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制度分析と国際経営

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ManagementJournal MJ,2:83‑106(2009) Received8thFebruary,2010

制度分析と国際経営

‑ 制度理論とアジアフロンティア地域 CLMVT( カンボジア、 ラ オス、 ミャンマー、 ベトナム、 タイ).中国 ‑

I ns t i t ut i on A na l ys i sa ndI nt e r na t i ona lMa nage me nt:

InstitutionTheoryandCIJMVT(Cambodia,Laos,Myanmer,Vietnam,Thai)・China

キーワ‑ ド●制度理論、取引コス ト、WTO、ILO

はじめに

本稿では、制度、制度分析 とは何かについ て述べ、 リージ ョナルな制度 として地域統合 ・ 協力 であるASEANとAFTA,CLMVT(カ ン

ボジア、ラオス、ミャンマー、ベ トナム、タイ) について論 じる

日本企業 の今後の グローバ ル戦略 において、

ア ジア地域 は依然 と して重要 であ ろ う。最近 BRIICsの台頭が話題 となってい るが、BRICs

とは今後成長が期待 される大国、ブラジル、 ロ シア、 イン ド、中国である。中国 とイン ドはア ジアであ り、 ロシア も極東 アジア地域 にあ る。

将来において もアジアは、 日本企業のグローバ ル戦略において最 も重要 な地域であろう

本 稿 で は、ASEANとAFTAに つ い て 言 及 し、 ア ジア地域 の 中で、 これか らの発展 が 期待 され るアジアの フロ ンテ ィア諸 国 と して CLMVTを取 り上げる。

神奈川大学 丹 野 勲

KanagawaUniversity lsao¶\NNO

KeyWords● hlStitutionTheory,transactioncost,VVorld Trade Organization,hlternationaILabor Organization

制度分析の理論

制度分析 の先行研究 、関連研究

第1の制 度分析 の先 行研 究 ・関連研 究 と して、経済学の分野での制度研究 として制度派 経済学、比較 制度分析 1)が あ る この研 究 に は、North(1990)、Coase(1988)、Milgram&

Roberts(1992)、青木 (1992),青木 (1995), 青木(2001)、Marsden(1999)、Eggertsso(1990), Hall&Soskie(221)な どの研究が著名である

そのほか、比較制度分析 の視点で中国の経済 を 研 究 した呉 (2007)、雇用 システムを研 究 した Marsden(1999)などは注 目される

第2の制 度分析 の 関連研 究 と して、 資本 主義 の多様性 に関す る経 済学 か らの研 究が あ る 世界各 国 は、 ひ と し くグ ローバ ル市場 主 義 の圧 力 に さ らされ てい るが、 その こ とは必 ず しも世界が 同 じ型 の市場主義経済 に収赦す る こ とを意 味 しない。 各 国の制 度 的多様性 を

(2)

84 マネジメント ジャーナル (2号)

認識 し、 資本主義 の多様性 を認識 す る こ と す なわ ち、 資本主義 のパ ター ンは唯一 で はない と い う理 論 で あ る 代 表 的研 究 と して、Crouch (1997),Hampden&Trompenaars (1993), M.Albert(1991),Kay(2004),Amable(1993)、 Amable (2003)、 山田 (2008)な どが あ る

第3の制 度分析 の関連研 究 と して、経営学分 野 の制 度研 究 と して コー ポ レー トガバ ナ ンス論 が あ る。周 知 の通 り、経営学 で は コーポ レー ト ガバ ナ ンス に関す る多 くの研 究が あ る その 中 で、 欧米 (イギ リス、 ドイツ、 アメ リカな ど)、

ア ジアに関す る コー ポ レー トガバ ナ ンスの国際 比較 の研 究 が注 目され る。代 表 的 な研 究 と して、

Charkham (1994),Chew(1997),Jacoby(2005), 深尾 ・森 田 (1997)、菊滞 (1988)、菊揮 (2004)、 菊池 ・平 田 (2005)、高橋 (1995)、森 (2005)、 今 泉 ・安 部 (2005)な どが あ る

第4の制 度分析 の関連研 究 と して、企業経営 の 国際比較 を研 究対 象 とす る比較 経営学 の研 究 が あ る この研 究 は、膨 大 な研 究成果 が あ るが 、 世 界 的 レベ ルで の経営 文化 の国際比較研 究 と し てHofsted (1980),競 争 優 位 の視 点 か らの研 究 と してPorter (1990)、 日英 経 営 比 較 研 究 と

してDore (1973),日独 経営 比較 と して大橋 ・ 小 田・G.シ ャ ンツ (1994)、 日米経 営 比 較 と し て岡本 (2000)、加 護野 ・野 中 ・榊 原 ・奥村 (1983)、 安 保 ・板 垣 ・河村 ・公 文 (1991)、 日本 とア ジ ア の経 営 比 較 と して小 池 ・猪 木 (1987)、市 村 (1988)、 岡本 (1988)、板垣 (1997)、 日米欧 の 自動 車 産 業 の 国 際 比 較 と して藤 本 ・ク ラー ク (1991)、 日米 欧 の人的資源管 理 の比較研 究 と し て 白木 (2006)な どが代 表 的で あ る

第5の制 度 分 析 の 関連 研 究 と して、 社 会 主 義 か ら市場 経 済‑ の移行 政策 に関す る主 に経 済 学 か らの研 究 と して移行 の経 済学 が あ る 社 会 主義 か ら市場経 済‑ の移行政策 と して急 進主義 (シ ョック療 法 、 ビ ックバ ン) と漸 進 主 義 の ア プ ローチが あ る 急進 主義 モデ ル を採用 した国 と して旧 ソ連、 ポー ラ ン ド、 チ ョコな どの旧東 欧諸 国が あ り、漸進主義 モデ ル として中国、ベ

トナム、 ラオス な どが あ る 注 目され てい る中 国、 ロ シア、ベ トナ ムは移行 国で あ る。代 表 的 な研 究 と して、Lavigne(1999)、グエ ン・ス ア ン・

オ ア イ ン (1995)、石 川 ・原 (1999)、 中央 大学 経 済研 究所 (1998)、大 野 (1996)な どが あ る

第6の制 度分析 の関連研 究 と して経 済学分 野 の制 度研 究 と して、 開発 経 済学 (発展 途上 国 ・ ア ジ ア経 済 ) が あ る 特 にUNDP(国連 開発 計 画 ) の 年 次 報 告 書 "HumanDevelopment Report"、世界銀 行 (WorldBank)の年 次報告 書 "WorldDevelopmentReport",ア ジア開発 銀 行 (AsianDevelopmentBank)の調 査研 究 が 注 目 され る 代 表 的 な研 究 と して、Todaro

& Smith(2003),原 (1996)、大 野 ,桜 井 (1997)、 渡辺編 (2004)な どが あ る

第7の制 度分析 の 関連研 究 と して、法律 の国 際比 較 と して の 「比較 法 」、 法律 と経 済 ・企 業 とい う視 点 で の 「法 と経 済」 とい う研 究が注 目 され る 比較法 は、憲法 、会社 法 、商法 、外 国 投 資法 、労働 法 、証 券法 、民法 な どの分 野 で の 研 究が あ る 法 と経 済学 は、法律 が実際 の経 済 ・ 企業経営 に どの ような効 果 を もた らす か に関 し ての理論 的 ・実 証 的研 究 で あ る 著 者 は、法 ・ 制 度 と経 営 とい うテーマが これか らの重 要 な フ ロ ンテ ィア領 域 に な るで あ ろ う と考 えて い る

また、法 の 国際比較 、特 に ア ジア諸 国の法 な ど の研 究 を注 目 してい る 代 表 的研 究 と して、香 川(2000)、小林(2000)、志村(2003)、安 田(2003)、 Shavell(2004)な どが あ る

