非鉄金属スラグ配合舗装体の長期供用性と環境安全性について
日大生産工 ○加納 陽輔 日大生産工 秋葉 正一 1. はじめに
近年,土木分野では主要な建設資材である骨材の枯渇化 を背景に,代替骨材の安定供給と安全担保が喫緊の課題と なっている.特に,銅やフェロニッケル等を製錬する際に 副生する非鉄金属スラグは品質管理された工業製品であり,
天然砂や他のスラグ類に比べて品質のばらつきが小さいが,
供用性や安全性等の検証が十分でないことから道路用骨材 としての規格化には至っていない現況にある.
本研究では非鉄金属スラグの道路用骨材としての適用性 を究明するため, スラグ単体での耐久性と安全性を評価し,
長期供用性及び環境安全性を試験舗装から検証した.
2. 非鉄金属スラグの物性と耐久性
非鉄金属スラグの適否を判断する上では産出工程をはじ め,単体での物性及び耐久性,有害物質の含有・溶出量等 を事前に把握する必要がある.本研究では,製造所の異な る各 2 種類の銅スラグ(以下,CUS) ( C1, C2)及びフェ ロニッケルスラグ(以下, FNS ) ( F1 , F2 )を対象とした.
(1) 非鉄金属スラグの産出工程
C1 及び C2 は自溶炉で溶融され,錬鍰炉にて銅分と分離 後に水砕されたもので,この製錬法は硫化銅鉱の酸化熱を フルに活用するため燃料消費量が少なく,国内の約7割の 銅がこの炉法によって生産されている.他方, F1 はエルケ ム法, F2 はロータリーキルン方式によって製錬され,ニッ ケル分を回収した後に水砕されたものである.このように 水砕方式によって粒状化されたスラグは,針状や突起部を 有する特異な形質(以下,脆形)を有する場合があり,中 でも CUS に脆形が多く見られた(写真-1) .なお,写真-1 の C1 及び C2 の改良品は形質改良を試みたものであり,骨 材としての高品質化について併せて検討を行う.
(2) 非鉄金属スラグの物性
脆形骨材が確認された CUS に対して, 自生破砕式整粒機 による高品質化を試みた.スラグの改良処理は天然砂の粗 粒率を目安として,粗粒率が 2.5±0.1 となる各 3 通りの整 粒機回転速度(以下,周速) (C1 : 45, 50, 55 m/s, C2: 55,
60 , 65 m/s )を採用し,改良後の CUS (以下, C1(45) , C1(50) , C1(55), C2(55), C2(60), C2(65), )と未改良の CUS( C1,
C2 )及び FNS ( F1 , F2 ) ,砕砂(栃木県産硬質砂岩) ,天然 砂(茨城県産洗砂)を比較した.なお,試験は舗装用砕石 に定められている目標値を指標として,骨材のふるい分け
Performance and safety of the pavement mixed Nonferrous Metal Slag Yosuke KANOU and Shoichi AKIBA
写真-1 非鉄金属スラグの外観
F1C1
C1 改良品
F2
C2
C2 改良品
0 20 40 60 80 100
0.01 0.1 1 10 100
ふるい目呼び寸法 (mm)
通過質量百分率 (%)
C1 C1(45) C1(50) C1(55)
C2 C2(55) C2(60) C2(65)
F1 F2 砕砂 天然砂
図-1 粒径加積曲線
表乾密度 吸水率 単位容積質量 実積率
(g/cm3) (%) (kg/m3)×103 (%)
C1 3.447 0.41 2.190 63.8
C1(45) 3.411 0.65 2.169 64.0
C1(50) 3.418 0.58 2.201 64.8
C1(55) 3.398 0.69 2.242 66.6
C2 3.424 0.63 2.009 59.0
C2(55) 3.492 1.10 2.364 67.0
C2(60) 3.552 1.23 2.400 66.2
C2(65) 3.532 1.00 2.409 67.5
F1 2.903 0.63 1.760 60.6
F2 3.051 0.54 1.804 59.1
砕砂 2.636 0.83 1.656 63.3
天然砂 2.583 2.24 1.609 63.7
表-1 物性値一覧
試験( JIS A 1102 準拠) ,細骨材の密度および吸水率試験( JIS A 1109 準拠) を実施し, 単位容積重量および実積率試験 (JIS
A 1104 準拠) から特徴的な材質と形質を定量的に評価した.
