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ラオスの制度 と国際経営

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研究論文

ラオスの制度 と国際経営

一経済、人的資源、外国投資法、労働法を中心 として一

丹 野 勲

はじめに

ラオスは、人 口が約574万人、国土面積 が約 23万6,800平方 キロ(ほぼ 日本 の本州に相 当)で、

イ ン ドシナ半島に位置す る内陸国である。 ラオ スは、北は中国雲南省、東部 山岳部はベ トナム、

西はメコン河 に沿って ミャンマー、タイ、お よ びカンボジア と接す る。国土の広 さに比べ人 口 が少 な く、森林資源 が豊富な国である。 メコン 河流域 には、農林業が発達 している。 ラオスは 国土の約8が山間部で、耕作に適す る地域 は 国土の

4%

程度 と少 ない。

ラオスは、人 口の約6割 を占めるラオ族 と約 60あま りの民族か ら構成 され る多民族国家であ る。宗教は、南方上座仏教 を中心 とした仏教の 影響が強い。言語 は、タイ語 に近いラオス語で

ある。

ラオスは、 1899年 にフランス領 イ ン ドシナ (現在 のカンボジア、ベ トナム)に編入 された。

フランス支配か らの独立は、1954年 に開催 され たイン ドシナ和平問題解決を目的 としたジュネー ブ会議 によ り実現 した。独立後 は、軍部、王室 等の間で対立が続 き、冷戦 にも巻 き込まれ る形 で内戦が泥沼化 した。ベ トナム戦争が終結 した 1975年に王政が廃止 し、人民革命党(LaoPeople's RevolutionaryParty:LPRP)による社会主義一党 政権 による 「ラオス人民民主共和国」が樹立 さ れた。 1986年 の第4回党大会 において、 「チ ン タナカー ン ・マイ (新思考)」と呼ばれ る改革 政策が打ち出 された。 この政策 は、漸進的な市 場経済‑の移行 、経済開放政策である。 ラオス はチンタナカーン ・マイ政策により市場経済化、

国有企業の民営化等の改革 ・開放政策 を進 めて きてい る。 ラオスは、 1997年

AS E AN

に加盟 し た。

なお、本論文は、文部科学省科学研究費補助 金基盤研究C 「アジア ・太平洋のフロンティア 地域 の国際経営」 (課題番号18530309)の研究 成果でもある。

1

節 ラオスの経済 ・産業政策の推移

1. ラオスの経済政策の推移

ラオスの経済 ・産業政策の建国後の歴史 とい う視点か らみ ると、以下のよ うに分 けることが できる(1)0

第 1期 は、1975年か ら1985年 までの社会主義 国家建設期である。社会主義経済を基盤 として 発展 させ るとい う政策 を採 り、企業の国有化、

生産手段の国有化、貿易の国家独 占、合作社 に よる農業集団化、な どを実行 した。

第2期 は、1986年か ら1997年までの経済改革 期である。1986年 にチンタナカーン ・マイ とい う、社会主義体制下での市場経済‑の移行、経 済開放政策に転換 した。 この改革政策では、国 営企業の経営 自主権の付与、国営企業の民営化、

民間部門の公認、価格や農業の 自由化、外資の 積極的導入、貿易の国家独 占の撤廃、な どの改 革政策 を行 った。

第3期は、1997年のアジアの通貨危機か ら現 在までの経済開発が課題 となっている時期であ る。アジアの通貨危機 により外資の流入が大幅 に減少 し、 さらに同時期 にラオス政府 は中央銀

(2)

行 か らの借入金 に よって公共事業投資 を行 いイ ンフ レー シ ョンを引き起 こ し、経済が急速 に悪 化 した。 その後

2 0 0 2

〜2 0 0 3

年 頃に経済が安定 した

。2 0 0 3

年 か ら現在 までは、比較的順調 に経 済が推移 してい る。

2 0 0 8

年 に生 じたアメ リカの金融危機 をきっか けに した世界的な経済不況 の影響で、 ラオス経 済の成長がやや鈍化 してきてい る。

2.

ラオス経済の現状

ラオスの

1

人 当た りの国民総所得

( GNI ) ( 2 0 0 7

午)は

5 8 0

ドル、物価 を考慮 した購 買力平価 に も

とづ く

1

人 当た り

GNI( PPP)

1 , 9 8 0

ドル で、

まだ最貧 国の水準である(2)

1

人 あた りの

GDP

(国内総生産)の年 間成長率 をみ る と

、1 9 7 5‑2 0 0 5

年 の年 間成長 率 は年 平均

3

.4%

、1 9 9 0‑2 0 0 5

年 の年 間成長率は年平均

3. 8%

である(3)

ラオス経済の

GDP

成長率 は

、2 0 0 3

年 が

5. 8%

2 0 0 4

年が

6 . 8 %、2 0 0 5

年が

7. 3 %、2 0 0 6

年が

8. 3 %

2 0 0 7

年 が

8. 0%

と堅調 に推移 してい る(4)。特 に、

工業、電力 、鉱業(主 に金 と銅)部 門の成長 が顕 著である。サー ビス部 門も順調 に成長 し

、2 0 0 7

年 には

7 . 2 %

成長 した。特 に観光 は好調 で、海外 か らの旅行者 は増加 し

1 4 0

万人 となった。観 光 の発展 は、宿泊施設 な どの投資 を促進 した。農 林業 の部 門は、 ラオス人 口の

4 /5

以上 を 占め、

ラオス経済に とって大 きいセ クターである。

ラオス経済における民間部門は徐々に拡大 し、

各種 の企業が増加 してい る。企業 に関す る法整 備 として企業法や投資奨励法 な どを制定 した。

消費者物価指数の年間上昇率をみると

、1 9 9 0‑

2 0 0 5

年 は年平均

2 8. 0%、2 0 0 4‑2 0 0 5

年 の年平均

7. 2%

と、近年物価 が安定 して きてい る(5)

。2 0 0 7

年 は、消費者物価 上昇率 は

4. 5 %

と低 い水 準 に 落 ち着いた。

ラオ ス‑海 外 直接 投資(FDI)は近年順調 に増 加 し、特 に電力 と鉱業が拡大 してい る

。2 0 0 7

年 の

FD

Iは7億

7 , 0 0 0

万 ドル と、前年 よ り約

2 0 %

増 加 した(6)0

輸 出は、銅 と金 な どの鉱物 、縫製 、電気 ・電

4 0

国際経 営論集 No.38

2 0 0 9

子、農産物 な どが増 えてい る。

ラオスの外貨準備 は

、2 0 0 4

1

月 の

2

3 0 0

万 ドル か ら

、2 0 0 7

1 2

月 には 5億

3 , 0 0 0

万 ドル に増加 した。 ラオス政府 の財政赤字は

、2 0 0 7

年 度 で は

GDP

3 . 1 %

、2 0 0 5

年 よ り半減 して い

る(7)0

ラオス政府 は

、2 01 0

年 までに

WTO(

世界貿易 機 関)に加 盟す るの を 目標 として、貿易 、投資 環境 を改善す るための政策 を実施 してい る。 ま た、 ラオス政府 は

、2 0 0 6 ‑2 01 0

の 5年 間で年平 均

7. 5 ‑ 8. 0 %

GDP

成長率 を達成す るこ とを 目標 とす る第6期社会経済計画 を策定 した(8)。 この 計画では、農業、イ ンフラス トラクチャー、教 育、お よび健康管理 の開発 を最優先 させ て、統 治、民間部 門開発、お よび天然資源管理 を含む 重要 な領域での改革 を加速す ることを求 めてい

