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(1)世 界 的視 座 か ら考 え る組 織 犯 罪 DepartmentofLawandJustice,CollegeofNewJersey,Trenton,USA 39南 ア メ リ カRubenG.RuizdeOlano,Dr

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世 界 的視 座 か ら考 え る組 織 犯 罪

DepartmentofLawandJustice,CollegeofNewJersey,Trenton,USA 39南 ア メ リ カRubenG.RuizdeOlano,Dr.

FacultyofLaw,CordobaNationalUniversityCordoba,Argentina

〈講 演 会 参 加 者>

40北 村 喜 宣 ・横 浜 国 立 大 学 経 済 学 部 助 教 授(通 訳) 41小 川優 子 ・日本 コンベ ン シ ョ ン ・セ ン ター(通 訳) 42上 田 寛 ・同志 社 大 学 法 学 部 教 授

43坂 本 雅 則 ・横 浜 地 方 検 察 庁 検 察 事 務 官

44菊 地 秀 夫 ・警 察 大 学 校 警 察 政 策 研 究 セ ン ター 助 手 45林 美 津 子 ・本 学 法 学 部 教 授(刑 法)

46安 達 和 志 ・本 学 法 学 部 助 教 授(行 政 法) 47交 告 尚 史 ・本 学 法 学 部 助 教 授(行 政 法 〉

<企 画 實 任 者>

48司 会DillipK.Das,Dr,Professor WesternIllinoisUniversity,Macomb,USA

49事 長 井 本 学 法 学 部 教 授

(200 55

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神 奈 川 大学 法 学 研 究 年報16

UniversityofCentralOklahoma,Edmond,USA 25ア ル ゼ ン チ ンHugoAntolinAlmiron

DirectorofJudicialP()lice,Cordoba,Argentina 26ア ル ゼ ン チ ンNildaNataliaGometz

Lawyer,Cordoba,Argentina

27ア メ リ カ キ ャ ッ ス ル ・西 本 ア メ リ カ 大 使 館 法 務 部(FBI) 28日 内 山 絢 子

科 学 警 察 研 究 所 ・本 学 法 学 部 非 常 勤 講 師(犯 罪 学) 29日 小 原 喜 雄

本 学 法 学 会 長 ・法 学 部 教 授(国 際 取 引 法) 30日 久 保 敦 彦

本 学 法 学 研 究 所 委 員 ・法 学 部 教 授(国 際 公 法)

〈報 告 書 提 出 者>

31ザ ム ビ アFrancisK.Ndhlovu InspectorGeneralofZambiaPolice

32中 国HeBingsong(何 浜 松)

DuputyDirectoroftheCriminalLaw,ChinaUniversityofPolitical ScienceandLaw(中 国 政 法 大 学)

33イ ン ドR.K.Tewari,Dr

ChiefForensicScientist,BureauofPoliceResearchdndDevelopment , NewDelhi,India

〈地 域 責 任 者Coordinaters>

34ア フ リ カObiN.1.Ebbe,Dr,AssociateProfessor

DepartmentofCriminalJustice,SunnyCollegeatBrockport ,

StateUniversityofNewYork,USA

35ア ジ アMangaiNatarajan,Dr,AssistantProfessor

DepartmentofSociology,JohnJayCollegeofCriminalJustice ,

TheCityUniversityofNewYork,USA 36オ セ ア ニ アGregNewbold,Dr

DepartmentofSociology,UniversityofCanterbury ,

Christchurch,NewZealand

37ヨ ー ロ ッ パMag.MaximilianEdelbacher

ChiefoftheMajorCrimeBureauoftheFederalPoliceVienna ,Austria

38北 ア メ リ カRobertJ.McCormack,Dr,AssociateProfessor

54 (201)

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世 界 的視 座 か ら考 え る組 織犯 罪

12ハ ン ガ リ ーIvanMunnich,Dr

NationalInstituteofCriminologyandCriminalistic, Budapest,Hungary

13ポ ー ラ ン ドEmilW.Plywaczewski,Dr,Professor DepartmentofCriminology,UniversityofWarsaw BialystokLawSchool,Bialystok,Poland 14ロ シ アYakovGilinskiy,Dr,Professor

HeadoftheDepartmentSociologyofDeviantBehavior, InstituteofSociologyoftheRussianAcademyofSciences, St.Petersburg,Russia

15ス ロ ベ ニ アDarkoMaver,Dr,Professor SpecialCounselertothePrimeMinisterLubljana,Slovenia 16ト ル コM.KayhanMutlu,Dr,Professor

DepartmentofSociology,MiddleEastTechnicalUniversity, Ankara,Turkey

17フ ラ ン スPeterCsonka

EconomicandOrganizedCrimeUnit,DivisionofCrimeProblems, DirectorateofLegalAffairs,CounsilofEurope,Strausbourg,France 18オ ラ ン ダA.W.M.ToonvanderHeijiden

HeadofScientificResearchAdvisoryUnit,CriminalIntelligence Division,NationalPoliceAgency,TheNetherlands 19カ ナ ダDanie1Koenig,Dr,Professor

UniversityofVictoria,DepartmentofSociologyVictoria,Canada 20カ ナ ダMarioPossamai,BA,BAA,CFE

SeniorInvestigator,LindquistAveyMacdonaldBaskervilleIns., Tronto,Canada

21ア メ リ カArvindVerma,AssistantProfessor

DepartmentofCriminalJustice,IndianaUniversity,Bloomington, USA

22ア メ リ カMichaelChamberlin,Dr,Professor

CriminalJusticeDepartment,NorthCarolinaCentralUniversity, Durham,USA

23ア メ リ カJulienneSalzano,Dr,Professor

PaceUniversity,DepartmentofCriminalJustice,Pleasanville, NY,USA

24ア メ リ カHaraldOttoSchweizer,Dr AssociateProfessorofCriminalJustice

X202) 53

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神 奈 川 大 学 法 学 研 究年 報16

の東名 高速 では危機一髪 となる程 に まで来 賓 お よび学生諸君の努力 に応

え るべ く最 善 を尽 く した こ と も付 言 し て お く。

これ らの 全 て の方 々 の絶 大 な る尽 力 に対 して幾 重 に も御 礼 を 申 し上 げ ね ば な ら な い。

<参 加 報 告 者>

1ナ ミ ビ アMartinPool

DeputyInspectorGeneralofNamibiaPolice 2ナ ミ ビ アJamesTjivikua

DeputyCommissionerofNamibiaPoliceWindhoek ,

RepublicofNamibia

3南 ア フ リ カCorneliusJ.D.Venter

AssistantCommissionerofSouthAfricaPolicePretoria ,SouthAfrica

4ス ー ダ ンAhmedH.M.Osmann

DirectorateGeneralofInvestigationsSudanesePolice ,

Khartoum,Sudan

5チ ュ ニ ジ アRidahRekik

PoliceOfficerofTunisiaPoliceHeadquaters,MistryoftheInterior ,

RepublicofTunisia

6ジ ム バ ブ エAugustineChihuri CommissionerofPolice,NationalCenterBureau CriminalInvestigationDepartmentHeadquaters

7ジ ム バ ブ ェMatema

Causeway,RepublicofZimbabwe

8オ ー ス ト ラ リ アJohnBroome

ChairpersonofNationalCrimeAuthority,Melbourne,Australia 9ク ロ ア チ アMladenVulinec

Headol'NCS,InterpolZagreb,Croat2a 10エ ス ト ニ アAnnaMarkina

ResearchCenterforCriminologyandSociologyofLaw ,

EstonianNationalDefenseandPublicServiceAcademy ,

Talinn,Estonia

11ハ ン ガ リ ーZsoltNemeth,Dr

PoliceLiutenant‑Colonel,PrincipalAssistent,HeadofCriminology Section,PoliceCollegeofHangary

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世 界的 視座 か ち考 え る組 織 犯 罪

の労 をお と り頂 き,同 志社 大 学 の 上 田寛教 授 に は ロ シア科 学 ア カデ ミー の ギ リン ス キー教 授 との 親 交 を深 め て頂 い た。 また,横 浜 地 方 検 察 庁 の 坂 本雅 則 事務 官(本 学 卒 業 生)は 講 演 会 ・三{園 の 記 念撮 影 に腕 を奮 わ れ,警 察 政 策 研 究 セ ン ター の菊 地 秀 夫 助 手 が講 演会 に 参列 され,警 察 庁 国 際 課 ・外 務 省 お よび各 国大 使 館 に も海外 参 加 者 の 情 報提 供 ・案 内 につ い て 協 力 を頂 い た。 学 内 で は,法 学 会 長 の 小 原 喜 雄 教 授 が 「ア メ リ カ ン ・デ イ」 の 夕 食会 の 主催 者 と して 挨 拶 され 参加 者 か らは 「パ ワー フ ル な教 授 」 で あ る との信 任 を集 め られ,法 学研 究 所 委 員 の 久保 敦 彦 教 授 が 最 終 日の 「フ ェ ア ー ウ ェ ル ・パ ー テ ィ」 で され た主 催 者 と して の 挨 拶 は,海 外 参 加 者 の レベ ル を超 え た絶 賛 と拍 手 を受 け られ た。 また,阿 部 浩 己助 教 授 には ア フ リカの 警 察 高官 の横 浜 で の案 内,高 橋 め ぐみ 講 師 に は 愛 車 で参 加 者 を横 浜 か ら箱 根 まで の案 内 な ど,い ず れ も突 然 の事 態 に もか か わ らず 引 き受 け て頂 い た。 さ らに,郷 田正 萬教 授 と交告 尚 史助 教 授 に は通 訳 等 に関 して助 力頂 い た。 特 に学 長事 務 室 な らびに 総務 課 の職 員 の方 々 に は,海 外 か らの参 加 者 を含 む 多数 の 人々 の 箱根 保 養 所 での 宿 泊 ・利 用 な らび に セ レス トホー ル の使 用 等 に つ いて格 別 の尽 力 を頂 け な け れ ば,こ の シ ン ポ ジ ウム は成 立 しえ なか っ た の で あ る。 そ して,法 学 研 究 所 の職 員 の 方 々 に は,長 期 に わ た る海 外 の郵 便 ・フ ァ ッ クス ・電 話 の 受 発 信,数 百 頁 の 報 告 ・書 の 印刷 ・製 本 か ら参 加 者 の 応 待 ・深 夜 の 宿 泊,複 雑 な会 計 に至 るま で職 務 を越 え て献 身 的 に勤 め られ,そ の ご苦 労 は 計 り知 れ な い。

