原 著
当施設における大腸穿孔手術例の予後因子と臓器障害の検討
国保直営総合病院君津中央病院外科1),同 救命救急センター2)
島居 傑1),柳澤真司1),北村伸哉2),小林壮一1),岡庭 輝1)
要旨:2002 年 1 月から 2012 年 12 月までに手術を施行した大腸穿孔症例 94 例を対象とし在院死に関する予後因 子を検討した。また,SOFA score を用いて臓器障害を評価し,その予後への影響を検討した。11 例の在院死亡 例を認め 10 例が急性期病態に関連した死亡例であった。多変量解析の結果,術前 PT─INR>1.5 が独立した予 後不良因子と判明した。SOFA score は生存例と比べ死亡例で有意に高く,各パラメータの比較では術前の呼吸 器系,中枢神経系,腎機能の項目と,術後の呼吸器系,心血管系,中枢神経系の項目が死亡例で有意に高かった。
一方,術前・術後ともに肝機能や凝固系の項目に差はなかった。術後の腎機能の項目にも差はなく,術後腎機能 障害が顕著になった症例には CHDF を用いた管理が奏功した可能性が示唆された。大腸穿孔ではさまざまな臓 器障害を呈し重篤となるため,早期の予後不良例の認知と適切な管理が重要である。
【索引用語】大腸穿孔,予後因子,多臓器障害,SOFA score
は じ め に
大腸穿孔は多量の細菌を含む糞便等の漏出により重 篤な腹膜炎を呈し,容易に敗血症へと進展する。さら には播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: 以 下,DIC) や 多 臓 器 障 害(multiple organ dysfunction syndrome:以下,MODS)等を合 併し死に至ることもまれではない。そのため,予後不 良となる症例の早期認知と,臓器障害に対する適切な 治療が救命のために重要となる。
今回,当科で経験した大腸穿孔手術症例をまとめ,
在院死に関する予後因子を検討した。
また,各症例の SOFA score を調べ,そのパラメー タについて検討することで,臓器障害の予後への影響 を検討した。
Ⅰ.対象および方法 1.対象
2002 年 1 月から 2011 年 12 月までの 10 年間に大腸 穿孔と診断し緊急手術を行った症例のうち,肺癌と胆 管癌の加療中に特発性穿孔を呈し,術後早期に癌死し た 2 例を除いた 94 例を対象とし,診療録を用いて後 方視的研究を行った。
なお,虫垂穿孔例と,術中操作による損傷や縫合不 全などの術後偶発性合併症による穿孔例は対象から除 外した。
2.方法
①在院死に関する予後因子の検討
背景因子として年齢,性別,穿孔部位,穿孔原因,
術式をまとめた。
また,術後在院日数とその転帰を調べ,症例を在院 生存例と死亡例に分け,年齢(75 歳以上または未満),
穿孔部位(右側結腸または左側結腸・直腸),穿孔原 因(良性または悪性),穿孔様式(被覆穿孔または遊 離穿孔),手術時間,発症からの術前経過時間(24 時 間未満または 24 時間以上),術前全身性炎症反応症候 群(systematic inflammatory response syndrome:
以 下,SIRS) の 有 無, 術 前 シ ョ ッ ク( 収 縮 期 圧 90mmHg 以下)の有無,術前・術後白血球数(以下,
WBC,WBC<4,000/μL か WBC>12,000/μL,また は 4,000/μL≦WBC≦12,000/μL),術前・術後血小 板数(以下,PLT,PLT<100,000/μL または PLT≧
100,000/μL),術前プロトロンビン時間国際標準比(以 下,PT ─ INR,PT ─ INR>1.5 ま た は PT ─ INR≦1.5,
術後 PT─INR は欠損値が多く検討から除外)につい て検討し,在院死に関する予後因子の検討を行った。
また,生存例・死亡例の臓器補助療法の施行状況を比 較するため,各群の術後人工呼吸器離脱期間(ventila- tor free days:以下,VFD),持続的血液濾過透析
(continuous hemodiafiltration: 以 下,CHDF) 施 行 の有無を調べた。
WBC や PLT,PT ─ INR は日本版敗血症診療ガイ ドライン1)を参照し,炎症反応や臓器障害の指標と して記されている値をカットオフとした。被覆穿孔は,
術中所見で腸内容物が腸間膜などの周囲臓器に覆われ 限局していたものと定義し,遊離穿孔は内容物の被覆 がないものと定義した。
重症度と臓器障害の評価には sequential organ fail- ure assessment score(以下,SOFA score)2)3)を使 用し,生存例と死亡例の術前・術後の値を比較検討し
