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出版情報:Kyushu University, 2009, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

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(1)

コウサスル シュウハスウ ヘンカオン ノ レンゾク セイ ノ チカク ニツイテ

黒田, 剛士

Faculty of Design, Kyushu University

https://doi.org/10.15017/16819

出版情報:Kyushu University, 2009, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第 3 章 空隙転移錯覚の生起に影響をおよぼす周波数変化音の音圧レベル要因について

3.1 本章の目的

4 つの実験を行ない,空隙転移錯覚が生ずるための交差するグライド音のレベル条件につ いて検証した。

3.2 実験 1 現象報告の実験による音圧レベル要因の検討

3.2.1 目的

現象報告による実験を行ない,交差するグライド音間の音圧レベル差が空隙転移錯覚の 生起におよぼす影響について検証した。

3.2.2 方法

3.2.2.1 聴取者

4 名の男性と 4 名の女性とによる計 8 名の聴取者が実験に参加した。年齢は 21 歳から 24 歳までであった。全員,九州大学芸術工学部,および同大学大学院芸術工学府の学生であ り,同大学の実習として技術的聴取のための訓練を受けていた。聴取者は全員,講義や演 習などを通じて空隙転移錯覚の存在について知っていた。しかし,本実験の目的や内容に ついて事前に知らされることはなかった。全員に趣味や学業などにおける音楽演奏の経験 があった。3 名の聴取者に対しては左耳に刺激音を呈示し,5 名の聴取者に対しては右耳に 刺激音を呈示した。全員が正常な聴力を有していることを純音の聴力を調べることで確認 した。

3.2.2.2 刺激音

二つのグライド音からなる刺激音を用いた (図 3.1)。一方のグライド音の持続時間は 4000 ms であり,もう一方のグライド音の持続時間は 400 ms であった。二つのグライド音 は時間-周波数平面上を互いに反対方向に上昇,もしくは下降した。二つのグライド音は互 いの時間的中央で交差し,その交差点の周波数は 1000 Hz であった。周波数変化率は 1/3 oct/s であった。長いグライド音が上昇し,短いグライド音が下降する条件を上昇条件,長 いグライド音が下降し,短いグライド音が上昇する条件を下降条件と呼ぶ。したがって,2 つの「方向」条件があった。

グライド音の始まる際と終わる際には,振幅が 20 ms かけて増加,および減衰した (こ れらを振幅の立ち上がり,立ち下がりと呼ぶ)。その包絡線の形状は,コサイン関数曲線の 形状であった。これらの区間は持続時間内に含められた。

4 つの「空隙」条件があった。二つのグライド音のどちらもつながっていて空隙の無い条

(3)

件を連続条件と呼ぶ。短い方のグライド音の時間的中央に空隙が挿入された条件を短音空 隙条件と呼ぶ。長い方のグライド音の時間的中央に空隙が挿入された条件を長音空隙条件 と呼ぶ。両方のグライド音の時間的中央において空隙が共有される条件を空隙共有条件と 呼ぶ。空隙の時間的長さは,立ち上がり時間と立ち下がり時間とを除いて 100 ms であった。

長いグライド音と短いグライド音とのレベルは同時に変化した。長いグライド音のレベ ルは+10 dB から-10 dB まで 1 dB 刻みで変化し,一方,短いグライド音のレベルは-10 dB から+10 dB まで 1 dB 刻みで変化した。したがって,21 の「レベル」条件があった。長い 音のレベルと短い音のレベルとを順に呼ぶことで,それぞれのレベル条件の名前とする。

例えば,長いグライド音が+6 dB で,短いグライド音が-6 dB であったとき,この条件を+6/-6 条件と呼ぶ。基準とした 0 dB は 75 dB SPL に較正した。

以上の条件を組み合わせて,全部で 168 (2 方向条件 × 4 空隙条件 × 21 レベル条件) の 刺激音があった。

図 3.1 実験 1 で用いた刺激音

(4)

3.2.2.3 装置

刺激音はデジタル信号として合成され (標本化周波数 44100 Hz,16 ビット量子化),WAV 形式のオーディオファイルとして保存された。波形合成とファイル作成には開発プラット フォームアプリケーションである Jsoftware J504b を用いた。実験の流れを制御するプロ グラムの作成には,開発プラットフォームアプリケーションである Microsoft Visual Basic .NET 2003 を用いた。

刺激音は防音室内で呈示された。防音室の背景雑音は 30 dBA 以下であった。聴取者がコ ンピューター画面上に表示されたボタンをクリックすると音ファイルが再生された。音フ ァイルは全て刺激音の始まりの前に 1500 ms の無音区間を含んでいた。

刺激音はコンピューター (Frontier KZFM71/N) に搭載されたオーディオカード (E-MU 0404) からデジタル信号として出力された。信号はデジタル-アナログ変換器 (Fostex VC-8) においてアナログ信号に変換された後,遮断周波数 15000 Hz の低域通過フィルター (NF DV8FL),グラフィックイコライザー (Roland RDQ-2031),アンプ (Stax SRM-212),ヘ ッドフォン (Stax SR-202) を介して,音として出力された。低域通過フィルターはエイリ アシング周波数を抑制するため,イコライザーは出力される音の周波数特性を平坦にする ために用いた。コンピューター本体は防音室の外に置かれていた。音圧レベルは騒音計 (長 野計器 2072) と人工耳 (Brüel & Kjær 4153) を用いて測定した。

3.2.2.4 手続き

聴取者と実験者は防音室の中にいた。聴取者は各刺激音を望むだけ何度も聴くことがで きた。聴取者は回答用紙と筆記具を渡され,知覚内容を文章で説明するように,また,知 覚内容を図で描き表すように教示された。図は横軸に時間,縦軸に音の高さをとって描く ように教示されており,これらの軸は回答用紙に予め描かれていた。聴取の度に知覚内容 が異なる場合には,全ての種類の知覚内容について答え,可能ならば優先順位をつけて答 えるように教示されていた。一つの刺激音について回答が終わったら,聴取者は回答用紙 を実験者に渡した。回答に曖昧な部分や矛盾した部分があった場合,実験者は聴取者にそ の部分を明確にするように求めた。しかし,それ以外の事柄については言及しなかった。

実験セッションの前に,聴取者は全ての刺激音を画面上のボタンをクリックすることで 一通り聴いた。実験セッションと同じ方法で 8 試行の練習セッションが行なわれた。練習 試行用の刺激音は全ての刺激音の中から無作為に選ばれた。

168 の刺激音があったので,全部で 168 の試行があり,これらの試行は 12 のブロックに 分割された。したがって,各ブロックには 14 の試行があった。刺激音は無作為な順序で呈 示された。各ブロックの始めには,2 試行のウォーミングアップ試行が行なわれた。ウォー ミングアップ用の刺激音は全ての刺激音の中から無作為に選ばれた。ブロックの間には 10 分程度の休憩が設けられた。各ブロックは約 20 分で終わり,実験は 3 日から 5 日にかけて 行なわれた。

(5)