る。

3.外国為替政策

ラオス政府 は

、1 9 8 9

年 にそれまでの複数 の公 定為替 レー トを一本化 した。その後、公定為替 レー トは1米 ドルが720キープ前後で安定 してい た。 しか し

、1 9 8 5

年イ ンフレが再燃 した ことで 市場 レー トが下落 し、公定為替 レー トとの帝離 幅が拡大 したため、同年 に公定為替 レー トは廃 止 され、管理 フロー ト制 に移行 した(9)。

1 9 8 7

年以降タイバーツの急激 な下落 をきっか け としたアジアの通貨危機 の影響、貿易赤字 に よる外貨不足、インフレの克進などにより、キー プの為替 レー トは対 ドル に対 して大幅に下落 し た。 その後、 さらに下落が加速 し

、2 0 0 2

年7月 には

、1

ドル

1 0 , 0 0 0

キー プ を割 り込む までの水 準 となった

。2 0 0 3

年度 以降 は

、1

ドル

1 0 , 0 0 0‑

1 1 , 0 0 0

キープの範 囲内でおおむね安定的に推移 していた

。2 0 0 8

年か ら米 ドル安 の影響 もあ り、

キープがやや強 くな り

、2 0 0 9

2

月末の レー ト は、

1

ドルが

8、 4 8 0

キープ程度 である。

2

節 ラオ ス の人 的 資 源 ・貧 困 ・教 育

(3)

図表1 ラオスの人口 ピラミッ ド (2008年)

14 12 10 8 6 4

+75746964595449叫‑93429241914‑9.4ll一一lll一llIIlO505050505050507665544332211

0

2 4 6 8 10 12 14

(出所 :NationalStatisticsCentreoftheLaoPDR(2006),p.23

ラオスの人 口は、574万7,587人 (2006年)で、

首都 ビエ ンチ ャ ンの 人 口は35万5,554人 で あ る(10)。 ラオ スの国土面積 は23万6,800平方 キ ロ メー トルで、人 口密度 は 1平方 キロメー トル 当 た り24人である。 ラオスは、国土面積 の割 りに 人 口が少 ない国である。 2015年 には、ラオスの 総 人 口は 、 約670万人 に な る と予想 され て い る(ll)。 なお、年 間人 口増加 率は、 1975‑2005年 で は年 平均2.2%で あったが、 2005‑2015年 で は年 平均1.7%と低 下す る としてい る(12)。 ラオ スの人 口の内、農業人 口が約82%を占める(13)0

ラオスの人 口ビラ ミッ トは、図表 1である。

ラオスは、近年人 口抑制策 な どによ り出生率が 低下 してきてい る。人 口1000人 あた りの出生数 をみ る と、 1995年 で41.3人、 2005年 で34.7人、

2006年 で33.7人 と低下傾 向にある(14)。女性 1人 あた りの合計特殊 出生率 をみ ると、 1970‑1995 年 の年 平均 で は6.4で あったが、 2000‑2005年 の年 平均 は3.6と大幅 に低 下 してい る。 人 口に 占める15歳以下の人 口の割合 は、2005年 の39.8

%か ら、2015年 では32.8%に低 下す る と予想 し

てい る(15)0

近年 医療の進歩等のためラオスの平均寿命 は、

延びてきてい る。平均寿命 は、1995年 では52歳 であったが、2005年 は61歳、2006年 は61.7歳 と な り、高齢者 の人 口が増 えてい る。 また、人 口 1000人 あた りの死 亡数 をみ る と、 1995年 で は 15.1人であったが、2005年 は9.8人、2006年は9.4 人 と低下 している(16)0

ラオスの貧 困指標 をみてみ よ う。所得貧困ラ イ ン未満 の人 口は、 1日1ドル以下では27.0%、

1日2ドル以下では74.1%とかな り高い(17)。

ラオスの15歳以上の成人 の平均識字率は68.7

%で、他 のアジア諸国 (ベ トナム90.3%、 ミャ ンマー89.9%、カ ンボジア73.6%)と比較 して も低い水準である(18)0

ラオスの教育制度は、5年 間の初等教育 (小 学校)、3年 間の前期 中等教育 (中学校)、3年 間の後期 中等教育 (高等学校)である。義務教 育は5年間の小学校課程 である。高等学校 レベ ルの職業訓練学校 もある。高等教育機 関 として、

大学、専門学校 、職業訓練学校 な どがある。大

(4)

学は3校で学生総数 は約3万人、専門学校 は

3 8

校 で学生総数約3万人である(19)。

ラオスの初等教育純就学率 は

、1 9 91

年 の

6 3 %

か ら

、2 0 0 5

年 では

8 4%

とかな り増 えてい る。 中 等教育純就学率は

、2 0 0 4

年 で

3 8%

である(2

0 ) 。

3

節 ラオスの外国投資法 と国際経営

1.投資の奨励

ラオスでは

、1 9 8 8

年 に外 国投資 に関す る初 め ての法律 として 「外 国投資奨励法」が制定 され た。 この法律 は、外 国企業 を積極的に誘致す る ことを 目的に した ものである。外 国投資奨励法 は

1 9 9 4

年 に一部改正 された

。2 0 0 4

年 には、国内 の投資 と海外 の投資 を区別 しない ことを原則 と す る、 「改正外 国投資奨励 法」 が制定 された。

本節 では、 この改正外国投資奨励法 (以下では 外資奨励法 と明記す る)の主要 な内容 、お よび ラオスでの外国投資環境の特徴 について述べ る。

外 国投資家は、国家の安定 を脅かす活動、現 在 、今後 の環境、健康若 しくは国の良俗 に対 し 悪影響 を及 ぼす ものを除 く全ての分野の生産、

事業、及び ラオスの全ての投資地域 に投資す る ことができる。政府 は、奨励す る分野 ・投資地 域‑投資す る外国投資家に対 して、関税、租税、

規則 、情報 の提供 な どの便宜 を与 える。 (外資 奨励法第3条) ラオスは外 国企業の投資 に対

して、優遇措置 を設 けて奨励 してい る。

ラオスにお ける外 国投資家の財産及び投資 し た ものは、 ラオスの法律 によ り、国有化 されな い ことを含 め、徴用や没収 され ることな く保護 され る。 ただ し、公共利用 の必要がある場合 を 除 くが、法律 の規定 に基づ き補償金 を受取 るこ とができる。 (外資奨励法第4条) 以上の規定 によ り、ラオスは外 国企業の財産及び投資 を保 護 してい る。

ラオスは、外国企業 を積極的に誘致す るため に、 ヴィェ ンチャン工業団地 な どの工場 団地、

輸 出加 工区の整備 を進 めてい る。

4 2

国際経営論集 No.38

2 0 0 9

2.