粒径加積曲線を図-1 に,物性値一覧を表-1 に示す.
未改良のスラグは製造所毎の差異が見られるが,砕砂や 天然砂に比べて単粒であり,密度が高く,吸水率が低い傾 向が見られる.一方,改良後の CUS はいずれも粒度や実積 率が近似し, C2 は周速とともに吸水率と単位容積質量が増 大した.このことから,改良に伴う CUS の均質化が見て取 れるとともに, C2 に対する改良効果が特に大きいことを示 唆している.なお,CUS 及び FNS は砕石の目標値である 密度 2.45g/cm
3以上,吸水率 3.0 %以下を満足している.
(3) 非鉄金属スラグの耐久性
細骨材の耐久性に関しては各機関で独自の評価が検討さ れており,本研究ではロータップ振とう機による耐久性試 験(試料:約 500g,鋼球(ふるい目 0.6 ㎜) :φ25mm ・ 67g・
20 個,振とう時間: 30min) ,突固め試験機による耐久性試 験(試料:約 5000g,モールド:φ15cm,ランマー: 4.5kg,
突き固め: 75 , 125 回× 3 層)から非鉄金属スラグの耐久 性を評価した.なお,結果は試験前後における 0.6 ㎜通過 質量百分率の比(試験後/試験前)を細粒化度として評価 した.振とう細粒化度及び突固め細粒化度を図-2 に示す.
未改良の C2 は機械的または自然の磨砕作用を受けてい る砕砂や天然砂に比べ,振とう細粒化度,突固め細粒化度 がともに大きい.一方,改良後の CUS と FNS は標準的な 骨材と同程度であり,製造所の異なる C1, C2 は改良時の 周速に影響されず, 処理後の細粒化度がほぼ同等となった.
(4) 非鉄金属スラグの安全性
非鉄金属スラグ単体での安全性を確認するため,含有量 試験(環境庁省告示第 19 号準拠)及び溶出量試験(環境庁 告示第 46 号準拠)を実施した.含有量試験の結果を 表-2 に,溶出量試験の結果を表-3 に示す.
土壌汚染対策法(平成 14 年法律第 53 号)で規制対象と なっている有害物質の含有量は, F1 , F2 ともに検出限界未 満であり,基準値を満足する結果が得られた.一方,C1 及び C2 は砒素と鉛の含有量が基準値を僅かに上回ること から, CUS を道路用骨材として利用する場合,これらの含 有量に留意した管理と取扱いが必要と言える.なお,溶出 量に関しては CUS , FNS ともに検出限界未満であり,土壌 汚染対策法の基準値を十分に満足することが確認された.
3. 非鉄金属スラグ配合舗装の供用性
非鉄金属スラグを表層用密粒度アスファルト混合物に配 合した舗装の供用性を評価するため, ( 独 ) 土木研究所の走 行実験場において試験舗装を舗設し,49k N 輪荷重が 10 万 輪走行毎のひび割れ率,わだち掘れ量,平たん性,すべり 抵抗性を調査した.なお,走行実験は 3 年間(7~ 10 月に 20万輪, 11~ 2月に20万輪) に亘って実施したものであり,
初年度(平成 17 年)は C1 及び F1 を配合した工区(以下,
C1 工区及び F1 工区)と標準的な工区(以下,標準工区)
の供用性を比較評価した.また,次年度では C1 工区に供 用性の低下が認められたため,改良後の C2(60) を配合した 工区(以下,C2(60)工区)に打ち換えて,同様に調査を継 続した.試験舗装の構成及び調査地点配置図を図-3 に,表 層用アスファルト混合物の配合及び物性値を表-4 に示す.