3.2.3 結果と考察

聴取者の報告から,刺激音は長い音と短い音とによるパターンとして知覚されていたこ とがわかった。回答の例を図 3.2 に示した。長い音と短い音との連続-不連続をそれぞれ 3 つのカテゴリーに分類した。はっきりとした途切れが報告されていた場合,その音は「不 連続 (D: discontinuous)」に分類された。途切れてはいないが,音の大きさの一時的な減 衰といった途切れに準ずる変化が報告されていた場合,その音は「準不連続 (P: partially discontinuous)」に分類された。途切れに関連する内容が報告されていなかった場合,そ の音は「連続 (C: continuous)」に分類された。一つの試行においていくつかの知覚内容 が報告されていた場合,もっとも優先度の高い知覚内容が分類に用いられた。優先度の違 いがなく二つの連続性を示唆していた回答が 3 つあり,この回答は以降の分析から除外し た。短い音の知覚を報告していなかった回答が 3 つあり,この回答は以降の分析から除外 した。短い音の中に二つの途切れを報告していた回答が 1 つあり,この回答は以降の分析 から除外した。各カテゴリーに分類された回答の数を表 3.1 に示した。

上昇音と途切れた 下降音。

長く上昇する音と 短く下降する音。

大きく長く高くなって いく音。とぎれあり。

そのときに,小さく短 く低くなっていく音。

図 3.2 聴取者の回答の例: 代表的な回答を模写した。刺激音は,長い音と短い音とによる パターンとして知覚されていた。

(6)

表 3.1 実験 1 における連続性カテゴリーの頻度分布

上昇条件 下降条件

長い音 短い音 長い音 短い音

長い/短い 音のレベル

[dB] D P C D P C 符号

検定 D P C D P C

符号 検定 連続条件

+10/-10 7 1 6 8 1 7 +9/-9 8 1 7 8 8 +8/-8 8 8 8 8 +7/-7 8 1 7 8 1 7 +6/-6 8 1 7 8 1 7 +5/-5 8 8 8 1 7 +4/-4 8 1 7 8 8 +3/-3 8 8 8 1 7 +2/-2 8 8 8 1 7 +1/-1 7 7 8 1 7 0/0 8 8 8 1 7 -1/+1 8 8 8 8 -2/+2 8 8 8 8 -3/+3 8 8 8 8 -4/+4 1 7 8 1 7 8 -5/+5 8 8 8 8 -6/+6 8 8 1 7 8 -7/+7 1 7 8 1 7 8 -8/+8 1 7 8 1 7 8 -9/+9 2 6 8 1 7 8 -10/+10 1 7 8 1 7 8 短音空隙条件

+10/-10 7 3 4 8 3 5 +9/-9 8 3 5 8 2 6 +8/-8 8 4 4 8 3 5 +7/-7 8 5 3 8 3 5 +6/-6 8 1 7 8 3 5 +5/-5 8 4 4 8 6 2 >

+4/-4 8 6 2 > 8 6 2 >

+3/-3 8 7 1 > 8 7 1 >>

+2/-2 8 7 1 > 8 8 >>

+1/-1 8 7 1 > 8 8 >>

0/0 8 7 1 > 8 8 >>

-1/+1 8 8 >> 8 8 >>

-2/+2 8 8 >> 8 8 >>

-3/+3 8 8 >> 8 8 >>

-4/+4 8 8 >> 8 8 >>

-5/+5 8 8 >> 8 8 >>

-6/+6 8 8 >> 8 8 >>

-7/+7 8 8 >> 1 7 8 >

-8/+8 8 8 >> 8 8 >>

-9/+9 8 8 >> 1 7 8 >

-10/+10 8 8 >> 1 7 8 >

次ページに続く

(7)

表 3.1 続き

上昇条件 下降条件

長い音 短い音 長い音 短い音

長い/短い 音のレベル

[dB] D P C D P C 符号

検定 D P C D P C

符号 検定 長音空隙条件

+10/-10 7 1 1 7 5 3 4 4 +9/-9 6 1 1 6 7 7 <

+8/-8 7 1 1 7 6 1 1 3 1 4 +7/-7 6 1 1 3 1 4 6 2 4 4 +6/-6 4 4 4 4 5 3 5 3 +5/-5 4 2 2 4 1 3 4 3 1 5 3 +4/-4 3 2 2 5 2 3 2 3 6 2 +3/-3 2 3 3 7 1 2 6 7 1 >

+2/-2 1 7 8 >> 8 7 1 >

+1/-1 8 7 1 >> 8 7 1 >

0/0 8 8 >> 8 7 1 >

-1/+1 8 7 1 >> 8 7 1 >>

-2/+2 8 2 1 5 8 2 1 5 -3/+3 1 7 1 7 2 6 1 1 6 -4/+4 8 8 1 7 8 -5/+5 8 8 2 6 8 -6/+6 8 8 2 6 8 -7/+7 1 7 8 8 8 -8/+8 1 7 8 1 7 8 -9/+9 8 8 1 7 8 -10/+10 1 7 8 1 7 8 空隙共有条件

+10/-10 7 6 1 8 8 +9/-9 8 6 2 8 7 1 +8/-8 8 7 1 8 7 1 +7/-7 8 7 1 8 7 1 +6/-6 8 8 8 8 +5/-5 8 8 7 1 7 1 +4/-4 8 8 8 8 +3/-3 8 8 8 8 +2/-2 8 8 7 1 8 +1/-1 8 8 8 8

0/0 8 8 8 8 -1/+1 8 8 8 8 -2/+2 8 8 8 8 -3/+3 8 8 8 8 -4/+4 8 8 8 8 -5/+5 8 8 8 8 -6/+6 8 8 8 8 -7/+7 8 8 8 8 -8/+8 8 8 7 1 8 -9/+9 8 8 8 8 -10/+10 8 8 8 8

注: 長い音,および短い音の連続-不連続を「不連続 (D)」,「準不連続 (P)」,

「連続 (C)」の 3 つに分類した。各刺激音において各範疇に分類された回答の 数を示した。空白は 0 を表す。長い音と短い音との連続性を比較した符合検定 の結果を示した。「>」は 5%の有意水準で長い音が短い音よりも連続して知覚 されていたことを表す。「>>」は 1%の水準であることを表す。「<」は 5%の有意 水準で短い音が長い音よりも連続して知覚されていたことを表す。分析から除 外された回答があるため,分類の合計が 8 にならない場合がある。

(8)

統計的検定を行い,各刺激音において長い音と短い音とのどちらがより連続して知覚さ れていたかについて検証した。各回答において,長い音と短い音とのどちらがより連続し て知覚されていたかについて符号をつけ,各刺激音に対して符号検定を行なった。除外さ れた回答がなければ,符号検定は 8 名の聴取者による 8 つの比較に基づいている。長い音 と短い音とが同じカテゴリーに属していた場合,これらはタイ (同点) にあるとみなし,

検定の計算から除外した。

短音空隙条件において,短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルとほぼ同じ とき,もしくはより高いときに,長い音が短い音よりも有意に連続して知覚されていた。

すなわち,物理的構造そのままに途切れが短い音にあるかのように知覚されていた。

長音空隙条件において,二つのグライド音のレベルがほぼ同じときに長い音は短い音よ りも有意に連続して知覚されていた。すなわち,空隙転移錯覚が生じていた。短いグライ ド音のレベルが長いグライド音のレベルより低いときにおいても,空隙転移錯覚は依然生 ずる傾向にあった。