外国投資の形態

ラオスでは、外 国投資 の形態 について、(∋契 約 に基づ く業務提携、 ②外 国投資家 と国内投 資家 との合弁企業、③

1 0 0

パーセ ン ト外 国投資 企業 を規定 してい る (外資奨励法第5条)0

契約 に基づ く業務提携 とは、 ラオスにおいて 新たな法人 を設立せず、国内及び外 国投資法人 が互いに業務 を提携す ることである。 目的、協 力形態、事業活動の期 間、両者 の権利 、義務 、 責任及び利益 は、契約 に規定す る。 (外資奨励 法第6条) この形態 は、契約 に基づ く事業形態 で、現地法人 を新たに設立 しない形態である。

契約 に基づ く業務提携 は

、1 9 9 4

年 の改正で削除 されたが

、2 0 0 4

年の改正で復活 した。 中国では、

合作企業 といわれ る形態である。

合弁企業 は、 ラオスの法規 に基づ き、外 国投 資家 と国内投資家 との間で、設立、登記 された 事業活動 を行 う共同所有の企業である。合弁企 業 にお ける組織 、経営、活動及び共 同投資家間 の関係 は、両者 間の契約及びその合弁企業定款 に規定 され る。 この合弁企業に投資す る外 国投 資家 は、登録資本 の

3 0

パーセ ン ト以上でなけれ ばな らない。 出資は、現地通貨キープによらな けれ ばな らない。 (外資奨励法第7条) ラオスで は、合弁企業 を設立 して存続す る場合、外資側 が

3 0%

以上出資 しなけれ ばな らない こと、また 資本 は現地通貨 キープで調達す る必要があると い う特徴がある。

1 0 0

パーセ ン ト外 国投資企業 は、 ラオス に設 立 され る‑者 のみの投資 による外国投資企業で ある。その企業設立は新法人又 は外 国企業の支 店 として設立す る。 (外資奨励法第8条) ラオス では

、1 0 0%

外資 出資 の、完全子会社形態 での 直接投資 を認 めてい る。

3.

外資の存続期間

外 国投資企業の年数 は、活動又 はプ ロジェク トの形態、規模及び条件 によ り

、5 0

年 を超 えな い もの とし、政府 との合意 によ り、延長す るこ

(5)

とができるもの とす るが、外国投資企業の年数 は最長

7 5

年 を超 えない とす る (外資奨励法第

1 1

条)。 ラオスでは、外資企業の存続期間 として、

通常は

5 0

年以内、最長 は

7 5

年以内である。 この 投資 ライセ ンス (存続期 間) の有効期 限は、

2 0 0 4

年の改正で、合弁企業が

2 0

年か ら

5 0

年 に、

1 0 0%

外資企業 は

1 5

年 か ら

5 0

年 に大幅に延長 さ れた。

このような外資の存続期間の規定は、中国や、

ベ トナムにもある。外資企業には、合弁企業の みな らず

、1 0 0%

外資系企業 にも適応 され る。

ただ し、 この規定は、合弁契約

( 1 0 0%

外資 も 含む)における存続期限の設定であって、新た に契約 を更新す ることによ り企業 を存続す るこ とは可能である。通常、 日系企業では、合弁契 約期限の時期 に相手方パー トー と協議 して、新 たな合弁契約 を締結 して、企業 を存続 させてい る場合 も多い。

4.外国投資家の権利、恩恵及び義務

外国投資家の主要な権利 として以下を規定 し てい る。法律 に基づいた設立及び生産活動事業 において、政府か ら便宜を受けることができる。

自己の事業活動か ら取得 した正 当な権利及び恩 恵の保護 を受けることができる。 自己の資産に 対 して所有権者 であること。必要であれば外国 人労働者 を雇用できるが、企業全労働者の

1 0%

を上回ってはな らない。 ラオスの関連機 関に登 記 した知的財産は、保護 を受けることができる。

法規 に基づいて、関税、租税及び他 の手数料 に 関す る責務 を完全に果た した後、利潤、資本及 び他 の収入 は、ラオス国内の銀行 を通 して本国 又 は第三国に送金す ることができる。 (外資奨 励法第

1 2

条)

以上の規定で、外資の資産 (土地の所有権 は 除 く)の所有権 と知的財産権 を保証 しているこ と、外国人は全労働者 の

1 0%

以下であるとい う 外国人制限、利益な どの海外送金 を認 めている こと、が重要である。 なお、ラオスは、土地に ついては、所有権ではな く、使用権 とい う権利

が認 め られている。

外国投資家の主要な義務 ・責務 として以下を 規定 している。 ラオス人労働者の雇用に関 して 優先権 を与えると共に、技術移転 を含 めて、ラ オス人労働者‑特別 な技術の構築 とレベル 向上 を図る。環境の保護、国民に対 し、国家の安全 に対 し、又は社会の治安に対 し悪影響 を及ぼす 事業 を営まない。保険及び社会保障法に基づき 保険及び社会保障を設 ける。投資奨励管理委員 会 に対 し、生産活動、当該企業の活動報告 をす る。 (外資奨励法第

1 3

条)以上の規定で、 ラオ ス人労働者の雇用に関 して優先権、環境の保護 な どが重要である。

5.

外国投資奨励

外資企業が政府か ら奨励 を受ける分野 として、

①輸 出のための製品生産、(診農林業、農林加工 及び手工業、③加工 ・技術活用産業、先端技術 ・ 科学 ・開発研究活動、環境 ・生物種の保護、④ 人的資源 開発、労働技能 ・国民の健康 を守 る活 動、⑤イ ンフラ建設、⑥重要産業の生産のため の原材料、機材生産活動、⑦観光産業開発、中 継 サー ビスがある (外資奨励法第16条)。 ラオ スの投資奨励業種は、輸出、農林、加工、イ ン フラ、観光が中心で、高度分野に限定 している わけではない。

6.奨励を受ける地域

外資企業が奨励 を受ける地域 として、政府は、

地理的、経済社会状況 によって、次の3ヶ所 に 分けた外国投資奨励地域を定めている。第 1地 域は、投資に便利な経済インフラス トラクチャー の無い山岳、高原 、平野地域である。第2地域 は、部分的に投資に便利 な経済イ ンフラス トラ クチャーが保証できる山岳、高原、平野地域で ある。第3地域は、投資に便利 な経済インフラ ス トラクチャーが十分に保証できる山岳、高原、

平野地域である。 (外資奨励法第

1 7

条)

ラオスでは、イ ンフラが整 っていない地域 を

(6)

厚 く投資奨励 に関す る優遇措置 を講ず ることに よって、内陸や 山岳部 に外資企業 の誘致 を行 っ てい る。

7.