最 後 に,本 学 で私 が 担 当す る基 礎 演 習 ・刑 事 政 策 ・刑 事 訴 訟法 ・ゼ ミ ナ ー ル等 の履修 者 の 中 か ら 多 くの学 生 お よび大 学 院 生 の諸 君 が,ボ ラ ン

テ ィ ア と して 成 田 空 港 ・YCAT・ 箱 根 ・横 浜 キ ャ ンパ ス で の 案 内 ・接 待 に大 変 活 躍 され た。 そ の 中に は,参 加 者 の 到 着 が 深 夜 に な り成 田に 自

費 で宿 泊 され た 方,家 族 で 来 賓 を宿 泊接 待 され た方,不 祥 事 に直 面 した 不 運 な方 もい れ ば,来 賓 か らニ ッ クネ ー ム をつ け られ る程 に感 謝 され 愛 され た 方 もい る。 ま た,私 の 家族 もこの 間 に横 浜 ・箱 根 を五 往 復 し深 夜 (204)51

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神奈川大学法学研究年報16

の 処 罰 に して も・ 捜 査 ・司法 機 関 の み で な く金 融 機 関 を含 む 市 民 の協 力 な しに は,組 織 犯 罪 立 法 は単 な る 「象徴 刑 法 」 に終 るで あ ろ う。

「組 織 犯 罪 へ の 対 策 」 と して,最 も重 要 な 出発 点 はz本 公 開 シ ン ポ ジ ウム の 報 告 者 が 異 口同音 で指 摘 して い る よ うに,組 織 犯 罪 の被 害 で究 極 的 に 困 るの は 誰 な のか を市 民 の一 人 ひ と りが 自 ら考 えて理 解 す る こ とで あ る。 そ して,そ の対 応 と して社 会 の 一構 成 貝 で あ る私 達 が何 を な し う るか を考 え て実 践 に移 す こ とで あ る。 「成 熟 した高 齢 化 社 会 」 に 急 速 に 移 行 しつ つ あ る現 状 を改 め て 観 察 す るこ とで あ る。 個 人 の銃 器 所 持 も禁 止 され 平 和 に馴 じみ 自衛 意 識 も危機 管理 も乏 しい社 会

,横 並 び で 同調 圧 力 が 強 いが 家 族 や 地 域 の 連 帯 が 弱 ま って い る社 会,目 先 きの政 治 改 変 ば か りで 財 政 金 融 改革 や コ ン ピュ ー タ社 会 へ の 基 本 的 対 応 も遅 滞 す る社 会・ 社 会 的 に 不 要 な施 設 の建 設 ぱ カaりが進 み社 会 的 基 盤 とな る施 設 の建 設 は進 まな い社 会 政 治 家 ・官 僚 ・経 済 人 の腐 敗C ..力 団 との癒 着 が 連 綿 と して 露 呈 す る社 会 に あ っ て,そ の 悪 循 環 を ど こ か ら断 ち切 るべ き か 。 そ の 方 策 は 多層 的 で なけ れ ば な らな い が,組 織 犯 罪へ の刑 事 立法 も その 不 可 欠 な一 つ で な いだ ろ うか 。

と もあれ,今 回 の 国際 シ ンポ ジ ウム は,世 界 的視 座 か ち組 織 犯 罪 の 問 題 を考 え る うえ で,実 に 有 用 で あ っ た。 旅 費 ・講 演 費 等 の支 給 が 全 くな い に もか か わ らず ,海 外 の 遠 い 国 々 か らの 多数 の 参 加 者 が あ り,連 日朝 か ら夕 まで 熱心 な報 告 と討 論 を続 け られ,公 開 シ ン ポ ジ ウム での 講 演 ま で奉 仕 して頂 い た。 それ で も,各 国 の 参加 者 が 満 足 して帰 国 され た とす れ ば,そ れ は本 学 の 内外 か らの 多 大 な支援 に よ る もの とい え る

。 特 に, 法 学 研 究 所 長 の 山 口俊 夫 教 授 に は,中 労 委 会 長 の重 職 に就 か れ 身内 に 御 不 幸 が あ っ た 折 に もか か わ らず,江 草 財 団 か らの 資金 助 成 に尽 力 を頂 き,そ の結 果 と して会期 中 の 「イ タ リア ン ・デ イ」 の昼 食会 が 箱 根 仙 石 原 で華 や か に実 施 され,参 加 者 の 深 い感 謝 を得 る こ とが で きた。 ま た学 外 か らは,科 学 警 察 研 究 所 の 内 山 絢 子 本 学 非 常 勤 講 師 が極 め て好 評 な報 告 を され,横 浜 国 立 大 学 の 北 村 喜 宣 助教 授 が 公 開 講演 会 で は 適確 な通 訳

50{ 2Q5)

(7)

(s)

世界的視座から考 える組織犯罪

「組織的 な犯 罪に対処す るため の刑事 法整備 に関 す る法制 審議 会へ の諮問及

ぴ 事 務 局 参 考 試 案 」 ジ ュllス ト1103号(1996)165頁 〜179頁

(7)浅 田 和 茂rr組 織 的 な 犯 罪 』 対 策 立 法 の 問 題 点 」 法 律 時 報68巻13号 (1996)3頁 ・4頁 。

(8)中 山 研 一 「組 織 的 犯 罪 対 策 立 法 の 検 討 団 組 織 的 な 犯 罪 に 対 す る刑 の 加 重 に つ い て 」 法 律 時 報69巻3号(1997)43頁

(9)「 組 織 犯 罪 対 策 』 に 反 対 す る刑 法 学 者 の 声 明 」 法 学 セ ミナ ー506号(1997) 112頁 。

(10)中 山 ・前 掲 誌43頁

(11)石 塚 伸 一 「組 織 的 犯 罪 対 策 法 の 実 体 法 規 定 の 問 題 点 」 法 学 セ ミナ ー‑507号 (1997)5頁 は,「 結 果 が 重 大 で あ れ ば 量 刑 の 部 分 で こ れ を 評 価 す れ ば よ い 。 結 果 発 生 の 危 険 が 大 き い と い う の で あ れ ば,犯 罪 主 体 の 組 織 性 と い う特 殊 な 構 成 要 件 要 素 を新 設 す る こ と に な る。」 と論 じて い る。 そ の 趣 旨 は,私 見 と は 異 な り,結 果 の 重 大 性 を 量 刑 で 解 消 し,危 険 の 重 大 性 を 違 法 増 加 と解 す る よ

うで あ る。

(12)法 務 資 料 第451号 ・フ ラ ン ス 刑 法 典(1994)52頁 参 照 。

(13)法 務 省 刑 事 局 刑 事 法 制 課 編 ・組 織 的 犯 罪 と 刑 事 法(1997)16頁 ・17頁 参 ,照。

(14)同 書15頁 ・16頁 参 照 。 (15}Lackner‑Kuhl,a.a.O.,ァ244Rn.6,S.998.

(16)同 規 定 案 に つ き 反 対 の 見 解 と し て 浅 田 ・前 掲 誌5頁,「 『組 織 犯 罪 対 策 』 に 反 対 す る刑 法 学 者 の 声 明 」 前 掲 誌113頁,小 田 中 聰 樹 「組 織 的 犯 罪 対 策 立 法 の 検 討 回 盗 聴 立 法 の 違 憲 性 」 法 律 時 報60巻3号(1997)45頁,鳥 居 喜 代 和 「憲 法 は 盗 聴 を許 容 す る か 」 法 学 セ ミナ ー507号(1997)8頁,村 井 敏 邦

「盗 聴 立 法 は 憲 法 要 件 を具 備 し う る か 」 同 書11頁,斉 藤 豊 治 「ア メ リ カ は 盗 聴 を拡 大 した か 」 同 書15頁 参 照 。

(17)井 上 正 仁 「捜 査 手 段 と して の 通 信 ・会 話 の 傍 受 ↓ 〜31ジ ュ リ ス ト1103号 (1996)80頁,同1105号(1997)102頁 ・108頁,同93頁

6.む す び に

刑 事 規 制 は それ 自体 が 矛 盾 を内 包 して い る。 人権 侵 害(犯 罪)を 防 止 す る手 段 と して 人 権 侵 害(刑 罰 その他 の処分)を 不 可 分 に も た らす か ら

で あ る。 盗 聴 にせ よ刑 罰 の加 重 にせ よ,そ れ 自体 害 悪 で あ って,で き る もの で あれ ば 避 け るに越 した こ とは な い し,犯 罪 防止 に絶 大 な効 果 を上 げ る もの で な い こ とも 自明 で あ る。 没収 ・追 徴 の 強化 あ る い は収 益 洗 浄

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神奈川大学法学研究年報16

情 報 化社 会 に登 場 した新 た な情 報 通信 技術 が ,そ の利 便 性 の 反 面 と して 密 行 的 な犯 罪 手段 に 利 用 され て い る。 新 た な犯 罪 技術 の挑 戦 に は新 た な 防 止 技 術 が 捜 査 手 段 と して も必 要 に な る。 こ の こ とはi世 界 に 共 通 す る。 一般 論 と して,わ が 国 に の み 盗聴 法 制 が不 要 で あ る とす る根 拠 を発 見 す る こ とは 困 難 で あ ろ う。 外 国 人 に よ る組 織 犯 罪 等 も増 大 して い るか ら と い っ て,「 鎖 国 」 ど こ ろ か 増 々外 国 人 へ の 実 質 的 開 放 が 政 治 ・経 済 ・文 化 の 面 で推 進 され ね ば な らな いの で あ る。 犯 罪 の 国 際 化 へ の対 応 は わ が 国 の 責務 で もあ り,各 国 の法 制 は 国 際 基 準 へ と収 束 しつ つ あ る

。 そ の 今 日,わ が 国 の 「55年 体 制 」 の よ うに,一 定 の 政 策 に 不 可 分 ・不 可 避 な反 面 のみ をr負 」 と して 強 調 す る よ うな論 議 は,学 問 の 世 界 で も 余 り生産 的 では な い で あ ろ う。