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5
C1 C1(45)
C1(
50) C1(
55) C2
C2(
55) C2(60)
C2(65) F1 F2 砕砂
天然砂
突固め細粒化度
振とう 突固め(75回) 突固め(125回)
図-2 振とう細粒化度及び突固め細粒化度
図-3 試験舗装の構成及び調査地点配置図
再生密粒度As.舗装(20)
再生粗粒度As.舗装(20)
M-30
C-40
表層 5㎝
基層 5㎝
上層路盤 20㎝
下層路盤 45㎝
24m 再生密粒度As.舗装(20)
再生粗粒度As.舗装(20)
M-30
C-40
表層 5㎝
基層 5㎝
上層路盤 20㎝
下層路盤 45㎝
24m
舗装構成
5.0m 3.5m 2.0m 0.75m 0.75m
0.75m 0.75m
2.5m 2.5m
2.5m 2.5m 0.7m
0.7m 24.0m 19.0m
OWP 外側
BWP IWP 内側 測線1
測線2
測線3
走行方法
:すべり抵抗性測点 5.0m
3.5m 2.0m 0.75m 0.75m
0.75m 0.75m
2.5m 2.5m
2.5m 2.5m 0.7m
0.7m 24.0m 19.0m
OWP 外側
BWP IWP 内側 測線1
測線2
測線3
走行方法
:すべり抵抗性測点
工区毎の調査地点
表-4 表層用アスファルト混合物の配合及び物性
C1工区 C2(60)工区 F1工区 標準工区
5号砕石 18 18 18 18
6号砕石 19 16 18 18
7号砕石 4 9 4 4
砕砂 8 7 8 9
粗目砂 - - - 9
細目砂 8 7 8 9
スラ グ 10 10 10 -
再生骨材13-0 30 30 30 30
石粉 3 3 3 3
4.8 4.9 4.9 5.1
2.456 2.458 2.418 2.386
3.9 3.6 3.7 3.7
74.5 76.3 75.5 76.0
13.75 11.80 14.02 16.13 骨
材 配 合
%
設計再生アスファ ルト量 % 密度 g/cm3 空隙率 % 飽和度 % マーシャル安定度 kN
分 析 項 目 C 1 C 2 F 1 F 2
ヒ 素 2 3 0 2 5 0 < 1 5 < 1 5 ≦ 1 5 0
鉛 4 4 0 2 0 0 < 1 5 < 1 5 ≦ 1 5 0
カ ド ミ ウ ム < 1 5 < 1 5 < 1 5 < 1 5 ≦ 1 5 0
セ レ ン < 1 5 < 1 5 < 1 5 < 1 5 ≦ 1 5 0
ホ ウ 素 < 4 0 0 < 4 0 0 < 4 0 0 < 4 0 0 ≦ 4 0 0 0 フ ッ 素 < 4 0 0 < 4 0 0 < 4 0 0 < 4 0 0 ≦ 4 0 0 0
六 価 ク ロ ム < 2 5 < 2 5 < 2 5 < 2 5 ≦ 2 5 0
( m g / k g ) F N S
C U S 基 準 値
表-2 含有量試験結果
分 析 項 目 C 1 C 2 F 1 F 2
ヒ 素 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 ≦ 0 . 0 1 鉛 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 ≦ 0 . 0 1 カ ド ミ ウ ム 0 . 0 0 1 < 0 . 0 0 1 < 0 . 0 0 1 < 0 . 0 0 1 ≦ 0 . 0 1 セ レ ン < 0 . 0 0 2 < 0 . 0 0 2 < 0 . 0 0 2 < 0 . 0 0 2 ≦ 0 . 0 1
ホ ウ 素 < 0 . 1 < 0 . 1 < 0 . 1 < 0 . 1 ≦ 1 . 0
フ ッ 素 < 0 . 1 < 0 . 1 < 0 . 1 < 0 . 1 ≦ 0 . 8
六 価 ク ロ ム < 0 . 0 2 < 0 . 0 2 < 0 . 0 2 < 0 . 0 2 ≦ 0 . 0 5 ( m g / L ) 基 準 値 F N S
C U S
表-3 溶出量試験結果
(1) 非鉄金属スラグ配合舗装のひび割れ率
ひび割れ調査は,舗装調査・試験法便覧「S029 舗装路面 のひび割れ測定方法(スケッチ法) 」に準じて路面全体に縦 横 0.5m 毎のます目を設定し, 工区別のひび割れ率を求めた.
いずれの工区においても 49kN 換算輪数 40~ 120 万輪走 行後のひび割れ率は 0%であり,工区毎の路面状況に大き な差異は観察されなかった.
(2) 非鉄金属スラグ配合舗装のわだち掘れ量
わだち掘れ量の調査は,舗装調査・試験法便覧「S030 舗 装路面のわだち掘れ量測定方法」に準じて,横断プロフィ ルメータを用いて測定した.わだち掘れ量を図-4 に示す.
