アメリカにおける団体交渉義務(二)
その他のタイトル Duty to Bargain in NLRA (2)
著者 岸井 貞男
雑誌名 關西大學法學論集
巻 47
号 3
ページ 401‑435
発行年 1997‑09‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00024524
ア メ
リ カ
に お
け る
団 体
交 渉
義 務
︵ 二
︶
置をとっておいた︒ 本稿は︑﹁アメリカにおける団体交渉義務﹂の続稿である︒したがって執筆目的はまったく同一であるので︑ここ で改めてこの点にふれることは避けるとともに︑各項目の小項目︑割り注︑引用判例の注などはすべて筆者の手によ るものである点も両稿の間に変わるところはない︒しかし︑本稿ではレスリー教授が本文では引用されているにもか かわず、巻頭にアルファベット順に一括して掲載されている引用判例
•NLRB命令などの出典一覧表には掲げられ
ていないものがみられたので︑この点については筆者の手によって本稿の注のなかでその出典を示すことにした︒ま
た︑出典一覧表には掲げられているが︑事件名しか記載されていないものがあったので︑この点についても同様の措 ︹ 論
ま し
9̲ 9,
が
き アメリカにおける団体交渉義務︵二︶ 説 ︺
岸
井
︵ 四
0 1
) 貞 男
第三号 本訳稿部分︵第七章﹁団体交渉義務﹂
の 後
半 ︶
行中の交渉から離脱することが防止されている︒したがって︑全国労働関係法
( N L R A )
︵ 四
0 二 ︶
の概観とアメリカ法の特色
本稿は︑第七章﹁団体交渉義務﹂のうち﹁ C .複数使用者交渉および複数組合交渉﹂︑﹁ D .協約有効期間中の交
渉 ﹂
︑ ﹁
E .交渉拒否に対する救済策﹂︑﹁ F .交渉義務の終了﹂について紹介・翻訳しようとするものであるが︑まず
それに先立って筆者が関心をもったいくつかのテーマに限定してごく簡単に感想も込めて概観することにする︒
①使用者も組合も交渉当事者に﹁複数使用者交渉﹂︵一種の統一交渉︶を行うよう威圧することは NLRA 第 8 条
⑯項①⑱号に該当し不当労働行為として禁止されていると解釈されているが︑組合と各使用者が任意の合意に基づい
て複数使用者交渉を行うことは当事者の自由にゆだねられいるところである︒しかし︑ひとたび同意が成立し交渉が
始まると︑後にレスリー教授が詳論しているごとく︑労使とも﹁異常な状況
(^gu n u s u a l c i r c u m s t a n c e s
" )
﹂がなけれ
ば相手方の同意なしに複数使用者交渉から離脱することはできないというルールが連邦最高裁判例の認めるところと
なっている︒これによって︑交渉が自己に不利な方向に向かっている︑交渉が行き詰まっているというだけでは︑進
の定める選挙手続に基づ
いて成立した団体交渉ではなく︑当事者の任意の合意に基づいて成立した複数使用者交渉についても NLRA 上の団
体交渉の一形態として法的拘束力が認めている︒もっとも︑その法的拘束力の内容については NLRA の定める選挙
手続に基づいて成立した団体交渉と異なることは後に見るごとくである︒この複数使用者交渉の法理は︑わが国にお
ける統一交渉や集団交渉において使用者が離脱しようとする場合の法的処理に参考となろう︒
②組合が他組合から交渉担当者を起用して行う﹁複数組合交渉﹂も︑例は少ないが︑使用者との合意に基づいて行
関
法
第
四
七
巻
ア メ
リ カ
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団 体
交 渉
義 務
︵ 二
︶
④交渉当事者ー通常は使用者ーが︑協約の有効期間中は一切の問題について交渉を認めない旨の条項をおくことを
求めることがあり︑これは︑ いわゆる﹁ジッパー条項(^^
z i p p e r c l a u s e s
" )
﹂と呼ばれているものであるが︑この条項
の効力については争いのあるところであるとされている︒しかし︑ NLRB は現在この点に関して︑﹁明白かつ疑い
の余地のない﹂文言により︑特定の事項に関する交渉権を明白に放棄している場合に限ってのみ︑ジッパー条項は有
効とする厳しい見解をとっている︑と指摘されている︒わが国においてはほとんど例をみない事例であるが︑アメリ と基本的には異なるところがないといえよう︒ R
B は交渉中に﹁意識して検討された の労組法第 6 条と異なるところである︒ 連邦最高裁判決はなく︑今後に残された課題である︒この点は交渉担当者の委任が強行法的に保障されているわが国 れてこようとする場合であるが︑無条件ではないがこれを肯定する控訴裁判決がみられる︒しかし︑この点に関する ならないとされている︒問題は︑使用者の反対にもかかわらず︑他の組合または他の交渉単位の代表を交渉の場に連 われたものであるかぎり︑他組合の代表者が参加していることを理由に交渉を打ち切ることは団交拒否の正当理由と
③ NLRA 第 8 条囮項は︑現行の協約において明定されている事項については協約有効期間中は︑組合は改めて交
渉を求めることはできないことを明定している︒この点は︑わが国においては規定はないものの理論上肯定されてい
るところであるから結果的には異なるところがない︒したがって日米いずれの国においても理論上問題となるのは協
約に定めのない事項についての団交要求についてであるが︑この点についてはまだ連邦最高裁の判例はないが︑
N L
( "
c o n s c i o u s l y e x p l o r e d "
﹂ )
声 H 唄については︑結果的に明定されていなくとも︑
協約期間中の交渉は排除されることになる︑とする立場を支持している︒この点は︑わが国の労働委員会の取り扱い
︵ 四 0 1
︱‑︶
為にかかわる事件についても︑ NLRB
( B o a r d )
現実的には苦情仲裁で処理されるのであろう︒ 第三号
ま ︑
' ー ︐
カの使用者の団体交渉に対する姿勢の一端を知る意味で参考となろう︒
⑤雇用条件のうち義務的交渉事項に限られるが︑使用者が協約有効期間中に一方的にこれを変更すれば NLRA 第
8 条い項③号!団交拒否の不当労働行為ー̲が成立することはすでに連邦最高裁判決の認めところである︒義務的
交渉事項に限られるとはいえ︑協約違反それ自体に契約違反の責任とは別に不当労働行為の成立を認めている点は注
目されるところである︒
︵ 四
0 四 ︶