3.3 実験 2 精神物理学的実験による音圧レベル要因の検討 I

3.3.1 目的

空隙転移錯覚は短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりある程度低くて も生ずるようである。空隙転移錯覚の生ずるレベル範囲をより詳細に把握するために,定 量的なデータを得ることのできる精神物理学的実験を行なった。

3.3.2 方法

3.3.2.1 聴取者

実験 1 と同じ聴取者が実験に参加した。

3.3.2.2 刺激音と装置

実験 1 と同じ刺激音と装置が用いられた。

3.3.2.3 手続き

刺激音の聴取,および回答はコンピューター画面上に表示されたボタンをクリックする ことで行なわれた。ボタンの配置を図 3.3 に示す。「つながっている」ボタンと「途切れて いる」ボタンの位置は聴取者間で入れ替えた。また,長い音のためのボタン群の位置と短 い音のためのボタン群の位置は聴取者間で入れ替えた。

聴取者が「Play」ボタンを押すと,刺激音が一回呈示された。聴取者は刺激音を一回だ け聴くことができたが,咳や居眠りなどの理由で刺激音を聴き逃した場合,「Replay」ボタ

(9)

ンを押すことで同じ刺激音を聴くことができた。回答が終わったら,「Next」ボタンを押し て次の試行に進んだ。

聴取者は,長い音と短い音とのそれぞれが「つながっている」か「途切れている」かに ついてボタンを押すことで答えた。聴こえた音がつながっているのか途切れているのかわ からなかった場合,聴取者は「わからない」ボタンを押したが,このボタンは明らかに必 要なとき以外は押さないように教示されていた。音が小さすぎてよく聴き取れない場合,

聴取者は「聴き取れない」を押した。刺激音が長い音と短い音とによるパターンとして聴 くことができない場合,聴取者は「その他」を選び,知覚内容を実験 1 と同じように現象 報告を用いて答えた。

168 の刺激音を無作為な順序で呈示するのを 1 ブロックとし,11 のブロックが行なわれ た。聴取者は,最初のブロックは練習ブロックであり,このブロックは望むだけ何度も繰 り返すことができると教示されていた。しかし,実際に繰り返した聴取者はいなかった。

各ブロックは二つの小ブロックに分けられ,小ブロックの間には 10 分程度の休憩が設けら れた。小ブロックの始めには,2 試行のウォーミングアップ試行が行なわれた。ウォーミン グアップ用の刺激音は全ての刺激音の中から無作為に選ばれた。各小ブロックは 20 分程度 で終わり,実験は 4 日から 7 日にかけて行なわれた。

図 3.3 実験 2 の実験画面

(10)

図 3.4 実験 2 の上昇条件の結果

3.3.3 結果と考察

「聴き取れない」という反応が得られた場合,その反応が得られた試行ごと以降の分析 から除外した。+9/-9 条件の上昇条件,+10/-10 条件の上昇条件と下降条件とにおいて,「聴 き取れない」反応が 10%を超えたため,+9/-9 条件と+10/-10 条件とを以降の分析から除外 した。

「わからない」という反応は折半し,半数を「つながっている」という反応の数に,も う半数を「途切れている」という反応の数に割り当てた。「つながっている」という反応の 割合の平均値を図 3.4 と図 3.5 とに示した。

(11)

図 3.5 実験 2 の下降条件の結果

「つながっている」反応の割合の平均値が 50%を超えていたとき,その音はつながって知 覚されていたとみなした。平均値が 50%を下回っていたとき,その音は途切れて知覚されて いたとみなした。連続条件において,長い音と短い音との両方が物理的構造そのままにつ ながって知覚されていた。空隙共有条件において,長い音と短い音との両方が物理的構造 そのままに途切れて知覚されていた。

短音空隙条件においては,2 種類の知覚が生じていた。短いグライド音のレベルが長いグ ライド音のレベルとほぼ同じとき,もしくはより高いときには,物理的構造そのままに,

長い音はつながって,短い音は途切れて知覚されていた。短いグライド音のレベルが長い

(12)

グライド音のレベルよりもかなり低いときには,二つの音が両方ともつながって知覚され ていた。

長音空隙条件においては,3 種類の知覚が生じていた。二つのグライド音のレベルがほぼ 同じとき,空隙転移錯覚が生じていた。すなわち,長い音はつながって,短い音は途切れ て知覚されていた。短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりも低いとき,

物理的構造そのままに,長い音は途切れて,短い音はつながって知覚されていた。短いグ ライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりも高いとき,二つの音の両方がつながっ て知覚されていた。

長音空隙条件において空隙転移錯覚の生じた範囲を明らかにするために,以下のような 計算を行なった。まず,長いグライド音のレベルに対する短いグライド音の相対レベルを 求めた。これは,短いグライド音のレベルの値を長いグライド音のレベルの値で減じた値 である。図 3.4 と図 3.5 からわかるように,相対レベルが増加するにつれて,長い音にお ける「つながっている」の割合が増加する。相対レベルがより高くなると,短い音におけ る割合も増加する。このように割合の増加する過程において,割合がちょうど 50%を超える 相対レベルの値を連続性閾値レベルと定義した。各聴取者について,長い音と短い音との それぞれにおける閾値を求めた。閾値の算出には直線補完法を用いた。2 名の聴取者におい て,長い音における割合が 50%を超えた後,一度減少して 50%を下回り,再び増加した。こ の場合においては,最後に 50%を超える値を閾値として採用した。上昇条件では,長い音に おける閾値の平均値 (

N

= 8) は-9.5 dB (

SD

= 2.1) であり,短い音における閾値の平均 値は+2.0 dB (

SD

= 1.3) であった。下降条件では,長い音における閾値の平均値は-9.9 dB (

SD

= 3.3) であり,短い音における閾値の平均値は+2.4 dB (

SD

= 1.2) であった。相対 レベルが長い音の閾値と短い音の閾値との間にあるとき,長い音はつながって,短い音は 途切れて知覚されていた。そこで,この二つの閾値の間の範囲を空隙転移錯覚の生起範囲 とした。上昇条件において,空隙転移錯覚は相対レベルが-9.5 dB から+2.0 dB までのとき に生じていた。下降条件において,空隙転移錯覚は相対レベルが-9.9 dB から+2.4 dB まで のときに生じていた。

二つのグライド音のレベルにある程度の差があっても空隙転移錯覚は生ずるようである。

このことについて統計的検定を行なって検証した。

t

検定を行い,上昇条件と下降条件との それぞれにおいて,長い音の閾値レベルの平均値と相対レベル 0 dB との間に,また,短い 音の閾値レベルの平均値と相対レベル 0 dB との間に有意差があるかどうかについて検証し た。したがって,

t

検定は計 4 回行なわれた。全ての比較において有意差のあることがわか った。すなわち,上昇条件の長い音における比較 (

t

(7) = -12.3,

p

< .01),短い音にお ける比較 (

t

(7) = 4.0,

p

< .01),下降条件の長い音における比較 (

t

(7) = -8.0,

p

< .01),

短い音における比較 (

t

(7) = 5.3,

p

< .01) において有意差のあることがわかった。空隙 転移錯覚は短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりある程度低くても,ま た,短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりある程度高くても生ずること

(13)