なお,横軸は 10 万輪/目盛として走行時の年月を記した.
全区間ともに初期圧密と思われるわだち掘れの進行が見 られ,特に C1 工区では比較的早期に発現している.また,
全工区とも夏季の温度上昇に起因したわだち掘れの進行が 平均気温の 2℃以上高い 19 年度に顕著であるが,以降は僅 かな進行に止まっている.なお, C1 工区はわだち掘れの進 行が標準工区に比べて大きいものの,改良後の C2(60)工区 は F1 工区と同傾向である.この結果は,形質改良に伴う わだち掘れ抑制効果を示しており, FNS 及び改良後の CUS を配合した混合物は耐流動性に問題がないと判断できる.
(3) 非鉄金属スラグ配合舗装の平たん性
平たん性の調査は「 S028 舗装路面の平たん性測定方法」
に準じ, 3mプロフィルメータを用いて荷重車の両側車輪走
行位置(図 -12 測線 1 ~ 3 )を測定した.平たん性σ
3m(縦 断凹凸量)の測定結果を図-5 に示す.
平たん性σ
3mは各工区とも 10 万輪走行後に大きな増加 が見られるが,その後は概ね横ばいの傾向を示している.
また,工区による比較を 40 万輪走行後で見ると,標準工区 が 2.97mm に対して F1 工区は 2.57mm と小さい.一方, C1 工区は平たん性σ
3mが 3.53mm とわだち掘れ同様に大きい ものの, 形質改良後の C2(60) 工区では 2.32mm に減少した.
なお,全工区の平たん性σ
3mは初期値に比べてやや増加し ているが, 40 ~ 120 万輪走行後では交通量の多い一般道路 の補修要否の判断目標値である 4mm に達していない.
(4) 非鉄金属スラグ配合舗装のすべり抵抗性
すべり抵抗性調査は「S021 舗装路面のすべり抵抗の測定 方法」のうち「S021-2 振り子式スキッドレジスタンステス タによるすべり抵抗測定方法」に準じて実施し,各測点に おける 3 回の平均値をすべり抵抗値(以下,BPN)として 評価した. BPN の測定結果を図-6 に示す.
BPN は走行輪数に伴い増減が見られるが,全工区とも旧 日本道路公団の出来形基準である BPN60 以上を満足して いる.なお,初期の C2(60)工区は他の工区に比べてやや大 きな値を示しているが,走行輪数の増加に伴って工区毎の 差が減少し, 10 万輪走行以降に大きな差異は認められない.
(5) 非鉄金属スラグ配合舗装の供用性
非鉄金属スラグ配合舗装の供用性評価として,ひび割れ 率,わだち掘れ量,平たん性σ
3mから維持管理指数(以下,
MCI )を算出した. MCI (維持管理指数)を図-7 に示す.
F1 工区及び C2(60)工区の MCI は標準工区とほぼ同様の 推移を示しており, F1, C2(60)を表層に 10wt%配合したこ とによる舗装の供用性への影響は見られない.また,120 万輪走行後の F1 工区及び 80 万輪走行後の C2(60)工区は,
MCI がともに 7 以上であり,望ましい管理水準の区間とし て供用開始初期の性能を概ね保持している.一方, MCI の 低下傾向が大きい C1 工区は,わだち掘れ量の増加が主な 原因と考えられるが,C2(60)工区のわだち掘れ量が小さい ことから,形質改良による供用性の改善が期待できる.
