系

論文集第 574 号、P113-120、2003.12

図 7  注視点と色彩分布画像  図 8  停留点と彩度分布画像  「参考文献」  1)小泉光司他、 「銀座中央通における建物高さと建物ファサードに着 目した景観分析-個性的な街路景観創出を目的とした VR を用いた 景観分析(その 1)-」 日本建築学会計画系論文集第 613 号、 P151-158、 2007.3  2)川合康央他、 「街路空間での代替視野画像での注視を促す空間構成 要素の研究-京都中心市街地の景観形成過程が夫々異なる街路の シークェンス-」日本建築学会計画系論文集第 542 号、P16

参照

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