奨励政策

外資企業が奨励分野お よび奨励地域 に進 出 し た場合、以下の よ うな関税 、租税面での奨励政 策 を受 けることができる。第 1地域 に投資 した 場合、7年 間利潤税 が免 除 され、以後全利潤 の 10%の税 を課す。第2地域 に投資 した場合 、5 年 間利潤税 が免 除 され、以後3年 間15%の税 の 半分 を減率 した利潤税 を課 し、以後全利潤 の15

%の税 を課す。第3地域 に投資 した場合、 2年 間利潤税が免 除 され、以後2年 間

2 0%

の税 の半 分 を減率 した利潤税 を課 し、以後全利潤 の

2 0 %

の税 を課す。上記 の奨励政策 の外、外国投資企 業 は①利潤税 の免 除又減免 、②部品、原材料、

生産設備 な どの輸入 関税及び輸入税 の免 除、③ 輸 出製 品の輸 出関税免 除.な どを受 けることが できる。経済特 区、工業地域、国境貿易 区及び その他特別経済地域 に関 しては、各々の地域 の 規則 、特別法 に基づ いて履行 され る。 (外資奨 励法第18条)

ラオスは、他 のアジア諸 国 と比較 しても遜色 ない外資に対する奨励優遇政策 を行 うことによっ て、積極的に外資導入 をはかってい る。

8.外国投資の推移

ラオス‑の外国投資 を国別 に見 る と、タイが 圧倒 的に多 く、その他 の国では中国、 日本 、ア

メ リカ、 フランスな どが多い。

ラオス‑の外国投資 を業種別 の累計額

( 2 0 0 7

年 まで)で見 ると(22)、第 1位 は電力で3億6,053 万米 ドル、第2位 は農業お よび林業で1億8,383 万米 ドル 、第3位 はサー ビスで1億5,466万米

ドル 、第4位 は工業 お よび手工業 で1億3,418 万米 ドル、第5位 は建設 で1億3

, 0 6 0

万米 ドル、

第6位 は鉱業お よび燃料 で1億

1 , 5 2 7

万米 ドル、

第7位 は木材加 工で5,696万米 ドル 、第8位 は 44 国際経 営論集 No.38

2 0 0 9

ホテルお よび観光で5,517万米 ドル、の順である。

ラオス‑の外国投資 は、エネル ギー、農業 ・林 業、サー ビス、工業 ・手工業、建設 ,鉱業 ・燃 料 な どが多い。

日系企業 は、スズキの合弁 による2輪車工場 (SanthiphabSuzuki)な どの工業 ・手工業関連 、 農業関連、木材 関連 、サー ビス ・観光関連 の企 業が存在す るが、 日系進 出企業の数 は現状では 極 めて少 ない。

3

節 ラオスの労働法 と人的資源管理

ラオスは、1994年3月14日に改正 ラオス労働 法 (以下では労働法 と明記す る)を施行 した(23)。 本稿 では、 このラオス労働法 について詳 しく分 析す る。

1.一般的規定

(1)差別 の禁止

政府 は、人種、皮膚色、性別 、宗教、政治的 意見、社会的地位 によ り差別す ることな く、使 用者 と労働者がその良好 な関係 か ら相互利益 を 導 き出す ことを保証す る。使用者 は、労働者 に 対 し、正 当な賃金、安全 な労働環境 、社会的保 護 を提供 しなけれ ばな らない。 (労働法第2条)

労働者 を人種、皮膚色、性別、宗教、政治的 意見、社会的地位 によ り差別す るこ とを禁止 し てい る。

( 2)

労働者 と使用者

本法 において、労働者 とは、労働法、労働規 則、雇用契約 によって規定 され る賃金 ・給与お よび種々の恩典 と交換 に、使用者 の監督 の もと で勤労す る者 を意味す る。使用者 とは、労働者 を雇用す る個人 もしくは法人 を意味 し、労働法、

労働規則、雇用契約 によって規定 され る賃金 ・ 給与お よび種々の手 当を支払わなければな らな い。 (労働法第2条)

労働者認定の基準 として、賃金 ・給与 を支払 われ る者で、使用者の監督のもとで勤労する者‑

(7)

使用従属関係 にあることになる‑ である。具体 的には、正社員 (期限の定めのない契約 による) のな らず、契約社員 (期限の定めのある契約 に

よる)、 日雇 い労働者 な どを含 む と解せ るであ ろ う。 このラオス労働法による労働者の規定は、

日本の労働法の規定 とほぼ同 じで ある。使用者 認定の基準 としては、労働者 を雇用す る個人 も

しくは法人である。

( 3)

強制労働 の禁止

使用者は労働者 に労働 を強制 してはな らない。

「強制労働」 とは、雇用契約 に合致せず、 自発 的意志の欠如のもとで労働者 に科 された労働 を 意味す る。 (労働法第4条) ラオス労働法では、

強制労働 を厳 しく禁止 している。

この強制労働 の禁止 は、 ラオスは、ILOに加 盟 してい るこ とか ら、 「ILO強制労働 に関す る 条約

(1930年第29号条約) を反映 した もので あろ う。 この条約 の内容 は、あ らゆる形式の強 制労働 を廃止す ることである。条約 では、強制 労働 を、処罰の脅威 の下に強制 され、 自らの意 思に発す るものでない一切の労務 と定義 してい る(24)

( 4)

年少者 に対する雇用制限

使用者 は、15‑18歳 の年少者 を雇用す ること ができるが、1日6時間、週36時間を超 えて働 かせてはな らない。使用者 は年少者 に対 し、重 労働や健康 を害す る業務に就かせてはな らない。

すべての社会 ・経済部門における15歳未満の年 少者 の雇用 を禁止す る。 (労働法第37条)

この年少者 に対す る雇用制 限は、 「ILO就業 の最低年齢 に関す る条約」 (1973年第138号条約) を反映 したものであろ う。 この条約の内容は、

児童労働の実効的な廃止 を確保 し、就業の最低 年齢 を年少者の心身の完全な発達に適合す る水 準まで全身的に引き上げることを 目的 とす る。

本条約 に規定す る最低年齢 は、義務教育終了年 齢で15歳 を下回 らない もの としている。

2.

雇用 と解雇

(1)労働者の雇用

使用者 は、事業所の必要に応 じて労働者 を雇 用す る権利 を有す るが、ラオス人 を優先的に雇 用 しなければな らない。労働契約 は使用者 と労 働者の間において対等の立場で国家の諸規則 に 違反す ることな く、文書にて結ばれなければな

らない。 (労働法第6条)

( 2)

労働契約

労働契約 とは、労働者 と使用者 も しくはその 代理 との間に結ばれた契約である。労働契約は 文書で結 ばれなければな らない。すべての使用 者は労働契約 を尊ばなければな らない。労働者 はその専門 と経験を通 じて、労働契約 に規定 さ れている労働者 としての義務 を完全に遂行す る よ うに求め られ る。使用者 は、労働者 に対 し、

労働契約 に規定 された業務 と任務 を提供 しなけ ればな らない。使用者 は、両者 によって合意 さ れた労働契約 に従い、賃金 ・給与な らびに正当 な給付金 を支給 しなければな らない。労働契約 のなかには、職場お よび業務内容、使用者 によ

り提供 され る報酬の水準やその他 の恩典 につい て言及 されなければな らない。労働契約 の締結 とは、労働者 を雇用す るとい う一つの合意の形 成 を意味す る。 (労働法第12条)