がわかった。

3.4 実験 3 精神物理学的実験による音圧レベル要因の検討 II

3.4.1 目的

実験 1 と実験 2 では,長いグライド音のレベルと短いグライド音のレベルとを同時に変 えていた。そのため,これらの実験で見られたグライド音の連続性の知覚の変化は,グラ イド音単体のレベルの変化によるものなのか,二つのグライド音のレベルの差の変化によ るものなのかがわからない。この問題について検証するために,グライド音のレベルをい くつか異なる方法で変えて,実験 2 と同じような精神物理学的実験を行なった。

3.4.2 方法

3.4.2.1 聴取者

7 名の聴取者が実験に参加した。5 名は男性,2 名は女性であり,年齢は 22 歳から 24 歳 までであった。4 名の聴取者は実験 2 に参加していた。聴取者は全て九州大学芸術工学部お よび同大学院芸術工学府の学生であり,同大学の実習として技術的聴取のための訓練を受 けていた。聴取者の 1 名は実験者 (S.E.) であった (付記 2 参照)。それ以外の聴取者は,

講義や演習などを通じて空隙転移錯覚の存在について知っていたが,本実験の目的や内容 について事前に知らされることはなかった。聴取者の全てに趣味や学業などにおける音楽 演奏の経験があった。3 名の聴取者に対しては右耳に刺激音を呈示し,4 名の聴取者に対し ては左耳に刺激音を呈示した。聴取者の全員が正常な聴力を有していることを純音の聴力 を調べることで確認した。

3.4.2.2 刺激音

二つのグライド音の交差するパターンを刺激音として用いた。各グライド音の持続時間,

周波数変化率,交差点の周波数,振幅の立ち上がりと立ち下がり,そして空隙の時間的長 さは実験 1 と同じであった。

2 つの「方向」条件があった。上昇条件では,長いグライド音は上昇し,短いグライド音 は下降した。下降条件では,長いグライド音は下降し,短いグライド音は上昇した。

2 つの「空隙」条件があった。短音空隙条件では,空隙が短いグライド音の時間的中央に 挿入されていた。長音空隙条件では,空隙が長いグライド音の時間的中央に挿入されてい た。

4 つの方法をもって長いグライド音のレベルと短いグライド音のレベルとを操作した。

-2/+2 系列では,長い/短いグライド音のレベルを+8/-8 dB から-8/+8 dB まで-2/+2 dB 刻 みで変えた。0/+2 系列では,長いグライド音のレベルを 0 dB に固定して,短いグライド音

(14)

のレベルを-8 dB から+8 dB まで+2 dB 刻みで変えた。-2/0 系列では,長いグライド音のレ ベルを+8 dB から-8 dB まで-2 dB 刻みで変え,短いグライド音のレベルを 0 dB に固定した。

+2/+2 系列では,長い/短いグライド音のレベルを-8/-8 dB から+8/+8 dB まで+2/+2 dB 刻 みで変えた。各系列において 9 つの条件が得られたが,4 つの系列の全てに 0/0 dB が重複 して現れていたので,重複を除外して,全てのレベル条件が等しく呈示されるようにした。

したがって,全部で 33 の「レベル」条件があった。基準とした 0 dB は,70 dB SPL に較正 した。

以上の条件を組み合わせて,全部で 132 (2 方向条件 × 2 空隙条件 × 33 レベル条件) の 刺激音があった。

実験 1 と同じ装置を用いたが,アンプとヘッドフォンはそれぞれ Stax SRM-313 と Stax SR-303 に交換した。

3.4.2.3 手続き

実験 2 と同じ手続きで実験を行なった。しかし,「わからない」という選択肢は「聴き取 れたがわからない」に改めた。この変更は「わからない」と「聴き取れない」との混同を 防ぐのを確実にするために行なわれた。実験 2 と同じように,この選択肢は明らかに必要 なとき以外は選ばないように教示されていた。

実験セッションの前に,聴取者は全ての刺激音を画面上のボタンをクリックすることで 一通り聴いた。実験セッションでは,132 の刺激音を無作為な順序で呈示するのを 1 ブロッ クとし,21 のブロックが行なわれた。各ブロックは二つの小ブロックに分けられ,小ブロ ックの間には 10 分程度の休憩が設けられた。小ブロックの始めには,2 試行のウォーミン グアップ試行が行なわれた。ウォーミングアップ用の刺激音は全ての刺激音の中から無作 為に選ばれた。各小ブロックは 20 分程度で終わり,実験は 4 日から 7 日にかけて行なわれ た。

3.4.3 結果と考察

最初のブロックは練習とみなして以降の分析から除外した。「聴き取れない」という反応 が得られた試行は,その試行ごと以降の分析から除外した。「その他」の反応が 1 名の聴取 者から 2 つの試行において得られた。現象報告による回答は,二つの短い音が時間的に重 なって知覚されていたことを示唆していた。これらの試行は除外した。

「聴き取れたがわからない」という反応は折半し,半数を「つながっている」という反 応に,もう半数を「途切れている」という反応に割り当てた。「つながっている」反応の割 合の平均値を図 3.6 と図 3.7 とに示した。0/0 dB は全ての系列で共有されているため,各 系列におけるこの条件の値は一致している。

(15)

図 3.6 実験 3 の短音空隙条件の結果

(16)

図 3.7 実験 3 の長音空隙条件の結果

(17)

図 3.8 相対レベルで表記した実験 3 の結果

「つながっている」反応の割合の平均値が 50 %を超えていたとき,その音はつながって 知覚されていたとみなした。また,50 %を下回っていたとき,その音は途切れて知覚され ていたとみなした。-2/+2 系列においては実験 2 の結果と同様の結果が得られた。短音空隙 条件では,2 種類の知覚が生じていた。短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベル とほぼ同じとき,もしくはより高いときには,物理的構造そのままに短い音のほうに途切 れが知覚されていた。短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりもかなり低 いときには,長い音と短い音との両方がつながって知覚されていた。

長音空隙条件では,3 種類の知覚が生じていた。二つのグライド音のレベルが同じときに は,空隙転移錯覚が生じていた。短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルより

(18)

も高いときには,長い音と短い音との両方がつながって知覚されていた。短いグライド音 のレベルが長いグライド音のレベルよりも低いときには,長い音は途切れて知覚されてい た。短い音における割合の平均値は上昇する傾向にあったが,その値はおよそ 50%に留まっ ていた。これは,聴取者ごとに連続性の知覚が異なっていたためである。4 名の聴取者にお いては,短い音はつながって知覚されていた (割合が 50%を超えていた)。しかし,3 名の 聴取者においては,短い音は途切れて知覚されていた (割合が 50%を下回っていた)。

他の系列における結果を検証するために,最初に長音空隙条件に着目した。+2/+2 系列に おいては,常に,長い音はつながって,短い音は途切れて知覚されていた。二つのグライ ド音が等しいレベルにあるときには常に空隙転移錯覚が生ずるようである。