た。腎機能のパラメータは,術前尿量の評価が困難で あった症例では血清クレアチニン値(以下,Cre)の みを参考に算定した。術後は術翌日の Cre,もしくは 翌々日までの尿量から算定した。
予後因子・臓器障害の検討ともに,術後の項目は術 翌日の値を評価した。
②データ解析
統計学的検討は JMP 5.1 を使用し,Fisher の正確 検定,Wilcoxon の順位和検定を用いて単変量解析を 行った。多変量解析はロジスティック回帰分析を用い た。p<0.05 を持って統計学的に有意と判定し,数値 は平均値±標準偏差で示した。
Ⅱ.結 果 1.患者背景
平均年齢は 70.4 歳であり,男性 47 例,女性 47 例 であった。
穿孔部位は S 状結腸が 58 例と最も多く,直腸 18 例,
下行結腸 9 例,上行結腸 4 例,横行結腸 3 例,盲腸 3 例と続いた。また,1 例で下行結腸と S 状結腸の同時 穿孔を認めた。
穿孔原因は悪性腫瘍によるものが 29 例と最も多く,
次いで憩室によるものが 26 例,便秘・悪性腫瘍によ らない腸閉塞によるものが 9 例,医原性穿孔が 6 例,
腸管虚血によるものが 4 例,外傷・異物によるものが 2 例であり,特発性穿孔を 18 例認めた(表 1)。
術式は腸切除+人工肛門造設術を施行した例が最も 多く 53 例であり,人工肛門造設術のみ施行した例が 15 例,縫合閉鎖+人工肛門造設術を施行したものが 7 例であった。また,16 例では腸切除+吻合術を施行し,
2 例では穿孔部閉鎖術のみ施行,1 例では被覆されて
おり洗浄ドレナージのみで終了としていた(表 2)。
2.在院生存例と死亡例の検討
在院生存例は 83 例(88.3%),在院死亡例は 11 例
(11.7%)であり,術後 30 日以内の周術期死亡例を 5 例認めた。術後 31 日以降の死亡例のうち 3 例が 100 日を越えて生存した。うち 2 例は急性期合併症からの 状態不良が遷延し死に至った症例であったが,1 例は 悪性リンパ腫による穿孔例であり,急性期病態改善の 後に癌死した。よって,予後因子や臓器障害の検討で は同症例を生存例に分類し,生存例 84 例(89.4%),
死亡例 10 例(10.6%)で検討を行った。
症例の術後在院日数(他疾患治療中に穿孔をきたし 当科で手術を要した症例は転科までの期間)は平均 35.3 日であり,生存例で平均 35.1 日(11 〜 139 日),
死亡例で平均 36.2 日(1 〜 116 日)であった。
在院生存例と死亡例における背景因子の比較を表 3 に,血液学的検査所見の比較を表 4 に示す。単変量解 析の結果,75 歳以上(p=0.048),右側結腸穿孔(p=
0.010),術後 PLT<100,000/μL(p=0.016),術前 PT
─ INR>1.5(p=0.026)が有意な予後因子となった。
また,単変量解析の結果有意差を認めた因子を共変量 表 2 術式
腸切除+人工肛門造設術 53(56.4%)
人工肛門造設術 15(16.0%)
縫合閉鎖+人工肛門造設術 7(7.4%)
腸切除+吻合術 16(17.0%)
穿孔部閉鎖術 2(2.1%)
洗浄ドレナージ術 1(1.1%)
症例数 94
年齢(歳)* 70.4±13.5
性別 男 47:女 47
穿孔部位
盲腸 3(3.2%)
上行結腸 4(4.2%)
横行結腸 3(3.2%)
下行結腸 9(9.5%)
S 状結腸 58(61.1%)
直腸 18(18.9%)
(1 例で 2 ヵ所で穿孔)
穿孔原因
悪性腫瘍 29(30.9%)
憩室 26(27.7%)
便秘・腸閉塞 9(9.6%)
医原性 6(6.4%)
腸管虚血 4(4.3%)
外傷・異物 2(2.1%)
特発性 18(19.1%)
表 1 患者背景
*平均値±標準偏差
とし,多変量解析を行ったところ,術前 PT─INR>1.5 が独立した予後因子となった(p=0.018)(表 5)。
術後臓器補助療法の比較では,VFD は生存例で平 均 24.9 日,死亡例で平均 6.3 日と死亡例で有意に短く
(p<0.001),CHDF 施行例の割合は生存例 19.0%(16 例),死亡例 70.0%(7 例)と死亡例で有意に多かっ た(p=0.002)(表 4)。
SOFA score は術前が生存例 2.3,死亡例 3.8 で有意 表 3 在院生存例と死亡例における背景因子の比較
生存例(n=84) 死亡例(n=10)
p
─value年齢(歳) ≧75
<75 38
46 8
2 0.048
性別 男
女 40
44 7
3 0.316
穿孔部位 右側
左側・直腸 6
78 4