⑥正当な事由がなければ解雇しない旨の協約条項に違反して解雇された場合に第 8 条い項⑥号違反が成立するかど
うかも問題とされているが︑未解決の課題のようである︒これが肯定されれば︑すべての協約違反に第 8 条い項⑥号
違反が成立すことになると解せられるから︑前記の連邦最高裁判決を読むかぎりこれを肯定することは困難なように
思われる︒また︑議会は NLRB に協約内容を実現する権限を与えていないとされてことからもこれを肯定すること
は困難となろう︒しかし︑契約違反の成立することは明白であるが︑この点から問題を処理することは可能であるが︑
⑦労働協約の解釈・適用についての苦情については協約に基づいて設けられた苦情仲裁機関による仲裁裁定によっ
て解決されている点はアメリカ法の大きな特色であることは広く知られているところであるが︑さらに︑不当労働行
一定の要件のもとに仲裁が不当労働行為問題を効果的に処理
していると判断した場合には︑既存の仲裁裁定を自発的に尊重する︑仲裁裁定尊重政策を採用している︒この点はわ
が国の労働委員会では考えられないアメリカ法の特色といえよう︒
⑧使用者の団交拒否に効果的な救済策がない点はわが国においても同様であるが︑未成功に終わっているとはいえ︑
関 法 第 四 七 巻
四
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義 務
効果的な救済策を求めて多面的な努力が続けられている点は注目されるべきところであろう︒
上記のテーマについて筆者による小項目と割注を入れてレスレー教授の述べるアメリカ労働法の現状と課題につい
てみると以下のごとくである。なお、本稿末につけている注は、基本的にはレスリー教授の判例
•NLRB命令の出
典一覧表によっているが︑本稿はとくにそれに加筆補正するとともに同教授の著書にはない注を加えていることは前
述したごとくである︒
﹁複数使用者交渉および複数組合交渉﹂
複数使用者交渉の成立要因
︱つの複数使用者単位
( a m u l t i e m p l o y e r b a s i s )
とである︒この場合︑使用者たちはそれぞれ独立した使用者であることを止めるわけではないが︑組合と一緒に交渉
のテープルに着席し︑全使用者に適用される共通の労働協約を締結するのである︒もっとも︑ことによると︑個々の
使用者の事情に合わせるためにちょっとしたバリエーションがみられる場合もある︒複数使用者交渉の実際例をみる
と︑その複雑さと形式において様々である︒時には︑交渉は協約の大網を定めるだけで︑詳細は大部分︑個々の使用
者と組合の間の協議にまかされることがある︒しかし︑詳細一切を含めて︱つの協約が全使用者に適用される場合も
ある︒時折︑極めて強力な使用者が︑他の使用者の協約パターンとなる協約を締結するすることがある︒これは技術
的には複数使用者交渉ではないが︑最終的結果は同一であって︑この協約がすべての使用者に共通するものとなる︒
労使が単一使用者交渉
( s i n g l e ‑ e m p l o y e r b a r g a i n i n g )
( 1 )
﹁ 使
用 者
た ち
が ︑
五
で︱つの組合と交渉することはよく見られるこ
よりも複数使用者交渉
( m 已 t i
‑ e m p l o y e r b a r g a i n i n g )
︵ 四
0 五 ︶
の ほ
( 2 ) が
条 件
に な
る ︒
﹂
第三号
うを好む理由について︑次のようないくつかのものが挙げられている︒その一は︑複数使用者交渉は︑とりわけ組合
の﹃ウイップソーイング ︵狙い打ち︶﹄戦術を避けることによって特定の組合の力を減殺することができる︑とする
ものである︒この戦術は︑組合が競争関係にある使用者うち一人に対してのみストを仕掛け︑スト中に仕事を他の使
用者に奪われるのではないかとのおそれを与えることによって使用者を屈服させようとするものである︒その二は︑
使用者たちのなかには︑交渉の回数が減り︑情報交換を促進させることになるという理由で︑複数使用者交渉を選ぶ
場合もあろう︒その︳︱‑は︑使用者のうち一人が交渉のペースセッター
用者も同一の協約を締結すべきだと主張しそうな場合には︑弱小使用者たちはペースセッターと一緒になって複数使
用者交渉に参加すれば︑もっと自分たちの意見を反映することができると︑と考える場合である︒
複数使用者交渉の使用者にとってもう︱つのメリットは︑使用者間の競争を規制することができるということであ
る︒即ち︑賃金︑労働時間およびその他の労働条件
( w o r k i n g c o n d i t i o n s )
を共通にすることを定めるということは︑
協約を同じくする使用者は︑労働市場では競争関係にないことを意味するからである︒そして︑複数使用者協約に
よって︑例えば︑労働節約的機械
( l a b
, o r s a
v i n g m a c h i n e r y )
の導入に関する制限など種々な定めをすれば生産市場
における競争も規制することができることになる︒もっとも︑これは当該協約が反トラスト法違反に問われないこと
複数使用者交渉と NLRA
﹁
NLRA は︑複数使用者交渉については︑第 8 条固項①⑱号で使用者側の交渉代表選任に関して組合が干渉する
関 法 第 四 七 巻
︵主導者︶となっている場合で︑組合が他の使 六
︵ 四 0
六 ︶
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義 務
︵
ことを不当労働行為としているのを除いては︑何も言及していない︒この条項の立法経緯を見ると︑組合が使用者を
威圧して複数使用者交渉に参加させたり︑離脱させようとするのを禁止しようとしていたことがわかる︒ NLRB お
よびその司法審査にあたる裁判所は︑複数使用者交渉は双方の同意に基づくものである︑との立場をとっている︒即ち︑
使用者も組合も交渉当事者に複数使用者交渉を行うよう威圧することは︑いずれも不当労働行為となる︑としている︒
し か
し ︑
七
ひとたび同意がなされ交渉が始まると︑労使とも﹁異常な状況(^^
u n u s u a l c i r c u m s t a n c e s
" )
﹄がなければ相
手方の同意なしには︑交渉から離脱することはできなくなる︒これによって︑交渉が自己に不利な方向にむかってい
るということだけで︑進行中
( o n g o i n g n e g o t i a t i o n s )