第8の制 度分析 の 関連研 究 と して政治学 の制 度研 究が あ る 政治学 の制 度研 究 として、主権 国家、 統 治構 造 、 法 の支 配、 憲 法 、 民 主 主 義 、 選挙制 度、議 会制 度、官僚 ・行 政制 度 な どの政 治制 度 の研 究が あ る 代 表 的 な研 究 と して、河 野 (2002)、小林 (2001)、館林 ・曽我 ・街 鳥(2008)、 盛 山 (1995)、盛 山 (2000)な どが あ る。

第9の制度分析 の 関連研 究 と して社 会学 の制 度研 究 が あ る 社 会学 の制 度 関連研 究 と して、

近代化論 、新 制 度派組織 理論 、社 会学 的新 制 度 論 、機能 主義理論 な どが あ る 代 表 的 な研 究 と

(3)

して、Scott(1995)、Keer(1960),Keer(1983), Ballah (1957),Persons&Shils(1954),マ ッ

シュ ・商成 (1977)、富永 (1988)などがある

新制度派経済学

新 制 度 派 経 済 学 (New lnstitutional Economic)の中心 的理論 は、取 引 コス ト理論

(TheTheoryofTransactionCosts)である1)。

制度派経済学の考 え方 は、新古典派経済学で仮 定 されている完全合理的な経済人に対 し、人間 を限定合 理 的 (BoundedRationality)な存 在 とみなす ことである これは、Simonによって 示 された、人間は最適化ではな く満足化 によっ て行動す るとす る仮定である2)

取 引 コス ト理論 は、Coase,Williamsonな ど によって展 開された理論である。新古典派経済 理論では、市場 は効率的な資源配分 システムで あるとみなされ、取引の過程で コス トがかか ら ない と仮定 した。一方、新制度派理論の代表的 学者 で あ るCoaseは、取 引 には コス トが発生 す ると考 えた。 さらに、取引費用がゼ ロの世界 では効率的な結果が常 に成立す るが、 もし取引 に費用がかかるのであれば効率的な結果 は生 じ ないだろ うとい うコースの定理 を明示 した。

取 引 コス ト(transactioncosts)とは、①交 渉 (negotiation)、 ② 測 定 (measurement)、

③執行 (enforcement)な どの費用 である 交 渉 コス トとは、取引相手 と合意す るために交渉 する費用である。測定 コス トとは、財やサービ スの属性 の全て を測定す るための費用 であ る たとえば、ある製品を購入す るためには、価格 だけではな く製品の性能、機能、品質、耐用年 数、信頼性、納期、アフターサー ビスなどの属 性 について、情報 を集めた り、探索す るという 測定費用が発生す る 執行 コス トとは、取引 を 行 なう際の費用や取引後の費用 (遅延や トラブ ル、故障や不良品‑ の対応、アフターサー ビス、

金銭 回収、賠償金の交渉、裁判 などの司法、保 険、取引先倒産の コス トな ど多様である)であ る す なわち契約 コス ト、契約履行後の監視 コ

制度分析と国際経営 85

ス トな どである た とえば、契約後 に契約 に違 反す る事実が発生 された とき、その違反 に対応 す るコス トが発生す る。評判、反復取引による 取引、市場 での競争 は、執行費用 を低 くす る

この執行費用 は、国ごとで相違 し、一般的に執 行費用の高い国 (発展途上国に多い)では、取 引費用が高 くな り、多 くの潜在的な取引は実現 しな く、結果 として経済発展 は阻害 される場合 がある その意味で、経済発展 において も執行 費用 の概念 は重要である

Coaseは、所有権 (propertyrights)と制度 について も以下の ような理論 を提示 した。 もし 取引費用がゼロであれば、所有権の配分 にかか わ らず効率的な結果が生ず る 取引費用が存在 すれば、所有権 の配分 は経済的な結果 に大 きな 影響 を及ぼす。す なわち、取引費用がかかる現 実の世界では、財産 に対す る所有権 (例 えば土 地、建物、企業財産、天然 資源、知的所有権、

金融資産など)の制度は、経済的な結果 に大 き な影響 を及ぼすのである

Williamsonは、取 引 コス トは取 引状 況 をめ ぐる①不確実性、②取引頻度、③資産特殊性 に 依存す るとしている。取引の不確実性が高けれ ば、 よ り高い取引 コス トが発生す る 取引頻度 が高 く、取引の度に相手の情報が入手で きれば、

取引 コス トは低下 してい く 資産特殊性が高け れば、 また関係 に特殊 な投 資が なされれば、取 引 コス トが高 くなる。資産特殊性 とい う概念 は、

特定の者 との取引ではその資産価値 は高い価値 を持つが、他 の者 との取引ではその価値が低下 す るような資産である 資産特殊的な投 資を行 うと、投 資が回収で きない埋没 コス トとなるこ とを恐 れて、それに投 資 した資金 を回収す るま で特定の者 との取引関係 を被棄で きに くい。そ れゆえ、資産特殊性が高い投 資 を行 った者 は、

常 に取引相手か ら駆 け引 き、脅 し、法外 な要求 を請求 される可能性があ り、 この ような取引 コ ス トが高 くなるのである。

新制度派経済学 は、一 国の制度的枠組 み は、

長期 間にわたる経済パ フォーマ ンスを決定す る

(4)

86 マネジメント ジャーナル (2号)

要因 として最 も重要であると考 えている。政府 の重要な役割は、取引費用 を下げる制度的枠組 み を作 ることである この制度 的枠組み には、

その国の成文化 されたフォーマルなルール、成 文化 されない行動規範 としてのインフォーマル なルール、お よび執行 メカニズムである。取引 される財 ・サー ビスの所有権 を明確 にすること によって、測定や執行のための費用が下がれば、

制度は取引費用 を下げることがで きる。 もし取 引 をめ ぐって紛争が起 きれば、公平で適正 な訴 訟手続 きと裁判制度が必要である。取引費用が 下がれば、取引は供給側、需要側 とも容易 とな り、 よ く機能す る市場 となる。経済は、 どのよ うに して低 い取引費用 を実現す るか、一国の法 規制 な どのルール、慣習、執行制度 などの制度 的枠組みが取引費用 を決定す るのである。別の 言い方 をすれば、多 くの発展途上国は、高い取 引費用が生ず る制度 と非競争的な市場であった ことが経済発展 を阻害 したのである その意味 で、本書の研究対象であるアジアフロンテ ィア 地域の経済開発 において制度はきわめて重要で あるといえる

さ らに、Williamsonは、企業 国際化 の論 理 としての多 国籍企業 の内部化理論 を提唱 した。

3)。世界 的な規模 でみて も、貿易 には無数 の障 壁や、他の不完全市場が存在す るので、多国籍 企業 は、国際的な市場 の不完全性 を内部化 し、

取引 コス トを減 らす。 ここでい う内部化 とは、

企業内に市場 を作 りだす プロセスをい う。 この 企業の内部市場 は、欠陥のある正規 (または外 部)市場 に代替 し、資源配分 と流通上の問題 は 企業 内の管理命令 を用いて解決す る 企業 の内 部価格 (あるいは トランスファー価格)は、企 業の組織活動 を円滑化す るだけでな く、内部市 場が、正規市場 と同 じように効率的に機能で き るようにす る すなわち、外部市場 において取 引 コス トが高い場合、それ らを内部化す る理由 が発生す る 経済 には、そ うした市場 の不完全 性があるため、企業が内部市場 を創 出 したい と い う強い動機 はつねに存在す る。多国籍企業 は、

取引 コス トを減 らすために、海外子会社の設立、

垂直統合、戦略的提携 などの企業国際化 を行い 内部化す るのである

比較制度分析

経済発展論の観点か らす ると、新制度派経済 学の ダグラス ・ノース) を中心 とす るグループ の業績 は注 目される4)。 ノースは、経済発展 を した国は、「取引費用」 を下 げ るように制度 を 改善 したか らだ と主張 している 取引費用 とい うのは、取引にかかる費用で、輸送費、宣伝 費、

また信用取引で債権 を回収す るための費用 な ど で、 この費用が高い限 り、取引量 は増 えず、そ のため生産 も増 えない と主張す る 制度が どの ように影響 を与 えているかが、国の経済の発展 を判断す る重要 な基準であるとしている。