新 た な情 報 通 信 技術 は 必 然 的 に古 い手 段 で は 防 止 しえ な い新 た な不 法 手 段 を生 み 出す 。 これ に伴 って,新 た な不 法 防 止 手段 が 不 可 避 に な る。 通信 傍 受 は,そ の一 つ で しか な い。 盗聴 に 対 す る 「会 話 聖 域 論 」 が 成 り 立 た な い とす れ ば,そ の 捜査 手 段 の濫 用 防 止 の ため に新 た な法 的 技術 を 駆使 す る方 途 しか残 らな い。 それ は通 信 傍 受 の み で は な く捜 索 ・差 押 と の 関係 で も既 に 生 じて い る問題 で しか な い。 しか し,盗 聴 全 面 反 対 論 が 令 状 主 義 の 限 界 では な く令 状 主 義 自体 へ の 不信 感 ・懐 疑 論 を基礎 と して い るの だ とす れ ば,そ れ は 司 法 制 度 改 革 論 あ る いは 警 察 民 主 化 論 な どの 拡 大 した領 域 で の制 度 改革 で対 応 すべ き もの で あ ろ う。 議会 ・内 閣 な ど

「制 度 的 に予 定 した責 務 に よ る濫 用 防 止 機 構 」 が 「空 洞化 」 して い る現 実 は,明 治 憲 法 下 で の侵 略 戦 争 の 開 始(陸 軍 の暴走)か ら今 日 まで 是 正

され て は い な い。

いわ ゆ る規 制 緩 和 は,「 自己責 任 シ ス テ ム の 強 化 」 を 目 ざす もの で あ るか ら,事 後 規 制 と しての刑 事 法 の 強化 を避 け られ な い。 組 織 犯 罪対 策 も,そ の根 幹 の一 つ と して位 置づ け う る。21世 紀 へ の 変 革 は刑 法 に も 反 映 す る。 対 案 を示 した大 論 争 が今 こ そ必 要 な時 で あ る。

48 (zo7)

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世 界 的視 座 か ら考 え る組 織犯 罪

の疑 い は 弱 ま ろ う。

この 問題 との 関 連 に お い て,原 理 的 に 「令 状 主義 の本 質 」 を どこに 求 め るべ きか。 そ れ は,理 論 的 に 困難 な問 題 で あ る。 既 に盗 聴 令状 を法 制 化 した ア メ リカ法 の 判 例 ・学 説 を検 討 す れ ば,「 裁 判 官 の 司 法 審 査 」 に よ る 「対 象 の 特 定 性 」 が 令 状 主 義 の根 幹 で あ っ て,(被 聴取者 へ の)「 事 前 の 令状 呈 示 」 は その 不 可 欠 な要 請 で は な くな る(17)。そ れ は理 論 史 の

「結 果 論 」 と して 当 然 で あ る とい え るか も しれ な い。 しか し,糺 問 主 義 ・職 権 主義 を肯 定 しな い の で あ れ ば,「 裁 判 官 の 司 法 審 査 」 も 「法 定 主 義 」 を前 提 と して の み成 り立 つ 。 そ して,令 状 主 義 が 「最 小 限 の利 益 侵 害 」 と 「最 小 限 の犯 罪 関 連 の あ る証 拠 収 集 」 との調 和 的達 成 を図 るた め の 「事 前 の 抑 制 」 で あ る とす れ ば,「 事 前 の令 状 呈 示 」 は そ の 一 内容 を な し うる。 しか し,「 呈 示 」 は 「令 状 」(内 容)以 上 の抑 制 効 果 を もち え ず,そ の 代 替 手 段 に よ って も濫 用 防 止 は達 成 し うる。 ま た,「 事 前 の 抑制 」 は,令 状 執 行 後 の報 告 義務 や 被 害 者 の 盗聴 録 音 聴 取(傍 受 記録 閲 覧)権 等 に よ り捜 査 官 の事 前 の 心理 的 抑 止効 を生 む もの で も足 り る。 す なわ ち,そ の義 務 履行 等 が 執行 後 で あ って も,そ の義 務 づ け が執 行 前 に 定 め られ て い れ ば,「 事 前 の 抑 制 」 に な るか らで あ る。 この よ うに 考 え るな らば,被 聴 取 者 に対 す る 「事 前 の 令状 呈示 」 を重視 す る見解 に立 っ て も,通 信 傍受 の 試案 は,合 憲 の 枠 内 に納 め る こ とが 可 能 で あ る と考 え られ,少 な くと も条 件 つ きの検 証 令 状 に よ る通 信 傍受 よ りは格 段 の前 進 を示 して い る とい え よ っ。

いず れ にせ よ,盗 聴 令 状 の 手 続 的 法制 は,既 に 欧米 諸 国の 多数 に存 在 して い る。 そ して,そ の いず れ の 国 で も伝 統 的 な 立場 か らの違 憲 論 が 存 在 して も,そ れ は 当然 で あ り正 常 な 反 応 で もあ る。 しか し,そ の 激 しい 葛 藤 を経 て成 立 した 盗聴 法制 は,も はや 反 対 説 に依 拠 して単 純 に違 憲 な ど と断 じ る こ との で き る もの で は な い。 「個 人 の尊 厳 」・「表 現 ・通 信 の 自由 」・「適 正 手 続 」・「令 状 主 義 」 な どの基 本 原理 は,民 主 主義 国 家 に共 有 の もの で あ って,日 本 に特 有 の もの で な い こ と も 自明 で あ る。 現代 の

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(10)

神奈川大学法学研究年報16

プ ラ イバ シー侵 害 は,数 カ 月 間 の盗 聴 に よ る侵 害 に相 当す る程 度 を超 え る こ と も当然 に あ りう る。

果 して 「令 状 主 義 」 に とっ て,「 侵 害 の 大 きさ」 は重 要 で な く,「 対 象 の 特 定 性 」 のみ が 重 要 で あ る とい え る で あ ろ うか 。 こ こは 「実 体 的真 実 発 見 」 と 「個 人 の プ ラ イバ シー 」 との 「利 益 の衝 突 ・衡 量 」 の場 面 なの で あ る。 テー プ とい う有 体 物 の 次 元 で は争 い な く令 状 記 載物 件 で あ っ て も,そ の 内容 で あ る個 人 の 私 的 情 報 と して は 全 く 「被 疑 事 実 との 関 連 性 」 を欠 くもの で あ りう る。 これ を現 場 で再 生 後 に 差 押 か ら除外 した と

して もi捜 索 ・検 証 の い ず れ にせ よ重 大 な プ ラ イバ シー 侵 害 が 回避 され た こ とに は な らな い。 これ を 回避 不 能 ゆ え に捜 査 に よ る侵 害 の 「最 小 手 段 の 原 則」 に 反 しな い とい うの で あれ ば,「 対 象 の 特 定 性 」 とは侵 害 の

「形 式 的 な必 要 性 」 判 断 で あ る こ とに甘 ん じな け れ ば な らな くな る。 極 論 す る こ とが許 され る とす れ ば,会 話 の 盗 聴 で は被 疑 事 実 と 「関 連 性 」 の な い通信 情 報 まで も侵 害 され る こ とが 誰 に も判 り易 い だ け で あ り

,捜 索 ・差 押 ・検 証 の 「対 象 の 特 定 性 」 は 「物 的 ・空 間 的 な 限 定 」 ゆ え に

「関 連性 の 担 保 」 の イメー ジ を抱 き易 い だ け で あ る と もい え る。 いず れ に せ よ,「 生 の 会 話 」 だ け の 特 権 化 が 適 切 で な い とす れ ば,捜 索 ・差 押 ・検 証 と平行 で あ る限 りで通 信 傍 受 を令 状 主 義 の 枠 内 に収 め る こ とは 可能 で あ ろ う。 特 に,人 格 的領 域 の 自由 よ り も優 越 す る生 命 ・身体 の安 全 ・自由 を保 全 す るた め に不 可 欠 で あ る場 合 に は,通 信 傍 受 を許 容 す べ き こ とは 否 定 し え な い の で あ る。 そ れ に して も,通 信 傍 受 を 「必 要 最 小 」 の もの に限 定 すべ きこ と も当然 で あ る。 盗聴 に よ る一 般 的捜 索 を防 止す るため に,「 物 的 ・空 間 的 限 定 」 の他 に 「時 間 的 限 定 」 等 の 多様 な 方 法 で 「対 象 の特 定 化 ・最 小 化 」 の 努力 が 必 要 で あ る。 被 疑 事 実 とな る 犯 罪 の最 小 化,他 の捜 査 手 段 の補 充性,令 状 請 求 ・執 行 者 の 限定 化 な ど も,こ れ に 関 わ る。 特 に,通 信 傍 受 で は 「事 前 の令 状 呈 示 」 に 代 る もの と して,立 会 人 の看 視,被 害 者 と令 状 裁 判 官 へ の結 果 報 告,情 報 の 廃 棄 ・秘 密保 全,不 服 申立 の容 易化 な どが達 成 され る な らば,そ の 違 憲 性 46{2(}9)

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世界 的視 座 か ら考 え る組織 犯 罪

「プ ラ イバ シー 」 の 問題 で は な い。 プ ラ イバ シー で は本 人 の放 棄(同 意) が 決 定 的 で あ るが,そ れ を欠 く時 に犯 罪行 為 が 非犯 罪行 為 よ り も強 い保 護 に値 す る とは考 え られ な い。 た だ し,捜 査 との 関 係 で は,犯 罪行 為 か 否 か で は な くその 「明 白性 」(現 行犯)が 重 要 で あ る。

第 三 の本 質 的 な 問題 はy後 に犯 罪 で は な い と判 明 す る行 為 が被 疑事 実 として捜 査 され た場 合 の プ ラ イバ シー 侵 害 で あ る。 しか し,相 当 な嫌 疑 が 存在 した な らば,そ れ は捜 査 に不 可 避 な侵 害 と して受 認 すべ き こ とに な りう る。他 の 諸 利 益 と較 べ て プ ラ イバ シー のみ が 法 的 に特 権 化 され る べ きで は な い。 しか も,特 に注 意 すべ きはSプ ラ イバ シー侵 害 が 盗 聴 に 特 有 の 問題 で は な い こ とで あ る。

憲 法35条 の 令 状 主 義 の 規 定 は,住 居 ・書 類 ・所 持 品 を単 な る財 産 権 的利 益 と して で は な く,プ ラ イバ シー の 人格 権 的 利 益 の保 護 す べ き領 域 の 重 要 な例 示 と して 定 め た もの と解 され る。 同 様 に 憲 法33条 の令 状 主 義 の 規 定 も,逮 捕 で侵 害 され る 人身 の 自由 に はプ ライバ シー の 中心 的部 分 も付 随 す る こ とを予 定 した もの と解 され ね ば な らな い。 す な わ ち,尾 行 ・追 跡 ・検 問 ・職 務 質 問 ・所 持 品検 査 ・取 調 等 の任 意捜 査 もプ ラ イバ