労働契約 は、文書にて締結 されなければな ら ない。 しか しなが ら、一時的な業務や 日雇い仕 事、仕事量の少ない業務のよ うに雇用条件、業 務 内容 によっては、労働契約 は 口頭で行 うこと ができる。労働契約は、期限付 きでも無期限で も締結す ることができる。期限付 き労働契約の 期限は、使用者 と労働者本人 との合意 に基づい て決 め られなければな らない。 (労働法第13条)

以上の規定によ り、ラオスの労働契約 は無期 限労働契約 と期限付 きの労働契約があ り、原則 として労働契約 は文書によることが必要である としている。

(3)労働契約の終了

期限付 きであれ無期限のものであれ締結 され

(8)

た労働契約 は、両 当事者 の合意 の上で終了 させ ることができる。一方の当事者 によ り無期限の 労働契約 を終了 させ る場合 、専門技術職 につい ては少 な くとも45日前、現業労働者 については 15日前 に相手方‑予告 しなけれ ばな らない。期 限付 き労働契約 をもつ 当事者 にあっては、契約 満 了の少 な くとも15日前 に、意思の確認 を通知 し合わなけれ ばな らない。労働契約 の継続 を希 望す る場合、両当事者 は新労働契約 を締結 しな けれ ばな らない。 (労働法第15条)

( 4

)解雇 による労働契約の終 了

労働者 が必要 とされ る専門技術 的能力 を有 し ていない場合、不健康 で労働 を継続 できない場 合、使用者が操業環境 を改善す るために労働者 数 を減少 させ る必要がある場合、使用者 は解雇 に よって労働契約 を終了 させ ることができる。

その場合、契約終了の理 由を説 明 し、少 な くと も45日前 に予告 しなけれ ばな らない。予告期間 中において、使用者 は労働者 に対 し、 1週間当 り1労働 日を職探 しのための有給休暇 として与 えなければな らない。労働契約 を終了す る前に、

使用者 は当該労働者 の能力や健康 に応 じて適切 な配置転換 を検討 しなけれ ばな らない。適切 な 仕事 がない場合 のみ、労働契約 を終了できる。

事業所が、操業環境 を改善す るために労働者 数 を減少 させ る必要がある と考 えた場合、使用 者 は労働組合 も しくは労働者代表 との協議 にお いて影響 を受 ける労働者 の リス トを作成 し、労 働監督機 関‑通知 しな くてはな らない。 同時に 使用者 は少 な くとも45日前 に解雇予告 とその説

明を与 えなけれ ばな らない。

上記 のいずれかの理 由に よ り労働契約 を終了 す る場合、使用者 は労働者 に使用期 間に応 じた 補償 を与 えなけれ ばな らない。補償 の額 は、最 終月給の10パーセ ン トに雇用月数分 を掛 けた金 額相 当 とし、解雇時に支払われ なけれ ばな らな い。3年以上勤務 した労働者 に対 しては、最終 月給の15パーセ ン トに雇用月数分 を掛 けた金額 相 当 とす る。給与が固定 されていない出来高賃 金制度 に基づいて支払われてい る労働者 につい 46 国際経 営論集 No.38 2009

ては、補償額 は、労働契約終了前3か月間に受 け取 った賃金 ・給与の平均 を基準に して算定 さ れ る。 (労働法第16条)

(5)労働者の責 に帰すべ き事由に基づ く解雇 使用者 は、以下に該 当す る労働者 に対 し、補 償金 を支払 うことな く労働契約 を終了す る権利 を有す るが、少 な くとも3日前 に通知 しなけれ ばな らない。 (∋不誠 実 な行動 を とった り、使 用者 の財産 に故意 に多大な損害 を与 え しめた場 合。ただ し、そのよ うな違法行為 に対 し然 るべ き証拠 が必要 である。 ②使用者 か らの再三の 警告 に も関わ らず就業規則 に違反 した者。 ③ 正 当な理 由な しに連続4日間以上欠勤 した者。

④裁判所 の判決 によ り禁 固刑 に処せ られた者。

(労働法第19条)

(6)使用者 による労働契約終了の手続 き 使用者 は、労働者 の違法行為 に対 し事前 に警 告 を与 える一方で、その よ うな違法行為が止 ま ない場合、労働契約 を終了 させ る権利 を有す る。

使用者 は、少 な くとも労働契約 の終 了5日前 に その活動 を管轄す る労働監督機 関に通知 しなけ れ ばな らない。使用者 が、労働監督機 関の意見 も聞かず に、また当該 の労働組合や労働者代表 に通知 を怠 るかたちでの労働契約 の一方的な終 了や労働者 の解雇 は、禁止 され る。通知 日よ り 15日以内に上記 の機 関か ら回答 が得 られ ない場 合、労働契約 の終了は了承 された もの とみな さ れ る。そのよ うな場合、使用者 は、理 由を明記 した上で労働契約 の終了を当該労働者 に文書 に て通知 しなければな らない。使用者 は労働者 が 契約終了までに勤務 した給与 とその他 のすべて の給付金 を、法律 と規則 に従 って支払わなけれ ばな らない。 (労働法第22条)

ラオスの 日系企業 において、使用者 による従 業員の労働契約終了で注意 を有す るのは、労働 者 に事前 に警告 を与 えた上で改善 しない場合 、 労働契約 を解 除できるが、そのことを事前 に労 働監督機 関に通知 しなけれ ばな らない とい う点 である。 ラオスでは、社会主義 の体制であるこ

(9)

とか ら、従業員 の解雇 に関 して も監督官庁‑の 通知 と承認 が必要である。

3.労働 時間 と休 日

(1)労働 時間

労働者 の労働 時間は、賃金 ・給与の支払形態 の如何 を問わず、週6日とし、1日8時間、週 48時間を超 えてはな らない (労働 法第25条)。

ラオスの労働 時間制度 は、1日8時間、週48時 間、週6日以内 とい う規定である。 ただ し、特 殊 な業務 (放射線 、ガス、危険な化学品を取 り 扱 う業務、坑 口や地下 トンネル 、水 中、高所 に おける業務) に就 労す る労働者 の労働 時間は、

1日6時間、週36時間を超 えてはな らない とし てい る。

この労働 時 間規 定 は、「ILO工場 的企 業 にお ける労働 時間 を1日8時間かつ 1週 間48時間に 制 限す る条約」 (1919年第 1号条約) を反映 し た ものであろ う。 この条約 の内容 は、あ らゆる 形式の強制労働 を廃止す ることである。条約 で は、同一の家 に属す るもののみ を使用す る企業 を除 く、全ての公私の工場的企業の労働時間は、

1日8時間・1週48時間を越 えてはな らない と す る条約である。

(2)労働 時間の算定

始業時刻前お よび就業時刻後 の技術的準備 時 間、時間制や交代制の職場 における1時間当 り 15分 を超 えない休息、お よび交代制 における 1 交代 当 り45分間の食事休憩 は労働 時間に算定 さ れ る。使用者 は、