6 0.010
穿孔原因 良性
悪性 57
27 8
2 0.719
穿孔様式 被覆
遊離 42
42 2
8 0.098
手術時間(min)* 142±44 153±77 0.995
術前経過(h) <24
≧24 43
41 6
4 0.742
術前 SIRS 62 9 0.442
術前ショック 10 2 0.611
*平均値±標準偏差
表 4 在院生存例と死亡例における血液学的検査所見と術後臓器補助療法の施行状況の比較
生存例 死亡例
p
─value術前 WBC(/μL) (n=81) (n=10)
0.744
4,000 以上 12,000 以下 35 5
<4,000,>12,000 46 5
術後 WBC(/μL) (n=82) (n=9)
0.293
4,000 以上 12,000 以下 46 3
<4,000,>12,000 36 6
術前 PLT(/μL) (n=81) (n=10)
1.000
≧100,000 78 10
<100,000 3 0
術後 PLT(/μL) (n=82) (n=9)
0.016
≧100,000 74 5
<100,000 8 4
術前 PT─INR (n=73) (n=9)
0.026
≦1.5 69 6
>1.5 4 3
術後 VFD* 24.9±5.5(n=84) 6.3±9.0(n=10) <0.001
術後 CHDF 施行 16(n=84) 7(n=10) 0.002
*平均値±標準偏差
差を認め(p=0.031),術後も生存例 5.1,死亡例 10.2 で有意差を認めた(p=0.007)。それぞれのパラメー タについて比較すると,術前は呼吸器系,中枢神経系,
腎機能の項目で有意差を認めた。術後は呼吸器系,心 血管系,中枢神経系の項目で有意差を認めたが,腎機 能の項目では有意差を認めなかった。凝固系,肝機能の 項目は,術前・術後ともに有意差を認めなかった(表 6)。
Ⅲ.考 察
大腸穿孔は緊急手術を要し重篤な転帰をとりうる疾 患である。患者背景により差があるが,近年でも 11.1
〜 34.7%4)〜 11)と高い死亡率が報告されており,自験 例でも 10 例(10.6%)の急性期病態に関連した死亡 例を認めた。重症化の本態は敗血症への進展とそれに 伴う DIC や MODS の合併と考えられ,その救命のた
めには重症例を早期に認知し,臓器障害に対する適切 な管理を行うことが重要となる。今回,当科で経験し た大腸穿孔手術症例をまとめ,在院死に関する予後因 子や臓器障害につき検討を行った。
患者背景では,平均年齢は 70.4 歳,穿孔部は S 状 結腸に最も多く認め,穿孔原因は腫瘍によるものが最 も多かった。S 状結腸は他の報告でも穿孔の好発部位 とされており4)6)〜 13),自験例と一致した。穿孔原因 に関しては,従来本邦では腫瘍によるものが最多と報 告されていた12)。しかしながら,食生活の欧米化に 伴い憩室穿孔の頻度が年々増えてきているとされ13), 近年では憩室穿孔が最多穿孔原因とする報告もあ
る4)5)7)〜 11)。自験例でも腫瘍による穿孔 29 例に対し
憩室穿孔 26 例とほぼ同数であり,今後生活環境の変 化により,その割合もさらに増加するのかもしれない。
表 6 在院生存例と死亡例における SOFA score の比較
生存例(n=84) 死亡例(n=10)
p─value
術前SOFA score 2.3±1.7(n=81) 3.8±2.3 0.031
呼吸器系 1.0±0.8 1.5±0.7 0.044
凝固系 0.2±0.5(n=81) 0.2±0.4 0.886
肝機能 0.3±0.6 0.0±0.0 0.069
心血管系 0.2±0.6 0.7±1.3 0.270
中枢神経系 0.1±0.3 0.8±1.0 <0.001
腎機能 0.4±0.9 0.8±0.8 0.035
術後
SOFA score 5.1±4.3(n=79) 10.2±5.6(n=9) 0.007
呼吸器系 1.3±0.9 2.6±0.5 <0.001
凝固系 0.5±0.8(n=82) 1.2±1.3(n=9) 0.066 肝機能 0.4±0.6(n=81) 0.2±0.7(n=9) 0.249
心血管系 1.1±1.5 2.5±2.0 0.012
中枢神経系 1.2±1.4 2.9±1.7 0.002
腎機能 0.4±0.8(n=83) 1.1±1.5(n=9) 0.068 平均値±標準偏差
表 5 単変量解析で差を認めた因子の多変量解析
Odds 比(95%信頼区間)
p