シー侵 害 を伴 うが,特 に逮 捕 ・捜 索 ・差 押 ・検 証 等 の 強 制捜 査 は いず れ も強 度 の プ ラ イバ シー 侵 害 とな るの で あ る。 もっ とも,盗 聴 で は,単 に 被 聴 者 の 「同 意 」 が な い こ と よ りも,聴 取 を 「不 知 」 の た め 自 己防衛 が 困難 で あ るため,被 害 が 増 大 す る点 に特 色 を もつ 。 しか し,捜 索差 押 の 客 体 とな る書 類 等 の 「表 現 媒 体 物 」 で あ っ て も,表 意 者 が 思 想 表 現 を記 録 す る時 点 で は 将 来 の被 害(解 読等)を 「不 知 」 な の で あ る。 「表 現 の 自由 」 の観 点 か らは,狸 褻 文 書 頒 布 罪 の 出版 物 の捜 索差 押 が 問題 とされ るが,そ の 「表 現 媒 体 物 」 の表 現 内容 を問 わ な いの で あれ ば,そ の 範 囲 は ほぼ 限 界 な く拡 大 す る。 それ ゆ え,問 題 は,単 な る狽 褻 罪 に限 らず, 一 般 的 な 「捜 索 差 押 の客 体 」 に 共 通 す る。 つ ま り,「 表 現 の 畏 縮 効 果 」

の 問題 は,一 般 化 す る。 盗 聴 は思 想 伝 達 自体 を阻 害 しない にせ よ,例 え ば 被 疑 者 宅 か ら適 法 に捜 索 ・差 押 え られ た書 類 ・ビデ オ テー プ 等 に伴 う

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神 奈 川 大 学 法 学 研 究 年 報16

タの イ ン ター ネ ッ ト等 の通 信 手段 を利 用 した密 行 的 な犯 罪 の 捜査 に不 可 欠 な方 策 で あ る とい え る。 そ れ が濫 用 され る と深 刻 な プ ラ イバ シー の侵 害 に な るか らこ そ,こ れ を強 制 捜 査 と して 原 則 的 に禁 止 し,限 局 され る 例 外 的 許 容 の要 件 を法定 化 し,そ の枠 内 で の令 状 主義 の 司法 的 抑 制 下 に 置 く必 要 が あ る とい え る。 す な わ ち,通 信 傍 受 が会 話 の プ ラ イバ シー を 侵 害 す る こ とは 疑 う余 地 は な い が,こ れ を広 く許 容 し,そ の 濫 用 を促 進 ・拡 大 す る ため に,そ の要 件 の法 定 化 と令状 主 義 に よ る司法 的制 約 を 制 度 化 す る もの で な い こ とは 自明 な の で あ る。 反 対 に,そ の立 法 化 を し なけ れ ば,盗 聴 の濫 用 が行 われ な くな る とい う もの で もな い。 す べ て善 で あれ 悪 で あ れ 必要 が そ の行 為 を生 む の で あ る。 これ を適 法 な枠 内 に条 件 づ け よ う とす るの が 法 の 役 割 な の で あ る。 こ れ らの 基 本 的 問 題 を誤 解 ・曲解 して は な らな い。 通 信 傍 受 の 法制 化 はr盗 聴 を法 的 に 野放 しに す るの で は な く,そ の逆 を意 図 して 手 続 を明確 化 す る もの で あ る。

こ こで の核 心 は,勿 論,そ の立 法 化 に よ るプ ラ イバ シー侵 害 の問 題 で あ る。 第一 に確 認 すべ きは,犯 罪 者 に も被 疑 者 に もプ ラ イバ シー が 疑 い な くあ り,そ の正 当理 由 な き侵 害 は法 的 に許 容 しえ ない。

さ て,第 二 に,犯 罪行 為 そ れ 自体 もプ ラ イバ シー の不 可侵 領 域 と して 法 的 に保 護 され るべ きで あ ろ うか。 これ を肯 定 す るの で あ れ ば,そ れ は 犯 罪行 為 の 秘 匿 を認 め 違 法 の実 現 を法 的 に保 障 す るの と大 差 な い で あ ろ う。 も っ と も,こ の 問題 と犯 罪者 の 罪証 隠 滅 の 問題 とは異 な る こ とに 注 意 しなけ れ ば な ら な い。 本 人 に よ る 罪証 隠 滅(刑 法104条)は,本 来 は 当罰 的 で あ るが 可罰 的 で な いの にす ぎな い。 なぜ な ら}犯 罪 の 証 拠 隠 滅 は犯 罪 の 当罰 性 と不 可分 で あ る ため,こ れ と独 立 に 可 罰的 とす れ ば 二 重 処 罰 に もな り,ま た可 罰 的 と して も抑 止効 果 に乏 しい の で あ るか ら,こ

れ を処 罰 すべ き根 拠 が な い。

他 方 で は,テ レ ビ報 道 で は被 疑 者 や 社 会 的 非 難 に 値 す る言 動 をす る 人 々 の顔 や 声 が 隠 され るの に対 して,そ うで ない 一般 の 人 々 の そ れが 明 示 され るの で,誤 解 も多 い で あ ろ う。 しか し,そ れ は 「名 誉 」 で あ って

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世 界 的視 座 か ら考 え る組 織 犯 罪

の よ うな序 列 関係(ヒ エ ラルヒー)を 備 え る強 固 な組 織 体 の み を 「団体 」 とすべ きか,と い う逆 の 疑 問 も生 じる。 そ の よ うな 強 固 な組 織 体 を予 定 す る ドイ ツ の犯 罪結 社 罪 で は,刑 の個 別 化 が な され て い る。 しか し,フ

ラ ン ス刑 法 の よ うに,刑 の上 限 の み加 重 す る こ と も検 討 され て よい で あ ろ う。

な お,(2)の 「団体 の 活 動 と して犯 罪 を実 行 す るため,そ の 内部 に組 織 を作 り,又 は 団体 もし くは そ の一 部 を構 成 す る組 織 をそ の ため の組 織 と

し,実 行 した もの」 とい う規 定 も,不 可 欠 な もの と思 わ れ る。 オ ウム 真 理 教 事 件 の よ うな例 は,巨 大 な会 社 等 の 団体 で な くと も,そ の 一 部 門 の 組 織 の み が悪 質 商 法 その他 の犯 罪 とな る行 為 を計 画 ・累行 す る形 態 で一 般 的 に あ りうるか らで あ る。 こ の場 合 に,そ の 団体 全 体 に犯 罪 が及 ん で い な い との理 由 で,脱 法 化 が 可 能 に な る とす れ ば,本 規 定 は殆 ど実 効 性

を失 う こ とに な る。

さて,刑 の加 重 に 関 す る試 案 の 最 大 の 問題 点 は,こ れ と逆 の 刑 の 軽 減 ・免 除 等 の規 定 を 欠 い て い る こ とに あ る。 組 織 犯 罪 の 防 止 の た め に は,従 来 の 中止犯 や 自首 の 規 定 に加 え て,組 織 ・共 謀 か らの離 脱 者 や 犯 罪 計 画 の事 前 通 報 者 等 を刑 罰 の点 で優 遇 す るため の新 た な特 典 の規 定 を 考 案 して,そ の離 脱 を促 進 しな け れ ば な らな い。 また,被 害者 の補 償 と 犯 罪 者 の再社 会 化 とを両 立 させ うる 「被 害 回復 の制 度 」 す な わ ち犯 罪 者 の 自主 的 な 謝 罪 ・示 談 等 に よ る被 害 回 復 の 努 力 ・履 行 を 条件 と して起 訴 ・宣 告 ・執 行 を猶 予 す る よ うな刑 事 政 策 の 点 で も,ヨ ー ロ ッパ 法 に較 べ て 日本 法 に は遅 れ が 見 られ る。 明 治40年 刑 法 は,立 法 当 時 は ヨー ロ

ッパ の 先端 理 論 を導 入 して ヨー ロ ッパ の 刑 法 の水 準 を超 え て い たが,今 や 口語 化 な どで は済 まな い程 に時 代 後 れ に な りつ つ あ る。 この刑 法 も 日 本 の社 会 を正 に反 映 して い る。

(4)最 後 に,盗 聴(通 信 傍 受)の 規 定 に つ い て も 触 れ ね ば な ら な い(16)。実 体 法 規 定 の 改 正 は,こ れ を支 え る手 続 法 規 定 な し に は 「張 子 の 虎」 に な って しま う。通 信 傍 受 は,組 織犯 罪 の み で な く,コ ン ピュー一 (212)43

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神 奈 川 大学 法 学研 究 年 報16

う で あ る とす れ ば,「 共 謀 」 に よ る 共 犯 と 「組 織 犯 罪 」 とは 「組 織 集 団 」 と し て 概 念 上 統 合 さ れ,両 者 の 区 別 の 必 要 は な い よ うに 思 わ れ る。 ま た,同 法 で は,麻 薬 製 造 輸 出 入 ・略 取 監 禁 ・売 春 斡 旋 ・窃 盗 ・強 盗 ・強 要 ・詐 欺 ・駐 物 ・資 金 洗 浄 ・爆 発 破 壊 ・通 貨 偽 造 等 に つ い て 「組 織 集 団 に よ っ て 実 行 し た と き」 の 加 重 処 罰 を 規 定 し て い る㈹ 。 同 法 の 法 定 刑 は,刑 の 上 限 の み を定 め,宣 告 刑 で こ れ を 下 ま わ る こ と を 認 め て い る (同132‑18条 〜132‑20条)。

