関西大学博物館所蔵 重要文化財 縄文鉢形土器修 復
著者 犬竹 和
雑誌名 阡陵 : 関西大学博物館彙報
巻 55
ページ 10‑11
発行年 2007‑09‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00023966
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関西大学博物館所蔵 重要文化財 縄文鉢形土器修復
はじめに
関 西 大 学 博 物 館 所 蔵 の 璽 要 文 化 財 縄 文 鉢 形 土器は、大正7年に大阪府藤井寺市国府遺跡第 4次調査において映;
I
犬耳飾を伴う人骨の胸の上 から出土した。その出土状況から、この土器が 辿体とともに埋められたものと考えられ、縄文 時代の埋葬を研究する上で稀少かつ貴重な資料・であることが指摘されている。十数片に割れた 状態で出土した縄文鉢形土器は以前に復元され ているが、数十年にわたる経年変化によって修 復材料の劣化がみられ、再修復を要する状態で あった。そこで、独立行政法人国立文化財機構 東 京 文化財研究所の平成18年度の受託研究と
して再修復が行なわれた。
修復材料の開発
文化財は光・温度湿度・空気などによって少 しずつ劣化する。同時に文化財修復に使用され た修復材料も日々劣化している。通常、接瘤剤 などの修復材料の方が土器本体よりも速く劣化
写真1修復前
犬 竹 和
するので定期的に再修復を要する。この土器の 場合は使用された石蒻が大正あるいは昭和期の ものであろうか、現在に至っては亀裂や粉状化 などの劣化がみられる。接着剤は黒く変色し、
液垂れの跡が表面に残っている、状態である(写 真1)。接着力が衰えているのでいつ破片がは ずれてもおかしくなく 、土器の取り扱いを困難 にしていた。現在の文化財修復はその時々にお いて最も適切な技術や修復材料を選定して行わ れている。土器修復においては欠失部の充填材 料として現在使用されている石腐やエポキシ樹 脂は、質感・色合い・強度や耐候性などの点に お い て 問 題 が あ り 、 充 填 材 料 の 開 発 が 必 要 で あった。今回の修復では、これらの問題点を踏 まえ近年研究開発した欠失部の充填材料 (以下 補修用擬土)に更に改良を加えて使用した。
土器の修復
①解体、クリーニング
まず劣化した石督は超音波メスを使用して除
写真2 修復後
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去した。底部の中央の欠失部に1関しては、修復 前の調査検討において、単なる欠失部ではなく 埋葬時に故意に穿孔されたものではないかと考 えられるようになった。実際、底部の石裔を除 去した結果、破断面はいずれも古く、外側から 内側に広がっており、外側から内側に向かって 力が加えられたと拙定することが出来た。従っ て意図的に穿たれたものと考え、この欠失部は 補修用擬土を充填せずに、そのまま穴の状態で 保存することになった。この底部穿孔は今回の 修復で新たに確認された重要な発見である。使 用されていた接合部の接済剤は有機溶剤 (アセ トン)で溶かして土器を解体した (写真3)。
②土器の強化処理と破片の接合
土器の破断面を強化するため及び接合時の破 断面への接蒲剤や補修用擬土の浸透を防ぐため に 、 破 断 面 に ア ク リ ル 樹 脂 ( パ ラ ロ イ ドB72) を迩布した。また脆弱になっている表面にも溶 剤を変えたアクリル樹脂(エチルアルコール7.5
に対して蒸留水2.5の割合で混ぜた溶液を使用) を塗布し、樹脂光沢や色の変化を防いで表而を 強化した。破片の再接合もアクリル樹脂の濃度 を濃くして接着剤として使用した。
③補修用擬土充填
補 修 用 擬 土 に 使 用 し た 樹 脂 は 加 熱 硬 化 型 ア クリル樹脂エマルション(プライマルE‑357) である。この樹脂に以下の材料を混合すると粘 土状の充填材料になる。材料は、 800℃で焼成 した土または焼かれた土(新たに焼かれた土器 を砕いたもの)、収縮を防止するためにガラス マイクロバルーン、菫 最 を 軽 く し 液体 (樹脂)
の含みをよくするための珪藻土、乾燥後の亀裂 を 防 止 し 補 修 用 擬 土 を 強 化 す る た め の 炭 素 繊 維、微妙な色を再現し補彩工程を省くための顔 料 で あ る ( 写 真4)。この補修用擬土は個々の 土器に応じて色を調整することができる。今回 は外側と内側で色が異なるので二色の補修用擬 土を使用した(写真5)。
④整形と樹脂硬化
この補修用擬土は可塑性があり成形が容易で ある。したがって室温である程度乾燥させた後 にサンダーや紙鑢.鑢・ メスを使用して表面を
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写真3 解体、クリーニング後
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學写真4 補修用擬土材料
写真5 欠失部に補修用擬土を充填
整え、土器胴 部上半の爪形文、下半の羽状縄文 も復元した。整 形 後55℃の恒温槽に一日程入 れ硬化させた。
おわりに
樹脂を硬化させた後も表面の風合いや色合い など土器そのものが持つ質感に近く、石裔や工 ポキシ樹脂で復元された土器と比較すると、自 然で全体に調和のとれた仕上がりになった(写 真2)