─value 75 歳以上 0.18(0.01─1.15) 0.107 右側結腸穿孔 4.26(0.57─29.68) 0.139 術後 PLT<100,000/μL 5.26(0.89─31.19) 0.060 術前 PT─INR>1.5 10.20(1.44─76.94) 0.018術式に関しては,大腸穿孔では患者状態に差がある ため,術前の状態をかんがみて選択することとなる。
術前状態の良い患者では一期的吻合を施行しても在院 死を認めなかったとする報告もあるが6),多くは救命 のための手術であるため安全かつ迅速な術式を選択す べきである。今回の検討でも,生存例・死亡例の手術 時間に差はなく,迅速さを念頭に置いた手術が行われ ていた。
在院死に関する予後因子の検討では,単変量解析で は 75 歳以上,右側結腸穿孔,術後 PLT<100,000/μL,
術前 PT─INR>1.5 が有意な予後因子となった。
年齢に関しては背景疾患やカットオフに差はあるも のの,種々の報告で予後不良因子となり得ると報告さ
れている5)6)8)11)14)。高齢者では体力や抵抗力が低下
し,基礎疾患を有する割合が多くなることがその理由 と考えられる。
穿孔部位に関しては,右側結腸穿孔が予後不良であ るという報告8)と左側結腸・直腸穿孔が予後不良で あるという報告14)があり一定の見解を得ていない。
理論的には,右側結腸穿孔では左側結腸・直腸穿孔と 比べ,漏出する便が軟便であることが多いため腹腔内 に広がりやすく,同様に,腹膜炎が広汎に進展しやす い遊離穿孔例は被覆穿孔例と比べより重症化しやすい と考えられる。また,術前の経過時間が長い症例では 腹膜炎は増悪するであろう。しかし,自験例では右側 結腸穿孔例は左側結腸・直腸穿孔例に比べ在院死亡率 が高いものの(p=0.010),穿孔様式も術前経過時間 も予後に影響を及ぼさなかった。この理由を,以下の 様に考察した。今回,術前経過時間の長い症例では 45 例中 30 例と被覆穿孔例を多く認め,短い症例では 49 例中 35 例と遊離穿孔例を多く認めた(p<0.001)。
また,遊離穿孔かつ経過時間の長い症例では 15 例中 3 例(20.0%)と多くの死亡例を認めた一方,被覆穿 孔かつ経過時間の長い症例では 30 例中 1 例(3.3%)
と死亡例が少なかった。つまり,遊離穿孔例では腹膜 炎の進行が激烈なため重症化しやすく,経過が長くな れば死亡率も上昇するが,多くの症例では早期診断が つくため術前経過は短くなり,被覆穿孔例では腹膜炎 が緩徐に進行するため重症化しづらいが,診断が遅れ 術前経過が長くなりやすいと考えられた。これらの関 係が,穿孔様式や術前経過時間が予後に影響を及ぼさ なかった要因であると考えられた。
術 後 PLT<100,000/μL, 術 前 PT ─ INR>1.5 が 在 院死と関連したことからは,凝固障害を呈した症例は 予後不良であることが示唆された。後方視的研究のた め診断項目の欠損値が多く,診断には至らなかったが,
これらの症例はすなわち DIC,もしくは pre─DIC の
症例と考えられる。敗血症による DIC では微小血栓 による組織循環障害により臓器障害が助長される15)。 その早期離脱には,急性期 DIC 診断基準16)などを用 いた早期認知と治療介入が重要である17)。特に術前 PT─INR>1.5 は多変量解析でも独立した予後因子と なり,その値は症例の予後予測や早期治療介入の指標 として有用と考えられた。
今回の検討では,術前の SIRS の存在は予後に影響 を及ぼさなかった。SIRS は 1991 年に提唱された概念 であり18),体温の変動,脈拍数・呼吸数の増加,白 血球数の異常で診断される症候群である。大腸穿孔で は腹膜炎による炎症により SIRS を,つまりは敗血症 を呈しやすいと考えられる。しかし,この診断基準に よる敗血症診断の感度・特異度はそれぞれ 94.6%,
61.0%との報告もあり19),今回の検討では大半の症例 が SIRS を呈した一方,SIRS を呈さなかった死亡例 も存在した。初診時には大腸穿孔の診断がつきづらい こともあり,後に敗血症に進展する症例も存在するた め,SIRS の有無により重症度を軽く見積もることの ないよう注意すべきと考える。
今回低血圧で定義した術前ショックの有無も生存 例・死亡例で差を認めなかった。臓器障害の検討で用 いた SOFA score でも心血管系のパラメータに平均動 脈圧を使用しているが,循環動態の指標としては血圧 よりも血清乳酸値の方が鋭敏であり20),血圧が正常 範囲内でも乳酸値が高い症例では高い死亡率を呈する ことが報告されている21)。本邦における大腸穿孔の 検討でも血中乳酸値が予後と関連したとする報告があ り6),血中乳酸値をショックの指標とすれば異なる結 果が得られたかもしれない。