短いグライド音のレベルのみに着目したとき,0/+2 系列の横軸は-2/+2 系列の横軸と一 致している。しかし,0/+2 系列におけるグラフの形と-2/+2 系列におけるグラフの形は互 いに異なる。長いグライド音のレベルのみに着目したとき,-2/0 系列の横軸は-2/+2 系列 の横軸と一致している。しかし,-2/0 系列におけるグラフの形と-2/+2 系列におけるグラ フの形は互いに異なる。交差するグライド音の連続性の知覚はグライド音単体のレベルに 依存しないようである。そこで,長いグライド音のレベルに対する短いグライド音の相対 レベルを横軸に用いて-2/+2 系列,0/+2 系列,-2/0 系列の結果を同じ座標軸上にプロット した (図 3.8)。相対レベルの同じ条件は系列間でほぼ同じ値の結果を示すことがわかった (付記 3 参照)。長音空隙条件における連続性の知覚は,二つのグライド音間の相対的なレ ベル差の関数として変化することがわかった。

このことは短音空隙条件においても当てはまる。+2/+2 系列において,空隙転移錯覚は常 に生じていた。長いグライド音のレベルに対する短いグライド音の相対レベルを横軸に用 いて-2/+2 系列,0/+2 系列,-2/0 系列の結果を同じ座標軸上にプロットすると,相対レベ ルの同じ条件は系列間でほぼ同じ値を示すことがわかった (図 3.8; 付記 4 参照)。交差す るグライド音の連続性の知覚は,二つのグライド音間の相対的なレベル差の関数として変 化することがわかった。

実験 2 と同じように空隙転移錯覚の生起範囲を求めるために,長音空隙条件の-2/+2 系列 を用いた。図 3.8 からわかるように,相対レベルが増加するにつれて長い音における割合 が増加し,相対レベルがより高くなると,短い音における割合も増加した。このように割 合が増加する過程において,その値が 50%をちょうど超える相対レベルを連続性閾値とした。

各音における閾値を聴取者ごとに求めた。閾値の算出には直線補完法を用いた。上昇条件 では,長い音における閾値の平均値 (

N

= 7) は-7.3 dB (

SD

= 3.1) であり,短い音にお ける閾値の平均値は+1.9 dB (

SD

= 0.7) であった。下降条件では,長い音における閾値の 平均値は-7.7 dB (

SD

= 3.2) であり,短い音における閾値の平均値は+2.1 dB (

SD

= 0.7) であった。長い音における閾値と短い音における閾値との間の範囲を空隙転移錯覚の生起 範囲とした。上昇条件において,空隙転移錯覚は相対レベルが-7.3 dB から+1.9 dB までの ときに生じていた。下降条件において,空隙転移錯覚は相対レベルが-7.7 dB から+2.1 dB

(19)

までのときに生じていた。

二つのグライド音のレベルにある程度の差があっても空隙転移錯覚が生ずるようである。

このことについて統計的検定を行なって検証した。

t

検定を行い,長い音における閾値レベ ルの平均値と相対レベル 0 dB との間に,また,短い音における閾値レベルの平均値と相対 レベル 0 dB との間に有意差があるかどうかについて検証した。この比較は,上昇条件と下 降条件とのそれぞれにおいて行なわれたので,

t

検定は計 4 回行なわれた。全ての比較にお いて有意差のあることがわかった。すなわち,上昇条件の長い音における比較 (

t

(6) = -5.8,

p

< .01),短い音における比較 (

t

(6) = 6.8,

p

< .01),下降条件の長い音における比較 (

t

(6)

= -5.8,

p

< .01),短い音における比較 (

t

(6) = 7.5,

p

< .01) において有意差のあるこ とがわかった。空隙転移錯覚は短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりあ る程度低くても,また,短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりある程度 高くても生ずることがわかった。

実験 2 において空隙転移錯覚の生じた相対レベルの範囲は,上昇条件において-9.5 dB か ら+2.0 dB,下降条件において-9.5 dB から+2.0 dB であった。本実験において空隙転移錯 覚の生じた相対レベルの範囲は,上昇条件において-7.3 dB から+1.9 dB,下降条件におい て-7.7 dB から+2.1 dB であった。空隙転移錯覚の生ずる範囲を一般化して述べるために,

これらの範囲における下限の値と上限の値とをそれぞれ平均した。結果,下限の値は-8.6 dB,

上限の値は 2.1 dB となった。空隙転移錯覚は,長いグライド音のレベルに対する短いグラ イド音の相対レベルが約-9 dB から約 2 dB の間にあるときに生ずることがわかった。

3.5 実験 4 音の強さの減衰区間の挿入された周波数変化音の知覚について

3.5.1 目的

連続聴錯覚の研究において示唆されているように,物理的に途切れた音がつながって知 覚されるためには,途切れた音の空隙部がそれを補完するのに十分なエネルギーによって 満たされている必要がある。しかし,実験 2 と実験 3 とにおいて,空隙転移錯覚は短いグ ライド音のレベルが長いグライド音のレベルより約 9 dB 低くても生ずる場合のあることが 示された。もし,この状況において空隙部を満たす短いグライド音のエネルギーが長いグ ライド音に属すると解釈されたのであれば,長いグライド音の時間的中央には約 9 dB に相 当する減衰が生じたはずである。このような減衰は途切れとして知覚されたはずである。

しかし,レベルの減衰部の挿入されたグライド音の知覚について調べた研究はない。そこ で,現象報告による実験を行なった。

(20)

図 3.9 実験 4 で用いた刺激音: 上部はスペクトログラムであり,下部はパターン中央部の 時間波形である。

3.5.2 方法

3.5.2.1 聴取者

10 名の聴取者が実験に参加した。6 名は男性,4 名は女性であり,年齢は 22 歳から 25 歳 までであった。聴取者は全て九州大学芸術工学部および同大学大学院芸術工学研究院の学 生であった。聴取者は 1 名を除いて,同大学の実習として技術的聴取の訓練を受けていた。

聴取者は全員,講義や演習などを通じて空隙転移錯覚の存在について知っていた。しかし,

本実験の目的や内容について事前に知らされることはなかった。聴取者の全てに趣味や学 業などによる音楽演奏の経験があった。3 名の聴取者はこの実験の前に実験 2 に参加してい た。1 名の聴取者はこの実験の前に実験 3 に参加していた。2 名の聴取者はこの実験の前に 実験 2 と実験 3 との両方に参加していた。5 名の聴取者に対しては右耳に刺激音を呈示し,

5 名の聴取者に対しては左耳に刺激音を呈示した。聴取者の全員が正常な聴力を有している ことを純音の聴力を調べることで確認した。

3.5.2.2 刺激音

刺激音には「交差パターン」と「グライドパターン」との 2 種類があった (図 3.9)。交 差パターンは,4000 ms のグライド音と 400 ms のグライド音とが互いの時間的中央で交差

(21)

するパターンであった。グライドパターンは 4000 ms のグライド音によるパターンであっ た。振幅の立ち上がり時間と立ち下がり時間は 20 ms であった。その包絡線の形状はコサ イン関数曲線の形状であった。

交差パターンには 2 つの「方向」条件があった。上昇条件では,長いグライド音は上昇 し,短いグライド音は下降した。下降条件では,長いグライド音は下降し,短いグライド 音は上昇した。グライドパターンにおいても同様の条件があった。上昇条件では,グライ ド音が上昇し,下降条件では,グライド音が下降した。したがって,グライドパターンの グライド音は交差パターンの長いグライド音と同じ方向に変化した。周波数変化率は 1/3 oct/s であった。交差パターンにおける二つのグライド音の交差する周波数,およびグライ ドパターンにおける時間的中央の周波数は,1000 Hz であった。