制度分析 の代表的理論 として、経済 システム の比較制度分析 とい う経済学のアプローチがあ る この理論の概要 をみてみ よう。経済 システ ムの比 較 制 度 分析 (comparativeinstitutional analysis)は、経済 システムや経済制度 をさま

ざまな制度の集 ま りと考 えることで、経済 シス テムの多様性 とダイナ ミズムを理論的 ・実証的 に分析 しようとす る経済学の新 しい分野である 5)。その研 究対象 は、市場経済の比較分析 のみ な らず、社会主義経済か ら市場経済‑ の移行の 問題等、多岐にわたっている。

比 較 制 度 分 析 の 重 要 な 鍵 概 念 は、 制 度 (institution)である。制度は、社会 におけるゲー ムのルールである。 さらに、制度 は、人々によっ て考案 された制約であ り、相互作用 を形づ くり、

また、インセ ンテ ィブ構造で もある6)。制度は、

日常生活 に構造 を与 えることによ り不確実性 を 減少 させ る7)。す なわち、人間は、意思決定の 相 当部分 を埋 め込 まれた制度集合 によって決定 す ることによ り、不確実性 を低減 させ ようとす るのである

比較制度分析 は ,経済 システムを次の ような 新 しい視点か ら分析 しようとす る8)

第1は、同 じ資本主義経済 システムであって

(5)

も ,どの ような制度がその内部 に成立 している かによって ,さまざまな資本主義 システムがあ り得 るとい う「資本主義経済 システムの多様性」

とい う視点である これは、経済 システムには 理想的な、普遍的なモデルが存在 しない と考 え、

地球規模 で多様なシステムが共存 ・競争す ると い う多様性の経営利益 を重視す るとい う考 え方 である

第2は、1つ の制 度 が安 定 的 な仕 組 み と し て存 在 す るの は ,社 会 の 中で あ る行動 パ ター ンが 普 遍 的 に な れ ば な る ほ ど ,そ の 行 動 パ ター ンを選 ぶ こ とが戦 略 的 に有利 とな り,自 己拘 束 的 な制約 と して定着す るか らであ る と す る、 制 度 の もつ 「戦 略 的補 完性 (strategic complementarity)」 とい う視点である9)。 シス テムの中で 1つの仕組 みの割合が増 えるほ ど , その仕組み を選ぶことが有利 になることを

,

「戦 略的補完性」が存在す るとい う。1つの社会の 中で成立 している制度の体系が比較 的同質的な のは ,これ らの制度 に戦略的補完性が存在 して いるか らである。現実の経済 システムは、経済 システムの内部では対象 ごとに比較的同質的な 制度が成立 しているのに対 して ,異 なる経済 シ ステムの間には大 きな制度の違いが存在 し,お 互いの経済 システムの異質性が際立 っている理 由 として、 この補完性がある

第3は、 多様 な システ ムが生 まjtるの は ,1 つ の シス テ ム 内 の さ ま ざ まな制 度 が お 互 い に補 完 的で あ り,システ ム全 体 と しての強 さ を生 み 出 して い るか らで あ る とす る経 済 シ ス テ ム 内 部 の 「制 度 的 補 完 性 (institutional complementarity)

とい う視 点 で あ る 10)。 制 度的補完性 とは、複数の制度間の相互補完性‑

す なわち一方の制度の存在が、他方の制度のシ ステム全体 に もた らす価値 を高める関係 ‑を意 味す る

第 4は、そのため経済 システムには慣性があ り、経 済 の置 かれた外 部環境 と蓄積 され た内 部環境の変化 と共 に徐 々に進化 ・変貌す るとす る経 済 シス テ ムの深化 と 「経路依存性 (path

制度分析と国際経営 87

dependence)

とい う視点 であ る 11)

「経路依 存性 とは、小 さな出来事や偶然の事情の結果が 解 を決定 し、それが支配的になると、人 をある 特定の経路 に向かわせ る事である

以上の ように、比較制度分析では、経済 シス テムの制度の多様性 とその論理 を世界的な視点 よ り分析す る。比較制度分析 では ,制度 に対 し て二面的な関心 を払 う。1つ は現存す る経済制 度の安定性 ・固走性 であ り,もう一面 はさまざ まな制 度の存 在可能性 や可変性 お よび進化 に まつわるものである。比較制度分析 は現存の制 度が なぜ安定的に機能 しているのかを明 らかに す るに とどまらず ,制度の生成 ・変容 に対 して もダイナ ミックな分析 を行お うとす る試みであ る

Marsdenは、比較制 度分析 の視 点 で、雇用 システムに関す る極めて注 目すべ き理論 を提示 してい る12)。雇用 関係 は現代 の企業 に欠かす ことので きない制度の1つであ り、国際的な雇 用 システムの多様性 について理論化 してい る。

彼 は、雇用取引 とい う観点か ら、2つの職務の ルールに分類す る 第1の職務のルールは、ひ とまとま りの業務 を確定 し、その遂行 に責任 を 負 った職務担 当者 に業務 を割 り当て る とい う

「業務優 先 アプローチ」 であ る 13)。それは、職 務記述書 などで職務 を明確 に し、いわば仕事 に 人を合 わせ るとい うルールである 第2の職務 のルールは、職務担当者の特定の職務領域 (た とえばブルーカラーでは職域 ・職種別の職務領 域) と関連 において、業務 を確定す る とい う、

「機能 ・手続 き優先 アプローチ」である。それは、

いわば人に仕事 を合わせ るとい うルールである

l̀1)。 さらに、彼 は、同 じく雇用取引 とい う観点 か ら、2つの職能のルールに分類す る。第1の 職能のルールは、業務 を職務 にまとめ職務 を労 働者の能力 と一致 させ る方法 として、生産の側 か ら始め生産 システムにおける業務の補完性 を 求め る 「生産 アプローチ」 である15) それは、

いわば人 と仕事 を一体 一 に対応付 け る とい う ルールである 第2の職能のルールは、ある‑

(6)

88 マネジメント ジャーナル (2号)

走の仕事 に必要 とされる能力 を確定 し、認知 さ れた資格 (た とえば公式の証明書や慣行 によっ て与 え られる資格、仲 間内の慣習に基づ き資格 もある) を基 に してそれ らの能力は労働者 に割 り振 り、これによって業務 を割 り当てるという、

「訓練 アプローチ」である16)。それは、いわば 人 と仕事 を切 り離 した上で、2つ を対応付 ける 手続 きを明示す るとい うルールである

彼 は、以上の ような2つの職務のルール、お よび2つの職能のルール とい うマ トリックスか ら、4つのルールを導出 している17)。第1は、「業 務優 先 アプローチ」でかつ 「生産 アプローチ

とい うルールを、「職務 ルール」 と呼 び、 フラ ンス とアメリカが典型的に当てはまるとしてい る。第2は、「業務優先 アプローチ」でかつ 「訓 練 アプローチ」 とい うルールを、「職域 /職種 ルー

」 と呼び、 イギ リスが典型的に当てはま る としている。第3は、「機 能 ・手続 き優 先 ア プローチ」でかつ 「生産アプローチ」とい うルー ルを、「職能のルール」 と呼 び、 日本が典型的 に当て はまる としている 第4は、「機能 ・手 続 き優先 アプローチ」でかつ 「訓練 アプローチ」

とい うルール を、「資格 ルール」 と呼 び、 ドイ ツが典型的に当てはまるとしている。

Hall&Soskice (2001) は、比較制度分析 の 視点か ら、資本主義の多様性 を理論化 している。

彼 らの関心 は、企業のための比較制度優位 を創 造す る諸制度 を解明す ることであ り、その主要 な制度 として(∋教育訓練制度、(∋労使関係 と労 働市場 システム、(釘コーポ レー トガバ ナ ンス、

④組織 間関係、であるとしている。資本主義の 多様性 とい う視点か ら、① コーデ ィネー トされ た市場経済、(参自由な市場経済 とい う2つの資 本主義 に類型化 した。第1のコーデ ィネー トさ れた市場経済 とは、制度的枠組みが企業 間お よ び企業 ・従業員間のコーデ ィネーシ ョンの多 く を市場の外で可能 とす る市場経済であ り、 ドイ ツ、 日本な どが典型的である 第2の 自由な市 場経済 とは、制度的枠組みが よ り規制緩和 され た市場主導型の経済であ り、アメ リカ、 イギ リ