症例の重症度と臓器障害の評価では,SOFA score を用いて検討を行った。SOFA score は呼吸器系,凝 固系,肝機能,心血管系,中枢神経系,腎機能の 6 項 目からなる臓器障害を数値化した指数であり,患者の 重症度評価に有用とされる2)3)。今回の検討で,在院 死亡例の SOFA score は高値を示した。また,おのお ののパラメータを見ると,死亡例では術前は呼吸器系,
中枢神経系,腎機能の項目が有意に高値であり,術後 は呼吸器系,心血管系,中枢神経系の項目が有意に高 値であった。
呼吸器系のパラメータが術前・術後ともに死亡例で 有意に高値であったことは,VFD が死亡例で有意に 短かったことと矛盾せず,呼吸障害を呈した症例は予 後不良であることが示唆された。また,術前・術後と もに中枢神経系のパラメータが死亡例で有意に高値で あったことから,大腸穿孔による敗血症で意識障害を 呈した症例の予後は不良と判明した。
心血管系のパラメータは,術前では生存例・死亡例 に差を認めなかったが,術後は死亡例で有意に高値で あり,術後に循環障害,いわゆる敗血症性ショックを 呈した症例は予後不良であった。しかし,この結果か らは,術前に循環障害を呈していても,速やかな初期
蘇生1)22)や引き続く術後管理により早期に循環動態
の安定化ができれば,予後の改善が見込める可能性も 示唆された。
肝機能のパラメータは術前・術後ともに予後との関 連を認めなかった。今回の検討では肝機能障害を呈し た例自体少なく,SOFA score≧3 の症例は術前・術 後ともに 1 例も認めず,SOFA score=2 の症例も,
生存例で術前 5 例(6.0%)・術後 5 例(6.2%),死亡 例で術後 1 例(11.1%)認めたのみであった。日本救 急医学会がまとめた重症敗血症の検討23)でも,肝機 能障害を呈した症例は他臓器障害を呈した症例と比べ 少ないとされる。今回,肝機能障害例自体が少なかっ たことが予後と関連しなかった要因としてあげられる であろう。
凝固系のパラメータは,術後 PLT<100,000/μL が 単変量解析で有意な予後不良因子となったにもかかわ らず,術前・術後ともに予後との関連を認めなかった。
SOFA score の凝固系項目は PLT のみによって分類 され,0 〜 4 に点数づけされる。今回,予後因子の分 類の際に使用したカットオフ値 PLT<100,000/μL は,SOFA score では 2 以上となり,術後は生存例で 8 例(9.8%),死亡例で 4 例(44.4%)認めた。しかし,
100,000/μL<PLT≦150,000/μL で分類される score 1 の症例は,生存例で 19 例(23.2%)認めたが,死亡 例では 1 例(11.1%)しか認めなかった。このことで 生存例の score が高くなったことが,統計学的差を認 めなかった要因と考えられた。また,SOFA score は 簡便で有用な指標ではあるが,今回独立した予後不良 因子となった PT─INR を評価する手段がなく,凝固 障害の評価としての SOFA score の使用には限界もあ ると考えられた。
腎機能のパラメータは,術前の比較では生存例・死 亡例で有意差を認めたものの,術後は有意差を認めな かった。一般に,急性腎障害を合併した敗血症症例の 予後は不良である24)。大腸穿孔重症例などの重症敗 血症では初期蘇生として十分な輸液を行うことが推奨
されるが1)22),近年では過剰輸液による予後の悪化の
可能性も指摘されており25),適切な体液バランス管 理を行うことは予後の改善のため重要とされる。当院 では乏尿を認める例やショックが遷延する例に対し,
ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacry- late)膜を用いた CHDF を施行し,体液バランス管理
とサイトカイン吸着による炎症の制御を行ってい る26)。CHDF 施行例の術後 SOFA score は 10.4±4.1 と,
非施行例の 3.9±3.5 と比べ圧倒的に高く(p<0.001),
腎機能のパラメータも施行例 1.1±1.4,非施行例 0.3
± 0.6 と施行例で高かった(p<0.001)が,そのよう な重症例でも 69.6%(16 例)と,比較的多くを救命 することができた。術後の腎機能が予後に差を及ぼさ なかったのは,術後腎機能障害が顕著となった症例に 対するCHDFを用いた管理が奏功したのかもしれない。
結 論