交差パターンの長いグライド音の時間的中央に 100 ms の時間的空隙が挿入された (長音 空隙条件が用いられた)。長いグライド音のレベルは常に 0 dB であった。短いグライド音 のレベルは-18 dB から+18 dB まで 3 dB 刻みで変化した。したがって,13 の「短音のレベ ル」条件があった。

グライドパターンには 2 つの「中央区間」条件があった。空隙挿入条件では,100 ms の 時間的空隙がグライド音の時間的中央に挿入された。レベル変化条件では,グライド音の 時間的中央の 100 ms の区間において,そのレベルが-18 dB から+18 dB まで 3 dB 刻みで変 化した。したがって,13 の「中央区間のレベル」条件があった。中央区間のレベルが変化 する際,その区間の直前と直後とに 20 ms の振幅変化区間が付加された。その包絡線の形 状はコサイン関数曲線の形状であった。それ以外の部分のレベルは 0 dB であった。

図 3.9 に示すように,交差パターンにおける短いグライド音のレベルとグライドパター ンにおける中央区間のレベルとが等しいとき,両パターンの時間的中央における音圧は等 しかった。基準とした 0 dB は,70 dB SPL に較正した。

以上の条件を組み合わせて,全部で 26 の交差パターン (2 方向条件 × 13 短音レベル) と 28 のグライドパターンとがあった (1 空隙条件 × 2 方向条件 + 13 中央区間レベル × 2 方向条件)。合計して 54 の刺激音があった。

装置は実験 3 と同じであった。しかし,D/A 変換器はオーディオプロセッサー (Onkyo SE-U55GX) と交換した。実験の流れを制御するプログラムの作成には,開発プラットフォ ームアプリケーションである Microsoft Visual Basic 2005 を用いた。音ファイルの全て において,刺激音の始まりの前に 2000 ms の無音区間があった。

3.5.2.3 手続き

実験 1 と同じ現象報告による手続きが用いられた。

実験の前に,聴取者は,画面上のボタンをクリックすることで全ての刺激音を一通り聴 いた。実験セッションと同じ手続きで練習セッションが行なわれた。練習用の刺激音とし て交差パターンとグライドパターンとが用いられたが,交差パターンの短い音のレベル,

(22)

およびグライドパターンの中央区間のレベルは-18 dB から+18 dB まで 9 dB 刻みで変化し た。したがって,練習用の交差パターンは 10 パターン (2 方向条件 × 5 短音レベル),練 習用のグライドパターンは 12 パターン (1 空隙条件 × 2 方向条件 + 5 中央区間レベル

× 2 方向条件) あった。合計で 22 の練習用の刺激音があった。これらの音は無作為な順序 で呈示された。

実験セッションでは,54 の刺激音があったので 54 の試行があった。これらの試行は 3 つ のブロックに分割された。したがって,各ブロックには 18 の試行があった。刺激音は無作 為な順序で呈示された。ブロックの始めには,2 試行のウォーミングアップ試行が行なわれ た。ウォーミングアップ用の刺激音として,ブロックの最後の 2 試行で呈示される刺激音 が用いられた。ブロック間には数分の休憩が設けられた。各ブロックは約 25 分で終わり,

実験は 1 日で終わった。

3.5.3 結果と考察

交差パターンは,長い音と短い音とによるパターンとして知覚されていたようである。

しかし,短いグライド音が-18 dB のとき,1 名の聴取者による 1 回答において長い音しか 報告されていなかった。また,短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりも 高いとき,1 名の聴取者による 11 回答において短い音の中に二つの空隙が知覚されていた。

これらの回答は以降の分析から除外した。

長 く 高 く な っ て い く 音。

中央あたりでは音は小 さくなる。

上昇する音のまん中に すきまがあって、その すきまに短くて弱い音 がはさまっている。

上昇する長い音とその 音のまん中あたりで鳴 る強くて短い音とがき こえる。

図 3.10 グライドパターンに対する回答の例: 代表的な回答を模写した。音の高さが上昇,

もしくは下降する音が知覚されていた。B と C のように,いくつかの報告では時間的中央に 短い音が知覚されていた。

(23)

グライドパターンにおいては,高さの上昇する,もしくは下降する音が知覚されていた ようである。しかし,いくつかの場合においては,短い音が錯覚的に生じていたようであ る。グライドパターンにおける回答の例を図 3.10 に示した。錯覚音の生起を示唆する回答 においては,長い音に加えて短い音が報告されており,長い音は途切れて知覚される場合 と (図 3.10 の B),つながって知覚される場合 (図 3.10 の C) との二つがあった。2 名の聴 取者においては,錯覚音が二つ生ずる場合があった。これらの知覚の生起頻度を表 3.2 に 示した。グライド音の時間的中央にレベルの減衰部があるときには (すなわち,中央区間 のレベルが負の値のときには),頻度は少ないが,錯覚音が生じ,長い音が途切れて知覚さ れていた。この場合の錯覚音は,レベルの減衰部がグライド音から知覚的に分離されたた めに生じたのであろう。グライド音の時間的中央部が増幅されたときには (すなわち,中 央区間のレベルが正の値のときには),ほとんどの聴取者において錯覚音が生じ,長い音は つながって知覚されていた。この現象は,同種音連続聴と似ている。同種音連続聴とは連 続聴錯覚の一形態であり (Warren, 2008 参照),途切れた音の空隙部が,同じ周波数とスペ クトルを有する音で満たされたときに,途切れた音がつながって知覚される現象である。

グライド音において増幅された部分が,同種音連続聴における挿入音と同じ役割を果たし て,グライド音の錯覚的連続聴を引き起こしたとみなすこともできる。

表 3.2 実験 4 のグライドパターンにおいて錯覚音の生じた頻度

上昇条件 下降条件

中央区間の

レベル [dB] B C B C

-18 3 1

-15 3 2

-12 3 1

-9 3

-6 5

-3 4 3

0 1

+3 8 1 4

+6 1 8 1 8

+9 9 1 8

+12 1 8 9

+15 1 8 9

+18 1 8 9

Gap

注: パターン中央に一つの短い音が知覚され ていた回答の数を示した。空白は 0 を表す。B と C との内容については図 3.10 に示す。中央 区間のレベルが負の値のとき,7 回答において 短い音が二つ知覚されていた。これらの回答 も数に含まれている。4 回答において,長い音 が途切れてはいないが,一時的に大きさが減 衰して知覚されていた。これらの回答は B に 分類した。

(24)