スなどが典型的である。以上のように、制度的 枠組みが経済間で異 なるため、企業の比較制度 優位 (corporateinstitutionaladvantage)も異 なるとす る。企業の比較制度優位 とは、ある特 定の政治経済の持つ制度的構造が、企業 に対 し、

その特殊 なタイプの活動 に従事す る上で優位性 を与 えるとい うものである 企業 とは、収益性 を求めて、財やサー ビス を開発 ・生産 ・流通す る能力 として理解 し、そ うした コア ・コンピタ ンスや動態的能力 を開発 し、活用す る存在であ る。こうした能力 にとって決定的に重要 なのは、

内部的 には企業 自身の従業員 との関係 であ り、

外部的にはサプライヤー、顧客、協働者、労働 組合、事業者 団体、政府 な どのステークホルダー との関係である。すなわち、制度は経済学でい うと、取引 コス トやプ リンシパ ル ・エージェン ト関係 に関す る問題である。要す るに、企業の 能力は、 この ような広範囲なステー クホルダー と効果的にコーデ ィネー トす る力量 に依存す る のである。

レギュラシオン理論

制度 に関連す る研 究 として注 目され るのは、

レギ ュ ラ シオ ン学派 の経済学 で あ る。 レギ ュ ラ シ オ ン学 派 の代 表 的研 究 と して、Amable (2003)、Albert(1991)、Crouch&Streek (1997)、Boyer(1993)、Boyer (2004)、 Orilean (1999)、ボウイ工 .・山田鋭夫 (1993‑a)、 ボウイエ ・山田鋭夫 (1993‑b)、 ボウイ工 .・山 田鋭夫 (1996)、ボウイ工 .・山田鋭夫 (1997)、 山田鋭夫 (2008)、 などがある

レギュラシオ ン学派の基本的考 え方 は、各国 経済 はそれぞれの社会や歴 史を踏 まえた諸制度 の うちに埋 め込 まれてお り、それによって多様 な資本主義 を形成 しているとい う、社会経済 シ ステムの多様性 とい う考 え方である。市場主義 を普遍的価値 とす るアメリカを中心 としたア ン グロサ クソン型経済が、資本主義の唯一のモデ ルであるとい う考 え方ではな く、各国の制度的 多様性 を認識す ることによって、資本主義の多

(7)

様 なモデルが存在す る と考 える。す なわち、 グ ローバ リズムの圧力 の下で も、各国は市場主義 的、 ア ングロサ クソン型経済へ の収故 を意味す る ものではないのである。 レギュラシオ ン学派 の経済学 は、 この ような基本 的仮 定 に基づ き、

注 目すべ き研 究成 果 が相 次 いで発 表 され て い る。

Crouch&Streek (1997)は、規制緩和 や フ レキシブルな労働市場 といった新 自由主義 を批 判 し、 レギ ュラシオ ン学派の視点か ら資本主義 の多様性 を主張す る。 この観点か ら、 日本、 ド イツ、 フラ ンス、 イタリア、 イギ リス、 アメ リ カの資本主義 の特徴 に関 して、制度の視点か ら 各 国の多様性 を論 じている。 資本主義の多様化 が生ず るのは、①競争的市場お よび所有権 に基 づ くヒエ ラルキー組織、(参国家、③委員会や労 働 組合 とい った公認 の諸 団体、(彰非 公 式 な コ ミュニテ ィやネ ッ トワー ク、 な どの制度が国 ご とに異 なってい るためであるとしてい る

競 争 的市場 お よび所 有権 に基づ くヒエ ラル キー組織 の代表 的 な もの は、企業組織 であ る

各 国の企業組織 は、市場 ルールや所有構造が相 違 している 例 えば 日本の大企業では、 自らの うちに完結 した文化 や コ ミュニ テ ィを作 り出 し、経済的存在 としての個別的交換 の組織 のみ ではな く、社 会的制度 ともなっているのであ る。

また、内部労働市場 を発達 させ、従業員間の長 期勤続 を奨励 し、会社 レベ ルの社会政策 を発展 させ るようになる。 こうした企業 は、高度 に競 争 的な生産物市場の内部で存続す る一方、 自ら の労働 関係 においては市場 ルールが作用 しない ように している。 ア ングロサ クソン型の ヒエ ラ ルキー的企業 と区別 して、 こういった企業 は制 度化 された企業 とい うことがで きる18)。国家 は、

その国の資本主義経済の運営 に深 くかつ多様 に 巻 き込 まjtてお り、その結果国家的伝統が異 な ゴ1ば経済行為 のルールや帰着が まった く異 なる ものになる 委員会、労働組合、経営 団体 な ど の公 認 の諸 団体 (associations)は、競 争 者 間 の協力が組織 され、利害対立的な諸 グループ間

制度分析と国際経営 89

の集団的交換 ルールについて交渉が持 たれ、そ の結果、市場 や企業の機能が修正 された り国家 ごとに多様性がみ らjtた りす ることになる.罪 公式 な コ ミュニテ ィや ネ ッ トワー ク (例 えばイ タ リアで の企業 ネ ッ トワー クや 日本 で の下 請 ネ ッ トワー クな どがある) は、ある国ではこれ が相 当の割合 をコン トロール してお り、 さまざ まな程度 においてその他 の統治 システムを維持 した り、変形 させ た りしているのである。

しか し、こうした資本主義の多様性 は、グロー バ ル化 の名 の もとに超大 国アメ リカの政治的支 配力 に よるア メ リカ制度 の他 国へ の押 し付 け、

経済理論で支配的 な 自由主義モデルな どの多 く の要因によって深刻 な脅威 に さられているとし てい る。

Boyer(2004)は、制度 の生成 において政治 的な ものが決定的に重要である と指摘 している 19)。例 えば、雇用 関係 における各 国の制度の多 様性 は、その国での労働者 と経営者の政治的 な 闘争 によ り生 じた ものである さらに、 レギュ ラシオ ン理論 における制度 とは、基本的社会 関 係 を制度化 した ものであ り、(∋貨幣形態お よび 貨幣体制、② 賃労働 関係 の形態、(彰競争形態、

④ 国際体制 の参入形態、⑤ 国家形態、 とい う5 つ の基 本 的制 度 が重 要 で あ る とす る20)。 貨 幣形態お よび貨幣体制 とは、特定の国お よび時 代 において、交換主体 を創設す る基本的な社 会 諸 関係 である。賃労働 関係 の形態 とは、資本 と 労働 関係 の構 図であ り、 これはさまざまな労働 組織類型、生活様式、賃労働者 の再生産様態 の 間の関係か ら構成 され る。競争形態 とは、市場 での競争 メカニズムである。 国際体制の参入形 態 とは、商品貿易、直接投 資な どに よる海外生 産移転、海外 か らの資金調達 な どのルールであ る 国家形態 とは、制度化 された国家のルール である

Amable(2003)は、資本主義モデル として、

「ア ングロ ・サ クソ ン型」、「ア ジア型」、「大 陸 欧州型」、「社会民主主義型」、「地 中海型」 とい

う5つ に類型化 している21)0

(8)

90 マネジメント ジャーナル (2号)

第1のアングロ ・サ クソン型資本主義モデ ルは、アメ リカ、 カナダ、イギ リス、 オース ト ラリアのクラス ターで、市場ベース型資本主義 であ る ア ングロ ・サ クソ ン型 モデルの製品 市場 の特徴 としては規制緩和 された製品市場、

す なわち企業活動‑ の低 い障壁、低水準の国家 統制や公的所有 な どである 労働市場の特徴 と しては労働市場 のフ レキシビリテ ィ、す なわち 短い解雇予告期 間、試用期 間の存在、不当解雇 の場合で さえ雇用保障は少 ない、常用雇用 に対 す る雇用保障は少 ない、安易 な解雇、賃金のフ