2

時間の労働 に対 し少 な くと も 5‑ 10分の休憩 を与 えなけれ ばな らない。交 代制の仕事 は、労働者 が適切 に休憩 が とれ るよ う配慮 され なけれ ばな らない。 労働 時間に算定 され る時間については、職場 の就業規則 に明記 され なけれ ばな らない。 (労働法第

2 6

条)

(3)時間外労働

使用者 は、労働組合 、労働者代表お よび労働 者本人か らの事前の同意 を得 た上で、必要 とあ

れば労働者 に時間外労働 を要請す ることができ る。時間外労働 は、 自然災害や不慮の事態 を除 いて、1か月 当 り30時間を超 えてはな らない。

時間外労働 は1日当 り3時間を超 えてはな らな い。毎 日の継続的な時間外労働 を禁止す る。

時間外労働 が必要 とされてい るところでは、

使用者 はまず労働組合か労働者代表 と協議 をも ち、当該部署の労働者 に通知 し、時間外労働 の 必要性 について説 明を与 えなけれ ばな らない。

時間外労働 に対 し法定の時間外手 当を支給 しな けれ ばな らない。時間外労働 が 1か月 当 り30時 間を超 える場合 、使用者 は労働監督機 関か ら事 前の承認 を受 けなければな らない。なおその際、

労働組合 も しくは労働者代表 よ り同意書 を添付 す るもの とす る。 (労働法第27条)

ラオスの 日系企業 において、残業 による時間 外労働 で注意 を有す るのは、時間外労働 が 1か 月 当 り30時間を超 える場合 、労働監督機 関か ら 事前の承認 を受 けること、お よび労働組合 もし くは労働者代表か ら同意 を得 る必要があるとい う点である。

(4)週休 日および公休 日

労働者 は、週休 として毎週 1日全 日を休養 日 とす る権利 を有す る。休養 日は、労働者 と使用 者 との合意の もとで 日曜 日も しくはその他 の曜 日に設定 され る。公休 日は、政府 によって制定 され る。 (労働法第28条)0

この週休 日お よび公休 日の規 定 は、「ILO工 場 的企 業 にお け る週休 の適応 に関す る条約」 (1921年第14号条約) を反映 した ものであろ う。

この条約 は、労働者 は7日ごとに1度、少 な く とも継続 して24時間の休息 を受 けることができ るよ うに規定 している。 さらに、 この休息は、

できるだけ全 ての労働者 に対 して同時に与 える こと、な らびにその国又は地域の慣習や伝統 に よって定 まってい る休息 日に合致す ることが要 求 されてい る。

(5)年次休暇

無期限労働契約お よび1年以上の労働契約 の

(10)

もとで働 く労働者 は 1年間の勤務 の後15日の年 次休暇、過酷 な労働 な どに就いている労働者は 18日の年次有給休暇が賦与 され なければな らな い。週休 日お よび公休 日は、年次休暇に含 まれ ない。 (労働法第30条)

この年次休 暇 の規 定は、

「 I LO

年次有給休暇 に関す る条約」(1936年第52号条約) を反映 し た ものであろ う。 この条約 は、継続 して 1年就 労 した労働者 については、6労働 日の有給休暇 を与えなければな らない と規定 している。 ラオ ス労働法では

、I LO

の年次有給休 暇規定

6

日よ

り多い、年13日の有給休暇 を定めている。

4.就業規則

(1)就業規則

労働者は就業規則 を遵守 しなければな らない。

就業規則 は、法律 と規則、事業所の内部就業規 定、使用者 と労働者 によ り締結 された労働契約 によって規定 され る労働者 の権利 と義務 よ り構 成 され る。事業所の内部就業規則が法的な効力 を発す るために、ラオスの労働法及び規則 に準 拠 して制定 され、労働監督機 関によって事前承 認 を受 けなければな らない。事業所の内部就業 規則は、すべての労働者 に周知 され るよ う、掲 示 されなければな らない。 (労働法第31条)

(2)就業規則違反 に対する懲戒

就業規則 に違反す る労働者 に対す る警告にも 関わ らず、前向きな改善がみ られない労働者は、

法律 の規定に従い、他 の業務‑の一時的な異動 や退職 を強制 され る。労働者が故意に事業所の 資産 に損害を与 えた場合、その損害に対 し補償 金 を支払 うよ う命 じられ る。 (労働法第32条)

5.賃金

(1)賃金 ・給与

賃金 ・給与 とは、使用者 が労働者 に対 して支 払わなければな らない報償 で、通貨によって支 給 されなければな らない。賃金 ・給与は、月の 48 国際経営論集 No.38 2009

始めか終わ りに、あるいは業務の完了の前か終 わ りに支払われなけれ ばな らない。 (労働法第 38条) 賃金 ・給与は、確定 日に遅滞す ること な く全額現金で直接労働者 に支払われなければ な らない。政府規定 もしくは労働者 と使用者 の 特殊な合意によって規定 されている場合はこの 限 りではない。 (労働法第41条)

この賃金 ・給与 の規定 は、

「 I LO

賃金 の保護 に関す る条約」 (1949年第95号条約) を反映 し た ものであろ う。 この条約 は、原則 として賃金 は現物支給ではな く、通貨でのみ支払われ ると 規定 してい る。

(2)同一価値労働同一賃金の権利

業務内容が、質、量、価値の観点か ら同等で あれば、性別、年齢、国籍、少数民族の区別 な く、同一の賃金 ・給与が労働者 に支払われなけ ればな らない。ただ し、別個の労働契約 をもつ 外国人労働者 は この限 りではない。 (労働法第 39条)

(3)賃金の決定

労働者 もしくは労働組合、労働者代表は、賃 金 ・給与に関 して使用者 と交渉す る権利 を有す る。政府 もしくは当該機 関は、各地域の最低賃 金 を定期的に設定す る。使用者は政府 によって 定期的に決 め られた水準 を下回る最低賃金 を設 定 してはな らない。各事業所によって定期的に 決定 された最低賃金 ・給与体系は、政府の検査 ・ 監督下におかれ る。 (労働法第40条)

この最低 賃金 の規定 は、

「 I LO

最低賃金決定 制度 に関す る条約」(1928年第26号条約) を反 映 したものであろ う。 この条約 は、労働者 を保 護す るために最低賃金 を決 める制度 を設 けるよ

うに規定 している。 この条約では、政府 は最低 賃金決定制度の性格 ・形態 ・運用方法は 自由に 決 めることができるが、事前に関係す る労使代 表 あるいは労使団体 との協議、また労使 同数の 委員が参加 した協議が必要である。 このよ うに 決定 された最低賃金は、労使 に対 して拘束力 を 持 ち、権限のある期間の許可な しに労働協約 な

(11)

どで引き下げることはできない と規定 している。

(4)時間外賃金の算定

使用者 は、労働者 に対 し、労働者本人や労働 組合 もしくは労働者代表 との合意 に基づ き、時 間外労働 、週休 日出勤や公休 日出勤 を要請す る 場合 、以下の よ うに時間外労働賃金 を支払わな けれ ばな らない。 (∋通 常の勤務 日の昼 間にお ける時間外 労働 は、通 常の時間給 の150パーセ ン トの割増賃金 とす る。②通常の勤務 日の夜 間 における時間外労働 は、通常の時間給の200パー セ ン トの割増賃金 とす る。③週休 日お よび公休 日の昼間にお ける時間外労働 は、通常の時間給 の250パーセ ン ト、夜間におけるそれ を300パー セ ン トの割増賃金 とす る。午後10時 よ り翌 日の 午前5時までの夜 間交代制 で勤務す る労働者 は、