団体交渉における交渉の行き詰まり
( i m p a s s e )
の交渉から離脱することが防止されることになっている︒﹂
は︑使用者の複数使用者交渉からの一方的離脱を正当化するもので
はない︑と最高裁は判示した︒交渉が行き詰まっているかどうかの判断は︑特に重要な法的権利が問題となっている
場合には︑むつかしくなろう︒しかし︑ボナーノ会社事件では交渉の行き詰まりは当事者の認めるところであった︒
行き詰まりの後に︑組合はボナーノ会社にのみストを行い︑同じ他の複数交渉単位の他社に対してはストを行わな
かった︒これに対し︑他の会社はその後︑組合をロックアウトした︒ボナーノ会社はスト中の被用者にかえて恒久的
代替労働者
( p e r m a n e n t r e p l a c e m e n t s )
を 雇
用 し
︑
ついで複数使用者交渉から離脱すると通告した︒その直後︑組合
と複数使用者との間で交渉が再開され︑協約が締結された︒組合はこの協約をポナーノ会社にも適用しようとして N 「チャールズ
•D・ボナーノ会社対
NLRB事件(連邦最高裁、
③複数使用者交渉からの離脱の正当事由
︵ 四 0
七 ︶
( 2)
一九八二年︶において︑組合と複数使用者の間の
とになっている場合には︑離脱が許容されよう︒ 行き詰まりは一時的なもの の﹃異常な状況﹄ではないとの NLRB 第三号
︵ 四
0 八 ︶
LRB
に救済の申立てをし︑ボナーノ会社の離脱の試みは交渉拒否であり︑それゆえにそれは無効
( i n e f f e c t i v e )
で
あるとの命令を得ようとした︒
最高裁の意見は鋭く対立した︒多数意見は︑交渉の行き詰まりは複数使用者交渉からの一方的離脱を正当化する程
き詰まりは︑自己の戦略的利益にかなう場合には︑当事者の一方によって故意に
( d e l i b e r a t e l y )
作り出すことがで
きるものである︒
( B o a r d ) ( t e m p o r a r y c o n d i t i o n )
であり︑合意を程なく見るのが普通である︒その二は︑交渉の行 の見解に同意したが︑その理由を二つ挙げた︒その一は︑交渉の
組合が複数使用者グループに対してストを行うとき︑グループの中の一︑二の会社と暫定的
( i n t e r i m )
な労働協
約を締結することが時には生じる︒ポナーノ会社事件では︑真の暫定的な協約!その後の複数使用者交渉の結果締
結される協約によってとってかわられることになる協約のことであるーの締結は︑別の会社が一方的に複数使用者
交渉から離脱することを正当化しない︑と最高裁は判示した︒しかし︑組合が単位内の︱つの会社と協定を締結する
ことによって複数使用者単位を分断し︑その協約が複数使用者交渉において協約が締結された後も効力を持続するこ
上記の多数意見の形成にはスチィープンス裁判官の同意が必要であった︒同裁判官は多数意見に賛成したが︑その
際︑独立した意見を述べ︑その中で︑使用者は複数使用者交渉に参加する際に条件を自由に付することができること
を強調した︒これによれば︑交渉行き詰まり後は一方的に離脱できるとの参加条件を付することも︑交渉開始前なら
可 能
で あ
る ︒
﹂
関 法 第 四 七 巻
八
﹁複数組合交渉が労使双方にメリットを与える場合がある︒まず使用者に与えるメリットについてみると︑使用者
が被用者を代表する様々の組合の連続ストの対象となり︑そしてどのストも操業全体を停止させてしまうような場合
である︒これは︑どの被用者グループも操業において決定的な位置を占めているか︑または︑すべての被用者が各組
合のピケラインを尊重するときに生ずることである︒このようなときには︑組合すべてを共同交渉の場
( c o m m o n
︶
. .
b a r g a m 1 g s e s s i o n s
に 集
め れ
れ ば
︑
ストの危険を︱つにしぼることができよう︒逆に︑組合側に与えるメリットに
ア メ
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交 渉
義 務
︵ 二
︶
⑥複数組合交渉の労使双方に与えるメリット の交渉担当者の起用を非難しようとはしなかった︒﹂ 複数組合交渉
1他組合の代表者の参加を理由とする交渉の打ち切りー~
﹁ 複 数 組 合 交 渉
( m u l t i u n i o n b a r g a i n i n g )
事件︵第二控訴裁︑
九
は︑複数使用者交渉ほどには一般的ではない︒複数組合交渉が労使双方
の同意に基づくものである場合には︑問題はない︒しかし︑組合の中には︑使用者の反対にもかかわらず︑他の組合
または他の交渉単位の代表を交渉の場に連れてこようとするものもある︒ゼネラル・エレクトリック会社対 NLRB
(3 )
一 九
六 九
年 ︶
では︑組合が外部から交渉担当者︵当該使用者の被用者を代表する他の組合の代表
者を含む︶を起用したことは︑団交への干渉ではなく︑従って使用者の交渉打ち切りの正当理由とはならない︑と判
示された︒使用者は︑組合が違法に交渉単位を拡大しようとした︑と主張した︒裁判所は︑交渉担当者が交渉事項を
不当に拡大して他の組合の利害事項に及ぶ︵これは使用者に複数組合交渉を強制するに等しい︶危険性のあることは
認めたが︑協約事項
( b a r g a i n i n g a g r e e m e n t u b s j e c t s )
( 4 )
の不当な拡大が試みられないかぎりは︑組合による外部から
︵ 四
0 九 ︶
②協約に明定されていない事項の協約有効期間中の交渉 同意を要求されるものではない︑と定めている︒﹂ ついては協約有効期間中は︑組合は改めて交渉を求めることはできないということである︒このことは︑ NLRA 第
8 条⑯項に明記されているところである︒同項は︑協約有効期間中は︑協約条項の変更について当事者は協議または
﹁協約に明定されていない事項の取り扱いに関しては︑意見が分かれている︒その意見の一っに︑協約の安定とい
う観点を強調するものがある︒この見解によれば︑交渉すべき事項はすべて協議中にテープルの上にのせねばならな 協約有効期間中の交渉については︑ ﹁使用者と組合が期間の定めのある協約を締結したとしよう︒その場合︑組合は要求を追加して使用者に交渉を求
めることができるであろうか︒この問題については︑他の場合と同様に︑ NLRB の現行の判例法
( c a s e l a w )