レキシビリテ ィなどである 金融の特徴 として は市場ベース型金融 システムとコーポ レー トガ バナ ンス、す なわち大規模お よび中規模株式会 社機 関における分散所有、機関投 資家のポー ト

フォリオに占める株式の割合 は大 きい、上場企 業 の多 さ、活発 な金融市場 (株 式新 規企業)、

大規模 な金融市場、機 関投 資家の中での年金基 金の重要性、同族支配の企業、ベ ンチ ャー・キャ ピタル、銀行の高い収益性、などである 福祉 の特徴 としては福祉 の 自由主義、 また教育の特 徴 としては競争的教育 システムであるとしてい る

第2のアジア型資本主義モデルは、 日本、韓 国のクラスターである。 アジア型資本主義モデ ルの製 品市場 の特徴 と して は、規 制 された と い うよ り統治 された製品市場競争である 労働 市場 の特徴 としては規制 された労働市場、すな わち常用雇用の保護、一時雇用 の保護 な どであ る 金融の特徴 としては銀行ベース型金融 シス テム、限定的なベ ンチ ャー・キャピタルである

福祉 の特徴 としては低水準の社会保障、教育の 特徴 としては私学 による教育 システムであると

している

第3の大 陸欧州型 資本主義 モ デル は、 ス イ ス、オランダ、アイルラン ド、ベルギー、 ドイ ツ、 フランス、 オース トリアのクラスターであ る 大陸欧州型資本主義型モデルの製品市場の 特徴 としては市場 による強い規制である 労働 市場の特徴 としてはコーデ ィネー トされた労働

市場、である 金融の特徴 は銀行ベース型金融 システム、すなわち金融機 関による企業の コン

トロール、保険会社 の重要性である。福祉 の特 徴 としてはコーポラテ ィズム、す なわち主 とし て雇用ベースの給付である 教育の特徴 として は、公的教育 システムであるとしている

第4の社会民主主義型資本主義モデルは、デ ンマーク、 フィンラン ド、スウェーデ ンのクラ ス ターで あ る 社 会民主主義型 資本主義 モ デ ルの製品市場の特徴 としては規制 された製品市 場である 労働市場の特徴 としては規制 さゴ1た 労働市場、すなわち積極的労働市場政策、高い 労働組合員比率 な どである 金融の特徴 は銀行 ベース型金融 システムである 福祉の特徴 とし ては普遍主義モデル、す なわち家族向けサー ビ スの重要性 な どである 教育 の特徴 としては、

公的教育 システムであるとしている

第5の地中海型資本主義モデルは、ギ リシャ、

イタリア、ポル トガル、スペ インのクラスター である 地中海型資本主義モデルの製品市場の 特徴 としては規制 された製品市場、す なわち企 業 に対す る行政 の責任、公 的部 門な どである 労働市場 の特徴 としては規制 された労働市場、

す なわち一時的労働の制限、経営者 と従業員間 の対立 的 関係 な どで あ る。金融 の特徴 は銀行 ベース型金融 システムである 福祉の特徴 とし ては制限 された福祉 国家、す なわち老齢支 出の 重要性 な どである。教育の特徴 としては、脆弱 な教育 システム、す なわち教育 とくに高等教育 へ の支 出が少 ない、低い入学率、科学 ・技術高 等教育の弱 さ、 などであるとしている

Albert(1991) は、資本主義経済 をアメ リカ、

イギ リスな どの 「ネオライ ン型資本主義、ある いはアメ リカ型 モデル」、 ドイツ、 日本、ス イ スな どの 「ライ ン型 資本主義モデル」 とい う2 つ に類型化 している22)。ネオライ ン型モデルは、

個人の成功 と短期的な金銭利益 を土台 としてい る。 ライ ン型モデルは、集団での成功、 コンセ ンサス、長期的配慮 に価値 を見出 している

ネオライ ン型資本主義 は、競争主義、能力主

(9)

義、賃金格差、社会の2元利 (社会、教育、医療、

階層 な どの格差)、株 主重視、市場 か らの資本 調達、M&A、金融資本主義な どの特徴 を持つ、

ア ングロサクソン型資本主義である。

ライ ン型資本主義は、賃金格差の少 なさ、社 会的平等、能力 と年功 を重視 した昇進 ・賃金 シ ステム、職業訓練の重視、株主 ・経営者 ・従業 員の権力のバ ランス、銀行お よび市場か らの資 金調達、銀行 と企業 との産業共同体、製造業の 競争力の強 さ、などの特徴 を持つ。 ライン型資 本主義モデルでは、共同体の利益が、個人の利 益 よ りも価値がある、つ ま り共同体 の中にある 個人 とい うものが特別 に重要である。 ライン型 資本主義 は、経済的、社会的優位 を持つ に もか かわ らず、近年、金融 ・資本な どのグローバ リ ゼー シ ョン、 アメリカの金融機 関 とメデ ィアの 優 勢性、 グローバ ルなM&A,規制緩和 な どに よりネオライン型資本主義、あるいはアメリカ 型モデルが優位 とな り、 ライ ン型資本主義が後 退 して きていると指摘 している。

移行の経済学

制度の関連す る研 究 として、移行の経済学 に 関す る研 究 も注 目され る23)。本稿 は、 アジア フロンテ ィア地域の国際経営や制度 をテーマ と しているが、アジアフロンテ ィア地域の ラオス、

ベ トナム、中国、 ミャンマー (共産党による移 行ではないが社会主義的経済体制か ら軍事政権 による移行である)は、社会主義的経済か ら市 場経済 に移行 しているとい う点で、関連が深 い。

移行政策 には、移行のス ピー ドの観点か ら 「急 進主義 的、 ビックバ ン、 ない しシ ョック療法

と 「漸進主義」 に分類で きる

ビックバ ンによる移行は、旧東欧のポー ラン ド、チェコスロヴァキア、エス トニア、 ラ トビ アな どや ロシアが採用 したアプローチである

ビックバ ンは、短期間の うちに社会主義的な経 済体制か ら市場経済へ移行す る戦略で、新 しい 政府が過去の逆戻 りを排除 し、政治的 ・社会的 合意 を背景 に、抜本的手段 を賦課す ることを意

制度分析と国際経営 91

昧す る。短期的には、経済 ・社会的混乱が生 じ るが、短期 間の うちに収拾 しようとす る。 アジ アでは、 この ようなビックバ ンによるアプロー チはほ とん ど採 られていない。漸進主義 による 移行 は、 旧東 欧のハ ンガ リー、ス ロヴ ァキア、

ルーマニ ア、 リ トアニ アな どが採用 した アプ ローチである。 アジアの諸国のほ とん どの移行 国、中国、ベ トナム、 ラオスなども漸進主義的 アプローチを採 っている 漸進主義の基本的考 え方 は、経済の構造的転換 には本来時間がかか るとい うものであるため、時間をかけて試行錯 誤 しなが ら改革 しようとす る思想である。また、

移行 における社会的 コス トをで きるだけ小 さ く したい とい う考 え方である

移行政策 として、価格 自由化、民営化、銀行 改革、資本市場の創設、経済の開放、労働市場 改革、農業改革、法制度の確立 な どの政策がほ とん どの 国で採 られてい る。 第1の価 格 自由 化 は、統制価格、管理価格、配給制 などか ら市 場 による価格決定に移行す ることである 移行 期 には、価格の 自由化が行 なわれるため、ほ と ん どの国で高いイ ンフレとい う問題が生 じてい る。た とえば、ベ トナムでは移行期 に3桁 の イ ンフレに見舞われた。移行経済では、 インフレ の抑制、財政赤字の削減、通貨価値の安定な ど のマ クロ経済政策 も重要である 第2の民営化 は、旧所有者への資産 な どの返還、土地の私的 所有 ない し使用権、企業 の民営化 な どがあ る。