さ ら に,ド イ ツ 刑 法 は,狸 褻 文 書 頒 布 ・窃 盗 ・強 盗 ・恐 喝 唄 庄物 ・資 金 洗 浄 ・公 然 賭 博 開 催 の 重 い 行 為 類 型 等 に つ い て,「 そ の 犯 罪 の 連 続 的 な 実 行 の た め に 結 合 し た 集 団 の 構 成 員 」 と し て,(か つ 場 合 に よ り)「 集 団 の 他 の 構 成 貝 の 協 力 の 下 に 」,犯 罪 を行 っ た 場 合 の 加 重 処 罰 を 規 定 し て い る(14)。た だ し,そ の 場 合 の 「集 団 」(Band)と は,同 法129条(犯 罪 結 社 罪)に い う 「結 社 」(Vereinigung)と は 異 な り,明 示 的 な い し 黙 示 的 な 共 謀 に 基 づ く継 続 的 な,未 だ 具 体 化 は さ れ て い な い 一 定 の 犯 罪 を 実 行 す る た め の 多 数 人 の 結 合 で あ る,と 判 例 で は 定 義 づ け ら れ て い る(15)。そ の 構 成 員 の 数 は2人 で も充 分 で あ る が,「 組 織 化 」 を 要 し な い 点 で 「犯 罪 結 社 」 と は 区 別 さ れ る 。 要 す る に,同 法 に い う 「集 団 」 と はy「 共 同 正 犯 」 と 「犯 罪 結 社 」 との 中 間 に 位 置 づ け ら れ る 「継 続 性 」 の あ る 犯 罪 集 団 で あ る と い え る 。 そ の 刑 罰 加 重 の 根 拠 はs例 え ば 同 法 184条 で は 「職 業 的 な い し集 団 の 構 成 員 と して 」 と併 記 さ れ て い る こ と か らす れ ば,不 法 の 反 復 継 続 性 ・常 習 性 あ る い は 犯 罪 を収 入 源 と し て い

る点 に 求 め る こ とが で き よ う。

こ の よ う な ヨー ロ ッパ の 刑 法 と比 較 し て,わ が 国 で 提 案 さ れ て い る刑 罰 加 重 の 規 定 は 決 して 異 例 な もの で は な い 。 か か る規 定 の 下 で も量 刑 の 原 理 が 働 く 限 り不 当 に 重 い 処 罰 が 肯 定 さ れ る わ け で は な い 。 し た が っ て,「 一 律 の 刑 の 加 重 類 型 で は な く,組 織 内 部 の 役 割 に よ る 刑 の 個 別 化 (首 謀 者 ・指 揮 者 ・そ の他 の 関 与 者)の 方 が 相 応 し い の で は な い か 」 と い う疑 問(提 案)も,必 ず し も 説 得 的 で は な い で あ ろ う。 な ぜ な ら ば,そ 42(213)

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世 界的 視 座 か ら考 え る組 織 犯 罪

役 割分 担 な どの 協働 に よ る危 険増 加 と共 通 す る面 を備 え なが ら も,こ れ を越 え る不 法性(犯 罪累行 の危険)に 主 と して 求 め られ る こ とに な ろ う。

す な わ ち,組 織 的 な 犯 罪 遂 行 は,そ の 関 与 者 に よ る相 互 的 な犯 意 の 形 成 ・支持 ・強化,計 画 的 な分 業 に よる犯 罪 阻 害 要 因 の 除去 と犯 罪実 現 へ の知 識 ・技術 の 交 換 ・補 完 ゆ え に,単 独 犯 と比 べ て格 段 に犯 罪実 現 の 危 険 性 を高 め,犯 罪 結 果 を重 大 な もの に し うる。 また,罪 証 隠 滅 ・犯 人 隠 避 につ い て の協働 に よ って,犯 行 後 の処 罰 も免 れ易 くな る。 これ らの 点 は,任 意 的共 犯 で は,危 険増 大 とい っ て も構成 要 件 的 不 法 惹 起 と して違 法 判 断 で処 理 され,法 定刑 の枠 内 での 量刑 判 断 に解 消 され て きた の で あ る(11)。しか し,そ れ ゆ え に,こ の 法 益 侵 害 の 危 険 増 大 を理 由 とす る刑 の加 重 の 立 法 化 が お よそ正 当根 拠 を欠 くで あ ろ うか。 この 点 は検 討 を要 す る。 結 果 無 価値 論 に よれ ば,消 極 的 な結 論 に な り易 い と して も,同 一 の 法益 侵 害 の 量 が増 大 し易 い とい うの で あ れ ば,法 定刑 の 下 限 の加 重 は 根 拠づ け うる。 これ に対 して,単 な る 「単 発 的 な共 犯 」 とは異 な り,組 織 犯 罪 で は 「継 続 的 な 共 犯 」 の特 質 を もち,複 数 の 法 益 侵 害 が 累 行 さ

れ,特 に犯 罪収 益 の 保 持 と結 び つ くと きyそ の体 質 が 保 持 ・強 化 さ れ る。 こ う して,単 な る共 犯 よ り も格 段 と強 ま る法 益 侵 害 へ の 脅 威 ゆ え に,組 織 的 犯 罪 に対 す る刑 の加 重 は,一 般 的 に正 当化 し うる で あ ろ う。

組 織 結 合体 の個 々 の構 成 員 に対 す る 「同調 圧 力 」 の 継 続 的作 用 は,強 い 一 般 予 防 ・特 別 予 防 の 必 要 性 を根 拠 づ け う る よ うに も思 わ れ る。例 え ば,暴 力 団 の場 合 に は,そ の構 成 員 の 前科 が 組 織 に お け る地 位 を高め る の で あ れ ば,そ の 組 織 か らの長 い隔 離 を必 要 とす る。 そ の刑 の加 重 の み で社 会 復 帰 が達 成 され た りす る こ ともな い の も自明 で あ るか ら,更 な る 新 た な方 策 が考 案 され ね ば な らな い。

な お,フ ラ ン ス 新 刑 法 は,132‑71条 に 刑 の 加 重 事 由 の 一 つ と して

「組 織 集 団」 の定 義 規 定 を置 く(12)。同 条 で は 「0又 は数 個 の犯 罪 」 とな って お り,犯 罪 累 行(お よび 同準備)は 「組 織 犯 罪 」 の 要 件 で は な く, また 「集 団 」 の み で な く 「共 謀 」 も 「組 織 集 団 」 と定 義 され て い る。 そ (214)41

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神 奈 川大 学 法 学 研 究 年 報16

明 す る。 こ れ はs法 の 差 別 的 適 用 を排 除 し,多 様 で 流 動 的 な 組 織 犯 罪 に 対 応 す る た め に も望 ま し い 方 策 で あ ろ う。

参 考 試 案 は,箭 一の 一 の(1)〜(3)に 三 類 型 を定 め て い る 。 こ れ に 対 し て は,「 こ れ ら を組 織 的 な 犯 行 形 態 の 刑 の 加 重 と し て 一 般 化 す る こ と は , 問 題 の 所 在 を 不 明 確 に す る も の で あ っ てyテ ロ対 策 な の か,暴 力 団 対 策 な の か,経 済 犯 罪 対 策 な の か を 明 ち か に し た上 で,そ れ ぞ れ に 対 応 す る 具 体 的 な 提 案 を 用 意 す べ き で あ る。」(8)と の 批 判 が な さ れ て い る 。 確 か に,加 重 対 象 と な る犯 罪(別 表1)が 暴 力 行 為 処 罰 法 等 との 関 係 な ら び に 当 該 の 犯 罪 類 型 へ の 適 合 性 等 を 考 慮 して 必 要 な 範 囲 に 限 定 さ れ て い る た め,そ の 関 係 は 複 雑 な様 相 を呈 す る 。 しか し,テ ロ ・暴 力 団 ・経 済 犯 と い っ た 犯 罪 学 的 分 類 は 相 互 の 限 界 が 本 来 明 確 で は あ り え な い の で あ る か ら,こ れ を 区 別 した 立 法 とす べ き根 拠 も乏 しい で あ ろ う。

ま た,「 そ も そ も 「犯 行 を実 行 す る た め の 法 人 」 な る も の が 法 的 に あ り う る の か,「 団 体 」 とは 何 か(グ ル ー プ や 集 団 な ど他 の 結合 体 と どこ が違 うの か,「 組 織 」 と ど う異 な るの か,現 行 法 の 共 犯 との 関 係 は ど う な る の か 等)」 ㈲ とす る 疑 問,あ る い は 「こ こ で は,少 な く と も 「元 々 の 犯 罪 団 体 」 とい わ れ る もの が あ る程 度 継 続 的 な もの と して 存 在 す る こ とが 前 提 と さ れ るべ き で あ っ て,そ うで な け れ ば 共 犯 を越 え る組 織 犯 罪 と し て の 刑 の 加 重 を根 拠 づ け る こ とは で き な い で あ ろ う。」(1p)とす る提 言 も な さ れ て い る。 こ れ らの 指 摘 は 重 要 で あ る。 も し 「団 体 」 の 概 念 が 不 明 確 で あ る な ら ば,そ の 定 義 規 定 を 設 け る こ と も必 要 で あ ろ う。 し か し,「 犯 罪 を実 行 す る た め の 法 人 そ の 他 の 団 体 似 下 単 に 「団体 」 とい う。)」 と文 言 か ら し て,「 法 人 」・「団 体 」 の い ず れ も 「多 数 人 か ら成 る 継 続 的 な 組 織 体 」 が 予 定 さ れ て い る よ うに 思 わ れ る。 しか し}「 一 人 会 社 」 も あ りa

「法 人 」 と 「そ の 機 関 」 ・「従 業 員 」 ・「そ の 組 織 体 」 と は 区 別 さ れ る べ き で あ る な らば,こ の 点 は … 考 を要 す る所 で あ ろ う。

(3)い ず れ に せ よ,「 組 織 的 な 犯 罪 」 あ る い は 「団 体 」 に よ る犯 罪 の 刑 罰 加 重 の 根 拠 は,4の ⑥ で 述 べ た よ う に,共 犯 に お け る 心 理 的 連 帯 ・ 40(215)

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世 界的 視座 か ら考 え る組 織 犯 罪

で あ る。 「政 治 の変 革 」 とい う長期 的 施 策 は,他 の 中短 期 的 施 策 を不 要 とは しな いの で あ る。

② 諮 問 はi「 第0組 織 的 な犯 罪 に 関 す る刑 の 加 重 」(1一 定 の組 織 的犯 罪の刑 の加 重,2組 織 的 な犯 罪 に係 る犯 人蔵 匿 等 の刑 の加 重,3 予備 罪 の刑 の加 重 及 び新 設),「 第 二 犯 罪 収 益 等 に よ る事 業 経 営 の支 配 等 の処 罰 」,「第三 没収 及 び 追 徴 の拡 大 」(1犯 罪収益 等 の没収 及 び追 徴,2犯 罪供用物件 等の没収),「 第 四 令 状 に よ る通 信 の 傍受 」,「第五 証 人 等 の保 護 」,「第六 没 収 に関 す る手続 等 」 を骨 子 と して い る。 その 中 で,「 麻 薬 特 例 法 」 の 規 定 の 適 用 領 域 を波 及 させ た もの を除 い て,特 に問 題 に な るの はi「 第一 」 で あ る。