細を知ることよりも︑問題解決上考慮すべき︑時には対立する諸事情を理解することの方が重要である︒
( 1 )
四 は組合の力を強めることになろう︒﹂ ついてみると︑どの組合も単独のストでは操業停止をもたらすことができないか︑または︑ストが効果あるものにな るかどうかが他の被用者のピケラインの尊重にかかっているような場合である︒このような場合には︑複数組合交渉
﹁協約有効期間中の交渉﹂
協約有効期間中の交渉と NLRA 第 8 条囮項
関 法 第 四 七 巻 第三号
︱つのコンセンサスがある︒即ち︑現行の協約において明定されている事項に
1 0
︵ 四
一
0 )
の 詳
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け る
団 体
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義 務
︵ 二
︶
白な拒否に等しい︑ということにある︒ いこと︑協約有効期間中は当事者は分け前の再分配を求めて交渉を再開することはできないことを当事者はわきまえ ておくべきことになる︒そうでなければ︑いずれの当事者も協約上の権利義務に関して確信がもてないことになる︒ この見解の問題点をあげると︑第一は︑協約の有効期間中に重要となるすべての問題を予見することを組合に対して 求めることになるということである︒第二は︑このような見解は︑組合を次のような困難な立場に追いやることであ る︒即ち︑組合は︑現実とはなりそうもない︑可能性にとどまる問題についても交渉の場に持ち出しておくか︑ある いは︑そうしないで︑そのために問題が現実化したときには交渉できなくともやむを得ないとの立場をとるか︑困難 な二者択一を迫られることになる︒これに対して︑使用者は類似の問題に直面することは滅多にない︒というのは︑ 協約の定めがない場合には職場で生ずる問題の処理権限は使用者にあると普通見なされているからである︒これに対 して︑産業平和の促進という観点を強調する見解がある︒即ち︑協約の有効期間中であっても協議がなされねばなら ないことが生じたときには︑産業平和の促進のために労使間には開かれた前進する協議
(0
p e n , n o
‑ g o i n g i s d
,
c u s s i o n )
の場が設けられるべきである︑とするものである︒この見解の支持者は︑ある特定の事項が交渉の対象か
ら排除されるのは︑その事項が協約条項で明白に取り扱われており︑交渉要求はその変更を求めるものとなるときに
限られる︑との立場をとるであろう︒
両者の折衷的見解がある︒これによれば︑交渉中に﹃意識して検討された(^^
c o n s c i o u s l y e x p l o r e d "
) ﹄事項につい
ては︑結果的に明定されていなくとも︑協約期間中の交渉は排除されることになる︒これを支持する理由の︱つは︑
交渉のテーブルにのせられ︑十分に議論され︑しかし合意を見るにいたらなかった事項は︑当該要求の協約による明
︵ 四
︱ ‑
︶
( 4 ) ︿ 第
8 条囚項⑤号﹀の不当労働行為が成立する︒︶
の余地のない 事者は協約の有効期間中の交渉権を放棄するのである︒
NLRB
( 3 )
( B o a r d )
は︑今日では︑この折衷的見解をとっているものと思われる︒即ち︑協約の有効期間中の交渉
は︑当該事項が協約の中で明定されているか︑﹁十分に議論されたか﹄もしくは﹃意識して検討され﹄︑そして組合が
社事件︹
NLRB
︑ 第三号
ブス製造会社事件
( N L R
B ︑
︵ 四
︱ 二
︶
﹃意識的に譲歩した﹄か﹃明白かつ疑いの余地なく問題への関心を放棄した﹄場合は除外される
( 4 ) ( 5 )
一九七三年︺︑プロクター製造会社事件︹ NLRB
︑一九六一年︺︶︒これらの問題は︑ジェイコ
(6 )
一九五一年︶においては最も詳細に議論された︒この事件では︑ NLRB
の意見はひどく分かれ︑上記の諸見解のほとんどすべてを命令中に見ることができる程である︒﹂
( B o a r d )
﹁交渉当事者ー通常は使用者ーが︑協約の有効期間中は一切の問題について交渉を認めない旨の条項をおくことを
求めることがある︒これは︑いわゆる﹃ジッパー条項
( ^ ' z i p p e r c l a u s e s "
) ﹄と呼ばれているもので︑これにより両当
限って︑ジッパー条項は有効という見解をとっている︒
( 7)
と さ
れ て
い る
︒ ﹂
︵ 注
e f f e c t i v e )
( B o a r d )
は現在この点に関して︑﹃明白かつ疑問
( "
c l e a a r n d u n m i s t a k a b l e
"
) ﹄文言により︑特定の事項に関する交渉権を明白に放棄している場合に
したがって︑単なる一般的なジッパー条項は無効
( i n
,
このドクトリンに反して使用者が組合の交渉要求を拒否すれば︑誠実交渉義務違反
ノーストライキ条項違反および義務的冷却期間を経ないストの効果 ジッパー条項︵交渉権放棄条項︶の有効性 NLRB
関 法 第 四 七 巻
︵ バ
ン カ
ー ・
ヒ ル
会
ア メ
リ カ
に お
け る
団 体
交 渉
義 務
︵ 二
︶
履行強制﹂法学論集四七巻二号一頁以下参照︒︶︒ ︵ 注
(9 )
一 九
六 二
年 ︶
⑤協約有効期間中の使用者による雇用条件の一方的変更
(8 )
一九五七年︶で︑最高裁は次のように判示した︒即ち︑
︱ つ
ま た
﹁組合は労働協約有効期間中に交渉できる事項についても︑協約にスト禁止条項
( n
, o
s t r i k e c l a u s e )
がある場合
には︑それによって︑組合の交渉力
( e c o n o m i c p o w e r )
は実質的にはかなり弱いものとなろう︒また︑
8 条固項は︑組合が期間満了時にストを行う場合には︑適切な調停機関
( a p p r o p r i a t e m e d i a t i o n a g e n c i e s )
に通知を
したうえで六 0 日間の義務的冷却期間
( c o o l i n g
10
f f p e r i o d )
を経ることが必要である︑と定めている︒この冷却期
間中にストを行うと︑被用者は法的保護を失い︑使用者がスト参加者を解雇しても第8条囚項③号違反とはならない
スト禁止条項違反のストライキについても同様の取り扱いとなる︒︵詳しくは︑﹁アメリカにおける労働協約の
