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文化財建造物の振動特性

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Academic year: 2021

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文化財建造物の振動特性

はじめに1 9 9 8 年度から科研基盤研究( C )により、「伝 統的木造建築の振動特性に関する研究」(代表者・内田 昭人)として、建設省建築研究所・職業能力開発大学校 と共同研究を行っている。これまでに、宮内省南殿( 復 原建物)2棟・法隆寺建物4棟・薬師寺建物3棟・東大 寺建物1棟・清水寺仁王門・南禅寺三門を対象として常 時微動測定を実施した。この測定方法の有効性について 検討を進めるとともに、研究成果については逐次国内外 の学会で発表してきた。本稿では1 9 9 8 年に「第5向木質 構造世界会議( スイス) 」で発表した論文の概要について 報告する。

測定方法と解析方法常時微動測定は振動技研MT K H ‑ 1 C ( 水平方向微動計) およびMT K V ‑ 1 C ( 鉛直方向微動計) を 合計1 6 台使用し、図1に示すような測定点に順次設置し て約1 0 0 秒間の速度波形記録を複数回、データレコーダー に収録する。得られた時間軸波形に対して、サンプリン グ周波数2 0 H z で7河の平均化を行うF F T 処理を行ってフ ーリエ速度スペクトルを求め、上部の測定点と地動との 間の伝達関数のピークから固有振動数を推定する。一方、

各固有振動数における各測定点間の速度振幅の比および 位相差から振動モード図を作成する。さらに、フーリエ 速度スペクトルに対する厄分の1法またはカーブフイッ

トにより減衰定数を求める。

測定結果と解析結果測定対象建物および測定結果と解 析結果を表に示す。一層の建物では、1次 2次の振動 モードは、桁行方向または梁間方向の並進( 全体が同じ 方向に揺れている)振動であるが、宮内省南殿・薬師寺 東院堂・法隆寺大講堂では、3次の振動モードにねじれ 変形が見られた。これらの建物は、前面が大きく解放さ れているのと、土塗壁の配憧に偏りがあるためである。

東大寺転害門では、梁間方向の位相が妻側と内側とで 逆転する、弓なりの振動モードが現れた。これは、建物 の中央の桁行方向のみに壁が配置されていることによる。

宮内省南殿を除き、1次・2次の固有振動数はそれぞれ 1 . 4 5 〜1 . 9 Hz と1 . 9 〜2 . 1 5 Hz であった。宮内省南殿は他の3 つの建物と比較し、規模も小さく、現代的構法である筋 かい入りラスモルタル壁を有するため、建物の剛性は高

3 4 奈 文 研 年 報 / 1 9 9 9 ‑ 1

< 、固有振動数は最も高い値となっている。

二層の建物、法隆寺中門・法隆寺金堂では、建物の規 模も似ていることから、1次・2次の振動モードも同じ ような形になっていることがわかる。多屑、三重・五重 塔では、いずれも1次の振動モードでは対角線方向に振 動し、塔のある高さにおいて位相が逆転する、高さ方向 の2次・3次モードを示した。1次固有振動数は0 . 8 5 〜 1. 05Hz、2次は2. 05〜2. 5Hz,3次は3. 5〜4. 0Hzである。

東塔と西塔を比較すると、固有振動数の値は、いずれも 西塔の方がl〜2割高い値となっている。近年の再建で ある西塔は、創建架構を残す東塔と比較して、劣化して おらず、剛性が保たれているためであろう。3つの塔と

も振動モードでは類似性が見られる。

振動モデルの適用図2に示すような平面型振動モデル を仮定し、宮内省南殿建物に適用して測定値と計算値と の照合を試みた。各部の剛性評価には、柱傾斜復元力、

筋かい壁のせん断剛性、および屋根面などの水平構而剛 性をパラメーターとして固有振動数および振動モードを 求めた。図3でモード1,2,3,5は測定値と計算値は 比較的良く一致している。モード4,6は測定値が得ら れていれば、計算値と近似していると推定される。

法隆寺五重塔・薬師寺西塔では、現在、高層ビルの設 計に使われている串団子型振動モデルを適用し、測定値

と計算値とを照合している。三( 五) 重塔全体を各層の質 点とせん断ばねとからなる3(5)質点系にモデル化し、

稔算で求めた質雌を用い、試行錯誤的に各層のせん断剛 ' 性を当てはめて、測定結果に近い固有振動数および振動 モードが得られるような剛性の組合わせを求めた。図4

に示すように、1次.2次モードでは測定値と計算値が 比較的良く一致している。三重・五重塔では、このよう な質点系振動モデルを設定することにより、主要な振動 モードを説明できることがわかった。

以上、これまで不明であった文化財建造物の固有振動 数、振動モード、減衰定数などの振動特性が明らかにな ってきた。これらの数値は、微少な振幅で建物が揺れる ときの、揺れるはやさ、揺れる形、揺れの収まり方を示 すものであるが、同時に大地震動に対する建物の耐震 性 を考える上で不可欠の要素でもある。今後は得られた数 値を、文化財建造物の耐震性能を向上させるための基礎 資料として活用したい。(内田昭人/ 埋蔵文化財センター)

(2)

モード5 9. B7Hz

B−gHzz

雲 至 !