こ の 「組 織 的 な犯 罪 に 関 す る刑 の加 重 等 」 の規 定 案 に は,二 つ の特 色 が あ る。

第一 の 特 色 は,「 犯 罪 組 織 」 自体 を犯 罪 結 社 罪 と して定 め る 「団体 規 制 」 で は な く,「 行 為 規 制 」 とす る伝 統 的 手 法 を維 持 して い る点 で あ る。

す なわ ち,「 犯 罪 実 行 の ため の 組 織 を作 り又 は 団体 の 不 正 な権 益 に 関 連 して犯 した犯 罪(以 下 「組織 的な犯 罪」 とい う。)に 該 当 す る一 定 の 犯 罪」

に つ き,「 そ の刑 を加 重 す る」 す るの で あ る。 こ の行 為 規 制 に よ っ て, ドイ ツ刑 法129条 で生 じる よ うな 「結社 の 自由」 との 抵 触 の 問題(適 用 除 外)が 形 式 上 は 回 避 され る の で あ る。 また,同 条 の よ うに 団 体 の 結 成 ・加 盟 ・宣 伝 ・支援 を 「公 共 危 険 犯 」 な い し 「一 般 的 予 備 罪」 とす る

こ とに よ って 生 じる余 りに も早 す ぎ る 「前 段 階処 罰」 と 「構 成要 件 の不 明確 性 」 の 問題 を 回避 し う るの で あ る。 しか し,別 に 「加 重 予備 罪 」 の 新 設 で,こ れ を補 完 し よ う とす るの で あ る。

第 二 の特 色 は,「 組 織 犯 罪 」 を伝 統 的 な暴 力 団 の よ うな 「組 織 暴 力 犯 罪 」 に 限定 せ ず,「 組 織 テ ロ犯 罪」・「組 織 経 済犯 罪 」 に まで 拡 張 して 規 制 し よ う と して い る こ とで あ る。 そ の趣 旨 は,「 諮 問 の 背 影 」 に 「オ ウ ム真 理 教 事 件 の よ うな大 規 模 な組 織 的 な 凶悪 事 犯,会 社 な どの法 人組 織

を利 用 した悪 徳 商 法 等 の 大 型 経 済 犯 罪 」 が例 示 され て い る こ とか ら も判 (216}39

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神 奈 川 大 学法 学研 究年 報16

暴 力 団 も,そ の構 成 員 の ほ とん ど を警 察 が 把 握 して い るの に 見 ちれ る よ りに,そ れ とは 異質 な もの で あ る。 む しろ 「組 織 的 な犯 罪」 と して わ が 国 で も っ と も大 規 模 か つ 深 刻 な の は,政 ・官 ・財 の癒 着 に よ る構 造 的 な 汚 職 で あ ろ う。」{7)と論 じられ て い る。

しか し,こ の 批 判 は,組 織 犯 罪 とい われ る同一 の事 象 の 異 な る一 面 の み を強 調 した もの で あ っ て,諮 問 な い し試案 の 前提 とす る認 識 と実 質 的 に対 立 して い る とは 思 われ な い。 す な わ ち,「 政 ・官 ・財 の 構 造 的癒 着 」 の連 鎖 内 に 「組 織 犯 罪 」 の 問題 が あ り,こ の悪 循 環 を断 つ こ とが 現 代 の 刑 事 司法 の 緊急 課題 で あ る。 それ が 国 際 的 な共 通 認 識 で もあ る よ うに思 われ る。 もっ と も,そ の批 判 は,「 構 造 的癒 着 」へ の 対 応 策 と して,「 今 こ そ根 絶 され なけ れ ば な ら ない」 と しつ つ も 「政 治 の変 革」 を要 求 して い る。 その 対 策 は 「百年 河 清 を待 つ 」 に 等 しいが ,な ぜ 刑 事 立 法 と政 治 改 革 とが択 一 関係 に な りう るか 。

現 在 の 日本 は,こ の戦 後 の 「政 ・官 ・財 」 協 調 に よ る経 済 的 繁 栄 の成 果 と して貧 富 の格 差 が小 さ く雇 用 の安 定 した社 会 が実 現 され,そ れ ゆ え に 犯 罪率 も低 い安 全 な社 会 とな っ て い る。 しか し,規 制 緩和 等 の構 造 改 革 ・国 際 的 な競 争 力 の相 対 的低 下 な どの要 因 に よ り,こ れ ま での経 済 的 安 定 を持 続 す る こ との 困難 さが指 摘 され 続 け て い る。 この よ うな懸 念 が 的 確 で あれ ば,わ が 国 の安 全神 話 も終 え るか も しれ な い の で あ る。 一 度 増 大 した犯 罪社 会 を現状 回復 す るの は,極 め て 困 難 なの で あ る。 欧 米 の 社 会 は,そ の苦 悩 の 中 で組 織 犯 罪 対 策 を痛 感 して い る。 ニ ュー ジー ラ ン ドの よ うな 島 国 で 国際 空港 が 一一つ しか な く海 外 か らの犯 罪 汚染 に強 い牧 歌 的共 同体 の 残 る社 会 で も,規 制 緩 和 に よ る失 業 者 の増 大 に伴 って,僅 少10数 年 の 短 期 間 で組 織 犯 罪 等 が 急 増 した の で あ る。 も しそ うで あれ ば,今 わ が 国 に 必要 なの は,「 転 ば ぬ 先 の杖 」 な の で あ る。

国債 ・地 方 債 の 急 増,高 齢 化 社 会 の到 来}環 境 の 破 壊 に よ っ て21世 紀 の 次 世 代 に残 され る負 担 は 高 ま るば か りで あ る。せ め て犯 罪 増 加 の 負 担 だ け は残 して な る まい。 その鍵 とな る刑 事 法 の 課題 が,組 織 犯 罪対 策 38(2ユ7)

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世 界 的視 座 か ら考 え る組 織 犯 罪

5.「 組 織 的 な犯 罪 」 対 策 立 法 の 論 議

(1)1996年10月8日,組 織 的 な犯 罪 に 緊 急 に対 応 す る必要 の あ る刑 事 実 体 法 ・手 続 法 の 整備 要 綱 の骨 子 を求 め る諮 問 が,法 務 大 臣か ら法 制

審 議 会 に対 して な され,そ の刑 事 法 部 会 で の 審議 に お い て,同 年11月 11日,組 織 的 な犯 罪 に対 処 す る ため の刑 事 法 整 備 に 関 す る事 務 局 参 考 試 案 が 提 出 され て い る(5)。この刑 事 立 法 の根 幹 に 関 わ る諮 問 内容 や 法 務 省 参 考 試 案 が 公 表 さ れ,批 判 的 検 討 の 対 象 と され る よ うに な っ た こ と は,組 織 犯 罪 対 策 の 進 展 に お け る一 過 程 と して有 益 で あ る とい え る。 す な わ ち,組 織 犯 罪対 策 立 法 につ い て,こ れ ま で 内発 的 な提 言 をせ ず,解 釈 論 の枠 内 で の研 究 も し くは外 国 法 の 紹 介 な どに終 始 して い た 多数 の刑 事 法研 究 者 に とって,こ の 法務 省 参 考 試 案 が,か の歴 史的 な 「アヘ ン戦 争 ・黒 船 来 航 」 の よ うに衝 激 的 で過 激 な椿 事 として,強 い 反擬 を招 い た の は 当 然 の こ とで もあ る。 しか し,こ の試 案 が組 織 犯 罪対 策 の 国 際 的水 準 に依 拠 した もの で あ るな らば,わ が 国 が再 び 「鎖 国 」 に 回帰 で も しな

い限 りは,単 な る衝 激 の反 機 で は な い法 的 対 応 を避 け て 通 るこ とは で き な いの で あ る。

「諮 問 」 に は 「最 近 に おけ る組 織 的 な犯 罪 の実 情 」 とあ り,「 諮 問 の背 景 」 と して,「 組織 的 な犯 罪 が 平 穏 な 市 民 生 活 を脅 か す と と もに,健 全 な社 会 経 済 の維 持,発 展 に 悪 影 響 を及 ぼ しか ね な い 状 況 に あ る」 こ と

「また,こ う した組 織 的 な犯 罪 又 は 国際 的 な犯 罪 組 織 の 問 題 は」,「国 際 的 に も協 調 した対 応 が 強 く求 め られ て い る」 こ とが 述べ られ て い る。

これ に 対 す る批 判 と して,「 住 専 ・暴 力 団 問 題 は,わ が 国 の歪 ん だ 政 治 ・経 済 構 造 に起 因す る もの で,今 こ そ根 絶 され な けれ ば な らな いが,

それ が 構 造 的 で あ るだ け に刑 罰 の加 重 や 捜査 手 段 の 強化 に よっ て対 処 し う る もの で は ない。 政 ・官 ・財 の癒 着 の構 造,暴 力 団 を温 存 して きた戦 後 政 治 の 変 革 が 要 求 さ れ て い るの で あ る。」,「国 際 的組 織 犯 罪 と して 念 頭 に 置 か れ て い るの は,マ フ ィアや イス ラエ ル の ハ マ スの よ うな組 織 で あ って,オ ウ ム真理 教 の よ うな一 過 性 な もの では な く,ま た,わ が 国 の (218}37

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神 奈 川 大 学 法 学 研 究 年 報16

来 必 要 な 警 察 活動 に は 明確 な 手 続 法 的 根 拠 を定 め て,「 法 的 に透 明 な手 続 」 とす る こ とが 「法 の支 配 」 か らの 要 請 で あ る。

この 意 味 では,「 盗聴 」 ば か りで な く,「 秘 密 警 察 官 ・囮捜 査 」 の 投 入 に つ いて も刑 事 訴 訟 法 に 明確 な 限 界づ け の 規 定 を新 設 す る こ とが望 まれ よ う。 さ らに,伝 統 的 な令 状 主 義 の み で は捜 査 の適 正 手 続 化 が 充 分 で な い の で あ れ ば,こ れ を補 完 し う る よ うな 捜 査 権 濫 用 防 止 の 制 度(例 え ば,加 重職権濫 用罪や イギ リスの警察不 服審査庁 の よ うな制 度 の新 設)を 考 案 す べ きで あ る よ うに 思 わ れ る。 新 た な実体 法 は,こ れ を支 え る新 た な 手 続 法 を必 要 とす るの で あ る。

(1)HeribertOstendorf,ReiheAlternativkommentare,Kommentarzum

StrafgesetzbuchBd.3(1986),§129,Rn.8,S .411に よ る と,刑 事 訴 追 に 関 し て 本 条 の 実 務 的 意 義 は 乏 し い と し て,統 計 上 の 数 字 を 引 用 す る 。 な お,警 犯 罪 統 計 で はs129条 自 体 で は な く,国 家 犯 罪 と し て 政 党 ・団 体 ・結 社 の 禁 止 違 反 お よ び 犯 罪 結 社 罪 が 一 括 さ れ て い る 。 捜 査 手 続 と 判 決(有 罪 判 決)の 件 数 は 以 下 の 通 り で あ る 。1977年85・8(4),1978年135・16,1979年

205・8,1981年626・6,1982年232・20な お,1977年 を 除 い て,有 判 決 は 示 さ れ て い な い(そ れ は 存 在 し な い の で あ ろ う)が,い ず れ に せ よ, そ の 件 数 の 上 下 が 激 し く,捜 査 件 数 に 比 べ て 有 罪 件 数 は 少 な い 。

(2)TheodorLenckner,Schbnke‑SchroderStrafgesetzbuchKommentar24 . AuflageX1991),ァ129,Rn.1;KarlLackner,KristianKohl ,Strafgesetzbuch mitErl瓢uterungen}21.Auflage(1995)s§129Rn .1,S.624.