NLRB 対ライオン石油会社事件︵連邦最高裁︑
は複数の事項に
( o n o n e o r m o r e e t r m s )
ついて交渉再開条項がある場合には︑協約が全体としてなお有効でも︑当
該事項に関するストは第 8 条囮項に違反するものではない︑と︒しかし︑ NLRA 第
ストをするには︑適切な通知をして六 0 日
の冷却期間が経過するのを待たねばならない︒交渉再開条項はないが︑期間中の交渉が許される事項についても同様
に取り扱われるのであろうか︒これに関しては明白な先例
( a u t h o r i t y )
はない︒しかし︑ライオン石油会社事件の
法理がこの場合に適用されるべきでないとする理由は見あたらないようである︒﹂
﹁ 最
高 裁
は ︑
m e n t )
NLRB
対カッツ事件︵連邦最高裁︑ で︑使用者による雇用条件
( a t e r m o f e m p l o
y ,
の一方的変更は第 8 条因項⑥号違反の交渉拒否に該当すると判示した︒いったん協約により雇用条件が定め
︵ 四 一 三
︶
( 7 )
第三号
られると︑使用者による協約条項の一方的変更は交渉拒否と判断されるべきであろうか︒
一方的変更が交渉拒否となる場合︑変更について組合の同意を得たときにのみ︑使用者は
第 8 条い項固号違反の責任を回避することができる︒そもそも第 8 条切項により有効期間中の協約変更要求は禁止さ
れているのであるから︑変更に関する交渉が行き詰まったというだけで一方的変更が許されるわけではない︒組合に
は変更に同意する義務はなく︑そして組合の同意がなければ︑使用者は雇用条件を変更することはできないのであ
協約の有効期間中の工場閉鎖
﹁協約の有効期間中に生じた工場閉鎖または移転についてどのように処理すべきかに関して NLRB
委員の意見は一致しなかった︒使用者が労働コストを削減するために事業の一部門を移転することを決定したが︑こ
の決定が協約の有効期間中になされた場合︑この部門を存続させることは協約に﹃含まれている
と認定されれば︑たとい使用者がこの決定について組合に交渉を申入れをしたとしても︑組合は第 8 条切項によりこ
れを拒否することができるということを意味する︒その結果︑使用者は移転することはできなくなる︒ミルウォー
( 10 )
一九八二年︶では︑そのように判断したが︑ミルウォーキー・スプリング叩事
件
( N L R
B ︑ キー・スプリング①事件
( N L R
B ︑
( 11 )
一九八四年︶では︑この判断を変更した︒﹂
( 6 )
協約の非義務的交渉事項の一方的変更
る ︒ ﹂ はそのように解している︒
関 法 第 四 七 巻
一定の条件がつくが︑判例 一 四
( ^ ^
c o n t a i n e d i n "
)
﹄
︵ 四 一 四
︶
( B o a r d )
の
( 8 )
ア メ
リ カ
に お
け る
団 体
交 渉
義 務
NLRB
対 C&c 合板会社事件︵連邦最高裁︑
一 五
一 定 の 職 種
( o n e j o b c l a s s i f i c a t i o n )
﹁化学・アルカリ労働組合第一支部対ビッツバーグ板ガラス会社事件︵連邦最高裁︑
裁は︑協約有効期間中の協約条項の一方的変更が第 8 条国項⑥号違反となるのは︑その条項が義務的交渉事項
( m a n d a o t r y s u b j e c t )
ー﹁倖只金︑労働時間︑その他の雇用条件﹂ーである場合に限られると判示し︑同号違反となる
範囲に制限を設けた︒なお︑使用者が非義務的交渉事項に関する組合要求を受け入れ協約に盛り込んでも︑その後の
協約交渉において当該事項が義務的交渉事項に変化することはない︒また︑その要求の受け入れは︑使用者が協約期
間中にこれを変更するのに NLRA 上の交渉義務を生じさせるものではない︒この変更はおそらく協約違反となるか
ら︑契約違反として契約法上の救済の対象とはなるが︑第 8
条い項①号違反とはならない︒﹂
使用者の協約違反と NLRB の 権 限
﹁正当な事由がなければ被用者を解雇しない旨の条項を含む協約が締結されたとしよう︒その後︑使用者が正当な
事由なしに被用者を解雇した場合︑使用者は第 8 条い項①号違反となる協約の一方的変更をしたことになるのであろ
うか︒これが肯定されれば︑すべての協約違反は交渉義務違反とされるであろう︒しかし︑議会は NLRB に協約内
容を実現する権限を与えていない︒問題は︑ NLRB は第 8 条国項③号違反に対する救済権限を行使して協約内容を
実現することができるかどうか︑あるいはそのようにすべきかどうかである︒
( 13 )
一九六七年︶では︑労働協約によって賃金表
( w a g e s c a l e s )
が定
められ︑そして︑使用者は特別の技能を有する被用者に対しては賃金表の定め以上の特別の賃金
p ( r e m i u m r a t e )
を
支払う権利を有する旨の協約条項が存在していた︒協約有効期間中に使用者は︑
︵ 四 一 五
︶
一九七一年︶において︑最高
する権限はある︑と判示した︒
( 14 )
一九六七年︶では
1この事件は次にみる C&c 合板会社事件と NLRB の被用者に対して報奨賃金制度
( p r e m i u m
‑ i n c e n t i v e p a y p l a n }
を一方的に導入した︒組合は︑この措置は第 8 条 0
項⑥号および①に違反する︑と主張して救済を申し立てた︒組合は︑新しい賃金制度を導入する権限を協約は使用者
約の解釈にかかっているとの主張は否定しなかった︒控訴裁は︑本件不当労働行為の成否が協約の意味いかんにか
最 高
裁 は
︑
NLRB 第三号 ( B o
a r d )
( B o a r d )
は︑この組合の主張を受け入れたが︑本件不当労働行為の成否は協
の命令はその権限の範囲内のもので正当であると判示した︒協約に仲裁条項がない
ことを指摘した後ーもっとも︑この欠如の意味するところが何であるかについては説明しなかったー最高裁は︑
契約違反を理由に民事訴訟
( c i v i l a c t i o n )
をおこすよりも NLRB によるほうが迅速な裁定
( s p e e d i e r a d j u d i c a t i o n )
が得られることを強調した︒この種の民事訴訟は︑問題が交渉代表としての組合の地位に対する侵害にかかわるもの