通常時間賃金 の少 な くとも15パーセ ン トの割増 賃金 とす る。 (労働法第42条)

(5)賃金 ・給与支払期 日

賃金 ・給与は少 な くとも毎月一度確定 日に支 払われ る。賞与な らびに給付金 については この 限 りではない。 出来高払いや時間給労働 につい ては、賃金 ・給与は少 な くとも毎月2度 も しく は16日を超 えない期 日に支払 われ る。

労働者 が、出産、疾病、事故 とい った諸 困難 や緊急事態 に直面 し、賃金 ・給与の前借 りを要 請す る場合、使用者 は必要 に応 じて給与 日以前 の支払 を考慮すべ きである。賃金 の支払 は、勤 労 日に、職場 もしくは職場 に近い ところで労働 者 に支払 われ なけれ ばな らない。 (労働 法第43 条)

(6)一時的業務停止時における賃金 ・給与の 支払

事業所が、使用者 の過誤 によ り生産や営業活 動の延期や 中止の命令 を受 けた場合 、使用者 は この一時的な中断期 間中において も、規定 され てい る最低賃金の50パーセ ン トを下回 らない補 償金を労働者 に支払わなければならない。生産 ・ 営業活動が通常水準 に回復 した場合 、賃金 ・給

与体系は以前 の水準に回復 され なけれ ばな らな い。 (労働法第44条)

6.労働組合 と労使紛争処理

(1)労働組合

労働者お よび使用者 は、合法的なかたちで大 衆 ・社会組織 を創設 し、所有す る権利 を有す る。

そのよ うな大衆 ・社会組織 は、 自らの規則 を定 め、代表者 を選 出 し、管理運営す るとともに独 立 した活動 を行 う権利 を有す る。 またそれ らは ラオス国内の労働連合や 同盟 に属す る権利 を有 す る。 (労働法第3条)

ラオスでは、当然労働組合 を設立す る権利 を 有す るが、組合設立が義務でない。 中国、ベ ト ナムでは原則 として労働組合 の設立義務 がある が、ラオスでは労働組合 の設立は望ま しいが義 務規定はない。

( 2)

労働組合

労働組合が当該部門にお けるそれぞれの規則 に従 って事業所 内に結成 され るべ きである。労 働組合 が存在 しない場合 は、労働者 の代表 が こ れ に代 わる。

労働組合 も しくは労働者代表 は、事業所 内に おいて ① 労働者 の連帯、研修 、労働 規律 の向 上、②事業所 内で策定 された生産計画に従 った 労働 実績 、③使用者 との労働契約お よび苦情の 申し入れ、(彰労働争議の調停‑の参加、⑤賃金、

労働 時間、休憩、労働条件 、社会保 障制度 な ど の使用者 との協議 、に関 して責任 を有す る。

使用者は、労働組合お よび労働者代表に対 し、

活動 の遂行 が可能 となるよ う就業時間内に、毎 月少 な くとも1時間、施設 と建物 を提供 しなけ れ ばな らない。 (労働法第11条)

( 3)

労働争議

使用者 に対す る苦情の申 し入れ後、15日以内 に調整 がつかないかも しくは調整案が実施段階 に移 されない場合、労働者 は調停のために労働 監督機 関に争議 を付託す る権利 を有す る。 労働

(12)

監督機 関が

、1 5

日以 内に争議 を解決 できない場 合、人民裁判所 に提訴できる。 (労働法第

5 7

条)

(4)労働争議の調整

労働監督機 関が

1 0

日以内に利害のための争議 の調整 に失敗 した場合 、その争議 は、 「労働調 停委員会」に付託 され る。 この労働調停委員会 は、労働 監督機 関、労働組合 、使用者お よびそ の他 の当事者 よ り構成 され る。 (労働法第

5 8

条)

おわ りに

‑ラオスでの現地経営の優位性 と劣位性

ラオスの国際経営環境 とい う視点で ラオスの 国際比較優位 な らびに劣位 について考 えてみ よ

う。

ラオスの国際経営環境 の劣位性 として以下が あろ う(25)。

第 1は、 ラオスが内陸国で海 に面せず港 を持 たないため、輸送手段 に制約があることである。

ラオスで生産 した製 品の輸 出、部品や原材料 な どの輸入 をす る場合、陸路でベ トナムや タイか ら輸 出入 しなけれ ばな らないので、輸 出入 コス

トが割高 とな り、時間 もかか ることになる。

第2は、 ラオスは、人 口がわず か

5 7 5

万人 と 少 な く、 また1人 あた りの

GDP

4 8 5

ドル(26)と 低所得水準であるため、 ラオス国内市場が非常 に小 さい こ とである。 そのため、国内市場 を狙

う輸入代替型 による進 出には制約がある。

第3は、ラオスでは部品や原材料な どのサポー トイ ンダス トリー、裾野産業 な どが未発達であ ることである。 ラオスで外資系企業が生産 しよ うとす ると、ほ とん どの部品を海外 か ら調達 し なけれ ばな らない状況 にある。

第4は、 ラオスは依然 として外貨事情が悪 い ため、部品な どの輸入 に不安があることである。

かつて、外貨事情悪化 を理 由に、 ラオス政府 か らオー トバイ組み立ての 日系メーカーに対 して 部品輸入 の差 し止 めを受けたケースがあった(27)0

ラオスの国際経営環境 の優位性 として以下が あろ う。

5 0

国際経 営論集

No . 3 8 2 0 0 9

第 1は、 ラオスでは低廉 な労働者 を利用す る ことができることである。 ラオスの賃金水準は、

隣国のタイ よ りかな り低 い。 ラオスの工場 ワー カーの 1人 当た りの労務費 は月額

4 7 ‑6 4

ドル程 度 (残業代以外の諸手 当を含む直接や間接 の労 務費)であるのに対 して、隣国タイの工場 ワー カーの労務費は月額

2 9 4 ‑3 5 2

ドル程度である(28)。 人 口が希少 なラオス‑外国企業が短期間に進 出

した場合、労働者不足 によ り賃金高騰 の懸念 も あるが、ラオスは人 口増加率が高 く

( 2 0 0 6

年〜

2 01 0

年 の年平均

2 . 3%)

、労働人 口もかな り増加 してい ることか ら、ラオスの賃金 が即座 に高騰 す る とい う状況ではない(29)

第2は、 ラオス語 とタイ語 は語源 を同 じくす るので、タイ人 との意思疎通が容易であること である。 タイの企業が ラオスに進 出す る場合、

コ ミュニケー シ ョンや技術移転がスムーズに進 む可能性が高い。 タイの 日系企業は、タイ工場 をマザー工場 とし、 ラオス工場 を補完的な工場 として、国際分業を しているケースがみ られ る。