図-4 わだち掘れ量(OWP とIWP の平均値)
0 5 1 0 1 5 2 0 2 5 3 0
H 1 7 . 6 H 1 7 . 7 H 1 7 . 1 0H 1 7 . 1 1 H 1 8 . 2 H 1 8 . 8 H 1 8 . 9 H 1 8 . 1 2 H 1 9 . 2 H 1 9 . 8 H 1 9 . 1 0H 1 9 . 1 1 H 2 0 . 2 49 k N 換 算 輪 数 (1 0 万 輪 / 目 盛 )
わだち掘れ量 (mm)
C 1 C 2 (6 0 ) F1 標 準 工 区
図-5 平たん性σ
3mm(
OWPと
IWPの平均値)
0 .0 0 .5 1 .0 1 .5 2 .0 2 .5 3 .0 3 .5 4 .0
H 1 7 . 6 H 1 7 . 7 H 1 7 . 1 0 H 1 7 . 1 1 H 1 8 . 2 H 1 8 . 8 H 1 8 . 9 H 1 8 . 1 2 H 1 9 . 2 H 1 9 . 8 H 1 9 . 1 0H 1 9 . 1 1 H 2 0 . 2 49 k N 換 算 輪 数 (1 0 万 輪 / 目 盛 )
平たん性σ3mm (mm)
C 1 C 2 (6 0 ) F1 標 準 工 区
図-6 すべり抵抗性
BPN(OWPと
IWPの平均値)2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9 0
H 1 7 . 6 H 1 7 . 7 H 1 7 . 1 0H 1 7 . 1 1 H 1 8 . 2 H 1 8 . 8 H 1 8 . 9 H 1 8 . 1 2 H 1 9 .2 H 1 9 .8 H 1 9 . 1 0H 1 9 . 1 1 H 2 0 .2 49k N 換 算 輪 数 (1 0 万 輪 / 目 盛 )
すべり抵抗 BPN
C 1 C 2 (6 0 ) F1 標 準 工 区
図-7
MCI(OWPとIWP の平均値)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0
H1 7.6 H1 7.7H17 .1 0H1 7.1 1 H18 .2 H18 .8 H18 .9 H18 .1 2H1 9.2 H1 9.8H1 9.1 0H1 9.1 1 H20 .2 49kN換算輪数 (10 万輪/ 目盛)
維持管理指数 MCI
C1 C2 (60 ) F1 標準工区
4. 非鉄金属スラグ配合舗装の環境安全性評価
CUS 単体では砒素及び鉛の含有量が基準値を僅かに上 回ることから, 特に CUS の適用性と安全性を判断する上で 実用に即した環境影響を確認する必要がある.本章では,
非鉄金属スラグ配合舗装の環境安全性評価として,試験舗 装から供用及びリサイクルに伴う環境影響を調査した.
(1) 供用に伴う環境安全性
CUS 配合工区( C2(60) 工区)脇の四隅にハイボリューム エアサンプラー(吸引流量:max.700L/min)を設置し,車 両走行時の飛散粉塵を回収した.なお,サンプラー高さは 1.2m として,雨天時を除く車両走行時に 5 日間(計 24 時 間)のサンプリングを行い,砒素及び鉛の含有量を測定し た.また,実験後の路面上堆積粉塵を回収し,全含有量分 析を実施した.車両走行時における周辺大気の分析結果を 表-5 に,路上堆積粉塵の全含有量分析結果を表-6 に示す.
車両走行に伴って大気中に飛散した粉塵の砒素及び鉛の 含有量は,全ての測点において検出限界未満であり,供用 に伴う粉塵の有毒性は認められない.また,走行実験後の 路上堆積粉塵は炭素量及び強熱減量から 10 %強がタイヤ 由来であり,その他は土壌の一部と考えられる.
(2) リサイクルに伴う環境安全性
C1 工区の切削作業時にハイボリュームエアサンプラー を設置し,維持改修に伴う環境影響を調査した.なお,サ ンプリングは切削作業と並行して 20min 実施し,測点脇の 風向風速計から風による影響を併せて確認した.また,非 鉄金属スラグ配合舗装をリサイクルする際の環境安全性の 検証として,切削後の C1 工区発生材を母材に,これを破 砕・分級して再材料化したアスファルト混合物再生骨材 (以 下,再生骨材)と,この再生骨材を再生密粒度アスファル ト混合物(最大粒径 20mm )に 30wt %配合した再生合材,
さらに,この再生合材を破砕した再生路盤材(RC20)を作 製し, 「 JIS K 0058-1.2 スラグ類の化学物質試験方法」の含 有量試験及び溶出量試験を行った.切削時の粉塵分析結果 及び風向風速データを表-7 に,再生骨材,再生合材,再生 路盤材の含有量及び溶出量試験結果を表-8 に示す.
調査時に風下となった測点④を中心に 0.01~ 0.04g 程度 の粉塵が回収されているが,いずれも砒素及び鉛の含有量 は検出限界未満である.また,再生骨材は砒素及び鉛の含 有量がともに 39mg/kg ,再生合材は砒素が 12mg/kg ,鉛が 14mg/kg であり, C1 単体の含有量(表-2)に基づいて各混 入率から算出される値と同程度である. このことから, CUS 配合混合物の有害物質含有量は CUS の混入量から推定す ることが可能であり,リサイクルを踏まえた適切な利用を 検討することで,安全性が概ね担保されると考える.