雲鍾塞鍵§瀞

L e V e I 4

i 王室Z

L eVelG

至蓋雪

‐ . 、 5

−塞一

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1蕊 '1

L e v e l 5 跡諏副単馳Ⅲt 州l WW1 I 1 U 認ロ L恥、 隅MIj潤

麹錨lfj

調6−4① bO q 図 2 平 両 型 振 動 モ デ ル

ロ ロ = 、 F 』 = ー ー

騨鯉蕊禦辿些竺

0−−−5m

2.東大寺転害F E 1

0 − s

4.法隆寺大講堂 3.薬師寺東院堂

L、v、Ⅷ圃 L … 園

,皇.1.

モード1 4.83Hz 4△ 35Hz

鍾謡 露鍾塞溌

'1

吾 彊

一 五 一 一 一 一 再 で =

1 1 lbロ。 、I、

モード2 4.63Hz 4.65Hz

、計算値

③測定値

、.. . nE

園 □

モード6 11.9Hz

− H z 図3

奈文研年報/1 9 9 9 ‑ 1 協臆

LQVPI慨

F ,

L eveI2

! i重 重 iil

モード35.63Hz7.65Hz

画 鰯 睡

+一箇一.'−,1

振動モードR:桁行方向並進振動S:梁1 1 1 方向、 l I i 進振動D:対ノ リ 線〃I h j 振助T:ねじれ振動 S2:梁I I I j 方向で位机が逆娠するモード112,113:位柑が逆帳する、尚さ方向の2次、3次モード

表 測 定 結 果 と 解 析 結 果

L e v e l 7 ト ヨ I

l E雪I

3. OOHz B−4Hz

一 三 〆 一 一 I

Ou−LLu5L e v e I 6.法隆寺今蛍

OLQ‑ q‑ Lg‑ pg

5 .法隆寺中門 モード4

8.86Hz 一 H z 法隆寺金堂

の測定点

③ 計 算 値 : 0 . 9 H z 2 . 4 H z 3 . 7 H z e測定値:0.9Hz2 . 5 Hz4 . 2 Hz

図4測定値と計算値の比較

(薬師寺東塔・上)(法隆寺五重塔・下)

L ・ 』

O・ B6Hz O−B5Hz

1.53Hz 2.05Hz

罵鴛散

I −QVgl3

U三1 102−、貝

§

‐ 。

測定値と計算値の比較( 宮内省南殿)

L evBI1

三 斗

法隆寺五重塔 の測定点

→ 水 平 方 向

。 鉛 直 方 向 I冒1

■ I [ 刀 ロ I ●

8 . 薬 師 寺 西 塔 9 . 法 隆 寺 五 重 塔 図 1 測 定 対 象 建 物 と 測 定 点

: 域:

。・…jjs

7 . 薬 師 寸 宋 后

Ⅲ 再 一 皿 ー1 塵1 儒曽HL

n 1 ロ ロ | 負

'一FI刃

隣I

一層

二 層

多 層

測定対象建物

1 . 寓内杵南殿 2. 東大、f 娠害' 111 3 , 薬師寺来院堂 4 . 法隙寺大誰蛍

5. 法隆寺中INI 6 . 法隆寺金蝋

7 . 薬師寺束堺 8 . 薬師が西幣 9 . 法隆寺江爪唯

固有振動数(H z )

モ ー ド 1 2 3 4. 14.657 . 6 5 1 . 4 5 1.94.05 1.92.152.65 1 . 7 2.12.50

1 . 5 5 1.8 182.05

0 . 8 5 2053. 1 1 . 0 5 253.75 0 9 2 . 5 4 . 2

減衰定数〈%)

モ ー ド 1 2

1 . 6 3 5 2 61.0 1. 9

1 . I2.6 1. 11.7

振動モード モ ー ド 1 2 3

R S T S R S 2 S R T S R T

S R S R

D I I 2 I I 3 D I I 2 1 1 3 D I I 2 1 1 3

薦 il

戸一や一一

ノコーー②

参照

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