第3は、 ラオスでは人民革命党による社会主 義体制が安定 してお り、政治的安定性 が高 く、

社会的秩序 が守 られてい ることである。 また、

温和な国民性 (ほとん どの国民は仏教徒である) もラオスの魅力 とい える。

第4は、潜在 的に豊富な天然資源 が存在す る ことである。金、銀、銅 、サ ファイア、ボーキ サイ ト、石炭、鉛、亜鉛 、スズ、鉄 な どの鉱物 資源 の豊富な鉱床 が確認 されてい る(30)。 また、

豊富な水力発電が可能 な水力資源 がある。 これ らの資源 は、まだ未 開発 なものが多い。

第5は、GMS (大 メ コン圏開発 ) が進展 し てい ることで ある。 ラオス、ベ トナ ム、カ ン ボジア、タイ、 ミャンマー、そ して中国雲南省 のメコン地域6カ国 ・地域 をひ とつの投資 ・生 産市場 して有機 的つなが りを形成 しつつ ある。

ラオスでは、第1メコン国際橋、第2メコン国 際橋 の完成 によ りタイやベ トナム との物流イ ン フラの整備 が進展 してきていることである。

著者 は、 ラオスの首都 ビエ ンチ ャンとタイの ノンカイ を結ぶ第 1メコン国際橋 を実際に渡 っ

(13)

てみた。ガ ソリンを運ぶ タイか らのタンクロー リーや荷物 を積 んだ トラックが多 く走っていた。

また、橋 を渡 りラオスを訪れ る外 国人観光客 も かな りいた。 タイ とラオス との間で活発 な物や 人の交易が行われてい ることを感 じた。

今後の 日本企業の ラオス投資 を展望す ると、

タイ との補完 関係 が重要 になって くるだろ う。

ラオスはタイ と言語的にも文化的にも近いこと、

また地理的にも近いため、 コス ト高 に悩む タイ 日系企業の部 品産業 の進 出先 として比較優位 が あろ う。 ラオスで労働集約的な部 品や工程 を生 産 し、タイで製 品を組 み立て るとい う、工程分 業が成 り立つ可能性 がある。 タイ とラオスはメ コン国際橋 な どの開通で、交通の便が格段 によ くなってきてい ることも有利 な条件 である。 タ イ工場 は、 ラオス工場 に対す る戦略本部機能、

取引ガバナ ンス機能、取引ガバナ ンス機能、需 給 コーデ ィネー ト機 能、販売機能、資本調達機 能、技術移転機 能、研修機能 をもつマザー工場 としての機能 を果たすのである。 ラオスは、タ イのみな らず、ベ トナムや 中国 とも地域補完型 国際分業 を行 う企業 のケース も見 られ る(31)。 な お、戦略本部機能 とは、AFTAの枠組 み の中で どの部品を どの国 ・地域で製造 し、調達す るか とい うバ リュー ・チ ェー ンを企画す る とい う機 能である(32)。取引ガバナ ンス機 能 とは、タイの マザー工場が産業集積地域 に立地す ることで、

相手の探索 ・交渉 ・調整 な どの取引費用 を負担 す ることで、 ラオス工場 の取引費用 は低減す る とい う機能である。需給 コーデ ィネー ト機能 と は、タイのマザー工場が発注元か らオーダー を とり、それ をラオス工場 に回 し発注元の要望 を 細か く指示す る機能である。販売機能 とは、タ イのマザー工場 がラオス工場‑の材料供給機能 お よび ラオス工場か らの加 工部 品輸入機能 を併 せ持つ機能である。資本調達機能 とは、 ラオス 工場設立のための資本や運転資金 をタイのマザー 工場か ら調達す るとい う機能である。技術移転 機能 とは、タイの工場がラオス工場‑の技術者 ・ 経営者 ・トレーナーな どの派遣 による技術移転 の迅速化 を行 う機能である。研修機能 とは、タ

イの工場がラオス工場従業員 の教育研修 を行 う とい う機能である。 日系企業は、アセアンの中 での効率的な製 品分業、工程分業 とい う視点で、

ラオスを新たに考えてみることが必要であろ う。

2008年8月に 日 ・ラオス投資協定が発効 した。

この投資協定は、 ラオス‑の 日本の投資に対 し て、内国民待遇 と最恵国待遇 の原則付与、お よ び規制 の撤廃 ・投資家 との契約遵守義務等が盛 り込まれてい る。 この よ うな投資環境 の改善に よ り、今後 日本企業のラオス投資の拡大が期待 され る。

(1)天川直子 ・山田紀彦編 (2005)、3‑ 4ページに よる区分。

(2)worldBank(2009). (3)UNDP(2007).

(4)ADB(2008),pp.99,pp.205.

(5)UNDP(2007)、邦訳315ページ。

(6)ADB(2008),pp.205.

(7)ADB(2008),pp.205.

(8)ADB(2008),pp.207.

(9)国際協力銀行 (2007)、37‑38ページ。

(10)NationalStatisticsCentreoftheLaoPDR(2007), pp.22.

(ll)UNDP(2007)、邦訳281ページ。

(12)UNDP(2007)、邦訳281ページ。

(13)鈴木基義 (2009)、15ページ。

(14)NationalStatisticsCentreoftheLaoPDR(2007), pp.24.

(15)UNDP(2007)、邦訳281ページ。

(16)NationalStatistics Centre ofthe Lao PDR (2007),pp.24.

(17)UNDP(2007)、邦訳275ページ。

(18)UNDP(2007)、邦訳267,281ページ。

(19) NationalStatistics Centre ofthe Lao PDR (2007),pp.83.

(20)UNDP(2007)、邦訳307ページ。

(21)ラオ ス外 国 投 資 奨 励 法 につ い て は 、The Department for Promotion and Management of DomesticandForeignlnvestment(2006)に英語訳条 文が、 日本アセアンセンター (2004)に 日本語訳 条文があ り、本稿でも参考にした。

(22)NationalStatistics Centre ofthe Lao PDR (2007)、 ウェーブサイ ト。

(23)改正 ラオス労働 法 につ いては、Ministry or

(14)

LabourandSocialWelfare(1999)に英語訳条文 が、

鈴木基義 (2007)に 日本語訳条文 があ り、本稿 で も参考 に した。

(24)日本ILO協会編 (2005)。

(25)天川 直子 ・山田紀彦編 (2005)、244‑255ペー

ジ 。

(26)UNDP(2007)、邦訳315ペー ジ。

(27)天川直子 ・山田紀彦編 (2005)、246‑247ペー

ジ 。

(28)鈴木基義 (2009)、116‑117ペー ジ。

(29)鈴木基義 (2009)、110‑112ペー ジ。

(30)ラオスの鉱物資源 開発 につ いて は、鈴木基義 (2009)、87‑92ペー ジに詳 しい記述 がある。

(31)鈴木基義 (2009)、128‑132ペー ジ。

(32)鈴木基義 (2009)、124‑125ペー ジ。

参考文献

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図表 1 ラオスの人口 ピラミッ ド ( 2008 年)

参照

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