【学位論文審査の要旨】
近年、照射中にmulti-leaf collimator((MLC)位置、線量率およびガントリ角度を動的に 変更する照射技術である強度変調回転治療(volumetric modulated arc therapy; VMAT)
と呼吸同期放射線治療とを組み合わせた、呼吸同期VMATの導入が進んでいる。呼吸同期 VMAT では、照射中にガントリ回転の停止と再開が繰り返されるため、線量投与過程が複 雑になっていることから質保証のための品質管理法が重要な課題となっている。
提出された学位論文「高精度放射線治療の質保証を目的としたリニアックガントリの動 的解析に関する研究」は、X線投影像を用いた独自のアイディアによるガントリ角度の動的 解析による品質管理法を提案している。
論文では先ず、リニアックのアイソセンタ付近に放射線不透過の金属球を多数配置した 円柱形のファントムを配置し、多方向から照射した場合に得られる透過画像から座標変換 を利用してガントリ角度を検出するというユニークな解析方法を提案し、その理論を示し ている。このガントリ角度検出法にはファントムの設置位置の変動に対する補正項も考案 されていることから、実用性が十分に配慮された提案となっている。
次にこのガントリ角度検出法を治療ビームとその透過画像であるポータルイメージに応 用し、ガントリ角度検出能を他の方法と比較し評価している。これにより、提案方法の有 用性、ガントリ角度評価の不確かさを明らかにした。他のガントリ角度検出法としてのガ ントリ角度エンコーダからの出力ログは、角度校正に依存した不確かさが存在する可能性 が示され、提案の方法による定期的な品質管理が必要であることを示した。
呼吸同期VMATでは、照射中にガントリ回転の停止時のオーバーラン、照射再開のため のガントリ回転の巻き戻しが繰り返される。提案の方法を呼吸同期VMATで利用するため には、さらに撮像タイミングの改善が必要となった。この問題の対応策として、ポータル イメージ系と90°の角度差のある位置に設置されているX線管−フラットパネル系と、その 撮像系で利用できるトリガー撮影法を融合させ、治療ビームの on/off 時のガントリ角度検 出を考案した。提案方法について、臨床における呼吸同期VMATを模擬した条件での検証 を行い、その有用性を示した。
以上から、トリガー撮影法による X 線投影像はガントリ回転の動的解析に有用であり、
たとえ患者毎の呼吸同期VMATの線量検証をマシンログ解析で置き換えたとしても、提案 法はガントリ回転の停止および再開による機械的な問題を検出できることから、ログ解析 法を検証するために有用であると結論づけている。
本論文の内容および他の研究成果は、筆頭および共著者を含めてインパクトファクタを 有する国際学術雑誌に 3 篇掲載されていることから、学域が定める学位論文提出の要件を 満たしていることを確認した。
2020年2月4日に行った最終試験としての公聴会における口述試験および口頭試問では、
自身の研究に関する理論とオリジナリティを簡潔に解説し、問題解決能力を有することを
審査員にアピールした。また、他の専門性を有する審査員からの多方面にわたる質問に対 して的確に回答し、理解が得られるように解説したことから、研究分野を中心として十分 な知識を有していることを証明した。さらに、論文で示された動的ガントリ角度解析法の 多施設での実施を審査員から提案されたことは、研究成果が呼吸同期VMATの質保証にお いて有用であることが十分に理解されたことを示している。
以上から、主査および副査は一致して、宮阪遼平君は首都大学東京大学院 人間健康科 学研究科 放射線科学域 博士後期課程の論文審査および所定の最終試験に合格したと判 定し、博士(放射線学)の学位を授与することが適当であるとの審査結果を得たので報告 する。