5. まとめ
本研究から得られた知見を以下に取りまとめる.
1) CUS 及び FNS はともに高密度かつ低吸水な特質を有 し,粒度はやや単粒的であるが,形質改良による均質 化と粒度調整が可能と考えられる.
2) 非鉄金属スラグに形質改良を施すことで,突起部やひ び割れを有する粒子が磨砕され,見掛け上の粒子強度 の改善に伴い骨材としての耐久性が向上する.
3) 未改良の CUS 配合舗装は横断凹凸量が比較的大きい 一方,改良後の CUS 及びFNS 配合舗装は横断・縦断 凹凸量が小さく,供用性は標準工区と同程度である.
4) 非鉄金属スラグを 10wt%配合した舗装は,供用時や切 削時の粉塵及び溶出等による環境影響を及ぼすこと なく,リサイクルに適応した環境安全性を有している.
以上から,非鉄金属スラグのアスファルト混合物用細骨 材としての適用性が認められ,磨砕処理による均質化と高 品質化の可能性が確認された.今後,CUS 及び FNS の特 性や形質,耐久性,環境安全性等を踏まえた道路用骨材と しての規格化に向け, より具体的な検討を行う必要がある.
再生骨材 再生合材 再生路盤材
砒素 5 39 12 12 ≦ 150 mg/kg(dry)
鉛 5 39 14 13 ≦ 150 mg/kg(dry)
カ ドミウム 0.001 <0.001 <0.001 <0.001 ≦ 0.01 mg/L 鉛 0.005 <0.005 <0.005 <0.005 ≦ 0.01 mg/L 六角クロ ム 0.02 <0.02 <0.02 <0.02 ≦ 0.05 mg/L 砒素 0.002 <0.002 <0.002 <0.002 ≦ 0.01 mg/L 総水銀 0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 ≦ 0.0005 mg/L セレン 0.002 <0.002 <0.002 <0.002 ≦ 0.01 mg/L
ふっ素 0.1 <0.1 <0.1 <0.1 ≦ 0.8 mg/L
ほう素 0.02 0.03 0.03 0.04 ≦1.0 mg/L
単位
溶 出 量 試 験 含 有 量 試 験 区 分析結果 分
計量 対象
定量
下限値 基準値
表-8 全含有量分析結果
① ② ③ ④
砒 素 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 < 0 . 0 0 5 鉛 < 0 . 0 0 2 < 0 . 0 0 2 < 0 . 0 0 2 < 0 . 0 0 2 測 点 ( C 2 ( 6 0 ) 工 区 四 隅 に 設 置 し た サ ン プ ラ ー N o . ) 計 量
対 象
(μg/ m3)
表-5 車両走行時飛散粉塵の含有量試験結果
① ② ③ ④
0.00864 0.01094 0.0024 0.04208 g/濾 紙 砒 素 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 μ g/m 3 鉛 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 μ g/m 3 平 均
風 向 最 大 瞬 間
風 向 平 均
風 速 m /s
最 大 瞬 間
風 速 m /s
単 位
含 有 量 試 験
粉 塵 量
風 向 風 速 デ ー タ
0.9~ 1.1 m /s
2.5~ 2.8 m /s W,N
WNW,NW
測 点 (C1工 区 四 隅 に 設 置 したサ ン プ ラ ー No.)
表-7 切削時の粉塵分析結果及び風向風速データ 表-6 路上堆積粉塵の全含有量分析結果
C1工区 路面上粉塵
F1工区 路面上粉塵
標準工区 路面上粉塵
二酸化ケイ素 % 51.5 55.4 40.0
酸化アルミニウム mg/kg(dry) 41000 43000 41000
全鉄 mg/kg(dry) 27000 31000 29000
酸化カルシウム mg/kg(dry) 16000 7800 27000
炭素 %(dry) 6.24 9.00 10.10
ケイ素 %(dry) 24.0 25.9 18.7
強熱減量 % 7.9 11 13
(単位:mg/L)
含 有 量 試 験 区 分析結果
分 計量対象 単位