表 3.3 実験 4 における連続性カテゴリーの頻度分布

グライドパターン 交差パターン

長い音 短い音

中央区間の

レベル [dB] D P C

短い音のレ

ベル [dB] D P C D P C

符号 検定 上昇条件

-18 7 3 -18 8 1 2 7

-15 5 5 -15 9 1 5 5

-12 7 3 -12 5 1 4 8 2

-9 8 2 -9 2 2 6 9 1 >

-6 6 4 -6 1 1 8 10 >>

-3 2 3 5 -3 1 9 10 >>

0 10 0 1 9 10 >>

+3 10 +3 1 8 6 3 >

+6 1 9 +6 9 2 7

+9 10 +9 9 9

+12 1 9 +12 1 8 9

+15 1 9 +15 9 9

+18 1 9 +18 10 10

Gap 10 下降条件

-18 6 4 -18 10 5 5

-15 5 5 -15 8 1 1 6 4

-12 7 3 -12 5 2 3 8 2

-9 6 4 -9 4 6 8 2

-6 6 4 -6 1 1 8 10 >>

-3 4 3 3 -3 10 10 >>

0 10 0 10 10 >>

+3 1 9 +3 9 5 4 >

+6 1 9 +6 9 2 7

+9 1 9 +9 2 7 9

+12 10 +12 2 7 9

+15 10 +15 2 7 9

+18 10 +18 2 7 9

Gap 10

注: 報告された音の連続-不連続を「不連続 (D)」,「準不連続 (P)」,「連続 (C)」の 3 つに分類した。各刺激音において各範疇に分類された回答の数を 示した。空白は 0 を表す。長い音と短い音との連続性を比較した符合検定の 結果を示した。「>」は 5%の有意水準で長い音が短い音よりも連続して知覚 されていたことを表す。「>>」は 1%の水準であることを表す。分析から除外 された回答があるため,分類の合計が 10 にならない場合がある。

交差パターンとグライドパターンとにおいて知覚された音の連続性を 3 つのカテゴリー に分類した。はっきりとした途切れが報告されていた場合,その音は「不連続 (D)」に分 類された。途切れてはいないが,音の大きさの一時的な減衰といった途切れに準ずる変化 が報告されていた場合,その音は「準不連続 (P)」に分類された。途切れに関連する内容 が報告されていなかった場合,その音は「連続 (C)」に分類された。一つの試行において いくつかの知覚内容が報告されていた場合,もっとも優先度の高い知覚内容が分類に用い られた。グライドパターンにおいて長い音と短い音 (錯覚音) とが報告されていた場合に は,長い音のみを分析した。各カテゴリーに分類された回答の数を表 3.3 に示した。

統計的検定を行い,交差パターンにおいて長い音と短い音とのどちらがより連続して知

(25)

覚されていたかについて検証した。各回答において,長い音と短い音とのどちらがより連 続して知覚されていたかについて符号をつけ,各刺激音に対して符号検定を行なった。除 外された回答がなければ,符号検定は 10 名の聴取者による 10 の比較に基づいている。長 い音と短い音とが同じカテゴリーに属していた場合,これらはタイ (同点) にあるとみな し,検定の計算から除外した。検定の結果を表 3.3 に示した。二つのグライド音のレベル がほぼ同じときに長い音は短い音よりも有意に連続して知覚されていた。すなわち,空隙 転移錯覚が生じていた。短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりも低いと きにおいても,空隙転移錯覚は依然生ずる傾向にあった。

交差パターンにおける長い音の連続性閾値を聴取者ごとに求めた。この閾値の算出には 上述の分析で用いた連続性カテゴリーを用いた。短いグライド音のレベルが高くなると,

カテゴリーは「準不連続 (P)」もしくは「不連続 (D)」から「連続 (C)」に変化した。カ テゴリーがこのように変化する二つのレベルの値を平均したものを連続性閾値とした。上 昇条件における閾値の平均値 (

N

= 10) は,-9.0 dB (

SD

= 5.6),下降条件における閾値 の平均値は,-9.9 dB (

SD

= 3.7) であった。グライドパターンにおける連続性閾値も同様 にして求めた。上昇条件における閾値の平均値 (

N

= 10) は,-3.0 dB (

SD

= 1.5),下降 条件における閾値の平均値は,-2.4 dB (

SD

= 1.4) であった。1 名の聴取者においては,

交差パターンの上昇条件の連続性カテゴリーが「連続」に変化した後に「準不連続」に戻 り,再び「連続」に変化した。また,1 名の聴取者においては,グライドパターンの上昇条 件と下降条件との連続性カテゴリーが「連続」に変化した後に「準不連続」に戻り,再び

「連続」に変化した。これらの場合,最初に「連続」に変化したレベル条件を閾値の算出 に用いた。

交差パターンにおける連続性閾値の平均値とグライドパターンにおける連続性閾値の平 均値との間に有意差があるかどうかについて検証するため,対応のある二要因分散分析を 行なった。要因の一つはパターンの種類であり,もう一つは方向条件であった。パターン の種類の主効果が有意であった (

F

(1, 9) = 24.5,

p

< .01)。

物理的に途切れた長いグライド音とつながった短いグライド音とが交差するパターンに おいては,短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりも約 9 dB 低いときであ っても,長い音がつながって知覚される場合のあることが示された。もし,この状況にお いて,空隙部を満たす短い音のエネルギーが長い音に属すると解釈されたのであれば,お よそ 9 dB に相当する減衰が長い音の時間的中央に生じたはずである。このような減衰は途 切れとして明確に検出されたはずであるが,実際には長い音はつながって知覚された。し たがって,空隙転移錯覚における長いグライド音の連続知覚は,音エネルギーの時間的持 続性だけでは説明することができない。

3.6 総合考察

本章の成果は以下のようにまとめることができる。

(26)

1. グライド音の交差するパターンにおける連続-不連続の知覚の変化を量的に示すことが できた。

2. このようなパターンにおける連続-不連続の知覚は,グライド音単体のレベルに依存す るのではなく,二つのグライド音のレベルの差に依存することがわかった。

3. 二つのグライド音のレベルの差が変化することによって,3 種類の知覚の生ずることが わかった。

4. 空隙転移錯覚は,その 3 種類の知覚のうちの 1 つであり,長いグライド音のレベルに対 して短いグライド音のレベルが相対的に-9 dB から+2 dB までの値にあるときに生ずること がわかった。

5. 空隙転移錯覚の生じないときの知覚内容は,長い音と短い音のどちらがよりレベルが高 いかで異なることがわかった。短い音のレベルが長い音のレベルよりも低いときには,長 い音は途切れて,短い音はつながって知覚される。少数例だが,短い音が長い音とともに 途切れて知覚される場合もある。

6. 短い音のレベルが長い音のレベルよりも高いときには,長い音と短い音との両方がつな がって知覚される。

空隙転移錯覚において,長い音は物理的に途切れているにもかかわらず,つながって知 覚される。この長い音の知覚は,連続聴錯覚における物理的に途切れた音の連続知覚と比 較することができる。連続聴錯覚の生ずる条件,および生ずる仕組みを述べた仮説として 主に 3 つを挙げることができる。一つめはマスキング可能性仮説,二つめは興奮持続仮説,

三つめは途切れ欠落仮説である (第 2 章参照)。

マスキング可能性仮説は,連続聴錯覚が生ずるための途切れた音と挿入音とのレベル差 について言及する。連続聴錯覚が生ずるためには,途切れた音と挿入音との持続部分を取 り出して同時に呈示したときに,挿入音が途切れた音をマスクするほどの高いレベルにあ る必要がある。しかし,マスキング可能性仮説を用いて説明することのできるデータは限 られているようである。実際に,途切れた音と挿入音とのレベル差がマスキング現象を生 じうる差より小さいものであっても連続聴錯覚は生じうる。

マスキング可能性仮説に替わるのが興奮持続仮説である。この仮説によれば,連続聴錯 覚の生ずるのは物理的に途切れた音の空隙部がそれを補完するのに十分なエネルギーを有 する音によって満たされるときである。このとき,空隙部を満たすエネルギーが途切れた 音に属すると解釈され,途切れた音の欠落部が補完される。