であるので︑損害額の算定が困難であることも指摘した︒さらに︑インジャンクションによって組合の権利を守ろう
とすると︑これに対してはノリス・ラガーディア法のインジャンクション禁止条項が適用されるおそれがある︒した
がって︑州または連邦裁判所では︑おそらく宣言的判決
( d e c l a r a t o r y j u g e m e n t )
のみが可能となろう︒最高裁は︑
( B o a r d )
には協約に強制力を付与する権限はないが︑不当労働行為かどうかを判断するために協約を解釈
NLRB 対 ACME 工業会社事件︵連邦最高裁︑
一対をなすものであるーー︑組合は協約に基づいて苦情
( g r i e v a n c e s )
を申し立て︑使用者は︑仕事を下請に出すか︑
あるいは他の事業所に移そうとしており︑これらはいずれも協約違反であると主張した︒組合は︑苦情申立てを進行 かっていることを理由に NLRB
( B o a r d )
の命令に執行力を付与することを拒否した︒ に与えていないと主張した︒ NLRB
関 法 第 四 七 巻
一 六
︵ 四 一 六
︶
ア メ
リ カ
に お
け る
団 体
交 渉
義 務
︵ 二
︶
⑨
NLRBの協約解釈権と仲裁裁定尊重政策~スピルバーグ法理
I権限を行使することができると判示している
( 15 )
年 ︺ ︶ ︒
﹂
一 七 ( B
o a r d )
にあるからといっても︑
( N L R
B 対ハッチング窓枠・ドア会社事件︹第 8
控 訴
裁 ︑
し︑仲裁手続の進行を助けたにすぎないのである︒
( B o a r d )
一 九
六 七
させていくために︑使用者に対して工場機械施設の移転に関する情報の提供を求めた︒会社はこれを拒否したところ︑
NLRB はその拒否は第 8 条国項⑥号違反にあたると認定した︒
使用者は︑求められた情報が協約に照らし適切かどうかを判断するのは仲裁人がなすべきことであると主張したが︑
の命令を支持して︑これに同意しなかった︒最高裁によれば︑
N L R B ( B o a r d )
は契
約に対して拘束力ある解釈をしたものでもなく︑協約違反の主張の当否を判断したものでもなかった︒
NLRB ( B o a r d )
がしたのは︑情報の提供を義務づけ︑これによって組合が主張の当否をより厳密に検討することを可能に
先にも触れたように︑ C&c 合板会社事件において最高裁は︑協約には仲裁条項が含まれていないという謎めいた
コメントを残していた︒これは︑仲裁による迅速な救済策を利用できる場合には︑ NLRB はその権限を行使できな
いことを示唆しようとしていたのかもしれない︒しかし︑これは NLRB の権限を否定する根拠としては弱すぎるし︑
いずれにせよ後の事件において︑控訴裁が︑たとえ協約に仲裁条項が含まれている場合でも︑
N L R B ( B o a r d )
は
﹁ 第
8 条い項⑥口互畢件において協約違反の当否の主張を判断する権限が NLRB
政策の問題としてこれを見ると︑必ずしも常に権限を行使すべきであることを意味するものではない︒二 0 年以上に
︵ 四 一 七
︶
最高裁は NLRB
NLRB
(B oa rd )
は裁定を尊重すべきであろうか︒コリ
も わ
た っ
て ︑
NLRB
ころである 仲裁裁定を自発的に尊重してきたのである︒この仲裁裁定尊重政策は一般にスピルバーグ法理として知られていると
( 16 )
一 九
五 五
年 ︺
︶ ︒
この法理の当初の適用要件は︑仲裁裁定により不当労働行為問題が既に処理されていること︑仲裁が手続的に公正
になされていること︑当事者のすべてがこの手続に拘束されるものであること︑そして仲裁人の裁定が﹃明らかに本
法
(t he Ac t)
の目的及び政策に違反するものでない﹂こと︑というものであった︒その後この法理は発展し︑仲裁
いうことになったが︑現在の法理はこの要件をやや緩和しているように思われる︒オーリン会社事件
( N L R
B ︑
( 17 )
九 八
四 年
︶ で
︑
NLRB
仲裁裁定が法律
( st a t ut e )
に違反していないという解釈が可能なものであること︑である︒
(B oa rd )
第三号
(Bo ar d)
は︑仲裁が不当労働行為問題を効果的に処理していると判断した場合には︑既存の
(B oa rd )
︵ 四 一 八
︶
で扱われたものと全く同一のものでないかぎりり︑裁定を尊重しないと
(B oa rd )
は裁定が尊重されるためには次の要件を満たしている場合に限られるとしている︒
(B oa rd )
が扱う不当労働行為問題と実質的に同一性があること︑かつ︑
はまた︑被用者の利害が適切に苦情手続に反映されていない限り︑個々の被用者の権利にかか
( 18 )
一 九
七 三
年 ︺
︶ ︒
(B oa rd )
が既存の仲裁裁定を尊重する心構えでいるとしても︑不当労働行為の申立
(c ha rg e)
がなされ
ア絶縁電線会社事件
( N L R
B ︑ ているときに︑仲裁手続がなお終了していない場合にも︑
( 19 )
一 九
七 一
年 ︶
NLRB
で︑使用者は二つの被用者グループの賃金率を一方的にあげ︑また︑
これまで二人でこなしていた仕事を独りでするように指示した︒使用者は︑これらの措置は過去の慣行に照らして解 わる裁定は尊重しない︑とも述べている ︵ジェイコプズ為替会社事件︹ NLRB ︑ NLRB 即ち︑仲裁人の扱った契約問題と NLRB 人の処理した問題が後に NLRB ︵スピルバーグ製造会社事件︹ NLRB ︑
関 法 第 四 七 巻
一 八
ア メ
リ カ
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け る
団 体
交 渉
義 務
( ‑
︱ )
釈すると協約に違反するものではないと主張した︒組合は協約の仲裁条項に基づく仲裁を申し立てずに︑ NLRB に
第 8 条い項⑤号の交渉拒否の救済申立をした︒ NLRB
裁手続を尊重するとの判断を示した︒
( B o a r d )
の多数意見によれば︑この事件には仲裁で処理するのが適切とされるいくつかの理由があった︒
即ち︑この事件の当事者には長い歴史をもつ建設的な団交関係があり︑上記の措置が使用者の反組合的動機
( a n t
, i
u n i o n a n i m u s
) によるものであるという主張がなされていなかった︒また︑その措置が協約上の権利
( c o n t r a c t
p r i v i l e g e )