当施設で経験した大腸穿孔手術例の,在院死に関す る予後因子と臓器障害の予後への影響につき検討し た。凝固障害は予後不良と関連すると考えられ,術前 PT ─INR>1.5 は独立した予後因子となった。SOFA score を用いた臓器障害の評価の結果では,術前の呼 吸器系・中枢神経系・腎機能障害と,術後の呼吸器系・
心血管系・中枢神経系障害が予後不良と関連した。一 方, 肝 機 能 に 関 し て は 障 害 例 自 体 少 な く,SOFA score における凝固障害は予後との関連を認めなかっ た。術後の腎機能も予後と関連せず,術後腎機能障害 が顕著になった症例には CHDF を用いた管理が奏功 した可能性が示唆された。
なお,本論文の要旨は第 49 回日本腹部救急医学会総会
(2013 年 3 月,福岡)で報告した。
参 考 文 献
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論文受付 平成 26 年 4 月 14 日 同 受理 平成 26 年 12 月 22 日
Prognostic Factors and Suffered Organ Dysfunction in Patients with Colorectal Perforation
Takashi Shimazui1), Shinji Yanagisawa1), Nobuya Kitamura2), Soichi Kobayashi1), Akira Okaniwa1)Departments of Surgery1), and Emergency and Critical Care Medicine2), Kimitsu Chuo Hospital
We investigated the prognostic factors for in─hospital death and the occurrence of organ dysfunction in 94 patients with colorectal perforation who underwent surgery between January 2002 and December 2012. Of the total, 11 patients died during hospitalization and 10 patients died of complications associated with the acute clinical state. Multivariate analysis revealed preoperative PT─INR of >1.5 as an independent adverse prognostic factor. The SOFA score was sig- nificantly higher in the non─survivor group than in the survivor group. A comparison of the SOFA parameters showed that the preoperative respiratory system, central nervous system(CNS)and renal system scores were significantly higher in the non─survivor group; furthermore, the postoperative respiratory system, cardiovascular system and CNS scores were also higher in this group. However, no significant differences were observed in the hepatobiliary or coagula- tion system scores between the groups. Also, there was no significant difference in the postoperative renal system score between the two groups, suggesting that treatment by CHDF was effective in patients with postoperative renal dysfunc- tion. Colorectal perforation is often associated with poor outcomes; therefore, early detection of patients with a poor prog- nosis and prompt and appropriate treatment are critical.