第3の銀行改革は、中央銀行 と独立 した商業銀 行の設立による2層の銀行 システムの創 出、銀 行の民営化、民 間銀行 の設立 な どがある 第4 の資本市場の創設 は、証券取引所 の開設、民間 企業や政府の債券の発行 な どがある 第5の経 済の開放 として、外 国貿易 自由化、単一為替 レー ト、外 国か らの投 資 を促進す る外 資法の制定、

輸出加工 区や工場 団地の整備、国際機関 (IMF,

GATT,WTO等 )‑ の参加 な どがあ る。 第6 の労働市場改革 として、採用 ・賃金な ど人事 に 関す る企業の 自主権、労働移動 に関す る規制緩 和 などがある。第7の農業改革 として、集団農

(10)

92 マネジメント・ジャーナル (2号)

業 か ら家族 単位 の農業 、 農業 自主権 、 農地 の所 有権 ・使 用 権 の賦 与 な どが あ る 第8の法 制 度 の確 立 は、所 有権 や使 用権 を規 定 ・執 行 し、契 約 法 を定 め、競 争 を促 進 す る よ うな法 制 度 の確 立 で あ る この よ うな法 制 度 は、取 引 費用 を下 げ、 市 場 経 済 を作 るた め に欠 かせ ない制 度 的枠 組 み の基礎 とな る

比較法 、アジア法

制 度 の 関連 す る研 究 と して、 比較 法 、 ア ジア 法 な どの法律 学 に関す る研 究 も注 目され る。比 較 法 は、法 学分 野 で の法 の 国際比較 で あ る た とえば、ア ジ ア法 、ヨー ロ ッパ 法 、ア メ リカ法 、 イギ リス法 、 ドイ ツ法 な どの よ うな研 究領域 で あ る

安 田 (2005)は、 ア ジア法 の分 野 で興 味深 い 研 究 を展 開 して い る 安 田 は、 ア ジア諸 国 の会 社 法 につ い て、 大 陸 法 系 諸 国、 英 米 法 系 諸 国、

社 会 主 義移 行諸 国 の会 社 法 に分類 して い る24)。 第1の大 陸法 系 会 社 法 諸 国 と して は、 日本 、 台湾 、韓 国、イ ン ドネ シア、タイ をあ げて い る

台湾 と韓 国 の会社 法 は、 日本 の植 民 地 時代 の影 響 で 日本法 と共 通 す る側 面 が大 で あ る。 イ ン ド

ネ シアは、ア メ リカ法 や 日本法 の影響 もあ るが、

基 本 的 に はかつ て の 旧宗 主 国で あ る オ ラ ンダ法 の影響 が 強 い。 タイは、民 商法典 (1935年 制 定) につ い て は英 仏 の影響 が 強 く、公 開会社 法(1992 年 制 定) につ い て は ア メ リカ法 をは じめ多 くの 国 の立 法 が参 照 され た。

第2の 英 米 法 系 会 社 法 諸 国 と して は、 イ ン ドを中心 とす る南 ア ジア、 マ レー シア、 ミャ ン マ ー、 シ ンガポー ル をあ げて い る。 イ ン ド、 ス リラ ンカ、 パ キ ス タ ン、 バ ング ラデ ィ シ ュ は、

旧宗 主 国 で あ る イ ギ リス会 社 法 の影 響 が 強 い。

ミャ ンマ ー の会社 法 もまた イギ リス法 の影 響 が 強 い。 マ レー シア とシ ンガポー ル は、イギ リス、

ア メ リカ、 オー ス トラ リア法 の影響 が 強 い。

第3の社 会 主義 移 行 諸 国 と して は、 中国、 ベ トナ ム、 カ ンボ ジア とい うア ジア諸 国 をあ げて い る 中 国、 ベ トナ ム ,カ ンボ ジ ア は、 社 会 主

義 経 済 を反 映 して、1980年代 に入 る まで は、「企 業 法 」 は なか ったが 、 そ の後 移 行 政 策 、 改 革 政 策 を採 用 して 企 業 法 が 制 定 され る よ う に な っ た。 中 国 は1994年 に 「会 社 法 」、 ベ トナ ム は 1990年 に 「企 業 法 」、カ ンボ ジ アは2005年 に 「商 業 企業 法 」 を制 定 した。

香 川 (2000)は、 ア ジアの労働 と法 に関 して 注 目すべ き研 究成 果 をあ げて い る ア ジアの労 働 法 の特 徴 と して、権 威 主 義体 制 下 で の 開発 法 学 と して の労働 法 、 民 主 主 義 と しての労働 法 と い う、2つ の側 面 が あ る と して い る25)。 ア ジア 諸 国 にお け る労 働 法 は植 民 地 時代 (タイ は別 ) か らす で に労働 法 は存 在 し、 フ ィ リピ ンは ア メ

リ カ、 シ ンガ ポ ー ル とマ レー シ ア は イ ギ リス、

イ ン ドネ シア は オ ラ ンダ、韓 国 は 日本 、 台湾 は 日本 と ドイ ツの影 響 を受 けて い る。植 民 地 に な らなか った タイの労働 法 は、 ドイ ツや フ ラ ンス の大 陸法系 の方 を受 け継 ぎ、 戦 後 ア メ リカ法 の 影響 も受 け て い る。

ア ジアの労使 関係 法 の特 徴 と して は、権 威 主 義 的体 制 下 の政府 が そ の状 況 を強制 的 に作 り上 げ るため の シス テ ム を作 り上 げ て い る こ とで あ る 26)。 具 体 的 に は、 労 働 組 合 の 登 録 制 度 、 組 合 組 織 形 態 の 限 定 、 企業 内組 合 の 限定、1企業 1組 合 主 義 の強 制 、 ナ シ ョナ ル ・セ ン ター の一 本化 、 団体 交 渉 の法 定化 、 労働 協 約 の登 録 ・認 証 制 度 、 強 制 仲 裁 制 度 、 争 議 禁 止 範 囲 の拡 大 、 輸 出加 工 区 にお け る労 働 基 本権 の規 制 、 な どで あ る この 中で最 も重 要 なの は、組 合 の強制 労 働 制 度 で あ る 登 録 が 認 め られ て は じめ て組 合 と して の存 在 が 認 め られ る 登 録 に は要 件 が あ り、 そ れ に あ わ な け れ ば登 録 は認 め られ な い。

組 合 の登 録 制 度 は イギ リス を宗 主 国 とす る イ ン ド、 マ レー シア、 シ ンガポ ー ル、香 港 、 お よび タイ にみ られ る シ ンガ ポ ー ル、 マ レー シア、

香 港 で は強制 登 録 制 度 、 イ ン ドで は組 合 登 録 が 任 意 、 タイで は組 合 の設 立認 可 主義 が採 られ て い る 労働 組 合 の登 録 制 度 は、 政府 の 関与 す る 程 度 が極 め て高 い制 度 で あ り、組 合 員 の組 合 を 設 立 す る 自由、組 合 を運 営 す る 自由 な どが 非常

(11)

に制限 されているとい う特徴がある。

また、 アジアの雇用 関係法の領域での特徴 と しては、ILO条約が中核 的な労働基準 となって い る こ とで あ る27)。ILOは、結社 の 自由 (87 号条約、98号条約)、児童労働 (138号 条約)、

強制労働(29号条約、105号条約)、雇用差別(100 号条約、111号条約) とい う4つの領域 につい ては、批准 していない国で もそれを遵守す るこ とを求めている。 さらに、 アジアの労働法 にお ける最低賃金 (26号 条約、131号 条約)、労働 時間 (1号条約)、休 日と休暇 (14号条約、106 号条約、52号条約)) な どにつ いては、ILO条 約の規定が最低水準 となっている。

国際法 、国際経済社会法

制度の関連す る研究 として、国際法、国際経 済社会法、国際機 関に関す る研 究 も注 目される。

アジアフロンテ ィア地域の国際経営 と制度 とい う視点で重要な国際機 関、国際法は、WTO (世 界貿易機 関) とILOであろうWTOについて は、 タイは1995年、 ミャンマーは1995年、中 国は2001年、 カンボジアは2004年、ベ トナム は2007年 にWTOに加 盟 した。ILO (国際労 働機 関) については、カンボジア、ラオス、ミャ ンマー、ベ トナム、 タイ、中国 と全 てのアジア フロンテ ィア諸国が加盟 している。