(3)Hans‑JoahimRudalphi,SystematischerKommentarzumStrafgesetz‑

buch,BandIIBesondererTeil,4.Auflage(1989),§129Rn .2.

(4)Ostendorf,a.a.0.,§129Rn.8は,本 条 の 法 政 策 と し て 二 つ の 目 的 が 認 め ら れ る と す る 。 第 一 は,政 治 的 ・犯 罪 的 反 動 を 適 時 に 結 成 か ら 防 止 す る と 同 時 に,刑 の 減 軽 免 除 に よ っ て 結 社 か ら の 離 脱 を 促 す こ と で あ る 。 第 二 に,麻 薬 組 織 等 の 犯 罪 結 社 に 対 処 す る こ と で あ る 。

(5)H‑J.Rudolphi,JRl984,S.31ff。,S.33f.は}本 判 例 の 評 釈 に お い て}刑 法129条 の 犯 罪 結 社 と 刑 法30条 で 可 罰 的 な 犯 罪 共 謀(陰 謀)と を 裁 然 と 区 別

し う る 必 要 が あ り,そ の た め に は 各 構 成 貝 の 個 人 的 な 責 任 感 情 を 消 去 し て 犯 罪 へ と 駆 り 立 て る 「犯 罪 結 社 に 特 有 な 危 険 性 」 を 基 礎 づ け る も の と し て 「組 織 の 掟 ・規 約 」 が 必 要 に な る と 論 じ て い る 。

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世 界的 視 座 か ら考 え る組 織 犯 罪

が っ て,か か る禁 遇 は 「モ グ ラ 叩 き」 に 終 り,潜 伏 した組 織 活 動 の 追 跡 ・情 報 収 集 の ため に は,秘 密 捜.査官 ・盗 聴 ・囮捜 査 とい っ た極 どい刑 事 手 続 の 強化 が不 可 避 に な り,そ の 導 入 に よ る人権 侵 害 も増 大 す る こ と

に な る。 この よ うな批 判 は,一 面 の正 しさ を否 定 しえ な い もの の,次 の よ うな反 論 が な し うる。

す な わ ち,い ず れ にせ よ 「組 織 犯 罪 は は び こ る」 の で放 置 す るの が よ い,と い っ た方 策 は,結 局 は,悪 の根 源 を放 置 して繁 殖 を容 認 す る こ と に な る。 「毒 を もっ て毒 を制 す る」 とい っ た 自浄 作 用 は期 待 しえ な いか

らで あ る。 そ れ ゆ え,既 に暴 力 団対 策 法や 住 民 活動 に よ っ て地 域 か ら暴 力 団 を排 除 し封 じ込 め る とい う方 策 が 選 択 され たの で あ る。 そ の合 理 性 は,暴 力 団 の事 務 所 や 組 織 活動 の 公 然性 を法 的 に容 認 した と して も,そ れ ゆ えに その 活動 が 地域 社 会 と融 和 し う る適 法 で社 会 的 な もの に変 った

り しな いば か りか,そ の 犯 罪 活 動 の 計 画 ・遂 行 が 非 公 然 かつ 密 行 的 に検 挙 を免 れ る よ うな形 態 で行 わ れ る こ とに何 らの変 り もな い,と い う点 に 求 め られ る。 さ らに,組 織 犯 罪 は,い ず れ にせ よ合 法性 を装 っ て企 業 化 す る傾 向 に あ り,こ れ を放 置 す れ ば政 治家 ・公 務 貝 ・法律 家 ・企 業 家 の 誰 で も接 近 ・結 託 の可 能 な 人物 ・組 織 を取 り込 む の で あ る。 それ が 法 的 禁 止 に よ って初 め て悪 質 巧 妙 化 す るの で な い こ とは,組 織 経 済 犯 罪 ・企 業 犯 罪 で は 明 らか で あ る。 処 罰 され た 人々 が刑 務 所 で犯 罪知 識 の増 大 し

た仲 間 を さ らに引 き込 む,と い っ た問 題 も,組 織 犯 罪 の処 罰 を しな け れ ば 回避 で きる こ とで は な い。 いず れ にせ よ,人 的 ・財 産 的 資 力 を犯 罪組 織 か ら断 つ ため の 一 方 策 と して,犯 罪組 織 化 の刑 事 規 制 が 必要 に な るの

で あ る。

第 四 に,「 犯 罪組 織 」 の 犯 罪化 に よ り,従 来 の 「公 安 警 察 」 的 活 動 に 代 って,「 犯 罪 捜査 」 と して の 警 察 活 動 が刑 事 訴 訟 法 に依 拠 して可 能 に な る。 す な わ ち,「 犯 罪 の嫌 疑 」 を前 提 と した 捜査 が 可 能 に な るの で,

「令 状 主 義 」 に依 拠 した適 正 手続 に よ り犯 罪 組 織 の 密 行 的 活 動 の 法 的 抑 止 が実 現 可能 に な る。 も とよ り 「令 状 主 義 」 は行 政 手 続 に も及 ぶ が,本

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神奈川大学法学研究年報16

成貝等 々)に よ る 「支援 」・「加 担 」 の 行 為 が 刑 法 で規 制 可 能 に な るか ら で あ る。 それ は,規 制 対 象 を 「組 織 暴 力犯 罪 」 に 限 定 して い る暴 力 団対 策 法 の行 政 規 制 よ り もy形 式 上 は 一 貫 した 態 度 に な るで あ ろ う

。 しか し,こ の よ うな刑 法 に よ る 「一 般 予 防」 の 強化 は,そ の 違 反 者 を現 実 に 摘 発 処 罰 して 再社 会化 に 結 びっ け る 「特別 瑚 の 強 化 を伴 わ な い と

, 実効 性 に乏 しい こ とに な る。 したが って,警 察 組 織 ・刑 事 司法 ・行 刑 な

どの全 体 的 な構 造 改 革 な しに,警 察 捜 査 の よ うな …部 門の み を強 化 す る こ とは,人 権 侵 害 そ の他 の機 能 障 害 を もた らす こ とに な る

。 そ れ ゆ え制 度 全 体 の 「均 衡 と抑 制 」 の機 構 が 問 わ れ る こ とに な る。

第 二 に,規 制 対 象 とな る 「犯 罪 組 織 」 を限 界づ け る立 法 技術 の 困難 が 避 け られ な い。 「犯 罪遂 行 目的 の 組 織 」 を対 象 とす る と き

,そ の構 成 員 間 の序 列 支 配 関 係 ・不 法 利益 の分 配 灘 な どの組 織 原理 や 組 織 活 動 の継 続 性 等 を要 件 に しな い と,犯 罪組 織 の 限 界 は不 明確 に な る。 しか し,現 実 の犯 罪 組 織 は実 に 多様 か つ 柔 軟 で あ り,こ れ らの 要 件 に合 致 しな い組 織 も 多 く,し か も,そ の要 件 を明 示 す る と,そ の脱 法 化 を保 障 し促 進 す る こ とに もな る。 そ れ ゆ え,立 法政 策 と して は,一 方 で犯 罪組 織 を狭 く 限定 しつつ,こ れ へ の 支 援 ・共 犯 行為 を広 く補 捉 す る方 法 が あ るが

,支 援 等 の行 為 の 限 界づ け は 困 難 で あ ろ う。 そ こ で,犯 罪組 織 の要 件 を い く つ か の段 階 に 応 じて弾 力 化 す る方 法 が あ りうるが

,こ れ と法 定 刑 とを対 応 させ る こ とが 可能 な程 に 法 益(侵 害)関 連 性 を もたせ る こ とは 難 しい で あ ろ う。 した が って,こ の よ うな二律 背 反 性 を実体 法 の 内部 で解 消 す る こ とは極 め て 困難 で あ るの で,第 一 の末 尾 に 述べ た よ うな組 織 法 ・手 続 法 を含 め た総 合 的施 策 が 必要 に な る よ うに思 わ れ る。

第 三 に,「 犯 罪結 社 」 の組 織 活 動 自体 が 犯 罪 と して禁 遇 され る こ とに な る と,そ の 「公 然 」 の 活 動 が 許 され な い の で,暴 力 団 等 の 犯 罪組 織 は

「秘 密 」 の組 織 とな っ て社 会(地 下)に 潜 伏 す る。 す な わ ち,結 社 の 禁 止 は犯 罪組 織 の 「偽 装解 散 」 を促 進 す るだ け で あ っ て,真 の解 散 に よ っ て生 じた 「縄 張 り」 の 空 白 に は別 の犯 罪組 織 が 拡 が るだ け で あ る

。 した

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世界的視座から考える組織犯罪 右 手 がYの 動 作 とす るの が 「共 同 意 思 主 体 説 」 で あ る)。 そ れ ゆ え,連 帯 ・ 協 同 の 危 険 増 加 を共 犯 の 処 罰 根 拠 に 加 え るべ き理 由 は 乏 しい 。 こ れ に 対