に基づいてとられたものであるという使用者の主張は︑仲裁による処理にふさわしいものであった︒もっ
とも︑仲裁手続およびその結果としての裁定がスピルバーグ法理の基準に合致しないおそれがあったことを NLRB
コリア会社事件の命令をめぐって論争が生じた︒ NLRA による公法上の権利の保護は私的な協約上の措置によっ
て失われることはあり得ないし︑またそうすべきではないとの批判があった︒しかし︑この事件の最大の問題は︑こ
れまでの法理が新たな事実関係に拡張適用されたことに由来するものであった︒コリア事件においては︑交渉拒否に
該当するとして組合が非難した行為に対して︑使用者は協約に基づく権利の行使であると主張した︒この主張を仲裁
人が支持すれば︑使用者の行為は雇用条件の一方的変更ではなかった︑ということになろう︒即ち︑協約上の権利の
ここで︑ラジオイア会社事件
( N L R
B ︑ には管轄権を有するとの判断を示したのである︒ (
B o a r d )
は認めており︑そこで︑ NLRB
NLRB
一 九
( B o a r d )
はこのとき初めて︑仲裁裁定がない場合でも︑仲
( B o a r d )
は︑仲裁は尊重するが︑裁定がこれらの基準に合致しない場合
のNLRB 正当な行使であれば︑第 8 条い項③号違反にはならないことになろう︒
( 20 )
一 九 七 二
︶
( B o a r d )
命令を考えてみよう︒使用者は︑会社
︵ 四 一 九
︶
使用者は︑次の二つの法違反の申立をうけていた︒ ︱つは︑組合代表に対して彼らが会社内において有給で
( o n
ナショナル・ラジオ会社事件
( N L R
B ︑ いると仲裁人が判断した場合は別である︒
( B o a r d )
が交渉拒否の申
( B o a r d )
による第 8 条 創設以来︑クリスマスには小額のボーナスを被用者に支給してきた︒会社はその後︑組合によって組織され︑新協約 締結のための交渉が行われたが︑そこではクリスマスボーナスの支給慣行に言及されることはなかった︒なお︑本件 協約には広範な﹁ジッパー条項﹂が含まれていた︒会社はクリスマスポーナスの支給を停止し︑これが紛争のもとと なった︒委員の意見は対立し︑三対二の多数で委員会は︑仲裁を尊重するとの命令を出した︒この判断はコリア事件 法理の範囲を越えるものであるが︑ここでは︑仲裁尊重問題をひとまず度外視し︑本件を第 8 条い項⑥号違反事件と
して考えてみよう︒同号違反の成否を判断する NLRB
名 ︶
a r g a i n i n g g a r e e m e n t )
たは交渉におけるこれをめぐる論議の有無によって判断される︒この基準に照らすと︑使用者は本件の事実関係のも
とでは第 8
条い項固号に違反していたように思われる︒この労使間の紛争を協約の解釈問題
( m a t t e r o f c o n t r a c t
︶
m t e r p r e t a t 1 o n
第三号
( B o a r d )
︵ 四 二
0 )
の基準は︑クリスマスボーナスの支給慣行が協約
に盛り込まれていたかどうかということである︒これは︑その旨の協約上の文言の有無ま
と仲裁人が見たとすると︑仲裁人は協約規定のなかには使用者にクリスマスポーナスの支給を継続す
ることを義務づるものはなにもない︑と裁定してさしつかえなかろう︒この裁定は NLRB
国項③号違反の認定と矛盾するものではない︒なぜなら︑仲裁人のこの裁定は︑ NLRB
立を退ける理由となるものではなく︑むしろ︑どちらかといえば︑本件の仲裁裁定は交渉拒否の認定を支持している
と思われるからである︒もっとも︑ボーナスの打ち切り
( b o n u s t e r m i n a t i o n )
がジッパー条項によって認められて
関 法 第 四 七 巻
( 21 )
一九七二年︶において︑仲裁尊重政策はさらに拡大された︒本件では︑ 二 0
ア メ
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義 務
c o m p a n y ‑ c o m p e n s a t e d t i m e ) #
口 庫
旧 机
〜 理
に
4
のたっている間の行動記録の提出を一方的に求めたことを理由とする第 8
条い項⑥号違反︑もう︱つは︑この要求に従わなかった組合代表の一人を解雇したことを理由とする第 8 条 0 項③号
は今度も三対二の多数でコリア命令を第 8 条い項③号事件にも適用すると宣言した︒
違 反
で あ
る ︒
N L R B ( B o a r d )
その後︑仲裁人は︑本件解雇について︑動機は反組合的なものではなく︑また協約違反にもならないと認定した︒仲
裁人によれば︑被用者は使用者の定めた規則に従う義務があり︑異議申立は苦情手続を通してなすべきであった︒行
動記録報告条項を一方的に採り入れたことが第 8 条国項⑤号違反となるかどうか︑という問題については仲裁人は判
判断を示すことを拒否した
( N L R
B ︑
( B o a r d )
に救済申立をしたが︑
NLRB
( 22 )
一 九
七 三
年 ︶
︒
この事件は︑二つの理由で強調するに値するものである︒その一は︑仲裁前
( p r e
‑ a r b i t r a t i o n )
にも仲裁を尊重す
るという法理を第 8 条国項③号事件に拡張適用したことである︒そして︑この事件は︑ラジオイア会社事件と同様に︑
仲裁人の裁定が不当労働行為問題を処理しているとは必ずしもいえない事件でもあった︒本件の行動記録報告規則が
a n i m u s )
第 8
条い項固号に違反して使用者により一方的に設けられたものであれば︑たとえ反組合的動機
( a n t n i i u o n
の証拠がなくても報告を求めることは第 8 条い項③号および①号に違反することになろう︒仲裁人は︑ N
L R
A にかかわる問題に関しては︑判断を下す管轄権も専門性も有していない︒その二は︑
NLRB
のメンバー
( p e r s o n n e l )
の交替の結果︑ナショナル・ラジオ会社事件法理はジェネラル・アメリカ運送会社事件
( N L R
B ︑
( 23 )
九七七年︶において覆された︒この事件は︑仲裁前にも仲裁を尊重するという法理をどうするかということについて
はなお決着がついていないことを示すものであった︒五人の委員のうち二人が︑最大限に拡張適用されたコリア法理 断を示さなかった︒被用者側は再び