WTO (世 界 貿 易機 関)

第2次 世 界 大 戟 後、 自由貿 易 を促 進 す る こ と を 目 的 に、1948年 にGATT (General AgreementonTariffsandTrade:関税 及 び貿 易 に関す る一般協定)が発効 した。 自由貿易、

最恵国待遇、内国民待遇 などの原則 に立 ち、そ の活動 は、関税引 き下げ、輸入制限の撤廃、差 別待遇の除去 など多岐にわたった

WTO (WorldTradeOrganization)は、 ウ ルグアイ ・ラウ ン ド (1986‑94年)の合意 に も とづ き、1995年 にGATTを発展 的 に解 消 し、

国際貿易の促進 などを目的 とす る国際機 関 とし て設 立 され た28)。 wTOは、GATTの基 本 精 神 を引 き継 ぐ形 で、最恵国待遇、 内国民待遇、

制度分析と国際経営 93

数量制限禁止、関税引 き下げ とい う4つの原則 を定め、貿易 自由化 などを進めることを目的 と している。

第 1の最恵国待遇の原則 とは、通商条約 な ど にもとづいて、締約国の一方が他の第三国に与 えているか、 または将来与 えることのある最 も 有利 な待遇 を締約相手国に対 して与 えることで ある (GATT第 1条)。す なわち、最恵 国待遇 とは、ある国が特定の国のみ を優遇す ることは 許 されず、すべての国を平等 に扱 わなければな

らない とい う原則である

第2の内国民待 遇 の原則 とは、輸入 品 に対 して適用 される内国税や国内規制 について、同 種 の国内産品に対 して与 える待遇 よ りも不利で ない待 遇 を与 えなければ な らない こ とであ る (GATT第3条)。す なわち、輸入 品 と国内産 品の差別 を禁止す る原則である。

第3の数量 制 限禁止 の原則 とは、締 約 国 は 貿易政策 として関税 ・課徴金以外 に数量制限を してはいけない ことである (GATT第11条)。

すなわち、必要 な国内産業の保護 は関税 のみで 行 な うべ きであるとい う考 え方である。ただ し、

例外 として農林水産品の輸入 (GATT第11条、

12条) な どについては数量制限を認めている 第4の関税 引 き下 げ原則 とは、最 恵 国待 遇 (GATT第 1条)、 お よび締 約 国相 互 の多 角的 交渉 (GATT第28条) な どによ り、関税 を可 能な限 り引 き下げることを規定 している。

WTOは、設立時か ら加盟 国が増加 し、それ にともないWTOは、発展途上国 と先進国、農 産物輸 出国 と農産物輸入 国、発展途上 国内部、

先進国内部 な どで利害対立が生 じている。た と えば、サー ビス、農業、投 資のルール策定など の問題 が課題 とな ってい る。 また、WTOは、

サー ビス貿易や知的財産 (所有)権 も対象 に含 むようになった。 なお、サー ビス貿易 とは、金 融、運輸、通信、建設、流通 などの国際取引で ある 知的財産 (所有)権 とは特許権、著作権、

意匠権、商標権 な どである。

ベ トナムは、WTO加盟 に向けて内資 と外 資

(12)

94 マネジメント ジャーナル (2号)

を平等 に処遇す る2005年企業法 と2005年共通 投 資法 を制定 した。 また、中国で も会社法、外 資法 な どでWTO加盟 に向けて法制度 の整備 を 行 なった。

サ ー ビス 貿 易 につ い て は、1995年 に サ ー ビ ス 貿 易 に 関 す る一 般 協 定 (CATS:General AgreementonTradeinServices)が発効 した。

サー ビス貿易 には、国際貿易、国際通信 な どの 越境取引、外 国人 に対す る国内サー ビス (外 国 人 に対す る観光、流 通サ ー ビス な ど)、外 国で の外 国企業 のサ ー ビス (海外 支店 に よる金融、

観光サー ビスな ど)がある(GATS第 1条)。サー ビス貿易 について も最恵国待遇 を規定 している (GATS第2条)。 ただ し、運輸航空サ ー ビス、

金融サー ビス、電気通信 の分野では、特則 を付 属書で定めてい る29)

サー ビス貿易での最恵国待遇 を規定 している (GATS第17条)30)。サー ビス貿易 は、合理的 ・ 客観 的かつ公平 に実施 され ることを求めている

(GATS第6条 )。 つ ま り、 サ ー ビス貿 易 での 国内企業 と外 資企業の公平 な どを規定 している

31)

加 盟 国 は、 自由化 を約 束 した分 野 につ いて 市場 ア クセ スの改 善 また は保 障 の義 務 を負 う (GATS第16条)。具体 的 には、数量制 限、外 資進 出形態の制 限 (合弁 の事業体 につ いて特定 の形態 の制 限、 または要 求す る措置)、外 国資 本の出資制 限 (外 国の株式保有比率 または外 国 投 資比率の上 限を定める もの) な どがある32)0

サ ー ビス貿 易 に関す る一般協 定 で は、加 盟 国は、漸進 的 自由化、す なわちWTO効力後5 年以内に引 き続 き交渉の ラウ ン ドを開始 し、そ の後 も定期 的 に行 うとしている。 (GATS第 19 秦)。 これ は、発展 途上 国に配慮 し、原則5年 以内にサー ビス貿易 を自由化す るとい う漸進的

自由化 を認 めた規定である33)

中国は、2001年12月WTO加盟 に よ り、原 則 としてサー ビス産業 の市場 自由化が要求 され た。 中国の流通分野 (小売業 と卸売業) につい ては、加盟後5年以 内 (2006年12月 まで) に

段 階 的 開放 す る とい う漸 進 的 自由化 を行 な っ た。小 売業 につ いては、地域 的制 限 を加盟後3 年以内に撤廃 し、外 資出資比率 を加盟後3年以 内 に撤 廃 (ただ し自動 車 販売 は5年 以 内) し た。電気通信分野 については、加盟後6年以内 (2007年12月 まで) に、 国 内 ・国際電 話 で は 地 理 的制 限 を撤廃 し、外 資 出資制 限 を49%以 下 に、移動体通信 では2007年12月 まで に地理 的制 限 を撤廃 し、外 資 出資制 限 を49%以下 に、

とい う漸 進 的 自由化 を行 なった34)。 この よ う な中国のサー ビス貿易 の 自由化 によ り、 イ トー ヨー カ堂、 イオ ン ・ジャス コ、伊勢丹、 ロー ソ ン、 フ ァミリーマー ト、セブ ンイ レブ ンな ど日 系流通業が中国に進 出 している

ベ トナ ム も2007年1月WTO加 盟 に よ り、

サ ー ビス産業 の市場 自由化 が期待 され てい る サ ー ビス分 野 の 自由化 スケ ジュー ル と して は、

コンピュー ター関連サー ビスは、加盟後2年後 (2009年1月)か ら外 資制 限 を撤廃す る 流通 サ ー ビス で は、加 盟 時 (2007年1月) か ら卸 売、小売、 フラ ンチ ャイズにおいて合弁形態 の 外 資 を解禁、さ らに加盟後2年後 (2009年1月) か ら100%外 資 を認 める 日本 とのEPA (経済 連携協 定) が2009年 に発 効 した こ とか ら日本 のサー ビス産業 のベ トナム進 出が期待 される

ILO (国際 労働 機 関 )

ilo (国 際 労 働 機 関:InternationalLabor Organization)は、 第1次 大 戦 後 の1919年 に 国際連合 の姉妹機 関 として創設 さゴ1た。第2次 大 戦 後、労働 者 問題 を担 当す る国連 の専 門機 関 となった35)0 ILOの 目的 ・任務 は憲章前文、