し て,「 犯 罪 結 社 罪 」 で は,各 則 に 定 め る犯 罪 規 定 か らす る と予 備 ・陰 謀 に も な り う る か 疑 問 と な る 段 階 の 連 帯 ・協 同(団 体 結 成 行 為)が 当 罰 性 を も ち う る た め の 「法 益 の 危 殆 化 」・「危 険 増 加 」 が 問 わ れ て い る。 そ れ が 単 独 の 行 為 者 に よ る 予 備 で あ る な らば,兇 器 ・爆 発 物 ・有 毒 物 等 の 所 持 ・製 造 と い っ た 特 別 の 事 情 が 加 わ ら な い と 「当 罰 性 」 に 欠 け る で あ ろ う。 そ れ ゆ え,こ の よ う な 「特 別 の 事 情 」(公 共 危 険)の 一 態 様 と し て 「犯 罪 目的 の 人 的 結 合 」 の 当 罰 性 が 問 わ れ て い る の で あ る。 刑 法 総 則 の 共 犯 で は,人 的 結 合 に よ る協 働 が 問 題 に な る場 合 で も,そ れ は偶 発 的 な 協 働 で 足 り,一 回 限 りの 協 働 で 良 い 。 しか し,犯 罪 結 社 罪 で は 「犯 罪 目的 」 の 「継 続 的 な 人 的 結 合 」 で あ っ て,「 犯 罪 を推 進 す る 原 動 力 ・潜 勢 力 」 を備 え た 「組 織 」 で あ る こ とが 要 件 と な る。 そ れ に よ っ て,.単 な

る予 備 の 協 働 と は 違 っ て,「 当 罰 的 」 に な り う る。 さ ら に,そ の 「犯 罪 目的 」 は,単 一 の 犯 罪 で は 足 りず,多 数 の 犯 罪 ま た は 犯 罪 累 行 を要 件 と す る,と い っ た 限 定 解 釈 が 必 要 で あ ろ う。 そ う で な い と,「 犯 罪 結 社 」

と も呼 べ な い か らで あ る 。 な お ドイ ツ刑 法129条 に い う 「犯 罪 結 社 」 で あ る た め に は,継 続 的 な 共 同 目的 の 達 成 の た め に 構 成 貝 の 意 思 を全 体 意 思 に 従 属 させ る統 一 的 結 合 で あ り(BGHSt.28,147),そ の た め に は 「そ の 意 思 形 成 に 関 して 全 構 成 員 を拘 束 す る ル ー ル 」 の 存 在 が 必 要 で あ る と 解 さ れ て い る(BGHSt.31,239)(5)。

⑦ 最 後 に,こ の よ う な 「犯 罪 結 社 罪 」 す な わ ち 「犯 罪 組 織 」 自体 の 結 成 ・活 動 を処 罰 す る政 策 の 長 短 に つ い て,若 干 の 検 討 を加 え て お く。

第 一 に,「 力 の 支 配 」 に よ り 「法 の 支 配 」 を揺 が そ う とす る 「犯 罪 組 織 」 を 正 面 か ら 国 家 と 市 民 が 許 容 し な い と い う 態 度 の 法 的 明 示 に よ る

「一 般 予 防 」 の 効 果 が 考 え られ る。 犯 罪 組 織 の 「結 成 」 の み な ら ず,犯 罪 組 織 に 「加 盟 ・入 会 」 す る行 為,さ ら に 組 織 の 構 成 員 で は な い 人 々

(政治 家 ・公 務 員 ・弁 護 士 ・公 認会 計士 ・税 理 士 ・金 融機 関 そ の他 の 企 業 の 構 33(222)

(24)

神奈川大学法学研究年報16

与 者 に 裁 量 的 な刑 の 免 除 の余 地 を認 め て い る(4)。 また,学 説 は 「支 援 」 を 「団体 の存 続 ・目的実 現 の 原 因 とな る寄 与」 に制 限 す る な どの 限定 解 釈 を加 え て,こ の犯 罪結 社 罪 が抱 え る問 題 の緩 和 に努 め て い る。

⑥ そ れ で もな お検 討 され るべ き は,前 述 の 「前 段 階 処 罰 の 根 拠 」 が,単 な る 「共 犯 処 罰 の根 拠 」 を超 え て い るか 否 か で あ る。 も し 「犯 罪 結社 」 が 刑 法 総 則 に定 め る共 同正 犯 ・教 唆犯 ・幣 助 犯 の 「共 犯 」 に解 消 可 能 で あ り,ま た 「共 犯 」 と同 一 根 拠 で処 罰 さ れ る の で あ れ ば,そ の

「前段 階処 罰 の根 拠 」 は失 われ る こ とに な る。 前 記② の 「予備 罪 説」 も , 実 は この 問題 を提起 す る点 で重 要 に な る とい え る。

「結 社 罪 」 と 「共 犯 」 との対 比 で 注 目すべ きは,特 に 「共 同 意 思 主 体 説 」 で あ る。 同 説 に よ る と,共 犯 の処 罰根 拠 は,共 同正 犯 ・教 唆 犯 ・討 助 犯 を統 合 した一単一 の組 織 体 の活 動 と して,そ の個 々 の構 成 員 の各 行 為 の総 和 を超 え る法 益 危 殆 化 が そ こ に 生 じ る点 に 求 め られ る。 そ れ は,

「赤信 号 皆 で渡 れ ば 怖 くな い」 とい う考 え に た とえ られ る。 確 か に,共 犯 と結 社 罪 とに共 通 点 が あ る こ とは,否 定 しえず ,自 明 で もあ る。 しか

し,共 同 意思 主体 説 は,正 に 「組 織体 」 少 な く も 「共 謀 」 を前 提 とす る 点 で,「 共 犯 規 定 」 に馴 じむか 疑 問 な の で あ る。 それ に して も,「 共 謀 」

を全 共犯 の 要 件 とす る な らば,共 犯 成 立 の 限 界 を明確 化 して 限定 し うる 側 面 を もつ こ と も否 定 しえ な い。

そ こ で,い ず れ にせ よ,次 の よ うに考 え る こ とが で き る。 「犯 罪結 社 」 にせ よ 「共 犯 」 にせ よ,そ の 人 的結 合 に よ る行 為 協 働 で生 じた 危 険 増加 が違 法 性 を高 め る こ とは 肯 定 され うる。 しか し,総 則 の 共 犯 規 定 で は, 各 則 に定 め る所 為 の連 帯 な い し役 割分 担 か ら生 じる危 険増 加 は ,各 共 犯 者 の実 現 した所 為 の 違 法 評 価 に解 消 可 能 な の で あ る。 例 え ば,被 害 者 Aを 行 為 者Xが は が い締 め で逃 げ られ な く したの で行 為 者Yが 刺 し殺 せ た とい う事 案 に お い て,Xの 行 為 が 単 な る逮 捕 罪 で も殺 人 幣 助 罪 で

もな く殺 人 罪 で あ る と個 別 的 に も評 価 可 能 なの で あ る(こ こで,X・Y の一体不 可分 の行為 を統 合 す る行為 主体 を考 え,そ の左 手 がXの 動作,そ の 32(223)

(25)

匿 界,的視 座 か ら 考 え る 組 織 犯 罪

別 の 規 定 を設 け,刑 法129条aに は テ 「ロ結 社 罪 の 規 定 が あ り,さ らに 結社 法20条 に罰 則 を定 め て,ド イ ツ法 は対 応 して い る。

次 に,犯 罪 結 社 罪 を処 罰 す べ き根 拠 が 問 わ れ る。 本 罪 の保 護法 益 につ い て は,① 「公 共 の 安 全 」 とす る 見 解 ② と② 「刑 法 各 則 規 定 の 保 護 法 益 」 とす る 見解3)と が 対 立 して い る もの の,そ の 実 質 的差 異 は 必 ず し も

明 らか で は な い。 ① 説 に は,公 共 の秩 序安 全 の保 護 と して も,結 局 は結 社 に よ り計 画 され た個 々 の犯 罪行 為 の 予 防 以 上 を意 味 しえ な い,と の 批 判 が あ る一 方,② 説 で は,結 社 罪 は 各 則 の所 為 の 「予備 罪 」 で あ る と強 調 され るが,だ か ら とい って 「特 定 犯 罪 」 の 「具 体 的予 備 」 で あ る こ と

まで は要 件 と し え な い。 そ うす る と,本 罪 は,「 一 般 的 予備 罪 」 で あ っ て7「 公 共 危 険 犯 」・「抽 象 的 危 険 犯 」 の性 格 を拭 い 切 れ ず,む し ろ前 述 した意 味 で の 「法 の 支配 」 に 対 す る罪 で あ る との性 格づ け も可能 で あ ろ う。

(5)実 質 的 な処 罰 根 拠 と して 重 要 な の は,「 公 共 危 険 犯 」 な い し 「一 般 的 予備 罪」 の いず れ も相 互 に他 を排 斥 しえ ない と して も,こ の よ うな 前 段 階 処 罰 が なぜ 許 容 し うるか,と い う点 で あ る。 こ こで は両 説 の 差 異 は解 消 され,「 犯 罪 団体 に 内 在 す る特 有 の犯 罪 原動 力 」 が 犯 罪遂 行 を促 進 な い し容 易 にす る とい う 「危 険性 」 に 注 目され て い る。 す な わ ち,第 一 に,集 団 に よ る協 働 的 手段 の 危 険性,第 二 に,団 体 構 成 員 の個 人の責 任 感(規 範 的抑止力)や 恐怖 心 等 の 抵 抗 感 を緩 和 ・除去 し,あ る い は 勇 気づ け,利 益 で誘 導 し,さ らに合 目的的 な組 織 活動 に 共感 ・同 調 させ て 動 機づ け支 援 す る とい う犯 罪遂 行 の容 易化 で あ る。

しか しな が ら,こ の よ うな一種 の 「共犯 的 予 備行 為 の 正犯 化 」 に よ っ て,予 備 行 為 の 未 遂 の 教 唆 ・甜 助 も可 罰 的 とな るの で,「 重 罪」 に 限 っ て 「未 遂 の教 唆 」 の処 罰 を認 め た刑 法30条 の 趣 旨が 損 わ れ る。 また, 正 犯 行 為 で あ る ド支 援 」 の概 念 に は,明 確 な限 界 が な い。 こ う した重 大 な疑 問 の あ る本 条 の 規 定 につ き法 政 策 的 に は大 い に争 われ て い る。 しか し,本 条 の3項 は,責 任 が 低 く,か つ 協働 が従 属(補 足)的 な役 割 の 関

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