興奮持続仮説は,途切れ欠落仮説と合わせることで連続聴錯覚の生ずる仕組みを包括的 に説明することができる。途切れ欠落仮説によれば,連続聴錯覚の生ずるとき,途切れを なす終わりと始まりとの検出がレベルの高い挿入音によって損なわれる。途切れた音の空 隙部はそれを補完するのに十分なエネルギーで満たされているので,この点から見ても物 理的に途切れた音をつながっていると知覚するのは妥当である。このようにして連続聴錯 覚は生ずる。

(27)

空隙転移錯覚は,短い音のレベルが長い音のレベルよりも 9 dB 低いときでさえ生ずる場 合がある。このとき,長い音は物理的に途切れているにもかかわらずつながって知覚され る。この点から見てもやはり,マスキング可能性仮説は途切れた音がつながって知覚され る仕組みを広く説明するものではないといえる。マスキング可能性仮説が適用される状況 において,途切れた音の空隙部がよりレベルの低いエネルギーで満たされるときに,途切 れた音がつながって知覚されることはない。

興奮持続仮説も大幅に見直す必要がある。短い音のレベルが長い音のレベルよりも 9 dB 低いときでさえ,空隙転移錯覚の生ずる場合がある。このとき,空隙部を満たすエネルギ ーが長い音に属すると解釈されるのであれば,長い音の中央部には 9 dB に相当する減衰が 生ずるはずである。このような減衰は途切れとして明確に検出されるはずである。

聴覚の文法は空隙転移錯覚を以下のように説明する。空隙転移錯覚を生ずる音パターン において,空隙前にある始まりと終わりは近接している。これらは結びついて音事象を形 成する。空隙後にある始まりと終わりも同様に結びついて音事象を形成する。このように して,短い音は途切れて知覚される。

空隙転移錯覚において長い音がつながって知覚されるのは,途切れをなす終わりと始ま りとが短い音の知覚に割り当てられるからである。知覚体制化において,同じ要素が異な る対象に重複して割り当てられることはほとんどない。したがって,途切れをなす終わり と始まりとが長い音に再度割り当てられることはない。このようにして,長い音はつなが って知覚される。この仕組みは,短い音のレベルが長い音のレベルよりある程度低いとき においても生ずるようである。

しかし,この説明だけでは,短い音のレベルが長い音のレベルに対してかなり低いとき の結果を説明することができない。このとき,空隙転移錯覚は生じなくなり,長い音は途 切れて知覚される。やはり,音エネルギーの持続性も,音の連続-不連続の知覚において重 要な役割を果たすようである。おそらく,音の始まりと終わりとを処理する過程とエネル ギーの持続性を処理する過程とは別個に存在し,それぞれの過程からの情報を総合するこ とによって音の連続-不連続の知覚が決定されるのであろう。

このことを踏まえて,短い音のレベルが長い音のレベルよりもかなり低いときの結果を 以下のように説明することができる。まず,近接性により,空隙前の始まりと終わりとが 結びつき,空隙後の始まりと終わりとが結びつく。このようにして,途切れをなす終わり と始まりとが短い音の知覚に割り当てられる。次に,長い音のエネルギーの時間的持続性 が考慮される。途切れをなす終わりと始まりとが短い音に割り当てられるので,空隙部を 満たす短い音のエネルギーは長い音に属するものであると解釈される。しかし,長い音の 時間的中央にはレベルの大きな減衰が認められる。長い音は途切れて知覚される方が妥当 であり,途切れをなす終わりと始まりとは,短い音の知覚から長い音の知覚に割り当て直 される。このようにして,長い音は途切れて知覚され,短い音はつながって知覚される。

長い音と短い音との両方が途切れて知覚される場合も少数例あるが,これは途切れをなす

(28)

終わりと始まりとが長い音と短い音との両方に重複して割り当てられることが許容された ために生じたのであろう。

短いグライド音のレベルが長いグライド音のレベルよりも高いときの結果は以下のよう に説明することができる。短いグライド音によって,長いグライド音に挿入された空隙に 対する終わりと始まりとの検出が損なわれる。音パターンの時間的中央に残るのは,短い グライド音に対する始まりと終わりだけである。これらは近接しているので互いに結びつ く。そして,長いグライド音に対する始まりと終わりとが結びつく。長い音と短い音との 両方がつながって知覚されるのは,エネルギーの時間的分布から見ても妥当である。この ようにして,長い音と短い音との両方がつながって知覚される。

空隙転移錯覚において長い音がつながって知覚されるのは,途切れをなす終わりと始ま りとが短い音の知覚に割り当てられるからである。この仕組みは,短いグライド音のレベ ルが長いグライド音のレベルに対して 9 dB 低い場合であっても生ずる場合がある。このと き,空隙部を満たす短い音のエネルギーが長い音に属すると解釈されるのであれば,長い 音には 9 dB に相当する減衰が生ずるはずである。しかし,それは持続しているものとして 許容され,長い音はつながって知覚される。このことは,この判断に関わる聴覚系の生理 的段階が物理的な入力に対して応答特性の鈍くなる高次の段階にあることを示唆している。

空隙転移錯覚のような現象を用いて,脳の皮質段階の反応を観測するのは有意義な試みで あるといえる。

表 3.1  実験 1 における連続性カテゴリーの頻度分布  上昇条件  下降条件  長い音  短い音  長い音  短い音 長い/短い音のレベル [dB]  D P C    D P C 符号検定 D P C D P  C  符号 検定  連続条件  +10/-10     7  1   6         8  1  7    +9/-9    8  1  7       8    8    +8/-8    8    8       8    8    +7/-7    8   1 7       8
表 3.1  続き  上昇条件  下降条件  長い音  短い音  長い音  短い音 長い/短い音のレベル [dB]  D P C    D P C 符号検定 D P C D P  C  符号 検定  長音空隙条件  +10/-10  7 1    1   7     5 3    4  4    +9/-9  6  1   1  6     7      7 &lt;  +8/-8  7 1    1   7     6 1 1  3 1 4    +7/-7  6 1 1    3 1 4    6 2
図 3.4  実験 2 の上昇条件の結果  3.3.3  結果と考察    「聴き取れない」という反応が得られた場合,その反応が得られた試行ごと以降の分析 から除外した。+9/-9 条件の上昇条件,+10/-10 条件の上昇条件と下降条件とにおいて, 「聴 き取れない」反応が 10%を超えたため,+9/-9 条件と+10/-10 条件とを以降の分析から除外 した。    「わからない」という反応は折半し,半数を「つながっている」という反応の数に,も う半数を「途切れている」という反応の数に割り当てた。 「つ
図 3.5  実験 2 の下降条件の結果  「つながっている」反応の割合の平均値が 50%を超えていたとき,その音はつながって知 覚されていたとみなした。平均値が 50%を下回っていたとき,その音は途切れて知覚されて いたとみなした。連続条件において,長い音と短い音との両方が物理的構造そのままにつ ながって知覚されていた。空隙共有条件において,長い音と短い音との両方が物理的構造 そのままに途切れて知覚されていた。  短音空隙条件においては,2 種類の知覚が生じていた。短いグライド音のレベルが長いグ ライド音
+6

参照

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