NLRB
︵ 四 ニ ︱ )
( B o a r d )
はまたもや争点に
を 復
活 さ
せ た
︒ ﹂
第 一 二 号
( B o a r d ) は ︑ ( B
o a r d )
が有していないことである︒あるいは︑ NLRB
︵ 四 ニ ニ
︶
を固執し続けることに賛成した︒別の二人の委員が︑ NLRB は事件を﹃コリアライズする﹄
( 1 1
コリア法理を拡張
適用する︶立法上の権限はないと主張した︒最後の一人の委員︑つまりキャスチング・ヴォートを握ることになった
委員の意見は︑次の通りであった︒仲裁裁定の尊重は︑第 8 条い項固号および第 8 条固項③号違反事件においては妥
当であるが︑第 8 条い項③号︑第 8 条⑯項②号および第 8 条⑯項①囚号違反事件おいては妥当でない︒また不当労働
行為の救済請求状が交渉拒否と他の不当労働行為をあわせて発布されている事件においても妥当ではない︒動揺を続
けるこの残念な物語の最終章において︑ NLRB
( 24 )
一九八四年︶において︑ジェネラル・アメリカ運送会社事件法理を破棄し︑前示のナショナル・ラジオ会社事件法理 ユナイテッド・テクノロジース会社事件
( N L R
B ︑
﹁ 誠
実 交
渉 ( g o o f a d i t h b a r g a i n i n g )
に関するもっとも厄介な問題は︑使用者の交渉拒否に対する適切な救済策を
いるといってもよい︒例えば︑破廉恥な使用者が NLRB および裁判所手続きを悪用して組合の交渉代表権獲得の試
みを打ち砕こうとしている場合を考えて見よう︒その際︑この使用者は︑組合による代表権獲得の運動が少なからず
被用者の感情によって左右されるものであることをよくわきまえているとしよう︒多くの被用者たちは︑使用者が組
合の試みに対して手荒に応ずることをおそれ︑また︑組合の試みが万一成功するとしても何年も先の遠い将来のこと NLRB ①効果的な救済策の欠如
五
﹁交渉拒否に対する救済策﹂
関 法 第 四 七 巻
( B o a r d )
が︑適切な救済策の採用を拒否して
を考えると︑自分たちの代表になろうとしている組合の努力を見ても心を動かされることはほとんどあり得ない︒使
用者は NLRA の規定に違反するかどうか頓着せずに︑組合が選挙に勝利するのを妨げる行動をとることもあろう︒
( 25 )
一 九 六 九 年 ︶
勝利しないときにも NLRB は交渉命令をだすような愚挙をおかさないように努めるであろうが︒
しかし︑使用者は不当労働行為または組合の選挙勝利の結果︑交渉命令が発せられても︑いずれにせよ︑破廉恥な
使用者はとるにたらない理由で異議を唱えるであろう︒この結果︑ NLRB は 第 8 条い項③号の手続きをとることを
余儀なくされる︒不当労働行為の審問が行われ︑
N L R B ( B o a r d )
数年を要し︑この間︑使用者は組合と交渉する必要はないのである︒
( B o a r d )
( B o a r d ) が控訴裁で勝訴したとしても︑唯一の救済策である交渉義務が発生するのは︑
の命令に執行力が付与された時からである︒訴訟期間中︑使用者が組合を無視することで節約できた金額
が訴訟に要した弁護士費用よりも多ければ︑使用者は利益を得たのであり︑敗者は被用者ということになる︒この遅
延は使用者にとって別の利益もある︒即ち︑控訴裁による命令の執行が遅れたために︑被用者の組合への関心がかな
り弱まってしまうことがある︒その結果︑使用者が交渉を強制される頃には︑使用者は︑当初から交渉したときと比
べると︑はるかに力の弱まった組合を相手に交渉を進めることができるのである︒
組合側のもう︱つの不満は︑使用者は形だけの交渉を行い︑合意に達するための真の努力を払おうとしない場合で
あ る ︒ こ の 場 合 ︑ NLRB
( B o a r d )
が使用者は法律上の交渉義務を履行していないと認定しても︑効果的な救済策
ア メ
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に お
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団 体
交 渉
義 務
︵ 二
︶
NLRB としないから︑控訴裁によって NLRB
( B o a r d )
の命令が発せられても︑使用者は命令に従おう
の命令に執行力が付与されることになる︒ここまでの手続きには
も ち
ろ ん
︑
NLRB 対ギッセル缶詰会社事件︵連邦最高裁︑
︵ 四
二 三
︶
NLRB
で示された基準に照らして︑組合が選挙に
て い
る ︒
い︑と規定している︒ 項を盾に NLRB 事件︵連邦最高裁︑ する旨を命ずる是正命令
( c e a s e a n d d e s i s t order) を出すしか手がないのである。
H•K・ポーター会社対
NLRB ( 26 )一 九
七
0 年︶を見てみよう︒この事件では︑新たに交渉代表権を獲得した組合が交渉を始めたが︑
使用者は形だけの団交に応じたにすぎなかった︒交渉の中で組合は組合費のチェック・オフを要求したが︑使用者は でもないと認定した︒そして︑使用者に対してチェック・オフ条項を受け入れることを命じた︒使用者は︑第
8 条囮
( B o a r d ) の命令に従うことを拒否した︒同項は︑労使のいずれの当事者にも誠実交渉義務
( g o o d f a i t h b a
r g a i n i n g o b l i g a t i o n ) が課せられているが︑その義務は相手方の提案に同意することまで強制するものではな 控訴裁は︑次のように判示した︒第
8 条い項は︑法違反があるかどうかの認定に際し
NLRB
べき事柄が何であるかに関するもので︑救済策に関するものではない︒本件において
NLRB
誠意がなかったことを認定した以上︑同項によって法違反の認定または救済内容の考案を妨げられるものではない︒
最高裁はこの控訴裁判決を破棄した︒その判示するところは次のようであった︒
NLRB
交渉を命ずる権限はあるが︑﹃労使のいずれに対しても︑労働協約のいかなる合意条項
( a n y s u b s t a n t i v e c o n t r a c t u a l p r o v i s i o n )
についても同意を強制する権限はない︒﹄同項は︑
H•K
・ポーター会社事件における最高裁の意見をみると、多数違反は、使用者による違法な交渉拒否があったと
J