お よび フ ィラデ ル フ ィア宣 言 (国際労働 機 関 の 目的に関す る宣言) に記 されている36)。ILO 憲章前文では、世界の永続す る平和 は、社会正 義 を基礎 としてのみ確立す ることがで き、世界 の平和 や協調が危険 にいたるほ ど大 きな社会不 安 を起 こす ような不正、困苦 ・貧 困を多数の人々 に もた らす労働条件が存在す る場合 には、①労 働 時 間の規 制、(参労働 力 供 給 の調 整、(釘失業 の防止、(彰安当な生活賃金の支給、⑤疾病、疾

(13)

患、負傷への保護、(む児童、年少者、女性の保 護、⑦老年 ・廃疾 に対する給付、⑧外 国人労働 者の利益 の保護、⑨ 同一価値労働 に対す る同一 報酬の原則、⑲結社 の 自由の原則の承認、⑪職 業 ・技術教育の促進、などの措置 を講ず ること が急務 で あ る と謳 ってい る。 また、1944年 に 採択 されたフィラデルフィア宣言では

、I LO

の 基本原則 として、①労働 は商品ではない、②表 現お よび結社 の 自由は不断の進歩のために欠 く

ことがで きない、③一部の貧困は全体の繁栄 に とって危険である、(彰欠乏に対す る戦いは労働 者お よび使用者 と同等の地位 において遂行す る

こと、であると謳 っている。

I LO

は、国際労働基準 として条約 (議定書 を 含 む)と勧告 とい う2つの形式がある 条約は、

国際的な最低 の労働基準 を定めてお り、加盟国 は批准 に よ り受諾す る。勧 告 は、批准が な く、

拘束力が ない、加盟各国が国内法や労働協約 な どで任意 に採用で きる国際労働基準である。条 約数は185、勧告数は195であるが、 日本は47 の条約 を批准 している。 なお、加盟国平均の条 約批准数は41、OECD加盟国平均では72となっ

制度分析と国際経営 95

てお り、 日本の批准率の低 さが 目立つ37)

。I LO

条約 には、中核 的8条約があ り、これを尊重 し、

促進 し、実現す る義務があ り、そのためにあ ら ゆ る措 置 を とる よ うに求 めて い る

。I LO

の 中 核 的

8

条約 とは、(∋結社 の 自由 と団体交渉

( 8 7

号条約、98号条約)、(参強制労働 の廃止 (29号 条約、105号条約)、(争児童労働 の廃止 (138号 条約、182号条約 )、④ 雇用 ・職業 の差 別 の廃 止

( 1 0

0号条約、111号条約)、である

なお

、I LO

加盟国は

1 7 8

カ国、アジアフロン ティア諸国であるカンボジア、 ラオス、 ミャン マ ー、ベ トナ ム、 お よび タイ、 中国は

I LO

に 正式加盟 している。

制度

(institution)

とは何 か

制 度 とは、社 会 にお け る規則、 ルー ルであ る。 さらに、制度は人々によって考案 された制 約 で あ り、相 互作 用 を形 づ くり、 また、 イ ン セ ンテ ィブ構 造 で もあ る 制 度 は、社 会 の人 間同士 の相 互作用 のため に設 け るルー ルで あ り、それが人間行動 にパ ター ンを与 えることに

図1 制度分析のフレームワーク

(出所 :著者作成)

(14)

96 マネジメント ジャーナル (2号)

よって、人 間同士 の相 互作用 に伴 う不確 実性 を 減 らす。具体 的 には以下 の制 度 が重 要 で あ る。

第1は、 フ ォ ー マ ル な 制 度 ・ル ー ル で あ る。 経 済 制 度 、 政 治 制 度、 法 制 度、 企 業 制 度、 労 働 ・労 資 関係 制 度、 契 約 な どで あ る

第2はイ ンフ ォーマ ルな制度 ・ルールである。

社 会規範、慣 習、文化 、道徳 な どであ る。

本稿 で は、制 度 と して経済制 度、 政 治制 度、

企 業 制 度、 法 制 度 を中心 と して考 察 す る 特 に、法制度 (企業法、投 資法、労働法 な ど) と 企業制度 を重点 に置 く。本書 は、 アジア フロ ン テ ィア諸 国での経済体制 や経済政策 な どの経済 制度、国の政治制度、企業活動 と しての企業制 度、法律 や通達 で定め られた法制 度 な どにつ い て、 国際経営 の視点で研 究す る。

著者 の制度分析 の フ レームワー クは、図 1で あ る。

制度分析 の レベ ル と して、グローバ ル レベ ル、

リー ジ ョナ ル レベ ル、 国 ・地方 の レベ ル、企業 レベ ルの4つ に分類す る

第1の グローバ ル レベ ルの制度 として、① 国 際機 関、例 えば国連、WTO,IMF、 国連、世 界 銀行、ADB(アジア開発銀行)な ど、(参国際組織、

例 え ば、 環 境 基 準 (ISO)、 グ ロー バ ル標 準 ・ 規格標準 、国際会計基準 な どがあ る

第2の リ ー ジ ョ ナ ル レ ベ ル の 制 度 と し て、 地 域 組 織 、 地 域 統 合 、 地 域 連 携 、 例 え ば ASEAN,AFTA,GMS、FTA、EU,MERCOUR な どがあ る。

第3の国 ・地方 の レベ ルの制度 として、①経 済制度、例 えば経済体制、 資本 主義 の多様 モデ ル、市場 と規制、社 会主義か ら市場主義へ の移 行 (急進主義 と漸進主義)、外 資導入政策 な ど、

② 政治制度、例 えば政治体制、共産主義 国、軍 事 政権、官僚制 な ど、③ 法制度、例 えば憲法、

商法、労働法、外 資法、民法、法制度 の公正 な 執行、裁判 な ど、④ 企業制度、例 えば会社法 、

コーポ レー トガバ ナ ンス、取引、契約、企業規 範 な ど、(9労働 ・労 資関係制度、例 えば労働法、

労 資関係、労務管理、労働慣行 な ど、(む社会制

度、社 会規範、文化 ・価値規範、慣 習、家族制 度、宗教 、文化、教育 な ど、が あ る。

第 4の企業 レベ ルの制度 として企業規則 (定 款、社則 な どの各種規則)、企業 内人的資源管理、

組織 間関係 (取 引先、銀行、部 品 ・原材料供給 、 流通、 資本市場 、消費者 な ど)、生産 システム、

な どが あ る。

制 度分析 で は、執行 (enforcement)とい う 概念 も重要 であ る 制度 は、執行 され なければ 有効 で な くなる ことが あ る 執行 は、法 の実際 の運用、取 り締 ま り、 または違反 した場合 の処 罰、裁判 システムであ る た とえば、 国は労働 法 を定め るが、 も し政府 が定め られた法律 を執 行 しなけれ ば、企業 は労働法が存 在 しない よ う な行動 をす るか もしれ ない。法律 を厳密 に執行 す る国 もあれば、少 しだけ とか、あ るいは まっ た く執行 しない国があ る。執行 は、一 国の制度 的枠組 み を構成 す る不可欠 な部分 であ り、その 国の経済パ フ ォーマ ンスの違 い を説 明す る最 も 重要 な要素 であ る38)0

制度 の要素 であ る法制 度、経済制 度、政治制 度、企業制度、社 会制度 な どは、相互 に密接 に 関連、影響 してい る とい う視 点 も重要 で あ る

た とえば、労働 法 は一般 には労働者 に関す る法 制度 であ るが、 国民 の生活 とい う社 会的要素 も もつ。 会社 法 は一般 には企業 に関す る法制度 で あ るが、政治的要素 (た とえば国有企業 も民営 化 の ような) を もつ のであ る

ASEAN

AFTA AFTAと日本企業の戦略

日本企業 の ア ジア‑ の直接投 資や戦略提携 と い っ た ア ジア戦 略 にお い て、AFTAの動 向 は 極 めて重要 であ る39)

AFTA (ASEAN自 由 貿 易 地 域 ;ASEAN FreeTradeArea)、19921月 に シ ン ガ

ポ ー ル にお い て 開催 され た 第4回ASEAN首 脳 会議 において、ASEAN域 内の 自由貿易構 想 と して正 式 に合 意 され、1993年 か ら2008年 ま

参照

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